第2章 諸外国における子供の貧困に関する指標の状況(2.2.5)
2. 健康、教育等様々な分野の指標を設定するアプローチを用いた貧困に関する指標の設定状況
2.2. 人口全体の貧困に関する指標
⑤ ドイツ「連邦政府貧富報告書(ARB: der Armuts-und Reichtumsbericht der Bundesregierung)」199
「連邦政府貧富報告書(der Armuts-und Reichtumsbericht der Bundesregierung)」は、政府が国民の生活状況を把握するため、議会任期である4年のうちに1度編纂する報告書であり、連邦家族省、連邦教育研究省、連邦保険省、連邦財務省などが編纂に関わり、有識者の見解も反映される。
2005年第2次報告書から、17の貧困と社会的排除に関する指標が取り入れられている。これらの指標は世帯収入と相関があると考えられる指標であり、EUのラーケン指標を参考にしているが、有識者と協議しながら、貧困を特徴づける上で本質的でありなおかつ長期的評価に耐えうる、統計的に透明性の高い指標を抽出している200 。
なお、ドイツでは、子供の貧困は世帯の貧困として捉えられており201 、子供の貧困に特化した指標は見当たらない。
指標 | 指標内容 | |
---|---|---|
貧困のリスクにある者の割合(相対的貧困率) | 等価所得の中央値の60%未満の世帯の割合 | |
超過負債のある者の数及び世帯数 | 18歳以上人口に占める複数の継続的な債務の状態にある者の割合及び同様の状態にある世帯数 | |
健康状態が悪い・良好ではない人の割合 | 健康状態が「悪い」「良好ではない」とする人の割合 | 男女別及び所得階級別 |
障害がある者の割合 | 法的に「重度の障害」「障害度が50%」と認定されている人の割合 | 所得階級別 |
卒業資格がない者の割合 | 18-24歳人口に占める、現在学校・高等教育機関や職業教育学校に通っておらず、高校・職業学校などの卒業資格を持たない者の割合 | 性別及び東西地域別 |
職業訓練資格のない者の割合 | 15-65歳人口に占める、現在学校・高等教育機関や職業教育学校に通っておらず、職業教育又は高等教育修了資格を持たない者の割合 | |
政治への関心がない者の割合 | 政治に関心のない成人の割合 | 性別及び移民由来別、貧困のリスクにあるかないか別203 、学歴別 |
社会とのつながりがない者の割合 | 友達、親戚、あるいは隣人との接触が1ヶ月につき1回未満である者の割合 | |
ワーキングプアの割合 | 調査前年に6か月以上の就労についていたにも関わらず、等価所得が貧困線204 未満にあった者の数 | |
長期失業者数 | 15-74歳で、失業申請をしてすでに12か月以上経過している失業者の数 | |
長期失業者の割合 | 15-74歳人口に占める、失業申請をしてすでに12か月以上経過している失業者の割合 | |
劣悪な住宅環境にある世帯数 | 賃貸の世帯で、家屋の状態が「修繕の必要がある」「解体すべき状態」との判断を受けている世帯数 | |
ホームレスの数 | 賃貸契約により保障された住居がない状態の者の数 | |
社会的最低保障を受けている者の割合 | 長期失業者保険、生活保護、難民申請受給法による社会的最低保障を受けている者の割合 | |
騒音と大気汚染を受けている世帯の割合 | 騒音、大気汚染によって住居環境が著しく損なわれていると感じる世帯の割合 | 東西の地域差も算出する。 |
物質的はく奪指標 | EUの物質的はく奪指標と同様205 | |
収入に依存する手当の受給世帯 | 住居手当、子供手当、奨学金を受給している世帯数 |