第5回住宅・土地・公共工事・環境WG 議事概要

1. 日時

平成15年10月14日(火) 13:00〜15:30

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. テーマ
1 法務省ヒアリング

○ 不動産競売における最低売却価額制度等について

2 国土交通省ヒアリング

○ 日影規制について

○ 通勤鉄道における時間差料金制の導入について

4. 出席者
(法務省)

民事局 小野瀬厚参事官、民事局付一場康宏

(国土交通省)
<日影規制>
住宅局

市街地建築課 高井憲司課長、井上勝徳高度利用調整官、木下一也企画専門官、松原英憲課長補佐

住宅政策課 和田信貴企画専門官

<通勤鉄道における時間差料金制の導入について>
鉄道局

業務課 高田順一課長、長谷川修旅客輸送サービス対策室長、加藤進課長補佐

(委員、専門委員)

八田達夫主査、森稔委員、福井秀夫専門委員

(事務局)

内閣府 福井和夫審議官、宮川正室長 他


議事概要

【不動産競売における最低売却価額制度等について】

(法務省関係者入室)

○八田主査 それでは、第5回住宅・土地・公共事業・環境ワーキンググループを始めたいと思います。本日はお忙しいところ皆さんご出席していただきましてどうもありがとうございました。
 最初の議題は、法務省ヒアリングで、「不動産競売における最低売却価格制度等について」でございます。これについての法務省の現在の状況のご説明をお願いいたします。

○法務省民事局小野瀬参事官 法務省民事局の参事官の小野瀬でございます。
 民事執行法の改正につきましての現在の状況についてご説明申し上げたいと思います。
 現在、民事執行法の改正につきましては、法制審議会の民事訴訟・民事執行法部会におきまして、今年の4月から審議をしているところでございます。この部会では6回の審議を経まして、去る9月12日の部会にて中間試案、民事訴訟法及び民事執行法の改正に関する要綱中間試案を決定いたしました。これにつきまして、9月19日にこの中間試案をパブリックコメントに付す手続をとっております。意見募集の締切りでございますけれども、10月20日ということになっております。
 中間試案、それからパブリックコメントに際しまして、事務当局の方でつけました補足説明が本日席上にお配りいたしました資料でございます。
 今回のこの中間試案でございますけれども、部会では最低売却価額制度につきまして最低売却価額制度を見直す必要があるのかどうか、評価が適正な市場価格を反映していない点、これが問題ではないかといったような議論もされておりました。また、仮に最低売却価額制度を見直すとした場合には、どのような制度というものが考えられるのか、債権者、所有者の利益をどのように保護するのかといったような点、こういった点が議論されてきたわけでございます。
 その結果、この中間試案では1つの結論に絞らないで、3つの案を示しまして、意見募集をするということになったわけでございます。
 まず、A案でございますが、これは最低売却価額制度につきましては現行制度のとおりとするという案でございまして、最低売却価額制度の機能というものを維持する。むしろ評価が適正な市場価格を反映していない点が問題であるということで、資料で申し上げますと2ページの後注でございますが、「最低売却価額が適正な市場価格を反映していない場合があるので評価制度の在り方を見直すべきであるとの指摘に対する方策については、なお検討する」と、こういう検討の方向をすべきであるというのがA案でございます。
 なお、この後注はA案、B案、C案、いずれの考え方に対してもつけ加わる考え方でございます。
 B案でございますけれども、B案は基本的には最低売却価額を定めることについて利害関係を有する者が同意をするのであれば、そういう者全員が同意をするのであれば、最低売却価額に満たない買受けの申出も認めてはどうかという案でございます。
 この場合に、所有者の保護をどうするのかという点が問題となりますけれども、このB案では最低売却価額と落札価額との差額分の債権は消滅するものとするという形で所有者を保護しようという案でございます。
 それから、C案でございますが、最低売却価額を参考価額というようにいたしまして、原則としてこれに満たない買受けの申出も認めるものとするという案でございます。ただし、第一順位の抵当権者の選択によって、この参考価額にいわば最低売却価額の機能を持たせると、こういうようなこともできるというのがC案でございます。
 その他の債権者あるいは債務者の利益保護の方策としては、一定の期間、これらの者から落札価額を超える価格での買受けの申出を認めるというような方策というものがこのC案のウに書かれているものでございます。
 なお、この資料の2ページの(3)にありますとおり、内覧制度につきましても法制審議会で議論がされております。内覧制度につきましては、差押債権者等に対抗することができる占有者についても内覧の受忍義務を課すべきであるといったような意見があることを部会で紹介しておりますけれども、これにつきましては、まだ去る通常国会で成立いたしました担保執行法の改正法の施行前でありまして、この制度の具体的な運用に当たりましては、談合ですとか、あるいは入札の妨害に悪用されないのか、あるいは占有者のプライバシーの保護にどういったような配慮をするのかといったように、運用に当たってはさまざまな検討すべき点があるのではないか、そうしますと、改正法の施行後の状況を踏まえて、この点についてはやはり議論すべきではないかといったような意見が多く出されておりました。
 そこで、今回の中間試案では、先に述べましたような意見があるということにつきましてどのように考えるかといった形で意見の募集をするというふうにされたわけでございます。
 法制審議会の民事訴訟・民事執行法部会におきましては、今回のこのパブリックコメントの結果を踏まえまして、さらに検討を続ける予定でございます。来年の初めには要綱案をとりまとめるという予定で審議が進められるものと思っております。
 以上でございます。

○八田主査 どうもありがとうございました。
 私のご質問は、A案、B案、C案とあるという中で、C案の場合には参考価格が定められるわけですけれども、これは参考価格であって最低評価額ではないわけですから、これを最低価格として利用してもいいし、実際には活用しなくてそれ以下の価格でやってもいい。当事者に任せるという形でございますね。ですから、要するに最低売却価格は、強行規定ではないわけです。C案に問題はないと思います。
 B案の場合には、もしアで同意があるときには差額分の債権は消滅するというわけですから、債権者にとっては非常に大きなロスが生じる。実質的にノンリコースローンに変えてしまうということなのでしょうが、もともとお金貸したときにはノンリコースローンだとは思っていないわけですから、貸手にとっては、この時点で非常に大きなロスが生じる。最低売却価格を受け入れない同意をしたならば、そういう債権者にとっては差額分の権利を失ってしまわなければいけないという非常に大きな損失がありますから、随分これは受け入れにくくなるのではないかと思うのですね。実質的には、そういう権利の消滅を受け入れてまで同意するという場合があるのだろうかという気がするのですが、これについて、どのようにお考えでしょうか。

○小野瀬参事官 ご質問は、B案のような考え方をとった場合に、現実にどういう場合に債権者が同意するということが考えられるのかということでしょうか。

○八田主査 そうです。

○小野瀬参事官 補足説明の方でございますが、例えば7ページのところのB案の3行目でございますけれども、通常の手続では売却が困難であるような競売不動産の売却を促進するというようなことが、このB案では1つの例として考えられているわけでございます。したがいまして、1つの例としては、なかなか通常の手続では売れない。とにかく、この担保不動産からできるだけの回収はすると。例えばほかに回収するような財産はないと。とにかくこの手続で売却を進めて、できる限りの回収がしたい、こういったような場合というのが1つの例としては考えられるのではないかなというふうには思っております。

○八田主査 そうすると、限られたものになるのでしょうね。実際問題、おそらく、そういう場合には、最低売却価格自体が非常に低く設定されるわけでしょう。

○小野瀬参事官 そうでございますね。そこは最低売却価額といいますものがどういう形で適正な形で評価されるかどうかということによりますけれども、そういうように適正な市場価格といいますものを反映すれば低い価格で設定されることになるのではないかなとは思います。

○福井専門委員 今のB案の補足説明のご説明なのですが、要するに債権者等が一種の最低売却価格でなくて参考価格にしたいというそちらの選択肢を選ぶ場合というのは、通常の手続で売却が困難という抽象論でいうとよくわからないのですが、原理的に詰めると、その鑑定評価、裁判所が選定した評価人がした評価、その価格では落ちないと思っている場合に、それは高すぎるからそれより入札額が下回った場合でも落とせるようにしてほしいという趣旨で参考価格を選ぶわけです。だから、もちろん中には崖地だとか旗竿型だとか、地方で全くニーズがないリゾートとかいろいろなケースがあり得るでしょうけれども、それ以外の場合でも、普通の不動産で非常に市場性がある不動産でも落ちない場合、評価に起因して落ちない場合あるわけです。そこについて、実質的にこういう案をとらせることが妥当するという根拠は何ですか。

○小野瀬参事官 今回のこの制度の方はあくまでも債権者の選択でございます。ですから、今、妥当するとおっしゃいましたのは、何か、そういうことに通常のものに適用されると不都合が生じるという、そういう……

○福井専門委員 そういうことはないですか、ということです。というのは、さっき主査からもお話があったように、債権者にとってみれば参考価格が選べるということは、落ちやすくなるという点でメリットだけれども、反面、実際に幾らで売れるかわからない価格とあらかじめ鑑定士がいわば勝手につけた値段との間の差額が自分の債権から消滅するというリスクも強制的にパッケージで押しつけるものなのです。メリットとデメリット両方あるわけです。デメリットの方を債権者に強制することを前提としてしか参考価格を選ばせないことの合理性が、通常の市場性があるもので、要は評価が高すぎるのだけが問題だというケースについてあるのでしょうかという質問です。

○小野瀬参事官 ここはあくまでも債権者の選択に委ねておりますので、債権者の方がこういうことを選択することが合理的だと判断するときに選択するわけです。こういう選択制ですので、これ自体で債権者の権利を侵害するということにはならないと思います。
 では、どうしてこういう債権の消滅という制度を設けているのかということ、それが合理性があるのかどうかということにつながってくるのかなというふうにも思うわけですけれども。ここはあくまでも、補足説明にも書いてありますし、試案のところにも書いてありますとおり、所有者の利益を保護するというものでございます。
 したがって、その所有者の利益を保護しつつ、制度を考えた場合に、こういったようなB案という考え方が出てくるものだというふうに理解しております。

○福井専門委員 前段の方のご説明の債権者が選べるのだからといっても、選ぶ状態がニュートラルではないわけです。今までだったら、いわば最低売却価格というのだけがあって、落ちなければやり直しになるだけだ。あるいは、アメリカの多くの州では最低売却価格なんかなくて、要するに実質的に札が入った値段でとにかく債権回収に充てるというのが今までの日本の制度なり他国でとられている例です。
 そうすると、今度のB案でもしいくとすると、債権者に有利な選択をさせようとするときには、必ず不利な要素を抱き合わせでしか選択させないということを意味するわけです。そこの意味は、要するにちゃんと市場はあるのだが、評価がとにかく市場価格より高いのだということです。評価額より高すぎるから、その価格では落ちないというときには、まさに最低売却価格が典型的に問題になっている場合であり、市場性がないというのは特殊な事例ですから、そういう場合は最低売却価格があろうがなかろうがなかなか落ちにくい。普通落ち得るものでも評価のために落ちにくいというケースについては、端的に評価が制約になっているわけです。それを制約にならないようにしてほしいというニーズを実現しようとしたら、必ず不利益がくっついてくるということの意味がよくわからないのです。

