第4回構造改革特区・官製市場改革WG 議事概要

1. 日時

平成15年5月29日(木) 13:00〜15:00

2. 場所

永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室

3. テーマ
厚生労働省ヒアリング

○社会保険等事務の簡素化・効率化について

4. 出席者
(厚生労働省)
労働基準局

労働保険徴収課 羽毛田課長

職業安定局

雇用保険課 野村課長補佐

社会保険庁

総務課 薄井課長、末岡課長補佐

医療保険課 田中課長補佐

年金保険課 城戸課長補佐

(委員、専門委員)

八代主査、福井専門委員、奥谷委員

(事務局)

内閣府 河野審議官、宮川室長 他


議事概要

 (厚生労働省関係者入室)

○八代主査 それでは、構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループを始めたいと思います。本日は、厚生労働省、社会保険庁、お忙しい中どうもありがとうございました。こちらは、奥谷委員、鈴木委員、それから、間もなく福井専門委員が来る予定になっております。
 本日おいでいただいたのは、社会保険等事務の簡素化・効率化ということで、ここは社会保険と言っておりますが、実際は社会保険、雇用保険等のということでございます。お互いに非常に関連していますので、労働基準局、職業安定局、社会保険庁、一緒にヒアリングさせていただきたいと思います。
 最初に、こちらからの質問に対して資料をつくっていただきましたので、それをご説明いただきたいと思いますが、質疑応答の時間をとりたいので、おおむね45分ぐらいということで。途中でちょっと事実確認のご質問はさせていただくかと思いますが、よろしくお願いいたします。

○薄井総務課長 失礼いたします。社会保険庁の総務課長の薄井でございます。
 本日、私ども社会保険関係は私の方から、それから労働保険徴収課長の羽毛田が参っておりますので、労働保険関係は羽毛田の方から主としてご説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 あらかじめいただいております事項に沿いまして、ペーパーでご用意できるもの、あるいはペーパーがない部分もございますけれども、ご質問項目に沿ってご説明をさせていただきます。
 いただきました事項のうちで、1点目の社会保険、それから労働保険の保険料徴収、その一元化の関係と、それから5点目の手続のワンストップ化、窓口一元化の関係は、基本的には同様の中身かと思いますので、本日はまずそれにつきましては1のところで、社会保険と労働保険の徴収事務の一元化という関係で資料を用意させていただいております。
 2ページをあけていただきますと、平成14年の12月25日に社会保険と労働保険の徴収事務一元化についてということで、整理をしましたペーパーを配らせていただいておりますけれども、この問題、省庁再編の前段階からテーマになっているところでございまして、私どもとしては社会保険庁と労働保険部局間で、これは旧厚生省、労働省時代から協議を進めてまいったところでございます。
 ただ、皆さん、社会保険と労働保険、同じことをやっているのではないかというご指摘があるわけでございますが、現実の問題としては、ちょっと6ページをあけていただきたいと思いますけれども、そこに両制度の比較というところがございます。
 それで、政府管掌健康保険と厚生年金、旧厚生省でやっておりました部分、それから旧労働省でやっております労災保険、雇用保険の部分、それぞれもともとの制度の趣旨等からスタートいたしまして、相違がございます。
 まず、上の適用事業の関係でいきますと、単位ですけれども、健保、厚年は事業所単位ということでございますが、労災保険、雇用保険は事業単位ということでございます。おおむねは一致するのですけれども、例えば注の1にございますように、建設現場などはそれを一つの単位とするというような相違点が実はございます。
 それから、2つ目の範囲のところでございますけれども、健保、厚年の方は法人の事業所と常時5人以上使用する適用業種の事業所ということでございますが、労災、雇用保険の方は労働者を使用する事業全体がまず網がかかるということでございます。
 それから、対象者でございますけれども、労災保険の場合は適用事業に雇用される労働者という形で広く網がかかりますけれども、健保、厚年、雇用保険はそれぞれ雇用期間、労働時間等により適用除外となる者がいるという形でございます。
 そういう意味では、一般的な事務所とか、こういうのは大体重なるということになると思うのですけれども、完全には一致していないというのが実態としてございます。
 それから、保険料の方の相違はもうちょっと大きいわけでございますけれども、労働保険の方は、ある事業所の賃金総額に基づいて申告ベースで納めてもらうと。それに対しまして、健保、厚年の方は特に年金の方で個々人の報酬をずっと把握しておって、それを長期間管理をしておいて、年金給付につなげるという必要性がございますので、標準報酬月額というようなものを決めて、あるいは直近総報酬になりましたから、標準賞与の部分も決めて、それに基づいて行政サイドが賦課をするというスタイルをとっております。
 それから、納付の回数なのですけれども、これは保険料額とも絡んできます。労働保険の方は原則年1回でございますけれども、社会保険の方、健保、厚年の方は毎月1回という形になっております。
 ただ、今、保険料納付について申し上げましたけれども、これは社会保険、労働保険の数値でございますが、実際の保険料の徴収ということは、大部分が金融機関で納められていると。口座振替のケースもございますし、金融機関の窓口によって納付するというのもございますけれども、大部分はそのルートであるということでございます。
 そういうことを考えますと、徴収それ自体はいわば民間企業にやってもらっているという部分があるわけでございますから、徴収自体というよりは徴収関連の各種手続をどのように一元化できるかというのがこの議論のテーマであるというふうに考えております。
 そういうふうな状況の中で、省庁再編後、厚生労働省になりまして、14年の2月にはより具体的に進めるための徴収事務の一元化の準備室というのを関係部局でつくるということをやりまして、さらに昨年は健康保険法の改正が行われましたけれども、その健康保険法の改正の中で徴収事務一元化も附則に、これはおおむね3年を目途としてやれと、こういうことが書かれました。そういうことで、それを受けまして具体的な手順を整理するということで進めてまいりまして、その結果まとまったものが、もう一回戻っていただきますけれども、2ページ以降にございます徴収事務一元化についてのペーパーということでございます。
 具体的には、徴収事務一元化は何をねらいにするかということでございますけれども、一つは事業主サイドの利便性の向上ということ、もう一つは行政事務の効率化という、この2つのねらいがあろうと思いますけれども、そのために何をやるかと。2ページのところにございますように、一つはインターネットによります社会保険と労働保険の届け出を一括して受け付けられるようにしようということで、これは今年の10月から電子政府ということで、各省庁、これは政府全体でやるわけでございますけれども、その際、両保険の届け出を一括してできるようにするということでございます。
 イメージ図をちょっと4ページに掲げさせていただいておりますけれども、事業主の方は両保険のデータ、それぞれ共通の項目もあれば、固有の項目もございますので、これを入力していただいて、一括して送ってもらうと。厚生労働省全体で受け付けまして、あとは必要な事務処理のところに回していくということでございます。もちろん、こういう形で出れば、内容審査をした上で、自動的に入力できるものは自動的に入力をしていこうということでございます。
 それから、もう一つ徴収事務一元化の柱でございますが、2ページに戻っていただきまして、(2)のところにございますように、社会保険・労働保険徴収事務センター(仮称)を設置するということで、保険料額も社会保険事務所で扱っているものが多いわけでございますので、全国の社会保険事務所に社会保険・労働保険徴収事務センターというものを設置する、まだ仮称でございますけれども、これをつくりまして、そこで保険料関係の幾つかの仕事を一緒にやっていこうということでございます。具体的には、1から4で書かせていただいておりますけれども、まず、保険料算定のベースとなります賃金とか保険料額関連の届け出の受付ということでございます。
 それから2つ目は、それらに関しましてきちっと出していただけるところはよろしいわけでございますが、そうでないところもございますので、事業所に対して調査をする、これをここでやっていくと。
 それから3つ目は、これもきちっと納めている会社ではないわけですけれども、滞納している事業主に対しまして、納付督励なり、あるいは差押などというふうなことを実施していくということでございます。
 それから4点目は、事業主向けにいろいろな説明をしなければいけないわけでございますけれども、これもここでやっていこう、こういうことでございます。
 この(1)、(2)、3ページにまいりますけれども、いずれも本年の10月から実施をするということで、現在準備を進めているところでございます。
 こういうふうな仕事を進めていく上で、課題ということで申し上げますと、やはりそれぞれの職員がお互いの制度について熟知をするということが必要でございますから、社会保険庁の場合ですと社会保険大学校という研修機関がございますし、労働関係の職員の場合であれば労働研修所というところがございますが、相互に相手の仕事について研修をするということを、ここしばらくやってきております。
 いずれにいたしましても、3ページの3のところに書いてございますように、現在の考え方はこういうことで進めていこうということでございますが、これからさらにIT技術の進展なり、実際にこういうことを進めていった上での推進状況等を見まして、適宜見直しを行いながら、所期の目的が達成されるようにこれは努力していきたいと、かように考えているところでございます。
 ご質問等もあろうかと思いますし、もう少し詳しくご説明した方がよろしいかもわかりませんけれども、ちょっと時間の関係もございますので、次に進めさせていただきます。
 次に、2点目の国民年金保険料の徴収の実態、未納者とか未加入者の関係、それに対する対策、さらにそれとの関連でということだと思いますけれども、国税庁との業務の連携の可能性ということでご指摘をいただいておりますので、これらについてご説明をさせていただきます。資料7ページ以降でございますが、8ページをあけていただきたいと思います。
 そこに国民年金の加入状況ということで書かせていただいておりますけれども、国民年金は全国民をカバーするということで、原則20歳から60歳の方は加入をしていただくということになっておりますので、1号、2号、3号と呼ばれておりますが、それらトータルの加入対象者 7,116万人ということでございます。幾つか調査がございまして、時点は若干違うわけでございますが、この資料はわかりやすくちょっと統一して整理させていただいております。
 どちらかといえば下の参考のところの絵をごらんいただきたいと思うわけでございますけれども、加入の対象となるべき対象者 7,116万人に対しまして、一番左に第1号未加入者と書かれております。これがいわばどの制度にも入っていないという形で、登録されていない人ということでございます。一応、99万人が未加入という整理になっております。これは、以前はもう少し未加入者が多かったわけでございまして、この調査は3年ごとにやっておりますけれども、平成7年度は 158万人おりましたが、そこは99万人という数字になっております。
 これは、例えば20歳に到達した人に、届け出がない場合も年金手帳を送る、いわば職権適用をするとか、そういうことをやってまいりましたし、それから基礎年金番号というのができましたので、それを使って、例えば厚生年金の会社を辞めたと、それから何カ月たっても、別の会社へ行ったという話も来ないし、国民年金の届け出も出てこないという人については、届け出をしてくださいというお知らせを出すとか、そういうことをやりましたので、この未加入者という部分が減少してきているということでございます。
 一方で、保険料の納付状況の方でございます。そこに未納者ということで書いてございますけれども、上の表でいくと注の2と書いてあるところの箱ですが 265万人ということでございます。こちらの方は残念ながらふえてきているということでございまして、これはいろんな要因があろうかと思いますけれども、やはり制度への関心が低くて、保険料納付に結びつきにくい人がいる。それは、特にこちらから届け出がないのに適用を進めたような人と言うのは、なかなかえてしてやっぱり保険料納付につながりにくいという部分もございます。あと、これは最近の経済状況ということも影響しているのかなというふうに考えております。
 ここで言う 265万人という数字は、注の2にございますように、この表では過去2年間一月も保険料を納付しなかった人を未納者というふうに定義をいたしております。この未納者と、先ほど申し上げました未加入者をトータルすると 364万人でございますので、1号、2号、3号、トータルを分母とすると 5.1%が未納者、未加入者ということでございます。もちろん、一番左の自営業者グループといいましょうか、国民年金の第1号被保険者グループを分母とすると、そのパーセンテージは高くなるということでございます。

○八代主査 途中で恐縮ですが、国会議員も含めて、最近は、この未加入者の問題というのはやっぱりこういう表でいろいろ説明されているのですか。これは、私は問題だと思うのは、保険料を源泉徴収される2号被保険者とか、元々払わなくてもいい第3号被保険者まで分母に入れて 5.1%という表を作られて、但し今、口頭で補足されたみたいに、仮に分母を第1号被保険者にすればこれより大きくなりますというのは、説明の仕方が全く逆ではないでしょうか。今、問題にしているのは徴収の効率化ですから、自動的に払われる人とか、払わなくていい人まで分母に入れるというのは、極めてミスリーディングな説明の仕方ではないかと思うのですが、この未加入者問題に対して、それはこれが公式の今の説明の仕方だということですか。

○薄井課長 まず、国民年金全体についてはこういうことです。ただ、もう少しご説明をお聞きいただきたいと思うのですが、第1号被保険者グループについての保険料納付状況についての説明はこれからさせていただきます。

○八代主査 だから、その数字はどこになるのですか。第1号だけで 5.1%に想定されて。

○薄井課長 これは9ページになります。

○八代主査 はい。それから細かい点ですけれども、これは国民年金の問題なのに、なぜ厚生年金の加入者まで入れるのですか。

○薄井課長 国民年金制度、これはもうあれでございますけれども、一応第1号、第2号、第3号が国民年金の加入者という制度的な整理になっているということでございます。

○八代主査 基礎年金と一緒ですか。

○薄井課長 基礎年金というのは、国民年金法に基づく制度でございますので、そういうことで説明をさせていただいております。

○八代主査 そうしたら、基礎年金の加入状況と言うべきであって、国民年金というのは普通、基礎年金ができる前からの、いわゆるここで言う第1号被保険者のための年金というのが一般に通用しているものだと思うのですけれども、ちょっとこれは国民年金の加入状況の中に第2号も入れるというのは、私は初めて聞いたことで、あえて基礎年金と国民年金をごちゃごちゃにしているご説明ですよね。

