文部科学省との意見交換

○宮内主査 それでは、時間でございますので、ただいまから第5回「アクションプラン実行WG」を開催いたします。
 本日の前半のテーマは、幼稚園と保育所の一元化でございます。本テーマは御承知のとおり、幼稚園を所管いたします文部科学省と、保育所を所管する厚生労働省の両省に関係にするものでございます。本日は、時間を区切りまして、両省から別々に意見交換を行うと、このような予定をさせていただいております。まず、ただいまから40分間、文部科学省との意見交換を行いたいと思います。
 本日は文部科学省から玉井総括審議官を始め、御担当の皆様においでいただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 幼稚園、保育所の一元化につきましては、資料1の1ページにもございますように、当会議が目指します規制改革の方向性は、単に現行制度の運用により、幼稚園と保育所の併設と連携を進めるということだけではなく、同一の設置主体、同一の施設、同一の職員による運営が可能となるように、少なくとも特区においては両施設に関するさまざまな制度について、その統一・一元化を図るべきであるというものでございます。
 文部科学省関連の改善されるべき制度について、特に申し上げますと、資料1の2ページにございます設置主体の問題、すなわち株式会社等による保育所の設置は既に認められているものの、幼稚園については特区以外では原則としてはいまだに認められていないこと。
 あるいは6ページ目にございます幼稚園への入園要件の問題、すなわち特区においてですら、いまだに満2歳に達した日の翌日以降とされております入園年齢制限を一層緩和すべきことなど、幾つかの重要な残された課題が存在すると認識しております。
 それでは、これらの点も踏まえ、御参考にしていただきながら、意見交換を始めたいと思いますが、まず文部科学省からお考えにつきまして、御説明を10分以内程度でお願い申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。