○小野瀬参事官 まず、最低売却価額がおかしいということになった場合には、これに対しましては、執行異議の制度がございますので、それ自体について争うことはできるわけでございます。

○福井専門委員 いや、それは解釈論なのです。今、ある制度を前提にして、さらにどう仕組むのが担保不動産の流動化なり市場活性化に資することになるかという立法政策の議論をしているわけですから、執行異議を起こさないと変わらないというのは、ある意味では、それ自体もハードルなわけですから、要するに選択制というのはハードルを乗り越えさせる便宜的な方法なのです。それはそれで意味があるということだと、かねてよりの私たちの提案の一部は実現しているという意味では、一見意味があるかのごとくです。だったら、何で今までの当方との議論にも全く出ていない、ノンリコースローンに限ってしか通常は想定されないような債務免除が必ずセット販売でついてくるのか、そこが理解に苦しむのです。

○小野瀬参事官 先ほども申し上げましたとおり、最低売却価額についての選択制を設けるといたしましても、やはり所有者の利益の保護を図るということが必要だというのが、これが法制審議会の議論でございます。現段階における議論でございます。

○福井専門委員 この場合に、市場価格よりも高い評価がなされているときの所有者の利益というのはどういう利益なのですか。

○小野瀬参事官 もちろん、最低売却価額自体がおかしければ、これは執行異議によって訂正することができるわけでございます。仮にそういうことがなくて、今、最低売却価額が定められているということになりますと、所有者としては最低売却価額で最低限売れると、これを下回る価格では売れないというところについて、所有者についての利益があるわけでございます。

○福井専門委員 その場合は、いいですか、評価自体が市場価格を上回っているということを前提にしてさっきから一貫して申し上げているのです。だとしたら、上回っている、しかも執行異議等で時間をかけてその価格の修正をお願いするには余りにも時間の浪費が大きいと判断する。今までそんなことで悠長にやっている人はほとんどいないわけですから、実際問題もっと簡単な方法でやりたいという人が多いからこういうニーズが出ているわけです。だとしたら、まさに一種の制約回避の手段として参考価格制が出てきたときに、しかも市場価格より高い評価額が前提になっているときに、その高い評価額と実際に落ちるであろう価格、恐らくこれは市場価格に近い価格です。その間の債権を消滅させるということの意味を説明できますか。

○小野瀬参事官 結局、執行異議で是正する、そういうことを省力化する、そういういわば債権者のメリットと、それから最低売却価額を下回る価格では売られないという、そういう所有者のメリット、これのバランス論だと思いますけれども。

○福井専門委員 そうではない。価格のことについて答えてください。要するに、市場価格より高い価格が評価額でついている場合の典型的なときの話です。どうしてそのときに一定額債務免除すると所有者の利益になるのですか。あるいは所有者の権利保護になるのですか。

○小野瀬参事官 それはやはり最低売却価額がおかしいということであれば、それは債権者の方がそれを争うべきだというふうに考えるわけでございます。

○福井専門委員 いや、争うのはいいのだけれども、要するに選んだ途端に、客観的な市場価格より高い価格を示したいわば評価なりその評価を義務づけていることのつけが全部債権者に回るということのどこに合理性があるのですか。

○小野瀬参事官 それは、手続の上ではそれが市場価格を適正に反映しているかどうかというのはその状態ではわからないと思います。やはりそれがおかしいのであれば、執行異議で争わせないと、その手続の上でそれが市場価格を上回っているということを前提に議論することはできないと思います。

○福井専門委員 市場価格を上回っているかどうかということの最終的な検証手段は、実際に落とされる価格が幾らかというのが出発点だというのが今回の見直しの大前提だったわけです。評価額自体を決め打ちしていて誰も責任取れないわけです。だから、おかしいというところが出発点だったのに、執行異議で本来決めるのが正しい価格だというのは、これ全く今回の改正の流れの前提をよく理解されていないご発言ではないですか。
 そもそもそうやって決め打ちにする制度にいろいろと歪みがあるから、もっと柔軟なものにしようという出発点です。

○小野瀬参事官 そういうのがわからない段階で最低売却価額というものを例えばなくしてしまって、それで売られてしまうといった場合に、本当にそれが、市場価格で売れるという、そういう確実性があるのかどうか。やはり手続的に1つ最低売却価額というものが決められていれば、それは手続的にそういう価格以下では売られないというそういうような所有者の利益というものを確保するのが相当ではないかというのが法制審議会の議論だと思います。

○福井専門委員 それがいかに市場価格より高い価格であったとしても、それを保護すべきなのですか。

○小野瀬参事官 手続の問題としては、執行異議によって争っていただくというのでよろしいのではないかというふうに思います。

○八田主査 それは、例えばC案のもとで選んでも大丈夫なのではないですか。要するに、その最低売却価格以外は嫌だというなら、それはそれでいいよと。それを信用するのだったらそれでいい、そうでなかったら、そのまま実質的に最低売却価格がないということにしてやりましょうと、それは選べると。

○小野瀬参事官 今、お話申し上げていますのは、所有者の利益、債務者の利益の保護をどうするかということを申し上げているのでございますけれども。B案の考え方と、それからC案のウの考え方とでは、所有者あるいは債務者の利益保護の実効性という点でいろいろと差がある。つまり、C案の場合ですと、こういう買受けの申出を認めるという案でございますけれども、そういうものについては、例えば競売されてしまった所有者の方はやはり買い戻しをするような資力というものは通常はないと。そういったところから所有者の保護の在り方として実効性があるとは言えないのではないかといったような意見も出ているところでございます。

○福井専門委員 それは前にも議論したことがあると思いますけれども、本当に市場価格があって、債務者が執行妨害者に協力するのをやめて、権利関係や占有をきれいにして任意取引をもちかければ、どこだって高い値で買い取るというのが普通の我々が把握している金融機関なり仲介御者の意見です。
 一体、そもそも執行妨害で評価が下がるというときに、その評価が下がることをについて、いわば導き手に債務者がならないで、執行妨害者がその辺をたむろしている、威嚇行為するというようなことがあり得るのですか。

○小野瀬参事官 それはあるというふうに考えております。

○福井専門委員 どういう場合ですか。

○小野瀬参事官 つまり、これ所有者の保護の必要性があるかどうかという、そういう議論だと思います。

○福井専門委員 債務者、所有者が何らかの借家契約なり占有の許諾を与えないでいて、所有者自身あるいは債務者自身がこんなところをお前に貸した覚えはないといって出て行ってくれと言っているなら別だけれども、所有者が何も言わないでいて、そこに怪しげな風体の人が蟄居したり占拠したりしていて、それが原因で評価が下がるというときに、所有者にとってこれがどういう役割を果たしていると思うのですか。何も協力しないでそういうことが起こると思いますか。

○小野瀬参事官 例えば具体的な例として挙げられておりますのは、やはり所有者が行方不明になってしまったと、こういうときに勝手に占有しているというケースもございます。また、競売不動産の隣の土地、隣地にいろいろ細工をして妨害するというようなこともあるというような指摘もございます。また、そういったようなケースでなくても、やはり所有者の方がいわば抵抗できない状態になっている、そういうものを反社会的勢力が利用するといったようなケースもございます。
 3番目のケースにつきましては、そういうものだから、そういう実情があるからといって、果たして所有者の保護の必要性がないとまで言えるかというと、そこはかなり疑問があるというふうに法制審議会の方の議論でも考えられております。

○福井専門委員 そういう場合のことを聞いているのではない。債務者、所有者が執行妨害を導き入れたという場合であっても、その債務者、所有者を保護すべきかということです。

○小野瀬参事官 具体的に、本当に積極的にそういったようなケースがありますれば、そこはいろいろな考え方があろうかと思います。

○福井専門委員 いなくなったというケースはもちろんあり得ますけれども、執行妨害の事件で典型的に問題とされているのは、まさに宮部みゆきさんの「理由」の世界です。債務者が協力するがゆえに占有者がそこにいるというケースがほとんど大半を占めているのです。例外的なことをおっしゃればいくらでもあるかもしれない。

○小野瀬参事官 それが大半であるということについては、ちょっと我々の事実認識と違うというふうに申し上げます。

○福井専門委員 統計はとられましたか。

○小野瀬参事官 統計はとっておりません。

○福井専門委員 では、わからないではないですか。

○小野瀬参事官 執行の実情に詳しい方々のお話を踏まえてということでございます。

○福井専門委員 遠くにいる場合とかも含めての場合でも、所有者が、では、どうしてその場合に自分の権利を守るために、そういう人たちに、あるいは占拠している人たちに占有を明け渡してくれとか、あるいは自分の不動産について正当な権利を行使しようとしないのですか。

○小野瀬参事官 それは恐らくそういう状況に追い込まれる所有者といいますのは、例えばもうリストラにあってしまって住宅ローンが払えない、あるいは中小企業の経営者で借金で首が回らないと、そういう状況に本当に切羽詰まって追い込められている、そういう人だと思います。

○福井専門委員 そういう人ならなおさら自分の大切ななけなしの一種の担保不動産にやくざが入ってきて無茶くちゃされたら一番困るのは彼だということになりませんか。

○小野瀬参事官 ただ、そういったような方に現実に反社会的勢力に対峙するといったような手続をとるというのはなかなか現実的には期待できないということであると思います。

○福井専門委員 だからこそ、いわば債権者やあるいは落札者の責任でも排除し得るような仕組みとしてこの参考価格制が出てきているわけです。議論が倒錯しているのです。お話をお聞きしていると。

○小野瀬参事官 今、申し上げましているのは、所有者、債務者の保護でございますので、債権者が同意したからといって、必ずしも所有者、債務者の保護につながるわけではないわけでございます。やはり、そういった立場に追い込まれた人たちの利益というものを保護する必要があるというのが法制審議会の議論でございます。

○福井専門委員 債権者にとっても基本的に担保物件をできるだけ高値で落札できる方がいいわけです。できるだけ債権回収がたくさのできる方がいいわけです。一体幾らで売れるべきかということは、今までの最低売却価格制度だって債権者は別に調節のしようがないわけです。基本的にはできるだけ高値で売れた方がいいというだけの利害です。どういう場合に衝突するのですか。

○小野瀬参事官 債権者としましては、例えば価格はある程度下がっても早期に売却されればいいということになりますと、できるだけ高く売ってほしいという所有者、債務者の利害とは必ずしも一致しないという場面が出てこようかと思います。

○福井専門委員 高く売ってほしいというのであれば、今、下がり局面、地価が下落局面だから、放っておいて、何度も何度も落札を繰り返したらもっと債権回収の額が少なくなるかもしれない。こういう場合に早く売ってほしいとすれば、当然後で落札させるよりも高く売れることを前提にしているのですから、本来の正当な債務者あるいは所有者と、この場合の債権者とで、全く同じ利害が成り立つのです。

○小野瀬参事官 その辺は程度論だと思います。時価の値下がりによる価格分の下落ということと、それから最低売却価額がなくなった場合の価格の下落分の可能性をどのように評価するのかということだと思います。

○福井専門委員 もちろんそうです。では、その場合に、もし認識が分かれたとします。だけれども、この場合の債権者と、それから債務者の読みの正確性、あるいは予測の成り立つ可能性ということや、あるいは高く売ることに対して、より切迫した利害を持っているのはどっちだと思いますか。

