平成16年2月4日(水) 10:00〜11:30
永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室
不動産取引情報の開示について
藤田博 総務課長
松葉佳文 土地政策課長
高岡良一 土地情報課長
八田達夫主査、村山利栄委員、森稔委員、福井秀夫専門委員
内閣府 福井和夫審議官、山根隆行参事官、下山洋文企画官 他
○八田主査 それでは、第10回住宅・土地・公共工事・環境ワーキングを開催いたします。
本日は、国土交通省からのヒアリングでございまして、不動産取引価格情報の開示について、先般の閣議決定の後、新展開があったと伺いましたので、そのご説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○国土交通省土地・水資源局藤田総務課長 国土交通省の土地・水資源局総務課長でございます。
今、八田先生からお話がございました不動産取引価格情報の開示につきまして、状況をご報告申し上げます。
お手元に私どもの方からも1枚資料を出しておりますが、不動産取引価格情報の提供につきましては、昨年3月、規制改革推進3か年計画が決まりまして、これを踏まえまして、私ども国土審議会の土地政策分科会におきまして検討を行ってきたところでございます。この中で、昨年12月19日に国土審議会土地政策分科会から建議をいただきまして、この中では国民に過度に負担にならず、国民の理解と協力を得られるような方法で、それぞれの取引価格に関する情報を収集し、その上で、これは物件が特定されないよう配慮した形で個々の情報提供をするという制度を立案するという方向性をいただいたところでございます。
これを受けまして、私ども、具体の制度につきまして、法制度化を含めまして検討を行ってまいりましたが、取引情報の収集につきましては、個々の皆さんの取引価格情報を提供することを目的としまして法制度、いわば公権力の行使を背景に取引情報を収集するということは現在の我が国のプライバシー保護などに関します法的制約から当面困難ではないかという結論に至りました。ただ、国土交通省としましては、取引価格情報の収集、提供は現下の重要な政策課題と認識しております。かつ、土地政策分科会の建議におきましても、このこと自体につきましては一定の結論を得たわけでございます。このため、私ども、国民の方々から、いわば任意で取引情報をいただく、収集するということによりまして、これを整理した上で物件が特定されない形で提供するという方向を持っているところでございます。
お手元に1枚紙があろうかと思いますが、私どもの考え方を整理したものでございます。
取引情報の収集、提供、とりわけ収集を円滑に、かつ実効ある形で実現することが極めて重要でございます。このため、私ども、ここに書いてございますとおり、不動産取引情報の提供につきましては、市場の価格情報に対する要請に応えるため、地価公示制度──現在、地価公示、私ども、行っておりますが、この枠組みを活用しまして、以下に書いてありますような取り組みを行うという方針で今考えております。
1点目は、法務省からご協力いただきまして、登記に関します情報をいただきます。これに基づきまして、取引の当事者に対しまして調査を行う。こうして収集いたしました取引事案につきまして、取引価格情報をデータベース化いたします。これを物件が特定されない形でインターネット等で提供いたしたいというものでございます。
これにつきましては、もともとの方針どおり17年度の実施に向けまして、16年度はいろいろなシステムの構築等が必要でございます。これを着手したいと考えております。この詳細につきましては、さらに年度末までに詰めてまいりたいと思っておりますが、いずれにしましても、このシステム構築等につきましては、既に16年度政府予算案で2億3,000万円余の予算を計上しておりまして、このような措置も踏まえまして取り組んでまいりたいと思っております。
これによりまして、昨年12月に答申でいただきました指摘につきましても、私どもとして最大限実現できるように努めたいというふうに現在考えているところでございます。
以上でございます。よろしくお願いします。
○八田主査 どうもありがとうございました。
昨年の第3次答申では、不動産取引を適切に収集、提供されることは必要不可欠であり、そのための新たな制度を創設すべきであると、非常に明確に書かれています。これは当然、そういう新たな法律ができるとすべての人が了解していると思います。どういう法案の提出をご予定でしょうか。
○藤田課長 ただいま報告申し上げましたように、法制度化する場合につきましては、何らかの国民の権利義務に係る内容を伴うことが原則でございます。今回、そういう意味で国民の権利義務を制約する、あるいはもっと広げて申しますと、義務づけを行いまして、これをペナルティー、罰則をもって担保するという仕組みは使いませんで、任意で国民からいただくという格好になっております。かつ、その情報提供につきましては、私どもの現在の権限といいますか、国土交通省の業務として行うことが可能でございます。したがいまして、いわゆる法律をもってこれを決めるのではなくて、先ほど言いました、こういうふうな私どもの実施する実行上の仕組みとしてこういう形の制度を、仕組みをつくりたいというふうに考えております。
○八田主査 新たな制度を作るという場合、当然、法律で制度ができるということを前提としています。国勢調査やその他のようにきちんと情報を提出する義務を負ってもらう。その代わり、前のA案、B案、C案のうちプライバシー開示の可能性があるA案ではなくて、B案とA案の中間ぐらいのところでいきましょうと、そういう話だったと思うのです。したがって、義務づけるということは当然のこととして、A案、B案の間の線を我々がご一緒に探ったというところがあると思います。
ところが、義務づけをしないようにするようになった。このことは、閣議決定の後に伺って、寝耳に水ということでびっくりしたわけですけれども、どういう情勢がそこで変わったわけですか。方針が変わった理由は何ですか。
○松葉土地政策課長 私どもとして、法律改正についても検討の対象として議論をしてきたというのは先生ご指摘のとおりでございます。関係方面と調整をし、私どもその議論をしてきたわけでございますけれども、そのポイントというところが、強制的に、罰則をつけてまで情報を収集するということと、その情報提供をする内容とのバランス、法的評価の問題として、罰則をかけてまでやることがいかがなものかという議論もあり、総合的に私どもの判断として法制化は難しいという結論に至ったところでございます。
○八田主査 そうすると、もともとA案というのは非常に場所が特定されるかもしれないということで、プライバシーを考慮して義務化するならば、それはB案でやりましょうということでもって特定されないような方向でやったと。しかし、もともとアンケートであって、自発的な情報提供を求めるならば、最初からA案でよかったではないですか。当然、義務化するからこそ、そういう負担をかけるのをなるべく最初に考慮しましょうということでB案とA案の中間を狙ったということだったと思うのですよ。最初から義務化をすることを考えていなかったなら、今までの議論と矛盾しているように思うのですが。
○松葉課長 義務化を考えておらなかったというわけではありませので、そのことも当然含めて、私どもとして何度もこの場でご説明させていただいて恐縮でしたけれども、前向きに取り組んできたということは事実です。そこは是非ご理解をいただきたいと是非思います。
その情報の提供の仕方、A案、B案の議論は、仮に私どもの今考えておるシステムでやったときに、どういう情報を提供するかというところは強制の度合いによって動き得るのではないかというご意見はご意見といたしまして、そこは仮に任意でやる場合であっても、逆に相手方の任意の協力は得られるかどうかというところは議論がありますし、そういう意味で、強制の要素とのバランスももちろんございますし、任意にどこまで応じていただけるかという要素もあるのだと思います。そのあたりの総合勘案ということだと思いますが、土地政策分科会の中でも物件が特定されないように配慮した形で情報を提供することでどうだろうかというご提言をいただいたところでございまして、そういう方向で今回整理をさせていただきたいと思っておるわけでございます。
