第2章 諸外国における子供の貧困に関する指標の状況(2.3.2)

2. 健康、教育等様々な分野の指標を設定するアプローチを用いた貧困に関する指標の設定状況

2.3. 子供のウェル・ビーイング指標

2 OECD「より良い暮らし指標(BLI:Better Life Index)」の2015年度報告書「How’s Life? 2015年版 幸福度の測定(How’s Life? 2015: Measuring well-being)」214 ,215における子供のウェル・ビーイング指標

OECDは2011年から「OECDより良い暮らしイニシアチブ(OECD Better Life Initiative)」を開始した。このイニシアチブにおいて、「より良い暮らし指標(BLI, Better Life Index)」と呼ばれるウェル・ビーイング指標の分析・公表及びウェル・ビーイングの傾向とその要因に関する理解を深めるための研究プロジェクトを実施している。BLIは大人も含む人口全体に着目した指標であるため、その詳細については「2.4. 人口全体のウェル・ビーイング指標」において詳述することとし、ここでは子供のウェル・ビーイング指標を特集した2015年報告書を概観する。

BLIは人口全体のウェル・ビーイング指標であるが、2015年版の報告書「How’s Life? 2015年版 幸福度の測定(How’s Life? 2015: Measuring well-being)」では、特別に子供に着目した章が設けられ、子供のウェル・ビーイング指標の国際比較216 がなされている。ここで設定されている子供のウェル・ビーイング指標は、先述の2009年「子供の福祉を改善する報告書(Doing Better for Children)」で設定された指標をBLIの枠組みに沿って拡大したものであるため、2009年の報告書では6つの指標分野が設けられているのに対し、この2015年の報告書では指標分野が10つに拡大され、子供のウェル・ビーイングをより多面的に捉えている。また、子供の家族の状況を捉える指標と子供自身の状況を捉える指標を明確に区別している点も2009年の指標と異なる点である。