○小野瀬参事官 それは、所有者の利益を保護するということがこの最低売却価額の1つの大きな機能でございますので、やはりその所有者の利益は保護しなくちゃいけない。

○福井専門委員 そうではないですよ。問題をはぐらかさないでほしい。保護についての意見を聞いているのではなくて、この場合の債権者、要するにできるだけ高く売って自分の債権を回収したいという債権者と、自分の物件がもう売られてしまうと、満額で売れたってほとんどの債権回収されてしまって自分の手元にはさほど戻ってこないに決まっているという債務者と、どちらが高く売ることに切迫した利害を持つと推測するのが普通の推論でしょうかということです。

○小野瀬参事官 それはそれぞれが、それぞれ高く売りたいというふうに思っていると思いますので、やはりそれぞれの利益をそれぞれ独立に保護するべきだというふうに考えております。

○福井専門委員 意見が分かれた場合です。独立にといったって両立しないわけですから。今やるのがいいか、先にやるのかいいかで意見が分かれたときには、独立して両立しないわけです。

○小野瀬参事官 つまり、独立してということは、そうであれば両方が一致してそれを求めると。つまり、両方の利益を保護しなければいけないと。片方だけの利益を保護する、優先するというわけにはいかない。

○福井専門委員 衝突していることを前提にしているのが理解できないようですが、その場合に債務者は、さっきも言いましたように、典型的なケースでは占有者と結託していることが極めて多いのです。その結託している可能性によって、いわば落札不調が相次いでいることを何とかしようというのが出発点の制度改正論のときに、いや、両方の意見だといって、いわば結託している強い可能性がある人にのみ一方的に絶対的拒否権を与えるというその思考様式がわからないのです。倒錯していませんか。

○小野瀬参事官 そこは先ほど申し上げましたような事実認識の違いというものがございますし、やはりそういったような保護されるべき所有者がいる以上は、制度としてそういう所有者を保護するという最低売却価額の機能は維持すべきだという議論ではないかと思います。

○福井専門委員 債権者のいかなる利益を犯してもですか。

○小野瀬参事官 そこは所有者の利益を図る範囲内で考えるということだと思います。

○福井専門委員 全くそれは間違った認識だと思います。若干の事実についてお伺いしたいのですが、この種の制度、これと同じような制度はどこか諸外国なり、あるいは過去日本の事例でありますか。債務免除に関する同様のスキームです。

○小野瀬参事官 全く同じかどうかといいますのは、それは諸外国の制度というものを余り詳細にこちらも研究しているわけではございませんので、全く同じかどうかというのは私どもわかりません。ただ、アメリカの州などによりますと、6ページでございますけれども、例えば6ページの上から4行目の2でございます。「競売を実行しても落札価額が被担保債権額に満たなかった場合、所有者保護のため、担保権者が被担保債権額と落札価額との差額の全額を請求することは認めず、被担保債権額と担保不動産の適正価額との差額に限って請求することを認めるものとする制度を有しているところがある。」こういったような制度は思想的にはある意味では共通するものがあるのかなというふうには思っております。

○福井専門委員 これはノンリコースローンではないのですか。

○法務省一場民事局付 これはカリフォルニア州がこういう制度をとっているということでございますが、ノンリコースローンに限ったものではないという認識をしております。

○福井専門委員 リコースローンにこれが使われているという実態を把握していますか。

○一場民事局付 我々としては、具体的に調査したわけではありませんが、これはノンリコースローンに限ったものであるわけではなくて、一般的な制度としてこういうものを有する州があるというふうに聞いております。

○福井専門委員 我々の調査では、米国でノンリコースローンについてはここに示されているようなケースはというのはあるということは把握しています。しかし、専門家の誰に尋ねても、リコースローンでこういうスキームをとっているということは米国では想定できないと聞いているのです。それについて、何か反証できるものありますか。

○一場民事局付 現在のところはありません。

○福井専門委員 だったら、それを調べないで、これが実際にノンリコースローンしか使われていないわけではないとはいえない。すなわち担保不動産自体に債務を負わして担保価値を付与し、担保のことは担保に返させようというのがノンリコースローンです。それに使われているというならこれはよくわかります。なぜそれ以外のものに使われているかどうかわからないのに、こういう制度が妥当だと論証できるのですか。

○小野瀬参事官 ちょっと具体的にどういう利用といいますか、現実のケースについては先ほど説明したとおりですけれども、その制度としましては、この当該競売を実行した後の残った請求権の差額をどうするかという話でございますので、制度としては恐らくノンリコースローンのみならず対象になっているものではないかなというふうに思っております。
 いずれにしましても、このB案といいますものは、こういった形で制度を設ければ最低売却価額に満たない価格では売られないといったような所有者の利益の保護を図るにはこういう制度は1つのアイデアとしては合理性があるというふうに考えているものでございます。

○福井専門委員 まず、外国の話を詰めておきたいのです。もう1つの問題点は、これがリコースローンで使われているという実態をご存じない。それに加えて、この落札価格と被担保債権額との差額についての消滅をカリフォルニアの例でおっしゃっているわけでしょう。最低売却価格という人為的な評価額と実際の落札価格との差額の消滅という、そういう事例はどこかにあるのですか。

○小野瀬参事官 ここで被担保債権額と担保不動産の適正価額との差額に限って請求することを認めるということですので、結局、この競売によって担保不動産がいわば適正価額で売られたものと同じようにしてしまおうと、そういったような考え方が背景にあるのかなというふうに思います。

○福井専門委員 ここで言う適正価額はあらかじめ鑑定評価とって、その評価額以下では売らせないというところから出発した適正価格ではないでしょう。

○一場民事局付 それは事前に裁判所が判断した価格ではなく、事後に裁判所が判断した適正価額であるというように認識しております。

○福井専門委員 これとそういう意味で論点が違うのは、B案に出てくるような制度は、アメリカのカリフォルニア州の制度と全く違うのです。あらかじめ設定した一種の価格規制を外すときの要件として、いわば事後的にカリフォルニアでは裁判所が判断している。しかも、ノンリコースローンについて想定されているものをもってきて、いわば木に竹を継いで、異常な制度にされておられるという印象なのです。
 だから、所有者の保護それのみを連呼される、抽象論、一般論で連呼されるのは勝手ですけれども、もともとの出発点は債権者が十分に債権を回収できない、しかも、それ自体が担保金融を窒息させているのではないかというところから出発をしているときに、およそ債権者は無視して、債務者、所有者の保護しか見ない。そこがまず絶対的に制約になる考えの発想でこういう制度をつくられているとしたら、それはやはりかなり間違っていると思います。

○小野瀬参事官 そこは何度も申し上げているとおり、法制審議会の議論では所有者の保護が必要であるということを前提にした議論になっているということでございます。

○八田主査 別な観点から言いたいと思います。今までの最低売却価格制度自体がおかしいと当会議で主張してきた出発点は、要するに、「『客観的な価格』というものが『実際の価格』とは別に必ずあるはずだ」というのは間違いではないか、という疑問です。
 非常に稀に、需要供給曲線が一致して価格が決まるというものもありますが、大体はザラバ方式といって、誰か値段を言ってそれに飛びついていくという形で価格が決まります。商品市場でも株でもいつも価格は変わっているわけです。ましてや土地のように質が違うというものだと、タイミングが一日変わっても別な価格になっても全くおかしくない。
 そのときに、少なくとも「妥当な価格以下で売買されてはおかしいから妥当な価格があるはずだ」といって、それを想定して決めるというところにまず矛盾があるのではないかというのが、我々の根本的な出発点だと思うのです。
 むしろ人為的に介入すると望ましくない勢力がそれを利用して入札を不調に終わらせるように運動してみたりというような余計なことが起きる。だから、むしろ、価格というのは市場で決まるものなのだから、入札で決まったものを素直にとったらいいでしょう、それで、場合によってはこのC案のように、参考価格を利用したいという場合もあるのかもしれない。それはもう当事者に任せたらいいので、基本的には何らのペナルティーを関係者に与えることなく、入札で買った価格を市場の価格と見なすという選択肢を与えるというすっきりした仕組みでやったらどうでしょうかというのが根本的な考え方だと思うのです。

○小野瀬参事官 おそらく基本的な考え方として、本当にこの競売の不動産の価格というものを市場に委ねてそれでいいのかどうかという基本的な議論があろうかと思います。やはり競売市場というものが非常に多数の人が入り込んできて、しかもまた情報というものもきちんとしている、あるいはそういった執行妨害といったような要因もないというようなことで、本当に市場機能ということによってそういったものができるのかどうか。特にこれは、通常の相対売買ですと当然需要と供給とのバランスによるわけですけれども、こちらの方は所有者の方は強制的に売られてしまうということで、いわば買手だけの市場だということになっているわけでございます。
 やはり基本的な思想として、特に今の執行妨害といったような現状などを考えますと、ある程度所有者の保護といいますか、あるいは債権者の保護もそうでございますけれども、そういったような保護というものを国が制度としてやる必要があるのではないかというのが基本的な発想ではないかと思います。

○八田主査 買手だけが参加していることは、市場価格を形成するのに全く問題ないと思います。まさに入札で価格が決まるということはそういうことだと思います。
 それで、市場参加者の数が結果的に少なくなるということは、それはどんなものの入札でもそうです。何百も何千もみんなが入札するということは結構少ないことだと思います。
 ただし、何らかの参入制限というか、入札を妨げるような、それを脅すようなことを容認する制度があったら、最低価格制度ではなくて、むしろ、そのような障害を除く制度にこそ力を入れるべきです。どこかで鑑定して決めた価格というのは基本的に使うべきではない。そういうものでは、市場に非常に大きな歪みが生じると思います。

○小野瀬参事官 おっしゃるとおり、例えば執行妨害が日本でなくなればこれはまた議論が変わってくるのだろうと思います。それで、それについてはそういったものの方策というものを十分にすべきだというのは当然でありまして、この間の担保執行法の改正でもそういうことをやっているわけです。ただ、やはり、あらゆる規制をやっても規制の網をかいくぐるような、そういったような執行妨害、現実にはなかなか保全処分に引っかからない、あるいは刑罰に引っかからないような巧妙な手口というものが出てくるわけでございます。
 そういった場合に、そういったものをむしろ取り締まればいいということになって、いわば所有者のそういう利益が損なわれるリスクというものを犯していいのかどうかというのが基本的な考え方のところかなと思っております。私ども、確かに執行妨害がなければいいと思いますけれども、現実問題としてそれがなかなかゼロにはできないという段階において、所有者の保護というものはやはり必要ではないかというふうに考えているわけでございます。

○八田主査 しかし、日々変わり、場所によって変わる価格が、執行妨害がなく実際の取引が自由に行われた場合に幾らであるかということは、第三者の鑑定委員が想定することは不可能だと思いますね。その弊害は非常に大きいということを考慮すべきではないかと思います。