○玉井文部科学省総括審議官 文部科学省の総括審議官の玉井でございます。本日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。
 本日は担当審議官、担当課長も参っておりますので、意見交換をさせていただければと思っております。
 お手元に私どもの資料、いわゆる幼稚園と保育所の一元化についてという数枚のペーパーを御用意いたしました。それから、事例集ということで両方を一体的運営している事例集をおつくりしておりますので、それもお配りしておりますので、適宜それにしたがって、御説明をさせていただきたいと思っております。
 まず、基本的な考え方のところでございますけれども、幼稚園・保育所、それぞれ性格が違うわけでございます。教育と保育というそれぞれの違いはあるんですけれども、近年の状況から見ますと、幼児教育というものを大切にしたいという御意見が大変強うございます。
 一方、子どもたちを長時間預かってほしいというニーズも大変強くなっているということは十分私ども認識をしているわけでございます。
 したがって、両方の高まっているニーズにどのように応えていくかということが基本的な課題だろうと思っております。
 そのために、私どもの今の考え方としては、幼稚園と保育所が連携して一体的運営ということで地域の実情に応じて、それぞれの特性を生かしなから多様なサービスを提供できる柔軟な取り組みということが大切ではないかと考えているわけでございまして、そのために真ん中辺りに書いてございますが、一体的運営ということで今、進めているわけでございます。
 四角の中を御説明いたしますと、1つは施設の共用化指針でございます。
 2つ目が、幼稚園教諭と保育士の資格の併有の促進。
 3つ目に、教育・保育内容をできるだけ両方合ったものにしようということでございます。これはカリキュラム、施設、それから人、教員の面でできるだけ一体的な運営ができるようにということを考えているわけでございます。
 更にそのことが促進されますように、事例集をつくって、今、全国にその促進を促しているところでございます。
 それから、一番下の方にございますように、構造改革特区におきましては、これは既に第一次提案のときには入園年齢の弾力化を図ったわけでございますけれども、更に進めておりますのが、合同の教育・保育を受けられるような特例措置ということも今進めているわけでございます。
 1枚めくっていただきますと、地方における取り組みの実例ということを御用意をいたしました。まだまだ数は少ないんでございますけれども、地域のニーズに応じた一体的運営についての取り組みが今、始まっております。私どもは基本的に好ましいことだと思っておりまして、それぞれのこういう取り組みが進むことが期待をしているわけでございます。その典型的なものとして2つのタイプを今日は御紹介を申し上げます。
 1つは、年齢区分型ということでございますけれども、要するに0歳から2歳児までを保育所とし、3歳児から5歳児までを幼稚園、それに預かり保育も合せた形にしております。したがいまして、乳児から幼児までの育成指針というものを一貫したものでつくっております。
 そして、同一年齢の子どもについて幼稚園と保育所の区別をすることなく教育をしているという一体型の例、年齢に応じて保育所・幼稚園を一緒になってやっているという例が出てまいっております。
 もう一つは、合同活動型でございますけれども、保育所と幼稚園がそれぞれあるわけでございますけれども、お互いに相互乗り入れをいたしまして、一定の時間に同じ教育を受けているということでございます。したがって今の図でございますけれども、斜線になっておりますけれども、幼稚園のところでは「ティーム保育」という形で、そこでは保育所の子どもたちも一緒に合同で教育を行う。
 幼稚園のところでは、預かり保育を行う。それから保育所の方は更に保育所としての機能も果たすという形で、お互いに一体的な運営を行っている例でございます。私どもはこういうものが更に進むことを期待いたしたいと思っております。
 「今後の対応」でございますけれども、更に人の問題として、幼稚園教諭と、保育士の資格、これの相互取得ができるようにということで、どのようにその在り方を考えたらいいかということをこの15年度中に方策について検討し、結論を得るということとなっているわけでございます。
 御案内のとおり、新しく大学を出られる方々は、8割方は大体幼稚園の教諭と保育士の両方の免許をお取りになっているのがごく一般的なんですけれども、必ずしもそうではない方も若干おられるし、現に今幼稚園、現に今保育所にいらっしゃる方々でまだどちらかしか持っていない方がおられる、そうすると、合同保育と言ったときに両方持っていないとなかなかやりにくいものでございますから、そういう意味での両方の資格を並有できるような方途をこの15年度中に考えたいと考えております。
 更に私ども先ほど御説明したとおり、カリキュラム、施設、それから教員の面での一体的運営を進めていますし、現に地域においてこういった取り組みが進んでおるわけでございますけれども、更にそれぞれの特区の実践も始まっているわけでございますので、そういう実態を踏まえながら、地域の実情に応じて柔軟な運営が可能になるような方策を更に検討する必要があるだろうと思っております。
 というのは、より一体的なカリキュラムの問題だとか、あるいはそういう共有した施設の運営をどのように運営システムとして考えていくかという課題もあろうかと思っておりますので、そういう面で今後更に検討させていただきたいと思っております。
 若干資料のところを御説明申しますけれども、5枚目をめくっていただきますと、就学前教育・保育の実施状況」ということで、今の幼稚園・保育所の人数をお書きしております。幼稚園は3、4、5歳のところでございますけれども、3歳児が伸びております。ただし、4歳児、5歳児は全体の幼児数が減少しておりますので減っております。 一方、保育所は若干増えておりますけれども、全体として大きく増えているのは0歳、1歳、2歳のところが、ここに表れておりませんけれども、増えているということでございます。
 更に、後ろから2枚目になるわけでございますけれども、幼稚園における預かり保育というのを少しペーパーで御用意をいたしました。これは先ほど地域のニーズとして、幼児教育が非常にニーズが高まっておりますが、併せて長時間預かって欲しいという保育のニーズも大変高まっているわけでございます。そこで幼稚園における預り保育というものを今積極的に進めているわけでございまして、平成5年が約2割くらいが預かり保育を行ったものが今は60%、特に私立ですと、8割以上が預かり保育を行うようになってきておりますので、更にその時間だとか日数だとか、学校ですので、長期休業があるわけでございますけれども、その長期休業のときの預かりをどう考えるかなどの課題がありますので、私どもはそういった預かり保育の促進を図ってまいりたいと思っているわけでございます。
 以上でございます。私どもとしては、一番最初に申し上げた基本的な考え方に沿って進めているわけでございます。
 先ほど宮内主査の方から設置主体についての御指摘がございましたけれども、幼稚園も学校でございますので、前回も御議論になりましたけれども、ここはやはり設置形態というのは一定の制約はあるんではないか。ただし、特区における一つの試みというものは重要であり、そこは特区の状況をよく見させていただきたいと思っております。
 年齢につきましても、まずは私どもは既に特区においての年齢緩和を図っておりますので、その状況をよく見させていただきたいと思っております。
 中には議論として0歳で幼稚園でもいいのではないかという議論が確かにあるわけでありますけれども、この辺りは、教育でございますので、それぞれの発達に応じた、どのくらいから適当であるかというのはいろんな研究成果があるわけでございまして、どの国を見ても0歳を教育とはなかなか考えていない。やはり自分から他者に気づいたところで、教育というのが始まるわけでございます。集団教育というのはまさに他者に気づきながらの教育でございますので、そこはある年齢があるのではなかろうかということでございます。そういったところも、私ども更に諸外国の状況も把握しながら考えてまいりますけれども、基本的には特区において今緩和を図っておりますので、その状況をよく見させていただきたいと思いますし、やはり教育は集団教育を前提としておりますので、発達課題はよく考えさせていただきたいと思っているわけでございます。
 以上でございます。

