現在、レセプトの開示についてはルール化しているが(平成9年厚生省通達)、それだけでは患者情報の開示の点で不十分との指摘があることを踏まえ、カルテについて、患者プライバシーの保護を図りつつ、患者の開示請求に基づく医師のカルテ開示を普及、定着させるため、診療情報開示に関するルールの確立やガイドラインの整備を行う。
医療提供者(医師、医療機関など)の適切な情報が公開されることにより、患者は客観的な情報を活用して医療機関を選択しやすくなる。医療提供者にとっては、より良いサービスの提供に向けたインセンティブが生まれ、結果として医療サービスの向上につながる。そのような観点から、医療機関の医療機能、業務内容、医師の専門分野、診療実績などに関する客観的に比較可能な情報公開を促進する。
そのため、医療に関する各種情報のデータベース化、ネットワーク化を行い、国民が容易に情報にアクセスできる環境の整備を実施する。
医療機関の広告については、誇大広告など不適切な広告から患者を守るという観点から規制を行っているが、国民にとっては客観的事実に基づいた診療実績など真に知りたい情報の入手まで制限されている。患者の選択が尊重される患者本位の医療サービスの実現のために、現在の広告規制を見直し、将来のネガティブリスト化を視野に入れつつ、当面は、現在広告が許されている内容・範囲の大幅な拡大を図るとともに(ポジティブリストの積極的拡大)、関係者の要望にもかかわらずポジティブリストへの掲載が困難な場合の説明責任を明確にする。
現在、財団法人日本医療機能評価機構が評価を行っているが、評価の内容は医療機関の施設・構造や人員配置、組織体としての活動状況などの「構造評価」が中心であり、真に患者が知りたい評価、情報の提供という点では不十分である。患者本位の医療サービスを目指すために、技術水準や治療方法にかかわる「プロセス評価」や、さらには真に患者が知りたいと思う治療成果など「結果評価」にまで踏み込んだ評価が行われ、それが広く公開されることが望ましい。
また、財団法人日本医療機能評価機構のみならず多様な第三者評価主体の出現により、評価面でも競争メカニズムが働き、評価の向上が図られることが望ましい。
なお、現在、評価を受けている病院は全体の6%程度と少なく、まずは国公立病院、特定機能病院、臨床研修病院等について積極的な受審を促進するとともに、これらの医療機関に対しては、評価結果、評価内容の公開をするように措置する。
平成13年10月1日付けで、電子的請求を限定している「磁気テープ等(フロッピー等)を用いた費用請求の特例」(厚生省令:個別指定制度)を廃止したが、IT化のメリットを最大限享受し医療事務の効率化を図るために、これにとどまらず、レセプトの電子処理方法を確立し、磁気テープなどによる請求に加え、オンラインによる請求をできるようにする。このため、明確な目標期限、実現のための推進方策、安全対策などを明らかにした計画を平成13年度中に策定し、速やかに電子的請求の原則化を図る。さらに、オンライン化による請求を中心のものとするため、一定期間を定め、オンライン請求を促進するための措置などを導入し、オンライン請求を中心とする電子的請求の原則化を図る。
また、オンライン請求を確実かつ安全なものにするためには、プライバシーの保護、セキュリティーの確保などが重要であるが、今日のIT化の進展及び他分野での運用の状況を勘案し、短期間でそれら安全面の対策を講ずる。
なお、実態を重視し、安全性が十分確保されているとするものについては即時にオンライン請求を可能とする措置を講ずる。【平成14年度速やかに措置】
現在、厚生労働省ではレセプト電子化のための規格「レセプト電算処理システム」を定めているが、レセプト電子化の普及率は0.4%と低い。レセプトの電子請求を促進し、医療事務の効率化やレセプト情報の有効活用により医療の質的向上を図ることが重要である。
また、病名・手術名・処置名等やそのコードについてのレセプト、カルテの統一化や、それに適したレセプトフォームの規格化を実施し、その普及を促進する。【平成14年度中に措置】
なお、診療報酬点数算定ルールは複雑かつあいまいなものになっているので、その明確化、簡素化を図り、コンピューターで利用可能な算定ルールの確立と周知徹底を行う。【逐次実施】
現在のレセプトには複数の傷病名が並列的に記載されており、傷病とそれに対する医療内容の対応関係や、医療サービスが提供された日付、転帰が不明であり、患者が受けた医療内容が明確に分かるものとなっていないため、レセプト記載内容の明確化を行う。例えば、入院治療に関しては、一定の基準に基づき主傷病、併存症、後発症を区別し、主傷病に応じて医療費を明確にするなど、レセプトの記載事項を見直し、それに基づき具体的に実施する。
これらの情報は医療の標準化の基礎となるものであり、医療機関にとっては自己の医療水準の検証と改善に資する。また、保険者における被保険者に対するより良い保健サービス、情報の提供や包括払い・定額払い制度拡大に資するなど、その効果は大きい。さらに、医療機関、保険者、審査支払機関との間での共通理解が得られ、審査点検効率の向上につながる。
現在、医師、医療機関ごとに病名の表記が統一されていないなど、医療行為に関する情報が蓄積されにくい状況にある。カルテが電子化されることにより、情報の蓄積・分析が容易になり医療の質の向上が図られ、結果として患者に対する医療サービスを大きく向上させる可能性がある。
このため、電子カルテの導入・普及を積極的に促進する。その際、用語・コード・様式の標準化を進め、医師、医療機関が同一のものを使用することが不可欠であり、現在標準化がなされている病名、医薬品名等の普及を促進するとともに、その他の用語の標準化を完成させる。【平成15年度中に措置】
また、カルテにおける用語・コードなどはレセプトにおけるそれと統一したものとし、将来的にはカルテから機械的にレセプトが作成される仕組みとする。
【検討・逐次実施】
現在、カルテ等の患者情報は診療を行ったそれぞれの医療機関が管理している。安全で質の高い患者本位の医療サービスを実現するために、個人情報の保護など一定の条件を備えた上で、患者情報を複数の医療機関で共有し有効活用ができるよう措置する。これにより医療の効率化、医療機関の機能分担・連携の促進を図る。
現在、診療内容については医療機関や医師ごとにばらつきがあり、患者が安心・信頼できる医療機関の選択が難しい状況である。患者本位の医療サービスを実現するために、診療ガイドラインの作成やデータベースの整備が必要であり、平成15年度中にEBMの提供体制を整備し、速やかにEBMが広く一般的に行われるようにする。
また、患者が自ら診療内容等を理解し選択しやすくするためには、国民用の診療ガイドラインを整備する。これらを公正で中立な第三者機関が行うための環境整備を行う。
レセプトの審査・支払は本来保険者の役割であり、保険者の自由な意思に基づき、(1)保険者自らが行う、(2)従来の審査・支払機関へ委託する、(3)第三者(民間)へ委託するなど、多様な選択を認める。このために、健康保険組合などに対して社会保険診療報酬支払基金に審査・支払を委託することを事実上強制している通達(昭和23年厚生省保険局長通達)や医療機関に対して費用請求を審査支払機関へ提出することを義務付けている省令(昭和51年厚生省令)の規定を廃止する場合には、公的保険にふさわしい公正な審査体制と、患者情報保護のための守秘義務を担保した上で、保険者自らがレセプトの審査・支払を行うことを可能とする。なお、その際、審査・支払にかかる紛争処理のルールを明確にする。
保険者と医療機関は協力して被保険者の健康を守り、傷病からの回復の手助けをするという共通の目的を有しており、効率よく医療制度を運用して被保険者の利益を確保するために、協力していく関係にある。そのためには、保健事業の推進等を通じてより密接な関係を構築するとともに、フリーアクセスの確保に十分配慮した上で、保険者と医療機関がサービスや診療報酬に関する個別契約も締結できるようにする。
保険者が患者のエージェントとしての役割を十分に果たすために、医療機関や被保険者から必要な情報を入手できる仕組みが整っていなければならない。
保険者が審査・支払について責任を負うという体制をとるからには、保険者がこれに必要な情報収集ができることが必要である。これを保険者の強制力をもった権限として構成するかどうかは、なお考慮を要するとしても、保険者が信頼関係に基づき、被保険者の協力を得て被保険者のためにする質問・調査等は現在でも可能であり、これを周知徹底する。その際、被保険者のプライバシーの保護、保険者の守秘義務の確保等を図ることは必要である。
保険者は、昨今の厳しい保険財政においては業務のより一層の合理化・効率化が求められる。また一方で、被保険者のニーズに対応するためには疾病予防などの意欲的な保健事業活動が求められる。現在、保険者の運営に関し、多くの認可制、又は届出制が設けられており、機動的な活動が制限されている面がある。財産処分に関する手続など各種許認可手続に係る規制緩和や、保険者間で共同事業が円滑に実施できるようにするなど、保険者の自立的な運営のため、一層の規制緩和等の措置を講ずる。
現在、我が国の診療報酬体系は出来高払いが中心となっているが、コストインセンティブが働きにくく過剰診療を招きやすいといった弊害が指摘されている。一方、包括払い・定額払い方式については粗診粗療を招きやすいといった弊害が指摘されるものの、医療内容が標準化され、在院日数の短縮やコストの削減など、効率的な医療サービスを提供するインセンティブが働くとともに、医療機関ごとの医療費の格差の縮小が期待される。また、診断群ごとの診療が標準化され、質のばらつきを少なくすることを通じてコストを削減することは、医療費の画一的な削減と大きく異なる点である。こうした点に留意し、医療の標準化、情報公開を推進しつつ、傷病の分類方式、対象分野、対象施設要件など、具体的内容、時期を定め検討し、包括払い・定額払い方式(診断群別定額報酬支払い方式など)の対象医療機関などの拡大を平成13年度から計画を明示して、段階的に進める。
国民の生活水準の向上や価値観・ニーズの多様化により、医療に関する国民の要求水準も上昇し、「自ら情報を集め、自己責任で治療方法を選択したい」、「保険のカバーする範囲を超える分は、自費や民間保険を利用しても納得のいく治療を受けたい」というニーズも強くなっている。国民が負担能力に関係なく適切な医療を受けられる「社会保障として必要十分な医療」は公的保険診療としてこれまでどおり確保した上で保険外診療との併用を行えるようにすることは、患者自らの医療サービスの選択肢を増やすという観点から合理的である。
一方、「特定療養費制度」が導入され、主に「高度先進医療」や「選定療養(差額ベッド、歯科材料の一部、200床以上の病院の初診料など)」が認められているものの、その適用範囲は公的保険カバー範囲全体から見ると厳しく限定している。
患者本位の医療サービスのため、「特定療養費制度」の対象範囲の拡大を行う。その際、医療技術の進歩や患者ニーズの多様化等に応じて、患者に対する十分な情報提供を前提とした上で、患者の選択により公的保険診療と保険外診療を併用することができるようにする。
診療報酬、薬価、医療材料価格は、中央社会保険医療協議会で決定しているが、価格の根拠、決定プロセスなど、決定方法について問題点が指摘されている。
薬価については先発品と後発品の算定価格、画期的新薬の算定価格などに関して、開発のインセンティブが働くような適正な算定を行うなど、算定ルールの抜本的な改革を行い、また、既存薬の効能について、一定の基準に基づいた再評価を実施し、効能が認められなくなったものの承認を取消すなどの措置を講ずる。また、現在、薬価205円以下(内服1日分、頓服1回分など)の薬剤に関しては、薬剤名などの内訳を省略して薬剤費請求ができる「205円ルール」が存在するが、これを廃止し、内訳を明示した請求とし、医療の透明性を図る。
医療材料については、薬価算定の場合と同様に外国価格参照制度を導入するなど、価格の適正化や流通全体を通じた抜本的な改革による競争政策の徹底など、内外価格差を是正するための所要の措置を講ずる。
なお、医療が広く国民にかかわる事柄であることから、価格決定や保険導入の過程の透明化・中立化・公正化を図る観点から、中央社会保険医療協議会等の在り方を見直す。
医療機関の経営形態に関する規制の根拠は、公益性が強い医療サービスについて、営利主体の参入を抑制することにより医療サービスの質を維持するためとしてきた。
しかし、持分のある医療法人の財産は、社会福祉法人と異なり、出資者に帰属しており、その資金調達方法は銀行などからの借入れに事実上限定している。
直接金融市場からの調達などによる医療機関の資金調達の多様化や企業経営ノウハウの導入などを含め経営の近代化、効率化を図るため、利用者本位の医療サービスの向上を図っていくことが必要である。このため、今後、民間企業経営方式などを含めた医療機関経営の在り方を検討する。
医療法人の理事長は医師であるか又はそれ以外の者の場合は都道府県知事の認可を受けなければならないという規制を講じている。病院経営と医療管理とを分離して医療機関運営のマネジメントを行い、その運営の効率化を促進する道を開くため、平成14年度のできるだけ早い時期に、合理的な欠格事由のある場合を除き、理事長要件を原則として廃止する。
医療の技術の著しい進歩の中、安全で質の高い医療を確保するためには、医療従事者の質の確保、能力の向上が不可欠であり、医療従事者個々の専門性に応じて必要な最新の知識及び技能を修得できるような環境の整備を行う。その方策の一つとして、平成16年度からの医師の臨床研修化に向けた臨床研修制度の改革や生涯教育の充実、研究の促進とその成果の普及などにより、資格取得後の医療従事者の質の確保を図る。
出身大学による閉鎖的なネットワーク(医局制度)により、医師の自由な競争と正当な評価がなされていないとの指摘を踏まえ、このような状況は早急に改革し、研修期間中は特定の医局(出身大学の医局)に入局せずに研修を行う方策、医師の客観的な評価が可能となる方策、広域で研修にかかる医師と病院をマッチングさせる方策などを講ずる。【速やかに検討開始、平成15年度中に結論】
また、近年、医療事故の遠因として、一部研修医の過酷な勤務の問題が指摘されているが、安全で質の高い医療サービスの確保及び医師の保護の観点から、研修医の働く環境や安全管理の問題について早急に検討し対策を講ずる。【平成14年度中に結論、平成15年度措置】
医療分野に従事する専門的な人材の効率的な配置による良質で効率的な医療供給体制を構築するため、医療関連業務の従事者の派遣に関する規制の見直しを検討し、結論を得る。
医薬品について、平成11年3月31日に行った15製品群の医薬部外品への移行の実施状況を踏まえ、一定の基準(例えば、発売後、長期間経過しその間に副作用などの事故がほとんど認められないもの、など)に合致し、かつ保健衛生上比較的危険が少ないと専門家等の評価を得たものについて、一般小売店で販売できるよう、見直しを引き続き行う。
特別養護老人ホーム等の介護施設について、居住性に配慮した個室化を推進することにより居住環境が抜本的に改善されることから、入居者から、従来の介護・食事に係る利用者負担のほか、ホテルコストを原則として利用者負担として徴収するよう見直す。また、そうした負担に耐えられない低所得者層については、一定の配慮を検討する。
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(PFI法)」(平成11年法律第117号)を活用した公設民営方式は、官民の契約に基づいて、PFI事業者が施設を建設し、地方公共団体がそれを取得した上で、これを当該PFI事業者に運営させるものである。その取得費用については、新たに国庫補助の対象としたところであり、このほか、「公有財産を無償又は時価より低い対価で選定事業者に使用させることができる」としているPFI法第12条第2項を活用する。また、地方自治法(昭和22年法律第67号)第238条の4第1項では、行政財産の貸付けを禁止していたが、第153回国会においてPFI法を改正し、特例措置を講じたところである。これらにより、PFIを活用した公設民営を促進する。