○森委員 つけ加えて申し上げると、現実に我々何度も経験していることですけれども、最低売却価格が高すぎて、一度見送って落札者がいないと下がる、またいなければまた下がる。そういうことが現実に起きているのです。そのことによって生じている損害の方がはるかに大きいというような事例がたくさんあるわけです。
 執行妨害者など居ない場合でも、ありもしない価格をつけるために、公示価格とか何かで非現実的な値段をつけて、早く売ればもっと高い値で売れたかもしれないのに、価格を6カ月もかかって改定している間に市場価格はどんどん下がってしまうというようなことを現実に起こしているではないですか。あれを見て、もうやめるべきだというふうに考えるべきだと私は思います。

○小野瀬参事官 おっしゃるとおり、結局法制審議会でも、今のようなお話というのは最低売却価額の評価が問題ではないか、そうだとすると、やはりそれは評価というものを適正にするということが大事ではないかと、こういう議論があるわけでございます。

○森委員 競売というのは市場に評価を任せるということなので、そのような委員会の必要などありませんよ。

○福井専門委員 評価が悪いのではなくて、その評価を、いわば落札不調を絶対的にもたらす要因として位置づけている、そっちの位置づけの方が制度としてよっぽどおかしい。神様ではないのだから、評価人は。いくら評価制度が向上しても、100.0%正しい市場価格をドンピシャリで出せるようにはなりっこないのです。だから、評価の改善は評価の改善で、独立にそれはどんどんやっていただければいいけれども、問題は、神様ならぬ人間が評価するその評価を絶対的な基準、1円たりとも下回ったらそれで落札を全部流してしまうというような、とんでもない拘束や規制として流通させているそのまさに下限規制を問題にしているのです。

○小野瀬参事官 そこは何度も申し上げておりますとおり、典型的には所有者の利益の保護のための制度であるということでございます。

○福井専門委員 所有者の利益保護にどうやってなるのですか。何かお経のように連呼されるのだけれども。では、こういう場合を考えてください。もし、善良な債務者、所有者がいたとして、ほかに何も資産を持っていないとしたら、債務免除があったってなくったってその物件の売却額超えての弁済はできないのではないですか。どうしてそれが債務者の利益を増大させているのですか。

○小野瀬参事官 ほかに資産がなくても……

○福井専門委員 もし、ほかに資産を持つのであればどうかというと、ほかに資産持っている人が何でほかの資産にかかっていけなくて、要するにノンリコースローンではない普通のローンでほかに資産を持っている人のその資産を何で保全してあげないといけないのか。その2つの質問に答えていただけますか。

○小野瀬参事官 所有者にほかに財産がない場合に、それだったら、では、いくらでもどんなに安い価格でも落札認めていいかということになりますと、それは、当然債務は残るわけでございます。今現在、それは財産がなかったとしても、それは例えば将来的に財産が増えてくれば、それは責任財産になってくるわけですから、やはり債権が残らないというのは、これはやはり所有者にとってみると大きい利益になるというように思います。
 だからこそ、ほかに財産があれば、債務者、所有者の利益を保護するのであれば、ほかに財産があってもその分の債務を消滅させる、債権を消滅させるというのがB案の考え方でございます。

○福井専門委員 では、この場合に、冒頭の議論にもかかわりますけれども、結果としていわば市場価格分は彼がその財産でまかなうべきものです。担保法というのはもともとそういうものです。その人の財産について、その時点で評価したいわば債務不履行が生じた時点での担保価値まではちゃんと提供してまさに落札にかかるという仕組みになっているのが担保法制です。だとしたら、その担保価値をいくらにするのかということの評価が非常に人為的なもので、実際の市場価格よりも高かった場合であったとしても、何で債務者にそれを、お前の利益を守るのだといって債務免除にしてやらなければならないのか。全く合理性がない。

○小野瀬参事官 何度も繰り返しになりますけれども、そこは手続の観点からしますと、それに不服がある債権者が執行異議で争うべきだというふうに考えております。

○福井専門委員 手続があるからいいのだといえば、今の制度だって手続があるからいいのです。法改正をする必要はないのです。そうではなくて、できるだけ合理的な手続、執行妨害をするようなやからが排除されて、債権者はできるだけたくさん債権が回収でき、債務者、所有者はもしその債権回収した後担保価値が余っていれば、それをできるだけ自分のものにできる制度にするために議論しているわけでしょう。だから、やり方があります、手続がありますから、その手続で争えばいいのですというのは政策論にならないのです。
 今、競売の法制の政策論、立法論をやっているわけですから、どちらがより妥当な、あるいはどちらがより債権回収をきちんと図って悪者の利得を避けることができる可能性が高い制度かということなのです。
 そのときに、今、何度も申し上げているように、現に市場価格より明らかに高いというのが最低売却価格を問題視している出発点なわけです。実務の側からも。すると、その高い場合についても何で債務者の利得にして、しかもほかに資産を持っている人についてまで、ノンリコースローンでないローンであるにもかかわらず、どうしてそれを棒引きにしてあげる必要があるのか。そういう、一種の正常な公正観なり価値観から見てどう理解できるのかについて教えていただきたいものですね。

○小野瀬参事官 これは同じことの繰り返しになってしまいますので、恐縮でございます。当然、債権回収ということも必要、大事でございます、この競売制度におけます所有者の利益の保護も重要だということでございまして、そういった所有者の利益保護の観点からしますと、先ほど言ったようなことというのが1つの利益バランスとして考えられるのではないかということでございます。

○福井専門委員 しかし、さっきからお聞きしていると、要するに債権者はできるだけ高く売りたいという利害があって、それに衝突していわば債権者の利害に反して所有者の利益が阻害されるようなケースについては何か具体例は1つも見聞しておられないみたいだし、相当する例としても挙げられないではないですか。余りにも不完全な思い込みに基づく立論です。

○小野瀬参事官 先ほど申し上げましたとおり、債権者としてはとにかく低い価格であってもとにかく早く売れればいいと、そういう債権者と、余りに低い価格では困るといったようなところで考え方が違うということもあり得ようかと思います。

○福井専門委員 それは何度も申し上げているように、より切迫した人はどちらかということです。

○一場民事局付 例えばバルクセールなどで債権を額面額よりも非常に安く買ったというような債権者であれば、額面額全額について回収する必要は全くないということになりますが、当然債務者、所有者としては額面額が債務ですから、当然その額面額全額について弁済できるように、高く売りたいと、担保不動産を高く売りたいということについて非常に強い利害があるというように思います。

○福井専門委員 バルクセールで買った債権者だって、要するに債権者としてはできるだけ債権回収がたくさんできるにこしたことはないわけです。

○一場民事局付 たくさんできるのにこしたことはないですが、少なくとも自分が現実に拠出したお金を回収すれば、それ以上は利益になるということになるわけです。

○福井専門委員 そんなことは当たり前です。だけど、要するに債権者としてはできるだけ担保価値が発揮されて売買される方が利益になるという点で、それには一分の疑いもない。
 債務者も同じだとしたら、そのときに債権者としてみれば、さっき森委員が言ったように、いや、このままおいておいたらどんどん下がって債権回収できないどころか、その分余剰分だって生まれないという切迫した利害を持っているときに、それを発揮させないという方向にブレーキをかけるような制度はやめるべきではないでしょうかということです。

○小野瀬参事官 今、申し上げましたとおり、債権者としては額よりも、とにかく早さという点に着目するという場合があろうかと思います。その場合、時間的による地価の変動分ということと、それから最低売却価額の機能をなくしてどーんと価額が下がってしまうということのリスク、そういうことのバランスを考えると、やはり所有者の保護というものをしなければいけないのではないかなというふうに考えているわけです。

○福井専門委員 額と早さとは同じですよ。時間は金なのです。

○八田主査 次がありますので、一応今日のご質問はここまでにしたいと思います。
 基本的には森委員もご指摘になったように、現行の最低売却価格制度が所有者にとって非常に不利な側面がある。要するに、抽象的な価格というものがあるのだという想定のもとでやっているためにそういう弊害が起きている。債権者だけではなくて、債務者自身にとっても不利な状況がある。何遍もやらなきゃいけない。しかも、とうとう最後まで不調になってしまうかもしれない。したがって、法務省がおっしゃるような意味での所有者の利益ということと、それから通常問題になっている所有者の利益ということのバランスをとった場合に、人工的な制度である最低売却価格制度というものの役割を非常に強く維持する方がいいのか、それともやはり入札したものが価格なのだと、それが市場価格なのだというように自然な考え方をした方がいいのか、その議論だったように思います。
 どうもありがとうございました。この問題については我々も非常に強い関心を持っておりますので、注意深く見守らせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○小野瀬参事官 どうもありがとうございました。

(法務省関係者退室)

【日影規制について】

(国土交通省住宅局関係者入室)

○八田主査 それでは、お忙しいところ、どうもありがとうございます。
 次は、国土交通省のヒアリングでありまして、最初は日影規制について、その後の展開についてお話しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○住宅局市街地建築課高井課長 それでは、日影規制につきまして、いただいたペーパーの緩和についてというのが箱の中に書いてございます。それに対して私どもの考え方を下の方に整理させていただいております。四角の中は省きまして、下をちょっと読ませていただきます。
 日影規制につきましては、基本的に地方公共団体の条例による制限でございまして、公共団体の判断によるものでございます。都市再生緊急整備地域内であっても、現に住宅が立ち並ぶ地域を適用除外とすることは難しいのではないかと考えておりますし、現在の土地利用の状況や将来の土地利用の方向を踏まえて、都市計画の決定又は変更と併せて見直しをすることが適当ではないかと考えております。
 なお、東京都及び大阪市では、緊急整備地域はほぼ全域が日影規制対象区域外でございまして、都市再生緊急整備地域で日影規制の対象区域内となるのは、ほとんどが港区でございます。
 それから、都心部等で高度利用が進みつつある地域において、一定の土地所有者等の合意がある場合には、次の手法により日影規制を適用除外とすることが考えられるということで。
 まず、1番目は、条例を見直して日影規制を適用除外とする。
 それから、2番目は、用地地域の変更、高度利用地区や特定街区等の決定等都市計画の見直しにより、日影規制の適用を除外する。この場合、土地所有者の3分の2以上の同意によりまして、土地所有者等による都市計画の提案制度を活用することができます。これは平成15年1月から施行されております。
 それから、3番目が、日影の影響を受ける周辺地域を都市再生特別地域の区域内に取り込むと、特別地区につきましては日影規制の中は対象外になっておりますので、同意した方には特別地区の中に入っていただいて日影規制の対象区域から除外する。この場合には、土地所有者等の3分の2の同意に基づいて、これは民間事業者による都市計画の提案制度を活用することができるのではないか。これも昨年の6月に施行されております。
 それから、4番目が、連担建築物設計制度の対象区域に土地所有者等の同意を得られた周辺地域を取り込みまして、一体的な建築計画として日影規制の緩和を行うということが可能である。
 最後に、日影規制そのものは、周辺の建築物が日影にさらされないことを目的とするものでございまして、周辺の建築物における天空の開放度を示す天空率等を一定以上確保しても、必ずしも日照を十分に確保できるとは限らないことから、代替することは困難ではないかと、こういうふうに考えてございます。
 2枚目をごらんいただきますと、都心7区の都市再生緊急整備地域と日影規制の重複を示しております。濃い赤が法律上日影規制の適用がない地域、それからオレンジ色が条例で日影規制を適用していない区域でございまして、黒のハッチが都市再生緊急整備地域でございます。
 これをごらんいただきますと、ほとんどが港区の赤坂六本木地域の中にあるだけでございまして、その他の地域では日影規制そのものが適用されてございません。
 3枚目は、都市計画で3分の2以上の住民の同意によりまして、地権者の同意によりまして提案する制度のフロー図でございます。土地所有者等の3分の2以上の同意があれば地方公共団体に対して都市計画の提案をできると。
 次のページは同じように、都市再生特別措置法によります、これは民間事業者でもできる提案制度のフロー図でございます。
 それから、最後は連担建築物設計制度の概要ということで、これは左側が何もしなかった場合の一般的な規制で、それぞれの敷地に対してそれぞれの隣地との影響を緩和するための規制がかかりますが、これを一体的に計画することによりまして、計画といいますか、計画を一体的に適用することによりまして、1つの敷地にあるものとみなして規制を適用するという制度でございます。これも既に190地区で、一番下にございますように、指定がされておりまして、こういうこともできるのではないかと。
 それから、次のページ以下は、前回もお出ししました日影規制の概要を書きました資料でございます。
 一番最後に都心3区の日影規制の対象地域の状況を整理させていただいておりますが。都心3区全体で4,064ヘクタールございますけれども、日影規制かかっているのは1,121ヘクタール。これは皇居と代表的な日比谷公園とかそういうものを除きますと、全部ほとんど港区でございます。そういうのが都心3区の日影規制の状況でございます。
 以上でございます。