○八田主査 当WGの議事録を見ればわかるように、当WGではA案にする方がB案にする方を比べて、どちらが自発的に意見を出しやすいだろうかという議論を我々はしたのではありません。義務化を当然前提として、A案だとプライバシーの観点からの反対が多いから、B案とA案の中間にしようと、そういうことだったと思うのですよ。だから、義務化がないということというのは全く新事態だと思うのですね。我々の議論でそのことが当然の義務化を前提としての議論をこれまでしてきた。それがどうして閣議決定の後、それが変わってしまったのでしょうか、そこを先ほどから伺っているのですよ。もし、いわゆるプライバシー云々ということなら、それは十分討議した問題だと思うのですね。
○松葉課長 私どもとしても、それなりに十分議論は詰めてきたところではございますけれども、なおやはり提供する情報と強制の度合いとのバランスから考えて、なかなかその制度化が難しいという結論に至ったということでございます。
○村山委員 この議論を例えば三、四カ月前にやっているのだったらわかるのですけれども、法律をつくることに関しては義務化が伴うので、そこまでのことはできないとおっしゃるのだったらわかるのです。でも、法案をつくるというふうにおっしゃっていた、その事実はこちらの議事録にもありますし、私もそのようなお話を皆様とさせていただいた覚えがあります。法案をつくるから、だからA案だと通らない、だからB案で頼むというような話をしていました。先ほど来の説明では、今の説明は3カ月前だったら全く確かにおっしゃるとおりとは言いたくないけれども、メイクセンスするのですけれども、あのときに法案をつくるというような形でいて、そしてその後、12月とかに新聞とかテレビで既に結構大きく報道されていましたよね。土地の取引情報を開示すると、制度を創設するというところまで風船をぶち上げておきながら、かつ2億3,000万円の予算をおとりになった。任意でアンケートをとるために2億3,000万円の予算をおとりになったのではないと思うのですよ。法案をつくるという前提で2億3,00万円の予算をおとりになったと思うのですよ。そこまでやられて、そしてここで急にだめになったということに関しての説明を私たちは今いただいていないと思います。
○藤田課長 1点目は、法制化につきましては、私どもかなりぎりぎりまで議論し検討したところでございますが、その上で最終結論が出るのが遅くなったというのは事実でございますが、実はその間、かなり検討した上で今のような結論になったわけでございます。
それから2点目でございますが、予算あるいは準備につきましては、私どもはいずれにしろ、どのような形であれ、この取引情報の開示というものはやらなければいけない重要な課題というふうに夏以来思っておりまして、予算要求もまた別途行ってきたところでございます。16年度につきましては、いずれにしても情報提供のためのデータ収集、データ処理あるいはインターネットへの提供するためのサーバー整備、そのための処理のプログラム、あるいは法務省等との連携のためのシステム整備というようなことが、これは現在、今日ご報告申し上げました任意の仕組みと申しましても、これは必要でございまして、そのための準備費用ということで、これは粛々と用意して、このあたりは私ども任意と申しましても、別途我々のいろいろなデータによりますと、相当のデータ収集は可能ではないかという前提のもとにしていますものですから、さらにそのことにつきましても16年度は効果を上げるような形にしたいというふうに思っております。
○村山委員 効果が上がるというふうに、だれもここにいる人は皆さんも含めて考えてらっしゃらないと思うのです。ですから、何度も申し上げるように、法制度をつくると言っていたのに、急に任意になってしまったことに対しての説明になっていません。今おっしゃっていた説明は、3カ月前だったらメイクセンスすると思いますけれども、誰がどういうふうに、どのように反対されて、もしくは根回しができてなくて、できなかったのかというご説明は全然いただいていないと私は思います。これでは悪いですけど全然納得できないです。閣議決定されていることですから、それを覆されたと、それが私は委員の総意だと思いますけど。
○八田主査 全くそのとおりだと思います。
○松葉課長 私どもとしましても、まさに、村山委員も言われましたように、この取引情報の提供というのは極めて重要だというふうに思っておりますし、省全体でもそういう形で取り組んできました。
○村山委員 重要だと思うのだったら、法案を作ってください。
○藤田課長 1点目は、先ほど申しましたように、ここは最終的には法制上のいろいろな検討の結果なのでございますが、プライバシーに係る情報を、いわゆる罰則をもって一般国民から徴収できるかどうかという……
○村山委員 だから、A案をやめたのでしょう。プライバシーがだめだから、A案をやめたのではなかったのですか。
○藤田課長 正確に申しますと、A案につきましては、どういう主体がやるにしろ、プライバシー上どうかという大きな問題がございます。そういう意味で、国民的な感情、あるいはいわゆる公的機関なりが情報提供をするにつきましても、現状ではB案が一つの整理すべき点かと考えたわけでございます。一方で、強制的に徴収するという面で申しましても、これは逆に、国民にいわばギリギリした議論をしますと、罰則をかけて徴収するという形なものですから、そこのところは逆に法律的に国民に負担をかけるぎりぎりの限界からいって、まだ難しいのではないかという判断をしたわけでございます。
それから、今、村山委員がおっしゃいましたので若干補足させていただきますと、任意の調査と申しましても、我々が実際にやっている調査ですと、余りそういうペナルティーが伴わない格好でやりましても、5割前後回収できております。これは前回また前々回ご紹介しましたアンケートから申しましても、いわゆる名前を出すということまでいきますと1割の方しか賛成いただけませんが、物件が特定できない形であれば、7割程度の方は賛成していただいておりますので、これは16年度私どもが行った広報においても、まさに(以前提出したパンフレット)扉をあけようというようなことが書かれてございましたが、そういう広報をご理解いただければ、その5割が7割に近づく、あるいは7割の方が増えると。さらに、先ほど申しましたように、情報の収集を円滑あるいは実効ある格好にするために、地価公示の枠組みの中で、これは国民的な理解を得やすい格好で、かつ効率的な格好で情報を集めて、それを提供するということを考えておりまして、実行上は法制度にはならなくても、それなりに効果のある仕組み、制度になるのではないかと考えております。
○村山委員 それはそちらの考えで、我々は法制度でちゃんと創設してもらわなければだめだと思っているわけで、それはそちらからご説明いただいても、こちらは納得できません。
○八田主査 これが、先ほど村山委員がおっしゃったように、3カ月前におっしゃるならば、それなりに理解できないわけではない。だけど、例えば自発的にやったら5割は出るから、自発的にやりましょうという話は今初めて伺ったのです。
○村山委員 法制度にする必要もないので、任意でやらせてくださいということを3カ月前におっしゃるのだったら、私もよくわかりますけれども、それは反対しましたよ、もちろん、だめですと。法制度でやってください、A案でやってくださいというのは私どもの主張ですから。だけど、それはこの3カ月の間に調査したことではないでしょう。
○八田主査 もう明らかに、今までご当局としては、A案はきついけれども、B案の修正版でもって法制度にして義務化してやろうとお考えになっていたと思うのです。それは本当に今の議論からも明らかなように、これまで自発的にやるということを前提とした議論というのは一遍もなかったですから、そこが急転直下変わって、そこのご説明は、要するに伺えないということだと思うのです。何があったかわからないけれども。最初、法制局が異議を申し立てたというお話があったけれども、それをよく考えると、いや、そんなことはやっぱりなかったと。それから、民間の事業者が反対されるようになったのかということを伺ったところ、それもなかった。結構協力的であると。
○村山委員 A案だったら困るけれども、B案であれば、まあ仕方ないですねと。
○八田主査 それで、そういうふうに私伺ったわけですけれども、そうしたら、では、どこがどうなって反対したのかと、それのご説明が全くないのです。それで、我々としては十分なご説明をいただけなかったということで終わるよりしようがないのではないかと思います。
○森委員 どこがどのようにに反対したかはともかくとして、要するに、プライバシーの侵害だからだめだというような説明しかありませんけれども、国土法で価格の指導までしていた実績があるわけです。そのときは、憲法上も認められていたのに、今度はだめだとおっしゃっている理由というのをお聞かせいただけませんか。