社会福祉法第62条第2項では、公的部門や社会福祉法人以外の者がケアハウス等の社会福祉事業を行おうとする場合、都道府県知事の許可が必要である。
これまでは、設置・経営主体として株式会社等の民間事業者を挙げていなかったため、民間事業者の参入を事実上阻害していたが、平成13年11月16日、関係通知の改正により、法人類型を問わず、都道府県知事の許可によって設置・経営主体となり得ることを明記した。
痴呆性高齢者グループホームについては、平成13年度からNPO法人等が施設整備を行う際の財政支援について予算化したところであるが、併せて、同一敷地内では3ユニット以内に抑制していること、認可の際には市町村の意見書が必要とすることなど、新たな規制を加えている。密室性が高く、利用者保護の体制整備が特に求められるグループホームにおけるケアの質を確保するためには、今後とも情報公開等を推進する。
公的部門、社会福祉法人、民間企業等といった経営主体にかかわらず、利用者やその家族が事業者を選択する際に活用できるチェックリストの作成などにより、介護事業者の情報公開義務を適切に果たさせるとともに、第三者評価を推進する。また、消費者利益の観点から、その運営に関する監視体制の強化を図る。
要介護者の様々なケースに対応可能とするために、介護職の養成研修を一層充実させるなど、介護福祉士やホームヘルパー等の介護職の資質向上を図る措置を講じ、要介護者のニーズに的確にこたえることの可能な介護職の育成を図る。
現行の高齢者介護を行う代表的な施設には、特別養護老人ホームのほかに、在宅復帰に重点を置いた介護老人保健施設がある。特別養護老人ホームの全室個室・ユニットケア化といった居住条件の改善を進める中で、介護老人保健施設についても、入所者にとっての生活の場である特別養護老人ホームとは性格が異なることにも留意しながら、療養環境の改善を図る。【平成14年度中に措置】
また、医療保険と介護保険が重複して適用され得るサービスについては、介護保険が適用されると医療保険からの給付は受けられない仕組みとなっている。
しかし、一部の医療サービスについては、主治医の「特別指示書」があれば、2週間は医療保険からの給付が受けられるため、本制度が濫用されているとの指摘もあることから、こうしたサービスに関する医療保険給付の適用範囲については、一層の周知徹底を図る。【平成13年度中に措置】
社会福祉法の成立とあいまって、障害者福祉サービスについては、平成15年度より障害者に対する支援費制度へ移行することになった。これは従来の障害者施設や在宅サービスの内容が行政処分として定められた措置制度とは異なり、障害者自身がサービス内容と事業者を選択し、事業者との直接契約によりサービスを利用する仕組みである。市町村は障害者の受けたサービスに対して支援費を支払うとともに、利用者は事業者に対して、本人及び扶養義務者の負担能力に応じた自己負担額を支払うことになっている。
こうした支援費制度により、利用者の選択肢が広がることとなるが、高齢者を対象とした介護保険制度との関連では、40歳以上65歳未満の障害者は介護保険の被保険者としているにもかかわらず、加齢に伴う疾病によって介護を要する状態とならなければ、介護保険の給付は行わず、給付面は支援費制度としている。この意味から、支援費制度について、介護保険制度の見直しと合わせて、両制度の関係についての抜本的な検討を行う。
保育サービスの不足に早急に対応できる措置として、認可保育所における受入れ児童数の増がある。このため、特に公立保育所を中心に、待機児童の多い地域においては、定員基準の弾力化等を一層推進する。また、一定の設備にかかわる設置基準等については、その見直しを検討する。さらに、分園の積極的促進を図ることにより、サービスの質を確保しつつ供給量の拡大を図る。【直ちに検討に着手、逐次実施】
保育サービスの増加を抑制している要因として、地方公共団体が財政状況の制約の中で、新たな認可保育所の運営費を捻出しにくいことが挙げられる。他方、地方公共団体によっては、国の設置基準以上の基準を導入し、補助のかさ上げを行っているため、その財政負担が重くなり過ぎているという側面もある。
限られた財源を有効に活用し、一人でも多くの子どもを認可保育所に入所させるためにも、保育環境の質を下げることがあってはならないが、地方公共団体が合理的でない基準の上乗せや補助のかさ上げをしないようにすることが望ましい。
さらに、待機児童の多い地域における定員基準の弾力化、認可基準等に適合した保育所についての迅速・的確な認可などにより、保育需要があるにもかかわらず、認可保育所の供給を抑制しないことが必要である。このため、既に実施された規制緩和措置については、地方公共団体に対し、早期かつ逐次、周知徹底を図る。【平成13年度中に一部措置、逐次実施】
公立保育所に関しては、社会福祉法人等が運営する認可保育所に比べ、運営コストがかかるだけでなく、利用者のニーズへの迅速かつ的確に対応できていない。このため、限られた財源を有効に活用し、かつ社会のニーズに応じた保育を実施するという観点から、公立保育所の運営については、社会福祉法人やNPO、民間企業等へ民間委託することも有効な処方箋である。
また、第153回国会においてPFI法を改正し、行政財産に関する規制の緩和を行った。介護施設と同様、PFI方式を活用することなどにより、学校の余裕教室等、活用されていない公的施設・土地を積極的に活用して保育所にするなど、潜在的資源に着目して公設民営を促進する。
民間企業が効率的な経営の結果として得た剰余金が、さらに保育の事業拡大のインセンティブを阻害しないよう、関係通達の見直しを図り、会計処理の柔軟化を進める。
認可外保育施設には、実際に20万人以上の子どもが通っている。基本的には都市部に多いが、沖縄は歴史的経緯もあり、認可外保育施設に通う子どもの数が、認可保育所に通う子どもの数を上回っている。認可外保育施設の中には認可保育所に匹敵する質の高さを誇るものもあれば、いつ事故が起こってもおかしくない低レベルのものまで混在している。こうした施設における乳幼児など社会的弱者の安全や人権を守ることは、保育行政の重点事項となっている。
このため、第153回国会において、児童福祉法(昭和22年法律第164号)の改正を行い、認可外保育施設に対する地方公共団体への届出、毎年の運営状況の報告、設備運営に係る掲示・利用者への書面交付を義務付けた。また、地方公共団体は、毎年認可外保育施設に係る運営状況や立入調査結果を公表することとし、悪質な施設に対する勧告・公表を行うことができることとなった。さらに、都道府県と市町村との連携も強化することとなった。こうした法改正の趣旨を周知徹底するとともに、認可外保育施設に対する指導監督の徹底を図る。
こうしたことに加え、保育所、保育ママ、地方公共団体における様々な単独施策等を活用し、待機児童の多い都市を中心に受入児童数の増大を図る。
認可保育所においてもその保育の質・内容は多様であり、利用者が安心して保育所を選ぶことが可能になるだけでなく、運営側もそれを参考に更なるサービスの質の向上が図れるよう、現行法令を適切に運用し、経営主体にかかわらず、保育所の情報公開を進める。また、第三者評価については、ガイドラインを作成し、その取組を促進する仕組みを整備する。
就学前児童の保育と教育の多様なニーズに的確に対応できるよう、保育所と幼稚園等の教育施設との施設の共用化(文部省・厚生省による平成10年の指針)を促進するとともに、保育所と幼稚園の連携事例を情報提供することなどにより、運営や施設利用の面で一層連携を深める。ただし、運営においては現在の親の就労や子育ての実態に即し、社会のニーズにこたえるものとなるようにする。
また、多様な保育ニーズにこたえる観点から、幼稚園における預かり保育の拡充を図る。
平成9年の児童福祉法の改正や平成11年の保育所保育指針の改訂等を踏まえ、地域の子育て支援など時代の要請に沿った資質を持つ保育士を養成することができるよう、保育士養成所(短大、大学、養成施設)における養成課程等について見直しを行った。
さらに、養成課程の見直しと併せて、保育士の卒後研修についても、保育士の質を維持・向上するといった視点から、研修内容をインターネットで提供すること等により、現場の保育士が学びやすい仕組みを構築した。
また、保育所に配置すべき保育士定数について、平成10年から一定範囲で短時間勤務の保育士を充てることを認めたが、その後も、延長保育、休日保育、年度途中入所など、保育需要が多様化かつ増加しており、これらに保育所が柔軟に対応できるようにする必要がある。これは、いったん離職した保育士が再び保育現場で活躍できる環境を作ることにも資するものであり、現在、短時間勤務保育士は2割以内としている規制の一層の緩和について検討する。
なお、第153回国会において、児童福祉法の改正が行われ、認可外保育施設を含めた保育の質の向上のため、保育士の資格を国家資格とし、業務の定義、知事による試験・登録の実施等に関する規定を整備し、保育士でない者が保育士を称することを禁止する(保育士の名称独占等)等の措置を講じた。
児童福祉法の改正により、平成10年4月から、保護者が保育所を選択して利用できる仕組みに改めるとともに、保育所も保護者の依頼を受けて、申込書の提出を代行できることとした。しかしながら、市町村が審査事務を行い最終調整の上、保育所への入所決定を行う仕組みは、改正前の制度と変わっていない。
こうした新しい入所方式の実施状況、待機児童の状況、介護保険や障害者支援費方式の実施状況等を踏まえ、長期的には、保護者が直接保育を希望する保育所に申し込み、当該保育所が審査・決定を行うことができないか、その可否について検討する。また、利用者と施設との直接契約を検討する際には、保育の質の確保に留意しつつ、保育所に対する補助ではなく、利用者への直接補助方式の導入ができないか、その可否についても長期的に検討する。
大都市周辺部を中心に、小学校低学年を中心とする子どもたちの放課後の受入体制が不足している。このため、放課後児童クラブや地域のすべての児童に居場所を確保する事業など、放課後児童の受入体制を計画的に整備する。その際には、学校の余裕教室等も活用し、また、小規模な放課後児童クラブ(10人以上20人未満)への支援、長時間の開設や学校週5日制に対応した土日祝日の開設の促進を図る。
これまでに、社会福祉法人に関する規制緩和が進めてきた結果、社会福祉施設の整備に当たっては、都市部等の用地取得が困難な地域では、借地も認めている。また、限られた範囲内ではあるが、介護報酬に基づいて運営される社会福祉法人については、施設整備に伴う融資の返済に充てることも容認している。
こうした既に行われた規制緩和措置について、地方公共団体に対し一層の周知徹底等を図る。
さらに、今後とも、担当行政部門間の円滑な調整を図り、行政の不整合をなくし、社会福祉法人のより効率的な運営や、そのサービスの供給拡大を図る。
社会福祉法人の在り方について、現行の方式だけでなく、多様な形態の社会福祉法人の在り方について検討を開始する。【直ちに検討を開始し、平成13年度中に結論】
また、社会福祉施設の運営費の剰余金については、依然として厳格な使途制限が存在しており、業務の性格に応じて、社会福祉法人の在り方を踏まえつつ、検討する必要がある。
現在、社会福祉施設の運営費については、施設利用者の生活費と施設職員の人件費及び施設管理費から構成され、原則として公費により賄ってきたが、この剰余金の使途については、一定の範囲内で、引当金等として積み立てることを認めている。また、保育所については、これを特例的に土地建物の賃貸料等にまで拡大している。さらに、特別養護老人ホームの介護報酬収入について言えば、サービスの対価としての報酬の性格にかんがみ、その使途の制限を基本的に撤廃している。
しかし、運営費の剰余金の使途については、依然として制約が大きいため、関係通知(平成5年)を、例えば、以下の点について早急に検討する。
本部会計への繰入れの対象範囲、人件費・修繕費・備品等購入引当金等の上限
社会福祉事業と公益事業との資金移動や、同一の法人が経営する複数の施設・事業間での運営費の繰入れ
社会福祉法人が本来の施設に加え、公的補助の対象とならない追加的な施設を整備する場合、それを担保に借入れを行うこと
【平成15年度中に結論】
消費者の選択の幅を拡大するとの観点から、社会福祉法人について株式会社並みの公認会計士等による会計監査等の一層の普及を図るなど、情報公開のための基準の強化を図る。また、社会福祉法人の公益性にかんがみ、収支決算書、事業報告書、監事の意見書等は、インターネット上での公開を促進する。
市区町村社会福祉協議会は、社会福祉施設、民生委員、ボランティア等の参加を得て、地域福祉の実施主体としての役割を果たしてきた。また、介護サービスが未整備な公的福祉の時代から、自らサービスを実施する事業型社会福祉協議会の取組を進めてきた。
また、社会福祉協議会においては、サービス利用者を支援する地域福祉権利擁護事業や利用者保護のための苦情解決について、第三者から構成される運営適正化委員会を設置して行っており、高齢者等の権利擁護の役割を果たすこととしている。
平成12年に改正された社会福祉法は、市区町村社会福祉協議会が、地域福祉の推進のための中心的な役割を担うことを明確にした。このため、社会福祉協議会については、他の民間事業者、社会福祉法人では行いにくいサービスについて、重点的に取り組んでいく役割を担うものとする。
なお、在宅福祉サービスの実施に当たっては、公的助成のみに依存することなく、当該地域におけるサービスの実態を踏まえて、ほかの事業主体の参入による競争を妨げることのないよう、適切な運営に努めるよう、周知徹底を図る。
労働者の就業機会を拡大するためには、能力開発を促進し労働者のポテンシャルを向上させることが効果的である。今般、教育訓練給付制度については、大学・大学院等における高度な社会人向け教育訓練コースの指定拡大、職業との関連性確保等による講座の重点化等講座指定の在り方の見直しを図ったが、労働市場全体のポテンシャル向上という見地からは、制度創設以来の運用実態等を踏まえ、支給対象者の範囲なども含め、教育訓練給付制度等の在り方についてさらに検討する。
また、今後においても、キャリア・カウンセリングや職業能力評価制度の拡充、資金の貸付制度等の活用の促進等、個人の自発的な能力開発に対する支援を強化する。
求職者からの手数料徴収の禁止は、我が国が批准するILO第181号条約にも定められた原則であり、一面で労働者保護に資するものではあるが、無料原則を貫くことは良質な求職者向けのサービス提供を妨げる面もある。多様な求職者のニーズに合致した職業紹介サービスを事業者が幅広く提供できるよう、求職者からの手数料徴収をILO第181号条約と職業安定法(昭和22年法律第141号)に定める例外の範囲内(求職者の利益となる場合には例外を認める)において可能な限り認める方向で、省令改正を行う。具体的には、既に手数料徴収を認めているモデル、芸能家に加え、特に、いわゆるヘッドハンティングの対象となるような求職者、例えば一定以上の収入を得られる経営管理者層・プロフェッショナル等の求職者から徴収する手数料についてはその規制を撤廃する。
求人企業から徴収する手数料は、求人企業と紹介会社との間で締結される企業間契約の問題であり、労働者保護の観点からその上限を規制すべき積極的理由はないとの意見もあり、求人企業から徴収する手数料の上限に係る現行の大臣基準の廃止も含め検討し措置する。
その際、常用目的紹介(当初の有期雇用に引き続き、求人者、求職者の合意を条件に「期間の定めのない雇用」を成立させることを目的として行われる職業紹介)が実施可能であること及びその方法について明確化を図る。