○宮内主査 ありがとうございました。なお、本件につきましては、特区ワーキンググループが既に先行的な形で議論が行われたテーマでございます。したがいまして、特区ワーキンググループで議論をしていただきました委員の皆様方からまず御意見をちょうだいしたと思います。八代委員からよろしくお願いいします。

○八代委員 3点ほど御質問させていただきたいと思います。
 この問題は、幼稚園と保育所が、実態上同じようなサービスを提供しているにもかかわらず、文部科学省と厚生労働省という担当省庁が違うがゆえに違う別個の制度みになっている。これをできるだけ一体化することが、利用者へのサービス向上と、貴重な財政資源等を効率的に使うために重要という指摘は昔からあったわけですが、それがますます現状では重要になってきている。この辺の御認識は共有していると思うのですが、問題は先ほどの御説明の中では、地方では非常に柔軟にやっている。だから、それでいいじゃないかという御説明です。私は逆に現場に一体的にやっているなら、なぜ国の方も一体的にできないのかという素朴な疑問を持っているわけです。なぜ現場できちっと保育園児も幼稚園児も同じようなところで実質的に一体的にやっているのなら、それを国の方も縦割りではなく、制度上も一体的にやればいいじゃないかという単純な発想をしています。現場において一体的にしているから、国の方は現状のままでいいのだという御指摘をもうちょっと御説明いただきたいのが第1点です。
 もう一つは、幼稚園は学校教育の一環だから学校法人でなければいけないというご趣旨ですが、問題は誰がそれを決めるのかということです。幼稚園は純粋な学校教育であるかどうかは、文部科学省ではなく、利用者が決めることじゃないですか。仮に、利用者がうちの子どもには教育第一でやってほしいということでいえば、純粋な従来どおりの幼稚園に子どもを預ける人もいるでしょう。うちは保育と一緒にして欲しいというなら幼保一体化されたものを選ぶ。これは幼稚園であればすべて学校教育であり、文部省科学省の所管だから、教師にはこういう資格も要るし、こういう制度でなければいけないというふうに一方的に決めるべきかどうか。もっと消費者が自由に選択できるような制度があっても良いのではないかということであります。まさに現場でやっているような一体的運用も、繰り返しになりますが、そういうようなものを特区だけではなく全国的に認めたらどうだろうか。これは第2点です。
 第3番目は、議長がおっしゃいました設置主体の問題ですけれども、これも既に専門大学院という、上の方は特区ではなくて、全国ベースで経営主体の自由化を認めていただいているわけです。今度は義務教育ではない一番下の幼稚園についても、特区で実験することは考慮すべきではないでしょうか。
 保育所の場合は厚生労働省の考え方は、子どものためにこういう施設か要る。こういう人員が要るという設置基準を明確に定めて、それを満していれば企業であっても、学校法人であっても、社会福祉法人であっても経営主体は何でもいいですよという考え方をしているわけです。それに対して文科省はひと昔前の考え方と言いますか、どんな設置基準があったとしても、経営者が善意でやるかやらないかが重要だ。学校法人の形態を取っていけば善意でやる筈だ。それ以外の経営主体であれば善意であると認めないという非常に主観的な基準で規制しておられる。これは厚生労働省のようにきちっとした設置基準というか、行為基準が満されればあとはできるだけ競争に任せて事業者間の競争が活発になることによって、多様な経営主体か入ることによって、いいサービスが提供できるという新しい規制の考え方に変えるべきではないかということであります。
 そういう厚生労働省的な新しい規制の仕方というのが文科省はなぜ取れないかという、これは最後の質問でございます。