○松葉課長 国土法の議論は、多分非常な地価高騰に対応するという、その状況に対応して緊急的に規制をすると、まさにある限定したものについてそういう非常な緊急の事態に対応してやるということで規制もかけられ、おっしゃるようなこともできたのだと思います。
今回の事案について申しますと、繰り返しになるかもしれませんが、公権力の行使あるいは罰則を背景に情報を収集するということの議論と、そのことによって出される情報とのいわば目的と手段の相当性の議論をしていきますと、目的に比して手段がなかなか厳しいのではないかという論点がございますし、他方、A案という議論がございましたけれども、物件が特定されるような形で情報提供するのであると、そのことについてはやはりプライバシーとの関係で議論が、あるいは問題があるのではないかという流れでございます。そういうことを踏まえて、この時点で法制化は難しいのではないかという結論となったわけでございます。
○森委員 緊急な事態であればいいけれども、そうでないからいけないというように聞こえましたけれども、要するに、正常な取引を進めるべく指導したわけでしょう。今度もまた正常な取引がなされるように、あるいは流動化を図れるようにという意味でやろうとしていて、ある意味ではこの地価の下落も緊急な事態ですから、ちっとも状況は変わらないと思います。やるべきかやるべきではないかという、その価値判断が問題で、今度はやるべきではないと判断なさったのなら、それはどうしてですか、どういう理由なのですか、と聞いているのです。
○滝澤土地政策課企画専門官 今の国土法のお話ですが、補足させていただきますと、今回の制度は、その個人の取引価格そのものを公表するということを主たる目的として、私どもも制度化を考えてきたわけですが、国土法は収集という意味では同じなのですが、個人の価格を収集する。ただ、それは行政があくまでも価格審査に使うということで、この価格自体を公表するものではございませんので、国土法の場合はプライバシーの問題はそういう意味では全く生じないということなのですが、今回は収集した価格を、このままの形で出すというための制度ですので、まさにプライバシーの問題が生じるということです。
○森委員 余り変わらないのではないですか。以前も従わなかった者は公表していました。
○滝澤企画専門官 それは名前です。価格自体を公表するのではなくて、勧告に従わなかったという事実が公表されるということです。
○森委員 しかし、プライバシーに関わるという点では同じようなものではありませんか。つまりプライバシーの侵害というか、権力を及ぼすという意味では同じようなものでしょう。どう違うのですか。
○福井専門委員 国土法は価格審査なり価格指導という権力的行為が入っているのです。しかも、それに従わなかったら公表される。公表というのは、一種の懲罰です。結局のところ、国土法で要求される一種の権利義務関係に及ぼす影響と、単にどこそこで幾らで取引した、しかも具体的場所が特定されない前提で提供されるものというのはおおよそ異質だということが皆さん方の既にもう昨年来の説明で前提とされていた点ではないですか。今おっしゃっているプライバシーの議論というのは全く理解できないのです。プライバシーの問題があるからA案はやめましょうということにしたのだから、B案を前提にしてプライバシーという議論は今までおっしゃっていることと全く矛盾しています。B案ではプライバシーの問題はないという前提だったはずです。だから、プライバシーを根拠に持ち出されるのは何らかの意味で見解の変遷があったのだということにならざるを得ないと思います。そうであれば、なぜそういう見解の変遷があったのかということについて、ちゃんと説明責任を果たしていただかないとまずいと思うのです。
それから、国土法とこちらとで、どちらにしても、罰則で担保あるいは強制力でもって担保するというところでいえば、基本的に同じようなものですし、また今回のものは、プライバシーに影響しないように、誰がどこで取引したかはわからないように、だけど、例えば申告しないことや虚偽に対しては罰則でもって臨むということ、これは国土省自身が一貫しておっしゃってきたことです。それを前提に閣議決定がなされているわけですから、もしそうではないことをやられるというのであれば、やはりその理由について、今のような矛盾した説明ではなくて、論理的に成り立つ説明をいただかないとまずいのではないでしょうか。
○松葉課長 結局、いわゆるB案で進めていったときの問題は、遠くを見据えればプライバシーかもしれませんけれども、直接的にはそういう意味ではBという形での情報提供が持つ意味と、それから、それについて罰則をつけて強制的に徴収をするという手段とのバランスの問題と申しますか、そこのところの手段の相当性の議論に尽きてくるのだと思います。
○福井専門委員 バランスが悪いというのは、例えば今までの憲法解釈として、具体的にそういうバランス、情報開示を罰則でもって義務づけることについて、憲法違反の疑いがあるというような議論がどこかでなされているのですか。あるいはこの数カ月の間に、具体的にそういう見解がどこかから示されたのですか。
○松葉課長 そこはそういう意味で憲法論もさることながら、立法論として手段の相当性があるかどうかという議論でございます。
○福井専門委員 それはおかしいと思います。憲法論で何か、それは違憲だから法律にならないというようなことが新たに生じたのなら、内閣は憲法順守義務があるのだから、閣議決定されていても、それはやめるべきかもしれないけれども、政策判断としては閣議決定があるのです。12月22日の答申は尊重するという閣議決定が成立しているわけですから、国土交通大臣を含めて、全閣僚が、ある意味では法制局長官も含めて、内閣として決定している方針です。政策判断として。閣議決定で決めた政策判断を覆すなら閣議が必要ではないのでしょうか。
○松葉課長 そこはそういう相当性も含めた法制度的な判断だとしか申し上げようがないのですが。尊重閣議との関係について申し上げれば、もちろん最大限尊重ですから、その趣旨はそういうことであります。そういうことを踏まえて、今日ご説明をさせていただいたような地価公示制度の枠組みを活用したこういう手当をすることで最大限尊重させていただいて、実効性ある措置を講じたいということでございます。
○福井専門委員 それは何か外在的に突発事故が起こったとか、事情が変化したというような客観事情があるならわかります。しかし、なぜ変わるのですか。ご自身が示された方針と全く違うことをやろうとされているわけだから、もう少し誰が聞いてもわかる説明があってしかるべきなのではないでしょうか。
○藤田課長 私どもの今日ご報告するに至った結論なり検討経緯につきましては時間がかかって遅くなったということはおわび申し上げなければいけないと思いますし、12月時点ではまだ検討過程ではございましたが、現時点で考え得る、その時点で考え得る内容でご相談をさせていただいたことも事実でございます。ただ、検討の過程で、1つは、A案の場合には確かに憲法上の問題がある。あるいはB案の場合には、先ほど申しました手段と目的の相当性と申しますか、今までそういうことをやっていなかったということもございますが、取引価格を強制的に集めて、それを、しかも提供のために情報公開のために集めるという仕組み自身が、まさに法制上、主たる目的に相当すると申しますか、そういうことをしなくても、まず実行上やるべきではないかというふうな判断に至りまして、かつ、このワーキンググループでご指摘いただき、3か年計画で決まった内容が実現できるかという意味では、私ども、今日この時点の内容で、準備も今しておりますし、かなりこれはやれるというような判断を持ちましてこのような取り組みをさせていただきたいとご報告を申し上げている次第でございます。
○福井専門委員 やれるかどうかではなくて、なぜこうでなければできなくなったかというのが論点です。
それと、法制上とおっしゃいますけれども、内閣法制局がその案は憲法違反の疑いがあると指摘したのですか。
○松葉課長 内閣での法案作成及びその提出に当たって、法制局とも当然相談をしております。
○福井専門委員 内閣法制局が「疑いがある」と明言したのですか。要するに、内閣法制局の判断なのですか。
○松葉課長 いえ、法制局のご意見も踏まえて私どもとして最終的にそういう判断をしたということでございます。
○福井専門委員 内閣法制局のご意見がどういう意見であったのか教えていただけませんか。