○薄井課長 必ずしもそういうつもりではなくて、もともと基礎年金制度自体が国民年金法の中にあり……。

○八代主査 いや、法律のどこにあるかは知りませんけれども、要するに第2号被保険者が国民年金に入っているという意識がそもそもあるのですか。

○薄井課長 私どもも、第2号被保険者もみんなで支える、国民年金の中の基礎年金という給付でございますけれども。

○八代主査 基礎年金の中に国民年金があるではなくて、逆に国民年金の中により幅広い基礎年金があるということは逆立ちした議論ではないですか。

○薄井課長 はい、法律的というか制度的にはそうなっております。ただ、今、八代先生がおっしゃるように、国民年金と言われますと、一応第1号、昔からの国民年金の人だけを指すという議論があるということは、これはもちろんそういう認識があるということは私も否定はいたしませんし、そこの収納がターゲットになっているということも、これは私どもそういう認識を持っております。

○八代主査 この収納率を議論しているときに 5.1%というのは、もうそんなのは最初から大した問題ではないのだということが事実上出てきますよね。それで、後ろに書いてあるそうですけれども、もしこれで分母を国民年金にすれば、後ろの次になるのですか。

○薄井課長 そういうことでございます。

○八代主査 ただ、これは制度を知らない人に対して極めてミスリーディングな説明の仕方だと思いますけれども、では次お願いいたします。

○薄井課長 それで、9ページが今度は国民年金の、これは第1号被保険者の保険料収納状況を示すもの、こういう形になってまいります。
 それで、第1号被保険者の中で国民年金免除者というのがおりますので、免除者は保険料納付する必要が法律上ございませんから、それは分母から抜きまして、その上で保険料を本来納めるべき人に対して、どれだけ保険料が納付されたかというのを示すのがこの数字でございます。昔は、国民年金は印紙で納めるというスタイルでございました。検認というちょっと難しい言葉を使ってございますけれども。
 その検認率でございますけれども、一番下に注記的に書かせていただいてございますけれども、ある年度の保険料として納めるべき分がその年度に幾ら入ったかということを見る数字でございます。
 この数字でございますけれども、先ほど申し上げたような状況の中で下がってきておりますので、直近13年度の数字は70.9%という数字でございます。ただ、最終的な納付率というのは時効が来るまでに2年ほどございますので、実際にはそれからも保険料を納めてもらうよう、私どもも働きかけをして、これより大体4ポイントぐらい上がるというのが従来のパターンでございますし、ほとんどそれは変わっておりません。
 ですから、13年度は15年度末にならないとまだそこはわかりませんけれども、これより4ポイントぐらい高くなるよう、期待もしているし努力もしていると、こういうことだと考えております。

○八代主査 お聞きいたしますが、先ほどの 5.1%に相当するのが、この数字でいえば29.1%ということでよろしいわけですね。

○薄井課長 そういうことですね。

○八代主査 はい、わかりました。

○薄井課長 未加入者分がちょっと下がる、5.1%は未加入者も入っていますので。1号被保険者の保険料を納めるべき人を分母にしたらこのグラフになると、こういうことでございます。

○八代主査 納めるべきで納めていない人が29.1%ということですね。

○薄井課長 そういうことです。

○八代主査 それは、未加入者も未納者も含めた数ですよね。

○薄井課長 これは未加入者は入っていません。

○八代主査 なぜ未加入者を入れないのですか。納めるべき人であれば、未加入者だって当然納めるべき人ではないのですか。

○薄井課長 ですから、そこは、このデータ的にはそういう形で整理をしているということなのですけれども。

○八代主査 だから、本来、法律の適用対象になっている人を分母にしたとしたら、何%になるわけですか。

○薄井課長 そういう計算はなかなか難しいのですけれども、今すぐにはちょっとできませんけれども。

○城戸補佐 未加入者というのは、一度も1号でも2号でも3号でも年金の世界に行っていないものが未加入者なのです。ですから、例えばその方は3号に入るのかもしれませんし、極端な話をすると、それは2号で何らかの形で届け出漏れになっているのかもしれない。
 ですから、その1号か2号か3号か、どれも過去に全然そこのところに履歴がない人が、現在未加入者として出てきているというふうなことを考えていただければと思うのですけれども。完全に1号であるというふうな形で、我々は未加入者を認定できないのですけれども。

○八代主査 しかし、事実上、ほとんどの未加入者は、国民年金の対象者でしょう。大体の比率も、普通は一般にはそう言っていますよね。もちろん、3号でありながら届けていない人、それから2号でありながら漏れている人、いるでしょうけれども、それはやっぱり例外的な人なので。

○城戸補佐 もっと言いますと、全体の中で2号にも3号にも当たらないものが1号であるという意味においては、主査のおっしゃっていることは当たっております。

○八代主査 だけど、今までのご説明を聞く限り、よほど年金制度を知っている人でもない限り簡単にこの未加入者の問題を、はっきり言えば、ごまかされてしまうというイメージがあります。そこはやはり本来あるべき説明の仕方を、厚生労働省として、この問題は非常に深刻な問題だって厚生労働省も受けとめられて、過去の年金白書ではきちっと書いてあるわけで、何かこっちから言わないとそれが出てこないというのは、ちょっとここではともかく、一般に説明されるときにかなり問題だと思います。

○薄井課長 いずれにしても私ども、この問題は非常に重要な問題であるという認識は、私ども本当に共通して、社会保険庁にとりましては、これは最大の課題であるというふうに受けとめております。もちろん、国民年金以外の被用者保険の方の適用関係も重要な問題であるという認識がありますけれども。
 ということで、10ページからでございますけれども、国民年金保険料の収納対策ということでございます。
 実は、平成14年度、それまでは従来はその年の保険料は市町村が集めるということでございました。地方分権ということの中で、平成14年度から国民年金保険料の収納は国でやるというふうに改まったところでございます。そういう意味では、従来市町村でかなりインテンシブにやっていた体制を、そのままの組織、定員なりというのをこちらに移すということではございませんで、いろんな事務の効率化をしながら社会保険庁でやっていくということで、なかなか努力をしていくというのも、体制的にもしんどいところはありますけれども、やはりこれはきちっとやっていかなければいけないということで、現在進めております。
 具体的にやっておりますもの、余り細かくしていると時間になりますので、まず年金広報関係、これは当然のことですけれども、まず理解をしてもらわないといけない。ある意味では不信感と、そういうのが保険料納付を妨げているというのもございます。きちっと理解をしてもらうというのが第1点、そのための各種広報ということでございます。
 それから2点目は、特にこれは中高校生というか、成人に達する前に年金教育を充実していくということで、これは文部科学省とも連携協議会をつくって、文部科学省から教育委員会の方にも働きかけてもらうという格好で今取り組んでおります。
 それから3つ目は学生の納付特例という、これは後払いの制度をつくったわけでございますが、これが必ずしも周知されていないということ、これは大学等の協力を得て周知をすると。きちっと届け出をしてもらわないと年金につながらないということでございます。
 以上がどちらかといえば広報的な部分でございます。
 11ページにまいりまして、今度は具体的な収納対策ということでございますけれども、1つはこちらからの働きかけというよりは、まず保険料を納めやすい環境をつくっていかなければいけないということで、これは従来は市町村の指定金融機関が大体保険料納付の窓口であったわけでございますが、社会保険庁で保険料徴収をすることになりましたので、全国の銀行、郵便局、信用金庫、基本的にはあらゆる金融機関で保険料を扱えるようにするということでございます。
 それから、口座振替をしていない人全員に口座振替の利用を勧奨したところでございます。
 それから、集合徴収ということでそういう場をつくるということになりますと、そこは保険料がかなり集まってくるという部分でありますが、そういうことについては市町村なり商店会なりの協力を得て、そういう機会をつくっていくということをやっております。
 それから、5でございますけれども、保険料の納付督励ということでございますが、これも従来市町村によって非常にインテンシブにやっておられたところと、そうでないところも残念ながらあったと思いますけれども、まちまちであったわけでございますが、ここは全国統一的にやっていこうということで、昨年度から年6回催告状を出しましょうということを、全国統一的にこれはやっております。時期的にはタイミングをよく見はからって出す。例えば12月ぐらい、ボーナスが出たころに出すとか、そういうのが割と効果的だという話などもございますが、そこら辺のタイミングを見はからって出すということ。
 それから、未納者に対しましては、テレマーケティングといいましょうか、これは外部に委託をしておりますけれども、電話によります保険料納付督励を実施するということ。それから、その上で国民年金推進員、これは非常勤の職員として約 1,900名ぐらいおりますけれども、こういう国民年金推進員、あるいは職員によります個別訪問による保険料納付督励徴収ということでございます。これも単に徴収ということだけではしようがないので、できるだけ口座振替とか、そういうところに行っていただくということも含めて、働きかけをしているところでございます。
 平成15年度、国へ移管されて2年目になりましたけれども、こういうふうな経済環境でございますから、なかなか厳しい環境は続くというふうに考えられますので、さらなる収納対策ということで現在検討をしているところでございます。
 具体的には、例えばコンビニエンスストアでも保険料納付できるようにするということにつきましては、来年の2月から、随時分からということになりますけれども、やりまして、16年からは全部コンビニでも納められるようにするとかですね。
 それから、ボランティアでございますけれども、国民年金委員というのを各地方で社会保険庁から委嘱をして、普及啓発なり働きかけをしてもらうと、こういうことなども考えているところでございます。そのほかの手段も今検討をしているところでございます。

○八代主査 途中で恐縮ですが、これは未納者に対する対策であって、広報は別でしょうけれども、未加入者にはこういう4とか5というのは、5は関係ないことですか。

○薄井課長 未加入者も、届け出漏れの人がいれば、それは届け出していただくという意味では関係してくると思いますが、基本的には、今、未加入者については特に二十歳到達者は全員加入をしてもらうということをやってきておりますから、未加入者は先ほど99万と言いましたけれども、どんどん減ってきていると思うのですね。

○八代主査 減ってきている証拠はどこにあるのですか。

○薄井課長 これはあれですけれども、少なくとも、これはまた調査をやりますので、3年に1回調査をやっていますが、その結果がやがて出てくると思いますけれども。

○八代主査 その調査なんかは人口統計で20歳以上、20から22歳の人は何人程度、文部省の統計で学生は何人程度、払っている何人いれば、自動的に出てこないのですか。例えば、学生で払っていない人とかですね。わざわざ何かサンプル調査しなくても、統計的に大体出てこないのかどうか。
 それから、そもそも加入していない人を把握できなかったら、催促状も出せないですよね。だから、これは一回でも保険料を払った人に対して支払が遅れていますよというのに過ぎないという理解でよろしいですね。

○薄井課長 ここはそうですね。ただ、今、八代先生がおっしゃられた加入の状況ということですけれども、もちろん最近の景気動向で、厚生年金から国民年金の1号被保険者になるという人がいることは事実ですけれども、ここ数年見てトータルの国民年金の被保険者数は増えてきているのですね。ちょっと今、手元に資料は……。

○八代主査 それ以上に、自営業とか、リストラにあった人が増えるという面もあるわけで、分母と一緒に比較しなければ徴収効率が上がっているかどうかはわからない。

○薄井課長 そこはそうかもわかりませんけれども。

○城戸補佐 未加入者というのは、先ほど言いましたように、今まで過去1号、2号、3号に一回も入ったことがない方のことを指しているわけなのです。今、主査がおっしゃっているのは、例えば2号から離れて1号のところに入っていない、手続なさっていない方は未加入者であるかのようにちょっと理解されているのかなと思います。
 この未加入者といいますのは、要するに今、私どもの薄井の方から説明しましたように、20歳のときに住民票、住基ネットでももらえるような形になっていますけれども、日本の中で20歳到達者の名簿をもらいまして、私どもの方で加入手続していらっしゃらない方を網羅的にピックアップして届け出勧奨を出しまして、それでもだめな人に関しては、基本的に職権適用して、あなたはもう加入者になりましたよと。

○福井専門委員 要するに、1号の対象者については、未加入ではなくて未納扱いに既になっているということですか。

○城戸補佐 例えば、2号からリストラにあって今度1号の手続をしなければいけないのに、届出が出てこない人、その中には2号や3号に該当する人もいるわけですが、届出が出てこない人を対象に届出の勧奨をしています。届出があれば分母に入りますが、届出がない人はカウントしていません。

○福井専門委員 質問ですけれども、未納とか未加入の効果はどういうものがあるのですか。

○薄井課長 国民年金の場合は、未納未加入期間に対しては年金の給付は出ません。ですから、例えば今は25年が基本的に受給資格要件になっていますので、未納未加入が15年を超えると25年を満たしませんから、そもそも年金が出ないと。それを超えて、だから未納期間が15年未満であっても、その分年金額は減りますと。

