「12の重点検討事項」に関する論点整理

平成15年5月6日
アクションプラン実行WG
主査 宮内義彦

◇ 総合規制改革会議としては、本年2月の経済財政諮問会議で了解された「規制改革推進のためのアクションプラン」における以下の「12の重点検討事項」(「官製市場分野」(医療、福祉、教育、農業などが中心))について、遅くとも2年以内に規制改革を実現する(新たな法制度等の施行を完了する)ことを目標として、本年6月の「答申」に向け、当会議等が有するあらゆる機能・権限等を行使しつつ集中審議を行っていくこととしている。

◇ こうした中で、3月初めからこれまでの間、「アクションプラン実行ワーキンググループ」を計6回開催し、「12の重点検討事項」について、当会議の有する法令上の措置(「資料請求権」など)を行使しつつ、各省庁との「公開討論」の実施を一巡したところである【別紙参照】。これまでの論点を整理すれば、以下のとおり。
(→の先は、関係省庁の主な反対理由)

1.株式会社等による医療機関経営の解禁

○ 全国規模での自由診療に限らない全面解禁。(厚生労働省が禁止できる法的根拠なし)

 → 医療は非営利が原則。株式会社が参入し、利益追求した結果、株主への配当を行えば、過剰診療・患者選別ひいては医療費向上を誘引。(禁止の法的根拠は、「(都道府県知事は)許可を与えないことができる」とした医療法第7条第5項にある。)

○ 当面の課題として、少なくとも特区において、「自由診療に限る」以外の前提を設けないようにする。

 → 6月までに成案を検討する中で、議論。

2.いわゆる「混合診療」の解禁(保険診療と保険外診療の併用)

○ 特定療養費制度(高度先進医療については、個別の医療機関毎・療養毎に厚生労働大臣が承認)の拡充によらない、少なくとも「病院単位での混合診療」を全国規模で解禁。(禁止の法的根拠なし)

 → 特定療養費制度の拡充で対応可能。(禁止の法的根拠は、健康保険法第74条、第85条、第86条にある。)

3.労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大

○ 医療機関など、社会福祉施設以外の施設への派遣を早急に解禁。

 → 医療は他の分野と異なる「特別なチーム編成」が必要であり、そもそも派遣に馴染まないが、本年6月までに検討し、結論を出す。

4.医薬品の一般小売店における販売

○ 少なくとも、特例販売業(薬剤師が置かれなくとも都道府県知事の指定により一定の医薬品を販売することを認められた店舗)で取り扱っている医薬品の販売を一般小売店にも解禁。

 → 医薬品は、過量使用・副作用の恐れがあり、薬剤師が常駐して服薬指導できる薬店でしか、販売してはならない。

5.幼稚園・保育所の一元化

○ 少なくとも特区において、幼稚園と保育所に関する行政を一元化し、施設設備基準、資格制度、配置基準、入所要件等を統一化。

 → それぞれ異なる機能があり、制度の一元化は困難。制度を一元化すれば、かえって柔軟性が失われる。

6.株式会社、NPO等による学校経営の解禁

○ あくまで全国規模での全面解禁。

 → 学校の持つ「公共的な性格」から困難。

○ 当面の課題として、少なくとも特区において、「公設民営」を解禁。

 → 学校の持つ「公共的な性格」から困難。他人に運営させることは、設置者としての「責任放棄」。

7.大学・学部・学科の設置等の自由化

○ 遅くともアクレディテーション制度が導入される来年度初めから、学位・学問分野が既存のものと異なる学部・学科の設置等についても、許可制から届出制へ移行。

 → 大学として、教育の質を保証し、消費者たる学生に不利益を被らせないためには、事前規制は必要。

8.株式会社等による農地取得の解禁

○ 少なくとも特区において、解禁。

 → 農地の転用等による一層の耕作放棄が進展し、現状回復が困難なおそれあり。特区における措置(リース方式)の十分な評価・検証を待つべき。

9.高層住宅に関する抜本的な容積率の緩和

○ 容積率の考え方をインフラ負荷のみの基準とするとともに、都市計画に「混合用途地域」などを設けることなど。

 → 容積率の緩和については、現行の特例制度により、対応可能。

10.職業紹介事業の地方公共団体・民間事業者への開放促進

○ 有料職業紹介事業について、求職者からの手数料徴収に関する規制を、より一層迅速に緩和する。

○ ハローワークについて、公設民営型などの導入、独立行政法人化など、組織・業務を見直す。

 → 我が国が加盟しているILO条約との関係、雇用保険事業との一体的運営が必要であることなどから、困難。

11.株式会社等による特別養護老人ホーム経営の解禁

○ 全国規模での早期実現。

○ 少なくとも特区において、「民設民営」を解禁。

 → 特区における措置の十分な評価・検証を待つべき。

12.株式会社等による農業経営(農地のリース方式)の解禁

○ 全国規模での早期実現。

 → 特区における十分な評価・検証を待つべき。


(別紙)
「アクションプラン実行ワーキンググループ」(主査:宮内義彦オリックス会長)
これまでの検討経緯(全て「関係各省との公開討論」)

第1回 3月5日 〔厚生労働省〕

○ 医薬品の一般小売店における販売

第2回 3月17日 〔厚生労働省〕

○ いわゆる「混合診療」の解禁(保険診療と保険外診療の併用)

○ 労働者派遣業務の医療分野(医師・看護師等)への対象拡大

第3回 3月27日 〔文部科学省〕

○ 株式会社、NPO等による学校経営の解禁

○ 大学・学部・学科の設置等の自由化

第4回 4月3日 〔農林水産省、厚生労働省〕

○ 株式会社等による農地取得の解禁

○ 株式会社等による農業経営(農地のリース方式)の解禁
<特区から全国規模への早期展開>

○ 株式会社等による特別養護老人ホーム経営の解禁
<特区から全国規模への早期展開>

第5回 4月9日 〔厚生労働省・文部科学省、国土交通省〕

○ 幼稚園・保育所の一元化

○ 高層住宅に関する抜本的な容積率の緩和

第6回 4月22日 〔厚生労働省〕

○ 株式会社等による医療機関経営の解禁

○ 職業紹介事業の地方公共団体・民間事業者への開放促進


内閣府 総合規制改革会議