○村山委員 今おっしゃったことは、内閣法制局が言ったということですね、そういうふうにおっしゃっていますよ。内閣法制局の意向を受けてそういうふうに決定ですということは、内閣法制局がこれは憲法違反だとおっしゃったということを暗に今おっしゃったわけですね。
○福井専門委員 内閣法制局がどういうふうにおっしゃったのか、正確に教えていただく必要があると思います。公式見解として出ているはずです。法制局が違憲の疑いありと言ったのであれば、それが開示できない理由はないはずです。教えていただけませんか。
○松葉課長 私どもがご相談をしている段階では、物件を特定できないような形で提供しようと考えている情報について、国民に義務を課すことが適切ではないのではないかという感触も踏まえて、私どもとしてそういう判断をしたということでございます。
○福井専門委員 物件が特定できないからだめだというのであれば、むしろA案であればいいのだということですか。
○松葉課長 いや、物件が特定できない形での今のB案というものの持つ意味です。
○福井専門委員 物件が特定できないような不十分な情報しか得られないにもかかわらず、義務を課すのは問題だという意味ですか。だったら、A案なら義務を課してもいいということに、反対解釈ではなるのではないですか。
○松葉課長 いえ、現在のB案で出される情報というのが意味内容かどうか、今出す情報についてその情報とのバランスでいかがなものかという感触も踏まえて私どもとしては……
○福井専門委員 そういうことを聞いているのではなくて、要するに、B案は情報内容が薄い、それほど役に立つかどうかわからない、ということでしょう。だったら、もっと役に立つピンポイントの情報だったら、そういう疑義は出なかったということではないのですか、という質問です。
○藤田課長 A案、B案ということですが、A案といいますと、かなりといいますか、まず個人が特定される情報なわけですが、それにつきましては、私どもの判断、あるいはアンケート結果がございますが、これはかなり国民のプライバシーの意識、あるいは法制上もプライバシーにかなり直面する問題ではないかと判断しておりまして、これは多分、行政規範としてこれを公表することは現在は法制上かなり難しいと判断しておりました。
さらに、そういう特定性を排除した格好でやるということにつきましては、情報提供としては万全ではございませんが、意義があるとも判断しております。これにつきまして、先ほど国土法の話も出ましたが、情報提供だけを目的に国民に公権力が義務を課す、あるいは担保するといったような罰則を規定するということは、現在日本ではそういう例もないものですから、これは主なる目的と相当性といいますか、こういうことのために国民に新しい義務を創設する、負荷するということは慎重に検討しなければならないのではないかということを私どもとして総合的に判断した。その時期が、実はいろいろな判断、議論をしておりまして遅くなってしまった、あるいは12月段階では法制度もかなり念頭に置いたご発言をしたということは事実でございますので。
○森委員 例えば税務申告等に土地の売買の価格というのは当然出てくるわけで、そういうときにはもう既に義務づけているわけです。それを公表するかしないかという問題で、義務づけることはできないという議論はもうないわけです。それで今回、特定できない形で公表しようということになったわけでしょう。しかし、今度はそうではなく、強制できないのだと仰っていて、説明が矛盾しているのではないですか。
○藤田課長 多少重複したら申しわけございませんが、いわゆる事実を情報提供する、あるいは申告の義務づけというのは、例えば納税の場合ですと、納税の義務と申しますか、そういう義務のための手段という位置づけがございます。それから、例えば国土法の場合ですと、まさに地価の高騰抑制のための取引の規制、そのための手段としての申告の義務づけというふうな位置づけがございます。
今回私どもが一番苦慮いたしましたのは、その目的が公表という点なものですから、その公表のための義務づけというのは、実は私どもが知る限り、我が国では例がないものでございますもので。
○森委員 株の取引や何かは名前の公表などを義務づけている例はたくさんありますよ。
○藤田課長 もちろん森委員のおっしゃるとおりでございますが、恐らくその義務づけの理由が、例えば市場参加者の適正確保だとか、そういうその次のステップが個人の規制……
○森委員 今回もまさにそのために、適正な価格を市場に流すために、価格を公表すべきだと言っているわけでしょう。株の場合と全く変わらないではないですか。
○福井専門委員 何かお話聞いていると、細かくやるとプライバシーの問題がある。あやふやだったら政策目的がはっきりしない。要するに、では、日本の法秩序のもとでは、情報提供のための不動産情報の開示というのは、どんな精粗、どんなレベルにおいても一切許されないということになるのではないですか。そんな矛盾した話はないです。
それから、もともと、まさにご自身で調べられた中でも、アメリカでは売買価格を端的に示されているわけです。アメリカで憲法論になっているという話はないわけで、それはご存じのとおりだと思います。人権規定に関する限り、日本の憲法とアメリカの憲法で同じです。プライバシーの権利とか、情報公開とか知る権利とか、解釈も基本的にほとんど軌を一にしているというのも学会の常識です。アメリカで憲法違反ではないことが日本でだけ憲法違反になるということをご主張される、もし法制局が本当にそういうことをおっしゃっているのであれば、これは法制局に確認しないといけないということになりますし、そうではないのだったら、誰が責任を持ってそういう憲法解釈を述べておられるのか、お聞きしたいと思うのです。
先ほどからお聞きした限りの国土省ご自身のご説明では、文献も調べておられないし、具体的な論拠を説明されるわけでもないし、全く理解できません。
○松葉課長 憲法論の議論について、福井委員からご指摘をいただきましたけれども、そのプライバシーの解釈論というのは、土地取引情報の開示について米国でなされているということは私どもも十分この場でご説明をしたとおりでございますが、ただ、プライバシーについて議論をすれば、それはやはり国民の意識との相関の問題でございますから、必ずしも米国でプライバシーの問題が生じていないから、我が国でプライバシーの問題が生じないかというところは、多分議論のあるところだと思います。
例えば、聞くところによりますと、スウェーデンでは所得をオープンにすることは別にプライバシーの問題は生じないけれども、フランスでは所得そのものがプライバシーだという議論もあるようでございます。もちろん憲法体系がいろいろかもしれませんので、そこの解釈論かもしれませんけれども。
○福井専門委員 憲法が一番似ているのが米国だから今申し上げたわけです。スウェーデンやフランスは日本とは随分違います。日本と一番近い人権規定を持つ国で合憲であることについて日本で違憲であるというのは、よほど慎重な論拠がないと成り立ちにくい議論です。
○八田主査 ちょっと補足させていただきますけれども、今の福井委員が言われたように、法律の問題と、政策判断の問題があると思います。政策判断の問題としては、プライバシーに関して国ごとでもっていろいろな違った解釈があることはあり得ると思います。一方、法律の問題としては、日本の憲法の制約下でできるかどうかが論点です。それについて本当に法制局が意見を言ったのかというのが福井委員のずっと伺ってきた点です。それが先ほどからのお話では、法制局がどう言ったかということが、本当にこういう憲法違反で反対したのだということのご説明がなくて、政策判断でこうやりましたということなのです。政策判断のことはもう閣議決定でもって済んでいるわけですから、基本的には法制局がどういう形で反対したからうまくいかなかったというお考えなのか、あるいは法制局が一切関係ないのか、そこについて伺いたいのです。
○村山委員 法制局がおっしゃった感触を踏まえてという言葉をさきほどからお使いになっているのですけれども、その感触を踏まえてというのは私はよくわからないのです。言われたのか、言われないのか、言うだろうなと思ってそういうふうに言っているのか、感触を踏まえては説明にならないです。
○福井専門委員 さらに補足すれば、法制局というのは、まさに法制執務のチェックをする組織です。政策判断を委ねられた組織ではあり得ないのです。政策判断はむしろ国土省なり通常の各省庁大臣が合議体で決めるべきことです。だから、政策判断のレベルで判断したことについて、法制局の感触を踏まえて判断するということは、これは内閣のあり方としておかしいのです。法制局が明確に指示できるのは憲法論か法制判断だけです。したがって、その根拠をお聞きしたいということです。