○玉井総括審議官 まず、地方でやれているんだから、国もという御指摘がございました。私どもは国もできるだけ一体的運営ができるようにさまざまな工夫を今、進めているわけでございまして、更に地方は地域の実態に応じてさまざまな試みがなされているのだという認識でございます。
 そこで、国の場合でございますけれども、これは前々から申し上げているとおりそれぞれの性格の違いはある。あるけれども、現実のニーズに応じてできるだけそこが一体的な運営ができるような工夫を進めていくということで私どもは今進めているのだということでございます。
 文部科学省が一方的に決めるのかということでございますけれども、それはまさしくそれぞれのニーズに応じながらそれぞれ立法と行政の中でそれぞれの政策を実現しているわけでございます。教育という面があることも事実でございます。現に諸外国と比べていただければ、幼児教育というところは注目をされておりますし、非常に重要になってきているわけでございます。したがって、教育、保育というそれぞれの面はあるだろう。ただ、両方の面のニーズに応えるというのも必要になってきているので先ほど申したところを言っているわけでございまして、全くニーズと関係なくやっているつもりではございません。それゆえに幼稚園の預かり保育という機能の強化を図っているのもそういう政策の表れだということでございます。
 それから、設置主体については、これまた基本論の話になってしまうわけでございますけれども、私どもはやはり教育の公共性、安定性、継続性、これは勿論質の水準担保という意味でございますが、それは設置基準等の行為規制と合わせて、設置主体のところもそれなりの規制はあるんだろう。それによって水準は担保されるという考え方を持っているわけでございまして、そこをどのように今のいろんなニーズに応じて考えていくかというとは今後必要になってくる。それゆえにまず特区というところでの地域ニーズを生かした仕組みの中での試みについては、まずはやってみようと思っているわけでございまして、その状況を見ながら検討させていただきたいということを前々から申し上げているわけでございます。

○八代委員 これは補足でお聞きしたいんですが、今のお話だと、教育には公共性があるけれども、保育には公共性がないというおっしゃり方だと理解するのですが、つまり幼稚園には公共性があるから、設置基準だけではなくて、経営主体の規制も必要だと。そうであれば、同じ政府の厚生労働省がやっている保育については、同じ程度の公共性があるのに、向こうは設置主体への規制は別に要らない。設置基準があればいいと。それは同じ政府でありながら、同じようなサービスを提供している幼稚園と保育所との間で、文科省だけが過度な規制をしているといえないでしょうか。

○玉井総括審議官 私ども、1つの言葉として公共性、安定性、継続性を使っているものですから、今、申し上げているわけですけれども、公共性と言いますか、公益性という意味で言えば、厚労省の取っている政策がそれがあるないなどと申し上げているつもりはないわけであります。ただ、教育の機能というのは、どうしても子どもたちの全人格的な育成というところに着目をしております。それはもともとの歴史から見て、私教育から公の教育というふうに切り替えてきているわけでありまして、それは勿論、親であり、地域の方々の教育に対する関心事から出発するところがありますけれども、併せて社会人として国家の形成者としての一定の力を育成していくというところがあるわけでございます。それを私ども公共性、安定性、継続性という言葉で表しているわけでございます。

○宮内主査 福井さんも御一緒にワーキンググループでおやりいただきましたので、どうぞ。

○福井専門委員 今の公共性の議論に関して御質問ですけれども、教育だから、公の関与が大変必要になるという御意見と言いますか、知見の御披露がありましたが、例えば義務かどうかという観点で見れば、小中学校と違って幼稚園は義務教育ではないはずですから、だからこそ保育所と幼稚園の選択肢が並存しているわけですね。言わば、行っても行かなくてもいい組織について、保育所と異なる設置主体の経営形態に関する規律が必要であるということの論拠は何なんでしょうか。
 要するに、保育所と幼稚園というのは選択的なものなのですよ。代替的なサービスなわけです。どっちを選んでも国民としては構わないというのが今の制度の位置づけなわけです。
 ところが、保育所は学校法人なり保育所法人といった特殊な法人要件は何もない。幼稚園の方は学校法人でないといけないとおっしゃる。あるいは公立でないといけないとおっしゃるわけです。組織の形態について、代替的選択肢でありながら、違う規律を講じなければいけない論拠、合理性を教えていただきたいと思うのです。

○玉井総括審議官 先ほど私教育の歴史を若干申し上げてしまったのですけれども、要は、社会全体として、また、国家全体としての関心事の中での公の性質というのが求められていることは御理解いただけるのだろうと思います。その中で義務というものと、非義務とあるわけでございますけれども、同時に非義務のところも幼児教育の部分、就学前教育の部分、それから高校の部分、大学の部分、ある体系の下に、我が国で言いますと、学校教育法1条に定める学校体系になります。その体系の中での公の性質、公共性を担保するというのが基本にあるものでございますから、今、単に横の比較とおっしゃいましたが、私どもは1つの体系の中での公共性ということを申し上げているわけであります。

