○八代主査 本日は、どうもお忙しい中ありがとうございます。
私は、このワーキンググループの主査を引き継ぎました八代です。よろしくお願いいたします。
それでは、「駐車違反対応業務の民間委託について」ということで、昨年の官製市場ワーキンググループで指摘させていただき、今、警察庁において検討が進められていると思いますので、その状況等を踏まえ簡単に最初に御説明いただきまして質疑応答に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○末井交通企画課長 警察庁の交通企画課長の末井でございます。よろしくお願い申し上げます。
お手元に、資料を都合3種類配布をさせていただいていることと存じます。
「違法駐車問題検討懇談会の開催について」というものと「違法駐車に係る制度改革の検討について」。それから、新聞のコピーということでございます。これらを用いながら、先ほどの御指示の件について御報告をしたいと思います。
まず答申後の動きでございますけれども、昨年12月12日に答申いただきまして、本年3月28日に閣議決定の運びになりました。その中で、広く国民の意見を踏まえながら制度の検討を、ということで始めたわけでございます。
まず、1枚目の資料「違法駐車問題検討懇談会の開催について」というところをごらんいただければと思いますが、3月27日付で広報をしたものでございます。ここに、広く国民の意見を踏まえながらとありますので、やはり違法駐車への対処の仕組み、体制等についてさまざまな観点から幅広く意見を求めなくてはならないということで、2にございますとおり、警察庁、交通局長に対して提言をいただくという仕掛けをつくりました。1回目は4月2日に行いまして始めたわけでございます。
この内容につきましては、交通違反、取り分け駐車違反につきましては大変身近な問題であるということでございますから、警察庁のホームページに議事要旨、また資料につきましては掲載し、いろんな御意見をオープンにして議論を深めていこうという姿勢で取り組んできたところでございます。
懇談会のメンバーにつきましては、12名の方にお願いを申し上げました。これは地域性から申し上げますと、東京、愛知、京都、大阪といったところからお願いを申し上げ、また有識者という観点から申しますと、学識経験者、行政の経験者、そしてマスコミの方、ユーザーの方、事業・労働組合の方、また女性にもお入りをいただくという形で工夫をさせていただいたところでございます。
今後のスケジュールということになりますと、この懇談会自体は、2に書いてございますが、15年9月を目途に提言を交通局長に提出するというふうにしておりまして、これにつきましては、ちょうど明日23日に第3回の懇談会を開催をしていただきまして、その場で、一体どのような方向性というものが国民に受け入れられるのであろうかということで、やや異質ではございますけれども、懇談会がパブリックコメントという形で国民の意見を求めようという仕掛けにしております。これは恐らく6月から7月にかけて行われるのではないかと思っております。その後2回ほど開催をしていただきまして、とりまとめして、9月には提言をお願いをしたいということでございます。
9月を超えますと、できることならスムースに15年度中に結論という閣議決定の内容でございますので、結論を得るという形にいたしまして、それを速やかにいろんな作業に反映をさせてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
検討の内容でございます。これが次の「違法駐車に係る制度改革の検討について」というペーパーで御説明をさせていただければ便利だと存じますが、現状におきまして駐車違反は常態化している、苦情も増えている、他方で不公平感というものが根強くあると。その需要の面、供給の面というのを見ればということで、そこに棒グラフで示しておりますが東京、大阪、ここ10年間というものを見れば、大体パブリックパーキングというものが37万台ぐらい増えているという状況はあるということでございまして、またそれぞれの駐車場、これはサンプリングでございまして、それぞれ休日、平日、都心3区、あるいはそれ以外ということで見ると、満車でないという状況もよく見られるところがあるということをいっているわけでございます。
2枚目を見ていただきますと、駐車関連の110 番。これは苦情の問題でございますが、刑法犯で110 番いただくものよりも実は多いということでございまして、これは御自宅の前に車が停まっている、これは何でしょうかというような問題から、本当に車が出られないというような問題、さまざまであろうと思いますが、統計上駐車を巡る苦情という形でとっておるものでございます。