○八田主査 どうもありがとうございました。
 我々の会議の問題意識は、「住宅地の、郊外の住宅地で日影規制が重要であるというのは非常によく理解できる。ただし、都心の高度利用地区においては、空調その他が発達している時代であるから、基本的に日影の規制の緩和をできるだけ進めていくべきではないか」ということに尽きるわけです。
 その際、先ほどの地図でお示しくださったように、法律上で既に日影規制が適用されていないところが実際都心で非常に広くある。それから、条例上でもある。これは、まさに我々の問題意識のように、「本当に高度利用がなされるべき地域では日影規制は不要だ」という考え方に基づいていると思うのです。
 都市再生緊急整備地域の中でも、実は日影規制が適用されているところもある。都市再生緊急整備地域というのは、基本的には高度利用しようという地区だと思うのですけれども、そこの矛盾と申しますか、法律上適用されていないところと適用されているところの違いですね、それが特に高度利用を目指している都市再生緊急整備地域でまだ規制が残っている、そこの理由づけについてお話し伺いたいと思いますが。

○高井課長 緊急整備地域の指定そのものは公共団体の申出に基づいて行われています。ですから、今回の話でいいますと、港区は東京都に申出をして、東京都からの申出に基づいて再生本部が指定をしていると。ですから、緊急整備地域の中で高度利用を図るべくプロジェクトが出てきた場合には、当然港区がどういう判断されるかというのは港区の責任でなされるべきではないかというふうに私どもは考えていますけれども。
 この港区の問題だけをもってして国全体の方針として緊急整備地域の日影規制を飛ばすというようなことの整理にはとてもならないのではないかと考えておりますが。

○森委員 港区だけに必要である程度では国の方針を変えるわけにはいかないという理由は何ですか。

○高井課長 いえ、そういうことではなくて、緊急整備地域の指定は地方公共団体が自分で申し出ているわけですね。ですから、ここは高度利用を進めるべき地域として自分で申出をしているわけですから、それについて必要なプロジェクトがでてきた場合は、港区の方で対応なされるのが当然ではないかというふうに申し上げているのです。

○森委員 対応できてないから、こういう場で特区に準ずるような扱いか何らかのことを考えるべきではないかと言っているのです。
 その前に、日影規制を天空率規制等に置き換えるのは適当でないようなことをおっしゃいましたけれども、日影規制というものをつくった根拠というのは、まだマンションが建て始まったばかりで、2階建ての建築物しか建たないようなところの隣接地に高いものが建っては困るというような紛争をたくさん処理した結果でしょう。また、その時代は、まだ暖房費の方が冷房費よりも重要だというような感覚で、冷房などないような時代だった。しかし、今、現実には暖房費よりも冷房費の方が高い。直射光は必ずしもありがたくないというケースも増えているような状況の中で、日影規制というものは見直すべきではないかというのが基本にはあるのです。

○高井課長 そういうニーズがあるだろうというのは、私どもも十分推測できますけれども……

○森委員 ですから、それが天空率規制というのは明るさ率規制ですが、明るさ率規制で十分ではないのかと。むしろその方が合理性があるのではないかということを言っているのです。その点はご理解いただきたいと思います。
 それから、港区にしかないとおっしゃいますけれども、港区のような地域全般を対象として国が定めていれば問題はないのですが、部分的に定めているから起こっている問題なので、国の方で対処していただきたいと思いますけれどもね。

○高井課長 定めているとは、何をですか。

○森委員 都市再生緊急整備地域の区域です。

○高井課長 これは、国が港区の申出に基づいて政令で指定しています。

○森委員 そうすると、また改めて広く申し出ればいいということですか。

○高井課長 そうですね。港区のお考え方によりますけれども。

○森委員 それから、先ほどの4番目の方法というのは、むしろ連担にしてしまうと、1個1個の建築物が1つの建築物とみなされてしまうので、日影規制上不利になるのではないですか。

○高井課長 いえ、中にあるものとみなして、中の日影規制が飛ぶわけですね。

○森委員 私が言いたいのは、隣の方の土地ですが。

○高井課長 ですから、隣の人たちを中に入れちゃうということ。もし同意がとれているのであればですね。

○森委員 通りの向こうも取込むということですか。

○高井課長 はい。日影の影響を受けるエリアの人たちの同意がとれているのであれば、その人たちも中に入れて一体の建築物として計画をしていただくと……。

○森委員 主要な国道などの向こう側まで連担地区に取り込めますか。

○高井課長 余り大きな道路の向こう側というのはなかなか難しいと思いますけれども、一体的な建築物とみなす……

○森委員 我々が言いたいのは、超高層の場合ですから、30メートルくらいの街路では、影は軽々と飛び越えていってしまう。それでは解決できないのではないですか。

○八田主査 最初に連担建築制度をつくったときは、隣接している土地でしたよね。

○高井課長 ええ、一体としてみなせる範囲。

○八田主査 今は道路があってもよろしいわけですか。

○高井課長 一体としてみなせる範囲内しかだめです。ですから……

○八田主査 ということは隣接して……

○高井課長 いや、幹線道路ではない程度の道路であれば大丈夫なのですが、こういう大きな幹線道路は難しいと思いますが。

○森委員 街路といわれるのは、11メートル道路ぐらいならいいのですか。

○高井課長 だめです。

○森委員 そうすると、要するに、ほとんどだめなのですね。

○八田主査 だから、もしそれが連担建築物的なものを、途中に道を挟んでもいいよということができれば、随分事情は違ってくるでしょうね。

○高井課長 幹線道路でない範囲であれば認めているのですけれども……。

○井上市街地建築課高度利用調整官 同時にやる一団地の総合的設計というのは道路の中に入っていてもいいよということにしていますけれども。

○高井課長 一般的な都心部で日影規制が要らないというコモンセンスが、今のこの絵のような状況になっているのではないかと私どもは考えています。ですから、要らないところは日影規制の適用除外にしているし、それからもともと用途地域でかけてないところもあると。六本木なんかも一本裏に入ると一戸建で住んでいる方がいらっしゃいます。それをどうするかというのは確かに議論のあるところで、それは港区がどういうふうにお考えになるか、まさに地方公共団体の考えで条例をどうするかという範囲内だと思います。

○森委員 日影規制というのは世界中にある方法かというと、私の知る限りでは日本だけの手法のようですが、違いますか。

○高井課長 日影規制そのものはそうかもしれません。

○森委員 それほど日本は日照が大事ですか。

○高井課長 大事ですよね、一般的な日本人の常識といえば。

○森委員 そんなことを議論してもしょうがありませんが、やはり異常だと思いますね。ほかのどの国にないもので、日本にだけ適用しているというのは。

○八田主査 お布団を干すというのが非常に大きいのではないでしょうか。普通の場合にはね。それは日本独特の理由だという面もありますね。

○森委員 中国でも干していますよ。韓国でも干していますけれども。

○八田主査 それは、公法でやっているのは、要するに裁判所が機能しないから、民法的には解決できないから無理やりこういうふうにやっているというわけですね。

○森委員 結局、紛争回避といいますか、やはり役所の方のある種の手間を省くためにつくられたような規制であって、根本的にはこれはなくしてもらいたいと私は思っているのです。これ以外に斜線ですとか、絶対高さとかいろいろありますよね。だから、日影がなくてもほかの方で分カバーされているのではないのですか。あれ以降、結局、何か特別に高さが規制されただけではないのですか。

○高井課長 日影規制、皆さんご承知だともちろん思いますけれども。30年代、40年代で日影紛争を受けて51年に入ったのですけれども、これによってそういう意味では逆に開発側もしやすくなったし、メルクマールができて受忍の限度というのも住民側もわかったという部分があって、それを例えば、今、日影規制がない浦和なんかで商業地域で3メートルしか離れてないところに14階建てが建ってるというような状況で非常にたくさんもめている事例も出てきてますし、そういう状況の中で日影規制の制限そのものに触るということは非常に難しい、全国一律の制度ですから、それは非常に難しいのではないかというふうに考えていますが。

○森委員 それで、例えば何メートル以上隣棟間隔が離れた場合等を適用除外にするとか何か、基本的に超高層時代に入っていますので、前の7階建てや10階建てぐらいの問題とは違うので、この際考え直していただけないかと言っているわけです。

○高井課長 後ろから3枚目の図面をごらんいただきたいのですが、超高層を例に採りまして日影規制がどういうエリアまで影について規制をしているかというのを書いてきたわけですけれども、この場合、事例としては100メートルの建築物を建てた場合に、4時間日影、東京都なんかだと多いのが2時間と2.5時間と4時間という日影なのですが、4時間日影が落ちるのは27メートル、要するに高さの4分の1ぐらいの高さのエリアしか日影規制の対象区域に、日影規制がかかるのはそれだけです。それから、2.5時間日影につきましては、高さの半分弱の四角いところですね。45メートルのエリアだけが規制されているわけです。外側の例えば8時ですと700メートル近くまで伸びますけれども、これ自体は日影規制の対象になってないわけです。

○森委員 お言葉ですが、まず、この程度の高さを前提にしていないということと、幅もこの程度の幅を前提にしていない。さらに連担して建っていくということを考えれば、この事例は全く参考にはならない。

○高井課長 いや、これ300メートルだったら3倍になるだけですけれどもね。

○森委員 3倍になったら大変遠くまで届きますよ。

○高井課長 もちろん、8時の影は届きますが、8時の影だけ落ちても規制の対象にならないと。

○森委員 いえいえ、そうではなくて、規制の対象になる面積がずっと広がりますよ。

○高井課長 いや、だからここに住んでいる方の日影規制を飛ばしていいというのは出てこないのではないかと。

○八田主査 しかし、森委員がおっしゃったように、要するに都心では、もう布団を干すとかそうではなくて、事情も違うでしょうということですよね。

○森委員 もちろんそうです。

○八田主査 もうまるっきりそういうライフスタイルではない。そこで、どこか線引きをしなければいけないでしょうと。そして、その線引きの範囲をもうちょっと広げて、都心と言われるところはもっとそれができるようにしたらどうでしょうかという、これが根本的な発想だと思うのです。
 昔ながらの引きずっているところを、ここで考え直すべきではないかというわけではないと思います。森委員も住宅地で今すぐその日影規制を外せとかそういうご主張ではないと思います。