職業紹介制度については、改正職業安定法施行3年後(平成14年12月)の見直し規定にかかわらず、調査検討を開始したが、学校等以外の者の行う無料職業紹介事業の許可制については申請者の存立目的、形態、規約等から必要かつ適当であると認められる範囲の職業紹介を行うものであることを許可要件とする等、裁量行政の余地を残しているという点で問題があるとの指摘も踏まえ、許可制を届出制に改め行為規制(事後規制)に徹することも視野に入れて検討を行い、可及的速やかに所要の法案を国会に提出する。
また、昨今の深刻な雇用情勢の下では、国・地方・民間等あらゆる機関の職業紹介能力を十分に活用する必要がある。地方公共団体が行う無料職業紹介が「事業」として行われるものでない場合には、従来からもこれを禁止せず、公共職業安定所からの求人情報の提供等の支援を行っており、引き続き、地方公共団体が必要に応じて行う無料職業紹介については、より円滑にこれを行うことができるよう更なる支援の強化を図る。
自ら求人・求職を受理せず、求人・求職の申込みを勧誘する業務等、職業紹介事業の「付帯業務」のみを行う事業は、職業紹介事業の許可・届出を必要としないが、許可・届出を必要とする求人・求職の受理と、これを必要としない求人・求職の申込みを勧誘する業務等との境界が明確でないとの指摘もある。職業紹介事業者が許可事業所を持たない地方においてもUターンの求人開拓等を円滑に行うことができるよう「付帯業務」の定義を明確化する。
特定求職者雇用開発助成金を始めとする雇用関係助成金については、公共職業安定所の紹介要件を緩和し、都道府県労働局長への届出により、民間の職業紹介事業者の紹介による雇入れも支援対象とする措置を講じたが、不正防止にも留意しつつ、今後とも、要件緩和の趣旨・内容等の周知徹底を図る。
なお、こうした助成金の在り方そのものについても、費用対効果の観点からその見直しを検討する。
また、雇用保険法(昭和49年法律第116号)に定める就職促進給付のうち再就職手当の一部及び常用就職支度金についても、不正防止等の観点から公共職業安定所の紹介を支給要件としているが、厳しい雇用保険財政に留意しつつこれを緩和することの可能性も含め、その在り方について検討する。
職業紹介制度全体について開始された調査検討において、下記の項目についても検討を行う。
職業紹介責任者の設置要件(人数)の見直し
その際、責任の所在を明確にするためにも、職務内容の見直しを前提に、1事業所につき1人とする方法も含め検討する。
人事異動の都度必要とされる同責任者の変更手続の簡素化
講習制度について、その在り方及び講習内容の見直し
国外にわたる職業紹介に係る許可申請要件の緩和については、相手先国の関係法令及び日本語訳の収集手続を簡素化する。
職業紹介制度全体の検討において、委託募集の許可制については、平成11年の法改正の施行状況、諸外国の状況等を踏まえ、許可制の在り方について検討を行う。
また、その際、労働者募集の規制に関する抜本的見直しについても留意する。
本年9月に策定した改正雇用対策法に基づく「指針」においては、求人企業が募集・採用において年齢要件を課す場合にはその理由を明示することを求めており、年齢制限に関して一定の対応を図った。当面は当該指針に関する指導の徹底を図るとともに、適宜指針において年齢上限の設定を認めている例外規定の妥当性についても検討する。さらに、中長期的には、法律によって、例えば年齢上限の設定を行う企業に対してその理由を説明する義務を課すこと、あるいは年齢制限そのものを禁止することについてもその可能性を検討する。なお、公務員については率先して年齢制限の撤廃を検討する。
また、労働者派遣法(昭和60年法律第88号)に基づき、労働者派遣の際に派遣元が派遣先に「派遣労働者の年齢及び性別」を通知しなければならないと省令で定めているが、法令遵守のため特に必要と考えられる場合にのみ通知義務を課す方向で、省令を改正することを検討する。
募集・採用においては、人種・信条・社会的身分を理由とする差別禁止の法制化を検討することも必要である。労働基準法(昭和22年法律第49号)第3条は国籍・信条・社会的身分を理由とする労働条件の差別を禁止しているが、その「労働条件」には採用を含まないというのが現在の一般的な考え方である。
しかしながら、男女雇用機会均等法(昭和47年法律第113号)の強化や雇用対策法(昭和41年法律第132号)の改正等、募集・採用についても法規制の対象とする考え方が次第に広まりつつある。また、経済のグローバル化が急速に進む中、従業員の構成や人種や宗教等にとらわれないものにしていこうとする動きも見られる。人権擁護推進審議会による「人権救済制度の在り方について」の答申も、人種・信条・社会的身分などを理由とする雇用差別に対する人権救済制度の整備について言及している。こうした時代の変化をも踏まえつつ、募集・採用差別をより広く制限・禁止する方向で法制度の整備を行う。
労働者派遣制度については、昨今の雇用情勢の急速な変化を踏まえ、労働者の働き方の選択肢を広げ、雇用機会の拡大を図る等の目的から、派遣事業許可制度の在り方、派遣期間の延長や「物の製造」の業務の派遣禁止の撤廃等を含めて、法施行3年後(平成14年12月)の見直し規定にかかわらず、労働者派遣法の見直しに向け既に開始している調査・検討結果を踏まえ、可及的速やかに所要の法案を国会に提出する。
その際、派遣労働者にも、他の労働者と同様に職業選択の自由が認められるべきであり、就くことのできる職種(業務)や働くことのできる期間が制限されていることは問題があることから、対象業務や派遣期間の制限については、これを原則として撤廃することが望ましいとの考え方に留意する。
また、法改正の検討時には、派遣労働者の声に留意する。
本来常用雇用代替の防止を目的として派遣期間を1年に制限することに合理性はないとの指摘もあり、これを撤廃することも含め検討する。その際、派遣期間の制限については、旧適用対象26業務と同様の取扱いとすべきであるとの指摘があることにも留意する。
なお、第153回国会で成立した「経済社会の急速な変化に対応して行う中高年齢者の円滑な再就職の促進、雇用の機会の創出等を図るための雇用保険法等の臨時の特例措置に関する法律」(平成13年法律第158号)は、その内容が45歳以上の中高年齢者を対象とした派遣期間の延長にとどまる限定的なものとなっているが、現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、その確実な施行を図る。
派遣労働の対象となる業務については一層の拡大を図るべきであるが特に以下の点について見直しを図る。
現行派遣法は、附則において、当分の間「物の製造」の業務について派遣事業を禁止しているが、製造業務の派遣事業に係る他国の状況も踏まえながら、これを解禁することも含め検討する。
現下の深刻な雇用情勢にかんがみ、上記の法改正に至るまでの緊急措置として現在3年の派遣が認められている業務(旧適用対象26業務)の範囲を拡大する等、法改正を必要としない見直しについては今年度中に検討・結論を得る。
その際、本計画において「営業や販売等、専門性の高い業務について、旧適用対象業務(いわゆる26業務)の範囲を拡大することにより3年程度の派遣を認めること」について調査・検討を行うこととしている(当初計画・雇用・労働(3)ア(3)c)ことにも留意しつつ、検討を行う。
紹介予定派遣の円滑な運用を妨げている派遣先による派遣労働者を特定することを目的とする行為の禁止等については、平成13年9月に求人・求職の意思等の確認と求人条件等の明示の行為が認められる期間を、派遣就業終了予定日の1週間前から2週間前に前倒しする措置等を採った。
しかしながら、紹介予定派遣を通常の派遣と同様の規定で律することには限界があり、実態調査等を踏まえ、紹介予定派遣の円滑な運用を妨げている阻害要因を取り除く方向で、上記労働者派遣法の見直しと合わせて、法制度を含む現行制度の見直しを検討する。
派遣元責任者の選任の在り方について、労働者派遣制度全体の見直しにおいて検討する。
労働者派遣に係る手続の簡素化について、労働者派遣制度全体の見直しにおいて検討する。
派遣先事業主から派遣元事業主への通知について、労働者保護にも留意しつつ、労働者派遣制度全体の見直しにおいて、電子媒体による通知も可能とすることを検討する。
複合業務について主たる業務が旧適用対象業務の場合及び月初や土日のみ等、派遣日数が限られている場合に旧適用対象業務と同様に取り扱うことについて、労働者派遣制度全体の見直しにおいて、その可能性を検討する。
改正労働基準法は、有期労働契約の契約期間を最長3年とする特例を認めているが、60歳以上の高齢者と労働契約を締結する場合を除き、高度の専門的な知識、技術又は経験を有する等の要件が課せられている。
労働契約期間の特例の上限を現行の3年から5年に延長し、適用範囲を拡大する等について、早期の法改正に向けて調査検討を開始したが、働き方の選択肢を増やし、雇用機会の拡大を図るためにも、速やかに検討を進める。【速やかに検討】
また、当面の措置として、大臣告示によって定められた専門職の範囲については、その範囲を一層拡大する方向で見直しを行う。【平成13年度中に措置(速やかに実施)】
労働に対する価値観の多様化に対応して、労働者がより創造的な能力を発揮できる環境を整備する観点から、裁量労働制を拡大する必要がある。
専門業務型裁量労働制については、当面の措置として、研究職、SE、放送等のプロデューサー、コピーライターなど11の対象業務に限定されているが、これを年度内に拡大する。【平成13年度中に措置(速やかに実施)】
また、企画業務型裁量労働制については、当該制度に係る改正労働基準法施行3年後(平成15年4月)の見直し規定にかかわらず、調査検討を開始したが、実態調査を踏まえ、現行規制のどこに問題があるかを明確にした上で、法令等の改正に向けて速やかに検討を進める。【見直し前倒し】
なお、将来的には、裁量労働制の対象業務の範囲についても、事業場における労使の自治にゆだねる等の方向で制度の見直しを図ることが適当であるとの考え方にも留意する。
労働基準法は労働契約の根幹を規定する基本法として、戦後50年余にわたり累次の改正を経つつ、我が国労働者の生活の安定と生活水準の維持向上を図る上で大きな役割を果たしてきた。しかし経済社会の構造変化によって、雇用の在り方にも大きな変化が生じている。
こうした構造変化を踏まえ、高度の専門能力を有するホワイトカラー層などの新しい労働者像にも適切に対応した、新たな時代の雇用関係を規定する基本法とするために労働基準法の見直しを検討する。
裁量労働制の本質は「業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し当該業務に従事する労働者に対し具体的な指示をしないこと」にあることから、中長期的には、米国のホワイトカラーエグゼンプションの制度を参考にしつつ、裁量性の高い業務については適用除外方式を採用することを検討する。なお、その際、現行の管理監督者等に対する適用除外制度の在り方についても、深夜業に関する規制の適用除外の当否を含め、併せて検討する。
また、解雇について、労働基準法は予告手続等を規定しているだけで、解雇そのものは、現在のところ、いわゆる解雇権濫用法理を始めとする判例法で規制されている。しかし、解雇の有効・無効に関する労使双方の事前予測可能性を高めるためにも、解雇の基準やルールについては、これを立法で明示することを検討する。
就労形態の多様化に対応した社会保険制度の改革等を速やかに検討する必要がある。パートタイム労働者と派遣労働者に対する雇用保険の適用拡大については、平成13年4月に措置したが、年金・医療保険においても、パートタイム労働者への適用拡大について早急に検討する。派遣労働者については就業実態等を踏まえた健康保険組合の設立を認めるとともに、適用基準の明確化等を行うことについて早急に検討を進める。また、雇用保険法は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を速やかに促進する。
また制度が働き方の制約とならないよう、その中立化を図る必要があり、例えば企業倒産・転職時における企業年金のポータビリティの更なる拡大や退職金に関わる制度・枠組み等の見直しについて検討する。
なお、女性の就業意欲の阻害要因と考えられる配偶者手当などの制度については、民間部門における手当廃止や見直しの動きに後れることなく、公務員についても、今後男女共同参画の観点から同様に見直す。
大学教育の活性化を図るためには、教育機関や教員が互いに質の高い教育サービスの提供に向けて競い合うとともに、大学が自らの判断と責任により運営を行う自主性自律性を向上させることが必要である。この観点から、大学の提供する高等教育サービスに関する組織である学部や学科の編成は、大学の主体的な判断により機動的になされることが望ましい。
現在、大学の設置、学部や学科の設置、その定員の変更を行おうとする場合には、文部科学大臣が定める大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)を満たし、大学設置・学校法人審議会への諮問答申を要することとされている。
このため、大学・学部等の設置、定員の変更の認可に当たっては、文部科学大臣は学生教官比率、学生校舎面積比率など大学の質の確保のために最低限必要な客観的基準を明らかにするとともに、現在、大学設置基準や大学設置・学校法人審議会大学設置分科会長決定による審査基準など、様々な形式によって重層的に規定されている基準について、文部科学省令等によりその一覧性を高めるよう整理する。
その際、それぞれの基準の必要性等を十分に吟味し、例えば、施設設備や教員組織の基準において不必要なものは廃止するなど、全体として最低限必要な基準となるよう厳選する。
また、大学設置・学校法人審議会における審査事項や手続の在り方についても、上記の基準の厳選に応じて、軽減、簡素化を図る。
さらに、学部の下部組織である学科については、届出のみで設置又は廃止を可能とする。
なお、設置後において、基準が満たされなくなった場合には、文部科学大臣による是正措置等を講じるとともに、改善されない場合には閉鎖を命ずることができるようにする。
「平成12年度以降の大学設置に関する審査の取扱方針」における「大学、学部の設置及び収容定員増については、抑制的に対応する」という方針を見直す。
校地面積基準や校地の一定比率自己所有規制の緩和を速やかに検討するとともに、財務情報の公開を一層促進する。
「平成12年度以降の大学設置に関する審査の取扱方針」における、工業(場)等制限区域及び準工業(場)等制限区域についての大学等の設置及び収容定員増に対する抑制的取扱いを廃止する。
大学は学生や社会のニーズにこたえた高等教育サービスを提供する責務を果たすために、自ら不断の努力を行わなければならないが、厳しい事前審査を行う一方で、事後的な監視点検が不十分であるとの批判を招かないよう、大学が自らの判断と責任において、質の高い教育研究活動を行うことができる競争的な環境に向けて、大学の設置等に関する規制を一層緩和する一方で、継続的な第三者による評価認証(アクレディテーション)制度を導入し、その体制を整備する。
大学の教育研究水準の維持向上の観点から、設置認可を受けたすべての大学に一定期間に一度、継続的な第三者による評価認証(アクレディテーション)を受けてその結果を公表すること等を義務づけるなどの評価認証制度を導入する。併せて、評価認証の結果、法令違反等の実態が明らかになった場合には、文部科学大臣が是正措置等を講じることができることとする。
なお、評価認証機関に対し、学識経験者等によって策定された評価のガイドラインに従って適切に評価を行うことが可能かどうかについて、文部科学大臣が認定を行うものであり、不適切な評価認証を行ったような場合には、当該認定を取り消す。また、互いに質の高い評価認証サービスを提供することを競い合う環境を整えるため、株式会社も含め設立できることとし、特定の機関の独占としない。さらに、工学教育や医学教育などの専門分野別、高度専門職業人養成や通信制などの各種テーマ別の評価認証についても、その普及、支援を図る。