次に、取り締まり上の問題。これが恐らく、今後の議論を規定していくということでございますが、私どもの受け止め方といいますのは、駐車違反というのは定義上2つあるわけでございまして、継続して停車するというのが1つ、これを運転者がやると。貨物の積み下ろしのための場合、継続して停車して、5分超えれば駐車でありますが、他方でその車を離れて直ちに運転することができない状態にするというような形の駐車というものもあると。これを放置駐車違反というふうにいっておるわけでございます。これは平成2年の道路交通法の改正で、通常の駐車違反では10万円以下の罰金というところを、放置というものは直ちに動かすことができないという点で悪質性が高いということで15万円以下の罰金という形に、重罰化の方向に動いたわけでございます。
そういった放置駐車違反というものについて、結局のところだれも見ていない。だれもといいますのは、警察官が、取り締まる側が見ていない。そうしますと、だれが行為をしたのかという問題について非常に困難を来たす。あるいは、車のナンバーから呼び出しをかけましても、それは違いますとか忙しくて行けませんといったような形の呼び出しに困難を伴うということが非常に多くて、結局、検挙に多大なコストがかかるという形であろうというふうに私どもは認識をしたわけでございます。
そこの表に駐車違反の数というものが書いておりますが、ここ3年、189 万から181 万、172 万と落ちておりまして、駐車違反全体の中で放置駐車違反の占める割合というものはおおむね95.5〜95.6%ということで変わっていないと。これは、先般も申し上げたかと思いますが、道路交通法違反といいますのは、これは私ども、やはり悪質、危険、迷惑性の高いものに限ってやろうということ、そしてまた国民の要望の高いものということになりますから、このような傾向値が出てくるというふうに理解をしておるところでございます。
なお、悪質な駐車違反事例というのは、そこに書いておりまして、これは時間の都合上御説明申し上げませんが、何度も何度も駐車標章を張り、取り付けられたけれども全く出てこられないという方は現実にいらっしゃると。それを検挙するためには、張り込みをしなくてはならないというような現行の仕掛けというものがあるということでございます。
そこで、これは3のところでございますが、これはこの場で説明は要しないと存じますが、本会議で御指摘を賜った民間委託すべきとの指摘について掲げまして、こういった世の中の要請もあるということで説明をしたわけでございます。
なお、検討としては当然、諸外国についてはいかがかということもこの場でいろいろと御議論いただいたわけでございまして、私どもも我が国だけという話ではないだろうということで、所有者の責任、あるいは非犯罪化した上での民間委託といったものがあるということを前提としながら、民間委託の手法を含む公平で効率的・効果的な制度の在り方について検討を行おうとするという形で打ち出しをしていったものでございます。
そこで、過去2回懇談会を行ったわけでございまして、その検討事項といいますのは、これはまた後ほど質疑の中でお出しできる限りのことについてはお答えをしようと思いますけれども、方向性としては使用者の責任に拡充、この場合の使用者というのは何といいましょうか、上下関係、力関係がある使用者というのではなくて、車検の上での使用者というものです。車両の運行を支配し管理するという形の方であります。
こういった使用者責任の拡充、現行法制でも追及をしておるわけでございますが、それを更に伸ばせないかという方向性が1つと、民間委託の範囲の拡大ということについての方向性の検討を続けております。
なお、言わずもがなでございますが、この制度改正の検討は、より良好な駐車秩序維持を拡充するためにはどのような方法論があるかということでございまして、当初から民間委託をやるためだ、というのが私どもとしては本意ではない。民間委託の範囲の拡大というものは、警察の執行力の確保につながる。それが良好な駐車秩序維持の拡充のための手段であるという位置づけで取り組んでおるということを付け加えさせていただきたいと存じます。
意見例ということで、どういう御意見があったのかということでございまして、これはホームページに載っておりますのですべてを紹介するのもいかがかとは存じますが、例えば、ボランティアで自転車の整理をしているのだけれども、なかなか言うことを聞いてくれません、殴られたこともありますと。そういうことを考えると身分保障の問題も生ずるでしょうと、つまり民間委託というときにですね。
