第2章 諸外国における子供の貧困に関する指標の状況(2.2.4)

2. 健康、教育等様々な分野の指標を設定するアプローチを用いた貧困に関する指標の設定状況

2.2. 人口全体の貧困に関する指標

4 フランス 国立貧困・社会的排除監視機構による「ONPES 188 の指標(Indicateurs de l’ONPES)」189

フランス国立貧困・社会的排除監視機構(ONPES)は、国立統計経済研究所(INSEE)の算出する物質的はく奪指標と欧州2020の「貧困と社会的排除のリスクにある者の割合」の指標を含む20指標を、貧困と社会的排除を測るONPESの指標としており、指標の動向を示す年次報告書を公表している。指標は、「不平等、所得、生活の状態を示す指標」、「深刻な貧困を表す指標」、「基本的な権利の保障を示す指標」「欧州2020の指標」に4分類される。

なお、フランスでは、子供の貧困は世帯の貧困として捉えられており190 、子供の貧困に特化した指標は見当たらない。

図表2-15 フランスにおける貧困測定指標の一覧191
指標 指標内容
不平等、所得、生活の状態を示す指標
相対的貧困率 等価可処分所得が中央値の60%未満の世帯に暮らす者の割合
相対的貧困率 等価可処分所得が中央値の50%未満の世帯に暮らす者の割合
物質的はく奪指標 27項目192 のうち8項目以上の欠如をしている者を「生活状態の貧困」とし、その割合を算出。
相対的貧困又は物質的はく奪状態 等価可処分所得が中央値の60%未満又は物質的はく奪指標の基準によって生活状態の貧困とされる世帯に暮らす者の割合
所得配分率193 総所得における第5五分位(国の人口の上位20%)の所得の割合に対する、総所得における第1五分位(国の人口の下位20%)の所得の割合の比率。
貧困率が低い5県の平均値 相対的貧困率194 が最も低い5県(département)の貧困率の平均値
貧困率が高い5県の平均値 相対的貧困率195 が最も高い5県(département)の貧困率の平均値
65歳以上人口と18-64歳人口の所得の比率 18-64歳人口の所得中央値に対する65歳以上人口の所得中央値の比率
ひとり親家庭の貧困率 等価可処分所得が中央値の60%未満であるひとり親家庭の割合
子供の貧困率 等価可処分所得が中央値の60%未満である世帯に暮らす18歳未満の者の割合
貧困の程度(貧困ギャップ率) 貧困線196 の値と貧困線以下に世帯に暮らす者(0歳以上の全ての者が対象)の等価可処分所得の中央値の差の貧困線の値に占める割合
就業者の貧困率 7か月以上就労しており、等価可処分所得が中央値の60%未満である世帯に暮らす者の割合
深刻な貧困を示す指標
相対的貧困率 等価可処分所得が中央値の40%未満の世帯に暮らす者の割合
相対的貧困及び物質的はく奪状態 等価可処分所得が中央値の60%未満であり、かつ、物質的はく奪指標の基準によって生活状況が貧困とされる世帯に暮らす者の割合
慢性的な貧困 過去3年間にわたり等価可処分所得が中央値の60%未満であった世帯に暮らす者の割合
基本的な権利の保障を示す指標
保障されていない求職者の割合 失業手当を受給していない求職者の割合
住宅の費用の負担率が所得の40%以上である者の割合 住居費197 が可処分所得の40%以上を占める世帯に暮らす者の割合
早期退学者率 18-24歳人口における、就業・職業訓練も行っておらず、CAP198 又はCAPと同等のレベル以上の資格を持たない者の割合
財政的な理由で医療を受けられない人の割合 「過去12か月の間に財政的な理由で医療を受けられないことがありましたか」という質問に対して、肯定的に答えた人の割合
欧州2020
貧困又は社会的排除のリスクにある者の割合 EUの定義に基づく。詳細は「第1章1.2.貧困を多面的に把握する2つのアプローチ ア.相対的貧困率と物質的はく奪指標を併用するアプローチ」を参照。

188ONPESとは 国立貧困・社会的排除監視機構(Observatoire National de la Pauvreté et de l'Exclusion Sociale)の略である。

189前掲54

190前掲54

191ここに示した指標一覧及び指標内容はONPESの最新の報告書に基づく。(参考:ONPES (2015) L’Évolution de la Pauvreté en France: Les Nouvelles Formes de l’Aggravation. Suivi annuel des indicateurs de pauvreté et d’exclusion sociale edition 2015, Paris, ONPES.

192項目の詳細については「第6章物質的はく奪指標1.2.3.フランス」にて詳述。

193所得配分を表す指標には、第5五分位と第1五分位の平均所得の比率(P80/P20)を使用する場合もあるが、ここでは第5五分位と第1五分位の総所得に占める割合の比率(S80/S20)が使用されている。

194等価可処分所得の中央値の60%を貧困線とする相対的貧困率を指す。

195同上

196等価可処分所得の中央値の60%を指す。

197住居費には住宅ローン等の支払い利子、ゴミ処理などの義務的サービス費用、定期的修繕費、税金、公共料金(水道、電気、ガス、暖房)が含まれ、住居補助は控除される。

198CAP(certificat d’aaptitude professionnelle)は職業適性証書のことであり、後期中等教育を修了したことを示す。(参考:中上光夫(2007)「フランスにおける「職業訓練」と職業資格」国際地域学研究,10,47-60.)