○八代主査 それは、単純に未納期間に比例するのですか。例えば、30年のうち10年未加入の人はトータルで現在価値に直して3分の2分だけ受給できるという、正確な対応関係になっているのですか。

○薄井課長 経過措置というか、年齢によってちょっといろいろ違うのであれなのですけれども、原則で申し上げますと、40年加入し、20歳から60歳まで40年保険料を納めていただいて、それで満額の年金になりますという仕掛けです。ですから、例えば40分の10年納めていなければ30ということになります。

○八代主査 ということは、4分の3になると。

○薄井課長 4分の3。

○福井専門委員 ほぼ正確に4分の3になるということですか。

○薄井課長 はい。

○福井専門委員 単純比例と考えていいのですか。

○薄井課長 単純比例です。

○福井専門委員 そのことは承知の上で払わない人も結構いるということですか。

○薄井課長 特に若い世代は、どれだけそこを認識されているかというのはございますし。

○福井専門委員 督促とか広報のときに、納めない分だけ年金が減りますということは周知されているのですか。

○薄井課長 それは書いております。納付のときからも書いていますし、催告するときも書いております。

○福井専門委員 それは自己責任だということにはならないのですか。わかっていて納めないのだったら、個人の判断であれば、要するに、高いお金をかけて督促する、人件費も税金から出ているわけですから、要するに払わない自由を行使している人に無理やり払わせるのはなかなか難しいのだろうと思うのですけれども。

○薄井課長 そこは完全に積み立て方式というか、自分の納めた保険料が自分の給付にはね返ってくるという世界であれば、委員おっしゃられるとおりだと思います。ただ、公的年金は賦課方式ということで、後代が現役の被保険者を支えるという仕掛けになっておりますし、今も私ども現役がOBの年金を支えるという仕掛けですから、そういう意味では、払わなければ将来自分にはね返ってくるという意味のペナルティーもございますし、そこはあるのですけれども、社会全体として支えましょうという年金制度に参加していないということは、やはり年金制度の上で問題でございますので、八代先生もそこは問題ではないかというご指摘をいただいているのだと、私ども認識しております。

○福井専門委員 ただ賦課方式にしても、払わなかった分、単純に自分がもらえないということであれば、賦課方式の将来の運用を前提としても、残った、要するに払っている人の分だけを払っている人で受け取るのだ、要するに前に払っていた人の分だけを後で受け取るのだと考えれば、結局、つじつまは同じことにならないですか。

○八代主査 申しわけないのですけれども、その年金制度のあるべき姿というのは、これはこれでまた別の問題なので、ここはどちらかというと徴収事務の問題という形でちょっと限定しないと。

○福井専門委員 もちろん、それはわかっていますが、要するに徴収のコストと徴収の効果とが結局つり合っているのかどうかということをちょっと確認したかったのです。

○八代主査 だから、徴収のコストを今の福井さんの話で言えば、こういうことをされることによって徴収のコストがどれくらいかかっているかと。
 かつて、国民年金の場合は保険料納付額の10分の1ぐらいが徴収コストで、極めて採算が悪いというような指摘もあったと思うのですが、そういう観点から、今日はもし資料がなければ後でも結構ですので。

○福井専門委員 後ほどでいいのですけれども、こういう広報とか督促事務にどれぐらいコストがかかっていて、それで得られる、おっしゃったような賦課方式というシステムを維持することのベネフィットというのでしょうか、そういうことが何らかの形で定量的にわかれば、教えていただけますでしょうか。

○薄井課長 わかりました。事務費の方は後ほどまた確認して、お答えさせていただきます。
 基礎年金ができる前は、要はそれぞれ、どちらかといえば任意加入で払わない人は年金が出なくていいという感じが世の中にかなりあったのですけれども、やはり基礎年金という格好で全国民で支えるということになったときに、こういう収納率、あるいは未加入者がいるということでいいのかということで、まずは社会保険未加入者を退治しなければ、退治という言葉は悪いですけれども、解消しなければいけない、それに向けて努力というのをしなければいけない、その上で収納対策も頑張らなければいけない、こういうことでやってきているということでございます。

○福井専門委員 一つ包括的な感想を今までのところで申し上げると、やっぱりインセンティブがないと払いませんよね。単に幾ら督促状を受け取っても、払わなければ損だとか、払えば得だという、明確な動機づけを与えないと払わないだろうなと想像しますけどね。

○薄井課長 そこは、従来は年金制度の理念に基づく広報というのが割と多かったのですけれども、やはり基礎年金というのは3分の1国庫負担が入っています。今、将来は2分の1の議論がございますけれども。そういう意味からすると、いろいろな議論はありますけれども、やはり払わないと年金はもらえないわけですし、本人にとってデメリットがある、払うとメリットがある、こういうことも訴えるようにしております。

○福井専門委員 恐らく想像するに、払ったことで将来得られる年金と、払わないことでむしろ払わない分を現在運用したり消費したりする利益を天秤にかけて、やっぱり後者の方が大きいと思っている人が多いから、確信犯的に払わないのではないだろうかなと想像します。

○薄井課長 私どもとしては、実際にこういうふうな国民の皆さんに説明をする立場、これは社会保険事務所であったり、市町村であったりしますけれども、そういう人にこういうことですということをまずわかりやすい説明材料を提供して、そこから国民に訴えかけていくということを今やっているところでございます。
 それでは、またご質問があれば後ほどということで進めさせていただきたいと思います。
 4のところで、加入、保険金徴収の実態等ということでございます。これにつきましては、私ども社会保険と労働保険、ちょっとそれぞれ資料を整理させていただいておりますので、まず私の方から社会保険関係についてご説明させていただき、その後、羽毛田課長の方からご説明をさせていただきます。
 13ページからでございますけれども、右肩に社会保険関係と書いてあるのが政管健保と厚生年金についてということで、ご覧をいただきたいと思います。
 まず、加入事業所数、被雇用者数、うち強制加入事業所の占める割合ということでございますけれども、これにつきましては13ページの上の表にございますように、政管健保が被保険者数 1,912万人と、適用事業所数で 152万カ所ということでございます。それから厚生年金の方は、これは健保組合を構成しております会社も厚生年金には入ってくるということでございますので、被保険者数が 3,158万人で適用事業所が 166万カ所ということでございます。厚生年金の方が、健保組合設立事業所の方が会社の規模が大きうございますので、そういう意味では事業所数の増に比べて被保険者数の増がそこは大きくなっているということでございます。
 これらのうちで、強制加入か任意加入かということでございますけれども、これは実は一度適用した後は強制任意の別というのは余り問題にならないので、最初入ったときのパーセンテージをごらんをいただきたいと思いますけれども、大体92%が強制加入の事業所、残りが任意加入という格好で入ってきたということでございます。
 それから、保険料の徴収の実績でございますけれども、事業所数ベースと保険料ベースでの徴収率ということでございます。ちょっと事業所数ベースというのはなかなか数字的に整理をしてございませんので、金額ベースで申し上げさせていただきますと、そこにございますように徴収決定済額、つまり債権ですね、保険料の債権として持っておりますものが、政管健保の場合は6兆 4,000億強、収納済額が6兆 2,200億と、こういう数字でございまして、収納率は96.9%という数字でございます。
 それから、厚生年金の方は同じく徴収決定済額が20兆 4,000億強に対しまして、収納済額が20兆弱ということで97.6%、厚生年金の方が若干高い数字でございます。
 ただ、この徴収決定済額には過年度分といいましょうか、過去の分というのがかなり入っておりまして、これは実際には会社が倒産をするとか、そういうことがない限りは債権をずっと管理していくということでやっておりますので、現年度分の保険料に限ってみると約99%の保険料収納率になっているということでございます。これは、国税の所得税の源泉所得、ちょっと年度は忘れましたけれども、96.8%ぐらいのトータルの収納率ですし、法人税が95.4%という数字をどこかで見ましたので、バランスのとれた数字かなというふうにそこは思っております。
 14ページから収納対策等についてご説明をさせていただきますけれども、やはり今こういう厳しい経済環境でございますから、滞納事業所がふえてくると。きちっと口座振替なり、金融機関の窓口で納めていただければ、こちらの仕事もそれだけ少ないわけですけれども、滞納事業所がふえると納入督励とか滞納処分とか、こういうことをやらなければいけないと。
 それから、やはり滞納が長期化すると回収、納付が困難になるということもございますので、そういう意味では非常に厳しい収納環境が続いておりますが、現年度分は先ほど申し上げたように約99%であるということでございます。
 各社会保険事務所長が歳入徴収官になっておりますけれども、基本的にはまず口座振替を促進するということで、そうすれば基本的には納期内納入につながってくるということでございます。そういうふうな、きちっと納期内に納めてもらうという指導を徹底するというのが1点。
 それから、2つ目は滞納が生じたときは早く納入の督励をするということでございまして、これが2点でございます。できるだけこの1と2で対応するのが一番理想的な形だと思っていますが、残念ながらそうはいってもなかなか納まってこないという会社があるのは事実でございます。そういうふうなケースにつきましては、倒産しそうだとか、こんな情報をできるだけ早くつかんで、財産調査をするとか、滞納処分を的確に実施していくということでございます。
 ちなみに、平成13年度、これは健保、厚生年金合わせてですけれども、約2万件の差押、 1,500億円の差押延金額と、こういう数字になっております。
 それから、15ページでございますけれども、今、事務所でそうやると言いましたけれども、これは社会保険の基本はやっぱり保険料をきちっと納めてもらうということでございますので、各都道府県に事務局を置いておりますけれども、そこの保険料特別徴収専門官というのを置いて、事務所との連携、相談に乗ると。
 それから、2つ目は滞納整理についてのマニュアル等を配ると。それから、本庁の職員も滞納整理の手法を指導すると。
 それから、3つ目は監察の中で適切な指導をやっていくと。こういうことでやっているところでございます。
 それから、16ページ、適用の適正化対策でございます。
 1点目は当たり前のことが書いてございますけれども、社会保険の被保険者は、法人の事業所で常時従業員を使用するもの、あるいは個人の事業所で常時5人以上の従業員を使用するもの、これは一部適用除外になっている事業がございますけれども、そういうふうな事業所において常用的な使用関係にあるものが対象ということでございます。
 これにつきましては、従業員を使用する事業所においては、きちっと届け出をして保険料を納めていただくというのが本来法律上要請される責務であるというのが法の立て方でございます。ただ、実際にはそういうふうな理解に乏しい事業主が見られることも事実でございますので、私どもとしても就労の実態に照らして、これは事業所レベル、被保険者レベル、両方ございますけれども、それが漏れているということがあれば、きちっと指導して、届け出をしてもらい、保険料を納めてもらうということでやっているところでございます。
 ちなみに、そこにちょっと効果額で掲げさせていただきましたけれども、13年度は約34万カ所の事業所を対象にして調査をして、財政効果としても被保険者の資格の関係で約50億、標準報酬の月額がきちっとしていなかったということで40億ぐらいの保険料を納めていただいたということでございます。
 それから、17ページでございますけれども、今申し上げたものをさらにちょっと敷衍して書かせていただいておりますけれども、まず適用事業所、既に届け出をいただいている事業所において、きちっと個々の被保険者をつかまえていくという仕事でございますが、これは1にございますように、適正な届け出の励行をやるよう周知広報していくということ、それから2は事業所調査の重点化でございますけれども、特に適用漏れが多い可能性がある事業所に重点的に調査を実施します。例えば、短時間労働者とか、派遣であるとか。
 それから、3つ目はこれも最近よく話題になっておりますが、全喪というのがございまして、ある事業所、会社をやっているのだけれども全員資格喪失だということで出てくるというのを全喪と呼んでおります。その中にはきちっと仕事もやめて従業員もいなくなった全喪というのがあるわけで、これは全く問題ないわけでございますけれども、そういうふうな偽装全喪という事態もあるという話がございますので、関係の省令を改正いたしまして、適用事業所に該当しなくなったときの届け出を規定をきちっとして、いろんな書類の添付を義務づける、それを受け付けるのに際しての調査確認法も指導するということで、これはやっているところでございます。
 それから、18ページでございますけれども、今度は適用漏れになっている事業所の適用促進ということでございます。これにつきましては、労働基準監督署とか公共職業安定所、税務署等の窓口にリーフレットを置くとか、商工会議所等を通じてリーフレットを配るなど、周知広報をきちっとしていくということ、きちっと届け出をしてくださいと。
 それから、2つ目はこちらからの積極的なアクションでございますけれども、法人登記簿を閲覧して、未適用事業所を把握して、ここはちょっと民間を使うということでございますが、各県の社会保険労務士会に委託をして、社会保険労務士さんに巡回説明をしてもらうと。その上で、こういうふうな事業所の中には本来適用対象にならないところもございますので、適用対象になるということがわかったところについては、必要な指導をやっていくということでやっております。
 それから、3つ目は14年度から取り組んでいることでございますけれども、これは厚生労働省になってからということでございますが、労働保険と社会保険ですね、先ほど申し上げたように、制度は完全に一致をいたしません。19ページにございますように、厚生年金と雇用保険、これは比較的対象は似ておるのですけれども、それでも完全には一致をしない部分がございますけれども、相当部分で一致をするということでございますので、それぞれの制度に加入しているけれども、相手に加入していないものについてデータを突き合せて、適用漏れ事業所の候補者リストというふうなものをつくって、必要な指導をしていこうという取り組みをしてございます。
 そこに2つ目の丸で、このようなリストをつくるということでございますけれども、中には本来厚生年金では適用対象にならない事業所もございますし、それから単なる表記のずれというのもございますので、これがすべて適用漏れということではございませんけれども、その候補者リストをつくって仕事を進めるということでやっているということでございます。
 それから、ちょっとこれは資料を用意させていただいていないわけでございますけれども、未加入事業所への罰則規定とか、業績不振法人への徴収免除・延納等の特例措置について、4つ目の丸でご指摘がございます。これにつきましては、未加入事業所ということで、健康保険の本来強制適用、加入すべきであるにもかかわらず、加入していないケース、つまり強制適用事業所の事業主が適用事業所である旨の届け出を怠ったり、あるいは被保険者の資格取得の届け出を怠る場合というのがあるわけでございます。これは法律上は罰則はございます。適用事業所である旨の届け出を怠った場合は10万円以下の過料、それから被保険者の資格取得の届け出を怠った場合は6カ月以下の懲役、あるいは50万円以下の罰金と、こういう形で実は罰則はございます。
 ただ、実際にこの罰則がどれくらい適用されているかという議論につきましては、事業所の方からいろんな届け出もきちっとやっていただくと、協力があって後の事務が円滑に進むという部分もございますので、実際この罰則の適用という事例は、私自身はちょっと承知をしていないということで、法律上は罰則はございます。
 それから、保険料の減免のお話でございますけれども、やはり健保・厚年制度というのは、制度を安定的に運営して行くためには、これはきちっと保険料を納めていただくというのが大前提でございますので、こういうふうな減免制度をつくるかどうかは、社会保険庁という実施部局の問題ではなくて、制度所管部局の問題ではございますけれども、そちらの方にも確認をいたしましたが、やはり他の事業主、被保険者に結局負担を転嫁することになりますので、それは法律上も難しいということでございます。
 ただ、私ども実際仕事を進める上で、先ほど滞納処分ということを申し上げましたけれども、保険料が納まらないからすぐ滞納処分という強制的な手段に移るのではなくて、できるだけ納付を督励する、期限内に納めてもらうということをやりながら、滞納に陥ってもまずは納付計画を立てていただいて、こういう計画で納めますということで、ご努力をいただくということであれば、即滞納処分というふうなことではなくてやっているというのが実態でございます。
 それから、20ページでございますけれども、事務事業に従事する従事者数でございますが、基本的には被用者保険の話でございますので、社会保険庁の関係職員の中で、政府管掌健康保険と厚年保険の担当に当たっている、これ厚生保険特別会計という特別会計がございますが、それに所属する職員数をそこに挙げさせていただいております。1万 1,277人ということでございます。
 ただ、誤解のないように申し上げておきたいのですけれども、この注にございますように、これはいわゆる徴収ですね、適用して徴収をするという職員のほかに、被保険者の記録管理であるとか、保険給付、これは医療保険の方の給付関係も、年金の給付関係、あるいはそれの相談の関係とか、諸々ございますけれども、それの職員全部トータルの数字でございます。ですから、実際に適用徴収に当たっている職員というのは、このうちの一部であるということで、非常に大ざっぱな言い方をすると、三千数百人というオーダーがこのうちの適用徴収関係の職員というふうにお考えをいただきたいと思います。
 これらも、実際にはきちっと届け出をしていただいているところはあまり問題にならないので、いわゆるきちっと届け出をしていただいていない、先ほど申し上げたようなところに対する調査とか、あるいは保険料を滞納している事業所に対するアプローチとか、この辺が実際には仕事の上でかなりポイントになってくることだと考えております。
 社会保険関係の4のところは大体以上で終わらせていただきますので、徴収課長に移らせていただきます。

