平成15年9月1日(月) 10:00〜12:15
永田町合同庁舎総合規制改革会議大会議室
○市町村による教科書選定の解禁
○学校設置者以外による学校の管理・運営の可能化
(公設民営学校の設置可能化)
○NPO法人による不登校児対象以外の学校設置
○株式会社等が設置する学校への私学助成の適用
○教育委員会の必置規制の廃止
○地方公共団体における一般職員の任期付採用
教科書課 片山課長
初等中等教育企画課 辰野課長
私学行政課 久保課長
私学助成課 栗山課長
公務員課 森補佐
企画課 稲山企画官
八代主査、奥谷主査、森委員、安念専門委員、福井専門委員
滑川室長、林企画官
内閣府 河野審議官、浅野間審議官、福井審議官、宮川室長 他
○藤原室長補佐 事務局から今日の議事次第の確認ですが、お手元に資料がございますけれども、大きく3つに分かれております。10時から10時20分を目途に、これは規制改革全国要望に対する意見交換ということで「市町村による教科書選定の解禁」というテーマにつきましては、教育・研究ワーキンググループと、構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループの共催という形になってございます。
それから、10時20分からでございますが、4つのテーマを取扱い、これらは「構造改革特区第三次提案に関する意見交換」ということでございます。
また、11時40分から、規制改革全国要望に対しまして、これは構造改革特区・官製市場改革ワーキンググループの方の担当でございますけれども、総務省の方をお呼びしまして「地方公共団体における一般職員の任期付採用」についてご議論頂きます。
委員の方々、専門委員会の方々の退席等々自由でございますので、その点だけよろしくお願いいたします。
○八代主査 ありがとうございました。それでは、ただいまから「構造改革特区提案および規制改革全国要望に関する意見交換会」を始めたいと思います。
最初の20分を文部科学省から市町村による教科書選定の解禁問題について意見交換をしたいと思いますが、時間が限られておりますので恐縮ですが、いただいた資料に基づき5分ほど御説明いただければと思います。その後、質疑応答に入りたいと思います。よろしくお願いします。
○片山初等中等教育局教科書課課長 文部科学省の教科書課長の片山でございます。よろしくお願いします。
隣りにおりますのは、課長補佐の伊藤でございます。では、座って説明させていただきます。
お手元の資料に「教科書採択の概要」というものがございますので、これに基づきまして、簡単に御説明をさせていただきたいと思います。
まず、教科書の採択でございますけれども、公立学校では都道府県・市町村の教育委員会が採択を行うと。また、国立・私立では校長が行うということになっております。
それで、小・中学校の教科書につきましては、都道府県教育委員会が市町村教育委員会に意見を聞きまして、採択地区を設定し、採択地区内では同一の教科書を採択するということになっております。
採択地区は、括弧書きにございますが「(市・郡単位)」というふうな形になっております。ですから、市では単独の採択地区を設けて採択することができるということでございまして、町村につきましては郡単位でということになっております。
それで、今回の要望の提案というのは、この郡のところを町村単位にすべきではないかという提案だというふうに思っております。
この採択につきましては、下に採択の仕組みがございますけれども、これを細かく説明すると時間がかかりますので、簡単に概要を説明しますと、市町村の教育委員会が都道府県の教育委員会の指導・助言援助を行って、助言を踏まえまして採択を行うわけでございますが、このような共同採択というものの地区を設定している趣旨につきましては、まず、採択に際しまして、多数の教科書、これは小学校では教科書が300 ぐらい、中学校では150 ぐらいあるわけですけれども、これらの教科書を適切に調査・研究するための体制の充実が必要であるという観点や、教科書を実際に採択した後に、学校現場で使用するわけですけれども、その使用をするに当たって、どのように教科書を使って授業を展開したらいいのかというようなことについて、いろいろ授業の改善とかのための研究や研修などがあるわけですけれども、そのような研究・研修が円滑に実施されるということと、あと供給コストの合理化による価格低廉化などの観点から、都道府県教育委員会が市町村教育委員会の意見を聞いて、市・郡単位で採択地区を設定し、採択地区内で同一の教科書を採択するという共同採択の制度を取っておるわけでございます。
実際に義務教育段階の教科書の採択につきましては、現在、国民の方々も大きな関心を有しておりまして、特にここ数年、各地においてどのような理由によりまして、その教科書を採択しているのかというような情報の開示が求められたり、また、採択に関しましては、さまざまな立場の方々が、教育委員会などに対して働きかけを行うというようなこともございまして、関心が非常に高まっている状況でございます。
そうした中で、一部の特定の勢力の意向とか、発行社による営業活動のようなものに左右されるのではなくて、それぞれの教科書について十分な調査・研究を行い、児童生徒の教育にとって最もよい教科書は何であるかということを客観的に公正に判断して、採択が行われるということが強く求められているわけでございます。
教科書の調査研究につきまして、もう少し詳しく申し上げますと、先ほど申し上げたような、小学校は約300、中学校で約150という教科書について、採択の際には、これらの教科書についてそれぞれの採択地区におきまして、多くの調査員というものを設けまして、この調査員はほとんど教員なわけですけれども、その人たちが教育的な観点から専門的に調査をして、その調査結果を踏まえて採択事務が行われていくということになっておりまして、その教員は授業をやる傍ら、こういう教科書の調査・研究というものを行っているところでございます。
今回の提案につきましては、町村ごとに単独で採択をできるようにするということでございますけれども、町村につきましては、総じて規模が小さく、例えば1町村では、中学校が1つ、小学校が2〜3校ぐらいというのが一般的ですけれども、そのような学校数であること。また、それぞれの学校も学校規模が総じて小さい、1学年に1クラスというのが多くの地方の学校ではそのような状況になっております。
そのため教員の数も少ないので、十分な調査・研究をすることが困難ではないかというふうに考えておりまして、そういう面でなかなか町村単位での採択を実施するというのは、調査・研究の面で非常に困難が生ずるのではないかというふうに思っております。
また、教員の研修・研究という点につきましても、例えば中学校などでは、それぞれの教科について、教員がその町で一人、二人というようなことになってしまいますので、教員同士の切磋琢磨による指導力の向上というようなものにつきましても、郡単位での研修というのが、今、一般的に行われておりまして、町村に区切ってしまうとなかなか研修という面では難しいことがあるのではないかと思っております。
○八代主査 お時間が5分過ぎていますので、その辺りで討議に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
まず、最初に私の方から、いただいた資料によると、現在でも国立・私立学校では校長が教科書が採択しているということで、それと同じことが、なぜ公立学校ではできないのかということです。今、いただいた御説明では十分納得できないのは、まず、教科書のコストを下げるためで大量購入した方がいいということですが、トイレットペーパーならともかく、重要な教科書について、そういう意味でのコスト削減というのが、どれだけ意味があるのかどうか。むしろ学校の独自性ということが、今、求められているときに、少々のお金をかけてもいいのではないかということです。
それから、教科書選定の教員についても、零細な学校ではできないかもしれないけれども、逆にこういう要望もあるわけですから、意欲を持ってやりたいというところもあるわけで、なぜそこを一律に規制しなければいけないのかということです。あくまでもこれは採択の選択肢を広げるということにすぎないので、従来どおりの方式を行なう学校があっても別に構わないわけですね。
ですから、1つの考え方として、全国ベースではそういう零細な町村もあり御懸念もあるわけで、特定の特区という形でやるのであれば構わないというふうに考えられないのか、その辺についてまずお聞きしたいと思います。
それから、教科書発行会社の営業努力ということであれば、今のようにまとめ買いしていればこそ、それだけ利益を得るために営業努力が逆に強まっている可能性というのはどうなのだろうかというふうにも考えますが。教科書をまとめ買いをすれば、そういう営業面からの影響力は小さくなるというふうに考えられる根拠というのは、どうなのだろうかということであります。
時間がありませんので、質問をまとめてお聞きしたいと思いますが、ほかに、奥谷さんお願いします。
○奥谷主査 今の八代委員からの意見と同じで、まとめ買いするとコストが安くなるということ、これもやはりおっしゃっているとおり、教科書ですので、その地域、地域によって、例えば自然がすごく豊かなところであれば、もっと自然に関するものを教える方がもっと実務に即した教育ができるとか、やはり、校長が選択できるという権限があるのであれば、すべて全部各学校の独自性に任せて教科書を選定するというような方向になぜ持っていかないのかなというのが1つ、それが疑問です。
○片山課長 私立につきましては、建学の精神という私立独自の考え方がございますので、市町村が設置義務に基づいて、小・中学校を設置するというのとは考え方が違う部分がありますので…
○八代主査 公立学校には、建学の精神がなくていいのですか。
○片山課長 それぞれの学校の特色というものを出した教育活動を行うということは、勿論、それはございますけれども。
○八代主査 その中に教科書採択がなぜ入らないのかということなのです。
○片山課長 教科書採択につきましては、先ほども申し上げましたけれども、やはり十分な調査研究をする必要があるわけでございまして、校長とか、校長といっても特定の教科の専門しかない、教育の内容としてはその部分しかないわけでございますので、実際には教科の担当の教員が決めるということになろうかと思いますけれども、数名の教員だけでですね…
○八代主査 そういう極端な例を言うのではなくて、教員の能力が十分あるところならできるのではないですかということを聞いているわけです。
○片山課長 そのたくさんの教員になるには、郡単位というのが従来からそれぐらいのレベルでもって調査・研究をすればいいということで、そういう実態を踏まえて、この採択地区の法律もできておりますので、その点、郡単位のレベルが適当であろうというふうに考えているところでございます。
○八代主査 繰り返しになりますが、大勢でやればよくなると、数人ならだめだということですけれども、では私立学校がどうやってやっているのか、それから国立学校だって状況は同じで、数人でやっておられるわけですね。なぜ、私立や国立ではできて、公立ではできないのですか。
○片山課長 私立につきましては、例えば中学校につきましては、中・高一貫というような形で、中学校だけではなくて高校の先生もいる場合がほとんどでございますので、そのような先生方が、中・高の先生方が一緒になって教科書を調査・研究することが可能ということがございますので、そこは町村の中学校とは違う部分があるのではないかと思います。
○福井専門委員 中学校までしかないものはどうですか。
○片山課長 中学校しかない私立というのは、私はちょっと聞いたことがないのですけれども。
○八代主査 絶対にないということを言っておられるのですか…
○片山課長 いや、統計を見てはいないですけれども。
○八代主査 そんなことは答えにならないわけで、個人の感触ではなくて、専門家ですから、ちゃんと統計を見た上でお話しいただきたいと思いますが。
○福井専門委員 制度的に、中学校だけの私立学校というのは禁止されていないわけですから、あるかどうかは後で正確なことをお調べいただくとして、そういう中学校だけの私立学校があるときに、高校の専門科目担当教員がいないという場合でも、私立学校の校長は教科書を選べるわけですか。
○片山課長 クラスが少ない場合ということですか。
○福井専門委員 違います、高校がない私立中学の場合でも、私立中学の校長が教科書を選べるのですか。
○片山課長 それは、制度的にはそういうふうになっております。
○福井専門委員 それが許されていて、なぜ公立中学校がだめなのかというのが、さっきからの議論の趣旨です。
○片山課長 それは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、私立は私立の考え方でもって学校をつくっておるわけでございますので、それで設置義務に基づいてつくられた公立学校とは違うわけですので、私立のそういう学校に保護者というか、生徒が希望して行くということであれば、それはそれでそういう私立学校に…
○福井専門委員 それはわかりました。だから、それを論拠にされるのであれば、さっきおっしゃった調査・研究体制や能力が備わっているかどうかというのは関係がないということになるのではないですか。
○片山課長 それは、私立の学校の実態というものを見れば、たしか1学年200 〜300 人ぐらいはいるのは多いと思いますし…
○福井専門委員 では、公立小学校、中学校で規模が大きくて、いろんな科目の先生がそろっている場合はいい、ということですか。
○片山課長 そのようなレベルの学校は、例えば市の中学校とか、市単位で教員の数がそろうであろうということでございますので、そういう実態を見て市ということとか、郡単位ということで採択地区を設定しているわけでございまして、町村単位で…
○福井専門委員 私立中学校で少ない数の生徒しかいない、先生しかいないという場合は禁止しなければいけないのではないですか。
○片山課長 それは特に…
○福井専門委員 なぜそっちがよくて、公立小学校、中学校にだけ規模や、調査・研究能力を要求するのかという、つじつまの合った論理的なお答えをいただきたいのです。
○伊藤補佐 先生が御質問の点でございますけれども、私どもも私立中学校が規模が小さければ、調査・研究は非常に大変だろうなというふうに制度的に考えているところはございますけれども、さはさりながら、私立中学校、それぞれの学校、設置目的等に照らせば、周辺の町村の公立の学校と同じものを採択しろというような制度は、むしろ合理的ではないということで、この制度を構築したところでございますので、十分な調査・研究ができるよう、それぞれのところで努めていただきたいとは思っておりますけれども、制度としてはこういう制度を構築しているところでございます。
○福井専門委員 だったら、小・中学校で調査・研究の体制が整っていない場合にだけ、なぜ強制的に校長の選択を禁じなければいけないのか。
○伊藤補佐 勿論、私立であってもしっかりとした体制を整えていただきたいというのが前提でございますけれども、この制度を構築するに当たって、義務教育の教科書を無償で国が給与するに当たって、しっかりとした採択をできる限り体制として取っていただきたいということで、この現行制度ができているところでございまして…
○福井専門委員 私立小・中学校も同じ基準でないと一貫していないではないですか。