○滝澤企画専門官 プライバシー論につきまして補足させていただきますと、プライバシーの概念は、まだ我が国の法律上明確に規定された概念ではないというのが通説でございまして、それは私ども何名か今回の立案作業に関わる関係で、法学部の先生にご意見を伺ったところによりましても、確定した概念ではないということでした。それは我が国においても時代によって変わり得るし、当然国、社会によって変わり得る概念であるということでございました。
今回のことに関して、A案みたいなものに関しては問題がプライバシー、我が国の今の多くの方がプライバシーと思っているレベルと比較すると、プライバシーにまさに当たる可能性が大きいというのが私どもが得た感触でございました。
○松葉課長 私どもとして、その物件をいわゆるB案のような形で情報提供することについて、その情報の持つ意味と、それから罰則をかけてまでやることとのバランスの議論として、法制論としていかがなものだろうかと、こういう観点から申し上げたような判断を下したものでございます。
○藤田課長 若干補足しますと、制度全体を組む場合に、法制上の位置づけが望ましいのではないかという観点もございまして、いろいろ議論しておりました。最終的には、新たな法制を持たなくてもできる部分、少なくとも提供は法制がB案であれば要らないと。ただし、収集について義務づける、あるいはそれについて一定の罰則等の担保措置をつけるというのがいわば法制上の必要理由になるわけでございますが、これは先ほどからいろいろ申し上げておりますが、私どもいろいろな検討を重ねた結果、国民一般の方々、取引当事者に情報提供を義務づけることは、この目的が情報提供のためで、かつ内容として、もちろん先ほど申しました理由で物件を特定した情報は提供できないということになりますと、これは現時点では手段と目的の相当性から見て、先ほど国土法とか税金の例もございましたが、これはかなり大きな目的が出てございますが、これが収集のためだけの義務づけ、制度化できなくなると、これはあえて法律をつくらなくても、例えば任意で集めてやってもいいのではないかというふうなことで……
○八田主査 そちらの判断を伺っているのではなくて、法制局がどういう意見を持っているのか。それとも、法制局は一切関係なく、国土交通省の政策判断で出したのですか。そういうことを村山委員も福井委員も伺ったと思うのです。要するに、事態ががらっと変わったのです。その原因は何でしょうか。そこに納得のいく説明をいただけないでしょうかということなのです。今のところのご説明だと、我々が知り得ない巨大な力がどこかで働いて、あるいは何かの特殊な理由があって、全部ひっくり返りましたとしか考えられません。閣議決定とは違いますけれども、我々だけが自発的に政策判断をしました、理由は全くありませんと、そういうご説明なのです。これは全くわからない。
だから、一つづつはっきりさせましょう。感触をどうのこうのというのをもうちょっと具体的に定義していただけますか。法制局が国土交通省の意見形成にいかなる形で影響を与えたのか、あるいは法律化しないという判断の決定的な要因になったのか。
○藤田課長 八田主査がおっしゃいましたが、私ども、行政の検討過程では、もちろん法制局にも相談をいたしますが、先ほどから申していましたように、法制局からは、ほかの大学の先生と同じように、A案であるとプライバシー上問題が生じる可能性があるのではないかというご指摘はちょうだいしたことは事実でございます。一方で、法律を組む過程において、先ほど私ども手段と目的の相当性について議論させていただいておりますが、そこら辺は私どもの最終的な総合判断ということでございます。だれがこう言ったからということではなくて、最終的には私どもの判断というふうに考えております。
○福井専門委員 法制局の見解はB案についてはなかったということですか。そこをイエスかノーかどっちかで答えられるはずなのですけれども。見解があったのなら法制局に聞いてみないといけないですから。どっちなのですか。
○松葉課長 私どもとして、B案を前提にご相談をさせていただいております。その案についての感触というのは、しかし、これは感触なのですけれども、感触を踏まえてと申し上げた感触の趣旨は、そのB案というものの程度の情報を提供することに関し、国民に罰則をかけてまで強制をするということについてどうだろうかという感触もあり、私どもとして、あるいは他の先生方のご意見も踏まえ──他の先生方というのは、先ほど私どもの、今申し上げたような学者の方のご意見なども踏まえ、総合的な判断としてご説明したような結論になったということでございます。
○森委員 強制的ということの裏には、嘘の申告をしてはいけないということがあるのです。しかし、任意というのは、何を言ってもいいということなのです。そんな情報を集めてどうするのですか。
○藤田課長 私ども、逆に申しますと、先ほどから地価公示の枠組みと申しておりますが、地価公示は、端的に申しますと、背景には不動産鑑定士を私どもが評価員という形で法律上指名しまして、鑑定士が一定数の事例、数を申しますと、十数万件の事例を今とっておりますが、そういう具体的事例を集めてきて任意で、それをもとに評価しております。実は、地価公示自体が現在でも任意の情報収集に乗っかっている制度といえば言えるわけでございます。
ただ、今回私どもが考えておりますのは、それにつきまして端的な取引の実態を反映する情報を法務省からいただきまして、私どもの名前できちんと調査をする。実は、先ほど5割と申しましたのは、私どもは時々、1万とか2万のサンプルで調査しているものもございます。これについては任意でございますが、有効回答で5倍程度の回収をしております。これをかなりきちんとした格好で私どもが調査をする、あるいは来ない方にはお願いをするということで、しかも、それにつきましては、よほどひどい状況については、私どもなりにチェックもできますので、そういうことを踏まえて整理すれば、かなり現在のいろいろな地価に関する仕組みと同等、あるいはもうちょっとというかかなり進んだ格好での情報提供になると、そのためのことが、新しく登記に関する情報へ、かつそれを私どもが地価公示の枠組みの中でチェックし、かつそれを鑑定評価したものではなくて、生の情報を出すということによって、今までなかった新しい情報提供がかなり本格的にできるというふうに私どもなりには考えております。
○森委員 それが非常に不正確だから、こういう議論になっているのです。また同じことをするとおっしゃって、それで予算を使うというのは、私は理解できないです。今までできていることに新たに予算をつけるのですか。新たな予算を、どう使うのですか。
○藤田課長 先ほどシステム構築と申しましたが、これはすべて大量に情報を処理しますので、すべて電子化して処理したいと思っておりますが、イメージとしては、法務省から登記に関する情報をいただきまして、それを処理した上で、調査を……
○森委員 それでは、今までとどう違うのか、はっきりご説明をしていただきたいです。今までもあいまいですが、今後はどう違うのか、はっきりしてもらいたいです。
○藤田課長 今後の違う点は、ここに紙で3点書いてございますが、法務省から具体的な取引当事者に関する情報を頂戴いたします。これは地価公示の枠組みということを書いてございますが、その方にピンポイントで国土交通省といいますか、私どもがその方に国として取引情報の収集を行いますので、調査……
○福井専門委員 申告する、しないは自由なのでしょう。
○藤田課長 回答する、しないですか。それは協力依頼を出します。
○福井専門委員 嫌だと言ったときには、それっきりなのではないですか。
○藤田課長 その背景として、現在、類似調査で5割、あるいはこの前ご紹介したアンケートでは7割程度の方が匿名性があれば、特定しなければ回答、情報提供してもいいとおっしゃっています。
○福井専門委員 そういう今の傾向のことではなくて、嫌だという人には義務はないわけでしょう。
○藤田課長 義務はない形になります。
○福井専門委員 それから、もし虚偽の価格を申告した場合に、何かサンクションありますか。担保できますか。
○藤田課長 サンクションはありません。ただ、先ほど申しました鑑定評価員が一たんチェックをするような仕組みを考えております。
○福井専門委員 今でもできることです。