大学の設置等に関する規制を一層緩和していくことにより多様な高等教育サービスが提供されることとなるが、サービスの需要者である国民にとっては、これまで以上に自らの判断と責任により選択していくという意識を持つことが必要になってくるものと考える。
大学が廃止されることとなる場合、学生の就学機会の確保を図るため、適切なセーフティネットの整備を検討する。
大学における研究体制を充実させるためには、様々な競争的資金の拡充を進めていくことが必要であり、その際、研究機関が研究資金を多く持ち込める研究者の採用を競争的に進めるなど、競争的環境の整備を推進する。同時に、競争的資金による、優れた研究者や博士課程学生を十分支援できるような具体的な方策を進める。
国立大学の法人化を検討する際には、寄付金、受託研究等の扱いが国公私の大学で相互に競争的になるようにすることを検討する。
いわゆる招へい型を始めとした任期付き教官に対して給与法上の特例措置によって能力・実績に応じた給与等の処遇の改善が可能となるよう検討し、結論を得る。
運営の効率化の観点から、大学における事務部門のアウトソーシングを大学の判断で自由に行えるようにするなど、大学の組織をより活発なものにするための検討を早急に行い、結論を得る。
各大学において二つ以上の専攻(メジャー)を取得することができるよう、ダブルメジャー制度の導入を行うとともに、ダブルメジャーの導入の促進を図るため、大学におけるこのような取組に対する各種の支援方策の検討を行う。
社会人が正規の学生としてある程度長期にわたって学びながら学位を取得できるよう大学において正規学生としてパートタイム学生を受け入れるとともに、パートタイム学生の導入の促進を図るため、大学におけるこのような取組に対する各種の支援方策の検討を行う。
高等教育機関は、質の高い教育研究を推進するとともに、優れた人材を育成するという使命を果たすべきものであり、教育に対する公的支援全体を見直す中で、高等教育に対する公的支援の充実を図ることが必要である。
こうして充実された公的支援は、決して国立大学というだけで配分されるようなものであってはならず、国公私を通じた競争的環境の中で切磋琢磨しながら発展していくことができるよう、競争的経費の拡充を図る必要がある。すなわち、大学間に一層競争的な環境を整備し、より良い教育研究に対しては資源を重点的・効率的に配分していくことが必要である。
現在の国立大学の予算のうち、教育研究基盤校費については、各大学において配分方法を工夫し、基礎的な教育研究の継続に配慮しつつも、競争的環境の創出について、更なる改善努力を行う。
各大学における個々の教員の目標設定、設定目標に対する評価システムの構築や、実績に応じた評価基準及び審査方法の確立、評価を実行するための大学におけるマネジメント改革、評価結果を適切に反映できる処遇システムなど、各大学において、適切に教員評価を実施する。このため、教員評価を(1)イで示す継続的な第三者による評価認証(アクレディテーション)における評価項目の一つとして取り入れることも検討対象とする。
国立大学を早期に法人化するため、給与、定員、兼職・転職、休職、採用手続などに関して、当該組織が自律的に決定することができる制度設計に向けた非公務員型の選択や経営責任の明確化、民間的手法の導入など平成13年度中に国立大学改革の方向性を定める。
新たなタイプの公立学校である「コミュニティ・スクール(仮称)」の導入については、地域のニーズに機動的に対応し、一層特色ある教育活動を促し、また伝統的な公立学校との共存状態を作り出すことにより、健全な緊張感のもと、それぞれの学校間における切磋琢磨を生み出し、結果的に学区全体の公立学校の底上げにつながることが期待されるものであることから、地域や保護者の代表を含む「地域学校協議会(仮称)」の設置、教職員人事や予算使途の決定、教育課程、教材選定やクラス編制の決定など学校の管理運営について、地域との連携を進め、学校の裁量権を拡大するとともに教育成果等に対する厳格なアカウンタビリティを併せ持ち、保護者、地域の意向が反映され、独自性が確保されるような法制度整備に向けた検討を行う。【平成15年中に措置】
モデル校による実践研究を行うに当たっては、校長公募制の導入、十分に広い通学区域の設定、教員採用における校長の人選の尊重、教育課程、教材選定、学級編制などにおける校長の意向の尊重等の要件を満たすよう努める。【平成14年度中に措置】
近年、国際化、高度情報化、社会の成熟化が進展する中で、学校教育全般について、社会や国民の多様化、高度化する要請に応じた特色ある教育研究の推進が求められているが、それぞれの建学の精神に基づく個性豊かな教育研究活動に積極的に展開している私立学校の役割はますます重要なものになっている。
しかしながら、私立学校の割合は、高等教育と比べて、初等中等教育、特に小学校では圧倒的に少ないのが実情である。私立学校の割合は、大学で74.1%、高校で24.1%であるのに対して、中学校では6.1%、小学校に至っては同0.7%となっている(平成13年5月1日現在)。
私立の小・中学校の数があまり増加しないのは、同教育段階が、国民が無償で教育を受けることのできる義務教育であることが最大の理由と考えられるが、一方で、公立学校における学級崩壊が小学校低学年においてみられるとの指摘もあり、特色ある教育サービスを提供する私立学校に対する需要者側である国民の期待は、特に大都市部において、ますます高まりをみせているところである。
個性豊かで多様な教育サービスを提供する私立学校の設立を促進することは、国民に特色ある教育サービスを提供する機会を増やすのみならず、地域内での学校間競争の活発化を通じて、公立学校(及び既設私立学校)により良い学校づくりを進める契機を与えることも期待できる。
こうした状況を踏まえて、私立学校の参入を促進する観点から、公財政支出の見直しを図る中で、補助金配分に当たっては、児童生徒や保護者のニーズにこたえて優れた教育サービスを提供している私立学校を優遇する方向へ向けていくことが必要である。
小学校及び中学校の設置基準の明確化に当たっては、私立小学校及び私立中学校の設置促進の観点から、例えば、校舎や運動場の面積基準や、合築等ほかの用途との共同使用を認めるなど適切な要件を定める。また、各都道府県の私立小・中学校設置認可審査基準等及び学校法人の設立認可審査基準についても、その要件の適切な緩和を都道府県に対し促す。さらに、学校法人の財務情報等の開示を促進する。
私立学校審議会をより開かれたものにするための改革に向けて、構成員・運営を含む私立学校審議会の在り方を検討するとともに、委員名簿や議事概要等については、各都道府県のホームページ等において公開することを促進する。
インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、我が国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する。
学校教育に対する社会的なニーズの多様化に対応し、公立学校システムの多様化と質向上を推し進めるためには、公立学校間の特色が比較され、保護者や児童生徒によって学校が選ばれる環境を作り出すことも一つの重要な方法である。
公立小中学校においては、各学校ごとに通学区域が定められているが、近年通学区域の弾力化を行い、保護者の選択により通学する学校を選ぶことができるようにする動きがみられる。
このため、保護者や児童生徒の希望に基づく就学校の選択を適切に促進する観点から、各市町村教育委員会の判断により学校選択制を導入できることを明確にし、さらに学校選択制を導入した市町村にあっては、あらかじめ選択できる学校の名称を保護者や児童生徒に示し、その中から就学する学校を選択するための手続等を明確にするような観点から、関係法令を見直す。なお、各市町村においては、選択肢の提供の方針・方法や希望の結果として調整の必要が生じた場合の調整の方針・方法は、各市町村の事情を踏まえて決定されるべきであるが、それらについては明示的に情報開示を行うべきである。
学校選択制を導入していない市町村にあっても、指定された就学校の変更を保護者や児童生徒が希望する場合の要件や手続等について、各市町村において明確にするよう、関係法令を見直す。
各学校が特色ある学校づくりを目指し、様々な工夫を凝らしていくことは初等中等教育においても望ましい姿であるが、そこにはサービス供給主体による説明責任(アカウンタビリティ)の徹底と、保護者や地域住民が学校運営に参画しやすい仕組みが存在しなければ、持続した改善への取組とはなりにくい。
このため、地方公共団体に対し、必要に応じて、
学校評議員が一堂に会して意見交換を行うこと、
学校運営の評価に保護者や地域住民等の意見を採り入れるため、学校評議員が学校の評価を行うこと、
市町村教育委員会による学校評議員に対するサポートを充実させること、
学校評議員の学校評価結果や学校評議員の活動に関する適切な情報公開について検討すること、
校長の推薦により市町村教育委員会が委嘱するという学校評議員の選出方法について例えば保護者や地域住民等といった学校評議員の構成などを定め、公表するなど各市町村教育委員会において選出方法の明確化を図ること、
など、学校評議員制度の一層の効果的な活用を図るための工夫を講じることを促す。
「保護者講師」や「地域住民講師」など、保護者や地域住民が学校において授業を行う取組を一層積極的に推進する。
すべての小中学校において教育目標を作成することとなるよう促すとともに、その実現を適切に進めているかどうかについて点検するような自己点検評価を制度化する。
学校が開かれた学校づくりを進め、保護者や地域住民等に対する説明責任を果たすことにより、その信頼を得て、連携協力して教育活動を実施していくためには、学校の教育活動等の情報を積極的に発信していくことが重要である。教育に対する選択の機会が拡大している中で、児童生徒や保護者の選択に際して適切な情報が提供されることが必要である。例えば、学校を選択しようとする際には、当然ながら学校についての教育目標、特色に関する十分な情報が提供されている必要があり、適切な情報がない中で保護者間での評判や風評、あるいは学校施設の新しさなどで選択しているという事態が生じることは好ましくない。
このため、学校の概要(教員数、児童生徒数、校舎面積、教育目標、運営方針、教育計画等)や自己点検評価の結果などとともに、教員の教育方針等の情報発信を促進する。
創造力ある人材を育成するための教育、例えば理数系教育・IT教育・芸術教育・コミュニケーション/言葉教育、等とともに、社会性を身につける教育や勤労観、職業観をはぐくむ教育機会についても充実するよう検討し、所要の措置を講ずる。
下記の視点に留意しつつ、市街地の土壌汚染の調査・浄化等に関する対策を樹立し、法案提出を含め検討し結論を出す。
土壌汚染の調査については、人の健康等への影響、新たな汚染の拡大の防止、土地取引の円滑化等の観点から、有害物質の取扱事業場等について一定の場合に調査を行うことや、土地の開発前等に調査を行うことを検討する。
近隣住民に対する情報開示のため、また、将来の購入者がリスク管理地をつかまされて多額の浄化費用を負担せざるを得ない状況に陥るのを防止するため、汚染地の登録・情報提供の体制を整備する。
土壌汚染の浄化等に関しては、費用負担については汚染者負担の原則を踏まえることとしつつ、一定の場合に原因者、土地所有者等に対策を義務付ける。
対策の発動基準と対策の内容のバランスをとり、土地所有者等に過度に負担とならないよう柔軟に対応できるようにする。
原因者が不明、資力不足等の場合に、対策の全費用を土地所有者等に負担させるのは困難な場合があることから、汚染者負担を原則としつつ、支援措置について、基金の設立や税制等も含めて検討する。
国の制度を制定するに際しては、地方公共団体の条例等について地方分権の趣旨を尊重した上で、国の制度との整合性を確保するように努める。
土地の利用や取引の促進にも資するよう、民事上の損害賠償等の紛争を円滑に解決し、土壌汚染に係る調査や対策の実効性の確保にも資する手段について、既存の制度の活用も含め検討する。
下記により、総合的な対策を実施する。
温暖化防止が社会・経済全体にかかわる問題であり、温室効果ガス(特に二酸化炭素)が国民の生活も含め、あらゆる発生源から生じていることにかんがみると、費用効果性の高い手法を用いることが肝要である。また、地球温暖化は、事業者に対して新事業のフロンティアをもたらすこともあることを念頭に置いて取組を進める。
温室効果ガスの削減技術の導入に当たっては、投資回収に長期間を要する等の理由から進んでいないのが事実であり、導入促進の実効性を高めるため、施策の裏打ちを行っていく。公共交通機関、共同輸送、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)、食品廃棄物リサイクル等の他の政策目的から実施するいわゆる「ノンリグレット対策」について有効な場合はその導入を促進する。
分野別には、交通体系のグリーン化、脱温暖化社会の構築に向けた都市・地域基盤社会整備、ライフスタイルの脱温暖化、非エネルギー起源の二酸化炭素、その他の温室効果ガスの排出削減対策を含む環境保全のための枠組みを推進する。
温室効果ガスの効率的・効果的な削減のために、従来の規制の方式以外に、税・課徴金や排出権取引などの市場メカニズムを通じた効率的な経済的手法、自主的取組を組み合わせていくことが重要であり、これらの手法の具体的な在り方について検討する。この場合、対策を実施した結果について評価の上、必要に応じ、対策の追加を図る。
なお、検討に当たっては、現下の厳しい経済情勢にかんがみ、経済界の創意工夫をいかし、我が国の経済活性化につながるものとするよう配慮する。
新エネルギーについては、新エネルギー等の利用を促進するため、電気事業者に一定量以上の新エネルギー等を変換して得られる電気の利用を義務づけること等の措置の法制化に向けた取組みを進めているが、このような措置も含め各種新エネルギー対策を強力に推進する。
クリーンエネルギー自動車を含む低公害車、低燃費車について、普及を推進するとともに、低コスト化、性能面の向上に向けた技術開発等を推進する。
経済的負担を課す措置については、その有効性についての国民の理解の進展、措置を講じた場合の環境保全上の効果、国民経済に与える影響等についての調査研究結果、諸外国における取組の現状等、措置を取り巻く状況の進展も踏まえ、幅広い観点から検討する。
技術開発は、それによるブレークスルーによって大幅なエネルギー効率の改善が図られる可能性の高い対策であることから、引き続き推進する。その際、産学官が適切な役割分担を図りながら、有機的・体系的に技術開発に取り組む。
二酸化炭素の吸収源として大きな役割を果たす森林については、地球温暖化の防止や生態系の保全など森林の有する多面的機能が持続的に発揮されるよう、適切な森林整備・保全を進める。
ガス管敷設に係る規制の在り方等については、安全の確保等を大前提とし、欧米の状況等も念頭に置きつつ、以下の具体的事項について検討する。
埋設深度について、2MPa以上の高圧で市街地の道路下に埋設する場合であっても、当該道路の舗装厚や他の埋設物との離隔距離等に係る一定の基準に照らし支障なき場合には、1.8mではなく1.2mで足りることとする。【平成14年度中に措置(検討)、平成15年度中に措置(結論)】
将来的にはガスパイプラインが海底に敷設されるケースも想定し、海底敷設に係るガス管に係る材質、設計荷重、許容応力等、技術基準の在り方についても、欧米の状況等も念頭に置きつつ、安全の確保を前提として検討する。【平成14年度中に措置(検討開始)】
公益特権を持つパイプライン事業者によるガスパイプライン海底敷設に係る公益特権の行使が想定され民間主体相互の交渉では漁業権等に係る調整ができない場合には、客観性・透明性が十分に確保されるように当該調整の在り方について検討を行う。【実際上の必要が生じた場合に検討】
大企業のみならず中小企業への環境報告書及び環境会計の普及を図るべく、環境報告書及び環境会計に係るデータベースを構築し情報提供を行うなど、普及促進のための行政支援策を講ずる。【平成14年度中に措置】