今の日本の状況では、取り締まりを全面的に民間に行わせるのはまだ無理なのではないでしょうかというような御意見とか、あるいは取り締まりのすべてを民間に委託というのは適当ではない。警察とどういうチームをつくって取り締まりをするのか。委託する民間に対してどういう権限を与えるのか。その辺りの方向性が大事であろうというようなことでございました。
あと当然、ひき逃げも増えているということであるから、悪質犯の検挙に捜査力をシフトしていきますというビジョンを強く打ち出していただくと、民間委託について国民やドライバーの理解、協力が得られると思うというような御議論というのがあったわけでございます。
最後、長くなりまして恐縮でございますが、ただ、マスコミの反応といいましょうか、新聞紙上に見る国民の方々の反応はいかがということになりますと、それは最後、4枚程度持ってまいりました。「駐車違反摘発の民間委託に疑問」。公平な摘発ができるんですか。暴力団関係者から圧力を受けた場合にも、きちんと対処できるかどうかも心配です。というような話。警察と民間業者の結び付きが強まり、警察官の天下りの温床などと云々というような御意見もある。
次のページになりますと、「犯罪の悪質化に警察は対応して」ということで民間委託というのは私は賛成ですと、こういう御意見もある。
茨城新聞のコラムでございますが、一番下の段に違法駐車への罪悪感が犯罪的に薄いことが背景にあるというような分析といいましょうか見方もあり、警察の取り締まりに慣れたドライバーが民間業者におとなしく従うだろうかというような感想もございました。
最後に静岡新聞の社説では、これは説明の問題なのかなとも思っておりますが、民間委託は再検討されてはどうかということでございまして、違法駐車というのはやはり大きな障害であるということは、きちんととらえるべきであろうと。その観点からして今回の検討課題というのは、ドライバーは違法駐車をどう受け止めるか、民間人による取り締まりを素直に受け入れるのだろうか、トラブルが発生した場合云々といった形で、検討課題は多いのでしょうということでございまして、慎重な検討が望まれるといった御意見があったということでございます。
以上のような形で、宿題をいただきました点につきまして、15年度中に結論を得るという形で私どもなりに精一杯努力をしておるというところでございます。
以上でございます。
○八代主査 どうもありがとうございました。
私自身、昨年、本件にタッチしていなかったので基礎的な御質問を先にさせていただきますと、先ほどおっしゃった車検の上での使用者と車の所有者というのはどのようなどのような違いがあるのでしょうか。
○末井課長 どのような例が適切かというふうになりますけれども、例えば、おじいさんが車を買った。お孫さんに車を使わせようといったときに、所有者はおじいさんでありましょうが、使用しているのは孫でありますということであれば、使用者は孫の方になると。実際の運転者は、その時々の問題でございますから。そういう形で所有と使用というような概念が分かれていると。
○八代主査 ただ、車を買う場合には印鑑証明まで要求されますね。
○末井課長 全体の手続としてワンストップサービスで、現在政府が15年度に東京と神奈川で実験を開始しようとしておりますが、印鑑証明というのはどうしても権利の問題が入りますので必要であるとは存じますが。
○八代主査 だから、その印鑑証明を必要とする人は、この場合だとおじいさんじゃなくて孫が車検を行うときの名前の人で車の使用責任者になるということなのですね。
○末井課長 何らかの義務の責任といいましょうか、自動車検査証といいましょうか、検査を受けなければならない人はだれか、その辺りになると、例えばそれは使用者ですと、所有者ではありませんと、実際に運行を支配し、管理している方が実際にやっているのだから、道路運送車両法の体系の主体になるというような形で分ける意味合いがあるのだろうと思います。
○八代主査 所有者でも使用者でも書類上責任がある人のであれば、車が駐車違反したら、違反自体はだれがやろうが車検上の人が責任を負うということが明確になれば随分取り締まりのコストは軽減されるということですね。
○末井課長 現在、まだ懇談会の方で御検討いただいておりますので、私の方で、その制度になるというような状況ではございませんので。
そうした考え方をご検討ということでですね。
○末井課長 別に使用者であるからとか、あるいは所有者であるからということではございません。要は、運転者以外に簡易に見つけられる人はだれであるかというと所有者もあり得るわけです。車検証には所有者も書いてございますから。そういった簡便に補足できるというメリットはあるであろうということでございます。
○八代主査 それは別に刑法の改正なしにも可能だということなのですか。やはり改正しないといけないわけですね。
○末井課長 刑法といいましょうか。
○八代主査 刑法というか、この取り締まり業務の対象となっている法律です。