○伊藤補佐 複合的な観点がございますので、勿論、調査・研究の体制だけであればそうなのですが、先ほど申しましたように、例えば教員の研修といったときに、私立中学校は個々の学校ごとにやっておりますけれども、公立の場合には周辺の学校と実際には一緒にやってございますし、私立の場合は…
○福井専門委員 研修は、公立小・中学校は独自にやってはいけないのですか。必ず採択地区ごとの単位で研修しなければいけないという、そういう法令があるのですか。
○伊藤補佐 法令ではございませんが、現実にそういうような教育事務所の単位で、市・郡というようなのを1つの単位にそれぞれの都道府県において研修が行われているというのが…
○福井専門委員 そうではなくて、要するに、私の学校では独自に研修をやりたいというときに、それは禁止するというふうに指導されているのですか。
○伊藤補佐 独自の研修の部分は、独自の研修でやっておりますが…
○福井専門委員 だったら、規制がないのだったら論拠にならないのではないですか。
○伊藤補佐 そういう複合的な問題でございますので、一点一点だけではないわけでございますが…
○福井専門委員 もう一つ、調査・研究の体制というのであれば、なぜ内部で、要するに当該学校の内部で専門家がそろっていないといけないのですか。調査・研究なり採択に当たっての識見ということであれば、その識見を持ったふさわしい人に意見を聞いて、そこで十分審議していただいた上で校長が決定するということで、何の支障があるのですか。
○伊藤補佐 現実には、例えば都道府県がいろいろ指導・助言する際には、都道府県レベルでございますから、大学の先生方に入っていただいて、都道府県が指導・助言する際に、調査・研究を行っていると、外部の有識者の方に入っていただいているというのは、現在も実施しておりますけれども、各それぞれの採択地区のレベルにおきまして、大変山あいの過疎の地域等も多いわけでございまして、こういった中で、なかなかそこの部分、勿論入っていただいくことを排除しているわけではないのですけれども、現実問題として、多くの方々に入っていただくというのは困難だというふうに思っています。
○福井専門委員 だから、それはできる、自分のところの学校で選びたい、専門家がいない分は、外部の人的リソースで補うのだといっているところに、それでも選んではいけないと禁じる具体的な弊害を教えていただきたいのです。
○伊藤補佐 複合的に要因がございまして、先ほど来も調査・研究の点も1点なのですが…
○福井専門委員 調査・研究の点だけで答えてください。
○伊藤補佐 調査・研究の点だけで言えば、私どもは無償給与している教科書の制度について、制度的にしっかりとした採択が行われるようにという観点で現行制度ができているという…
○福井専門委員 それでは答えになっていないので、自ら選びたい、しかもそのための体制を整えるというときに、それでも選んではいけないという根拠を教えてください。
○八代主査 具体的には特区でということなのです。今、全部全国についてのお話ですけれども。今、福井委員が言ったような、きちんとした制度的な担保ができるところにおいてやってはなぜいけないのかということです。
○福井専門委員 後でもいいのですが、今の点、全く訳がわからないので、もっときっちりした論拠を教えていただきたいのと、建学の精神というもう一つおっしゃった理由についても、学校独自に教育方針を公立小・中学校では持ってはいけないという規制があるのだったら、それも具体的に教えてください。私立学校は学校ごとに建学の精神を発揮しないといけないから、教科書は自由に選ばせるべきだとおっしゃるのであれば、公立小・中学校ではそれを持ってはいけないのだ、採択単位ごとに同じ建学の精神でなければいけないという規制をお持ちであれば教えていただきたいし、ないのであればそれにもかかわらず、私立小・中学校だけ建学の精神を論拠にすることの合理性を具体的に教えてください。
○奥谷主査 それと、要するに無償で貸与するというか、無償で供給するということ、そこが一つの大きなポイントで、無償であるからそういった網をかけるというか、各自で独自性を持たせないというところが文部省の見解ではないのですか。無償だから勝手なことは許さないという、そういう意識がおありなのではないでしょうか。
○福井専門委員 私立小・中学校だって教科書は無償で配っているでしょう、同じではないですか、どう違うのですか、公立と。
○伊藤補佐 勿論、公立の学校であっても、それぞれの学校の教育方針というのは、しっかり教育委員会の方針の下で、校長が定めてやっているわけでございますけれども、この教科書に関しましては、教育委員会の方針という部分での採択でございますので、そういった観点で私立とは違う、勿論方針を持っておりますが、あくまで使用する教科書については…
○福井専門委員 それは、現在の制度の説明であって、そうではなくて、教育委員会の責任で選ぶことにする場合と、校長の責任で選ぶことにしたいという特区の自治体がある場合との制度論の比較です。後者がだめで、前者ならいいということの論拠がさっぱりわからないのです。
○伊藤補佐 済みません、本日のヒアリングは、町村ごとに採択地区を認めるというような御要望…
○八代主査 いやいや、町村ではなくて市町村によるということです。別に市を排除していませんが…
○伊藤補佐 市は、そもそも現行単位でもそれぞれ個別に採択地区を構成しているわけでございまして、町村について、先ほど制度で説明しましたような問題があるので、御要望が上がってきたということで、今日、私どもが呼ばれていると思っておりますけれども、そういうことではないわけでございますか。
○福井専門委員 考え方としては、町村だって、校長が選ぶのだって、連続線上にある話ですから、同一の問題です。
○伊藤補佐 学校がということであれば、私ども個別に、特区も含めてでございますけれども、公立学校で学校ごとに採択をしたいという要望は、この特区での提案でもそうでございますが、直接これまで市町村教育委員会等かお話が上がってきていなかったものですから。
○福井専門委員 要望を離れて、要するに市町村の独自採択を認めるということは、更に突き詰めれば学校ごとの選択に行き得るわけで、論理的に学校ごとの選択を認めると、どういう具体的な弊害が生じるのか、しかも、禁止してあることの論理的整合性はどこにあるのかということがわからないので教えていただきたいということです。
○伊藤補佐 これは、私どもの考え方でございますけれども、昨今の採択に関する関心が非常に、特に公立学校に採択に関して非常に関心が高まる中、制度として十分な調査・研究ができるような体制を整えていくことは、やはり必要だというふうに思っていますので…
○福井専門委員 それは、繰り返しになるので、調査・研究について、先ほど来指摘しているように、具体的な弊害を除去するような仕組みを整えた上で、なおかつ禁じる合理性についてだけ教えてほしいのです。
○伊藤補佐 除去する仕組みというのが、現在の仕組みだと私どもは思っておるところでございますけれども…
○福井専門委員 だったら、どうして私立小・中学校だったらよくて、しかも規模の小さいところでもよくて、公立は幾ら大きくでもだめなのかということを、もう少しつじつまの合う説明を教えていただきたいのです。
○伊藤補佐 先ほど来、先生の方から御指摘をいただいておりますけれども、私立小・中学校につきまして、共同採択という枠内に入れることによる建学の精神を発揮できない制度的な弊害というものとの総合勘案でございまして…
○福井専門委員 そんなことは聞いていません。私立小学校を公立並みにするのではなくて、公立小・中学校を私立並みにすることの具体的な弊害を聞いているのです。
○伊藤補佐 ですから、公立並みにできないから私立としては独自性という観点も含めて認めざるを得ない。また、私学の場合、隣りの町に引っ越したから、すぐ子どもも転校するというわけではございませんけれども、同一市町村内における転校等も多々子どもたちにあるわけでございまして、そういったような場合に逐一使っている教科書が変わるということになると、やはり子どもの…
○福井専門委員 広域の採択単位ごとの、単位を超えて引っ越す子どもはうんと少ないのですか。その中での転居だけが重大であって、ほかの地域に行く子どものことは配慮しなくていいということですか。
○伊藤補佐 それは検定制度を取って、多様な教科書を登場するということとの兼ね合いでございまして、全くオール・オア・ナッシングの議論の議論ではないわけですけれども。
○福井専門委員 転校生の配慮ということであれば、具体的な統計的な数値に基づいて、どういう転校が多いからこういう場合ならいいのだというふうに後で教えていただけませんか。
○伊藤補佐 同一市町村内の転校は相当ございます。
○福井専門委員 同一市町村内が多いのか、あるいは採択県内が多いのか、それを超えての転校が多いのかという数値に基づいて議論していただきたいのです。
○伊藤補佐 学校ごとということであれば、同一市町村内の転校については、人口動態調査の方でも把握をできているところでございますので、可能な範囲で私どもは出していると思っていますが。
○福井専門委員 そうではない転校は把握できていないのですか。採択県を超えて転校する場合とか、採択県内の転校がどれぐらいかという統計はないということですか。
○伊藤補佐 私どもの方では個々に統計は取ってございません。
○福井専門委員 取っていなくて、把握もしていないで、どうしてそっちの方は支障がないとか、同一市町村内の転校生のことだけ配慮すべきだということが言えるのですか。
○伊藤補佐 ないというわけではなくて、その割合が高いと。
○福井専門委員 割合が高いということの具体的な統計的論拠を教えていただきたいということです。
○伊藤補佐 わかりました。転校データは把握しておりません。
○八代主査 単なる転校のデータではなくて、教科書を採択している範囲内での転校ということですね。
○伊藤補佐 わかっております、はい。
○八代主査 そろそろこの問題については時間切れですけれども、ほかにございませんか。
とくかく今日のお話ですと、余り具体的な根拠はないと思うのですが、例えば特区でこういう教科書を是非学校単位で、私立や国立と同じようなことを独自の教育をしたい公立中学校、小学校の校長が決めるということについて、是非御検討をお願いしたいと思いますが、本日の段階では、それについてはいかがなのでしょうか。
○片山課長 それにつきましては、また今日いただいたいろいろな宿題なども踏まえて考えていきたいと思います。
○八代主査 ありがとうございました。この問題は、重要ですので、また別の機会によろくお願いします。
○福井専門委員 あともう一つ、関連するかどうかわかりませんが、教科書会社は出版社が幾つぐらいで、どういう会社かというのは把握しておられますね。その会社に元文部省職員が、どういう形で何人ぐらいいっているのか、ポスト別に人数を教えていただきたい。これも後ほどで結構です。
○片山課長 それにつきましては、いろいろな資料要求とかもありますので、事前に調べてありますけれども、教科書会社に文部省のOBがいるということはないというふうに聞いております。
○福井専門委員 聞いているというのは、ないということですか。
○伊藤補佐 私ども承知している限り全くございません。
○八代主査 それでは、どうもありがとうございました。では、また次のときによろしくお願いします。
では、最初の教科書選定については、これでおしまいにしたいと思います。
(文部科学省片山課長退室)
○八代主査 どうもお忙しい中ありがとうございます。それでは、構造改革特区第三次提案に関する意見交換ということで、よろしくお願いいたします。
20分ごとに区切った上で、最初の5分を説明に当てていただきたいと思います。
○辰野課長 初等中等教育企画課長でございます。特区における公設民営の関係でございます。お手元に資料がいっているかと思いますが、規制改革の3か年計画の中で、1つは外部資源の積極的活用、それから民間参入の推進という観点から、民間委託の可能な範囲の拡大、明確化を図るということの事柄、これらについて検討をしていくというようなことが求められているわけであります。
そして、2枚目のところにありますように、骨太の方針2003の中において、公立学校の包括的な管理運営委託について、早急に中央教育審議会で検討を開始するとされておりまして、特に高等学校中退者を含めた社会人の再教育等の特別なニーズに応える等の観点から、通信制、定時制等の高等学校の公設民営方式について、平成15年度中に結論を得るというような形で閣議決定がなされているわけでございます。
そこで、5月に中央教育審議会に今後の初等中等教育改革の推進方策という形で、包括的な諮問を行ったわけでございます。その中で、当面の具体的な検討事項をお願い要請する中で、義務教育など学校教育に係る諸制度の在り方について諮問いたしまして、諮問理由の説明の中で、これらの動きを踏まえまして、株式会社等における学校設置、公立学校の民間委託、地域が学校運営などに参画するいわゆるコミュニティー・スクールの導入など、さまざまな指摘がなされており、こうした指摘も含め、公教育としての学校の教育活動の確実な実施と充実を図る観点から、新しい時代にふさわしい学校の管理運営の在り方について御検討いただきたいということで、現在、鋭意検討がなされている段階でございます。
これにつきましては、8月5日に八代主査に御意見をいろいろいただきまして、ありがとうございました。
このような形で、現在進めているところでございまして、非常に教育の根幹に関わるさまざまな慎重にすべき事柄というのが多方面にわたっておりますので、この中教審での検討の中で、公設民営の問題について、具体的な姿というものを打ち出していきたいというふうに考えております。
ですから、特区でいろいろな提案が出ておりますけれども、特区において現段階でやっていくというよりは、中教審における審議というものを踏まえた上での対応ということを考えていきたいと考えています。
以上です。
○八代主査 どうもありがとうございました。ただ、最後の点については、中教審で全国ベースでこの問題を検討していただくのは非常に結構なことなのですが、特区というのは、もともとそれとは別に、それに先行して、特定の地域について先行実施をやってみると、その成果を逆に言えば、中教審にも反映していただいてもいいわけでありまして、その2つはまた別の問題だというふうに、こちらは理解しております。
また、これは非常に全国から要望が強い項目でありまして、やはり中教審で議論する前に各地域の特性に応じて、こういう公設民営学校というものをつくりたい、それは結局、なかなかほかの手段では質の高い教育ができないというニーズがあるわけですから、今の要するに先行実施という意味での特区の可能性というのは、中教審と決して矛盾しないのではないかということについて、いかがでございましょうか。
○辰野課長 現在の制度の中で十分にできないというようなことが、もし仮に背景にあるとしても、中教審の検討の中で、そもそも現行に比べて何を改善して、どのような改善に対応するために管理の委託を行うのかという、その目的とか意義は何かという検討がまず必要だと考えています。
基本的に、地方公共団体が責任を持って学校の管理・運営を行うことについて、あえてそれを委託するということの目的意義というものを、しっかり公教育という観点から考えていこうではないかというのです。
これは、スケジュールも決まって、現在進めているわけであります。