環境報告書及び環境会計がもたらす環境保全上の利益にかんがみ、これらに取り組む企業への何らかのインセンティブ付与の方策やこれら企業が社会から適正な評価が得られ、結果として企業の競争力の向上につながるような方策など、普及促進のための新たな枠組みや普及定着に向けた政府目標の設定について検討し結論を出す。【平成14年度中に措置】
環境会計に期待される内部機能にもより一層着目し、原価計算、マテリアルフローコスト会計、業績評価への環境項目の導入など環境管理会計手法について検討し結論を出す。【平成13年度中に措置】
環境報告書の記載内容となる環境会計及び環境対策の評価結果(環境パフォーマンス情報)の更なる改良を行う。具体的には、環境会計ルールの明確化のため環境保全対策に係る効果の体系付け等の理論的課題に対して検討を加えるとともに、環境パフォーマンス情報の集計方法を体系化する等により、実務上の利便性を向上させたガイドラインの改訂を行う。そのため、業種間の比較がより一層的確かつ容易なものとなるよう項目の共通化を図りつつ、業種別の比較可能性の観点から更に検討する。
誤った情報による誤解を未然に防止する必要性から、EUでは「環境管理・監査制度(EMAS:Eco-Management and Audit Scheme)」による検証制度が構築されている。国際的な動向を踏まえ、我が国においても第三者機関による監査制度の在り方も含めた環境報告書及び環境会計の内容の信頼性確保を図るための枠組みについて検討し結論を出す。
その際、以下の点に留意の上、検討を行う。
監査実施者の専門家資格の創設あるいは公認がなされるようにするとともに、その養成や環境変化に伴う不断の資質向上について策を講ずる。なお、専門家資格を創設する場合には、資格に期限を設定するとともに、国際標準化機構(ISO:International Organization for Standardization)同様に民間の認証機関とし、公認の資格の場合は現在監査を実施している公認会計士なども可能とする。
可能な限り、監査手法や監査範囲、監査基準について標準的なものを明らかにする。
第三者監査に当たっては、当該報告書を作成する者にとって、多大なコスト負担とならないことに留意する。
企業に不利な、いわゆるネガティブ情報は消費者・投資機関・地域住民等にとって重要な情報となり得ることから、これらについても環境報告書及び環境会計に盛り込む。
記載内容が虚偽であった場合の行政の対応についても検討する。
都市のヒートアイランド現象の実情にかんがみ、下記のような対策を構ずる。
現在、各種の対策が関係各省、地方公共団体等において実施されているが、これをより効果的なものとしていくためには、従来のように、対策実施主体が個々別々に対応するのではなく、各種の対策が相互に連携し、体系立って実施される必要がある。
このため、環境省、国土交通省、経済産業省等関係省庁からなる総合対策会議を設置するなど、総合的な推進体制を構築するとともに、ヒートアイランド現象の解消対策に係る大綱の策定について検討し結論を出す。
ヒートアイランド現象については、地域により、排熱の原因別の寄与度や原因の相互関連性、地形等の差異があると考えられるため、対策の更なる推進のためには、更に各原因間の関連性、寄与度等複雑なメカニズムを更に解明していく必要があり、そのための調査・分析を進める。
ヒートアイランド対策を考える上で、都市の形態も重要となる。例えば、都市内の一定地域においては高層化を図りつつ一方では中層・低層地域を別途確保することにより海や周辺地域からの風が都市内を通るようにする「風の道」を確保することや、高層化によりビルディングの建築面積を小さくする代わりに緑地帯を増やすこと、中心地域の高層化により都市の平面的な広がりを小さくして移動・物流に係るエネルギーコストや配電ロスを節約し排熱を減少させることなどにより、ヒートアイランドの緩和が図られることもあると考える。
このようなことから、2で述べたようにヒートアイランド現象のメカニズムを解明していく必要があるが、国土交通省において都市政策の観点からもヒートアイランド対策について検討していく。
生物多様性国家戦略を「人と自然との共生」を図るためのトータルプランとするため、次のような要素を取り込んだものに改定する。
奥山的自然地域を広くカバーしている自然公園を国土における生物多様性保全の屋台骨として積極的に活用する。
我が国の国土面積の7割近くを占め、国土の保全・水源のかん養・自然生態系の維持といった公益的な役割を果たしている森林の機能の持続的発揮を図る観点から、機能に応じた適正な整備・保全を行う。
都市と奥山の中間地域としての里地・里山の生物多様性保全上の位置付けを明確にする。その上で、NPOの活動の支援、事業配慮の徹底など、多様な手法を有機的に組み合わせて目的を達成する有効な方策を講ずる。
海岸・浅海域等の水系域や都市域など既に自然の消失、劣化が進んだ地域では自然の再生や修復が重要な課題である。自然の再生、修復の有力な手法の一つに、地域住民、NPO等多様な主体の参画による自然再生事業があり、各省間の連携・役割分担の調整や関係省庁による共同事業実施など、省庁の枠を超えて自然再生を効果的・効率的に推進するための条件整備が必要である。このため、関係省庁からなる自然再生事業推進会議を設置するなど、関係省庁の連携体制の一層の強化を図る。また、自然再生事業の推進に当たって、調査計画段階から事業実施、完了後の維持管理に至るまで専門家の参画や地域住民、NPO等の参画を得るためには、多様な仕組みを活用することが重要であり、例えば、維持・管理業務についてアドプトプログラム(ボランティア活動を行う企業や市民団体などが担当エリアを決め河川等の清掃・美化等を行う制度)の活用やNPOへの委託等により、きめ細かな市民ニーズへの対応を図る。また、再生事業や修復事業を行うに当たっては科学的検討を基にした具体的な目標を掲げるとともに、自然環境の復元状態をモニタリングしながら、その評価を事業にフィードバックするなど科学的な計画・手法に基づき実施する。
自然再生事業や小中学校の学校教育等の場において、身近な自然の理解、保全のための学習の機会を広げる。
自然環境の保全に係る基礎調査の充実(国設のモニタリング拠点の整備、浅海域の生物・生態系情報のデータ整備、アジア地域の自然環境の基礎的データの充実など)を図る。
絶滅のおそれのある種の保全については、現状においてもアセスメントや各種施策の中で予防的な対策を講じているところであるが、自然再生事業の中に位置付けたり、里山・里地での生物多様性指標として取り上げて回復計画を実行するなど、現状の緊急避難的対策から予防的対策へとより一層重点を移す。
外来種による生物多様性の侵食、生態系、人の健康・生命や産業への悪影響を回避するため、「人と自然との共生」を図る観点から外来種問題に係る仕組みを整備する。
「人と自然との共生」を図るための国家戦略の実現を担保するため、「生物多様性国家戦略」を定期的にフォローアップし、評価を行う。
自然公園を生物多様性保全の屋台骨として積極的に活用するために、従来の風景保護に加え、生態系の保全と野生生物保護の機能を自然公園法(昭和32年法律第161号)に位置付ける。
早急な対応が望まれる外来種問題については、既存の制度では不十分であり、「人と自然との共生」を図る観点からの制度の構築が必要であり、実効ある制度の構築に向け法制化も視野に入れて早急に検討を開始し結論を出す。
なお、上記検討に当たっては、外来種による生物多様性の侵食等の影響を回避するために必要と考えられる以下のような対策、制度の実効性の確保に不可欠であるリスク評価や水際対策等に必要な体制整備の観点も含めて議論し結論を得る。
外来種導入に関するリスク評価及びこれに基づく制限
危険性が高いと思われる種について、野生化の可能性や野生化した場合の生態系、野生生物種、産業、人の健康等への影響を科学的に評価を行う。
その上で、危険性が高いと評価されたものに対しては、輸入、利用等に関し一定の制限を課す。
外来種の管理を適正に行うための対策
リスク評価の結果、適正な管理が必要と評価された種について、当該外来種を所有、利用、管理する者に対し、遺棄・放逐の禁止、逸出の防止、登録義務等を課す。
外来種の駆除や制御に関する対策
問題外来種の駆除事業を実施している自治体、NGOなどに財政的支援を行う仕組みが必要であり、問題外来種の野生化をもたらした責任を有する者等に対し、駆除と制御(増殖・蔓延・影響の抑制)に係る一定の役割を課す(定着した問題外来種の駆除、在来種の利用促進事業に係る基金への出資など)。
在来種の産業利用の促進
在来種の産業利用に係る研究・開発を促進し、外来種利用産業における在来種利用を促進する。
(※)廃棄物の定義・区分の見直しについては14年3月までに中間とりまとめを行う。また、拡大生産者責任の対象の拡大等、リサイクル市場の形成支援及びリサイクル施設の建設促進についても14年3月までに検討し、廃棄物・リサイクル体制の再構築を図る。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)を始めとする諸制度について、以下の検討を行い結論を出す。
廃棄物の定義・区分、廃棄物処理に係る業、施設許可の見直し等廃棄物の定義、一般廃棄物・産業廃棄物の区分の見直しについて、その処理責任の在り方と併せて検討を行うとともに、併せてリサイクルに係る廃棄物処理法上の業及び施設の許可や手続の簡素化に関し早急に見直しを行う。また、廃棄物処理法及び建築基準法(昭和25年法律第201号)の施設許可の運用における住民同意に関する調査を行った上で、必要な運用の適正化を図る。
拡大生産者責任、デポジット制の導入等
廃棄物の発生の抑制、リサイクルしやすい製品の生産等に係る拡大生産者責任につき、従来導入されていなかった分野について導入を図るとともに、既に導入されている分野については、その強化を図ることを検討する。また、デポジット制の導入及び3Rの促進に関する規格や基準(環境JIS、国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号)の情報提供措置等)の早急な拡大についても検討する。
不法投棄跡地等の修復対策の強化
不法投棄跡地等の修復対策に関し、費用負担、責任分担を明確化し、技術開発の促進や環境修復ビジネスの促進のための措置等を講ずる。
以上においては、廃棄物処理法を始めとする諸制度について、国、地方公共団体、排出事業者、製造業者及び排出者の適正な役割分担に十分留意する。
不動産市場の国際化や不動産金融市場の成長、さらには、国民の不動産の品質に対する関心の高まりに伴い、不動産に関する正確かつ詳細な情報に対するニーズは著しく高くなっている。しかしながら、各種不動産関連情報は、公共部門等に蓄積されているものの、十分に開示、活用されているとは言い難い。
そのため、国民からの要請に応じて適切な形で提供できるような仕組みを早急に検討し、不動産関連情報を開示していくことが必要である。
具体的には、不動産に関するインデックスを作成する民間主体等が、守秘義務を前提としながら、実売買価格を含む不動産取引事例の情報を十分に活用できる仕組みを整備する。【平成14年度以降逐次実施】
さらに、地価公示価格の透明性及び社会的信頼性を高めるため、取引当事者・取引対象地等が特定されない範囲で、評価に用いた基礎的情報及び評価手続について、閲覧等により一般に公開できるようにするなど、地価公示価格情報の一層の開示を図る。【平成13年度以降逐次実施】
また、固定資産税評価額について、現在自己の資産に関する部分に縦覧が限定されているが、これを他の資産の評価額と比較できるよう、固定資産課税台帳の縦覧対象範囲の拡大を図るほか、更なる情報開示を進める。【第154回国会に法案提出、平成14年度中に措置】
不動産の証券化、企業会計における時価評価の導入等の不動産をめぐる構造変化の下、不動産の鑑定評価に対するニーズが多様化・高度化している。このようなニーズに的確に対応できるよう、収益性を重視した、より精緻な手法や、より詳細な調査等を位置付けた不動産鑑定評価基準への見直しを行うことにより、不動産鑑定士等が依頼者に対するより一層の説明責任を果たすことができるようにする。また、実務レベルにおいて、その基準に基づいた不動産鑑定評価の普及・定着を図る。
不動産流通を活性化させるためには、より透明で公平な不動産取引の確保を図らなければならない。そのためには、不動産関連情報の開示とともに、不動産流通業務の再構築が必要である。
一連の不動産流通業務の中で、中古住宅の耐震性能検査や入居後の定期検査などについては、従来の宅地建物取引業務の範囲を超えるものであり、そのような高度なサービスを望む消費者のニーズに対応できるように、他の専門性を有する組織・専門家との協働を促進することが重要である。
このため、まず、宅地建物取引業者の業務及び責任の範囲を明確にし、その上で、それ以外のサービスの在り方について検討する。
あわせて、複雑化している「重要事項説明」について優先度を考慮して再整理を検討する。
居住用建物について、当事者が合意した場合には定期借家権への切替えを認めることを検討する。また、定期借家契約締結の際の書面による説明義務の廃止、居住用定期借家契約に関して強行規定となっている借主からの解約権の廃止について、その是非を含めて検討する。【平成14年度中に措置(検討)、平成15年度中に措置(結論)】
また、借地借家法(平成3年法律第90号)上の正当事由制度について、建物の使用目的、建て替えや再開発等付近の土地の利用状況の変化等を適切に反映した客観的な要件とすることや、正当事由に関する賃貸人からの立ち退き料の位置付け・在り方について検討する。【平成14年度中に措置(検討)、平成15年度中に措置(結論)】
さらに、長期の定期借家契約の普及を促進する観点から、1か月とされる賃貸に関する仲介手数料について、実態の調査・分析を行い、その在り方について検討する。【平成14年度中に措置(検討結論)】
民法(明治29年法律第89号)第395条の短期賃貸借保護制度については、抵当権に後れる賃借権で事前に抵当権者が合意しないものは競売実施後の存続を一切認めないなど、廃止を基本として検討する。
競売参加者による物件内覧の機会の拡充について検討する。占有の正当性を占有者が挙証できない場合につき占有権原を否定する途を開くことを検討する。
民事執行法(昭和54年法律第4号)の保全処分など占有排除に関する処分については、当事者を確知できなくともその物件の占有者に対して効力が及ぶよう立法措置を検討する。
また、最低売却価額の制度の在り方及び競売物件の瑕疵担保責任の在り方について検討する。
土地情報の基礎である地籍の明確性は、都市再生の円滑な実施の前提条件であることから、その実施率が低い都市部において、一定の目標に向けて計画的集中的に地籍調査を行えるよう、財源確保及び外部専門技術者の活用等執行体制の強化を図る。【平成14年度以降逐次実施】
また、土地境界紛争に関する裁判外紛争処理制度の仕組みについて、総合的な裁判外の紛争処理解決手段(ADR)の制度基盤を整備するための方策(ADRの利用促進、裁判手続との連携強化のための基本的枠組みを規定する法案の提出を含む。)に関する検討を踏まえて、必要な方策を検討する。【総合的なADRの制度基盤の整備に関する検討を踏まえて平成14年度以降措置】
都市再生の分野においては、規制改革に加え、予算、税制を合わせた総合的な取組が極めて重要である。特に、都市の再生のためには、土地の流動化を図ることが必要であり、例えば、多様な主体の不動産証券市場への参加促進による不動産市場の活性化等、投資促進の観点から規制の見直しや、予算、税制の活用を行う。
現行の都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づくマスタープランにおいては、各地方公共団体の判断で、環境負荷の軽減、防災性の向上等の各種の社会的課題を都市計画の目標として定めることができることとされているが、特に大都市地域においては、