○森委員 そのとおりですが、結局、こういう法律の存在自体が何か絶対的な善を守っているようなそういう誤解を与えていまして、何か基準に反するようなものは、たとえ田舎であってかかってないところでも悪いのではないかというような予断を招いているようにも思うのですね。こういう規制がないところでも。つまり、もともと何もないところで。とにかくいろいろな意味で日照をこういう形で特別視するというのはやめるべきではないか。一定以上離れればもう明るさ率は変わらないし、私どもの庭で実験しましたけれども、稲でもちゃんと育ってちゃんと実るのですよね。ですから、もうそういう日影を特別視するというようなことはやめるべきではないかということを言いたいですね。

○八田主査 その際、2つ方法があって、1つは当事者間で納得するのならばいいではないかというものです。それに対する国土交通省のお答えは、例えば連担建築制度というのがもう既にあるではないかというものですね。

○高井課長 いや、2番、3番も含めてですけれどもね。

○八田主査 その場合に、例えば連担建築物制度の使い勝手を、例えば道を挟んだところでもできるようにするということで、随分今の範囲が広がるのではないですか。

○森委員 もちろん大いに緩和すればするほどいいですけれども、もともとのところ要らないのではないかと。

○高井課長 もちろんそうですけれどもね。例えばそういう方法が私どものご提案の2の1つとしてあるのではないかと思うのです。

○八田主査 それから、もう1つは、1の方ですけれども、確かに都市再生緊急整備地域というものの提案というのは区がやるのだから、直接これ国が指定したわけではないのだから、そこのところ自動的に日影規制を外すというわけにもいかないというようなご主張だと思うのです。逆に言えば、もしそういうふうにしておくと、区がなかなか申請しにくくなって……

○高井課長 それは逆に申出がなくなるということだと思いますけれども。

○八田主査 この資料で、法律上日影規制の適用がない地域というのはもう既にたくさんあります。これは商業地域等だと思うのですが、この指定自体は基本的には国ではない、地方公共団体、都道府県ですね。

○高井課長 はい。だから、それも区の原案に基づいて、全くの自治事務ですから。

○八田主査 結局、今のお話だと、国ができるのは連担建築物制度の範囲を広げるということが、やるとすれば可能かなと。

○高井課長 いや、一番だから私どものこの中で対応してきているのは、3分の2の同意があれば住民の申出なり民間事業者の申出というのを都市計画に対して入れたという部分が一番……

○八田主査 去年6月に。

○高井課長 はい、去年6月と今年の1月ですが。

○森委員 南側の地域の人をどういう対象に入れればいいのですか。

○高井課長 ですから、エリアの3分の2以上の地権者の同意があれば、そのエリアについての都市計画をこう変えてくれという申出ができるのですね。

○森委員 そこに建てようとすると、また隣が問題ではないですか。

○高井課長 そうしたら、また隣の申出をするということですよね。

○八田主査 その範囲の中では、内側の日影に関しては緩和できるということが3分の2の同意でできますよと言われるわけですね。

○高井課長 はい、そうです。

○森委員 敷地の外側は同じことではないですか。

○高井課長 いえいえ、だから、内側に含んでしまえばいいのですよ。

○森委員 そうすると、無限に含まなければならないではないですか。

○高井課長 どうしてですか。

○森委員 そこもまた開発するでしょうから。

○八田主査 その範囲で全部を高くするわけではないのですよね。要するに、影響を受けるところを入れて都市計画を提案すればいいと。しかし、その場合には道を挟んでもいいのですか。

○高井課長 それは構いません。

○八田主査 幹線道路をはさんでも構わないですか。

○高井課長 はい。

○森委員 改めて、ひとつ正確に教えていただきますけれども、私はそうそう簡単に今の制度の中で対応できると思ってはいません。もう一度具体例をもってご相談させていただきますけれども、それでだめなら改めて検討願いたいと思います。

○八田主査 それでは、どうもお忙しいところどうもありがとうございました。

(国土交通省住宅局関係者退室)

【通勤鉄道における時間差料金制の導入について】

(国土交通省鉄道局関係者入室)

○八田主査 それでは、どうもお忙しいところいらしてくださいましてどうもありがとうございます。
 ただいまから、国土交通省のヒアリングで、通勤鉄道における時間差料金制度の導入について、現在における進捗状況について伺いたいと思います。よろしくお願いします。