図表2-19 OECDHow’s Life? 2015年版 幸福度の測定」における子供のウェル・ビーイング指標一覧
子供の家族の状況を捉える指標
指標の分類 具体的な指標項目
1所得と富
(2項目)
平均可処分所得 0-17歳の子供がいる世帯の平均等価可処分所得
子供の貧困率 居住国の等価可処分所得の中央値の50%未満の世帯に暮らす子供の割合
2雇用と収入
(2項目)
非就業者世帯に暮らす子供の割合 就業している成人の世帯員がいない世帯に暮らす子供の割合
長期失業状態にある親を持つ子供の割合 親の1人又は両方が12ヶ月以上失業状態にある世帯に暮らす子供の割合
3住宅
(2項目)
子供1人当たりの平均部屋数 子供がいる世帯の住宅の部屋の数(台所・洗濯機置き場・風呂・トイレ・ガレージ・診察室・オフィス・店を除く)をその住宅の居住人数で除した値
基本的な設備が整っていない住居に暮らす子供の割合 世帯専用の屋内水洗トイレがない世帯に暮らす子供の割合
4環境の質
(1項目)
悪い住居環境に暮らす子供の割合 自宅又は自宅周辺が騒音、汚染、ゴミ散乱等の状況に置かれている子供の割合
子供自身の状況を捉える指標
指標の分類 具体的な指標項目
5健康状態
(6項目)
乳児死亡率 該当年の出産数に対する同年の1歳未満で亡くなった乳児の割合(出産千対)
低出生体重出生率 出生体重が2,500グラム未満であった乳児の割合
自己申告の健康状態 11、13、15歳児で、「あなたの健康状態はどうですか」という設問に対して、「とても良い」「良い」「普通」「悪い」の4択から「普通」「悪い」と答えた者の割合
過体重・肥満 11、13、15歳児で、過体重又は肥満である者の割合。BMI217WHO子供発育基準218 の中央値より1標準偏差高い場合を過体重とし、2標準偏差高い場合を肥満とする219
青少年の自殺率 10-14歳人口及び15-19歳人口の10万人当たりの自殺率
10代の出産率 15-19歳の女性人口の10万人当たりの出産率
6教育と技能
(4項目)
PISAの読解力の平均点数 OECDPISA220 における読解力の平均点数
PISAの問題解決能力の平均点数 OECDPISA221 における問題解決能力222 の平均点数
若年ニート率 15-19歳の者で就労、就学、職業訓練のいずれもしていない者の割合
教育のはく奪 8つの基礎教育財(机、静かな勉強部屋、学習に必要なコンピューター、教育ソフトウェア、インターネット接続、計算機、辞書、教科書)のうち4つ未満しか所有していない15歳の者の割合(人口千対)
7市民生活
(2項目)
投票する意思 14歳児で投票権を得たら投票をするつもりがあると回答した者の割合
市民参加 14歳児で最近12ヶ月の間に、団体活動・クラブ活動223 に参加した者の割合
8社会・家庭環境
(6項目)
親と楽に会話をすることができるか 11、13、15歳児で母親又は父親と楽に会話ができると感じる者の割合
親切で助けになってくれる同級生がいるか 11、13、15歳児で自分の同級生は親切で助けになってくれると回答した者の割合
学校の勉強に関してプレッシャーを感じているか 11、13、15歳児で学校の勉強に関して強いプレッシャーを感じていると回答した者の割合
学校が好きか 11、13、15歳児で学校が好きであると回答した者の割合
学校への帰属意識 15歳児の学校への帰属意識の平均値
子供が親と一緒に過ごす時間 親が自己申告した、子供と普段過ごす平均時間。子供の身体的な世話をする時間と共に学習・読書・遊びをする時間に分類して算出する。また、父親・母親別にも算出する。
9個人の安全
(2項目)
子供の殺人被害率 0-19歳人口の10万人当たりの故意による傷害によって死亡した者の割合
いじめ 11、13、15歳児で最近2ヶ月の間に、少なくとも2度学校でいじめを受けたと回答した者の割合
10主観的幸福
(1項目)
生活満足度 11、13、15歳児の生活全般に対する主観的な評価の平均値(「自分の最近の生活全般に関してにどれ程満足していますか。」という問いに対して、最低の0から最高の10の11段階で評価)

214OECD (2015). How’s Life? 2015: Measuring well-being, Paris, OECD.

215報告書の日本語訳はOECD (2014)を参考とした。(OECD (2014).“Multilingual Summaries, How’s Life 2015 Measuring Well-being, Summary in Japanese” http://www.oecd-ilibrary.org/sites/83265c09-ja/index.html?itemId=/content/summary/83265c09-ja&mimeType=text/html)「well-being」が「ウェル・ビーイング」ではなく「幸福度」と訳されているが、ここで「幸福度」が示す概念はウェル・ビーイングと同様である。ウェル・ビーイングの概念については10頁を参照。

216統計データの有無により指標ごとに比較対象になっている国の数は異なる。日本は平均可処分所得、子供の貧困率、乳児死亡率、低出生体重児出生率、青少年の自殺率、10代の出産率、PISAの読解力の平均点数、PISAの問題解決能力の平均点数、若年ニート率及び教育のはく奪の国際比較に含まれている。

217前掲96

218WHO子供発育基準(WHO child growth standard)には年齢別のBMIの中央値が示されている。

219WHO (2016). “Obesity and Overweight”. http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs311/en/

220前掲94

221同上

222PISAは数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野の習熟度を3年ごとに測定する調査であるが、2012年調査においてはオプションでコンピュータを使用した「デジタル数学的リテラシー」「デジタル読解力」「問題解決能力」の調査が実施された。(コンピュータの調査に科学的リテラシーは含まれなかった。)

223ここでの活動は、政党や政治同盟に付属した若者の団体、人権保護活動を行う団体、地域で奉仕活動を行うボランティア団体、社会問題解決のために資金調達をする団体、民族・宗教に基づく文化的団体、地域の課題解決のために啓発活動をする団体による活動を指す。