○八代主査 それはあくまで全国ベースの改革のスケジュールを定めておられるわけでして、それとはちょっとまた先行実施という特区の精神が違うのではないかと思いますが。
○辰野課長 ただ、教育の根幹に関わることが余りにも多過ぎるのです。ですから、特区でまずやってみてというのは、やはり適当ではないというふうに我々は考えております。
○八代主査 それは、基本的に特区法の考え方と正反対だと思いますけれども、特区室はいかがですか。
○滑川特区推進室長 既に文部科学省さんとは、特区の提案を受けて累次議論を重ねてきております。
私どもからは、1つは文科省の言われるいろんな難しい事情があるということをうかがいながらも、今、主査からお話がありましたように、特区というのは、1つの性格として実験、あるいは前倒しで、どういう成果があるか、どういう問題があるかというのを検討すべき場所であるということで、これは御活用いただけるのではないかということで、全体のスケジュール、先ほど課長はお持ちだとおっしゃっていたのですけれども、ちょっとそれがはっきりしないものですから、私どもとしては特区で先行するということを前広に時期を決めてやったらどうかというお話をさせていただいております。
それと併せて、実はいろいろな学校はありますけれども、例えば、委員の皆様は御存じのように、保育所は民間委託ができるようになっている、厚生労働省さんはかなり民間委託等ができるような部分を増やしているという中で、幼保一体的運用という中でそういうことはどう考えられるか。
あるいは、もう既に地方自治法も改正されまして、民間への開放というのが進んでいる中で、学校だけそうではいけないという理由がどこにあるのかというようなことについても議論を続けているというのが現状でございます。
○八代主査 ちょっと時間の制約もありますので、委員の方、補足質問みたいなものがございましたら。
○安念専門委員 教育の根幹に関わるとおっしゃいましたが、何が根幹でございますか。
○辰野課長 要するに公教育だということです。公の性質を持った教育であるということです。
それから、特に義務教育については、これは憲法上の要請がありまして、保護者に義務をかけると同時に、それだけの必要のある学校を設置して、しっかりとした内容の教育をやっていかなければならないことになっております。国の責務であるわけです。
それから、教育の中身というものを担保し、またそれを円滑に実施できるようにするには、さまざまなシステム的な課題があるのです。これは、時間がありませんので、いちいち全部申し上げることはできませんが、教職員の身分でありますとか、それから受託者に対してどこまで権限を、特に処分性のある行為の権限を与えるのかと、それから教科指導まで全部包括的に本当に行うことが可能なのか、また、その質的な担保を市町村はどうするのかと。
今、幾つかありましたけれども、相当広範囲に現在のシステムで公教育を保障している中にあって、もしそれを委託という形にしたときに、どのようなことを検討すべき必要があるのかということについて、様々な課題があると思います。
○奥谷主査 そういった事柄は、要するに特区という中で実験するわけですね、今、おっしゃっているようなことを。
ですから、いろいろな問題が出てくるかもしれないけれども、特区でこれを実験するということが、まず第一の目的であって、そのすべてをクリアしてそれでパーフェクトにできるから、特区でOKということではなくて、いろんな問題が出てくるであろうということを特区で実験するという、その根底の考えをお持ちではないのでしょうか。
○辰野課長 実験にどこまでなじむのかということなのです。実験という言葉がどんどん出てくるのですけれども、実験というのは、結局失敗というのを前提にしているわけですね、ある意味で。失敗したときは、それを通じて、また教訓を得て、そうすればいいではないかという姿勢が、その程度学校教育というものに許されるのかということが、基本的には私どもの考え方としてあるわけです。
ですから、中教審の中で、こういう問題提起も踏まえた上でしっかりと議論しようということになり、すでに始まっているわけです。このため特区で実験をとりあえずという考え方は、我々は取らないということでございます。
○福井専門委員 全国で導入するということは、全国で実験をやるのと同じで、全国民を実験の巻き添えにするのはよくて、一部の熱心な市町村を実験に参加させるのはだめだという理屈はあるのですか。これは特区のそもそもの制度の精神の根幹に関わることですよ。
○辰野課長 ちょっとおっしゃっている意味がよくわかりませんけれども。
○福井専門委員 全国民を実験の巻き添えにするのはよくて、特区ではだめだということの整合的な理由を教えていただきたいのです。
○辰野課長 ですから、さまざまな課題があることから、それらを検討しクリアする必要がありますので、そこを中教審でもって、現在しっかりと議論をしていますよということです。現時点で、中途半端に打ち出していいのかという話ですね。
○福井専門委員 中教審で議論した結果、絶対に無謬だという保障はあるのですか。
○安念専門委員 実験はいけないとおっしゃいますが、今だって実験をしているのですよ。つまり、今は一つしか制度がないわけでしょう、一つしか制度がないことのオポチュニティーコストというのは、だれもはかっていないわけです。私は今の制度が全部だめだとは勿論申しませんよ。部分的には成功かもしれないけれども、失敗しているかもしれないわけでしょう。その責任はだれもとれないわけです。どこかでやらなければ、検討とおっしゃるけれども、対比する資料が何もないところで何を検討するのですか。
○辰野課長 対比する資料とおっしゃいますと。
○安念専門委員 例えば、こういうことですよ。公設民営をやっていないわけでしょう、現にやっていないのに何を具体的に検討できるのですか。全く机上の議論しかできないでしょう。
○福井専門委員 更に言えば、NPOや株式会社は特区で学校設置を認めているというのだって、ある自治体における一種の実験です。それは文部科学省だって一緒にやっているわけですから、そっちの実験なら何で全国一律やるにやるのと同等の弊害がなくて、こっちの実験ならだめだということの理屈はあるのですか。
○辰野課長 その実験についても、これからどうなるかというのはわかりません。
○福井専門委員 だから、実験を開くことの是非をここで議論しているわけです。結果が後から出るのは当たり前のことではないですか。
○辰野課長 提案で来たものは全部とにかくやってみろと、多少失敗してもしょうがないということでしょうか。
○福井専門委員 そうではない。株式会社とNPOは実験を認めて、公設民営は実験を絶対に認めるべきではない、実験で教育を検証するというのは不謹慎だとおっしゃったから、だったら何で株式会社やNPOはいいのかということの合理的な論拠を教えてくださいといっているのです。
○辰野課長 その点については、やってみるとどういう成果が出るかですね、実際にどれだけの人たちがそういうことに対して、手を挙げてくるのか。
○福井専門委員 では、株式会社、NPOはよくて、こっちはだめだということの理由は何ですか、これだってたくさん手を挙げる人が出るかもしれないのに、認めもしなかったら成果なんかわかりっこないではないですか。
○辰野課長 その点については、要するに設置者論として、株式会社、NPOを学校の設置者としてなら認めろと、そのときに設置者としての責任をどうするか、それから問題があったときにどうするかということを1つセットでもって今、法改正をしたわけですけれども、今回の場合は公設民営ですから、地方公共団体がつくって、それをほかの人に委ねるという話ですから、設置者そのものという話とは違うのです。そこのところは、自然な疑問として、それではなぜ公立学校が責任をもってちゃんとやらないのですかと、そのことによって何を改善して、何が成果として期待されるのですかということについて、しかもそれはいろいろな制度上のいろいろなことについての検討を行い、課題をクリアした上でやらなければいけません。
○福井専門委員 委託した場合に、何か具体的に支障が出てきそうな項目があるのなら、それを個別につぶしていくのなら大いにそれは議論もできるし、共通の土俵があります。
そうであれば、そもそも教育の性質とはとか、あるいは教育の根幹に関わるというような、そういう大上段のごまかし文句で一刀両断の下に拒否するのではなくて、具体的な弊害があるのか、ないのか議論するなり、検証するなりというアプローチでやっていただかないと、おおよそ特区の制度ができたということになじむ議論にはならないと思います。
○辰野課長 ですから、そういうことを含めて中教審でもって具体的に検討していきましょうと言っているわけです。これは断わるための大上段の抽象論を言っているわけでも何でもないのです。教育ですから、ある程度時間をかけて、事柄については慎重に検討する必要があると。
しかし、これは既に閣議決定等もありますし、スケジュール等は明確になっているわけですから、その中でよく検討していきたいと、そのときにまた、特区でいろんな議論が出たら、それはまた参考にしたいと思います。
○福井専門委員 勿論、検討は結構ですが、検討の前提として、ある意味ではここまで議論が煮詰ってきているわけですから、公設民営にしたときに、例えば管理形態でこういう場合に支障があるではないかとか、さっきおっしゃったように処分はだれの責任でやるのかとか、具体的な論点があり得るわけですね。
御心配になっている論点が、どの論点のどういうような弊害を想定しているのかということは、わかった上で聞かないと、丸投げしたって議論の堂々巡りになるだけですね。具体的に論点として想定されているものは、一体何なのかということを後ほどいただきたいと思うのです。
○辰野課長 分かりました。中教審で、今、具体の課題の検討を行っていますので。
○安念専門委員 課題とおっしゃるのは、公教育とは何かというような問題ではなくて、どういう弊害が予想されることを指摘しておられるかという意味でございますので。
○辰野課長 分かりました。
○安念専門委員 当然ですが、今の公教育だって当然弊害はあるわけでしょう。完全無欠な制度なんてないわけだから、当然比較論ですから、その比較をするような議論でなければ意味がないはずですね。
○辰野課長 それはそうですけれども、完全無欠がないから、では実験は何をやってもいいのだという、そういう議論に立つことは難しいです。
○安念専門委員 私は、実験は何をやってもいいなんて言っておりません。
○辰野課長 そうだと思います。だから、そこのところは時間をかけてしっかりと検討させていただきたいと思っております。
具体に、検討が今、中教審でスタートしているということは、これは御理解いただきたいというふうに思います。
○安念専門委員 それは全国規模の問題でしょう、だから特区とはまた別の話ですね。
○辰野課長 特区というのは、しかし、そこを切り口にして全国にというようなことが言われておりますが。
○安念専門委員 そうですよ、勿論。
○辰野課長 だから特区だから何でもやっていいのだということにはならない。やはり、そこに導入するときにおいて必要な検討というものは必要と考えております。
○福井専門委員 問題を極端な平面にすり替えないでいただきたいと思うのですが、特区を実験としてやるということは、これは内閣として現に進んでいる施策です。現に、株式会社やNPOを特区でまず試してみようということは、文部大臣も合意されて、現に制度化がもう運用の段階に入っているわけです。それは先ほど議論したとおりですが、特区で何でもいいというような極端な議論ではなくて、特区で具体的に試してみて、何か特区でだけやることの具体的な弊害があるのかどうかということがここでの論点です。
中教審で、そこまで具体的に特区に絞った場合であっても、このような弊害があり得るのではないかということを議論されているというのであれば、それを具体的に示していただきたいということです。
○辰野課長 教育ですから、これは特区であろうと、特区でなかろうと、それは国民教育ですから、そこにおいては基本的に守らなければいけないもの…
○福井専門委員 では、株式会社やNPOの議論を中教審で延々と議論をして時間をかけた上で結論を出しましたか。
○辰野課長 その当時は中教審に諮問されていませんでした、残念ながら。
○森委員 今、理想的な教育が行われていた上で、特区をつくりたいというなら問題かもしれませんが、学級崩壊や何かを起こしていて困っているから、こういう議論が始まっているわけです。先ほども発言がありましたように、先んじていろいろな実験的な教育をしてみるということは、当然それがあって実は議論ができるのではないかという話がありましたけれども、私もそうだと思うのです。抽象論で幾らやってみてもしょうがないので、その辺を早く、実際問題行動してみるということの方が大事ではないかと。
それから、また株式会社だと無責任なことをするとかという話がいつも出てくるのですが、実際には予備校の方が株式会社でありながら、実際に教育がうまくいっている例があるとか、いいかげんなことをしている、無責任なことをしているに違いないとおっしゃるけれども、無責任なのはどっちなのかという批判もあるわけです。
だから、皆さん方はゆっくり議論しているとおっしゃるが、特区でやってみようというときに、うまくいかないことはあるかもしれませんが、子どもをいじめるためにやる人はいないし、教育を失敗させようと思ってやる人もいないのです。海外などでいろんな事例があるから、これでやった方がいいと思っている、あるいは予備校などで既に実験済みで、そういうものを特区で一般化してみようと言っているわけなので、それを全部検討するまで待てという態度はまずいと思います。
○八代主査 どうですか。
○辰野課長 例えば、この中で出ているコミュニティー・スクールということについては、これは昨年度から実際に全国7か所ぐらいやって、そして実際にその成果というものを踏まえながら、今、慎重に検討し、この12月までに1つの形を出そうということで進めているわけでありますし、また、先ほど株式会社NPOの話、あれは設置者の話ですから、これとは少し違うところがあるのですけれども、またそれがどのようなところから申請があり、どのような成果があるかということも十分検討の中においては含めさせていただきたいというふうに思っております。
○八代主査 だから、公設民営がなぜ設置者の問題ではないかは全く理解できないのですが、新たに株式会社とかNPOとか、あるいは私学法人も参入してくれないような地域があったときに、既存の公立学校間の競争をもっと促進するために、ある自治体が公設民営で既存の公立学校と、言わば競うために公設民営の学校を作るということ自体を否定されるわけですか、それによって教育の質がよくなる可能性を議論しています。それも中教審でOKが出ない限り絶対にだめだという考え方が成り立つのかどうかということですね。ニーズがないとさっきおっしゃったので、例えばそういうニーズもあるのではないかということですね。
○辰野課長 質を高める競争するのに、なぜそれは公設民営でなければいけないのか、例えば私学がたくさん出てくるということでもよいし、公立学校がまさに特色化のために、今、いろんな努力を各地でしているわけでありまして…
○八代主査 だから、それでは不十分だからこういうニーズが出てくるわけでしょう、公立学校間の競争は勿論やればいいわけですけれども、多様な競争が必要だから、こういうニーズが現に要望として出てきているわけで、なぜそれを頭から否定しなければいけないのかということです。