○末井課長 道路交通法の、車両が駐車違反となるような行為をするというところをとらまえて罰則で担保しているということでございますから、それは実際の行為をした人であるというのが現行の法体系であろう。そうじゃないのは、大体両罰規定といった形で業に関し、利益を得る人というのはあり得るというのが現在の体系だろうと思います。
○安念専門委員 警察の立場としては、恐らくどういう手段をとっても批判されるというお立場でこれを検討しておられるので、私、本当にこの点については大英断をなさっただろうと思って、これは正直、大変敬意を表しております。
その上で伺うことですが、警察庁のお考えとしては刑罰法規といいましょうか、刑法の一般理論として実行者、つまり違法駐車をした物理的な動作をした人以外に、例えば運行を支配・管理する者に刑罰をかけることを拡大することができるかどうか。更には、所有者にかけることができるかどうか。そういうものについて、刑法の一般理論からの障害というのは、やはり非常に大きいものがあるというふうにお考えでしょうか。
○末井課長 懇談会のメンバーに戻って見ていただければ、行政法の方、刑法の方、特に制裁を専門にされる方にお入りをいただいたわけでございますが、私どもとしては、こうであろうという立場を決める以前に、いろんなアイデアをフロートさせて、まさに国民の意見というものを求めた上で検討を進めるということが一番いいのかなと思っておりまして、凝り固まってこうであろうと言ってもなかなか物事というものは進まないというふうに思っておりますので、そういうお答えしかできないのでございますが。
○安念専門委員 そうすると、仮に非犯罪化して、ある種の民事罰の延長のように考えて、例えば民法77条の占有している者の責任を問うというような考え方、更に、その所有者の責任も問えるというふうに、何段構えにも責任を問えるという法制度をつくるというアイデアも、これは観念的にはあり得べしということでよろしゅうございますか。勿論、警察庁のお立場を伺っているのではありませんが。
○末井課長 大変、難しい質問であるとは思うのですが、逆に例えば所有者に罰則ということもあり得るということはあるのかもしれません。例えば、ベルギーの法制を見れば、これは推定規定というテクニックを使って、所有者は運転者と推定するという形の処理もなされるということもあるようでございますし。
○安念専門委員 刑罰法規でそうなっているわけですか。
○末井課長 そのような形にされているというふうに伺っておりますから、いろんなとりようはある。ですから、可能性はあるのでありましょうが現在の実定法体系で、なぜ、この駐車違反についての新たなといいましょうか、改正された後の体系というものが突出するんですかという合理的な説明というのは、やはりなされなくてはならない。 それが、いわゆる合理性というのは必要性とかなり裏腹でございましょうから、その辺のところを先ほど、まさに申し上げたとおりフロートさせて、いろんな御意見を賜るというところで我々は考えていこうと。
今回の懇談会といいますのも、全体の制度設計を精密に出していただくというようなことを私どもは期待しておるわけではございませんで、やはり方向性として一体どういうことが我が国において定着するであろうかという御示唆を賜りたいということでございます。
○八代主査 ただ、1点関連質問をしますと、今のように実際に違反行為した人しか捕まえられないという体系だと、現行犯逮捕したり張り込みするのは警察でなければ絶対できませんから、そこが一番大きな、この問題の鍵になるという認識は正しいでしょうか、ということです。
○末井課長 先ほど、「制度改革の検討について」の2枚目で、これが今後の制度を考える上での方向性を規定するのかと申し上げましたが、そちらに運転者の特定や呼び出しに困難を伴う多大なコストということで、おわかりいただけると思いますけれども、やはりそこに、異常な労力、コストがかかっていると。権限を持っている警察官というものよる有効な業務かという観点からの見直しということも当然あるということでございます。
○八代主査 仮に民間人が違反の取締りを行ったとき、その人に従うかどうかという問題が提起されているのですが、「どけろ」ということに従わなくたって、やれば罰金を課しますという機械的といいますか、そういうようなことであれば随分軽減されるのではないか。警官のように一般人に対する命令権は当然難しいと思うのですが、あとは罰金を効果的に取るような方法があれば、仮に民間人が行ったとしても単にステッカーを張るとか、あるいは張るのが危なければ遠くから写真を撮るとか何でもいいのですが、とにかく証拠をつかまえることだけを民間に委託するというやり方であれば随分、民間の事業者の負担は軽減されると思うのですが。、何をもって「駐車違反の取り締まり」かという定義の問題は議論されているのでしょうか。