○鉄道局業務課高田課長 国土交通省鉄道局の業務課長の高田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、座って説明させていただきます。
 資料を2つほどお配りしているかと思いますが、1つは「鉄道運賃研究会・まとめ(概要)」と書いてあるものでございます。それから、もう1つは、右肩上に資料1というふうに書いてありますが、資料1から資料6までついているものでございます。まとめ概要というものでご説明させていただきたいと思いますが、右か左にこの資料というものを置いて適宜参照しながらご説明申し上げたいと思います。
 まず、背景・経緯でございますが、当会議におきまして鉄道運賃に関しましてオフピーク時の運賃を安くし、ピーク時の運賃を高くする時間差運賃制(ピークロードプライシング)、これを採用する誘因を鉄道事業者に与える方策について、15年度、今年度中に検討して結論を出すというような答申がなされているわけでございます。
 1つ段落飛びまして、このためでございますが、こういった時間差運賃制の導入方策を初めといたしまして、多様な運賃体系の導入方策について検討すべく、私ども鉄道局で去年の7月に学識経験者、鉄道事業者等の委員から構成されます鉄道運賃研究会というのを立ち上げたわけでございます。
 資料1にそのメンバー表をつけてございますが、藤井弥太郎先生を座長といたしまして、学識経験者の先生方、それからJR東日本等を初めといたします鉄道事業者、あと私ども国土交通省の課長等、これらによりまして研究会を立ち上げまして、去年の7月からことしの5月まで6回ほど開催させていただきました。この研究会における現時点での検討内容が以下のとおりでございますので、これを説明申し上げたいと思います。
 大きな2でございますが、ピークロードプライシングの導入についてということでご説明申し上げたいと思います。
 まず、背景と経緯でございます。資料2をちょっと見ていただきたいと思いますが、大都市圏における鉄道の混雑率でございます。左に東京圏、真ん中に大阪圏、右に名古屋圏というのが載ってございます。黒字の太いやつが混雑率でございます。混雑率を見ていただくとおわかりのように、東京圏におきましては、ちょっと字が小さいですが、昭和50年から平成14にかけまして221%から173%に落ちてございます。点々が輸送力でございまして、輸送力は50年を100にしますと164、それから輸送人員は逆に100から平成2年が138でピークでございますが、減ってきて128ということで、現在の東京圏の主要な線の混雑時間、1時間当たりの平均値でございますが、173ということで。下に混雑度の目安というのを書いてございますが、150%で広げて楽に新聞が読める、180が折りたたむなど無理をすれば新聞を読めるということで、その中間の値となってございます。
 なお、大阪圏におきましては、既に138、名古屋圏におきましては147ということで、かなり混雑率が緩和してきてございます。
 しかしながら、資料3をちょっと見ていただきますと、180以上のところが黄色く塗ってございますが、最混雑区間1時間における混雑率の推移ということで、下から幾つか目、JRの京浜東北線の上野→御徒町というのが下から8つ目ぐらいにありますが、平成14年度でもいまだ230ということでかなりの混雑を見せているところでございます。ほかにも幾つかの区間において180を超える区間がまだ残っておるということでございます。
 それから、次のページで名古屋圏でございますが、名古屋圏は地下鉄の名古屋→伏見間が182ということでございまして、ほかはもうかなり低い数字になってございます。
 大阪圏におきましては、もう数字としては130台とか140台とか余り混雑していないという状況になってきてございます。
 その次のページの資料4でございますが、各鉄道事業者におきまして輸送力の増強対策がいろいろ行われてきているところでございまして、これは特定都市鉄道工事概略図というのが載ってございますが、鉄道の複々線化とか大規模改良工事をやっておりまして、事業開始時に運賃に10円ほど今ですが、上乗せしまして、供用後に利用者に還元するという制度でございますが、幾つかの民鉄でこういった工事が行われてございます。
 また、資料はつけてございませんが、地下鉄の幾つかの線、あるいは常磐新線等、新しい工事等も現在行っているところでございます。
 本文に戻っていただきまして、以上がそういう背景でございまして。東京圏における混雑率はこういった輸送力の増強対策が図られる一方、先ほどお話ししましたような景気の低迷、少子高齢化の進展による輸送力の減少によりまして年々減少してきているところでございますが、依然として混雑率の高い路線区間もまだ存在しているわけでございます。
 長期的目標としては、混雑率150%まで全部下げたいと。個別路線におきましても180%というのを今やっているところでございます。  したがいまして、このためでございますが、既存のストックを有効に活用することにより、混雑緩和を一層促進するためには、ピークロードプライシング導入は有効な手段の1つというふうにさせていただいております。
 現状でございますが、私ども鉄道局としましては、いろいろな規制緩和をやってきたところ、運賃におきましてはいろいろな割引制度がございます。ここに「例えば」で書いてございますが、12枚つづりで10枚分の運賃の時差回数券、昼間ですと普通だと回数券11枚つづりですが、12枚。あるいは、ここに書いてございませんが、土日では14枚つづりとか、そういった回数券の販売を実施しているところでございます。
 それから、2ページにまいりまして、外国の事例でございますが、香港、ワシントン、ロンドン等におきましては、時間差運賃制が導入されておりまして、大体3割ぐらいの割引となってございます。特にワシントンにおきましては、公団1社で行ってございますが、朝から5時、それから7時から終電まで大体35%の割引制度があるということでございます。
 それから、こういったのを受けまして、3でございますが、ピークロードプライシングにつきまして利用者等の反応についてアンケートをとりました。資料5でございます。資料5で1ページ開けていただきまして、アンケート調査の概要というのがございます。通勤者アンケート調査、それから企業アンケート調査というのを昨年暮れからことしの初めにかけて行ったところでございます。
 通勤者アンケートは東京の都心部の主要駅で手渡しまして、1万人に配布しまして、有効回収率が1,806。企業アンケートは5,000企業に配布いたしまして、有効回収率1,248でございました。
 2番目に書いてございます、時間差運賃制の内容でございますが、2つございまして、1つは「ピーク・オフピーク運賃制度」ということで、午前8時から9時に改札口から出る人、出場する人はピーク定期券、ピーク普通券ということで割高になると。ほかは割安になるということでございます。8時から9時の人がちょっと高いと。
 それから、2番目としまして、定期券を廃止するということでございまして、8時から9時に改札口から出場できる旅客は回数券と普通券の利用者のみということで、2つアンケートを取ったわけでございます。
 次のページでございますが、これの意識でございますが、ちょっと丸の表でわかりにくいのですが、特に問題ないというのが23%。合理的理由があればやむを得ないというのが38%で、全体の約6割が容認あるいは条件つきで容認という意見でございました。
 それから、4番目の、今度は個別の時間差運賃制を見てどうかということでございますが、ちょっと字が小さくてあれですが、真ん中の左の表でございますが、ピーク・オフピーク運賃制度の通勤者のアンケートでございますが、一番左が賛成、それから2番目がどちらかといえば賛成でございまして、足すと20.3と24.7で大体45%がまあどちらかといえば賛成以上と。企業につきましては、9.2と17.1で26%の賛成意見があったということでございます。
 それから、定期券の廃止につきましては、賛成者が非常に少なくて、どちらかといえば賛成以上を足しても通勤者で15%、企業で9%ということで、定期券が使えないのは不便ということで、賛成者は非常に少なかったということでございます。
 それから、3ページ目でございますが、こういった時間差運賃制を実施したらどういう行動をとるかということでございますが、下にケース一覧というのが載ってございます。ケース1からケース4と書いてございますが、ケース1は1.3倍のピーク時の料金、昼間は10%割引。それぞれケース2が2.0倍、25%割引、ケース3は現行の3倍で昼間は50%割引。ケース4は定期券廃止というようなことでやりますと、図の5−1でございますが、ピーク・オフピーク運賃制度をやった場合に、1.3倍ですと3.6%、それから3倍ですと25.3%、こういった人が勤務制度を変更するというふうに企業の方は言ってるわけでございます。変更しない方が多いわけでございますが、取引先との関係、顧客サービス等との関係でそういった回答をしてございます。
 通勤者はどうかということでございますが、これ自己負担でやる場合と自己負担がない場合とある場合とちょっとやりますと、自己負担があるという場合につきましては……。
 ごめんなさい、さっきのピークオフで定期券廃止については変更するというのが3.6、条件が整えば変更するというのが59.6でございました。
 図5−2で通勤者の方でございますが、自己負担増ありということにしますと、かなりの人が勤務時間を変更するというふうにしてございます。ただ、変更しない主な理由としましては、企業の方の始業時間がこの時間であるということで、そういったことで変更しないというふうに言ってございます。
 それから、4ページ、次のページでございますが、時間差運賃制によるピーク分散、ピークがどう分散されるかということでございます。一番上の青いやつが現況でございまして、8時31分から9時というのが35%あるわけでございます。ケース1からケース4でいろいろやってみますと、前と後に当然でございますが、7時31分から8時の山あるいは9時から10時の山がふえている形になってございます。しかしながら、例えばケース3の場合ですと、×になっているやつがございますが、7時31分から8時が20%近くの山になっておりまして、ピーク時運賃を極端に2倍、3倍というふうに高くするということになりますと、逆にピーク時間帯の通勤者を検証するわけでございますが、新たなピークができるというようなことでございまして、勤務制度の変更がない通勤者が現状よりも早く出勤せざるを得ない状況にあるということを反映しているのかというふうに思ってございます。
 これがアンケートでございますが、またちょっと本文の2ページに戻りまして、真ん中の段落以下でございますが、これらを踏まえると、時間差運賃制の導入は一定程度の割増・割引率であれば混雑緩和の効果が期待されるということでございますが。反対の声もいろいろございますので、利用者に受け入れられるかどうかというのを見極めることが必要かというふうに思っています。特に、定期券の廃止につきましては反対が多いので、そういったことも考えていかなきゃいかんというふうに思ってございます。
 さらに、こういった時間差運賃制を導入いたしましても、企業が勤務制度を変えないという限りは早い時間にシフトするなり不本意な出社時間の変更を強いられる可能性があるというふうに考えてございます。
 それから、3ページ目でございますが、続きまして鉄道事業者の意見も聞いたところでございますが。鉄道事業者の意見といたしましては、まず(1)でございますが、先ほど申し上げたように、混雑まだ残ってございますが、昔と比べると混雑率は低下してきていると。今後の人口等を考慮しますと、さらに混雑緩和の方向に進むことは確実というようなことでございます。混雑区間はあくまでも東京圏の一部路線だけではないかということでございます。
 (2)のピークロードプライシングの導入についてでございますが、基本的に今の社会情勢下、こういった物価上昇が少ない状況にありましては、なかなか鉄道事業者として運賃値上げというのはなかなか利用者の理解を得にくい状況にあるということでございます。特に混雑時間帯というサービスの悪い時間帯の値上げは利用者の感覚からして非常に難しいのではないかというようなことを言ってございます。
 それから、先ほど申し上げたように、導入に当たっては、企業のいろいろな通勤・通学時間のシフトできるだけの環境が整えることが必要と。
 それから、さらに競争路線へ逃げちゃうとか、相互直通運転が東京圏ではほとんどでございますので、全事業者が一斉に実施することが必要と、こういった意見も出ておりました。
 先ほど申し上げた外国の場合は1社で鉄道を運営している場合が多いのですが、この場合は幾つかの社がまたがっていますし、相互直通運転が多いので、その辺も必要であるということでございます。
 それから、さらに実務面で幾つか書いてございますが、資料6でございますが。どういった形で適用区間を考えるかということでございますが、混雑区間をどこからどこまでとるかということで、例えば埼玉の方から東京を通って千葉の先とか横浜の先に勤務する人をどう考えるかとか、あるいは東京の真ん中から逆に埼玉の方に勤務する人はどうかとか、あるいは東京の中から中へ行く人もどう考えるかとか、そういった問題もいろいろ出てくるのではないかと。これについては本文のところに書いてございますが、ICカードシステムでは利用区間のチェックは技術的にはもちろん可能でございますが、かなり情報量が多くなって処理速度が、今のICカードでは遅くなるのではないかということでございます。それから、ICカードでも混雑区間を通過するというのはチェックできないので、そういった問題もございます。
 それから、ロで通勤時間に関する問題、資料6の下の方でございますが、例えば下りるとき、8時から9時まで高い料金にするといった場合、これも8時半、例えば列車が遅れたらどうかとか、9時前に着いた人が安くなるまで駅のラチの前で待っている人がいるのではないかとか、そういった問題も出てくるなということでございまして。実務面でも今のICカードを前提とするとかなりまだ技術的に難しい面もありますし、ICカードがよくなった場合でもまだできない問題もあるということでございます。
 それから、4ページの(4)の誘導方策でございますが、導入に当たっては以下の事項が前提となっていることが必要ということで、混雑状況が存在する。それから、利用者の理解が得られる、環境整備、社会的コンセンサスがある。それから、機械のいろいろなコストが必要ですので、輸送力増強コストと比較して経済合理性があるということが重要。あるいは設備投資や運賃格差をつけることによる減収分を十分吸収できるような運賃水準が必要。それから、全事業者一斉の実施等も必要になってくるというのが鉄道事業者の意見でございました。
 5番でまとめでございますが、(1)、(2)でございますが、これは先ほど申し上げたように、(1)ではピークロードプライシング導入は有効な手段の1つというふうに考えてございます。
 それから、(2)の社会的受容性でございますが、先ほどから同じことでございますが、混雑時間帯というサービスの悪い時間帯における運賃の値上げに対する利用者の反発。それから、最近のデフレ状況等を勘案すると、運賃の値上げに関しまして利用者の理解についてある程度の見通しが得られないと鉄道事業者自身が導入に躊躇する状況であるということでございます。
 それで、5ページ目の、以下、先ほどと同じようなことを書いてございますので、(4)でございますが、ピークロードプライシングの導入方策ということでございます。大都市圏、特に首都圏におきましては、事業者が路線、時間毎に異なっておりますので、それぞれの利用者の需要に応じて価格の差異を打ち出した上で、あとは利用者の1つの選択に委ねるということで、混雑緩和となるように進めていくことも1つの考えということでございます。先ほどの回数券等もその例でございますが、例えば現在JRでホームライナーということで500円出せば必ず座れるよというふうになっていますので、サービス向上と併せた形での混雑解消策をとる必要もあるのかなということでございます。
 それから、「この点に関し、」というふうに書いてございますが、現在の鉄道事業法におきましては、認可を受けた上限の範囲内であれば、鉄道事業者が自ら需要に応じまして自らの経営判断で自由に運賃を設定することが可能でございます。また、料金につきましても、新幹線等一部を除きまして自由化されておりまして、需要に応じまして多様な運賃・料金の設定が可能となっておりまして、鉄道事業者の創意工夫が期待されるところというふうに考えてございます。
 それから、現在の総括原価主義に基づきます、今、申し上げた上限認可制度の下でございますが、こういった時間差運賃制を導入する鉄道事業者に対しましてどういインセンティブを与えるのか、これを報酬面で与えるのか、コスト面で与えるのかということについては、引き続き検討することになるかと思います。
 また、この増収分を輸送力増強対策やオフピーク運賃の割引ということに充てることについてチェックする必要が出てくるわけでございますが、逆に規制強化になる可能性があるということを考える必要があるのかなというふうに思ってございます。
 それから、6ページでございますが、「また」でちょっと書いてございますが、ピーク時は車両がいっぱい電車が走っていますので車両間混雑が発生しまして、速度が事実上遅くなるということでございまして、ピーク時の平均所要時間はオフピーク時の平均所要時間に比べて長くなる傾向がございます。複々線等でいろいろこういうこと工夫してやっているわけでございますが、こういった車両間混雑についても留意する必要があるのかなというふうに思ってございます。
 今後の進め方でございますが、繰り返しになるかもしれませんが、ピークロードプライシングに関しましては、鉄道事業者において路線や時間帯ごとの利用者ニーズに応じて多様な運賃料金の設定がなされるよう引き続き取り組みを進めることが必要でございますが、企業におけるフレックス制度等、鉄道の利用者が通勤時間をシフトできるような環境を整えること。あるいは、利用者の理解をどう得るかといった見通しについて、さらに見極めることが必要というふうに考えてございます。
 このため、今後、フレックス制度の導入あるいは勤務制度の変更・見直し等についての経済界の意見、あるいはさらに消費者の意見等も聞きながら、インセンティブを付与する方策についさらに検討を進める必要があるのではないかということを考えてございます。
 それから、さらに、企業における弾力的な勤務制度の導入を促進するための方策や都市の有効・高度利用を促進するための方策等と相まって効果が発揮されることが期待されるということで、こういったのもあわせて検討していきたいというふうに考えてございますが。
 国土交通省といたしましては、今年度中に結論を出すということになってございますので、来年3月まででございますので、さらに引き続き検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
 以上でございます。