○八代主査 ちょっと労働保険関係に入る前に、今の社会保険関係でちょっと質問をさせていただきます。

○奥谷委員 この未加入事業所といいますか、強制加入事業所が未加入である場合の監督指導体制というのがありますね。これは悪質な場合がありますね。1回言って、それでもなおかつ無視して入らないといった場合に、その事業所の名前を公表するというような、例えば麹町であるとかいろいろ社会保険の事務所がありますね。そこがそういういろんな便りを出しますよね、広報だよりみたいなものに。そこにきちっと加入していないと、悪質業者というか、そういった情報公開ということをなさるというようなことはしないのでしょうか。

○薄井課長 基本的に、仮に今、罰則の適用をしていないということで申し上げましたけれども、そういうふうな次元の話が出てくれば、そこをどう考えるかというお話が一つあろうかと思います。
 それで、現在の取り扱いを申し上げさせていただきますと、加入状況について、今、奥谷委員は悪質だとおっしゃいましたけれども、悪質かどうかということはちょっと別として、単に忘れているというケースなどもございますし、それから加入手続中でまだ届け出がしてないとか、あるいはそもそも強制適用事業所に該当しないということで、いわゆる適用対象の可能性はあるけれども、実は違うというふうなケースなどもあるので、一般的にはそれを公表するという取り扱いには現在していないところでございます。
 ただ、ここをどう考えていくか。結局、どういうふうな情報をどのように公表するのかというふうな議論もございますので、現在はそういう取り扱いにしておりますけれども、結局こういうことを公表した場合に、これが良質でこれが悪質だというのもなかなか難しいという部分もございますので、事業主の権利とか、そういうふうな企業の秘密みたいな部分を害するのかどうか、それから悪質性の程度とか、その辺を含めてどういうふうに考えていったらいいのかということも含めて、これは議論をしていく必要があるというふうに思いますが、今の段階では公表しない取り扱いにしております。

○奥谷委員 例えば、社会保険に加入していない企業が、「社会保険完備」と求人広告の中に載せるわけですね。そういったものも、労働者が応募して、そこの会社が本当に社会保険を完備しているかどうかということを問い合わせた場合に、社会保険事務所は個人のプライバシーだと言って公表しないのですね。それは労働者を守るのか、企業を守るのかという、そこの社会保険庁側の意識というか。虚偽の広告を出されて、そしてそこへ入った場合に、社会保険に加入されてないと。数カ月経って、何も入っていないという状況を知らされて、雇用保険も適用されないという、そういうような実態があるわけですね。そういう業者に対して何ら手を打たないままずっと放置しているのかということですよね。ですから、給与関係が厳しくなってきますと、はっきり言って、こういった問題がかなりこれから出てくると思います。

○薄井課長 私どもとしては、いずれにしても本来適用対象となるべきところ、これは適用漏れというのはできるだけ解消していかなければいけないというのがまず大前提だと思っています。ですから、基本的にはきちっとそういうケースについては届け出をしていただくというのが、私ども、わかればやるべき仕事だというふうに思っています。
 ただ、情報があれば、何らかの端緒があればスタートできる、世の中からの情報ですね、それからあるいは先ほど申し上げたような法人関係の登記リストから拾うとか、あるいは雇用保険との突合せから拾うというふうなことで、わかればそういうアプローチをしていくということだろうと思っています。
 あと、これは私、直接の担当ではないからあれでございますけれども、仮に虚偽の広告で求人広告を出したとなれば、これは雇用サイドの方でそれが許されるのかという議論はあるかと思いますので、そこはもしそういう観点で、ここは詐欺と言うのがいいのかどうかわかりませんけれども、問題があるということで照会があれば、そういうお答えをすることには当然なると思います。

○奥谷委員 ですから、それはやはり社会保険庁として徹底して欲しいのですね。各事業所によって、そういった会社の名前は一切公表しないという答えを出す事業所もありますので、そういう問い合わせがあった場合は、絶対的に、加入しているか、していないかということはきちっと答えるという義務を持つというようなことを徹底していただきたいのですけれども。

○薄井課長 現在、被保険者本人、これは会社に入られた方ですけれども、入られた方が「私は入っているはずなのだけど入っているのだろうか、正しいですか」というご照会があれば、これは被保険者資格の確認という、法律上の項目がございますので、入社された以降はそれに基づいて、これは必ずお答えをするということになっています。

○奥谷委員 では、会社が入っているか入っていないかというのはどうですか。

○薄井課長 会社に入る前の話については、今ちょっと奥谷委員のご指摘もございましたので、そこら辺も含めて、どういうふうなことが考えられるのか、私もちょっと研究してみたいと思います。

○奥谷委員 ぜひそこのところ、求人広告等で虚偽の記載というのもかなり目立っていますので。そうしますと、それは労働基準監督署に行ってくれとか、消費者センターに行ってくれとか言って、労働者が右往左往しなくてはならないという、職安に行って相談しろとか、これはこっちの問題ではないというような、あちこち振り回されるような状況になってしまうわけです。
 ここにも問題になっていますワンストップサービスに。ですから、厚労省として一体として保険の問題は一つとしてまとめて受け取るというか、どう情報を相手に渡すかということをきちっと官庁の中でやっていただきたいなと思いますけれども。

○八代主査 今の奥谷委員にちょっと補足しますと、それは、奥谷委員はどちらかというと労働者保護の観点から言われたのですが、別の見方をすると、一般市民から、この企業はきちっと社会保険の適用対象になっているか、なっていないかという問い合わせというのは、非常に貴重な、社会保険庁にとっても重要な情報であって、それを活用して、いわば嘘をついている事業所を摘発するというか、調べる非常に貴重な情報提供だということは言えると思いますので。
 労働者保護は社会保険庁の直接の仕事ではないということはよくわかりますが、やはり未適用事業所の適用促進という観点からは非常に活用すべきではないかというようなことも含めて、ご検討いただければと思います。
 そういうことでよろしいですか。

○奥谷委員 はい。

○福井専門委員 滞納処分の場合の延納金とか課徴金とかはどういうふうになっていますか。

○薄井課長 14.6%です。

○福井専門委員 これは、実際上はどうですか。差押えとか滞納処分に移行すると慌てて払うというところが多いのか、それとも最初から払っていないようなところは結局換価処分までいってしまうことが多いのか、どちらですか。

○薄井課長 実際には、別にそれをやったからといってすぐ会社がどうならないというケースもあると思いますけれども、そういう手段をとる前に納付計画を立てて、それに基づいて少しずつでも払っていきますと、滞納金を減らしていきますと、こういうお話を事業所との間で約束を取りつけて、それに基づいてそれを励行していただくというケースが圧倒的に多いと思います。

○福井専門委員 1万 9,000件、1,500億円とありますけれども、これはかなり氷山の一角だということなのですか。

○薄井課長 だから、これは滞納処分まで行ったものという意味ではですね。期限内に納めなかったケースはこれより多いと思います。

○福井専門委員 期限内に納めなかったうち、圧倒的多数は納付計画なりで任意の形で片がついて、残されたわずかなものがこれだという認識ですか。

○薄井課長 圧倒的に多数というのはどうかわかりませんけれども、先ほど13ページで徴収決定済額と書いてあって、例えば政管健保でいくと 2,000億ぐらいが過年度の未納分なのですけれども、このうちのかなりの部分が過年度からずっと続いているやつで、だからそれはそういう計画の中で少しずつ納めていきますという部分もございますし。
 ただ、中には全くそういう計画も立ててなくて、ただ財産の状況も非常に厳しいので、滞納してもなかなかそういうしかるべき財産がつかまえられていないという会社もあるかもわかりません。そこはケースバイケースだと思います。

○八代主査 ちょっとその過年度という意味がわからないのですが、この率は、今年発生した未納者ではなくて、昨年以前からずっと払っていない人という意味になるのですか。

○薄井課長 債権として、いわゆる今年の分の保険料ではなくて、過去の年の分の保険料ということでございます。これは、基本的には時効は2年で来ますけれども、債務承認をそこでしていただきますので、そうすると時効が中断されていっているというふうなもの、だからかなり前の保険料もあるということです。

○八代主査 時効にかかわって消えてしまうのもあるのですか。

○薄井課長 実際には、そこはもう一回。

○田中補佐 すみません、一度徴収決定をしまして、督促をしたり、債務承認をさせたりすれば、その都度時効が中断いたしますので、一度把握をして、ここはこれを払うべきであるということであれば、通常は時効中断をしていきますので、それは2年を形式的に越えてもそれは徴収できるということでございます。

○福井専門委員 冒頭の質問にかかわるのですが、任意の徴収計画なりに基づいて、まず一つは、それはそういうものが出た後は計画どおりに適切に払われているものなのかどうかという点と、そういう任意の計画にいくに当たって差押えをするとか、滞納処分にいきそうだという気配が意味を持つのかどうかということをお聞きしたいのですけれども。

○薄井課長 これはケース・バイ・ケースですから、なかなか言いがたいところですけれども、やはり中には計画を立てたけれども、こういうことでやると言ったけれども、それどおりにはできないから、もう一回ちょっとそれを組み直してほしいという相談があるというふうに聞いております。
 それからもう一点は、計画どおりにいくものかということと、それからもう一つは、きちっと納められないと差し押さえもありますということは、そういう計画をつくってもらう際に、こちらから相手方に言うということは当然あります。