○末井課長 駐車違反というのは、車両が道路交通法の規定に違反して駐車している行為という、車両からとらえた定義でございまして、これを動かすとなりますと、例えば日本全国のいろんな標識、標示というものとか、こういったものを変えなくてはならない恐れが生ずるわけでございまして、駐車に対する定義、あるいは国民の規範の意識というものは、動かさない方が私よいのかなとは思っております。
○八代主査 いや、別にそれを変えろと言っているのではなくて、違反したときにどうなのか、ということですね。
○末井課長 ですから、駐車の定義が変わるわけではないだろうという見込みは持ってはおりますが、ただ、これも議論の中でいろんなアイデアが出てきて、このような法律構成をした方が整理はしやすいということであれば、それは変わることはあり得ると思います。
他方で、民間委託の範囲というものはどこかといったときに、違反事実の確認だけでよいのではないかということであった場合には、結局、これは前回も申し上げたと記憶しておりますが、罰金と先ほどおっしゃいましたけれども、罰金であれば捜査であると、捜査であれば、きちんとした精密司法のもとにおいて起訴されて公判といいましょうか維持されるものがなければならないという要請はあるわけでございますから、言わば警察にかかる負担というものと、この委託の便益というものを、やはり比較しなくてはならないだろう。それとの兼ね合いだろうと存じます。
○安念専門委員 仮に罰金というのは、刑罰としての罰金という意味ではなくて、ペナルティー一般というふうに考えていただいたとして、その上で駐車違反は、特に悪質な往来妨害につながるようなものは処罰するとして、今の大部分の単なる単純な駐車違反は、仮に非犯罪化するという前提で考えたとして、民間に委託する場合の最大のネック、最大の懸念点というのは何だとお考えになりますか。
前提のある話ですから、それはまだ考えたことがないというお返事であれば、それはそれでしょうがないと思いますけれども。
○末井課長 駐車違反を本当に非犯罪化できるのかという問題は、やはりあるのだろうと思います。
いずれにしろ、この議論を余り私が言うべきではないと思っておりまして、先ほど来、大変申し訳ございませんが、何も忌避しておるわけではございませんが、懇談会で自由な議論をさせていただきたいと。それは法律で立法技術的な制約はありますということではなくて、アイデアとしてこのような制度がいいのではないかということを議論された上で、しからば、それを法律なり規範に移すとすれば、どのようになるかという道筋をたどりたいと思ったものですから、道具の方で、なるほど、その議論としては目がよくいきやすいのでございますが、ちょっとそこは、申し訳ございません、何も言いたくないからというわけではございませんが、やはりアイデアをどのように組み立てていただくのかというのは、私どもとしては大変楽しみに待っているところでございます。
○八代主査 アイデアの1つとして、例えば自動車でも軽自動車もあるわけだし、要するに自転車の大きなものだと見なす。放置自転車は、自治体が片づけて、どこかに持っていって手数料を取るわけで、自転車の場合ですと、それと同じようにレッカー車がやってきて持っていって、その手数料を何倍にもして取ると、これは罰金ではありませんというようなアイデアみたいなものは、例えばあるのかどうかということです。今だって、レッカー車は民間業者に委託しておられますから。
○末井課長 手数料はまさに手数でございますので、一つひとつ人件費、物件費とかを積み上げていくものでございますので、それがこういった場合には倍になるとかペナルティー風に何倍というのは、ちょっと私ども余り慣れた発想ではございません。
それでは例えば、二輪の自動車というのがあるわけでございまして、要するに概念としてはいろんなところでいろんな法体系で使っておりますから、要はおっしゃりたいことは、多分、たくさん占用している人というものは違うのではないかという、そのアイデアだろうと思います。これについてはそれぞれに、例えば大型車が入ったらとても通れないところがあるというところであれば、それは大型車は非常に悪質であると。
しかしながら、小型の車が入っても通れなくなるというのであれば、やはり同じように悪質である。つまり私どもは、道路の使用ということよりも、むしろ安全と道路交通の阻害という面から物事を見るというのが私どもの、少なくとも道路交通法の現在の目的といいましょうか、体系上の整理だろうと思いますので、今おっしゃいましたようなところというようなアプローチは、余り普段していないというものでございます。