○辰野課長 頭から否定していないわけです。ですから、こういうことを踏まえながら中教審で検討しております。現実に検討が始まっているわけですから、そこのところは御理解をしていただきたいと思います。今、我々が抽象論でもってお断りしようという話ではないですよ。
○八代主査 中教審というのは、抽象論しかできないではないですか、どうやってできるのですか。
○辰野課長 そんなことはないです。この間、中教審のヒアリングをお願いしてありがとうございました。あのときに、やはり抽象論しかないというふうにお感じになりましたか。
○八代主査 具体的な実験はどうやってやるのですか、モデル校だったらいいということなのですか。
○辰野課長 コミュニティー・スクールの場合には、現行のシステムの中で、最大限さまざまな配慮を行い、運用によって可能なものを開いていったのです。だから、そういうことだってできるかもしれないのです。
だから、要は何のために必要か、そのためには何が政府に期待されているのかということなので、そこのところをはっきりさせましょうということなのです。
○八代主査 その手段の1つとして実験として公設民営をなぜ否定されるのかと。
○辰野課長 そもそも公設民営という言葉自体が、人によって随分違うのです。だから、公設民営とは一体何なのかと思うのです。これも1つ議論をしっかりしなければならない点だと思っております。
○八代主査 だから、いろんな形態の公設民営があるでしょうけれども、ここの特区の要望に出ているような形はどうなのかということです。
○辰野課長 それを含めて、今、検討しておりますので、具体の検討に着手したということは、非常に大きなことだというふうに御理解いただきたいと思うのです。
○八代主査 そちらの基準では大きなことかもしれないけれども、世の中のスピードの早さというか、教育の改革に対するニーズから見れば、まだまだ不十分だから、こんな要望が出ているのだということで、自己評価だけで満足していただいたら困るのです。
○辰野課長 適切な外部評価はありがたいのですけれども、しかし、教育というものについて、そうそう短期的にやっていいのかと、まあ失敗するかもしれないけれども、今よりましかもしれないということをやっていいのかということについては、やはり相当慎重な見方というのも広くあるのではないでしょうか。
○八代主査 教育審議会は、これまで失敗したことがないのですか。
○辰野課長 そういう議論をされたら、どうなのでしょう。
○八代主査 教育に失敗は許されないとおっしゃったから、そういうことを言っているわけです。
○福井専門委員 そもそも教育というものはということではなくて、もう一回議論を戻しますが、具体的な弊害なりの検討課題を、しかも特区に即して出していただくように議論も収斂していただかないといけない。
○辰野課長 特区でも、全国でも検討しなければならない課題は同じことですよ。
○福井専門委員 同じことではないですよ。特区制度は何のためにあるのですか。
○辰野課長 今のシステムの中で、地方公共団体がちゃんと責任をもってやるべきものについて委託をするということですから、そのときさまざまな課題が出てくるというのは、同じことだと思います。
○福井専門委員 全国で代替措置ができなくても、特区の市町村が責任をもてばできるというのが、特区の1つの大きな制度化、合理化根拠です。その程度のこと理解されないで運用されているのは驚きです。
○辰野課長 しかし、今日の議論は、中教審のこれからの議論の中でも御紹介させていただき、参考にさせていただきますけれども、とにかくある程度時間が要るのだと、しかもそれは延々にという話ではありませんので、そこのところを御理解いただきたい。
○八代主査 ちょっと、ほかの項目もありますので、これは時間オーバーしていますから、その後のNPOによる不登校児童対象以外の学校設置の容認についてお願いいたします。
○久保高等教育局私学部私学行政課課長 私学行政課長でございますが、これと私学助成の適用と併せて答えさせていただきます。
今回の御要望の件ですけれども、基本的に第二次要望でも同じような要望が挙がっていました。それを踏まえて、今回の通常国会で特区法を改正して、株式会社とNPOの参入を認めたわけです。基本的に学校教育を実施するのは、国・自治体と学校法人がふさわしいという観点から学校法人になりやすくしよう、そこの壁をまず低くしました。学校法人になっていただくことが基本だと我々は考えています。
そのうえで、特区において株式会社にしてそのまま学校を設置できるような道を作りました。
それから、NPO法人については、NPO法人のままやりたい場合には、これはやはり法人としての継続性、安定性に懸念がありますから、しかも実態を見た場合に、不登校児童とか、学習障害児など当該地域に所在する学校では十分対応できていないという特別のニーズがある場合に、かつ一定の実績があるNPO法人に限り学校の設置を認めたところでございまして、今回、第三次でいろいろ御要望がありますようなものも第二次にも出てきておりました。それも踏まえて、全部整理して、この通常国会で法案を提出し、成立いたしまして、それに基づく申請は10月です。まだ、その申請も上がってきていない、段階です。したがってまず対象拡大をすることは困難でございます。
それから、私学助成につきましては、今のような趣旨で、助成金をもらおうと思ったら学校法人になれば、なる道は幾らでもあるわけです。それをコントロールに威服したくないという形でそのまま行かれるのであれば、その道をつくったわけですから、基本的にそこにまで助成を出す必要はないと考えておりますが、その前に、そもそも学校法人以外の法人に対して公的助成を行うことについては、教育の事業に公金を支出するということは、憲法上「公の支配」に属していなければならないという課題もありますので、もともと困難であると考えているわけでございます。
以上でございます。
○八代主査 どうもありがとうございました。最初の点については、まさに不登校児童についてNPOによる学校経営という要望が前回にあったわけです。今回は、NPOについてそれ以外の形の要望もあるわけですから、それは別個なものとしています。何もNPOについて1つ要望があったらその結果を見なければ、別の異なる要望が出せないというのは、特区法の精神に反するものだと思われますが。
それから、私学助成の件については、まさに学校教育法で認めていただいた学校である以上、私学助成が続くのはある意味では当たり前ではないだろうかと。憲法上の観念というのは、そちらがある意味で独自にそういうふうに解釈されているわけにすぎない。なぜ学校教育法という立派な法律がありながら、その適用を受けているNPOあるいは株式会社の私立学校が、公の支配に属していないというふうに自ら卑下した考え方をされるのか理解できません。一般に学校教育法で文科省の規制が十分にかかっているのではないかと思われますが、その点についていかがでしょうか。
それから、憲法上の解釈から言えば、既に国会で法制局の答弁がありますけれども、法制局は決して文科省と同じように、明らかな憲法違反なんてことは言っておられないわけです。
ですから、今、おっしゃっているNPOとか株式会社は、学校教育法第1条の学校としては認めるけれども、学校法人ではないから、助成は出さないというのは、我々から見れば既存の学校法人の保護政策としか見えないわけです。学校法人がいいか、あるいはNPO、株式会社の学校がいいかというのは、十分な情報開示の下で、なぜ消費者に判断させてはいけないのか、なぜ文科省がそこまで介入しなければいけないのかということです。
その点に御議論をお願いしたいと思いますが、ほかに補足的なものがありましたら、後にしますか、ではどうぞ。
○久保課長 これは前にも何回も私学部長の方から話しまして、繰り返しになるかもしれませんけれども、基本的に学校教育がかかっているから同じでなければいかぬということにはならないわけで…
○八代主査 何故ですか。
○久保課長 国、地方自治体、学校法人、それから学校教育法1条の学校であっても、財政支援の各パターンはかなり異なっている、今の制度下でも異なっているわけです。
○八代主査 それは補助金の額が違うということですか。
○久保課長 額が違うのもあるし、出ていないケースもあります。
○八代主査 どういう場合ですか。
○久保課長 個人立の102条園とか、だから別に学校教育法1条に該当する学校教育を行っているから、すべて同じ助成をしなければならないということは決してないというのが我が国の法体系でありますし、それからこれは何も…
○八代主査 その出ていないケースに問題がある場合であって、例えば文科省が決めた定員をオーバーしているとか、かなり質の悪い学校について私学助成金を出しておられないということではないのですか。
○久保課長 いえいえ、そんなことはありません。
○栗山課長 大学によっては、きちんとした教育をやっていても、自らの考え方で、要するに独自に教育をしていくのだと、公の援助も得ないで、そういう考え方で補助金をもらっていないところもございます。
○八代主査 だから、補助金をもらわないというのは学校の選択であって、はじめから出さないということとは全然違うのではないですか。
○久保課長 ちょっと、末端に入ると話の全体像が見えなくなるのであれなのですけれども、これは別に文部科学省が独自の判断でやっているわけではなくて、やはり公金を支出する、それからもう一つ、憲法違反と私は言ったわけではなくて、憲法上の課題もあるから困難であるという話をしたわけですが、憲法違反と明言したわけでは今はないということは御理解いただきたいと思います。
○八代主査 明言しなかったと、どう違うのですか、憲法違反の疑いがあるから出せないとおっしゃったわけでしょう。
○久保課長 言葉尻をとらえないでいただきたいのですが、これは文部科学省が独自の判断でやっているわけではなくて、長い間の積み重ねがあって、法制局の見解も踏まえて政府一体となって、多分同じ運営をしているはずだと思います。
○八代主査 しかし、法制局は疑いがあるとは必ずしも言えないと言っているわけですね。
○久保課長 法制局も基本的に公の支配に属しているためには、学校教育法だけではなくて、私立学校法、それから私立学校振興助成法、この3つがかかっていることが必要だということは認めておられるわけで…
○八代主査 本当ですか、今のは大事な発言で、本当に法制局がこの3つにかかっていなければいけないと認めておりますか。私が持っている議事録では、こういうことを法制局の人が言っているわけで、ポイントは学校教育法上の規定と、更に私学振興助成法により、いろんな監督命令という規定が私学助成をするためには必要であります。これは当然のことですね。
今、御指摘の点を十分踏まえながら検討させていただきたいと思いますということで、私立学校法がなければだめだとは言っておられないわけですね、ですからそこは法制局と同じだと言われると、ちょっと法制局が迷惑するのではないですか。
○久保課長 いや、そんなことはないです。最初、私立学校法を含め3法並べて答弁しておられるはずですけれども。
○福井専門委員 法制局の答弁は、過去からもある意味では一貫しているのですけれども、現在ある制度について見れば、いろんな監督規定を総合すれば合憲だということを言っている。要するに十分条件だ、すなわち必要条件だということは沈黙して、少なくともこれは全部満たしてあれば合憲だということを一貫して言ってきているのです。
要するに、今回の議論は、合憲ゾーンの非常に広いところに落ちるのかどうかという議論の限界線を探ろうということですから、必要条件は何ですかということを決めなければ判断がつかないのです。今ある規制が合憲だということを前提にしても、今後もう少し関与の度合を弱めたときでも、なお合憲かどうかということについて、法制局見解には出ていないのです。
今年の5月の法制局答弁も、その点についてはいろいろ検討の余地があるという含みを持たせた答弁になっているわけで、そこは一方的な解釈をされずに、どこまであれば憲法89条の要件を満たすぎりぎりのボーダーラインなのかということを確定しない限り、御主張を全然正当化できないわけです。NPOや株式会社に出すことが違憲だなどというようなことをにおわせる答弁も、過去の政府見解も一切ないのです。それは文部科学省だけが勝手に言っておられる見解です。もう少しよく勉強していただきたいと思います。
○久保課長 それは見解の相違だと思いますけれども、これについては…
○福井専門委員 見解の相違ではなくて、事実関係の把握について間違って把握をしないでいただきたいということです。
○久保課長 何回も申し上げていると思いますけれども、我々確かに今の制度で公金を支出している、この制度は合憲だと、そういう意味で十分条件は満たしている。だけど必要条件については、確かにおっしゃったように、別の立法政策はあるかもしれないというのは、前にも答弁しておりますから、その認識は別にすれ違っているわけでも何でもないと思っております。
○福井専門委員 いや違います。NPO、株式会社に私学助成を出すことについて、違憲の疑いがあると一貫して主張されるのであれば、実際さっきからそういうふうに主張されているように聞こえますけれども、だとすれば、NPO、株式会社について言えば、憲法上の要件、要するに憲法上の必要条件を満たさない可能性があるのは、かくかくしかじかの論拠であるということを具体的な憲法解釈論として陳述してください。
○久保課長 それは、この前からも何回も繰り返しになっていますけれども、我々は今の仕組みは合憲なのだと…
○福井専門委員 今の仕組みの説明はいいのです。新しい制度の必要条件の満たすか、満たさないかだけ議論したいのです。関係ないことを答えないでいただきたい。今、言っているのは、今の制度ではないのです。立法論ですから。
○久保課長 立法論をされて、新しく今の制度以外にも出せる制度をつくったらいいではないかというのは前々から言っております。そのスキームは、それを戻ると、結局、ここの5月29日の内閣委員会の答弁にもありますように、八代委員は2法だけ言われましたけれども、最初の答弁で法制局としては、第1に学校教育法、第2に私立学校法、第3に私立学校振興助成と3法挙げておられるわけです。
○八代主査 それは現状の説明ですよ。
○福井専門委員 必要条件だという答弁ではないのです。この答弁の議事録が読めないのですか。これは全部を合わせれば合憲だと言っているのであって、3つそろっていなければならず、1つでも欠けていたら違憲になるなんてどこに書いてあるのですか。
○久保課長 違憲とは書いていません。この3つが十分条件だと言っているわけです。
○福井専門委員 必要条件の話をしているのだから、十分条件の話をしても意味がないではないですか。
○久保課長 ただ、そのエッセンスについて全部出せと言われて前に出しましたけれども、我々としては、私立学校法の存在というのは結構大きいというのは、この制度を創設当時の解釈からずっと続いているわけですね。
○福井専門委員 大きいとか、小さいではなくて、憲法89条にいう公の支配という、その支配の概念を満たすのか、満たさないのかというのが憲法解釈論です。
○久保課長 だから、それを踏まえて全く新しい体系をつくったとしても、結局、我々として、その解釈は我々ができるかどうかわかりませんが、我々がつくるとしたら、結局今の私立学校法とか、私立学校振興助成法とかにかかっている要件とほとんど同じものを…
○福井専門委員 我々がそうしたいというのは結構なのです。だから、そのように我々がしたいということでなければ、憲法に適合というふうには言えないのかどうかということが、ここの議論の争点です。全く議論がかみ合っていないと思います。