○村山委員 要するに、違いは鑑定士協会からのアンケートが国土交通省からのアンケートになるだけでしょう。今の地価公示価格は、都道府県の鑑定士協会を通じて集めているのです。詳細は忘れましたけれども、差出人が県の鑑定士協会か地方自治体かどちらかから出ていたと思いますけれども、それが国土交通省に名前がかわるだけでしょう。
○藤田課長 表現が雑になりますが、要するに、鑑定士さんが自分の足で稼いでいる情報ということに対しまして、今回は私どもが……
○福井専門委員 それがいい加減だから正しい情報を出させる、というのがすべてのきっかけだったわけでしょう。要するに、事例を捏造する鑑定士がいっぱいいるから問題だというのが出発点だったではないですか。
○藤田課長 2つございますが、ですから、今回は事例について私どもがダイレクトに集めると、それからちょっとここから先は大きく違うのですが、事例を我々は電子的に処理して、それをインターネット等で公表すると、今まではそういうことは一切しておりません。
○福井専門委員 それはちょっと論点がずれるので、要するに、国土交通省が、局長以下一貫しておっしゃっていたことは、任意の協力を前提にして集めた情報では何の意味もない。罰則でもってでも担保して、正確な情報を、しかも、全体の情報を知ることにこそやはり意味があるのだということは、国土省自身が一貫しておっしゃってきたことです。なぜ、任意の制度に問題があるのかというと、今ある程度出てきましたけれども、2点あるわけです。任意で協力してくれる人のデータというのが本当に正確な全体の傾向の情報をとっているのかどうか。要するに、申告するのに都合が悪い、例えば市場価格から離れたところでうまく取得したとかというような方は申告するインセンティブを持たないということは広く知られた事実です。とすると、正しい市場価格形成の非常に重要な情報であるところの、知られたくない人の情報は出てこない。その時点でまずバイアスがかかるわけです。そういう説明を国土省から受けたと思います。
もう一つは、それが本当の情報である保証がない。知られたくない人は、仮に申告するにしても、うその情報を書くかもしれない。それをチェックするすべも正確なものはないし、しかも、サンクションが何もないということであれば、一体それに何億もの予算をかけてデータベースを構築して、幾らインターネットで公開しても、根っこのところがまさにご自身がおっしゃってきたように、任意性あるいは真偽のほどについての保証がないものであったときに、一体何の意味があるのでしょうかということになりませんでしょうか。
○村山委員 その議論は3年前のものです。だから、法制化しましょうという話でやっているわけであって、何で3年かけてまたもとに話が戻ってしまうのか。
あともう一つ、先ほど、A案はプライバシーの観点からばつだと言われましたと、その後いろいろおっしゃって、また最後に、B案を前提に相談したけれども、罰則をかけてまで強制的に徴収する意義があるというようなことを言われたというふうに判断された、と。要するにイエスかノーかとさっき聞きましたけれども、イエスなのですね。でも、その後に『総合的な判断』というふうにおっしゃっていたので、イエスかノーかというお答えは今までいただいていないのです。A案がだめだというふうに言われたというのは正確に今お伺いしましたけれども、B案についてだめだと、A案と同じように言われたのですか。
○福井専門委員 要するに、閣議決定されて、法制局長官も入っている閣議で決めたことを法制局がひっくり返すという重大な決断を本当にしたのでしょうね、それ相応の覚悟があってそのようにしているのでしょうか、ということを確認したいのです。
○藤田課長 この法制化の判断につきましては、先ほど申しましたように、最終的には私どもの判断です。
1点違う話をしてお叱りを受けるかもしれませんが、村山委員のおっしゃった3年前の議論との関係で申しますと、私どもこの政策意義が非常にあるというふうに大きく判断を変え、かつ国土審議会でもご議論をいただき、かつ今回はそれをかなりまずインターネットで提供する。かつそれも加工情報……
○村山委員 正確性が担保されない情報を、幾らインターネットで提供されても、意味がないのです。
○藤田課長 正確性の担保ということで申しますと、私ども100%きちんとしたデータがあるわけではございませんが、アンケートといいますか、この調査票自身は取引当事者、いわゆる業界の方々ということではなくて、実際に国民として、あるいはいろいろな買った方、売った方を直接対象にしたものですから、一般的に、特殊な事例につきましては別にして、あえて虚偽の情報を私どもに送ってくるということは、今までの例からいうと余りないのではないか。あるいは、いずれにしても、そこについてはチェックもできると考えておりまして、任意だから虚偽が集まってくるということではないと私どもは考えておりますし、それにつきましてはまた16年度、いろいろな形でチェックシステムを考えていきたいと思っております。
○森委員 残念ですけれども、任意というのは、都合が悪いのは出さないという意味です。つまりは、どこか変更してしまって、実態とはかけ離れてしまうということなのです。そういう情報を集めて、いろいろ費用をかけて提供されても、提供される方も困るわけなので、そんなことに予算は使わないで欲しいです。
○藤田課長 そこは森委員おっしゃったように、任意だからではなくて、そこは今までもそういう意味では地価公示はチェックした上でバックデータですけれども、今回はそれをさらに大量に集めた上で、まず大量に集めるということが非常に大きな意味があると思います。その上で、正確性につきましては私どもも今、もちろんそれは罰則があっても虚偽のことを書く方だってないわけではないかもしれません。確かにそういう意味では、担保力が薄れるわけですが、およそ出していただける方、これはまたいろいろな格好でお願いをして、積極的に出していただくというふうに思っておりますが、出してもらって……
○福井専門委員 それが何のためらいもなく出せる人は、何のやましいこともない人で、そうでない人は出さないか、虚偽になるのは当然なのです
○森委員 やましいかどうかは別にして、情報を操作したいという意思があれば、それがやましいと思っているかどうかは知りませんが、任意だとできるのです。そんなものではしようがないですよと言っているのです。
○福井専門委員 しかも、それをチェックするのに莫大な行政コストをかけるというようなことが本当に合理的でしょうかという、国の会計のあり方としての問題が別途発生するのではないでしょうか。
○松葉課長 ただ、恐縮ですけれども、今日ご説明をさせていただいたこの不動産取引価格情報の提供ですけれども、今まで私どもとして取引について全く情報提供──地価公示などを別にすれば、個別の取引情報について、私どもはそもそも、今回、法務省からご協力もいただいて、登記に係る情報を得るというところで、今までとは飛躍的にそこのところは変わってくるのです。それについて調査をかけるということですから、今までの全容がわからない中で、いわば手探りの中でやっているものから比較すれば、画期的にその精度が上がってくると、こう思うのです。
○森委員 伺いますが、法務省から得た登記にかかわる情報については全部調査するということですか。それともいいと言った人の分だけやるというものですか。任意というのはどういう意味なのですか。
○松葉課長 年間160万件ぐらいありますから、こちら側の体制の問題もありますから、160万件すべてになるかどうかはわかりませんけれども、それは今後つめる話ですが、かなりの程度について対象とするものは私どもの方は調査をかけたいと思っております。お答えをいただく分は、確かにおっしゃるように任意になります。
○森委員 全部集めれば意味がありますけれども、またそこで正常ではないから外すとか、いろいろな判断を入れたのでは全く意味がないと思います。
○藤田課長 そういう意味では、法務省からいただく情報は基本的に全部もらおうと、もらえると思っております。取引に関する異動につきましての情報をいただけるというふうに思っております。
○森委員 何が任意なのか意味がわからないのですが。
○村山委員 取引当事者が答えるのが任意。
○八田主査 だから、答えない人は答えない。
○森委員 法務省に答えないということですか。
○八田主査 法務省にではなくて、国土交通省にです。
○藤田課長 国土交通省がいわゆる取引した方にピンポイントで調査をかけるわけです。
○森委員 法務省から登記にかかわる情報をすべてもらってという意味のようですよ。
○八田主査 ただし、売買価格については、その対象者に対して質問して、答えなくてもいいということですね。
