第1章 調査研究の概要(1)

1.本調査の背景・目的(指標見直しに当たっての視点)

我が国における子供の貧困対策は「子供の貧困対策の推進に関する大綱」(平成26年8月29日閣議決定)に基づき、貧困の世代間連鎖の解消と積極的な人材育成を目指し、教育の機会均等と子供たちの健やかな成育環境の確保を図るため、教育の支援、生活の支援、保護者の就労の支援及び経済的支援等に関する施策を総合的に推進しているところである。

子供の貧困の実態は見えにくく、捉えづらい。また、「貧困」は単なる経済的な困窮にとどまらず、将来の収入の確保につながる学力が不足している、栄養や生活環境などの成育環境が確保されていない、必要としている支援を受けるための社会的なつながりがないなど、様々な要因が複合的につながることで、世代間の「貧困の連鎖」を招いている。

したがって子供の貧困対策を、世帯の経済状況のみならず、教育や成育環境など子供たちを取り巻く状況を多面的に把握した上で、貧困の連鎖の要因の解消を図る観点から、総合的に推進する必要がある。

子供の貧困対策を総合的に推進するに当たり、大綱において「子供の貧困に関する指標」を設定して、その改善に取り組み、指標の動向を確認し、これに基づいて、関係施策の実施状況や対策の効果等を検証・評価するとともに、必要に応じて対策等の見直しや改善に努めることとされている。現在、子供の貧困率、生活保護世帯の子供の高等学校等進学率など25指標が設定されている。

また大綱においては、子供の貧困対策を今後更に適切に推進していくため、子供の貧困に関する新たな調査研究の実施について検討するとされている。平成28年度調査研究については、第1回子供の貧困対策に関する有識者会議(平成28年7月14日)において、子供の貧困の実態、関係施策の実施状況その他支援の状況、対策の効果等を数量的に示しうる国内調査(いわゆる公的統計のほか、行政機関等の(公開)情報、民間団体等による調査を含む)を収集し、子供の貧困対策の実施状況や対策の効果等の検証・評価に用いる場合の課題も含め、分析を行うとの方向性が示された。これらを踏まえ、本調査研究では、指標についてより一層体系化すべく検証を行い、改めて現行25指標を整理した上で、関連施策の実施状況や対策の効果等を検証・評価する上で必要となる指標の例について検討を行った。