○福井専門委員 そうしますと、差押えになっている1万 9,000件というのは、差押えになりそうだと聞いたら、延滞金を払うよりは任意で払う方が安いとか、そういう考慮はしないで、何で漫然と滞納処分まで行ってしまうわけですか。

○薄井課長 まあ、中にはなかなか払いたくないという人もいるのかもわかりませんけれども、あるいは資金繰りがつかないとかですね。

○福井専門委員 差し押さえになった場合に延滞金が高いとか、そういうことはあるのですか。

○薄井課長 それはございません。

○田中補佐 委員にちょっと補足のご説明をしますが、延滞金というのは、これは納期限の翌日からすべてかかっておりますので、これが差押えに至る場合であっても、任意に払う場合であっても、分割納付の場合であってもすべて延滞金は払っていただいております。

○福井専門委員 そうすると、一つ思ったのは、差押えで払わせる場合と、任意で払わせる場合と、同じ遅れ方で払ってもらうにしても、行政の徴収コストは山のように違いますよね。そこを区分しないでいいのかなというのが一つあります。
 それからもう一つは、差押えにせよ、何にせよ、14.何%という高利子を物ともしない人が1万9,000件と、これだけいるということであれば、要するに延滞利率は余り、早期納付のインセンティブとして、こういう人たちには効いていないということかもしれないという印象を持ちますけれども。

○薄井課長 ただ、全体について申し上げると、現年度でいきますと99%の保険料が現年度できちっと納まっているわけですから、やはり納期内に納めなければそういうことが発生すると、基本的にはきちっと納めなければいけないというのが浸透しているというのが、まずベースにはあると思います。ただ、トータルがやはり厚生年金、政管健保合わせて27兆ぐらいのオーダーでございますので、そういう中にこういうのがあるというふうにお考えいただきたいと思います。

○福井専門委員 差押えされても、払ってもらってしまえていればいいのでしょうけれども、やっぱり未納がありますよね。というのは、差押える財産がないということですか。

○薄井課長 そういうケースもございます。

○福井専門委員 差押える財産はあるけれども、未納になっているというのもあるのですか。

○薄井課長 ですから、そこは、相手が計画をきちっと立てて払うという姿勢を示していただいているかというのが、実際上ポイントになってきて、いろいろ働きかけとして「少しずつでも払いますか」と、あるいは「納期が過ぎていますけどこの日までに払ってください」と、こういうことを申し上げて、「わかりました」と、あるいは「そのとおりはできないけれども、もう少しこういうふうな計画で払います」と言って一生懸命やっていただくということであれば、こちらも差押えという手段をとるのは得策ではございませんから、それはやらないと思っております。
 ただ、そんな働きかけをしても全然乗ってこないとか、そういうふうなケースがあれば、これは差押えまでするということもあるということです。

○福井専門委員 そうすると、差押えになっているのは確信犯の人たちだけで、それ以外の人は善意の人だという整理になるのですか。

○田中補佐 いろいろケースがございますので、いろいろあると思いますが、基本的にはそういうスタンスです。要は、例えば、まず滞納し始めますと、最初まず「事務所に来てください」とか、そういう働きかけをできるだけすぐするのですが、例えばそれに来ないと、納付計画をいつまでに出してくれと言っても出さないと、こちらの働きかけに対して、先ほど申し上げたように全く応答がないというケースは、「これは差押えをしますよ」と予告して、それでもなお乗ってこないというときには差押えになるというふうに、基本的には考えていただいていいと思います。

○福井専門委員 逆に言えば、そういう確信犯で居直っている人は、確実に財産さえあれば競売換価で取っているのだ、差押えで滞納処分で取っているのだ、というふうに分類はできるのですか。

○田中補佐 そうです。現場では、まず財産を見つけるというのが結構事務処理としては大変なことなのです。例えば、どこが取引先なのか、どこに対して売り上げの債権を持っているのかといったことがございますので、まずそこを見つけるというのにかなり苦労しているということがございますが、もう全く応じないと、かつ財産を見つけられたというケースであれば、そうなるというふうに考えられると思います。

○福井専門委員 もう一つ、より巧妙な企業で考えられるのは、要するに社会保険庁向けには善意の顔をして、「ちゃんと計画立てて払います」と言い、だけれどもそうしないと差押えられるからということを学習している企業で悪質なところだったら、計画を立てて払うふりをして、また期限が来たら、「いや、やっぱり払えませんでした」と言ってズルズル延ばすというのも、企業の合理的な行動としてあり得るように思いますが、そういう場合はどういうふうに対処するのですか。

○田中補佐 これは、事業主側の態度にもよりますので、1回でもだめというのか、もう絶対変更はだめというのか、もう1回はちょっといつまで待ってあげようと、それはいろんなケースがあると思いますが、そこはもう何度も続くということであれば、「これは差押えに移行せざるを得ませんよ」ということは、かなり今事務所は厳しくやっているというふうにご認識されていいかと思います。

○福井専門委員 一定の裁量はあると思うのですけれども、ここから先はもう強制処分だよという、おしりが決まっていないとなかなか不公平が起きたり、徴収の非効率が起きるのではないかということを懸念します。

○薄井課長 もう一つちょっとよろしいですか。実際問題として、換価というお話がありましたけれども、売掛債権とか、口座とか、そういう財産をむしろ主として調べるというのが一番効率的だと思うのですね。
 それで、私ども保険料というのは、実は毎月取っていますから、割と滞納の発生というのもよくわかるし、世の中の状況というのもある程度情報をつかめるわけですね。そういう状況の中で、やっぱりもうこれ本当に会社が倒産をするとなれば、これはかかっていかないとしようがないわけですね、いつまでも管理してもしようがない。そういうとき、例えば社会保険料だけ滞納しているのではなくて、例えば税も滞納している、あるいは民間の債権も滞納しているというふうなケースがあり、そういうふうなケースはやっぱり先に強制徴収をやるということが、これは重要になってきますから、そういうふうなケースはもう間髪置かず、現場の判断で速やかにやると、こういうことでやることになっております。

○福井専門委員 何か、ある程度の指針なり基準なりマニュアルなりがあった方が、現場で気の弱い担当者と強気の担当者だと、どこら辺で強制徴収に踏み切るかとか、恐らく相当個人差があると思うのです。何らかのガイドラインがあった方がいいのではないですか。

○薄井課長 いずれにしても、先ほどちょっとマニュアルというふうなことを申し上げましたけれども、私ども社会保険庁本庁の担当者、それからあとは事務局にもそういう相談に乗る人間を置いていますので、どういうふうな形でそれをやっていくかということは、私ども研究させていただきたいと思います。
 実際には、そういうことで、必ずしもまちまちでやっているということではないということはご認識をいただけたらと思います。

○福井専門委員 社会保険は払わなかったら、事業所としてはある意味では得するだけで、さっきの国民年金と違って、後で自らにはね返るということはないのですか。

○薄井課長 社会保険、厚生年金も政管健保も、一回適用すれば、これは給付するという仕掛けになっています。

○福井専門委員 払わなくても払ってあげるということになっていますね。

○薄井課長 払わなくても、年金も医療保険も給付があります。

○福井専門委員 なら、ますます不払いは犯罪的ですね。

○奥谷委員 そういった不公平感がすごくあるのですよ。だから、さっき言った未加入のまま平気で事業を続けている企業とか、加入していても払わないままとか。だから、まともに払っている企業がばかを見るという不公平感は、社会保険庁に言うと、徴収する人が足らないからどうしようもないのだと、だから人間をふやさない限りは、今のところそういう徹底した指導はできないと。
 ですから、ここに我々は今質問を書いていますように、指導体制とか、そういった罰則ですね、それはやはりもっと明確にきちっと出さない限りは、先ほどから言っていますこういった悪徳業者というよりも確信犯、こういう業者はこれからたくさんふえてきますよ。それで不公平感をどんどん産んでいきますから。こういうばかなことをやっていると、まともに払っている企業も払わなくなってきますよ。

○薄井課長 奥谷委員のご質問の不公平なというのは、実は2つあると思うのですね。
 一つは、本来適用するべき会社なのに適用の届け出をしていない、あるいは個々の被保険者の届出を偽っているというケース、このケースについては、これは保険料を納めないかわりに給付も出ないという仕掛けです。ですから、これがいいとは私申し上げませんけれども、ある意味では一つのバランスにはなっているということです。
 もう一つは、届出をした上で保険料を納めるのをサボっているケース。これは私どもとしては、届け出が出てきて、事業所として認定をして、保険料を納めてくださいと言ったら、仮に取りっぱぐれてもこれは医療保険も年金も給付をするということになります。ですから、ここはきちっと押さえていかないといけないとの重要度がより高くなってくるということ。
 それから、3つ目はきちっと納めてくれる。これは非常に届出もし、きちっと納めてくれる。これは一番まじめにやっていただいている人で、大部分はこれだと思うのですけれども。
 問題は、私どもこれはちょっとこういう場で申し上げるのは適当ではないかもわかりませんけれども、一番正直言って悩ましいのは、一回適用して、被保険者も確認をして、適用事業所にしてしまえば、仮にも保険料を全然納める気がない、そういうところでもこれは給付をするという仕掛けに法律上なっておりますから、そういう意味では、そういう仕掛けの中で、やはり実際届出をきちっとしていただく、それから個々の被保険者の給料とか、そういうのも全部届出をきちっとしていただくという、事業主の協力をある程度得ながら、実際仕事を動かしているという実態があるのも事実でございますので、そういう中で、一つは適用漏れ、事業所レベルの被保険者……。

○福井専門委員 2つ目のケースは、やっぱり止めなければつじつま合わないのではないですか。何でたまたま届けたところが後で居直った場合だけ、漫然とその後給付をし続けないといけないのか、さっぱりわかりません。

○薄井課長 漫然とというあれでございますけれども……。

○福井専門委員 いや、だから取る努力をして、一定の期間たって取れないのなら、企業名を公表して、もうこの企業に勤めている人は今後もらえませんよ、それは企業にかけ合いなさいと言って、従業員にも社会に対しても告知した上で、停止すべきではないのですか。

○薄井課長 ただ、被保険者のレベルからいくと、これもよくわかりませんけれども、基本的には保険料は天引きされているケースが大部分だと思うのですね。

○福井専門委員 予め知らせれば、例えば「一定の何カ月後からは給付がなくなりますよ」と知らせれば、そんなまともでない企業は辞めて、どこかよそを探そうという人も出てくるかもしれない。だって、全然動機づけがないでしょう。要するに、労働者からすればちゃんと医療給付とかも出る、だけれども企業はサボったままというところに勤めることの痛みは、従業員にも全く還元されない。かつ、事業者として見れば、払わないと居直っていても労働者確保の上で何の支障もないわけですよ。そういう企業に漫然と、いわばほかの人から強制徴収した金を、逆に言えば本来の反対給付がないにもかかわらず払い続けるということ自体が、システムとしておかしいような気がします。

○薄井課長 ですから、先ほど来申し上げている、確かにその滞納があるのは事実でございますけれども、基本的には強制徴収という手段も使って納めてもらうということでやっているということは事実ですし、それから99%という数字にあらわれているように……。

○福井専門委員 いやいや、だったら100%でないと。さっきの国民年金と違うのは、あちらはある意味では加入における選択の自由というのはあり得ると思うのですよ、百歩譲って合理化するという理屈を探せば。
 だけれども、こっちの社会保険の方は全くないと思います。彼らがもらっているお金というのは、ほかの人から奪い取った金なのです。泥棒しているのと同じではないですか。強盗したお金を何でもらう権利があるのかというのが、やっぱり普通の国民感情ではないですか。強制徴収をやるのなら 100%取るべきで、100%ができない現実があるのだったら、サンクションとしては何らかの告知をした上で停止するというのが筋だと思います。

○薄井課長 そこは、税と社会保険は違うのだという議論になるとそうかもわかりませんが、税の方も現実問題としては 100%強制徴収ということではないわけですね。

○福井専門委員 税は受益と給付というか、コストと受益の対応関係が明らかではないから税なので、これは違うでしょう。何のために取るかというのは明確なわけです。

○八代主査 課長がおっしゃっているのは、事業主は滞納しているけれども、被保険者は保険料を天引きされているという場合がほとんどなのですか。

○薄井課長 そうだと思います。

○八代主査 そうだとすると、労働者の保護のためにも、そこで切ってしまうと、労働者は例えば医療保険や年金の対象外になってしまうから、かわいそうだと、一つはそういうご判断があるということですよね。だけれども、もっとひどいのは労働者から金を取っておきながら、それを社会保険庁に払わないというのは、完全な窃盗であって、これはむしろなぜ窃盗で逮捕しないのかという、警視庁との関係になると思うのですが。

○福井専門委員 横領、窃盗など、刑事法の問題ですよ。

○八代主査 そこは刑事法との関係はどうなっているのですか。

○福井専門委員 端的に刑法の問題です。

○八代主査 そういう意味では、警察に通報するとかが必要ではないのですか。

○福井専門委員 なおさらそういう企業を野放しにしないで、刑事告訴するなり、あるいは保険者との関係で言えば、事前に告知すれば、「あなたの払っている、天引きされている保険料は適切に払われていませんよ」というのを教えてあげて、「もうじきなくなりますよ」って事前に告知したら、それこそやっぱり慌てて払う動機づけになるはずなのです。