○森委員 いや、法務省から売買価格に関する情報をもらうのでしょう。
○藤田課長 登記に係る情報というのは、現在もこのままですが、法務省では取引価格に関する情報は基本的には搭載されてございません、登記には。
○村山委員 だから、そこでチェックもできないわけです。買ったかだけです。登記したかどうかだけです。
○福井専門委員 移転登記があったかどうかだけです。
○森委員 申請するときには価格を入れるのだけれども、登録はしないのでしたか。
○藤田課長 登記には出ないです。
○村山委員 登記があった人だけを確認して、それに対してアンケートを……。
○森委員 申請資料を見れば分かるのではないですか。
○藤田課長 登記で記載してある場合がないわけではございませんが、かなり正確といいますか、登記簿で金額を書くことは少ないというふうに推測されています。
○松葉課長 登記簿に取引価格は別に記載されていません。
○村山委員 だから、登記があった人たちのデータはもらえるけれども、それに対して国土交通省が取引当事者の調査を実施するけれども、調査に対して答えるかどうかというのは任意だから、中身も金額も正確かどうかというのが担保できないので、という話をずっとしているのです。
○森委員 これは結局法務省からもらうのではなくて、法務省から取引した人の名前を得て調査すると、それだけのことですね。
○松葉課長 そんなことはございませんで、異動にかかわる情報、取引があったという事実を我々が今現在実際に承知していないわけですから、そこのところの情報を得て、そのものについて調査をかけるというのは、大変な大きな進歩だと思っておりますが。
○福井専門委員 登記簿は誰でも見られるのです。その気になれば集められる情報がたまたま法務省から直接来るというだけで、何の意味があるのですか。
○松葉課長 現実には全部登記簿を毎日洗うというのはあり得ないです。
○村山委員 でも、そちらにとっては確かに大きな一歩かもしれませんけれども、我々が要求し、我々が何年もかけて話をし、そしてやっとここの閣議決定まで持ってきた中身とは全然違うわけです。だから、コップの中の嵐みたいな話をされても困っちゃうわけですよ。
○藤田課長 これは私どもに大きな一歩と言っておりました。これは私どもなりに一生懸命やってきましたし……
○村山委員 一生懸命やっていないなんてだれも言っていないのです。
○藤田課長 大きな一歩ではありますが、これは初めて世の中に、しかも大量の取引価格情報を生で出すということについては初めてでございまして。
○村山委員 でも、任意でしょう。
○藤田課長 任意ですが、私どもの目標は標準値で5割から7割、あるいはこの審議については、それが現状ではゼロということから見て、まずそこから始めることが一番重要ではないかと。現在、生情報はオフィシャルに出ているのはゼロでございます。これを初めて何十万件になるか、どういうオーダーになるかというのはこれからどんどん広げていきたいとは思っておりますが、それをいわゆるピンポイントのターゲットはまず把握できますので、そこについていろいろなご理解をいただくようなこと、扉をあけようではありませんが、5割、7割と増やしていって、もっと増やしていきたいと。その上で、そういう情報が世の中に出るということがどんどん動いていく、あるいは取引情報の価値、使い道が国民の一人一人の方々はアメリカのようにわかっていただくということが次の一歩の前提条件かなというふうに私どもは思っております。
○森委員 本当にそうだとするならば、要するに、公表してもいいよという人が答えるわけなので、それは特定される形で公表してもらう方がずっと意味がありますよね。わざわざ公表してもいい人だけを集めておいて、それなのに特定しないということは、こんなばかばかしいことはありますかね。
○松葉課長 しかし、そこは特定して公表するぞという議論になってしまえば、現実……
○福井専門委員 選択できるようにすることだってあり得るわけです。要するに、Aの形で特定して出してもいいという人がいれば、その方が望ましいわけだし、Bでなきゃ嫌だという人は、Bでも済ませてあげるということだってあり得ると思います。
○八田主査 しかし、任意だったらば、正確性がわからないですよね。
○福井専門委員 前提が任意だったら、話にならない。
○八田主査 それで、時間が過ぎましたので、今までの議論をまとめますと、2点あると思うのです。
第1点は、法制化をしないことに決められた原因は何かということです。今までのこの閣議決定に至るまでの議論から見たら、ご当局としても、義務化して、そしてさらにそれを法制化するということを前提にお話しになっていた。そのことについては意見の相違がないと思います。それで、最近になって方針を変えられた。その原因がどこにあるかということが基本的には明らかにならなかった。
A案である場合には、法学部の先生たちは、やっぱりプライバシーに問題があるだろうと言われた。それから、法制局の方々と議論されたときは、B案を前提に議論されていたのだが、そのB案に関しては、この程度のものを得るのに義務化する価値があるのか、という感触を得た。そこで、実は大変な意義があるのですという説明をされたのかどうかわかりませんけれども、そこはもう感触を得ただけでさらっと政策判断を変えられた。その原因がどこにあったのかわからない。この閣議決定と違うものが出てきた以上、我々としても、その原因を調べさせていただく努力をしなきゃいけないと思っています。
第2点は、任意の情報にどれだけの信憑性があるのだろうかということです。価格操作をする余地ができるのではないか。例えば不動産屋さんが自分のところの名前はどうせ出ないのですから、ちょっと高目に言ってくださいよということを一定の地区の人たちに言って、そして、そこら辺の相場を上げるというようなことだって当然あり得るだろう。先ほど森委員がそういう虚偽のことをやる可能性があるとおっしゃったのは、そういう意味だと思います。そこでは、確かに松葉さんのように、全般的な情報が得られるという側面で、今まで違ったところがあるかもしれないけれども、任意にしたために、特定の場所の価格については、いろいろな価格操作の可能性が出てくるということも事実だろうと思うのですね。だから、そういう疑いを持たれないためにも、義務化することによって質的に違った情報がでてくると思います。それをやめたことの理由がよくわからない。ここまでの議論は大体そんなところだと思います。
それで、先ほどは、第一歩としてこれを任意でやりたいというふうなことをおっしゃったのですが、では、これは将来法制化する予定はあるのですか。それとも、今回のようなもろもろの議論で、もうこれは法律的にはできないという議論なのか、その辺は今のところのご判断はどうなのですか。将来義務化する可能性はもうなくなっちゃったのかどうかということです。
○藤田課長 まさに八田先生が言われた法制化というのは義務化と裏腹の仕組み、そうでなければ自由にやっていいということなのですが、そこは私どもの認識としては、この取引価格情報がまず提供されると。提供されることの意義、あるいは提供することについて国民がいろいろな調査に回答することを通じて理解いただくということになりますと、国民のアンケートはございますが、いわゆる社会的意識というのは国民の意識、あるいは評価というのは、そのときの社会条件、客観条件と変わる部分もあるというようなことを私どももいろいろな専門の先生方に伺っております。まず、突然なかったことをやるよりは、これを始めていって、取引情報が17年度から世に出てくる。もっと早い調査もしたいと思っておりますが、そのことが取引情報の意義あるいは価値、あるいは提供することの社会的意義を国民の取引する方々一人一人、あるいは関係当事者がわかるということになれば、それはもう当然出すものだ、出した方がいいのだというようなご理解をいただく環境がつくれると思っています。そうなれば、またそういう法制的な議論というのは十分できるのではないかと私どもは思っております。そういう意味で大きな第一歩ではないかと思っております。
○八田主査 今回義務化しないことは、純粋に政策判断であって、法制局その他から強くあった法律的な判断ではない。だから、これは将来、十分義務化する可能性があるものだと、そういうふうに受け取ってよろしいのですか。
○藤田課長 私どもはそう考えております。そういうふうにまた持っていきたい。まず、2つ意義があると思っておりまして、1つは、取引情報がないものが出たことによって、実際の不動産市場やいろいろな証券化を含めた業に関する方々について便益を提供できること。それから、もう一つは、そういうことが長期的にそういう法整備も含めた変革につながっていこうと、この2点の意味で大きな意味であると思っております。