高度利用するべきエリア:地下鉄の駅周辺などの高度利用を促進するべき地域については、安全性や都市基盤の充実を条件に、高度利用地区等を活用することにより、高い容積率を認める。
用途を複合化するべきエリア:特別用途地区等を活用することにより、住居、オフィス、商業の複合的利用を認める。
などにより、高度利用するべきところは積極的に高度利用を図ることができるようにすることを基本として、都市の将来像に関するより一層の具体的かつ明確なグランドデザインを広く国民に示す必要性が高い。
そのため、今後大都市地域においては、下記の項目についても明確に位置付けるよう措置する。
都市の骨格・中核となる都市計画道路、大規模公園、緑地等の整備目標年度
都市の過度な外延化の防止、職住近接の実現により、良好な都市環境を形成するための、都市全体と各エリアにおける人口密度(昼夜間人口)、一人当たり都市空間(住宅・オフィススペース)等に関する数値
ヒートアイランド現象の解消に資する、いわゆる「風の道」ともなる主要な緑地の配置の方針、確保目標
新しい時代のまちづくりに対する住民の自発性と責任を醸成し、住民が地区単位等で自律的に計画づくりに参画できるようにすることが必要である。
そのため、住民の意向を尊重し、これを適切に都市計画に反映させるよう、都市計画の提案に係る手続等を整備することについて、第154回国会に法案を提出する。【平成13年度中に措置(検討結論)】
あわせて、都市計画審議会の運営について、都市計画の案の審議が円滑に進むよう、必要に応じ、開催間隔の短縮化、年間開催計画の公表、手続の短縮化等の運用改善に努めるよう措置する。【平成14年度中に措置】
再開発地区計画等の都市計画・建築規制において、現在、都道府県等に容積率規制や斜線制限の緩和等に関する幅広い裁量が認められているが、決定前にその内容を確定的に予測することは困難であり、また決定までに相当の期間を要する。このため、より効率的な事業推進のために可能な事前準備に着手できず、結果的に事業が長期化する要因となっている。民間のまちづくりの意欲を高め、投資を積極的に誘導し、良好な市街地整備を実現するために、都市計画・建築規制の運用に関する基準について、さらに客観性・明示性の高いものとするとともに、容積率規制の緩和等の都市計画等に関する問い合わせについて、都道府県等が一定期間内に回答するような仕組みの導入を図るよう措置する。
現行の敷地単位の建築確認制度では、複数の建築物の計画、既存の建築物との整合等について総合的に審査できないため、街区・地区単位で建築規制を課し、周辺との整合を勘案して緩和や規制を柔軟に行える仕組みについて、第154回国会に法案を提出する。
建築基準法(昭和25年法律第201号)の集団規定をできるだけ仕様規定から性能規定に移行させることについて、第154回国会に法案を提出する。また、移行できない規定についても、その趣旨・目的の明確化や内容の簡明化に努める。例えば、道路斜線制限(道路の幅員による高さの制限)は、道路上の採光等を確保するための制限であり、天空率等を指標として定量的に説明されるものであるが、今後、簡明さの維持という点も十分に踏まえつつ、各種技術進歩を活用し、基本的指標である天空率等の考え方ができるだけ柔軟にいかされるようにする。【平成13年度中に措置(検討結論)】
また、同法の単体規定については、採光に関する規定の合理化について検討を行う。【平成14年度中に措置(検討結論)】
都市計画決定権者が、用途、容積率等に係る規制について、その根拠の説明責任を果たすよう措置する。【平成14年度までに措置】
また、都市計画・建築規制に関する行政事件訴訟について、出訴要件の明確化の観点から、処分性、原告適格等に関する情報提供等ができるようにする。【平成13年度中に措置(検討)、平成14年度中に措置(結論)】
建築規制に関する違反是正の実効性確保のため、行政代執行の積極的活用に向けた違反建築物対策のためのマニュアル策定や運用の徹底のための措置を始め、違反建築物に関する情報開示、賦課金等の経済的なインセンティブ効果のある対策等について、幅広い観点から検討する。
市街地再開発事業の施行区域要件について、耐用年限の3分の2を経過した建築物は、耐火建築物の算定から除外されているが、地震災害に強いまちづくりを推進していく観点からも、この耐用年限の短縮化を図り、施行可能なエリアの拡大を行う。
民間の資金やノウハウを活用し、魅力ある都市の再生や木造住宅密集地域の改善を積極的に推進するため、用地買収型である第二種市街地再開発事業の施行主体として、地方公共団体、公団等の公的主体に加え、一定要件を備えた民間主体も認めることについて、第154回国会に法案を提出する。
第一種市街地再開発事業の権利変換計画の認可について、事業の迅速化を図る観点から、法令等の客観的基準に違反しないと認められる場合には、都道府県知事等は速やかに認可しなければならない旨周知徹底する。
市街地再開発事業に係る工事のために必要がある場合、施行者は土地建物等の占有者に対して明渡しを求めることができ、明渡しがなされない場合、施行者の請求により都道府県知事が行政代執行を行うことができるとされているが、行政代執行が実施されることは極めてまれである。市街地再開発事業の迅速化を図るため、施行者より請求があった場合には、都道府県知事等による行政代執行の的確な実施が確保されるよう、マニュアルの充実等運用の徹底を図る。
同一の街区内で複数の建築物を計画する場合、容積率の適切な配分変更等を円滑に行えるようにするため、一団地の総合的設計制度等を活用するほか、事業計画の変更等によって高度利用地区、再開発地区計画等の都市計画について、内容の変更が必要となった場合において、迅速な手続により行うよう措置する。
地方公共団体による要綱行政については、駐車場や住宅付置義務、負担金や施設提供義務など実質的な強制を行うようなものは、これを条例化することを原則とするとともに、その内容を法令の趣旨に照らし適正なものとするなど、ルールの明確化・客観化を図るよう要請する。
また、要綱による行政は、必要最小限の期間に限ることとし、その目的・意義を一定期間ごとに再検討し、できるだけ縮小することを基本とするよう要請する。
国際的水準の都市づくりを実現するためには、整備が進んでいない都市計画道路について、整備目標年限を定めた上で、その早期達成に努めることが重要である。そのため、公共用地取得に係る財源確保及び執行体制の強化を図る。
都市計画道路等の公共事業の施行に当たっては、予算や実施体制等を総合的に勘案して適切な事業計画を定めるとともに、適切な時期に収用手続に移行することが重要であるため、事業者に土地収用法の事業認定等を適期に申請させるための措置について検討するとともに、事業の進行管理の適正化の観点から、適期申請に資する説明の責任を果たさせることを検討する。また、都市計画事業についても、適切な時期に事業者が収用手続に移行すべきことを明確化し、一定期間内にそれを完了させるための措置について検討する。
電線地中化・ガス管・水道管等の工事で、道路使用・占用許可が1日当たりの混雑を低く保つことを重視しているために、都心の工事期間を長期化し、工事全体の発生させる混雑のコストを高めている場合もあると考える。したがって、道路使用・占用許可は、工事全体が発生させる混雑のコストを引き下げることを考慮して運用されるようにする。
都市における交通渋滞を緩和し、効率的な経済活動を実現するためには、違法駐車問題の解決が重要である。都心部における駐車違反取締りを効率化するため、引き続き当該業務の一部の民間委託等を積極的に推進する。
都心の土地の有効活用のためには、快適に通勤できる乗客の総数を大幅に増やす必要があるため、オフピーク時の運賃を安くし、ピーク時の運賃を高くする「時間差料金制」の採用誘因を鉄道事業者に与える方策を検討する。
(1)安いオフピーク料金を利用した通勤者を増やす。これは特に商業を中心としたサービス業に従事する通勤者を増やすため、都心の活性化にも役立つ。(2)ピーク時の通勤者を他の時間帯に分散させる。現在の大都市の通勤鉄道では、ピーク時間帯の30分から1時間の間に集中している。この料金制は、ピーク時の混雑度を下げ、通勤時間帯を広げる効果がある。すなわち、この料金制度は、混雑時の乗客が発生させる外部不経済効果を内部化させることによって、資源活用の有効化を図れるという公益的な機能を持っている。
首都圏及び近畿圏の既成市街地等における産業及び人口の過度の集中の防止等を目的として、一定床面積以上の工場や大学等の新増設を制限する工業(場)等制限法については、製造業従事者や工場立地件数の減少等産業構造の変化、少子化の進行に伴う若年人口の減少等、社会経済情勢が著しく変化していることを踏まえ、これを廃止するための法案を第154回国会に提出する。
区分所有法の建て替え要件を5分の4以上の合意のみとすることや、隣接敷地との敷地共同化による建て替えや住宅部分以外の床(商業・業務床)の大幅な増加を認めることも含めて、マンション建て替えを円滑に実施するための方策を早急に検討し、平成14年秋までに改正法案を作成する。
区分所有者による良好な居住環境を備えたマンションへの建て替え事業を円滑化するため、法的安定性の確保に留意しつつ、行政庁の認可に基づく法人格を有する建て替えのための団体の設立、抵当権等を含む関係権利が建て替えに伴って円滑かつ確実に再建建物に移行するための仕組みの整備等を内容とする新たな建て替え制度を整備する。
総合設計制度等の容積率特例制度の積極的活用等により既存不適格マンションの建て替えの円滑化を図る。
中古住宅の外装、内装、設備、耐震性能等を第三者である評価機関が買主又は売主に代わって標準化された方法により検査し、その結果を参考とし売買契約や賃貸借契約の締結を判断できるような制度を導入する。
管理組合によるマンションの適正な維持管理を支援するとともに、中古マンションの市場での流通円滑化を図ることを目的として、管理組合及び中古マンション購入者による維持管理等に係る履歴情報の利用可能性を高めるための方策を検討する。
地方公共団体等の公的主体が所有する公営住宅等の用に供する土地が必ずしも有効に活用されていないという実態を踏まえ、PFI事業の積極的推進等により、民間施設も含めた複合・高度利用を推進し、都市を中心とした、公的主体が所有する土地の有効活用を図る。
公営住宅については、真に住宅に困窮している者に的確に供給することが重要であり、入居における資産の考慮も含めた適正な管理や地域の状況に応じた効率的な運営の在り方について検討する。【平成14年度中に措置(検討)、平成15年度中に措置(結論)】
また、公的に家賃の援助を受けている公営住宅入居者の家賃滞納防止のため、家賃を公営住宅の担当部局が家賃援助の担当部局より直接受領する等の関係部局が連携した対策の推進など、公営住宅の家賃の滞納防止を図る。【平成14年度以降措置】
厳正な独占禁止法の執行を図る観点から、現在の独占禁止法の措置体系及び公正取引委員会に付与されるべき権限の在り方についての一体的な検討を開始する。
また、公正取引委員会の体制強化を図るとともに、公正取引委員会の位置付けについて、規制当局からの独立性及び中立性等の観点からよりふさわしい体制に移行することを検討する。
大規模会社の株式保有について、資本の額又は純資産額という形式的な基準による規制は廃止する。
平成9年の独占禁止法改正後の持株会社の実際の状況、経済実態等も踏まえ、過度に持株会社を規制することのないよう、「事業支配力が過度に集中することとなる持株会社の考え方」(持株会社ガイドライン)を見直す。
国及び一定の政府関係法人の工事について、後記 (4)イのような不良・不適格業者の排除及び適正な施工の確保のための措置を強化するとともに、一般競争入札方式の拡大を逐次行う。また、地方公共団体が実施する工事についても、国の動向を踏まえつつ、同様の観点から、一般競争入札方式の拡大を図るよう要請する。
地方公共団体が指名競争入札方式により工事又は製造の請負の契約を締結しようとする場合については、後記 (4)イのような不良・不適格業者の排除及び適正な工事の施工の確保のための措置の強化、審査体制の整備等と並行して、国の工事の場合と同様の低入札価格調査制度への移行等を検討する。この場合、都道府県及び政令指定都市は、他の市町村と比して適正な工事の施工の確保のための措置等が採りやすい実情にあるので、その実施する指名競争入札方式を採る工事については、低入札価格調査制度への早期移行に向けた検討に着手する。
例えば、指名停止措置を行う場合は、一般競争入札においては指名停止期間中は入札に参加させない旨を競争参加資格に明記するとともに、指名競争入札においても、同様に指名基準に明記するなど、競争入札において、一定の悪質な行為を行った者について、その事実があった後一定期間は入札に参加させないこととする。
一般競争入札の対象となるような大規模工事について、長期間にわたる工事に必要なファイナンスが十分できる経営力のある企業が入札に参加する仕組みとして、入札参加時点で入札参加企業にあらかじめ金融機関等による保証を求める制度の導入などの履行保証制度の見直し(履行義務を果たさなかった場合に発注者が被った損害の填補等の在り方を含む。)について早期に検討を開始する。
前記(4)アで述べた競争的環境の一層の整備と並行して、発注した工事の監督や検査について、会計法及び地方自治法施行令の規定の下での監督・検査の外部委託を積極的に活用するとともに、その実施状況を踏まえ、必要があれば更なる監督・検査の外部委託の活用についても検討する。
また、行政改革及び雇用創出の観点も踏まえ、監督・検査の外部委託の積極的な活用を検討する。
政府調達における、事務機器や情報機器のリース契約等(これら機器の保守を含む。)の在り方を改善する観点から、これらの契約等の実態について調査を行う。
司法試験合格者数を、年間3,000人とするため、平成16年にはその達成を目指すべきとされている1,500人程度への増員以降、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、平成22年頃にその達成を目指すべきとされている3,000人程度への増員に向けて計画的かつ早期の実施を図る。
隣接法律専門職種のうち、司法書士(簡易裁判所での訴訟代理権)及び弁理士(特許権等の侵害訴訟での代理権)については、早急に所要の権限を付与するための措置を講ずる。
企業法務等の位置付けについても検討を行い、少なくとも、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者について法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備を行う。
弁護士法第72条について、少なくとも、規制対象となる範囲・態様に関する予測可能性を確保するため、隣接法律専門職種の業務内容や会社形態の多様化などの変化に対応する見地からの企業法務等との関係も含め、その規制内容を何らかの形で明確化する。
会社更生法に関して、更生手続開始の条件の緩和や債権確定手続の迅速化のための見直し等も含めて総合的な検討を行い、会社更生手続が、企業の迅速かつ円滑な事業再建を可能とする透明性の高い手続となるよう会社更生法を改正する。
合理的かつ健全な私法上の事業組織形態の在り方について、私法上の問題点の整理と検討を開始するとともに、併せて税法上の取扱いも検討する。
通常、投資信託は、その購入をした証券会社や登録金融機関を通じて投資家は解約又は売却を行うが、ETF(株価指数連動型上場投資信託)については、個人投資家は取引所等の市場を通じて売買を行う仕組みになっている。このため、投資家がETFの購入や売却を行うためには、市場への売買の取次ぎ等を依頼することになるが、現行制度上、登録金融機関による窓口販売は、募集の取扱い等を行った投資信託等の顧客からの売り付けの取次ぎ等に限られており、購入(買い付け)のための取次ぎ等は認めていない。