○奥谷委員 どうしてそういう事業所の公開をしないのか。滞納なり払っていない事業所の名前の公開を。

○薄井課長 滞納事業所となりますと、結局滞納にもいろんな滞納があるわけですね。奥谷委員は悪質だとおっしゃられるかもわからないけれども、そういうふうなものを一律にするという、これはひとつ我々としても企業の一種の秘密みたいなところもございますので、そういうふうな観点に立ったときに、そこをどう考えるかということだと思っています。

○福井専門委員 しかし、ほかの人が払っているのです。だから、事情が何であれ、ほかの人が肩がわりしていて、払うべき人が払っていないということは、企業の事情がどうあれ、それ自体がやっぱり不適切だというのが出発点になるのではないですか。

○薄井課長 誤解のないように申し上げておきたいと思うのですけれども、私どもそういう会社ですね、例えば八代先生がおっしゃったように、要は従業員からだけ取って払っていないと、それがいいとは一言も思っていないし、やっぱり基本的にはそれはきちっと事業主には納めてもらうというのがまず大原則だし、そのための最大限の努力をするということで、これは常にやっているつもりでございます。

○福井専門委員 それならやっぱり2段構えで、もちろん 100%徴収を目指される努力は、それは尊いと思いますが、でも払わない人は、確率的、統計的に絶対に残りますよ。そういう人がでもやっぱりもらい続けるというのは、これは社会正義にも反するし、保険制度のあり方の趣旨自体が没却されるということだと思います。

○八代主査 ちょっと雇用保険もやらなくてはいけないので、ちょっと時間もありませんので、どうしましょうか、もうちょっと質問事項をもう一回詳しくして、書面できちっと。
 とにかく、ちょっと他省との連携関係、国税庁との連携関係も先ほど質問で書きましたけれども、何しろ警察との連携関係がより重要であるということで、もう一度こちらは改めて質問状をつくりますので、またよろしくお願いいたします。
 ちょっとそれ、時間との関係で、申しわけありません、せっかく厚生労働省の方も来ていただいていますので、ちょっと社会保険庁の方、このあたりでよろしいでしょうか。今日お答えできなかったところは、また改めてこちらからお願いいたします。どうもありがとうございました。
 ではよろしくお願いします。お待たせしました。

○羽毛田労働保険徴収課長 それでは、労働保険の関係の21ページ目でございますけれども、今の社会保険と同様の観点からのご質問への回答ということになりますが、先ほど6ページ目で制度的な仕組みですね、これは薄井課長の方からもご説明いただいたとおりでございますが、まず適用事業数、労働者数でございますが、(2)の保険料収納状況でも労働保険としておりますように、労災保険と雇用保険は原則としては適用徴収に当たっては労働保険として1本で取っております。しかしながら、今回労災と雇用と別々にその適用状況をお示しした方がわかりやすいということで、この数字を掲げさせていただいております。
 まず、労災保険でございますが、269万事業でございまして、労働者数は 4,858万人でございます。雇用保険は 203万事業で 3,361万人ということでございますが、労災保険と雇用保険の差がございますけれども、これは一つには労災保険、先ほどご説明がありましたように、基本的には1人でも雇用をしていればパートであっても適用があるということでございますが、雇用保険はご案内のように、被保険者の要件がございますので、少しその分が差が生じていると。
 それから、労災につきましては、有期事業ということで、建設業については現場単位で適用するということで、ちょっと細かく単位が区切られておりますので、こうしたことで多くなっているというようなことでございます。
 それから、保険料の収納状況でございますけれども、先ほどの社会保険庁さんの方と収納率についてはおおむね同様でございまして、徴収決定済額3兆 7,000億円強に対しまして、収納済額3兆 6,000億円強ということで、 97.70%、九十六、七、八、このあたりを行ったり来たりしているという状況でございますが……。

○八代主査 今のは何ページですか。

○羽毛田課長 すみません、21ページ目でございます。ということで、この数字はそういう状況でございます。
 そこで、22ページ目でございますけれども、先ほどの社会保険庁さんと同じような対策になってくるわけですが、未納事業からの、いわゆる滞納している事業所からの保険料の適正な徴収についてでございますけれども、これにつきましては、やはり厳しい経済状況ということで、社会保険庁さんに比べればかなり保険料率も低いわけですけれども、さすがにこれだけ厳しいと、なかなか支払い能力も低下しているというようなこと等から、納付督励をしても応じられないような事業所もあると。このため、都道府県労働局、私どもの方は基本的には都道府県の労働局長が歳入徴収官という形で、全県、労働局の徴収課の方で音頭をとってやっているという状況でございます。その際も、滞納整理実施計画というような計画を策定して、例えば滞納額が非常に多いところとか、あるいは先ほどお話ありましたように、過去から恒常的に滞納しているとか、そのような事業所をピックアップするなどして、重点的に効率的に滞納整理等をしていると。
 ここに書いてある対策は、先ほどの社会保険庁さんと同様で、まずは積極的な臨戸訪問も含めて納付督励を行うと。そして、その際に納入計画書や、あるいは債務があることを承認させる等によりまして、2年の時効がかからないようにする等によって、粘り強く対応していくと。そして、支払いの意思が見られない者に対しては財産差押えというようなこと等に努めているところでございます。
 そして、(4)でございますが、そもそも未手続の場合、この適用促進につきましては、今ほど申し上げましたとおり、労働保険につきましては農林水産業の一部を、これは5人未満の個人経営というものになりますが、そういったものを除きまして、労働者を1人以上雇用する事業はすべて適用事業ということになっておりますので、費用負担の公平、特に平成13年度、あるいは昨年10月からは雇用保険率もアップしておりますので、そういった観点も加えますと、より費用負担の公平を図る観点が必要でございますので、適用促進に努めているということで、具体的にはそこに1から3まで書いてございますように、まずは未手続事業を把握することが重要でございますので、監督署や安定所と連携いたしまして、例えば事業主団体の名簿を活用させていただく等々して未手続の把握に努めていると。
 そして、やはり自主的加入を促す、なかなか理解されていない方も多いという事情にございますので、10月を月間といたしまして、広報をする等によりまして入っていただくようにすると。
 それから、3つ目でございますが、後ほどご説明いたしますけれども、私どもの方で、特に中小事業主の負担を軽減する観点から、事務組合制度というものがございますので、これは実は事業協同組合とか商工会議所等の既存の事業主団体を活用し、そこを事務組合として認可するという仕組みでございますが、そういった事業主の団体と会員、構成員ですね、こういった関係をうまく活用して、適用促進等に努めているということでございます。

○八代主査 途中ですが、農林水産業はなぜ除外されているのですか。

○羽毛田課長 これは、私ども労働保険におきましても、農林水産業だけではなくて、ほかの業種も含めて5人未満とかはかなり長いこと暫定任意適用であったのですが、昭和50年から今の形になっておりまして、5人未満の個人も含めて全面適用という考え方だったのですが、さはさりながら、農林水産業につきましては、やはりいろいろな形態がありまして、把握もなかなか難しいということで、一部については任意適用と、こういうことになっております。ですから、ごくわずかでございます。

○八代主査 その他、私学共済の私学の問題がありますよね。あれは労災も含めてでしたっけ。

○羽毛田課長 いえ。

○八代主査 労災は入っているのですか。

○羽毛田課長 はい。

○八代主査 だから、雇用保険の方だけ入っていないということ。

○羽毛田課長 その問題は、雇用保険特有の問題でございます。

○八代主査 はい、わかりました。

○羽毛田課長 それで、23ページ目に、私どもの、労働保険の適用徴収関係にどのぐらいの人数が従事しているかということでございまして、これは、私どもは徴収勘定という勘定がございまして、こちらに定員の数字がございまして、本省を含めて 1,981名という数字でございます。
 それで、24ページ目に今申し上げました労働保険事務組合制度について資料をお付けしてございまして、事務組合というのはここに五、六行で趣旨を書いてございますように、先ほど申しましたように、歴史的に5人未満の個人をどんどん強制適用にしていくという流れの中で、既存の商工会議所とか事業協同組合とか商工会ですね、こういった団体を活用して、手続がしやすいようにして、適用促進、あるいは徴収を進めていこうという観点から設けられたものでございまして、一応フローチャートでその違いを書いてございますが、上が本来の姿といいますか、通常の場合でございまして、直接労働保険料について申告をしていただいて納付していただくわけですが、事務組合に委託される事業主の場合におきましては、労働保険事務組合として事業協同組合等が厚生労働省から認可を受けてあれば、そこに書いておりますように、そこにおいて申告あるいは納付等の事務を代行することができるということになっております。
 そちらからのペーパーには、保険料の納付はできないのはなぜかというような趣旨のご質問がたしかあったかもしれませんが、そこはもしそういうご理解であるとすれば誤解でございまして、保険料の納付も含めて、まとめてこの事務組合から国の方へ納めていただけると、こういうことでございます。
 したがいまして、事業主にとって、事務処理の負担軽減はもちろんでございますけれども、あわせまして私ども行政といたしましても、例えば30の事業所の分について、合わせて1枚の申告書で申告していただけますので、そういった意味で行政の効率化にもかなり役立っているというふうに考えております。
 それで、25ページ目に委託事業主の範囲等について少し書いてございますが、1にありますのは委託できる事務の範囲で、先ほど申しましたように、保険料の納付等もできますと。なお書きにありますように、できないものは保険給付の請求ですね、こういったことについては適用徴収面での事務組合制度でございますし、労働者が主として給付請求するわけで、事業主の団体を使うということもあり得ないとも思いますし、そういう仕組みになってございます。
 委託事業主の範囲は、いわゆる中小企業というふうになります。
 それで、労働保険事務組合となるための認可の主な基準でございますが、1にございますように、事業主の団体であることが要件となっていまして、これは法律的要件でございます。ですから、先ほど申しましたように、メインは事業協同組合、あるいは商工会議所、商工会などの法人でございます。ただ、そのポツに書いてございますように、団体が法人でなくても構わないということになっておりまして、法人でない場合には代表者の定めとか、あるいは構成員の範囲、組織、運営方法等がきちっとしているということで、団体性が明確であることが必要となります。
 そして、2以下ですが、やはりそうはいっても事業主の保険料などを取り扱うわけでございますので、適正な事務処理能力を要していることが必要になりますので、1つには2にございますように、団体として本来の事業目的をもって活動していて運営実績が2年以上あるということとか、あるいはその事務処理体制ということで、きちんと専門能力を持った方が役職員にいたり、あるいはお金を扱うわけですので、内部牽制体制が確立されているかどうかということが必要となります。
 それから、4つ目にございますように、総会等の議決機関の承認を経て、事務処理規約が作成されておる必要がございまして、その中で労働保険料の流用を禁止したり、保険料専用口座への預託、つまり保険料専用口座を設けて、そこへ預かった保険料は入れておいて、期限が来たら国に納めるという形で、例えば私どもが監査する場合にもわかりやすくしていただくというようなことで、適正化を図っているところでございます。
 どうぞご理解をいただきたいと思います。以上でございます。

○八代主査 では、民間委託について、社会保険庁からお願いします。

○薄井課長 民間委託の関係、27ページでございますけれども、先ほど来ご説明しているように、特に適用、徴収関係について申し上げますと、適用関係の事務処理が終わって、保険料が決まれば、あとは大部分が基本的には民間金融機関で取り扱うということで、口座振替率も健保、厚年だと8割を超えているところでございます。そのほかも大部分は金融機関の窓口でということになります。
 問題は、先ほど来ちょっと話題に出ました滞納しているところなんかは、やっぱりちゃんとお金持ってきてくださいと、こういうふうなことをやりますけれども、それ以外は大体事務所でお金を扱うという感じではないということでございます。
 それで、そこに書いてございますように、そういうことで決まった後のものについては金融機関を使っていますということと、それから国民年金保険料、平成14年度から国で一括してということになりましたけれども、この納付書の印刷、発送等は、これは民間事業者に委託をしております。
 それから、先ほどもちょっと触れましたけれども、滞納者に対する電話による督励ですね。テレマーケティングということで、これも民間事業者に委託をしてやってもらっております。
 それから、これも先ほど触れましたけれども、社会保険の適用促進業務ということにつきましては、各県の社労士会に委託をして回ってもらっているということでございます。
 それから、これからということでございますけれども、民営化とか民間委託という観点で申し上げますと、これは電子納付といいましょうか、インターネット等を利用した社会保険の納付につきまして、16年度できるようにしようと。

○八代主査 その電子納付というのは、お金はどうやって払うのですか。クレジットカードとか。

○薄井課長 口座があるという前提です。

○八代主査 口座があればということですね。

○薄井課長 はい。あとコンビニでの保険料の収納。それから、各種届け出についても、私どもも業務が非常にふえてきているという中で処理をしていくために、紙で出てきた届け出もまだかなりあるわけでございまして、大部分は紙で今出てきていますので、これは私どものコンピューターに入れるための事務処理を外部委託すると、こういうふうなことでございます。