○福井専門委員 その体系というのは、縦の体系ですね。小中高に連なるなるものだということでおっしゃっているのだと思うんですが、私が申し上げているのは切り口が違うわけでして、同じ幼児期、小学校就学前の子どもにとっては、ずっと家庭にいるか幼稚園に行くか保育所に行くかという3つの選択肢があるわけです。どれも国民には容認されている選択肢です。容認されているし、更にもって言えば八代委員からも指摘があったように、保育所か幼稚園かというのは、どっちでもいいという親が圧倒的に多いわけです。どちらでもいいから預かって欲しい、よい環境で預かってほしいニーズを持っている国民か圧倒的に多いわけです。
 実際上やっている内容だって大差ないというのは周知の事実ですが、保育所については、特殊な法人要件、組織形態がなくてもいいのに、幼稚園はなぜ学校法人という形態で縛らないといけないのか。言い換えれば、先ほど御指摘がありましたように、なぜ行為規制ではだめなのかという具体的な論拠を知りたいのです。

○八代委員 そのお答えのなかで、仮に幼稚園は学校教育法の対象だからというのはトートロジーですから、なぜ幼稚園が学校教育法の中に入っていなければいけないのかという質問だということです。

○義本文部科学省初等中等教育局幼児教育課長 幼児教育課長でございますけれども、先ほど申しましたように、幼稚園も保育所も結局、長く預かっていただければ一緒だという御議論もございますけれども、親にとってみれば、そういう代替性を感じる方もいらっしゃいますし、また、逆にしっかりとした全人格的な教育を受けさせたいという親がございまして、そういう形で幼稚園を選択されるという方もいらっしゃるわけでございます。幼稚園では、小中高に連なる学校教育体系の中の一環として適切な環境を構成し、集団的な活動を通じてしっかり子どもたちに対する教育をしていくというものであり、先ほど玉井総括審議官が申し上げましたように、サービスの種類としては異なると思っております。

○福井専門委員 そうすると、親の選択で学校法人形態の幼稚園を選択するニーズがあるからそれに応えないといけないという意味ですか。

○義本幼児教育課長 ニーズの選択という視点と、学校という制度自身が教育として成り立つというのはまた別の視点でございまして、先ほど申し上げたように、教育の体系の中で全人格的な教育をやっていくということにおいてはほかの小中学校と異なるところはないと申し上げているわけでございます。

○福井専門委員 保育園と比べての違いをお聞きしたいのです。要するに、親が保育所に預けたいと思うか、学校法人たる幼稚園に預けたいと思うか、あるいは自宅で手元に置くかという、いろんな選択肢があり、親は多様なニーズを持っているわけです。その選び方のメニューについて、組織形態で言えば、預けたいのであれば保育所か、あるいは学校法人なり公立であるところの幼稚園の2つしかないという、言わば選択肢の縛りになっているところを問題にしているんです。なぜその中間的な、あるいは第3、第4の選択肢を選ばせないとしなければいけないのかという具体的な論拠を教えてください。

○義本幼児教育課長 先ほど地方の事例で申し上げましたように、制度的にも現状においては、例えば資料2ページの年齢区分型という形にございますように、幼稚園という形で、長時間の預かり保育という形でやりまして、これを保育に欠けるか欠けないにかかわらず、長時間預かりながら、集団的な活動をやるということで教育の機能も果たしているということでございますので、選択という観点から見れば、こういう形で十分ニーズとして対応できていると考えております。

○福井専門委員 これが学校法人でないといけないということの論拠は何ですか。長時間保育をやっているからいいじゃないかというのではなくて、長時間保育で別の形態の形、あるいは短時間保育で別の形態の形をなぜ禁止するのかということをお聞きしたいのです。

○義本幼児教育課長 先ほど申し上げたように、設置主体の問題と、親の方々自身がいろいろなサービスの中で選択するかという問題は、別の次元の問題でございます。私ども設置主体として考えました場合、それは学校としての制度全体の中で考える話だというふうに考えております。

○福井専門委員 そういうそもそも論ではなくて、具体的な弊害を教えていただけませんか。学校法人でない幼稚園に子どもを預けるとどういう弊害が具体的に発生すると想定しますか。

○玉井総括審議官 また、そもそも論に戻って恐縮なんでございますが、私どもは幼稚園を含めまして、学校というものは、やはり基本的にはノン・プロフィットを前提としながら、安定的、継続的に教育を行うというところが学校の基本的なスタイルだろうと思っております。諸外国を見てもそういうのが基本になっている。そういう中で、では、学校がより柔軟な形にならないのか。それはそのとおりだと思いますので、学校自体が柔軟なさまざまな試みができるような仕組みが必要だろうと思います。だからと言って、設置者を変えねばできないのかと言われると、必ずしもそうではないんじゃないか。むしろ、先ほど申した、私教育から公の教育という世界に移ってきたときの基本的な考え方は大切ではないかと思っているわけです。