○久保課長 少なくとも、これはそのまま私学…
○福井専門委員 我々がそうしたいというのは、何遍も御主張されているからわかっております。要するに憲法上の疑義があるとおっしゃるから、では憲法解釈論をやりましょうと言っているのです。憲法解釈論の意味は、この3つが全部満たされていなくて、1つの規定なり、1つの法律でも欠けたら違憲になるのだという主張と等しいのです。だったら、その具体的な法解釈上の論拠を教えていただきたいというのがポイントです。
○久保課長 それは、こちらは返しているつもりなのですけれども、すれ違いになっているということだと思うのですけれども。
○八代主査 だから、先ほど政策論だとおっしゃったから、政策を議論をしましょうということです。なぜ株式会社やNPOに対して私学助成を出したら、そんなに大きな問題なのか、なぜ学校法人という特定の形態だけしか認めてはいけないのか、学校法人以外のそういうNPO、株式会社に対して、対等な条件の下で教育を受けたいという人たちがいたときに、それを禁止するほどの重要な要件があるかどうかを聞いているわけです。
○久保課長 そういう言い方をされると、非常に悪いこと、非常に既得権益を擁護しているように見えるのですけれども、そうではなくて、学校法人というのは、世界に例を見ない民間参入の仕組みなのです。つまりもともと制度をつくるときに、国と自治体だけを独占せずに、民間の方にも参入できるようにする、そのためにどうしたら憲法上の規定に合致して、要請を満たして助成を出せるかということで想定されたのは今の仕組みなわけですから、別にこれでもって民の参入を阻害しているということは基本的にない。
○八代主査 だから、それは国公立だけがすべてであった時代の議論であって、それから世の中は50年経っているわけですから、多様な形態の私立学校が入るべきだというのが規制改革の考え方なのです。それで学校法人がそんなにいいものであれば、当然対等な競争にさらしても、みんなはその学校法人を選ぶでしょうと、それでなぜいけないのかということなのです。
○久保課長 そうなると繰り返しになりますけれども、今回、株式会社、NPOにもやっていただくように認めました。この整理は、公の規制に、ここの回答にありますように、学校法人に課せられたようなさまざまな規制を受けることは、そのままつくりたい方には求めなかったわけです。
だから、そういう意味で、公の支配の度合はかなり異なっているわけでしょう。
○八代主査 ただ、学校教育法の規制は受けているわけですね。
○久保課長 それだけは受けています。
○八代主査 それから、私学助成を受けるなら、当然私学助成振興法の規制も受けますね。だって、助成金を受けるなら助成金を受けるための条件は当然満たさなければいけない、その2つの規制でなぜ公の規制とは言えないのかということで、なぜさらに学校法人でなければいけないのかというのは、そちらの解釈ですね。
○久保課長 それは繰り返しになるのですけれども、今の制度で少なくとも合憲…
○福井専門委員 憲法論はどうせお答えになれないようだから、後でまたゆっくり教えていただくとして、憲法論はさておいて、実質的で常識的な立法政策判断として議論をしたいのですけれども、現実に今、NPOとか株式会社の学校で、要するに学校法人の縛りではないところでもう少し多様な教育をやりたいという事業者がいて、しかもそこに是非子どもを通わせたいという保護者や、あるいは生徒本人もいっぱいいるわけです。特区でこれだけニーズがあるのです。学校法人の形態で、すべてのニーズを満たしていれば、そんな声は出てくるわけはないのです。現に、そういう消費者がいて、供給者がいるということは、今の学校法人システムでは対応できていないという実質的、社会的実態があるからそうなっているのです。
そういうものが出てきたときに、学校としては認めるけれども、おまえたちには補助金はびた一文出さないということの論拠が私たちにはさっぱりわからないということなのです。それは生徒も満足し、喜んでもらえるし、供給者もそれでビジネスになって、お互いにハッピーなわけです。それが教育の、ある意味では今の欠けている部分を補っているのだということで、お互いでハッピーな関係を取り結んで、しかもそれが学校法人では対応できない、あるいは公教育では対応できない部分をカバーしているとしたら、これは国家的に見ても大変結構なことではないですか。
何でそういうお互いに喜んでいて、国家のためにもなるようないい教育をしてくれていると、関係当事者みんなが思っているところに、文部科学省だけがびた一文お金は出せないとして頑張るのか、常識に反するし、社会実態を無視した非常に独善的な見解だと思います。
○久保課長 そういう言葉を並べられますと困るのですけれども、本当に関係当事者はみんなそう思っているのでしょうか。誤解があるといけませんので言っておきますけれども、日本の教育の場合は、ほかの、例えば医療みたいに一般の人ではできない、治療して傷つけることは違法だと、刑法上の障害罪に当たると、こういうものではなくて、教育はだれでもできるのです。
現に、今の制度の中でも、学校教育に類する教育をやるところはいっぱいあります。それは各種学校でありますし、個人でやることもできます。
○八代主査 だから、各種学校の話をしているのではなくて、今、学校教育法第1条の学校の話をしているのですよ。
○久保課長 だから、今おっしゃったのは、別に学校教育法1条の学校というもののメリットは何かという話が、まずあると思うのですけれども…
○福井専門委員 メリットとしては、消費者と供給者が満足しているということです。それでもだめな理由ということです。
○久保課長 そうではなくて、教育をやりたいと思ったらだれでもできるわけです。今のような形で、別に学校という形にこだわらなくても自分のやりたい教育手法を使ってやってみたかったら、だれでもいつでも、どこでもできるわけです。
○福井専門委員 それは違うのです。今、議論しているのは、主査が言ったように、例えば特区で認められた株式会社やNPOが、学校としてはOKなのに私学助成が出ないことの不合理という、そこに限定した議論です。
○森委員 付け加えて、先ほど辰野課長から、特区でやるのなら何でもいいのですかというご発言がありましたけれども、何でもいいのかということの裏には、明らかに悪いものでもいいのかという意味だと思うのです。そして、明らかに悪いという意味には、現在の法律に合わないということが入っているのですね。それをあえてやろうと言っているのだから、おっしゃっているようなことだと、結局何もできなくなってしまうのですよ。
あるいは明らかに倫理的ではないというのだったら、これは警察の問題でしょうし、慣習の問題だというのなら地方自治体がやりたいと言っているのに、文部科学省が出てくる幕ではないでしょう。
だから、何でもいいのかという言い方は、今、やっているのは絶対によくて、例えば皆さん方の行政指導は絶対によくて、それに反しているのは悪いと、それを何でもいいのかというような言い方でごまかしていらっしゃるという気がするのです。そういう言い方はやめた方がいいと思います。わざわざ申請して、大変な苦労をして、地方自治体が何でもいいからやってみようなんて、そんな無責任なことで始めるはずがないでしょう。文部科学省だけがそんなことを言っていていいのかと、私は疑問に思うのです。
○八代主査 この問題は、長らく議論しているわけですけれども、今のような見解の相違がかなりあるということと、きちんとした御説明をまだいただいていないと思いますが、本日は、これ以外に非常に新しい問題として、教育委員会の必置規制の問題がございますので、できればそちらに移ってよろしいでしょうか。
それでは、先ほど福井委員等から御要望がありました憲法解釈について、そちらの明確な根拠を示すものは、別途また資料でいただきたいと思いますが、それでよろしいですか。
○久保課長 従前からのお話どおりであれば、そのように整理して。
○八代主査 今日は、少しは進展が見られたと思うのですが、御検討いただきたいと思います。
では、教育委員会の方のご担当はどなたですか、ではまたよろしくお願いします。
○辰野課長 教育委員会制度について、特区の提案を見させていただきますと、要は、今、必置にしているものを地域におきまして任意設置にしてはどうかという話なのですが、これについては、それは受けられないということで今申し上げたわけです。
まず、この提案を見ていますと、若干誤解と言いましょうか、不思議に思うところも若干あります。そこで教育委員会制度自体について、概要がありますので、本当に簡単でございますけれども申し上げます。
まず、教育委員会というのは、戦後教育の中央集権から、教育の地方分権というふうに切り替わった、そのときの1つの象徴なのです。要するに地方において、責任を持って、またその地方の住民の意思というものをきちんと教育に反映させていこうということから導入したものでありまして、私どもとしては、むしろ今、地方分権という中で、教育委員会が本来の設置の趣旨目的というものに照らしてその機能をしっかり発揮させていきたいというのが基本です。
これで、これは合議制の執行機関として、執行機関ですから当然ほかの行政委員会と同じ立場であるわけでありますけれども、なぜ合議制の、また独立の執行機関としているのかということにつきましては、この意義のところに書いてありますように、やはり教育という性格上、中立性、安定性、継続性というものが、これはやはり絶対的に必要であると、そこで自治体の長から独立した合議制の執行機関という形で設定しているわけであります。
また、この教育委員というのは、基本的には地方の良識ある住民の中から選ばれますので、多様な意向というものを教育行政というものに反映させることはできると、そのような特質を持っているわけでございます。
そこで、ポイントでございますけれども、下の方に書いてありますが、教育委員会というのはどのように選ばれ、また運用されているのかというのが基本にあろうかと思います。
最初にこれが導入されましたときには、アメリカの教育委員会制度に倣ってやったものですから、例えばこれを直接の公選にして、そのことによって非常にいろんな弊害が生じてきたということがありまして、昭和31年に戦後のいろんな改革すべてをある意味で見直したときに、これについても我が国情にあったものに改正をしていこうということで、任命制ということに切り替えたわけです。
ここに図がありますように、住民から知事、市町村長は選挙で選ばれるわけです。それから議会の議員の方々も選挙で選ばれると、そして知事や市町村長が教育委員を任命するに当たっては、議会の同意を得て任命をすると、つまり自ら発議して、こういう人を委員にしたいと、それを議会の同意を得て任命をすると、そういうことで間接的な形での住民の意思というものが反映するようにしていると。
しかしながら、当然中立性、安定性、継続性という形から、これは細かくは申し上げませんけれども、非常に制度的にいろいろな仕掛けがありまして、例えば委員会の改選というのは毎年1人ずつということで、一遍に改選することはありません。毎年1人ずつ改選をされて、急激な委員構成の変更というものがないようになっておりますし、いろんな仕組みというものがあるわけでありますけれども、ポイントは、とにかく知事や市町村長が自ら提案をして、議会の同意を得て選ぶのだと。
それから、教育委員会の中には、教育委員と、教育長というのがございます。
教育委員は、大きな方針とか、非常に重要な事項についての決定をするわけですけれども、通常の日々の執行事務については大体教育長に委任をされております。教育長というのは、そういう意味で要の形になるのですけれども、これが実は地方分権が論じられる前は、教育委員を任命するに当たって、都道府県であれば文部大臣、それから市町村であれば都道府県教育委員会の承認を得なければいかぬと、つまり、自分のところの自治体の教育長というポストを任命するに当たって、他の自治体などから、関与というものを残していた、これは言わば教育の統一性とか、安定性というものがあったのです。それを完全なる団体自治ということを実現しようということで、これは平成11年の改正によりまして、これを廃止しました。
これからは教育委員の任命、それから教育長の選任、こういうことはすべて地方公共団体の判断と責任において行われるという形に、これは11年に整理をされたわけであります。
知事さんや、市町村長さんたちが、任命してお願いしている教育委員会が形骸化しているとか、そういう話が当の長の方々から出るということについて、若干戸惑いを感じるところがありますし、また、現実問題、確かに形式的な審議に終始をしているというところも一様に見られることも確かでありますけれども、そこのところをまさにこれからの地方分権を担う責任者としての教育委員会制度の充実を図ることが大切だと思います。
それで、いろいろと御発表されている、志木市長さんのお考えというものを見ておりまして、いろいろあるのですけれども、大きくは2つのことをおっしゃっているのです。
1つは、教育委員会というのは、責任が非常に不明確だと、みんなで合意してやっているけれども、だれが責任をとるのかよくわからぬと。教育長は事務局長みたいなものにすぎないし、教育委員長というのは、議会の議長みたいなものにすぎないというふうな言い方をされるのです。
これは合議制というものに対する1つの御理解が足りないのかなという感じがいたしますので、これは合議制によって、教育委員会としての意思決定はしますけれども、当然その意思決定については、教育委員会が責任を持つわけでありまして、それからまた、それぞれの委員がどのように賛成、反対したのかと。
というのは、今、法改正によりまして、教育委員会会議は原則公開になっていますので、それも全部議事録に残るわけであります。ですから、責任が不明確ということはございません。
それから、もう一つの論点は、迅速な意思決定ができないということなのですけれども、これは確かに教育委員会というのは、月に1回開催が通常でありますが、本当に必要な事項があったり、緊急に対応すべきことがあれば、これは臨時会、それから持ち回りというのが幾らでも行われております。
それから先ほども申しましたように、大きな方針については教育委員会がやりますけれども、通常の日常業務については教育長に委任しているのです。ですから、その中で処理できるはずなので、志木市においては一体何が問題なのかなというような、私どもとしては率直に言ってちょっと理解しにくい部分があります。
○八代主査 済みません、そろそろ時間が過ぎていますので、これでよろしいですか。
○辰野課長 では、これぐらいにしておきます。
○八代主査 これは、志木市だけではなくて、ほかの自治体もいろいろ言っておりますけれども、今までの点についていかがでしょうか。
○安念専門委員 教育委員会制度というのは、私も悪くないというか、合理的な制度だと思いますね、アメリカでも大体スクール・ディストリクトにそのボードがあるわけだし、それから今、課長が御指摘のように、まさに今までは率直に言って国の統制にあるというのが制度的にもあったわけですけれども、今度はインディペンデントになったし、いいだろうと思うのです。
ただ問題は、どこでもしなければならないほどにいいかという、そういう問題提起ではないかと思うのです。全国どこでも漏れなくなければいけないのかと。これは、結局ガバナンスの問題ですから、株式会社だって、どういうガバナンスの仕組みがいいかというのは、これは全部一律でなければならぬというほど理想的な制度があるとは思えないと思うのです。