○八代主査 それから、ちょっと途中で事実確認ですが、この未適用事業者に対する巡回説明は社会保険労務士の人がやっていると。

○薄井課長 はい。

○八代主査 ただ、それは社会保険庁の方でここが未適用事務所だというふうに見つけた後ですよね。見つけてもらうことは委託できないわけですよね。

○薄井課長 具体的に、公権力の行使というか、そこを適用事業所として認定をするということは、これは私どもの方でやるということでございます。

○八代主査 最終的に判断するのはそちらでしょうけれども、ここが適用されてないらしいというような情報提供もしてもらうことはできますか。

○薄井課長 情報提供は、これはしてもらっています。

○八代主査 それは構わないのですか。

○薄井課長 それはしてもらっています。

○八代主査 この巡回の中にはそれも入っているという。

○薄井課長 巡回の中には、それをいただくというのが重要なポイントでございます。

○八代主査 はい、わかりました。

○末岡補佐 手順といたしましては、商業登記簿などを手がかりにして、新たに設立された事業所で社会保険の適用になるのではないのかどうかということを、一応こちらの方で把握をいたしまして、そこに実際に社会保険の適用になるところなのかどうかを確認するという段階の事務を、この労務士さんの方に委託をしてお願いしておりまして。

○八代主査 巡回説明も行っているけれども、プラス、確認も入るということですね。

○末岡補佐 ええ。ですから、そこではじめて適用の対象になるとか、あるいは適用の対象にならないというようなことを、もう一回、より分けた形で次の指導に移していくという。

○八代主査 ありがとうございました。

○羽毛田課長 28ページの民間委託等の実績でございますが、先ほど申しましたように、労働保険事務組合制度の活用ということが一つの民間活力の活用ということになるのかなと。これは国が委託するわけではありませんけれども、既存の民間団体を活用することによりまして、先ほども申し上げましたように、行政の方の効率化と、それから事業主の事務負担の軽減と、双方にとって有益な制度であると考えておりまして、一番下のポツにございますように、労働保険の適用促進業務ということで、こうした実績も踏まえまして、労働保険事務組合の全国団体の方に適用促進業務を委託して、事務組合に未加入事業の加入勧奨をお願いしているところでございます。
 そして、2ポツ目でございますが、これは先ほどの社会保険と同様、金融機関に申告・納付手続をお願いしていると。それで、なおかつ徴収決定データとか収納データを私どものシステムに登記することが必要なわけですが、既にその登記に当たりましては、光学文字読み取り装置、いわゆるOCRという形で自動入力できるようにしているのですが、あわせましてさらにこの金融機関等が収納したデータについては、以前はそれも紙でいただいて、こちらがやっていたのですが、そのまま金融機関等の方でOCR入力していただけるようにして、効率化を図っております。
 また、労働保険料の申告書等の印書、発送でございますが、これにつきましても既に印書、あるいは封入、発送業務を民間にお願いしているところでございます。
 今後につきましてですが、先ほどの社会保険庁さんと同様でございまして、労働保険料につきましても、この1月から電子納付を開始できればと、このように考えておるところでございます。

○八代主査 電子納付は共通しているのですけれども、例えば労働保険の適用促進は労働保険事務組合にお願いしているということで、例えば社労士に相当するような民間のところはないということですね。

○羽毛田課長 事務組合も民間でございます。しかも、社労士さんが中心の団体も結構ありまして、まさに社労士さんを活用させていただいているということとも言えます。

○八代主査 だけど、縦割りであって、せっかく社会保険労務士が見つけたところは、ついでにこちらの雇用保険のこちらにも連絡してあげるという親切心はないということですよね。そんなことはないですか。

○薄井課長 ただ、今度、両保険の突合も始めていますから、情報交換はこれはお互いにしていくということに当然なると思います。

○八代主査 まだ現段階ではそうなってないのですか。

○薄井課長 結果として、もう突合は始めていますから。

○八代主査 はい、わかりました。

○薄井課長 最後よろしゅうございましょうか。お時間もございますので、ポイントだけご説明をさせていただきますけれども、お手元の資料の30ページからでございますけれども、先ほど徴収事務の一元化について触れましたが、これは昨年、健保の改正に当たりまして、いわゆる保険者の業務をできるだけ効率的にやらなくてはいけないと、こういうお話が出てまいりまして、健保の附則にも関連の規定が盛り込まれたところでございます。
 ただ、私どもの業務という観点でいきますと、35ページに業務量をつけさせていただいておりますけれども、昭和50年から時系列的に適用事業所等を書かせていただいておりますが、非常に大きな変化は、昭和の終わりごろに、従来は5人未満の事業所というのは適用対象ではなかったのですけれども、法人の事業所は全部5人未満も適用対象にするということを順次進めてきまして、そういうこともございまして、例えば政府管掌健康保険の適用事業所を昭和50年と比較すると約2倍になっています。
 それから、厚生年金の方も50年と比較すると約2倍ということでございます。
 それから、もう一つは年金の受給者でございますけれども、厚生年金で50年の 244万から、平成13年は 2,000万ですから約8倍、平成3年と比べても 1,100万から 2,000万と約2倍ということですし、国民年金の方も似たような傾向になっています。
 これだけ業務は増えてきているわけですけれども、こういうことの中でどんどん定員をふやしてというわけにはなかなかいきませんので、できるだけ効率的に仕事を進めていくということで、進めてきているところでございます。
 特に、これから考えますと、いわゆる団塊の世代が60歳に到達して、年金受給世代に到達するということになります。そうなると、その年金関係の仕事というのはぐっと増えてくるということになります。従来のままのスタンスでいってると、なかなかそれに追いつかないということになりますので、30ページでございますけれども、先ほど来話題になっております、まずとにかく的確に適用して保険料を納めてもらうというのが社会保険の原点だから、これをきちっとやっていくということ。
 それから、2つ目は医療保険の方では保険者機能の強化ということがうたわれていますが、レセプトの点検などをきちっとやっていくということ。
 それから、3つ目は団塊の世代が受給世代になるころを視野に入れて、年金相談とか裁定事務の効率的にできる体制をつくっていかなければいけないということです。
 31ページの冒頭に書いてございますけれども、そのためには、今やっているいろいろな仕事をもう一回効率性の観点から見直して、ITの活用とか、それから定型的な業務のアウトソーシングとか、一括共同処理などを進めていくと。そのことによって、いわば体制を少しでも浮かして、その浮いた体制を先ほど来話題になっている保険料徴収とか、それから年金相談も特に首都圏近郊部では溢れていますから、そういうふうなところへの対応とか、それから事業主にきちっと説明して、理解を求めながら進めなければいけない、いわば人を相手にする仕事にシフトさせていこうということで、これも昨年の12月に計画をつくっているところでございます。
 個別に具体的な事項が31ページからございますけれども、時間の関係もございますので、個別のご説明はちょっと省略をさせていただきます。
 それから、一点ちょっと補足をさせていただきたいと思うのですけれども、先ほど国民年金のところで国税との連携のお話がありまして、ちょっと私、説明を漏らしたのですけれども、一つはこういうふうな社会保険庁と国税庁、それぞれ別々の役所だし、税の方の情報も一般的になかなか出にくいというところもございまして、私どももいろんなそういうふうな情報がとれないか、これは国税だけではなくて市町村もあるのですけれども、実際には税情報も非常にガードがかたいというのが実態、正直言ってございます。そういうことで、お互いにとってみましても、そういうふうな個人情報とか事業所情報のやりとりというのを伴いますから、十分そこら辺は慎重に考えなければいけないのかなというふうな部分だと思っています。
 特に、ここでありました所得税の確定申告の際に、国民年金の納付の証明書をつけさせてはどうかということで、これも一つのお考えかなというふうに思うのですけれども、ただ国税庁の方のいわば確定申告の際の処理というお話になってきますので、私どもの方でこうですというのはなかなか申し上げにくいのが今日の状況でございます。お話しいただいたのもごく直近でございますので、そういうふうに考えております。

○八代主査 そういうような、私が考えた素人考えなのですけれども、国税庁にとっても別に何も手間がかからないわけですよね。それで、向こうだって例えば学生の配偶者控除という、控除を出すときに証拠もいらないのかということです。そういう制度を設けている以上、その人が国民年金の適用かどうかというのをついでに見たっていいわけで、まさにそういう申し入れというか、検討というか、そういうことが過去一切なかったのかということですよね。

○薄井課長 過去議論としてありましたのは、これは税制改正要望でも出したのですけれども、生命保険控除をやる方には、まず似たような個人年金等がありますから、まずはいわゆる国民年金の方の保険料を納めていることを前提として生命保険料控除というのは認められるようにするべきではないかと、こういう意見を出したことがありますけれど、これはちょっと……。

○八代主査 あれをやるぐらいならもっと簡単なことがなぜできないのかというのが、ぜひご検討いただければ。

○薄井課長 ご指摘でございますので、研究はいたしたいと思います。

○福井専門委員 地方税とは何か連携はあるのですか。

○薄井課長 地方税は、従来国民年金の保険料は市町村がやっていて、地方分権で国でということになりましたけれども、その段階では、例えば国民年金の低所得者免除がありますけれども、こういうふうなときには地方税の情報というのを市町村でいただくというふうなことも、市町村の中ですからやっております。

○福井専門委員 さっきの事業所の不払いなんかですと、例えば差押え対象で固定資産税の納付状況なんか分かっていれば、事業所の不動産は全部一目瞭然で、差押えて競売換価して、ある意味では容易に不動産だったらできるわけで、そういう非常に易しい手法があり得るわけですから、検討されたらどうですか。

○薄井課長 基本的には、滞納事業所について強制換価というふうなものをとるのか、それとも延滞金がついているわけですから、きちっと納めていただくという方がいいのかということで……。

○福井専門委員 それは選択ではないですよ。要するに、強制的にいずれ払わされるかもしれない、何しろそういう蓋然性が強いということがあって、初めて任意に払うのですよ。担保のない執行なんてあり得ない。だから、最終的にどうやって捕捉をして、所得なり資産なりを捕捉して、それにかかっていくのかという手段は、できるだけ水も漏らさないように広い方がいいのです。
 だから例えば、事業所に認定をするときに、あわせて固定資産税の納付証明書を持ってこいと言えば、全部どこにどういう資産があるかわかるわけです。それで、いざとなったらこれを差し押さえて、あなたが払わない場合はこの財産を失うことになりますよということがわかっていれば払いますよ。要するに、何もなくて計画出せばいいですよというのは、一番下手くそなやり方なのです。

○薄井課長 いや、お言葉ではございますけれども、実は社会保険の、これなかなか厳し過ぎるとまたいろんなところでいろんなご意見も出てくるのですけれども、社会保険の適用徴収の部門というのは、これは手前みそになるかもわかりませんけれども、特に毎月毎月保険料を納めていると、そういうことでは企業の状態が割とよくわかるのですね。滞納が発生したとき、割とよくわかりますから、かなり早目にアプローチをしてやっているのが基本だとお考えください。

○福井専門委員 それはいいです。だけれども、こういうのは1%か2%かわかりませんが、限界的な事例について、不公平感や非効率をなくすということなのです。大半のまじめな人のことを議論しても意味がないのです。要するに、限界的な確信犯をどうやって一網打尽に捕捉して払わせるのか。それはやっぱり人の金で、いわば犯罪にも等しいことをやっている人であるということに、さっきのお話だとなるわけですから、厳然として確実に取れる方法を考えるべきだと思うのです。
 それが最終的には、強制的な徴収手段があって、任意でできるだけ円滑に払うというのがあるわけで、最後まで督促するだけよという世界のときに、確信犯は払うわけはない。

○薄井課長 最後まで督促だけということを申し上げているつもりは、これは全くございませんので……。

○福井専門委員 不動産がどこにあるかもわからなければ、それこそさっきおっしゃったように、どこに債権があるのかとか、むちゃくちゃコストをかけて、−これも税金ですよ−職員の人件費などをかけて探さないとわからないようなものよりも、あらかじめ、例えばその不動産の所在について固定資産税の納付証明書で把握しておくとか、さっき八代主査が言ったような、国税と連動して、そちらとの協力関係で補足しておくとか、いろんな付随的なやり方はあり得るわけです。
 だから、やっぱりやっていただきたいと思うのは、最小のコストで最大の効果を上げることです。督促のための人手やら人件費がうんとかかるというのは正常な事態ではないわけで、そういうのをかけないでもちゃんと徴収できるような仕組みをあらかじめ構築しておくことだと思うのです。
 さらに言えば、さっきの年金もそうなのですけれども、やっぱり最後は動機づけです。ものすごい監督管理体制をして、執行の職員を置いて、何とか払ってもらえるというのは、やっぱりこれは下手な仕組みなわけでして、本来払わないと損になるとか、払うとメリットがあるという、自発的な納入を促すような仕組みにもともとなっていないと、非常に厳しいです。そこのインセンティブの与え方は、もうちょっと大きな問題として、いろいろ検討の余地があるという印象です。

○奥谷委員 それと、この罰則規定があるとのことですけれども、今まで実施されたことがないというご見解でしたけれども、結局全くザル法ということですか。

○薄井課長 ちょっと私も承知していなかったケースで、これはある個別事件なのですけれども、不正加入ということで、これは逆に不正加入した方なのですけれども、健保厚年法違反で起訴して有罪になったケースというのは、これはあります。