○八代主査 それが間接的に言うと、安念さんが言われた非犯罪化するときの1つの障害にはなり得ますね。
○末井課長 非犯罪化できるのか、あるいは、するという意思があったというときにできるかどうかとか、両端のこの議論は非常に、過去10年以上の私どもの警察庁の交通局によるいろいろな研究を続けて参ったものでございまして、なかなか甲論乙駁の世界かなと思っておりまして、ですから今回のアプローチといいますのはアイデアをいただいて、それをどのように実際に機能する制度として育てていけるのかなという形で、申し訳ございませんが、そういう説明しかできようがないのでございます。
○福井専門委員 非犯罪化に関連してですけれども、例えば行政刑罰だと建築基準法とか河川法とかでも、不法占用などに行政刑罰が付いているけれども、ほとんど実際上は刑事罰が発動されなくて、よほど悪質なものは例えば行政代執行という領域があります。刑事罰で抑制しなくても、要はどければいいのだと考えると、行政手続でとにかく除却して、あるいは除却ができなければ間接強制的な手段で金銭的なインセンティブを設けるという考え方もあると思うのです。とにかく、駐車違反の行為自体を抑制する、形式的に刑罰はあっても、どっちが効果的かは現場に選択の余地があるという、こういう発想でやっていくことはどうなのでしょうか。
○末井課長 そういうことも含めて、懇談会でいろいろ御意見というのは出てくるのだろうと思っております。御指摘のとおり行政法犯というものは、すべてをやるというものではございませんから、例えば現行の道路交通法の中でも自転車の犯罪、犯罪と言いましょうか、自転車の道路交通法違反行為は、悪質系なものをやるということで、すべてをやるというのを私どもとても言い切れないということがございまして、そういうアプローチの世界で、それがどのように確実に担保されるか、規範が担保されるかというのは、おっしゃるとおりのものがあるかもしれません。
ただ、繰り返しで恐縮でございますが、これは懇談会でいろんな、先生のおっしゃるようなアプローチも出てくるんだろうと思います。いろんな御意見があるし、また国民からも出てくるのだろうと思います。そういう中で検討させていただければと思っております。 アプリオリに非犯罪化していくのだというアプローチはとっていないということは、御理解いただければと思います。
○福井専門委員 どこから先が民間委託になじむかという刑事法の概念的、原理的な分業の整理はある程度、頭にお持ちなのですか。
○末井課長 刑法の世界といいましょうか、刑事訴訟法、犯罪捜査の世界では委託というのは、言わば物理的な役務を提供いただくというようなものはあり得るかもしれません。恐らく行政法の世界では意思決定、処分、処分性のあるものについて意思決定をするというものとか、あるいは侵害度の非常に高いものは、委託は困難かもしれない。裁量性の高いものは困難かもしれません。
これまでは恐らく講学上、公権力の行使は無理ですかということを言われたのだろうと思いますが、必ずしも、それぞれの行為を細分化していった場合、当てはまるものでもないだろうとは存じます。
○福井専門委員 多分、公権力の行使の意思決定なり、処分の発動の部分というのが1番デリケートな部分だと思うのですけれども、そこは要するに、最終的に権力主体が責任を持っていればいいという非常に広い考え方もあり得るわけでして、細かいところのどこまで逐一見ていないといけないのかという辺りでは、随分立法の裁量の余地があると思うのです。
根っことしてどこまでが最低限、例えば憲法上の必要で押さえておかないといけなくて、ここから先は立法政策の問題というところのフリーハンドをできるだけ多く持った上で検討していただくのがよろしいかと思います。
○末井課長 現行の体系の中で、要するにどこまでできるのかと、一歩一歩前進してきたのだろうとは思います。指定法人制度というのは、以前であればなかったわけでございますから、いろんなことを考えながらやっていくのだろうと思いますが、着実に新しいことにチャレンジというのではなくて、私ども機能する制度、駐車状態や駐車事情がよくなるための制度はこれがいいのだろうと、国民が受け入れてくれるのだろうというものについて、それを後ほど、このような法律構成をしていこうという形になるのだろうと思っております。
○八代主査 そろそろ時間の制約もありますので、広くアイデアを募集しておられたことですから、逆に言うと、この会議としてもアイデアを出したならば検討はしていただけるということだと理解しております。
今後とも是非、有意義な結論を出していただいて、速やかに法改正に結びつくよう期待しておりますが、タイミングとしては9月に出される懇談会の答申がよいものが出れば、法改正作業に入られるというようなことになるわけでしょうか。