勿論、私は、志木市の市長さんがどういうおつもりで言っているのか、それは詳しくは存じませんけれども、しかし教育のガバナンスの在り方として、それは都道府県単位とかというところまでなれば、また別の問題があるかもしれないが、1つの市で、うちの教育のガバナンスは教育委員会なしでもいいとおっしゃるのであるならば、それをさせたからといって、そんなに大きな問題があるとは思えないし、それが失敗なら当然市長さんは次の選挙で選ばれないだけの話なのですから、全国一律に全部に漏れなくなければならぬというほど優れていると、私は大体においては優れているというふうに思っているつもりなのですが、そこまでなければならぬという積極的な論拠もないような気もするのですが。
○八代主査 補足させていただきますと、教育委員会に代わって、例えば学校長が教科書だけではなくて、例えば人事とか、そういうものについてなぜガバナンスの観点から権限を持ってはいけないのかと。逆に言うと、なぜ今の教育委員会にしかこういうことができないのかということですね。
先ほど、政治的中立性ということを言われましたが、逆に言うと、かつてのような政治的な問題というよりも、むしろ一番現場に近いところで日々の問題に対応する学校長の権限が極めて小さく、教育委員会制度によって代替されていることが問題であり改善して欲しいというニーズは別に志木市だけではなくて、あちこちから言われているわけです。これは企業でもそうですけれども、できるだけ現場に近いところに権限を委ねるということが、なぜできないのであろうかということ、教育委員会制度も結構でありますけれども、それを実験してみようということであって、これについて今の制度がいいということは言われましたが、学校長に任せてはいけないということについても是非御説明いただきたいと思います。
○辰野課長 1つは、どこにでも、要するに必置のところはそこまでのものかという意味だと思うですけれども、やはり公教育、特に市町村の場合ですから基本的に義務教育なのです。この義務教育について、その内容、システムというのをどういうふうに担保していくかと、これは全国共通だと思います。ここのところは大きな市であろうと、小さな市であろうと、町村であろうと、同じことだと思いますし、特に継続性、安定性というのは、確かに主査がおっしゃるように、イデオロギーの鋭い対立点があったかもしれない、しかし、それが全くないとは言えませんし、また、市長というのは選挙で選ばれて任期がありますから、市長が代わったことによって、教育ががらっと変わりましたという話になってしまうと非常に困るわけです。そこのところを制度的な担保をするために、教育委員会というシステムがあるわけでありまして、ただ私ども見ておりまして、非常に小さいので、そういう行政的な能力について都道府県の助けを相当得る必要があり、いかに機能を高めていくかなど、いろいろな課題があります。 例えば、小規模市長村が共同して委員会を設置するとか、今の地方自治法上のさまざまな共同の事務処理の方式がありますので、活用したらどうかと考えております。
それから、特に現在は並行して町村合併というのが進んでいます。そうすると結局、基礎的な自治体の力を高めましょうということで、これはまた一定の規模なり、または組織なりに備えることができるような形に、今進んでいるわけで、その中で教育委員会においても、それぞれの力をつけた基礎的な自治体の中で、しっかりと教育委員会の機能を発揮していただきたいというふうに考えているわけであります。
○八代主査 先ほど大事なことを言われたのですが、冒頭の御発言では、教育委員会というのは市町村長や、知事が任命するから意向は十分反映しているはずだということを言われましたね。それに対して、今の御発言では市長が選挙に落ちたら、次の市長が違うことを言って、教育の内容ががらがら代わっては困ると、継続性、安定性が大事だということですが、では、新しい市長さんが、抜本的な教育改革を理念に掲げて選挙に当選しても、継続性、安定性の原理から教育委員会は代わってはいけないということなのですか。
○辰野課長 今の議論は、市長さんが全く自分のお考えによって、いつでも教育委員を代えることができるということが前提だと思っております。この場合は、市長さんが提案をします。しかし、議会の同意を得る必要がありますので、だから場合によっては議会の同意を得られないところも幾つかあるのです。そこで1つのクッションがあります。 それから、細かい説明は時間がないのでやめたのですけれども、先ほど言いましたように、委員会の改選というのは、年に1人ずつ改選される、順次改選されるという形になっておりまして、市長が代わったから、全員が代わるシステムにはなっていないのです。
○八代主査 だから、それはメリットもあれば、デメリットもあって、なかなか保守的な教育を変えるということができないというデメリットもあるということは全然考えられないわけですか、ただひたすら継続性、安定性があれば教育というものはいいということなのですか。
○辰野課長 私も地方で教育行政を担当しておりましたけれども、やはり市町村でしっかりとした成果を上げているところというのは、市長さんがしっかりとした方針を出した上で、例えばこういうことをやりたいのだという提案はされる。それを教育委員会が検討したものについて予算や人事にしっかりと反映させていく、そういう市町村は非常にうまくいっているなという感じはいたします。結局は、長も教育委員会も自治体の中における機関です。
○八代主査 そのうまくいっているというのは、だれの評価を言っておられるのですか。
○辰野課長 例えば、県の教育委員会から見ていて、これは非常に活性化しているなというふうに思ったことはあります。
○八代主査 それは、課長の判断のわけですね。
○辰野課長 私の判断でありますが、満足度が高いということは、調査でも出てきましたし…
○八代主査 具体的にはどんな調査が出ていますか。
○辰野課長 県民のアンケートです。県民の意向調査みたいなものです。
○八代主査 いつ、どこでですか。
○辰野課長 県です。
○八代主査 だから、我々は具体的なデータに基づいて議論をしたいので、辰野課長の印象では困るわけで、それから先ほど言いました、なぜ学校長にもっと委ねてはいけないのか、5年に1回しか代わらないような教育長ではなくてということですね。
○辰野課長 方向性については、全くおっしゃるとおりでして、学校がまさに現場ですから、なるべく裁量権を持って、権限を持ってやってもらえるように、いろいろなことを今見直しをして、例えば教育委員会の権限をどんどん下ろしていっているのです。
例えば、予算についても、学校裁量予算ということでどんと渡して、あとでアカウンタビリティーを問うというようなことをやっているのですけれども、人事というのは、これはやはり人事ですから、要するに全体の満足、これは別にこれに限らず難しいことなのです。こちらがいいと思えば、こっちがほしい、こっちは出したいということになるとかみ合わないという場合があるわけです。
それについては学校長が意見具申をして、それに基づいて市町村教育委員会が、都道府県教育委員会に内申というものを行って、それに基づいて最終的には都道府県教育委員会が決めるのが合理的であると考えます。
○八代主査 それによって、例えばひどい教師がたらい回しにされているという問題も指摘されているわけですね。ですから、学校長が例えば、この教師は絶対に嫌だというような拒否権を持つとか、そういうことをやってみたらもっとよくなるのではないかという提案もあるわけで、今、課長はもっと権限を下ろすという、現場の裁量性を高めるというのは、望ましい方向だとおっしゃったわけですから、その1つの具体的な例として特区でそういうことをやってみると、それによって弊害があるかどうかを是非チェックしたいという特区提案に対して、それはだめなのだ、実験するまでもなくそんなことは意味がないのだと言われるほどの根拠があるかどうかということなのです。
○辰野課長 本日の論点というのは、教育委員会制度の任意設置の話ではないのですか。
○八代主査 そうですね。
○辰野課長 今の人事の話はどうつながるのですか。
○八代主査 ですから、例えば教育委員会の廃止という志木市の提案もありますし、例えば千代田区等の業務の委任といういろんな提案があるわけですね。だから、ここでは何も志木市の提案だけを議論しているのではなくて、権限の移譲ということも含めて幅広く議論してはどうですかということです。
○辰野課長 指導力不足教員の問題については、確かにおっしゃるように、このことが1つの公教員に対する信頼を損なった部分があります。ですから、この2〜3年、本格的には今年からなのですけれども、指導力不足教員の人事管理システムというのを導入しまして、これはむしろ学校だけではなかなか解決しにくい問題です。県全体のシステムの中で適切に措置をして、必要があれば復帰する、改善されなければ転職をするか、辞めていただくという形を昨年からしていますので、全体のシステムの中で、そういうものに対応していくということは非常に大事なことではなかろうかというように思っております。
○八代主査 ただ、教育委員会制度というのが、確かにマッカーサーの時代から改善したかもしれませんけれども、もう少し時代の要請の中で更に改善する余地はあるのではないかと、それについてまた特区でいろいろ研究してみようということです。それについては、ここに書いてある完全な廃止というところからだけではなくて、いろんなさまざまな教育委員会の仕組みの権限の一部も学校長に落とすという提案もあるわけで、そういう必置規制を廃止するまでもなく、例えば権限の一部を下ろすというような考え方についてはどうなのでしょうか。
○辰野課長 基本的に、いろんな制度の検討の中で下ろせるものについては、どんどん下ろしていくというのは、基本的に方向は全く同じです。
○八代主査 だから、その下ろせるものの範囲を一部拡大するということです。
○辰野課長 本日は教育委員会ということで私は臨んでいますので、ほかのことについて…
○八代主査 いやいや今言っているのは、教育委員会の機能の中で下ろせるものは下ろすということです。
○辰野課長 だから、今の人事権についてはちょっと難しいだろうと思いますね。
○八代主査 それ以外ならいいということですか。
○辰野課長 委員の方々の教育委員会へのいらだちというのは、それは私どもも実際に共有している部分もあるのです。形はできているけれども、実際は動いていないではないかという部分は確かに一部においてはあると思います。
31年に先ほど大改正したというふうに申し上げましたけれども、実は、この平成11年と13年に2回の大改正をやっているのです。これは地方分権にふさわしいものにしようということで、11年の改正が任命承認制度を廃止したと、ほかにもいろいろあるのですけれども、それが一つでございます。
それから13年の改正で、14年の1月から適用されているのですけれども、今まで教育委員は、いわゆる名誉職ではないかと、要するに単なる形だけではないかということの批判に対しまして、教育委員の構成を年齢、性別、職業とのバランスを取ること、それから保護者についてもなるべく入るように努力義務を課しました。それから教育委員会会議は原則公開、また教育行政相談窓口というものを必ず設けるという形で、いわゆる地方自治法上の住民自治ということについても、平成14年1月からスタートしておりまして、それから以降、随分委員構成というのは変わってきている。非常に若くなってきておりますし、女性も入ってきていて、保護者も入ってきています。
地方分権の中における、その要としての教育委員会をどう機能を発揮させるかということ。それと学校との関係において、学校の自主性を拡大しつつ、そこをサポートしていく形をどうつくっていくか、それは我々課題でもありますし、こういう特区での提案の底にあるものは、そういう気持ちなのだろうなということは受け止めさせながら進めていきたいと思います。
○八代主査 だから、教育委員会の改組についていろいろ努力されているというのはよくわかります。それはさっきの学校法人の改革を努力しておられるのと同じですが、それはそれとして、別途もう少し大胆な改革も必要なのではないかということであります。例えば学校長が教育委員会に近いような、一つの審議会みたいなものをつくって、そこでやると、そういうものが教育委員会と比べて、なぜ機能しないというふうに考えるかどうかですね。学校というのは、やはり学校長だけではなくて、教職員、あるいは父兄とか、そういう子どもの教育のために現場で一番関心を持っている人たちが、ある程度自主的に行うと、そういうような仕組みを例えばやってみるということができないだろうかというのが、この提案の背後にあると思いますけれども。
○福井専門委員 1つの論点は、教育委員会が学校現場と違うところで任命権など含めていろいろ管理しているということのもどかしさみたいなものが現場の感覚にあると思うのです。例えば、現場の学校長に権限をとことん下ろすと、学校別に例えば人事もやるし、カリキュラム編成や教科書も決めるところまで行き着くと思うのですけれども、もしそうしたとした場合に、公立学校のシステムでは、どういう点でまずいということになりますか。教育委員会の権限は言わば学校長に下ろす、という分業形態についての弊害を、どういうふうに想定されますか。
○辰野課長 時間があれば、それはじっくりとお話しますけれども、人事について見れば、御存じだと思いますけれども、県費負担教職員という形で、教育というのは教員が中心ですから、各市町村の財政力の差異によって、それが教員の雇用には影響しないよう、財政力のしっかりしている都道府県が給与を負担して任命権というものを持って、県全体としての広域的な人事を行う中で活性化を図る。そういう仕組みになっているのです。
ただ、その中で確かにおっしゃるように、人事ですから、なかなか100 %満足というのはあり得ないのです。ただし、なるべく校長の意思というものを反映させるように、実は最近法改正しまして、意見具申した場合には、それを途中段階で調整するのではなくて、意見そのものを付けて都道府県教育委員会に提出するという法改正をしました。
○福井専門委員 意見具申というのは、校長の意見具申ですか。
○辰野課長 校長の意見具申です。ただ、人事というのは、すべての人が満足するということは絶対にないのです。出したい人はみんな出したいし、ほしい人はみんなほしいしという中で、無限に立派な人がいて、それで後は校長が選べば全部ハッピーだというわけには、なかなか現実はいかないということを御理解いただきたいと思います。
もう一つ人事で言えば、今、どんどん進めていっているのは、つまり人事というのは通常人事だけではないですね、つまり教育のいろんな場面において、やはりこういう技能を持った人、こういう特質を持った人がほしいというときに、それが機動的に使えるようにしたら、むしろ一般人事よりも、有効に働く場合があり得ると。
例えば特別非常勤講師制度という制度を導入していますし、免許がなくても教壇に立てます。それから学校支援ボランティアという形で、教員と一緒であればどんどんとできますから、それに対する例えばいろんな実費でありますとか、旅費を措置していけば、相当校長は、そういう人材を有効に、しかも機動的に活用することができるのです。そのようなことも組み合わせながらやっていきたいなというふうに思っております。
おっしゃることの意味合いというのは、私もよくわかります。
○八代主査 森委員、よろしいですか。