○奥谷委員 そういったことが、ちゃんと罰則規定があるということを一般事業者にきちっと公表をもっとするべきだと思うのです。要するに、事業主の方もある部分レベルが低いというか、そういう方々がかなり多いので。また、労働者の方もこういった保険に関しての知識がかなり疎いですので、そういったことを事業主にきちっと問いただして、そこに入って自分の権利がどこまで確保されるかということがパーフェクトに理解できる人というのは、なかなかいませんから、その両方ではないのですけれども、まず社会保険庁はその事業主に対してそういったことの罰則規定もある、そういう督促を含めて、先ほどの差押えを含めて、そういうものがあるということを徹底周知させるということも一つの義務だと思うのですが。

○薄井課長 今おっしゃられたのは、先ほど福井委員もおっしゃられた話で、要は飴と鞭をうまく使えというお話だと思うので、先ほど来、企業情報を出していいのかどうか、なかなか難しいところがございまして、例えばある会社でここで滞納があると発生したら、そのことが引き金となって会社の倒産につながるとか、いろんなこともありますので、そこら辺の要素も十分見ながら、どういうふうに飴と鞭というのが構成できるのか、我々も研究をしていきたいと思います。

○福井専門委員 ただ、今の例で申し上げますと、滞納が知れて公表されることが、企業の利益にとって、あるいは存続にとって、決定的な打撃になるという仕組みがあって、はじめて納付したり、ある意味では企業責任を全うするようになるという、そこはやっぱり動機づけのコントロールの手段なのです。
 幾ら無責任なことをしても、決してそれが明るみになったりすることがないという状況のもとでの企業の行動と、いや、明るみになるのだという前提のもとでの企業の行動は、 180度変わるのです。
 それもやっぱり動機づけの与え方ですから、余り裁量の世界に逃げ込まないで、奥谷委員も言ったみたいに、一定の基準を満たしているときには、むしろ情報周知だけではなくて、告訴するということを現場の事務所に義務づけるべきです。特に、さっきのような、要するに本人からは、労働者からは保険料を徴収しているけれども、納めていないなんていうのは、これは完全に横領ですから、端的に刑法犯です。直ちに告訴をしていただいて、処罰を求めるべきだと思います。そういう運用を徹底するという姿勢とあわせて、ちゃんと払う人には親切にしますよという、両面ではないでしょうか。

○薄井課長 今のお話にストレートにあれするかどうかわかりませんが、実際問題として、財産調査で、特にその企業に対して債務を持っているところに財産調査に入りますよね。そう入りますよという話をするのが、これは保険料納付につながるというケースは、実はかなりあるのですよね。ですから、そういう意味ではかなり実際のワークとしては、ちょっと私の説明があれかもわかりませんけれども、強制徴収が最後あるということを使って納めさせているという部分があるというのはご理解いただきたいと思います。

○福井専門委員 冒頭に私が質問したのもまさにそれで、だからそれがずるずると、ちゃんと計画立てて払うふりしている人に対しては、強制徴収をちらつかせないと、たかをくくられてしまい、いつまでも払ってもらえない。やっぱり期限を切らなくてはだめだと思うのです。半年とか、1年とか。幾ら不況でも、払っているところは払っている、いわばほかのものを犠牲にして払っている企業は払っているわけですから、そこと差別的に取り扱うのは非常に不公正なことだというのが出発点で、一定の期限、半年とか1年切って、そこ以降はもう形式的に財産調査とか差押え手続に入りますよという仕組みがあって、はじめてそれに合わせて払うようになると思います。
 さらに言えば、国税、地方税との連携というのもそんな難しい話ではない。検討していただくといいと思うのです。

○薄井課長 全体的には、どちらかといえばむしろ厳しいという声がよく聞こえてくるぐらいに、私ども実は……。

○福井専門委員 でも、取られる人は厳しいって言うに決まっているわけで、だけれどもだれの犠牲のもとに厳しいという不平を漏らす連中の利益が生じているのかという、まともな国民の感性で考えれば、言い分がどっちに分があるか、自ずと明らかではないですか。

○薄井課長 おっしゃることは私、非常によくわかった上で申し上げているのです。

○八代主査 ちょっと時間もありませんので、大体それで事務のお話は、と思うのですが。
 ちょっと違うお話かもしれませんけれども、政管健保というのは一種の巨大な保険者ですよね。それで今、保険者機能が求められているわけで、例えばここにカード化とか、内容点検とか、いろいろありますけれども、これは15年度から順次実施だから、今まで全くレセプトの健保組合みたいには点検はしておられなかったということですね。今度から始めるということ。

○薄井課長 いえ、そうではなくて、これは従来からやっておりましたけれども、やり方をさらに充実していこうと、こういうことです。

○八代主査 それで、電子レセプトが普及するまでの間ということですけれども、まさに保険者ですから、電子レセプトというか、電子媒体で出せということは言えないのですか。別途、厚生労働省はその通知をたしか直しましたから、電子媒体でレセプトを出してほしいと、政管に対しては現段階では要求できますよね。きょうはその担当の方はおられませんか。

○田中補佐 電子レセプトの部分はですね、これは支払基金が医療機関から紙でもらえるのか、電子的なものをもらえるのかということでございますので、我々その支払基金からそのレセプトをもらうという形になりますから、そこはちょっと我々保険者として左右できないということです。

○八代主査 なるほどね。私が言っているのはそうではなくて、もう一歩進んだ、例えば、直接医療機関から、逆に言えばネットでレセプトをもらうといいますか、そうしたらわざわざもっと医療機関の、どこがむだ遣いしているかというのは一目瞭然にわかるわけで。

○薄井課長 それも、基本的には支払基金と医療機関の間のお話かと考えています。

○八代主査 ですから、それは厚生省の別の局がそんなふうにねじ曲げているわけで、法律では本来、レセプトの点検というのは保険者の機能になっているのですね。わかりました。今の範囲内でできるだけ合理化を進めておられるということですね。

○薄井課長 あと、福井委員から国民年金の事務費の話がございましたけれども、直近は国民年金の事務費、約 1,500億ぐらいだと思います。

○八代主査 それは比率にしたら、保険料のどれくらいですか。

○薄井課長 保険料にしたら8%ぐらいだと思います。
 ただ、これは保険料徴収だけではなくて、記録、管理、給付ですね、全部込めての数字ですので、多分徴収経費はこのうちの3割ぐらいかなという感じだと思いますけれども。
 従来、市町村でやってもらっていたときよりは、事務費のオーダーは少し落ちています。市町村に交付金として出していますので、その分が。

○八代主査 交付金で出すよりは、ということですね。

○薄井課長 はい。交付金がゼロになったわけではなくて、適用はやってもらっていますから、そこは残っていますけれども。

○八代主査 その分は節約できましたと。ただ、ちょっとご質問にはなかったので、後で結構ですけれども、市町村から国に移管したことによって徴収率がどう変わったかというデータはありますか。

○薄井課長 まだそこまで出ておりません。

○八代主査 いろんな人に話を聞くと、市町村はしつこく督促していたけれども、国になってからは全然督促が来なくなったという話も聞くのですが、そんなことはないですか。

○薄井課長 催告状は年6回出すようにしていますし、それからできればそれに合わす格好で電話で連絡をすると。

○八代主査 それは、払っていない人全員に対してですか。

○薄井課長 催告状というのは全員に出しています。電話も基本的には、いわゆる全員にかかるということだったと。

○城戸補佐 電話番号がわからない方や持っていない方もいますから、それはタウンページ等で調べて、極力アプローチしています。

○八代主査 それは未加入者も含めてですよね。

○城戸補佐 いや、未加入者は私ども……。

○八代主査 わからないから、未納者に対して。

○城戸補佐 ええ。

○八代主査 はい、わかりました。
 それから、これも質問表に入っていなかったのですが、昔聞いた話だと、国民年金の給付をするときに、年に6回か4回か、給付額を何かはがきで出さなければいけない。しかも、年金額をもらうと、家族に知られると何かいじめに遭うので、そこをシールをして払わなければいけないというような、非常に過剰サービスをしていたと思いますが、今はそれは少しは直っているのですか。

○薄井課長 基本的には、前はそういう格好で、支払いの都度出していたと思うのですけれども、それは年一通知と我々は呼んでいますけれども、年に一回送るようにいたしました。ただ、ことしもこれから年金額、物価スライドで 0.9%下がります。額が変わるときは、これはお知らせをするということです。
 それから、シールを昔張っていたのですけれども、今は何かシーラーというよくいろんな公共料金で送られてくる格好のあの形で、はがきになるような格好でこれは送っています。

○八代主査 そういうのは大分改良されたと。

○薄井課長 はい。大分そこは、事務費は削れたと思っています。

○福井専門委員 国民保険なのですけれども、払わない人の属性で何か特徴はあるのでしょうか。というのは、問題意識は保険の逆選択のようなことが起きているのかどうか。自分は年金なんかもらわなくても、ちゃんと1人で長生きして、頑健だから働いていけるという人が払っていないというような関係があるのかどうかということと、もう一つはモラルハザードについて、納付義務者はどの程度認識しているのだろうかと。
 建前は全然払っていない人は全然もらえないわけでしょう。でも、本当に日本国政府が見捨てるとはよもや信じていないという人も多いと思うのです。とすると、どうせキリギリスの生活していたって後で救ってもらえるよ、ということだと、納付しないことが合理的な行動になるわけで、端的なモラルハザードが起きます。そういう意識調査、あるいは何らかの傍証は得られているのかどうか、お聞きしたかったのですけれども。

○薄井課長 属性という話でお答えになるかどうかわかりませんけれども、やはり比較的若い階層が納付率は低いです。それで、年金受給が近い50歳代とか、こういう人たちはかなり納付率が高いというのが一つございます。
 それから、都市部と地方という話がもう一つございまして、やはり都市部がなかなか納付率が高くないという実態は、これはございます。

○八代主査 所得階層もあったと聞いたのですが。所得の高い人が払っていないとか。

○薄井課長 所得階層の所得の多寡によって、必ずしも高いから払っているとか、低いから払っていないとかいうことではないと。むしろ所得との相関はないということだと思っています。
 ただ、これも世帯の所得で見ているので、必ずしも正確に納付力を反映しているかどうかは、ちょっとよくわかりませんけれども。

○八代主査 それは、いつの調査ですか。

○薄井課長 先ほどの資料にありました調査ですから、前回の調査なので、たしか平成11年の調査ですね。

○八代主査 それは公開されていますよね。

○薄井課長 これは公開されております。

○福井専門委員 20年以上は入っていないとだめなのでしたね。

○城戸補佐 25年です。

○福井専門委員 そうすると、例えば65歳まで払い続けるのが標準だとして、40歳ぐらいになったら慌てて払い出すとか、そういうことはあるのですか。

○薄井課長 制度的には、20歳から60歳までが本来の加入期間です。ただ、そういう若いころ入らなかった人がいますから、60から65、さらには70までですかね。

○城戸補佐 70までは、資格要件を満たさなければ、任意加入の道がありますけれども、今その委員がおっしゃっているような形で、例えばずっと未納の人がある段階から払い始めたというふうなことのデータに関しては分析しておりまして、今薄井が申しましたように、20代の人が納付が低い。

○福井専門委員 例えば、50歳ぐらいになってから、やっぱり年金欲しいと未納者が思い始めたときにはどうするのですか。

○薄井課長 これは、その人は年金にはつながらないという格好になります。

○福井専門委員 もう敗者復活はないわけですね。

○薄井課長 今の制度では。

○福井専門委員 25年みたいな人はあげないという建前なのですね。それで、さっきの2つ目の質問にかかわるのですが、そういう人はどんなに悲惨な状況になっても、基本的に年金はびた一文あげないということになりますか。

○薄井課長 年金としては出ないということだと思います。

○福井専門委員 生活保護は。

○薄井課長 委員のおっしゃったモラルハザードの議論と生活保護の議論は、それは話題になることはあります。

○福井専門委員 でも、そんなに年金と大差なく生活保護をもらえたら、開き直れば別に、世間体が悪いのを除けばそんなに経済的には悪くない。

○薄井課長 金額的なところはそうなのですが、扶養者にどこまでかかっていくかとか、そういう議論はありますから、年金のように、いわば要件満たしたら出るということではないという。

○八代主査 それにしても、生活保護があるから年金の徴収が重要なのですよ。年金というのは強制貯蓄の意味がありますから。だからこそ、払いたくないものは払わなくていいというわけにはいかない。

○福井専門委員 生活保護もやめるのだという覚悟があれば、本来本人の自由ですよね。

○八代主査 それはちょっと難しいですね。
 事務局の方から何か追加でございますか。

○藤原室長補佐 本件ではございません。

○八代主査 ちょっと時間も過ぎていますので、では本当にありがとうございました。
 ただ、ちょっと特にもう一度内部で検討しまして、またこの辺で資料をお願いするか、場合によってはもう一度ぐらいヒアリングさせていただくことがあるかと思いますが、本日は網羅的な質問に答えていただき、ありがとうございました。
 冒頭ちょっと失礼なことを申し上げたようで恐縮でございますが、ちょっと昔、年金白書に書いたご説明と少し違っていたかなということで、その辺はまた。

○薄井課長 私ども、あらゆる仕事に誠心誠意努めていきたいと思っています。よろしくお願いします。

 (厚生労働省関係者退室)


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