したがって、ETFについて、銀行等の登録金融機関における窓口販売が行えるよう、法令上の措置を行う。
我が国の証券決済制度は、証券の種類ごと、また券面の有無に応じて、決済制度が異なっており、これを改善して、決済リスクを削減し、国際的にも遜色のない安全かつ効率的な決済制度を構築する必要がある。
したがって、証券決済の迅速化及び確実化を実現するため、社債等について、その無券面化を可能とするとともに、それが階層的に保有される場合について、社債等登録法を廃止し、新たな振替制度を創設する。
銀行法第10条第2項では、同項各号に掲げる付随業務のほか、「その他の銀行業に付随する業務」(その他付随業務)を営むことができると規定しているが、例示業務以外に具体的にどのような業務がその他付随業務に該当するかどうかについては基準を明定していない。また、銀行が固有業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力(エクセス・キャパシティ)を活用することは明示的には認めていない。
したがって、情報化・高齢化等の環境変化が急速に進む中、多様化・高度化する顧客ニーズへの的確な対応を通じて顧客の利便性を向上していくためには、金融審議会第一部会に示された考え方を踏まえ、「その他付随業務」の該当基準を早急に明確化し、付随業務の範囲を柔軟に拡大する。
いわゆる金庫株解禁等に係る商法改正(平成13年6月29日公布)により、株式会社は資本金の4分の1に相当する額を超過する法定準備金について、これを株主総会の決議により減少することが可能となった。これを受けて銀行法第18条も改正されたものの、従前の利益準備金の積立限度額に係る規定との平仄と銀行の健全性確保の観点から、銀行が減少することができる法定準備金の額は資本金と同額を超過する部分とした。
また、法定準備金の減少に際しては、資本減少時における債権者保護手続(預金者等への個別催告)が必要である。
したがって、銀行については、法定準備金の減少に際しての債権者保護手続について、合併(銀行法第33条)や会社分割(同第33条の2)の場合と同様に、預金者等への個別の催告を不要とすることの可能性について検討を開始する。
現在、信託銀行が行う公告については、次の1.〜3.のとおり日刊新聞紙又は官報に掲載することとしている。
定型的信託契約に係る約款変更を行うとき、所定の事項を日刊新聞紙に公告。
貸付信託に係る信託契約を締結・変更しようとするとき、所定の事項を日刊新聞紙に公告。
公益信託について、毎年1回一定の時期に信託事務及び財産の状況を公告(方法については法定されていない)。
したがって、信託銀行が行うこれらの公告について、委託者・受益者の利便性向上及びインタ−ネットによることを認めることの各種のメリットにかんがみ、電磁的方法の利用を認めるための検討を開始する。
生命保険会社が経営破綻した場合、現行では保険業法に該当条項がないため、一般勘定、特別勘定とも同等に扱っている。しかし、特別勘定で運用される資産については、その価額変動リスクを基本的に顧客が負うこととなっており、当該生命保険会社の経営破綻の原因とは無関係であると言える。
また、特別勘定へ資金を投入する際には、リスク遮断の観点から一般勘定を経由することなく直接的に行うことも一つの方法である。
したがって、こうした特別勘定で運用される資産については、一般勘定との財産的性格の相違や保険会社における負債性の相違から、リスク遮断の厳格化を前提とした保険関係請求権への特別先取特権の付与等について、検討を開始する。
現行では、保険料受入れ及び解約時の引渡しに際しては、株、債券等の現物資産によって行うことは認めていないが、新会計基準の適用に伴い、企業の間で保有株式を年金制度に現物で拠出することで退職給付に係る積立不足額を解消したいというニーズが高まっている中、企業間の持ち合い株式を市場に悪影響を与えずに解消できる手段として現物資産による保険料受入れ等の導入の要望があることを踏まえ、特別勘定において保険料の受入れ及び移受管を現物資産で行うことについて、検討を開始する。
特別勘定を付加できる契約は、現行は、(1)変額保険、(2)新企業年金(適格退職年金契約)、(3)厚生年金基金保険、(4)国民年金基金保険、に限定されている。
これ以外の保険商品に特別勘定を付加するためには、別途、法令上の措置が必要になる。
しかし、多様な市場のニーズに対応するために対象商品の拡大を求める声が強まっており、特別勘定を付加できる保険商品を拡大すべく法令上の措置を行う。
銀行等による保険商品の販売は、保険業法及び金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律(平成12年法律第92号)により、平成13年4月から解禁したものの、販売可能な商品は、住宅ローン関連の長期火災保険、信用生命保険、債務返済支援保険、及び海外旅行傷害保険の販売に限定している(信用生命保険に関しては、銀行等の子会社・兄弟会社の商品に限定)。
したがって、利用者利便の向上と販売チャネル間の競争促進の観点から、銀行等による保険商品販売の全面的な解禁を推し進めるべきであるという考えがあることを踏まえ、銀行等が原則としてすべての保険商品を取り扱えること、その銀行の子会社又は兄弟会社である保険会社の商品に限定しないことについて引き続き検討を行い、結論を得る。
現在、保険業法施行規則第246条における認可申請の標準処理期間、保険業法第125条における届出の審査期間について各々90日としているが、認可申請及び届出の内容に応じ短期間での審査が可能であるものを類型化し、それらについては事務ガイドラインにおいて現行90日の認可にかかる標準処理期間及び届出にかかる審査期間をそれぞれ60日に短縮する。
審査基準の透明性の確保を一層図る趣旨から、現在認可申請及び届出の際に使用されている「届出内容評価表」や「認可申請内容評価表」について所管官庁と保険会社の間で解釈の相違が生じることのないよう、その項目・記載内容について今後充実を図っていく。
市場の変化に応じたタイムリーな保険商品の販売を可能にするとの観点から、保険契約者保護等の面で問題が少ない商品に関しては、届出後直ちに販売が可能となるファイル・アンド・ユースを導入することについて、商品販売後に問題が生じた場合の是正措置の在り方などに十分留意しつつ、検討を開始する。
普通保険約款の自由化については現在、外国あるいは国際間における様々な取引慣行に弾力的に対応することを可能とするため、外国における事業活動に伴う損害賠償責任保険等ごく一部についてのみ認めているが、これを外国又は国際間において使用されるほかの種類の保険に対しても拡大することについて検討する。
保険業法及び同施行規則においては保険契約者等の保護や保険募集の公正性を図る観点から、保険会社や保険募集人等が保険契約の締結又は保険募集を行うにあたっての禁止行為を規定している。しかしながら、例えば保険料の割引・割戻し、特別利益の提供の禁止(保険業法第300条1項5号)や誤解を招くおそれのある比較表示の禁止(同6号および保険業法施行規則第234条4号)等の規定については、前者の規定と保険商品の認可範囲内での料率適用との関係(いわゆる基礎書類に規定された範囲内で具体的な料率を個々の保険会社の合理的な経営判断により決定することは、当該規定に反するものでないこと)のように明確化が図られているものもある一方、その適用範囲が明確でないものもあるとの指摘がある。
したがって、これら禁止行為の明確化を図る観点から、保険会社や保険募集人等の活動への萎縮効果の防止及び消費者の利便性の向上並びに保険契約者保護を念頭に置きつつ、特別利益の提供の禁止や保険契約内容等についての比較広告規制等については、これまでの事例において蓄積された禁止行為の該当基準について事務ガイドラインの記載をより一層充実させるとともに、今後ノーアクションレター制度の活用等により積み重ねられた事例について適宜事務ガイドラインに例示として追記する。
貸金業の規制等に関する法律は、すべての貸金業者に対し、貸付けの相手方の属性や規模等にかかわらず、すべての契約等について一律に行為規制を課している。また、平成11年の法改正の経緯を踏まえ、同法においては書面の電磁的交付は認めていない。
したがって、貸金業に係る規制については、(1)個人と法人、例えば上場企業を同一に扱う必要性、(2)貸金業者が交付する書面の電子化の実現可能性、(3)流動化の際における通知義務の緩和の可能性、等について、所管官庁において実態調査 を行う。
商品の購入代金等の支払に関して、リボルビング方式又は総合方式の取扱いができるクレジットカードを発行するためには、割賦販売法に基づき、登録を受けることが必要であるが、銀行本体が発行するクレジットカードについては、実質的には認めていない。
したがって、「バンクカード」でのリボルビング方式による割賦購入あっせんについては、日本版「金融ビッグバン」のクレジットカード事業に対する影響等を調査し、検討を行った上で、速やかに実現することについて結論を得る。また、総合方式についても早期に調査・検討を開始する。
農地法(昭和27年法律第229号)では、農地の法人による保有は、農業生産法人(農事組合法人、合名会社、合資会社、株式会社又は有限会社)のみが可能とされており、このうち株式会社形態の農業生産法人については農地法の改正により昨年3月から認められたところである。
農業生産法人については、(1)主たる事業が農業(関連事業を含む。)であること、(2)法人の社員・株主が原則農地所有者等であること、(3)外部からの出資を受ける場合、その総額で議決権の4分の1、個別企業では議決権の10分の1に制限されること、(4)法人の理事、取締役の過半数が農業従事者等であること、など、その事業や構成員について一定の要件を設けているところである。
外部の株式会社の参入については、農地の投機的な取得や水管理・土地利用の混乱を招くおそれがある等の懸念も依然根強い。他方、上記のような要件等が、農業生産法人が自己資本の充実を図ることや企業が農業生産法人化することを、事実上、困難なものとしているという指摘もある。
農業の活性化とその健全な担い手を増やすための農業構造改革を早急に具体化するためには、農業生産法人の自己資本の充実や食品産業等の参画を図りつつ、経営形態の多様化を推進することが必要となっており、このため、以上のような農業 生産法人への出資制限を始めとする現行制度や実態について速やかに検証を図り、農業経営の株式会社化等を一層推進するための措置を講ずる。【速やかに検証に着手し、平成14年度以降結論を得たものから逐次実施】
「フランチャイズ・システム」は、本部経営者(フランチャイザー)にとっては、他人の資本・人材を活用して迅速な事業展開が可能となり、他方、加盟者(フランチャイジー)にとっては、本部の様々なサービスを活用して独立・開業が可能となるため、小売・外食・サービス業などの広範な産業分野における新規産業・雇用の創出に大きく貢献するシステムである。フランチャイズ・システムが円滑に機能するためには、フランチャイザーとフランチャイジーとの連携・協力が重要であるが、このためには、両者の間の契約(フランチャイズ契約)が公正・的確に締結される必要がある。
中小小売商業振興法(昭和48年法律第10号)において、フランチャイザーが加盟希望者に対して情報開示・事前説明の対象としている事項は、国際的に見ても限定的なものとなっている。また、現行の「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)における不公正な取引方法に該当するフランチャイザーの行為に係る記述は、明確性に欠ける部分がある上、近年のフランチャイズ産業の実態を必ずしも的確に反映していない。
このため、現在中小小売商業振興法施行規則において定められている本部経営者による加盟希望者に対する「フランチャイズ契約締結時の書面記載及び事前説明義務」の対象となる個別事項について、当該制度が経済社会全体に持つ費用対効果の分析を含め、早急な実態把握を行うとともに、それに基づいた制度面での対応を図る。また、フランチャイズ・ガイドラインについては、公正な情報開示・取引が一層促進されるよう、現在のフランチャイズ・システムにおける新たな問題の発生も踏まえて、見直す。
近年、フランチャイズ・システムを採用する企業群は、小売業だけでなく、サービス業などの幅広い産業分野に広がっているが、前述の中小小売商業振興法は、中小小売商業の振興を目的とした法律であるため、同法に定める契約締結の際の情報開示、説明義務は、小売業以外の産業分野には適用されない。
したがって、近年、小売業以外のフランチャイズ産業のウェイトが高まっている実態にもかんがみ、フランチャイズ・チェーンシステムの普及促進等による中小企業・ベンチャー企業の健全な発展を図るため、サービス業などの小売業以外のフランチャイズについては、その実態把握を十分に行い、上記の現行法制上のルールに加え、契約締結時の情報開示を含めた制度の在り方について、早急に検討する。
平成12年6月から施行されている大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号。以下「大店立地法」という。)の運用については、自治事務として都道府県等にゆだねられており、国が個別案件について積極的に関与することはできないが、大店立地法第13条の趣旨(地方公共団体の施策における本法の趣旨の徹底)にのっとり、本法の適正な運用が確保され、地方公共団体による上乗せ規制や恣意的な運用がなされないようにすることは重要である。
したがって、経済産業省本省及び各経済産業局は、「大店立地法相談室」などを通じ、地方公共団体に対し必要に応じて法の解釈を示すとともに、法第13条の趣旨に反する事例が生じた場合には、速やかに地方自治法(昭和22年法律第67号)に基づく技術的助言・勧告を行う。
大店立地法第4条に基づき定められ、設置者が配慮すべき基本的な事項や、駐車需要の充足、騒音の発生への対応等の店舗施設の配置及び運営方法に関して配慮すべき具体的な事項を内容とする「指針」については、産業構造審議会・中小企業政策審議会の中間答申(平成11年5月)を踏まえ、大店立地法の施行後5年以内(平成17年6月1日まで)に必要な見直しを行うこととしている。
しかしながら、既に策定後2年以上、法施行後1年以上を経過し、本法の施行状況に対する評価もより明確になりつつあるため、本「指針」について、平成16年度中を目途とする見直しに向けた調査等を早急に行う。
平成14年度において、以下の事項について総合資源エネルギー調査会電気事業分科会の場などを通じ検討・検証を行い、早急に結論を得る。【平成14年度中に措置(検討、結論)】
小売自由化範囲が限定された現状においては、選択肢の拡大を求める消費者の要望に必ずしも十分にこたえられない可能性もある。このような要望への対応のため、広域的な電力の融通のための仕組みの整備や送電網の広域的な整備などによる大規模電源についての投資環境の整備が行われ、電力の安定的な供給が確保されることを前提として、全面自由化を実施する。仮に、急激な全面自由化の実施に伴う影響が非常に大きいといった特段の問題がある場合には、少なくとも高圧分野までの自由化範囲拡大は即座に実施するとともに、全面自由化を実施する条件・時期等を明確に設定する。
自由化範囲を拡大する際には、いわゆる同時同量の原則を高圧分野以下の需要家を含めて要求することとした場合には、メーターの設置コスト等が膨大となり、それ自体が新規参入者に対する参入障壁となる可能性もある。したがって、同時同量の確保の方法についても、電力系統全体では同時同量が守られる必要がある等の技術的な要素も踏まえつつ、より柔軟な制度への見直しを行う。
また、中立的な系統運用の一環として行われる使用量の差分の調整について、引き続き既存電力会社が担わざるを得ない場合、独占力を行使することがないよう適切な制度設計を行う。