○森委員 例えば引取り手がないけれども人事なのだから公平にやるのだと、結果として、全体がうまくいかないというようなことをいつまでも続けているように思います。校長に拒否権があって、別に民間から有能な人を採用できるとか、もっと自由にやらせてあげたいではないかということなのです。
教育委員会の制度によるものなのかどうか、私もにわかにはわからないのですが、そんな調子だとすれば、教育委員会もまた老齢化しているのではないか。大分改正しつつあるとはおっしゃいますけれども、現実は非常に危機的な状況にある中で、特区で自由にやらせてみながら、そういう制度の改革を推進なさったらいかがでしょうか。
○八代主査 それから、意見具申できるということを強く言われましたが、それは聞いてもらえる可能性というのは、どれぐらいあるのですか。
○辰野課長 人事ですからわかりません。
○八代主査 ですから逆に言いますと、そんなの単なる要望だけですね。
○辰野課長 単なる要望だけですけれども、先ほど言いましたように、要するに無限に人材が世の中にいて、しかも家族もいない、それから年齢構成もみんな同じだと、そういう人たちを自由に異動できるということがあれば、それは校長にということでしょうけれども、やはりいろんな人材がいて、確かに若い人もいますし、年を取った人もいますし、そういうものをいかに県全体の人事の中で生かしていくかということが人事の基本だと思うのです。
そのとき、今まで各校長さんたちの声というものがなかなか行きにくかったと、それが行くことによって、それを少なくとも勘案した人事というものが行われるようにしたと思うのです。ただ、言ったことが全部聞かれるかどうかというのは、これは人事ですから。
○八代主査 全部聞くということは極端かもしれませんけれども、だからこそ逆に言うと、私立学校へのシフトが生じてしまっている。私立学校の校長は人事権を持っていますから。ですから公立学校であってもたらい回しするというのではなくて、ある程度学校長が人事権について意見具申ではなくて、全員の教員の人事権を持たないにしても、例えば一部の教員の人事権を持つとか、もう少し裁量権を持てるという形での要望というのがあるのではないか。人事権だから、要するにみんな等しく我慢しろと言っていたら何の改革も起こらないわけです。
ですから、それは今、非常勤職員とかボランティアであれば、学校長が独自に採用できるというふうにしてしまいましたけれども、常勤職員は全然学校長というのは、ひたすら教育委員会にお願いして代えてもらうまで待たなければいけないという現状は、やはり問題なのではないかということで、それを特区において試してみようという要請はそれなりの根拠があると思いますけれども、特区だけがよい先生を集めてはいけないと、そういう御心配なわけですね、こういうことをすると。
○辰野課長 例えば、今のような点については、最初のテーマのときに申し上げましたけれども、コミュニティー・スクールという発想がないかというのはありまして、それについての検討をやっているのです。この中では、なるべく学校に裁量を与えて、例えば今、モデル校でやっておりますけれども、校長を公募する。公募された校長が、自分の教育理念を示して、県内で教員を公募するということでやるとどうなるかという実験を、今の制度の中で最大限の運用でやっておりますので、そういうことはいろいろと工夫しています。コミュニティー・スクールというのがどういう形でできてくるかわかりませんけれども、1つの配慮事項と思っております。
○八代主査 コミュニティー・スクールも大事ですけれども、まず、何といっても既存の公立中学と小学校に対するニーズが非常に大きいということです。しかし、教育委員会制度については、特区というのは、今のままでは一切認めないということなのですか。
○辰野課長 そうです。
○八代主査 それでは、やはり特区というものの本来の実験的な意味を、この教育委員会については一切テストすることは認めないと、それほど今の教育委員会というのは、ベストな制度だという御意見だと思いますが。
○辰野課長 そもそも特区にこういうのがなじむのかなというのは、最初の疑問としてはございます。統治システムですので、議会は要らないとか、市長は要らないとか、そのような話が本当になじむのでしょうか。特区というのは、もともと経済活性などのための話ではないかと思いますが。
○八代主査 では教育委員会というのは、議会や市長に匹敵するほどの、他に代替できないようなものだというお考えなわけですね。
○辰野課長 長と同様に独立の執行機関です。地方自治法上規定されています。
○八代主査 だから、逆に言えば、それがなぜ独立の執行機関でなければいけないかということを、今、政策論として議論しているわけです。
○辰野課長 それをこれまでご説明したわけでありまして、前提にいろいろなシステムが地方自治法上組み立てられていますので、特区で実現する云々というのは、ちょっとなかなかなじみにくいのではないかというふうに思います。
○八代主査 ですから、人事の問題についてはおっしゃっているように、一応の制約があって、特定の学校だけいい先生を集めてはいけない、それはよくわかりますけれども、それ以外の点についてはどうなのですか、人事以外は一応なじむというふうに考えてもいいのですか、人事以外も全部だめだということなのですか。
○辰野課長 人事以外で、例えば何をおっしゃっているのですか。
○八代主査 例えば、財政みたいな点ですね。
○辰野課長 財政も最終的には住民に対しての説明責任がありますから、それは行政当局が責任を持ちますけれども、それをなるべく機動的に使いやすいような形での予算執行のやり方というのをやっておりますね。
それから、教育課程についても、これまでは大体カリキュラムは教育委員会の承認という形が多かったのですけれども、今は大体届出ということでやっておりますし、これは個別にいろいろあります。
○八代主査 ですから、個別の点について、それぞれ教育委員会の権限を移行する。例えば財政について言えば、よく言われておりますけれども、PTAというか、父兄との合意に基づいて、余分の教育費を負担してもらうとか、そういう考え方も別途あるわけですね。全体の財政の制約の中でも、ちょうどパートタイムの教員を雇うような形や、例えば教科書が今、余りにも貧弱であるから、それに加えてもう少し、例えば参考書みたいなものについて、今でも一部実費負担をやっている学校もあるわけですね、それを例えば、勿論父兄の選択の下でもう少し公式の形で行なう等、いろんな工夫があるわけで、人事ができないからすべてできないということにはならないのではないかということですけれども。
○森委員 コミュニティー・スクールに救いを求めていらっしゃる気持ちはわかるのですが、コミュニティー・スクールなら人事権は持っている、教育委員会の制約の外へ出られるというのなら特区と同じことではないですか。一体、コミュニティー・スクールという形でどういうものをつくろうとなさっているのですか。
○辰野課長 今、検討中ですけれども、なるべく学校の裁量権を拡大し、それに対して地方住民の方のアカウンタビリティーを問うような仕組みというものを合わせて、今、検討をまさに中教審でしておりますので、これは本年中にとなっております。
○森委員 待っていた方がいいのかもしれませんが、今の教育委員会制度の根幹に触れるような制度の改革ということになるのですか。
○辰野課長 相当思い切った仕組みの調整が必要かもしれません。
ただ、今ちょっとやりとりをしていまして、人事権を軸にお話をされていましたけれども、今の教育委員会制度というのは、とにかく広範に学校だけとって見ましても、施設管理、人事管理、運営管理、さまざまな局面がありますので、それぞれについてできるものは、できるだけ学校に下ろしていくと、しかし、それは設置上無理なものについては、そこは教育委員会が責任を持つということを、それぞれ具体に進めております。
○八代主査 その方向は正しいと思うのですが、そちらの考えておられる裁量権を下ろすというのと、こちらが考えているのではかなり差がある。やはり今、教育の多様化とか、改善が求められているときに、もっと現場の校長のガバナンスを強化しないと、何でも教育委員会に陳情するだけではだめではないでしょうか。
それで、教育委員会自体が実は、また文科省に間接的にいろいろ依存しているわけで、文科省は、実際の仕事を教育委員会に任せているという、お互いの責任転嫁みたいなことが起こっているので、なかなか教育の改革が進まないのではないかという批判もあるわけで、それを打ち破る一つの手段が特区ではないだろうかということです。
ですから、教育委員会というのは、安念委員もおっしゃいましたように、非常にいい制度ではありますが、それ自体がやはり時代の変化の中で、ある意味で学校長のガバナンス機能を損ねている面もあるのではないかということで、この点については、また引き続き議論させていただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
(文部科学省関係者退室)
○八代主査 どうもお待たせいたしました。では、次は「地方公共団体における一般職員の任期付採用」という問題について、これについてちょっと時間も押しておりますので、総務省の御回答の方は、逆に言うと、短時間職員の拡大であれば、基本的には認めるというか、それから高度専門職であればいいけれども、一般の方はだめだと、そういう御回答ということで御理解してよろしいわけですね。
○森公務員部公務員課補佐 職についてでございますけれども、現在のところも高度な専門的な知識経験のほかに、そのペーパーにございますとおり、通常の専門的な知識経験を有するものについては、これは任期付きの任用が、短時間ではなくても可能でございます。
また、このほかに、現在、任期付きで採用できる場合として、臨時的な任用の場合、それから高齢の再任用の場合、それから非常勤と申しまして、補助的な業務での短時間の場合というようなことが認められておるわけでございますけれども、これらにつきまして、昨年の構造改革特区の総務・特区担当大臣の折衝におきまして、有識者等の意見を踏まえた検討を行いまして、15年度中に省の措置を講ずるということになっておりまして、現在、この方針にのっとりまして、研究会の方で検討しているところでございます。どこまでのものを措置できるかというところについて、まさに現在検討しておるところでございますけれども、最高裁の判例での一定の制限があるものですから、その制限の範囲内で一定の措置を講じようというふうに考えているところでございます。
○八代主査 ありがとうございました。問題は、その一定の措置の内容でありまして、その検討スケジュールというのは、どのようなペースで、いつごろ結論が出るわけでしょうか。
○森補佐 15年度中に主要な措置を講ずるということでございまして、通常国会に法案を提出するということを念頭に検討を進めておるところでございます。
○八代主査 ありがとうございました。ほかの委員の方はいかがでしょうか。
○福井専門委員 9月1日付資料の3番なのですが、最高裁判例が引用されているのですけれども、これは具体の事件はどういう事件ですか。
○森補佐 これは、非常勤の職員につきまして、その方が任期が切れた際に、それが任期の定めのない任用に転換するのではないかというようなことを言われたことについて、そういった転換が認められないというものでございますけれども、最高裁の判例の中で任期を付けた任用については、一定の場合に限って認められるというようなことを最高裁が申し上げられたということでございます。
○福井専門委員 この臨時職員についての判例で、常勤職員について言及したという、そういうものですか。
○森補佐 日々雇用でございます。
○福井専門委員 よくわからないのですが、何で日々雇用の話で常勤職員の話がここで引用されたような形で出てくるのですかね。
○森補佐 その判例の中でおっしゃられたということでございますか。
○福井専門委員 日々雇用の話と常勤というのは、一応別立ての仕組みですね。それでこれが出てきているという、それは事実として知っておきたかったのです。
○稲山大臣官房企画課企画官 この事案のときには、日々雇用されている方から、そもそもそういう地方公務員法上、任期を付けた雇用みたいなものが無効であるというような主張がありまして、それについて一般的には可能であるけれども、こういう制限があるのだよという判示がされているという意味でございます。
○福井専門委員 これは、傍論で一般論として出ているわけですね。
○森補佐 傍論かどうかは、最高裁の判例でございますので、ちょっとあれですけれども、判示の中でそういうふうに言っておったということでございます。
○福井専門委員 そうすると、今お聞きした限りの理解だと、最高裁の判例は、日々雇用の職員、要するに臨時職員として、期限付きで雇われた人が、いや、そうではなくて常勤でなければだめだという主張に対して退けるときの法律論として、これを言ったということですか。
○稲山企画官 結果的には、そうでございます。
○福井専門委員 とすると、これは一瞬見たときには、憲法論かなと思ったのですが、そうではなくて、現在の日々雇用職員の雇い方の法令が憲法違反ではないということを言っているわけで、逆に言えば、任期付きの常勤職員を置くことが憲法違反だという文脈とは違う議論のように理解できるのですが、そういう理解でよろしいですか。
○森補佐 憲法違反ということではございませんので、まさにそういうことがございまして、私どもは、ここの1番の1にございます任期付任用法を平成14年、昨年ですけれども、成立させたところでございます。
ただ、その場合には、やはりこういう最高裁の判例の中で、一定の趣旨に反しない限り許されるという限界というようなことを言及しておったこともございまして、一定の歯止めをかけていると、こういう流れでございます。
○福井専門委員 そうすると、高度の専門的な知識経験なり、優れた識見を有するという、この要件と最高裁判例というのは連動しているという御理解ですか。
○森補佐 高度及び一般的な専門的な知識経験というのが要件にかかっておるわけでございますけれども、これは国の方の任期付法と同じ要件でございますけれども、そこを意識してここはつくっておりますけれども、ただ、ここがぎりぎりの限度かどうかというところまで、別に最高裁の判例が言っているわけではないということでございます。
○福井専門委員 仮に最高裁の判決を立法論に当てはめるとすると、必要とする特段の事由に何が当たるのかと、その特段事由というのは、高度の専門的な知識経験等で、限定的に解されるというわけではないわけですね。
そういう意味では、立法政策には裁量の余地があるという理解でよろしいわけですね。
○森補佐 おっしゃるとおりでございまして、現在、任期を定めたものが、ここの1番の1から4のものがカテゴリーとして認められていると、こういうことでございます。
○八代主査 これについては、例えば民間の方は、いろいろ有期雇用、労働基準法が今度改正になって、より弾力的に有期雇用を増やすようになってきているわけです。そうしなければ、一旦雇えばすべて職員の身分を永久というか、定年退職まで保障しなければいけないということになると、非常に官の方では人件費とか、あるいは人事の硬直性というのがあるわけです。もっと民間と同じような形で、フルタイムの職員と、こういう有期雇用の職員をうまく組み合わせるということが必要になってきているということで、そういう意味から、今、改革が進められていると思うのですが、全体的な感じとして、民間並みの制度をやはり公務員についても考えなければいけないということについては、いかがなのでしょうか、そこまでやる必要はないというお考えでしょうか。