○福井専門委員 設置者を変えてはなぜいけなかというのが私どもの質問です。

○玉井総括審議官 学校としての、今申し上げたような水準を担保するために、勿論、行為規制としての設置基準はありますけれども、同時に私立でございますと、学校法人という仕組みの中でそこに教育と経営がきちんとバランスが取れた形になるとか、あるいはそこで出た収益については、これは学校の中できちんとまた使われるという公共性、安定性、継続性を前提とした仕組みがつくられているわけでございます。そちらの方がふさわしいのではないかということを前々から申し上げているわけでございます。

○福井専門委員 例えば実際上幼児教育を標榜している保育園も随分日本に出てきています。アメリカでもあります。そういうところでは、教育と標榜して、実際上幼稚園と同じような、あるいはもっと高度なことをやっているところはいっぱいあるわけですから、そういったところの教育、要するに、保育園でやっている教育は学校法人形態でないから、何か具体的な弊害が発生しているという御認識ですか。

○玉井総括審議官 個々具体のところまで私どもが把握をしているわけではございませんけれども、先ほど申し上げたところが公教育としての必要性ではないかと思います。実態としてやっているから、もうそれでいいんだと、本当におっしゃるのであろうか。制度としての仕組みがあるから担保できるのではないか。それらはちょっと議論は別ではないかと思います。

○福井専門委員 お聞きしたいのは、具体的な弊害なのです。具体的な弊害で把握されているものは現時点ではないんですか。

○玉井総括審議官 言わば幼児教育施設という教育以外の民間でいろいろ行われている場合という意味でございましょうか。

○福井専門委員 幼児教育を学校法人、あるいは公立形態のいずれにも属さない経営形態で行うことについて何か具体的な弊害で想定しているものがあれば教えてほしいのです。

○玉井総括審議官 個々具体の実情まで把握しているわけではありませんけれども、理念的に申し上げますと、やはり全体的なバランスの取れたカリキュラムの中で子どもの全人的な発達を図ってほしいし、そして、そこには経営と教育とのバランスが必要です。そういう目で見ますと、今申し上げたような全く民間で行われているところについては、そこについての懸念はやはりある。ただし、具体的にどこそこの何が問題だというところまで把握しているわけではない。

○福井専門委員 もし弊害があるというのであれば、容易にわかると思いますので、一度お調べいただいてはどうかと思いますが。

○義本幼児教育課長 実態云々の話もございますけれども、基本的には幼稚園については、学習指導要領に相当します幼稚園教育要領に基づいて教育をしていることでございます。先ほど玉井総括審議官が申しましたように、集団的な活動の中で遊びを中心としまして、子どもたちの社会性、知的な発達を図っていくという教育をしております。

○福井専門委員 指導要領は行為規制ですね。指導要領は学校法人と公立でないと守らせることはできないのですか。

○義本幼児教育課長 行為規制というか、カリキュラム、内容について定めている基準でございまして……。

○福井専門委員 だから、カリキュラムの基準であれば、経営形態と関係なく、これを守れば足りるはずです。

○義本幼児教育課長 失礼しました。幼児教育施設については、基本的には実態としては幾つか問題がございますけれども、例えば先ほど玉井総括審議官が申し上げましたように、経営的な観点から子どもたちを集めるために、ある知的な能力に偏ったような早期教育をしたりとか、そういうふうな対応をしているところも、やや弊害を聞くことはございます。ただ、現状においては、特に私ども把握しておりません。

○福井専門委員 では、今お聞きになったという例、後ほどでもいいのですけれども、教えていただけませんでしょうか。一応口頭で回答いただかないと記録が残らないものですから。

○義本幼児教育課長 状況を精査いたしまして、必要であれば資料を出させていただきます。

○福井専門委員 もう一点質問ですが、預かり保育の御説明、今も話題に出ましたけれども、この幼稚園の預かり保育というのは、昼食は通常お弁当が一般的だと理解してよろしいのでしょうか。

○義本幼児教育課長 幼稚園によりましていろいろでございまして、現状の幼稚園でも給食を実施しているところもございます。ですから、お弁当でやっているところもございますし、また、調理施設を持って給食として提供しているところもございます。それは園によって実態は異なります。

○福井専門委員 その点について、給食でも弁当でも、教育効果なり幼稚園の存在目的に関して何か支障があったり、なかったりとか、よい点があったり、悪い点があったりという違いはないという御理解ですか。

○義本幼児教育課長 それぞれの幼稚園の教育理念なりによってお弁当にするか、あるいは給食にするかということを判断して決めているところでございまして、私どもの立場としてどちらがいいか悪いかということはございません。