○末井課長 道路交通法の場合には、やはり国民皆さんが非常に関心が高いといいましょうか、関わるものでございますので、その上で私ども試案というものを。
○八代主査 試案ですね。
○末井課長 試みの案というものをつくってまいりたいと。試みの案につきまして、これは法律の場合、普通パブリック・コメントを求めることはいたしませんが、こういったものはやはり国民生活に非常に影響が大きいということで、これまでも出しております。
また、そういった形で再度、制度設計がこうなりますがいかがでしょうかということは問い直さなくてはならないと思いますので、9月に出たから、さあ、それでもう固まったというものでもないと、もう一度きちんと御意見を聞きたいと思っております。
○八代主査 試案を固められるわけですね。そのときは再度討議をさせていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○福井専門委員 懇談会のメンバーで、今、拝見すると経済学者が全然入っていないのですけれども、そもそも駐車違反とか、道路交通法の取り締まりというのは、要するに広義のピグー税ですから、外部限界費用をどうやって内部化するのかというのが、多くの経済学者にとっては常識的なアプローチなのです。
そういう意味では、さっきの議論にもあったように、多く塞いで多く迷惑かけるものは外部限界費用が高いわけだから、それに応じて規制なり、罰金なり、課徴金なり、何といっても構わないですけれども、それに伴う社会的費用の負担は多いはずだという大前提があるのですね。大体は、刑法秩序とか、法規上の秩序というのは、大まかに言えばそうなっているのですけれども、今の違法駐車がなぜ蔓延するかというと、1つには外部費用をちゃんととれていない、ないしはそれを規制し切れていないからだということと、非常に人的リソースが少ないので、偶然に左右されているのだという、この2つの大きな要素があるわけです。
そのようなアプローチで制度設計について検証できる人がこの中にいなくても事務局ができるのならいいのですけれども、今のような視点での、あるいは方法論での議論なり接近というのは極めて重要だと思いますので、そういう観点で検討していただきたいと思います。
○末井課長 一言だけ追加で申し上げますが、懇談会のメンバーの方々、別段それぞれの概念を駆使して、これはこうであるべきであるというようなお話をされているわけではありませんで、中には駐車違反って犯罪の意識なんてないですと、どければどうですかというような御意見もございまして、その上の中で要するに、ここは方向の話をしていただくわけでございまして、それについて更にまた国民から御意見を賜るということでございまして、ものすごく細かな制度設計ではございませんので、何も私ども事務局が自信を持って大丈夫だというのではございませんで、これは我々がリードするものではございませんので、自由に議論していただいて、こうあってはどうかということでございまして、その辺は御了解いただければと思います。
○福井専門委員 いや、自由な議論はいいのですけれども、そのときに思考様式の枠組みというのがやはり厳然としてあるのです。こういう一種の何らかの社会的に迷惑なことを抑制するときには、どういう制度がいいのかということについてです。そこは、このメンバーに期待しないのだとすれば、やはり事務局でちゃんと補われた方がいいのではないですか。そういう趣旨です。
勝手に議論したって答えは出ないのです。やはりこれは学問の体系の中の一環として法政策なり、あるいは公共経済学の知見から言えることが随分あるわけで、そういう専門家を入れていないというのもやや驚きなのですが、それならそれで事務局で補っていただきたいということです。
○末井課長 メンバーの方は、大変立派な方だと思っておりますので、その思考の枠組みというのはあるかもしれません。ですから、それは私どもが今伺っている限りにおいては、私どもとは発想が違う御意見が出ておりますので、私どもは、非常にいい議論をしていただいているというふうに思っております。
○福井専門委員 そういうことを言っているのではないのです。要するに経済学では、こういう問題に対処する極めて標準的な道具立てがあるので、立派かもしれないけれども、そういう専門家であるということは耳にしたことはないので、そうであればそういう専門的知見も踏まえて議論していただきたいということです。
○末井課長 参考とさせていただきます。
○八代主査 これは1つの経済学の応用分野でもあるというのが今の福井委員の考え方で、これは割と確立した考え方でもあると思いますので、今後ともご検討をよろしくお願いしたいと思います。
どうもわざわざ、今日はお忙しい中、ありがとうございました。
(警察庁関係者退室)