第3章 日本の子供の貧困に関する先行研究の収集・評価(2.2.(3))
2. 先行文献の収集・評価結果
2.2. 先行研究から得られた各状況に関する主な知見
(3)学校外での学習状況
前項においては学力と世帯所得の関係について取り上げたが、学校外での学習状況についても、同様に世帯所得との関連があるとの調査研究結果がある。
収入及び所得の低い世帯の子供とそれ以外の世帯の子供の学校外学習時間を比較すると顕著な違いが認められる330 ,331 ,332 ,333 。低所得世帯334 の子供とそれ以外の世帯の子供を比較すると、週日の1日当たりの学校外学習時間が1時間未満の子供は、低所得世帯においては45%であるのに対し、非低所得世帯では26%となっている。週末の1日当たりの勉強時間についても同様の傾向がみられ、1時間未満の子供が、低所得世帯の子供が47%、非低所得世帯の子供が28%となっており、世帯所得と子供の学校外学習時間は比例関係にあることがわかる335 。
また、出身階層336 により、努力(学習時間)のみならず意欲にも格差がみられるとの指摘もあり337 ,338 、子供の学習、学力、意欲は学校外学習を介して世帯の経済格差の影響を強く受けることが示されている。
330苅谷剛彦 (2000)「学習時間のメリトクラシー -努力の不平等とメリトクラシー-」 教育社会学研究,66,213-230.
331苅谷剛彦 (2001)『階層化日本と教育危機 -不平等再生産から意欲格差社会へ-』有信堂
332石田浩 (2012)「相対的貧困世帯と親及び子の行動と意識」内閣府子ども若者・子育て施策総合推進室『親と子の生活意識に関する調査報告書』, 180-190.
333卯月由佳 (2015)「低収入世帯の子どもの不利の緩和に学校外学習支援は有効か -世帯収入が中学生の学校外学習時間に与える効果の分析をもとに-」社会政策,7(1),149-160.
334石田(2012)(前掲332)では、世帯の可処分所得(総収入から税金・社会保険などを差し引いた所得)ではなく、「去年1年間の税込みの世帯所得」を質問しており、世帯総収入から可処分所得を推定している。総収入の回答は、所得の実額ではなく「100万円未満」「100-200万円未満」「200-250万円未満」など一定の所得幅の選択肢の中から選ぶ形であり、可処分所得はこのような所得幅を用いて推定している。世帯構成ごとに、相対的貧困の基準となる「所得幅カテゴリー」を設定し、相対的貧困線を明確に下回る場合のみを相対的貧困として扱っている。本研究では、相対的貧困状態にある世帯を「貧困世帯」、そうでない世帯を「非貧困世帯」として区別している。
335前掲332
336苅谷は、「父職」「父の学歴」「母の学歴」を出身階層の変数として用いている。
337前掲330
338前掲331