○福井専門委員 そうしますと、給食の場合ですけれども、幼稚園で実際に同一の敷地内に調理室がある例というのはどれくらいあるか御存じですか。
 後ほどでも結構です。多いのか、少ないのか、あるいはどこかから運んでくるものが多いのかということです。

○義本幼児教育課長 同一敷地内ということでその資料は把握しておりませんけれども、例えば共同調理場でセンターでやる場合とか、単独に幼稚園が一体的にやる場合、いろいろございまして、その点についても資料を精査させていただきたいと思います。

○福井専門委員 調理室が同一敷地内にないと、幼児期の子どもは大人になるときの人格形成に問題があるという考え方があるのですけれども、そういう見解についてはどう思われますか。

○玉井総括審議官 多分、もう一つの後のことをお考えのお話だろうと思いますけれども、今、私どもは幼稚園の話をしておりますので、それについてどうこうということは。

○福井専門委員 幼稚園の場合です。幼稚園の場合に調理室があるということは何か意味があるのかどうか。

○玉井総括審議官 給食の一般論を申し上げますと、給食というものの考え方というのは、今の食生活の大切さ、特に今のような家庭と言いますか、働く家庭など、いろいろありますね。そういう中で見ると、今のニーズから見ると、食の重要性というのは非常に指摘されていますし、私どももそれは大変大切になってきていると思います。そういう目で食の教育というものは私ども一般的には必要だと思っております。

○福井専門委員 幼稚園で具体的にお弁当持参の幼稚園が多いと私の調査では認識しているのですが、そういう幼稚園を出て大人になった人で、給食施設がなかったために何か人格的な障害が出たとかいう具体的な例なり統計データをもし、承知でしたら教えてほしいのですけれども。

○義本幼児教育課長 そういう観点から調査してございませんので、統計データはございません。ただ、幼稚園の給食の実施状況でございますけれども、いわゆる完全給食という形でやっていますのが大体平成13年5月現在の調査でございますけれども、36.9%、幼児数にしまして、42%程度でございます。それはやり方については、月曜日から金曜日までやるところもございますし、あるいは週何回かと、いろいろやり方はございます。

○福井専門委員 食事の提供形態について、今後何らかの新たな別の考え方を指導される予定はありますか。

○福井専門委員 経営形態の観点から指導というのは今までしておりませんし、更にそれに加えて指導を変更することはございません。

○福井専門委員 わかりました。

○宮内主査 あと御意見ございましたら、佐々木さん、どうぞ。

○佐々木委員 済みません。短く1つだけなんですけれども、今まで厚生労働省と文科省で歴史も違うし、目的も違うということでずっと平行線で来ているように思うんですが、今日のお話や説明を聞いていると、かなり実態としては連携、私たちは連携では不十分だと思っておりますが、連携とか合同の施設とかという取り組みをニーズがあるからされてきているというお答えに聞こえました。ということは、少なくとも性格の違いが今まであるとお考えだったけれども、今日現在の社会的なニーズということからすると、今までと全く同じことをやり通すのでは無理が出てきている。あるいはうまくいかないので、多様性を持って今実験を始めているという、今までと全く同じで変化がないのではいけないのだということはお気づきであるというふうに認識してよろしいですか。

○玉井総括審議官 御案内のとおり、もともと出発点も違い、制度の仕組みも違っていたものでございますけれども、今日の社会状況の中で多様なニーズが生まれている。したがって、そういうニーズに応える方向は必要だろうという基本的な認識の下に、それぞれの違いもあるものですから、どこまで一体的運営ができるかという工夫を続けていますし、更にそれは検討させていただきたい。

○佐々木委員 そうすると、今後、更にニーズや社会状況を踏まえた形の変化があり得るということですね。

○玉井総括審議官 現に今日は事例集をつくったものをお配りしましたように、まさに私どもは全国でさまざまな取り組みをなさることはいいことだ、必要なことだと思っておりますので、その状況をまたよく見させていただきたいと思っております。

○宮内主査 安居さん、それから稲葉さん。

○安居委員 今、ずっとお話を伺っていると、結局、ニーズがいろいろ変わってきて、それで2つのものをできるだけ一緒にやろうかという話ですけれども、基本的にはそういうことだったら2つのものを残したまま共同でやるということは国民経済的にもものすごくマイナスだと思うのです。当然コストは高くつきますね。だから、そういう点から考えると、監督官庁が違うからそうなのだということなのだろうと思うのですけれども、例えば本当に全部文科省の所管になったら、こういう必要はないんじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○玉井総括審議官 どちらの所管ということではなくて、福祉と教育の基本的な違いはあるのだろうと思っております。したがって、なお教育を望まれる方もいらっしゃいますし、まさに保育に欠ける子どもたちの保育を望まれる方もいらっしゃる。両方の機能が欲しいとおっしゃる方々もいらっしゃる。そういう多様なニーズにどう応えていくかということではないかと思っております。
 したがって、先ほど申した取り組みなどもまさに地域で生まれてきているんだろうと思っております。