経済合理性に則した最適な電力の需給が行われるために、全国大での卸電力市場の整備が有効であるとの見方がある一方、系統が地域的に独立している状況では、全国大の卸電力市場を整備しても、それだけではあまり有効性が無いとの見方もある。いずれにせよ、現行制度における電力の調達は、限定されたものにとどまっており、より柔軟な電力調達を可能とする観点から卸電力市場へのニーズは存在すると考える。また、このような市場を通じて電力が取引されることにより、既存電力会社の発電、電力販売にも競争圧力が働き得ることとなる。加えて、卸電力市場の整備により、電力取引に 伴うリスクヘッジ手段も整備され得ることとなる。他方、海外においては、市場創設に失敗し安定供給が損なわれた例も存在することから、これらを踏まえ、卸電力市場を整備する。
なお、卸電力市場の整備に際しては、供給信頼度の面、効率性の面等に留意しつつ、市場原理が有効に機能するよう、託送料金の全国一律化、周波数変換設備の整備やスポット取引を実現する託送制度の整備などの条件整備を行う。
現行の接続供給制度については、改善が必要であるとする利用者からの意見も一部にはある。これらの指摘事項については、「適正な電力取引についての指針」や「電力の取引に関する紛争処理ガイドライン」に基づき適時・適切に対応を行うとともに、必要に応じて見直しも行う。また、新規参入者の利用に当たっての透明性の向上のため、一層厳格な会計分離の徹底を行うとともに、電力会社・新規参入者双方の利用上の公平性の確保のための制度整備を行う。これらにより、託送料金の引下げが期待される。
いわゆる「連系送電線」は、既存電力会社同士の競争や、新規参入者の市場参入の促進にとって不可欠との指摘もあるが、従来の我が国の送電網は、地域ごとの供給義務と費用負担の公平性の観点から整備されてきたことなどにより、事実上、電力会社ごとに完結したネットワークが形成されており、我が国において連系送電線の十分な整備が行われていないとの指摘もある。
今後、既存電力会社や新規参入者が活発な競争を行い、卸電力市場が有効に機能するために、エネルギーの大宗を輸入に依存し、燃料調達コストを始めとした地域間の電源立地費用に大差ないという我が国の特性にも配慮しつつ、「連系送電線」の強化を始め、全国的視点からの送電線整備が行われる仕組みを整備する。その際、これまでの地域独占と総括原価主義を前提とした送電線建設の費用負担のルールについては、自由化市場の下での新たな仕組みに改める。
さらに、発・送電分離も含む送電部門の中立性確保策については、安定供給を確保しつつ、これまで電力会社内で一体として行われてきた電源開発と送電線整備の計画について、中立性を確保し得るスキームの整備を行う。
連系送電線を中心とした基幹送電線については、全国的視点からの整備の必要性を踏まえつつ、諸外国における送電会社や、ISO(Independent System Operator)のような、既存電力会社に限定されない主体による送電線の整備ルールや整備計画の作成などが行われる仕組みを整備する。
送電線の整備ルールや整備計画の作成を全国的視点から行い、連系送電線を中心とした整備を行う制度とする場合には、その実効性を確保するため、送電線建設について入札を義務化(送電会社や、いわゆるISOなどの中立的な送電線整備主体が入札ルールの策定を行う。)するといった海外での方策も踏まえ、送電線整備にも競争原理を導入し、最も効率的な送電線整備が行われるための仕組みを整備する。
また、自家発電設備を所有する事業者が近隣へ電力を供給する場合、特定電気事業や特定供給の場合を除いて、現状では自ら送電線を引いて供給することはできず、電力会社に託送料を支払い電力会社の送電線を使って供給せざるを得ないが、国民経済的観点にも配慮しながら、原則として自由な送電線建設を認める。その際、送電線建設を認めることで自由化部門では不必要となる特定供給に対する許可規制の在り方や、新規参入事業者が建設したネットワークのオープンアクセスについても併せて検討する。
このほか、送配電網を利用した電力分野における競争上の公平性についての懸念を排除するために、電力系統の運用のルールについて、既存電力会社とは異なる主体がこれを作成し、これに従った公平・中立な電力系統の運用を行うといった海外における方策も踏まえた制度整備を行う。電力系統の安定的な運用と電力品質を維持する上でも、新規参入者が安心して技術情報を電力系統の運用者に公開できる仕組みを確保する。
なお、既存電力会社がこの機能を担うこととした場合には、新規参入者に対する差別的な運用の問題だけではなく、既存電力会社同士の競争を促進する観点からも問題とする見方もあり、セキュリティや信頼度維持の観点も踏まえつつ、中立的な主体によるルール設定が行われる制度を整備する。
さらに、新規参入者が託送を円滑に利用できるように、ネットワークのセキュリティの維持にも配慮しつつ、新規参入者に対する電力系統に関する技術情報などの公開や、送電線の空き容量が適時確認できるシステムを導入する。
託送制度、送電線整備、電力系統の運用ルールを中立化し、発電と電力販売における競争を一層促進するためには、既存電力会社の送電部門と他部門の情報遮断の確実な担保が不可欠である。
情報遮断の問題は、部分自由化実施の以前から指摘されていたが、現状では、既存電力会社の自主的な努力にゆだねられており、各社とも情報取扱規程を定めるなどの措置を講じている。しかしながら、一部の新規参入者からは、情報遮断の在り方についての疑問も提示されている。送電部門の中立性については、発送電分離が最も望ましいとの見方もある一方、発電と送電が組織的に完全に分離された場合には、電力系統の運用への影響を考慮する必要があり、また、地域的に送電網が独立している現状では、全国規模での中立性を担保する別途の方策を検討することが適切であるとの見方もある。このような指摘や、諸外国の制度、現行制度の運用状況などを踏まえつつ、発送電を組織的に完全に分離することなども含めた中立性・公平性・透明性の担保方策を講ずる。
託送、送電、系統運用の各分野の中立化を図り、発電及び電力販売の分野における一層の競争の促進を図るためには、託送制度の運用について、より専門的な見地からの事後的な監視や、より公平・中立的な立場からの市場監視が望ましいとの指摘もある。
このため、市場監視のためのより高度な専門性を備えた行政組織や、より公平性・中立性・透明性が確保された機動的な紛争処理を行う組織を整備する。
この組織は、専門性の高い分野における競争促進のためのものであることから、一般的な競争政策と協同・競合する関係で、両者があいまって市場監視の成果が得られることが必要である。
都市ガス事業の自由化範囲(年間契約数量100万m3以上の大口供給)は全都市ガス供給量の約37%に相当するが、新規参入による十分な競争促進効果は必ずしも認められない。ガスの安定的な供給を確保しつつも、需要家の過半を占める年間契約数量が100万m3以下の需要家への供給についても自由化範囲を拡大することによって、競争を促進し、料金の低下、サービスの向上等自由化の果実がより多くの需要家に享受されるようにする。
これに合わせ、自由化範囲における大口供給の許可制については、これを撤廃することも含め、その在り方を検討する。
我が国においては、これまで、LNG基地を中心として地域毎に分散したパイプライン投資が行われ、消費地間を結ぶ輸送パイプラインは十分に形成されてこなかった。また、地域内においても、都市ガス事業の供給区域は全国土の5%にすぎず、大都市圏を除けばパイプライン網は必ずしも十分なネットワークとなっていない。しかし、全国的なパイプライン網の整備はガス市場の競争環境整備の最も重要な要素である。また分散型電源の普及促進の観点からも早急に整備を図る必要がある。
したがって、まず大動脈的な基幹パイプラインの整備促進のため、供給を行う新規のパイプライン設置者については、供給区域規制の例外とし、新たなパイプラインが通過するいかなる地点(他の都市ガス会社の供給区域内であっても)においても分岐管を通じて原則として自由に自由化部門へのガス供給を行うことを認める。またそのようなパイプライン設置者について、一定期間、例えば、使用料を高く設定することを容認するなどの、投資インセンティブを高めるための措置を講ずる。
既存のパイプライン網に対しては、平成11年のガス事業法の改正により、新たにガス事業者のパイプラインによる託送制度が導入されたが、現在その対象は大手都市ガス4事業者(東京ガス、大阪ガス、東邦ガス、西部ガス)を指定している。
自由化が進展するガス市場において競争を一層効果的に推進するためには、ガス市場参加者によるガスの調達・供給手段の多様化が不可欠である。こうした競争環境を整備するため、パイプラインへの投資意欲を高めてインフラ整備を進める一方で、パイプライン網やLNG基地の第三者利用を一層拡大する必要がある。
したがって、まず既存のパイプラインについては、大手都市ガス4事業者以外の都市ガス会社のパイプラインなど公共性の高いものについては、第三者利用を一層拡大する。さらにLNG基地についてもガス市場への新規参入を促進する観点から第三者利用を拡大するための措置について、最も実効性のある適切な方法を検討する。また既に開放されている大手都市ガス4事業者の託送料金については公正競争の観点からその算定の透明性を高めるための一層厳格な会計分離の徹底を行うとともに、自由化の範囲の拡大に伴う一層の透明性・公平性の確保の観点から、厳格な情報遮断の仕組みも整備する。これらにより、託送料金の引下げが期待される。
我が国においては、おおむね都市ガス事業者(一般ガス事業、簡易ガス事業)による供給需要家数が2,700万、LPガスのそれが2,500万と市場は二分されている。さらに前者の市場は200社以上の一般ガス事業者と1,700有余の簡易ガス事業者によって、後者は約28,000のLPガス事業者によって細分化されている。
ガス事業が規模の経済性を有する産業である以上、こうした細分化された市場が競争によって統合され、コストが低減されることが長期的にみて需要家利益にかなうものと考える。
このため、ガス市場参加者が、互いに公平な条件の下で競争が可能となるよう、一般ガス事業、簡易ガス事業、LPガス事業の事業区分の見直しを行う。
この際、簡易ガス事業者によるLNG利用については、これを認める方向で検討を図る。
運賃・料金規制については、利用者ニーズに即した運賃・料金を機動的かつ弾力的に設定することを可能にするため、現行の事前届出を事後届出とする。また、運賃・料金の掲示の義務付けについては、宅配便のようにいわゆる一般消費者が利用者となる場合を除き、原則的に廃止する。
営業区域に係る規制については、現在、原則として都道府県単位、拡大営業区域については経済ブロック単位にまで広げたが、トラック事業者による効率的かつ機動的な営業を可能にする観点から、この営業区域制度を廃止し、全国的な範囲で自由な事業の展開を可能とさせる。また、これにあわせて、許可の基準となる車両の保有台数についても、現在拡大営業区域で15台としているが、これを全国一律に5台にまで引き下げる。
タクシー事業については、平成14年2月から需給調整規制を廃止し、免許制から許可制への移行を図るとともに、一定の条件下では需給調整措置をとることができる緊急調整措置を設けたが、その安易な発動を行わず、発動要件と手続につき不断に見直しを行い、真にやむを得ない場合に厳に限定されるよう運用するとともに、発動する場合には十分な説明責任を果たす。
また、近時の運賃認可の運用基準の設定により、遠距離運賃の大幅弾力化や特定ゾーンでの定額運賃化を可能にしたが、これを真に機能するように運用する。
さらに、車種や事業者の区分を廃止して、一定の範囲内の運賃設定を軽微な手続で認可することとしているものの、それ以下の運賃設定に対する認可に当たっては個別審査を行っている。この個別審査においては、いわゆる「追い越し」の禁止と「不当な競争」や「差別的取扱い」のみを審査することとし、認可制の下にあっても、規制は上限規制に限るという点を厳守する。
内航海運暫定措置事業は、保有船舶の解撤等をした者に対して交付金を交付するとともに、船舶建造者から納付金を納付させることを内容としており、内航海運活性化を図るために船腹調整事業を解消したことに伴う影響を考慮して導入したものである。
本事業については、交付金の交付期間が15年を予定しており長いこと等から、事業運営の一層の適正化を図る必要がある。このような観点から、交付金単価の一層の減額を行うとともに、健全で透明性のある施策を講ずる。
平成12年11月より、京浜港を始めとする主要9港については、需給調整規制を廃止し免許制を許可制に、運賃・料金の認可制を事前届出制に改めること等を内容とする規制改革を実施している。
このように主要9港を先行して措置したのは、港湾運送事業が「過去混乱の歴史を経験したという事実に鑑み、混乱が生じることのないよう、手順を踏んで段階的に規制緩和を進める必要がある」とする行政改革委員会最終意見(平成9年12月12日)も踏まえてのものである。
主要9港に対する措置が実現するまでには、平成10年3月の閣議決定から2年8か月を要したことに鑑み、段階的実施の第2ステップとして残余の港湾における上記の規制の改革に向けて速やかに検討を開始し、平成15年度中に結論を得る。
高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りを認めることの可否については、平成12年の規制緩和推進3か年計画(再改定)において平成12年度中に調査を行うこととし、さらに現行規制改革推進3か年計画においては、平成15年度までに結論を得るべきこととしている(当初計画・運輸オ12)。
高速自動車国道等における自動二輪車の二人乗りに関する規制の取扱いについては、自動二輪車の二人乗りの安全性の確認の問題はもとよりであるが、国民の一部に強い見直し要望があることから、過去のデータの活用、加速的な実証実験等を行うことにより、当初の予定時期より繰り上げて、平成15年度中の可能な限り早期に二人乗りの可否について最終判断する。
港湾における輸出入手続等については、我が国港湾の競争力強化、物流の効率化等の観点から、電子的な申請・処理を原則とし、そのワンストップ化が極めて重要である。
必要なことは、利用者にとって使いやすく、運用に当たってコストが低く、国際標準にも配慮し、手続面で簡素なシステムとなっていることである。このため、既往の部分システムの改善にも努めつつ、平成15年度の出来るだけ早い時期に、上記の要請を満たしたシステムの運用開始ができるよう、関係省庁で合意した基本方針(グランドデザイン)に基づき、関係省庁が協力して、検討・調整を進める。
電話機やモデム等の通信端末機器の技術基準適合認定制度及びPHS等の特定無線設備の技術基準適合証明制度については、諸外国の制度との整合性を図る観点から、回収命令、罰則強化などの事後措置の拡充強化を前提とした自己適合宣言制度の導入について、引き続き対象分野の特性を踏まえて検討を行う。
電気用品安全法(昭和36年法律第234号)は、事業者の届出に当たって、構造・材質・性能等について製品の安全確保上同様の性質を有すると認められる範囲である「型式」を単位としている。平成13年4月からは(平成11年法改正)、それま で型式区分による届出が不要であった特定電気用品以外の電気用品について届出義務を付加しており、事業者の負担は増している。行政による立入検査などの事業者の調査に必要な区分等、法の目的に照らし必要最小限の規制となるよう、型式区分の記載内容の合理的な変更を検討する。【速やかに検討】
また、電気用品に関する国際的な技術基準は、技術の進展等に伴い改訂が進められており、現行の国内基準については、現在、鋭意整合化作業が行われているところであり、速やかにその整合化を図る。【平成13年度中を目途に措置】
さらに今後においても、国際基準の動向を踏まえ、タイムリーな改訂による国際整合化を図っていく。
(注)【13年度中に(一部)措置】については、「3 横断的措置事項」及び「4 分野別措置事項」における各分野の個別事項では、取り組んだ措置内容に応じ、(一部)措置済、法案提出等と記述している。