○八田主査 そうすると、また元に戻りますけれども、今回のご判断というのは、純粋に政策的な判断だけで、ご当局だけで決定された。それがこの閣議決定にもとる、閣議決定とは違う決定をなさった。それを政策的判断としてなさったというふうに受け取られると思うのですけれども、それでよろしいのですか。
○藤田課長 最終的な総合的な判断は私ども。ただ、これは多少お言葉を返すようでございますが、私ども、いろいろこの場でのご説明の中でも申しておりますが、今回の措置によって、いろいろなご評価がございますが、私どもなりに閣議決定内で課せられた課題について相当程度応えられるものに実行上できるのではないかとも思っておりまして、必ずしも閣議決定を無視したとか考えなかったとかそういうことではなくて、私どもできる限りで閣議決定を実現するものにしたいと思っていますし、またそのように近づく枠組みをつくっていきたいと思っております。
○八田主査 これまでの当WGでの話は法制化、義務化を前提としたお話をしてこられたのに、それが突然変わったわけです。にもかかわらず、突然変わったことの説明が全くなかった。法制局が関係したのかという議論をずっとしていたけれども、結局それは関係なくて、純粋に政策判断として突然お変えになったということだと思うのです。だから、これ以上申しませんけれども、それはちょっと納得いかない議論だと思うのです。
○村山委員 国土交通省大臣は何とおっしゃっているのですか、そのような判断の変化に関して。
○藤田課長 私どもも当然、このような枠組みを議論の末、また中では、大臣、あるいは大臣だけではなくて関係の方々にずっとご相談をしております。そういう意味では、第一歩としてこのような現実的に情報をどんどん出すということに大きな意義があるということで、まずそこの部分をしっかり進めるようなご意見等を皆様からいただいて、私どもとしての整理としたわけでございます。
○福井専門委員 虚偽の申告の話がさっきから何度も出ていますけれども、それがあったときの回避手段とか担保措置も全然わからないのです。
○藤田課長 地価公示法で、一応評価員という法的な義務なり権限を持った人間を指名しております。それからさらに土地鑑定委員会という専門の機関がございます。一個一個見るか、それをむしろ電子化してチェックするシステムをつくるのが先かなと思っています。
○福井専門委員 チェックといっても、要するに、真実は取引当事者しか知らないのですから、取引当事者が口をつぐんでうその申告をしたら、ほかのだれがどんなに詳しく調べたってそれ以上わかりっこないのではないですか。
○藤田課長 そういう意味で言えば、罰則でペナルティーをする以外は、そういうものはすべてわからない。もちろん罰則のペナルティー力という問題もございますけれども、それはまさに福井委員おっしゃったように、真実はわからないのは事実かもしれませんが、客観的にそういうのがチェックできるように最大限やりたいと思っています。
○福井専門委員 できないということが前提だから、それについて最大限努力してもできないものはできないのです。まさに組織的に意図的に価格操作しようなどということになりかねない。ある意味で、今度はそこについて国土交通省という公的機関を通じて虚偽情報で相場支配ができるということを公言することにもなりかねないわけです。それが非常に重大な誤りの第一歩かもしれないということになりかねないわけです。
○森委員 本当に公表なさるとすれば、「これは確かです」などというような余計なことをおっしゃらない方がいいと思います。そういう権威付をなさらない方がいいと思います。
○藤田課長 ただ、1点だけ、誘導とかというのはかなり狭い範囲で、かなり特定の方ということはあるかもしれませんが、例えば都心の23区で当事者に調査をかけた場合、あるいは区でも同じですけれども、相当数になるわけで、かつ当事者というのはいろいろな方といろいろな取引をする、いろいろな個人、法人があるわけでして、客観的に見れば、もちろん我々もそこはまた吟味いたしますが、簡単に一当事者なり集団が誘導とかそういうことには……
○福井専門委員 仲介業者がかかわっているのがほとんどの土地・住宅取引の実態です。業者の方だって団体もあるし、組織的な力もあるし、ちょっと人間観が甘いのではないでしょうか。
○藤田課長 もし、意図的にそういう業者の方ならばそれはまた別のペナルティーというか、業法としての整理はあるとは思います。
○福井専門委員 当事者がどんなことをやったって、当事者が犯罪にも該当しない、行政罰にも該当しないことをしているときには、教唆も幇助もあり得ないのです。
○藤田課長 そこは行政法になりますけれども、いわゆる業法の世界あるいは業者としてのパフォーマンスとしてそういうことがもしわかれば、相当厳しい審査を受けるべき、チェックを受けるべきことではないかと私は思います。
○福井専門委員 仲介業の判断に入らないではないですか。価格情報は。
○森委員 余計な加工をしていない、権威付をしていない、生の情報を出していただきたいと思います。たくさん嘘をつく人がいてもいいのですけれども、その生の情報を出していただく方が、なまじこれは確かな情報ですなんてというよりも役に立つと思います。
○藤田課長 もちろん私どもの一番の思いは、加工の情報ではなくて生の情報を──特定性という問題はありますけれども、生の情報を出すことが規制改革推進会議、あるいは閣議決定を踏まえた今回の一番のポイントで、まず、価格公示の生の情報を出す、できるだけ大量に出すということに大きな意義がある一歩だと思っております。
○村山委員 ですから、件数が何件であろうが、多かろうがどうだろうが、そちらはそのような形で意義があると思ってらっしゃいますけれども、私は委員全員は任意のそういったものに関して意義はないというふうに思いますので、そちらさまが幾ら意義があると、大きな一歩だとおっしゃっても、この閣議決定の前提要件を覆されたということに関しては依然納得できませんということを私は最後に申し上げたいです。
○森委員 私はちょっと意見が違います。どのぐらいの取引事例が公表されたかという数字も一緒に発表されていれば、やはり意義があるなとは思っています。そんなに予算を使ってやるべきものかどうかということに関しては非常に疑問を感じます。しかし、どうせ発表するなら、なるべくたくさんの事例を公表するというところに最大限努力していただきたいので、確実であるかどうかなどということにまたお金を使わないでほしいと思います。
○藤田課長 もちろん、今、森委員がおっしゃったようなことで、私どもの考えておりますのは、むしろ大量に処理する、しかも円滑に処理するため、そのことがいろいろな意味で台数の原則から言えば真実性にぐっと近づくのではないかと思いますが、そのシステムの構築と、そのプレ調査のための予算として16年度措置として、それを組み立てていきたいというふうに考えております。
○八田主査 時間になりましたので、あとほかにご意見ございますか。
○福井審議官 先ほど主査が整理された2点の後者の話、先ほど総務課長が「第一歩」という具合におっしゃったのですが、今の段階で、将来に向けて法制化を検討するということは言えるのですか。判断できないのだったら、後で教えてください。それが1点。
2点目、八田主査の第1点目の話なのですが、法制局との関係、法制論も含めて、あなた方よりもっと上の方が出てきて、この場できちっと説明するべきだと思います。これは主査のご判断ですが、もうここで打ち切ってしまうのかどうなのか。きちっと紙にまとめて、もっと上のレベルの人が、法制局との関係、法制論も含めてきちっとご説明いただくということは可能ですか。
○藤田課長 検討させていただきたいと思います。
○八田主査 この問題は、ここでおしまいという性質の問題ではないと思います。今後も調査を続けさせて頂きたい。先ほどの2点に尽きます。第一に、任意ということでは質的に中身が変わってしまう。第二に、任意の話が突然出てきたという理由が今のところ全く不明である、その理由を色々な形で伺ったけれども分からなかった。今後とも調査させて頂く。それから、今後どうするかということに関して明確な指針を頂きたい。全く話がひっくり返るということでは困るから、非常に高いレベルで今後の方針というものを、何らかの形で、最終的には言って頂かなければいけないと思います。それは義務化についてです。今日は色々ご説明頂いて、今後の検討の取り掛かりができたと思います。
お忙しいところ、お越し頂きまして有難うございました。
以上