○安居委員 結局、今おっしゃっているのは、ほとんどが幼稚園の教育と保育の部分を一緒にして、同じように教育したり、保育したりしていこうという試みですね。今のお話はちょっとおかしいのではないでしょうか。

○玉井総括審議官 別に縦割ということではないのですけれども、やはり福祉政策としての保育という面があることも事実ですし、また、教育政策としての面もございます。そういった面と、両方の機能というものをどのように合わしていくのかということだろうと思っているものですから、どちらか一方ということではいかがであろうかと考えて御説明をしたわけであります。ただ、いろいろと世の中大きく変化する中でございますから、私どもとしてはできるだけ物事は柔軟に考えなければならないし、まさしくこの場でずっと御指摘を受けていますように、地域のニーズをまず考えるべきではないかという御指摘は十分受け止めさせていただいているところでございます。

○稲葉専門委員 これまでの議論は、すべて制度体系のお話と、現場のニーズとのすれ違いのままで来ているわけです。御説明を聞くと、とにかくニーズ自体が福祉と教育と違うから別々にやらなければならないということのようです。しかし、そのようにニーズを細分化するなら、例えば教育の中身だって知育と体育は違うのだから、徳育も違うのだから、別々の制度でやらなければならないというようなことになりませんか。
 もし、別々に受け持つ官庁ができていたらきっとそうなっていたかもしれなませんね。私の質問は、この基本的な考え方についてです。もともと教育と保育にはそれぞれのニーズがあった。確かに50年くらい前はそうですね。それを両方同時に満たして欲しいニーズが高まってきたのが大体30〜40年前からじゃないですか。そのころからこの問題が議論されているわけです。
 幼保一元化の話は、今、高まってきたというより、先ほどから多様化とおっしゃっているのだけれども、同時に両方満たして欲しいというニーズがかなりの量になっているのではないかと思うんです。特に少子化が進んでおりまして、小規模な市町村ではそもそも子どもが少ないですから、集団で面倒みようと思ったら、これは2つに分けられないですね。そういう点から、現実が先行している話になっていると思うのです。
 では、このニーズというものをどういうふうにとらえているのか。それぞれ別のニーズがあるという方と、同時にやってほしい方と、それがどのくらいの割合でいるかということを何か把握されていらっしゃいますか。経年的な推移はどうなっているか。その辺、もし資料があったらお示しいただきたいと思います。

○義本幼児教育課長 代表的な例としてこの2つを挙げておりますけれども、保護者によってみればしっかり教育を家庭で受けさせながら幼稚園に通わせたいという方もいらっしゃいますし、逆に早朝から夜間までしっかり預かってほしい、多様なものがございますので、ここは代表例でございますが、それがどの程度違いがあるのかということについて調査をしたことはございませんので、今としては実態を把握しておりません。

○稲葉委員 これだけ大きな問題で、もう何十年も議論しているわけですから、個別の事例ではなくて、そこのところは定量的にしっかりと把握しないと、こういう議論はできない。ニーズが高まってきたという適当な表現じゃ困るのですよ。今の現場のニーズとどう違うか。要するに、現場のニーズにどう対応しているかという、そこのところを適切に調査していただきたいと思います。

○宮内主査 まだいろいろ御意見もございますが、時間になってしまいましたが、玉井さんの方から、最後に何かコメントがございましたら、手短に全体につきましておっしゃってください。

○玉井総括審議官 ニーズの把握については、更にいろいろと努力をしたいと思っておりますが、私ども幼稚園でも預かり保育が増えてきているのは、まさしくそのニーズの1つの表れだろうと思っておりますし、また、保育所の方で幼児教育ということを言われていることもまた一つのニーズというふうに理解しております。

○宮内主査 法律体制もございましょうけれども、設置主体につきまして、非常に堅いお考えをお持ちなのではなかろうかという印象も受けたわけでございますけれども、本件につきましては、引き続き御議論させていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 今日は玉井総括審議官始め、皆様方御多用のところおいでいただきまして、大変ありがとうございました。

 (文部科学省関係者退室)


内閣府 総合規制改革会議