○森補佐 そういったニーズがあるというようなこともございまして、これは構造改革特区の中でございますけれども、1番の2の※にございますように、臨時的な任用につきまして、構造改革特区においては、6か月というものを最長3年というふうに改正を行ったところでございます。
ただ、民間と公務員との違いというものにつきましては、民間の場合には、労働契約で対等の契約でございますけれども、公務員の任用は行政の処分であるとか、あるいは憲法における公務員の全体の奉仕者性だとか、あるいは公務員の政治的中立の確保だとか、争議行為の禁止の規定といった一定の制限が課されているということもございまして、公務員の任用関係と、民間の労働契約と性質の違うところがあるというのは踏まえなければいけないというふうには認識をしております。
○八代主査 それはそうですけれども、政治的中立性というのは、別にフルタイム、パートタイムすべてについて通じることで、別に有期雇用だけ認めると政治的中立が犯されるということではないわけですね、この問題は特に関係ないと思います。
それで、16年度までに実施されるということなのですが、この問題については非常に要望も大きいわけで、もう少し前倒しで検討していただくということはできないのでしょうか。
○稲山企画官 先ほど申し上げましたように、今、研究会で研究いたしまして、15年度中ということで…
○八代主査 来年の3月ですね。途中はどういう検討が行われているのでしょうか。どの範囲まで認めるというような意見というか、議論があったのでしょうか。
○森補佐 まさに今、研究会をやっている最中でございまして、その研究会の検討を踏まえてということになろうかと思いますので、もう少しお待ちいただければと存じます。
○八代主査 その研究会の議論というのは、公開されているのですか。
○森補佐 求めがあれば公開するということでございます。
○八代主査 求めに応じてというのは、規制改革会議が求めたら公開していただけるのですか。
○森補佐 それは可能かと思います。
○八代主査 一般には、できないということなのですね。
○森補佐 情報公開もございますので、可能です。
○八代主査 だから、現時点でどういう方向の議論がされているかということなのです。
○森補佐 失礼しました。例えば、これはまさに労働問題という点も関係するところがございまして、この地方公務員制度調査研究会というのは、民間の学識者の方、それから行政側の方、それから労働側の方というふうに入っておるわけでございまして、特に労働側の御意見といたしましては、任期付任用については、言わば現行のところで十分であると、これ以上、任期付の任用といったものを拡大すべきではないのではないかというような意見も出ておるところでございます。
実際に、諸外国の例なんかを見ますと、ヨーロッパ連合、EUの方ではEU指令というものが出されておりまして、期限付の任用の悪用防止の観点から、そういった雇用契約、または更新を正当化するような、客観的な理由の規定等の措置を国内法で講じろとか、かなり限定的に解しているところもございまして、そういうような事情から労働側が言っているのではないかというふうには認識をしております。
○八代主査 今、労働側の意見だけを紹介されましたけれども、その反対の意見はないのですか。それから、ヨーロッパではそうかもしれませんが、米国等ではどうなのでしょうか。
○森補佐 米国におきましては、ニューヨーク州の例でございますけれども、技術的な専門家が州内で得られない場合とか、それからある意味では競争職の場合は当然でございますけれども、試行採用、あるいは臨時採用といったことに限定をされておるものでございまして、我が国の事例とおおむねオーバーラップするような要件で認められているのではないかというふうには考えておるところでございます。
民間サイドの有識者なんかでは、そういったものをもう少し拡大してもいいのではないかというような意見もあったかと思います。ちょっと今、正確に記憶しておりませんので申し訳ございませんが。
○八代主査 今の研究会の議論を見る限り、やはり労働側の意向が非常に強くて、なかなか任期付採用というのは、進まないというようなことにうかがえますが、それでは本来の特区の意味にはならない。そういう意味でもこの点については審議会の議論にゆだねて、その結果、非常に消極的なものが出てきても、地方の要望に応えられないので、もう少し別の手段が要るのではないかと思いますが、事務局はこの点についてどうですか。
○藤原室長補佐 いただいた資料の中で任期付職員の採用に関する法律の中で、3条の2項の3号というのがございまして、1号、2号に準じた形で、条例で定める場合というというのが挙がっておりますが、これで条例をつくって採用されているケースという事実関係があるのでございましょうか。
○森補佐 この法律は、ここにございますように、14年の5月にできたばかりでございまして、まだそれほど採用の事例がないと申しますか、これは当然5月でございますので、新年度から採用するということで、この15年の4月からというような形でスタートしたばかりでございますので、まだそれほど実績がないというのが現状でございます。徐々に条例とかをつくって増えてきておるようではございますけれども。
○藤原室長補佐 実績はないということで理解してよろしいですか。
○森補佐 15年の1月の時点でしか調べておりませんで、そのときにはまだ2件程度しか採用の事例というのはございませんでした。
○藤原室長補佐 もし、その実績の方が正確にわかりましたら、是非資料の方をお願いしたいということと、そもそもこの準ずる場合ということは、どういうことを念頭に置いておられるのかというのを、ちょっとまた事務的にお尋ねしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○安念専門委員 ちょっと条文の解釈を教えていただきたいだけなのですが、添付していらっしゃる法律の第3条の第1項と第2項、今、事務局からも御質問がありましたが、第3号だとやや広がった感じがするのですが、第2項は柱書きのところで専門的な知識経験というのが一つのキーワードでございますね。一方、第1項の方は高度の専門的な知識経験ということになっていますが、この場合、書き分けているわけだから、2項でいうのは専門的な知識とは確かに言えるかもしれないが、高度でなくてもよろしいわけですね。
○森補佐 それはそのとおりでございます。
○安念専門委員 そうしますと、何も網羅的に挙げていただく必要はないのですが、2項でいう専門的な知識経験というのは、どの程度であればよろしいのでございましょうか。
○森補佐 そこは、自治体の方の個々具体のケースにおける判断でございますが、例えば、3条2項2号で、専門的な知識経験が急速に進歩するようなものに係るようなものでそれがすぐ陳腐化するような場合と、例えばITの関係とか、そういうようなものをイメージしているものでございますけれども、ただ、言葉では非常に抽象的になるものですから、個々具体の現場での判断ということになろうかと思いますけれども。
○安念専門委員 例えばIT関係であれば、自分でかなり高度なプログラムを書いたり、あるいはグラフィックスを書けるという意味なのか、もっとオペレーターに近いものでも、それはそれなりに専門的な知識だと言えるのか、これは一義的には当該自治体の御判断にお任せする話だと、こういうことでございます。
○森補佐 そういうことでございます。ただその前に、特に人事委員会を置くような場合におきましては、3条3項にありますとおり、人事委員会が承認を行うということで、そこの客観性のチェックをしておるということでございます。
○安念専門委員 一種の御指導というか、御教示というような形で、総務省さんの方で、例えばこれはこういうことを言うのですよというようなことは示してはいらっしゃらないわけですか。
○森補佐 法律のレベルで個々具体の解釈を聞かれれば、こういうケースはどうかと聞かれれば助言することはあろうかと思いますけれども、最終的には、そこは自治体の方での判断というのが出るかと思います。
○安念専門委員 心強い答えをいただいた気がしますけれども。
○八代主査 お答えはかなり不明確であって、基本的には自治体さんの御判断ですけれども、しかしものによっては、それはだめですよという。
○森補佐 お聞きになられればということですね。
○八代主査 ですから、自治体が決めて、例えばエクセルを使えるような人を任期付職員として有期契約として雇いたいと、それが例えば専門的な知識と言えるかどうかというのを自治体が決めて人事委員会でOKをしたときに、総務省がそんなエクセル程度ではだめだというような可能性があるかどうかということなのです。
○森補佐 そこは常識と言っては、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、通常そういったもので専門的なものかどうかというふうに人が思うかどうかというかとも思いますので、あと…
○八代主査 思わないという意見が大勢だということなのですね、例えば。
○森補佐 いやいや、そのようなことは申し上げておりませんけれども…
○八代主査 ですから、例えば私が言っているのは、大学生であれば普通できるようなコンピュータを使った作業、そういうものを例えば専門的というふうに一般の人は思わないということで、そんなことをやってはだめだというのかどうかということですね。
○森補佐 エクセルの技術を、例えば通常の職員が本当にできないのかどうか、そういうレベルの専門性があるのかどうかというふうにお考えいただければと思いますけれども。
○八代主査 なるほど、だからここで専門的というのは、やはり通常の職員ができないことということが前提になっているわけですね。
○福井専門委員 もし、紛争形態としてあり得るのは、こういうケースではないかと思うのですが、任期付きの職員の法律の3条の各号要件に該当するとして、自治体が任期付きの職員を雇ったとして、その職員が、いや、自分は実は専門的な知識、経験を持つ身分で雇われた者ではなかった、要するに要件を満たさないのに雇われたのだから、常勤だといって争うようなケースがあり得るかと思いますが、そういう場合にはどういう帰結になりますか。
○森補佐 何条に基づいて雇うということを相手方に通知するはずでございますので、そういった形態は、当然任期も定めて相手方に任用の際にお知らせするはずでございますので、そういったことはないと考えております。
○福井専門委員 だけど、さっきの最高裁判決の例など、これは実際に民間でもよくある話ですけれども、非常に短い期間で雇われたはずの人が、実は短期雇用は無効で期限のない定めの雇用契約だなどというのはよくある。
多分、さっきから議論になっている専門的な知識経験を有するという要件に該当するかどうかが、司法判断の場に来るのは、恐らく具体的な紛争形態としてそういう形態しかなかなか想定しがたいように思うのです。
そうすると、その場合の結論が、要するに任期付雇用の要件を満たさないと仮に司法判断が下されれば、雇用自体が無効になるのか、それとも任期無し雇用に転換して有効というふうになるのか、法律論としてはどっちになるのでしょうかという御質問です。
○森補佐 そもそも通常の場合には、これは競争試験ということで、新採が試験を受けて入ってくるというのが通常の形でございまして、この場合にはそういった競争試験ではなくて、専門性ということを持っているということを本人が説明して、その選考形式に入ってくるということで、そもそもの入口が違っておりますので、そういったことは考えにくいのではないかというふうには思います。
○福井専門委員 要するに、ただ無効になるだけだ、より有利な条件に転換することはないであろうという解釈ですね。
○森補佐 判例上で一般的に、そういう任用形態が転換するというのはあまり聞いたことはございませんですけれども。
○福井専門委員 別に私が心配することではないですけれども、例えば、借家契約なんかですと、期限を定めておかなかったら、何らかの事故があると、転換してより有利な条件に変わってしまいかねず、元も子もなくなるということが現実に判例上よく起こるものですから、こっちではそういう心配をしなくてもいいのですねという趣旨の確認です。
○八代主査 よろしいですか、どうぞ。
○中山次長 時期なのですけれども、15年度中にと先ほどおっしゃったのですけれども、これは冒頭、法案提出の時期が15年度中というふうにお聞きしたのですけれども、実際に措置というと施行ベースかなと思っているのですけれども、とすると、どれぐらいをお考えでしょうか。
○森補佐 周知期間等も考えなければいけませんし、あといつの段階でということもございますので、国会の方をなかなか縛るようなことは申し上げられませんので、15年度の通常国会に提出するということで御理解いただければと思います。
○中山次長 通常は1年未満、1年以内。
○森補佐 そこは国会審議の関係もありますので…
○八代主査 国会審議は無理でしょうけれども、少なくとも研究会の報告が出て、それに基づいて閣議決定するのがこの期間ということなのですね。
では、どうもありがとうございました。
○福井専門委員 済みません、1つだけ。
○八代主査 どうぞ。
○福井専門委員 そうしますと、さっき私が申し上げたような紛争形態が考えられないとすると、安念委員の質問にも関わるのですが、もし、実は客観的には3条2項各号のいずれにも該当しないような非専門的な職員を任期付きで、どこかの自治体が条例に定めて雇ったとか、あるいは1号、2号にも全く該当の余地がないような人、ないし全くではなくてもいいのですが、要するに結果的には1号、2号にも該当しなかったような人を条例なしに自治体が雇ったときに、その雇用自体が司法裁判所で争われるケースというのは、想定できますでしょうかという質問です。
○森補佐 住民訴訟等で、そういうような本来競争試験で雇わなければいけないものを選考で雇っていると、専門性があるとして雇っているけれどもおかしいのではないかと、したがって、例えばその公務員の人件費を返せというような住民訴訟形態というのは、もしかするとあるかもしれませんけれども、あくまで推測でございますので。
○福井専門委員 主観訴訟では考えにくいのですね。分かりました。そうしますと、住民訴訟の要件を満たすような場合はともかく、言わば自治体が自分の判断で、さっきのエクセルとか、ワードとか、そのレベルのやや微妙なところで、えいと踏み切ってしまったときに、後でそれがひっくり返るという可能性はほとんどないと考えていいわけですね。
○森補佐 ちょっと分からないですけれども、先ほどの日々雇用みたいなケースで、一応訴訟があり得るという意味では、本人の方が任期が来たときに、任期の定めのないものにすべきであるというようなことを言ってくることはあるかもしれませんけれども、それ以外のケースは、ちょっと直ちには思い浮かばないということでございます。
○福井専門委員 要するに、これは自治体の判断でやってしまえば、それが既成事実になる、恐らくそうなるのですね、という確認をしたかっただけです。
○森補佐 あくまで法律にのっとってやっていただくというのが私どもの考え方でございますので、こういった場ではそれで御理解いただければと思います。
○八代主査 よろしいですか。
○福井専門委員 はい。
○八代主査 どうもありがとうございました。
(総務省関係者退室)