○八田主査 どうもありがとうございました。
 このピークロードプライシングというのは、諸外国でも、基本的にはICカードの活用等切符が電子化できるようになって実質的に始まった制度だろうと思います。そして、日本のように、少なくなったとはいえ、混雑がある区間がまだまだ残っているところで、役に立つのではないかと思うのです。もう1つは、オフピークの時間帯で値段を大幅に下げるための手段にもなり得るのではないかと思います。
 私どものこのような問題意識に対して、研究会を立ち上げてくださって、そして実際の調査までやってくださったこと、まずお礼申し上げたいと思います。
 それで、今、ご報告になったことについてなのですけれども、幾つか気がついたことがあります。特にこのアンケートに関して伺いたいと思います。
 まずは、完璧は期せないわけですから、基本的には最初は出口料金でやるのが一番簡単なのではないか。そして、例えば東京駅とか有楽町というところで一定の時間帯で出るときには余計に取る、その料金収入を何らかの形で配分する、これもちろん地下鉄などでやるときにはどこの会社に配分するかというのは後で決める必要があるけれども、基本的には出口料金でやる。
 それから、それも突然料金が高くなるのを避けて、その前の時間に突然のシフトが起きるというようなことを避けるために、料金をなだらかに変えるということが、出口料金をすれば可能なのではないかと思います。
 根本的には、先ほどの資料5の3ページでお示しくださったアンケートで、例えば料金を3倍にしたときにどういうふうに反応するだろうかというような質問をなさっている。例えば図5−1ですね。それは企業ですし、5−2は通勤者なのですが、自己負担の場合なども3倍といったら非常に大きく反応するということですが、企業の場合は3倍といっても25%しか反応しないというわけです。このときに、見返りとしてオフピークが50%減少するというわけですが、ピーク時に3倍ふやしたら、その収入は大変なものだろうと思うのです。
 要するに、収入のかなりの部分というのはピーク時ですから、オフピークはもっと減らせるのではないか。そこの収支がある程度トントンになる程度までオフピークを減らすと、そこに通勤者の一部を動かしていこうというインセンティブが企業に対しても働くでしょう。
 もっと重要なことは、今、通勤、都心のオフィスで通勤者を抱えているのではない、潜在的な映画館だとかレストラのだとか、そういうものがたくさん都心に出てきて、オフピークの安い料金を利用した顧客だとか、それから従業員を雇ったりすることができる。そのような層、今までは余りに高かったために何もやっていなかったが、これからは安く人々を雇えるというところへのアンケートというものが元来は必要なのではないかと思うのです。
 まず、オフピークの料金をこれより減らすこと、それから、潜在的なそういう企業や利用者ですね、家庭の主婦とか、今まで都心になかなか毎日出てくるというのは大変だった人たちがどういうふうに反応するかというところに興味のあるところだと思います。
 それから、企業は仮に始業時間を変えなくても、人々が早く出勤するときに時間を使う方法はいくらでもあると思うのです。例えばスポーツジムに行くとか、靴を磨くとか、本屋に行くとか、そういったことがどういうふうに反応するだろうか。町が非常に賑やかになると思うのです。9時前の状況というのは賑やかになるのだと思いますけれども、そういうことに関しても何らかの調査ができればありがたいと思いました。
 それから、最後に、定期の取扱いですけれども、定期というのは基本的には何遍でもどこにでも行けるし、土曜でも日曜でも行けるというメリットがあるというのならば、オフピークは空いているわけですから、その時間帯は定期の区間だけではなくて、東京全体どれだけ行ってもいいよというような恩恵を与える代わりに、ピーク料をいただいてはどうか。そういう工夫をすることも可能なのではないか。皆がこれほど定期がいいというのなら、むしろ定期のアドバンテージを広げるというような工夫もあり得るのではないか。そういうことに対するアンケートをされたら、これはかなりポジティブに反応するのではないかと思います。
 ちょっと盛りだくさんですけれども、ご意見を伺わせていただければと思います。

○高田課長 はい。ちょっと幾つかお答えになるかどうかわかりませんけれども。まず、1つ目というか、アンケートの前にICカードの関係でございます。この研究会の中でもICカードについても一応勉強させていただいたのですが、今回ちょっと省略させていただいてお配りしなかったのですが。ちょっとICカードの普及状況について簡単にご説明したいと思いますが。
 ご承知のように、現在ICカードはJR東日本、正確に言うと東京モノレールとかそういうところも一緒になって、今、やっているわけでございますが。スイカということで導入されているわけでございますが。今後、JR西日本も来月くらいから導入する予定でございますし、大阪圏の、関西圏の民鉄も一部来年度ぐらいから導入する予定になってございます。平成18年度にはいわゆる東京圏では民鉄系とか地下鉄系のパスネットと、それからJR東日本のスイカとバス共通カードと、3者併せて共通の事業者によりますICカードの相互利用というものを導入する予定でございます。
 なお、今、鉄道の運賃等だけではなくて、例えばJR東日本にしましても、スイカ電子マネーということでコンビニとかそういうところでもできるようにしたいということでやってございます。
 ただ、今のままでも、先ほどちょっと申し上げましたように、今後ICカードがいろいろ導入さらにされても、かなりプログラムを複雑にしますと、今は本当にすっと通り抜けているのですが、先ほど申し上げたように、時間がかかりかねないといったような状況もございます。それがICカードに関する……

○八田主査 出口料金のような簡単なものにすればいいのではないですか。

○高田課長 出口料金でも……

○八田主査 1,000円とか500円とかの出口料金を取って、各社への配分は後で行えばいい。おっしゃるとおりに、区間ごとに応じていたらとても混雑に対応できない。

○高田課長 ええ。ただ、それは2通りの料金運賃ができるということになりまして、そこを判断するだけでもちょっと時間がかかるというふうに聞いております。今、運賃は1つなわけですね。例えば8時から9時までちょっと高くするということになると、300円の料金、A料金とB料金を見分けないといかんわけですので……

○八田主査 プリペイドカードを引く料金もみんな統一してもいいですよね。プリペイドカードも定期も全部一定の時間の出口料金は等しくする。いろいろ単純化の工夫はあると思います。そうすると、完璧にはならないけれども、いい近似になり得るのではないかと思いますね。

○高田課長 運賃が2つあるということがちょっと時間がかかるということのようなのですけれども。

○加藤課長補佐 時間帯によって適用する運賃表が異なってくることになりますので、今の時間帯だとどちらの運賃になるのか、その結果、今残っている残額からどれくらい引くのかという処理が改札機で必要になるのですけれども、その運賃表の切り替え、そしてそこで処理するということ自身が改札機側の機器に負荷をかけてしまうという、それがあるということなのです。

○八田主査 ワシントンなんかはプリペイドカードを時間でもってどんどんはかってますよね。

○加藤課長補佐 ええ。その出口のとき。できるだけその負担を減らす方法というのは多分考えられると思うですけれども、要素として現行のICカードシステムに比べて情報処理の容量というのが負荷がかかってきて、その分処理速度が遅くなるというところが……

○八田主査 ICカードは必ずしも使わなくてもいいのではないですか。私が最初にICと言ったのは、例示であって、今のプリペイドカード、それから定期含めて電子化技術を活用するという意味です。

○高田課長 それから、アンケートにつきまして幾つかのご指摘があったわけでございます。そういったところも含めてできれば再度やる時間があれば本当はいいのですけれども、ちょっと今年度中に結論を出すということになってございますので、ちゃんとしたアンケートがやるのはちょっと時間的には厳しいかと思いますが。一部、先ほど申し上げしたように、例えば経済界にご意見を聞くとか、そういった際に、特に昼間の主婦とかそういった方の意見をどうやって聞くかというのは非常に難しいのですけれども、何らかの形でさらにいろいろな意見を聞いてまいりたいというふうには考えてございます。

○八田主査 今、申し上げたようなことを考慮して。

○高田課長 ええ。

○加藤課長補佐 アンケートを実施したときに、ピーク・オフピーク運賃制度というものは、ピーク時間帯は運賃が高くなりますと。ただその高くて増収分をオフピークの割引、混雑緩和のための対策に充てます、これがピーク・オフピーク運賃制度ですということを前提にして意見を聞くというアンケートの設計にはしておりますので、そこオフピークが下がるということと込みで……

○八田主査 料金を3倍上げてオフピークは50%にする組み合わせですね。

○加藤課長補佐 ええ。ピーク・オフピークというのはまずそういう基本的な考え方で、さらに3倍、2倍、1.3倍としておりますけれども、具体的に例えば3倍に当たるとオフピークが幾らになるのかということについても、オフピークは50%、2倍にしたときはたしか25%引きます、オフピークは安くなります。例えば金額で言うと、200円が300円になるとか、オフピークでは、そういう具体的な一応制度設計と具体的な倍率、オフピークの割引率、金額、一応そこは……

○八田主査 割引率が不十分ではないかと言っているのです。料金を3倍取ったらオフピーク半分よりももっと減らせるのではないか。

○加藤課長補佐 はい。そこはいろいろとご指摘も以前いただいてますし、そこは盛り込のではおります。ただ、おっしゃるように、潜在的な需要の部分の意見がとれないかという部分ですね、企業の。ここは実際にアンケートやるときには、通勤費を負担しているのが実質的には企業が負担しているというケースが多いものですから、アンケートの前提としては都心の8区、23区のうち8区に存在する企業に対しても意見を聞いたということには……

○八田主査 レストランとか映画館とかそういうところに聞いてみられるといいかもしれませんね。

○加藤課長補佐 そこは、特にそこの業種だけに絞ってというのはちょっとこのアンケートでは出てきておりません。

○八田主査 要するに、普通の通勤時間帯ではない時間にお客や従業員が来る業種で聞かれるといいんではないですか。

○加藤課長補佐 それと、あと、すみません、主婦の意見で。すみません、一応このアンケートどこまでできているかということのご説明なのですが。一応配る時間帯も朝の7時半から30分刻みで配っていきまして、最後は一応10時から配り終えるまでということで大体100枚ぐらいのアンケートをそこあたりの時間帯で配っておりますので、昼間以降の午後活動している人たちがどうかというところまでは拾えてないのですけれども、このアンケートの対象としている幅といたしましては、午前中に活動しているような方々は大体これで拾えているのではないかということに。

○八田主査 私はどうも午後の人たちが一番利益を受けるのではないかと思います。前の人たちは空くけれども、料金を払わないといけないので、どちらにしても、そんなに利益は上がらない。

○森委員 全体としてだんだんピークが解消されていっているのを加速すると。そのことが複合的な影響をいろいろ及ぼすでしょう。都市再生全体に対してどういう影響を及ぼすのか、一生懸命考えているところです。

○八田主査 それでは、今、ご質問申し上げたようなことをできるだけこれからの検討にご考慮いただきたいと思います。
 時間を過ぎてしまいまして申し訳ありません。この方向に向かっていろいろとご検討くださって本当にありがとうございます。ますますこういうことが、いろいろな技術的制約はあるにしても実現可能なようにご努力いただきたいと思います。

○森委員 私も基本的にはこういうピークロードプライシング制度を使うことによって、安い料金で、いろいろな意味で社会施設が十分に使われるというように、鉄道施設だけではなく街の施設全体がオフピーク制で有効に活用されるという方向にいくわけなので、基本的には、推進していただきたいと思っておりますので申し上げておきたい。

○八田主査 街中の活用のためにということですので。

○森委員 高いところから安いところまでたくさん使ってもらうようにすれば、街として結構ですし、フレックスタイムをどんどん導入してもらうこともサービス産業時代にとっては非常に結構なことです。工業化時代とは違うのですから、それを推進する意味でも大変結構ではないかと思っております。

○八田主査 これはオフピーク割引制度と言った方がいいのかもしれないですね。
 どうもありがとうございました。

(国土交通省鉄道局関係者退室)

以上


内閣府 総合規制改革会議