第5章 現行指標に追加すべき新たな指標の例(2.2)

2. 教育の機会均等の確保に関する指標

2.2. 学習習熟度の把握

2.2.1. 「学力に課題のある子供の割合」

(1)指標候補の例とする理由

親の所得が子供の学力に影響を与えるとの指摘がある。将来の貧困を防ぐためには低学力からの脱却が重要であり、学校教育による学力保証が重要となる。将来的な貧困を予防するという観点から、低所得世帯の子供だけではなく、全ての子供を対象とし、学力に課題のある子供の割合を把握する必要がある。

(2)大綱における関連施策

現行の子供の貧困に関する施策と関連施策は以下のとおりである。

  • 貧困等に起因する学力課題の解消のための教員定数の加配措置
  • 地域未来塾による学習支援の充実
  • 生活保護世帯の子供を含む生活困窮世帯の子供への学習支援
  • 児童養護施設等で暮らす子供への学習支援
  • 子どもの生活・学習支援事業
  • 沖縄子供の貧困緊急対策事業
(3)活用が考えられる統計調査

学力に課題のある子供の割合を把握するのに寄与するわが国の統計調査としては、以下の2つが候補として考えられる。

1 国立教育政策研究所「OECD生徒の学習到達度調査(PISA:Programme for International Student Assessment)」における生徒の学習到達度調査(PISA)の習熟度レベルが実生活で効果的、生産的に能力を発揮し始めるレベルに満たない子供の割合

2 国立教育政策研究所「IEA(国際教育到達度評価学会)国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:Trends in International Mathematics and Science Study)」における算数・数学及び理科の教育到達度の低い水準に該当する児童生徒の割合

以上2つの統計調査は、実施時期、対象、把握する学力について以下のような違いがある。

1OECD生徒の学習到達度調査(PISA:Programme for International Student Assessment)」

PISAは15歳児を対象に3年ごとに実施している調査で、現時点での最新値は2015(平成27)年である。2000年以降「習熟度レベルが実生活で効果的、生産的に能力を発揮し始めるレベルに満たない子供の割合」は以下のとおり推移している。

図表5-2 PISAの習熟度レベルが実生活で効果的、生産的に能力を発揮し始めるレベルに満たない子供の割合の推移

PISAの習熟度レベルが実生活で効果的、生産的に能力を発揮し始めるレベルに満たない子供の割合の推移

PISAの習熟度レベルが実生活で効果的、生産的に能力を発揮し始めるレベルに満たない子供の割合の推移

出典:OECD生徒の学習度到達度調査(PISA)(国立教育政策研究所)

※平成12年から3年ごとに実施。最新の調査は平成27年。

注1) 平成27年調査では、科学的リテラシーと読解力は習熟度レべル1a以下、数学的リテラシーはレベル1以下の子供は、実生活で効果的・生産的に能力を発揮し始める習熟度レベルに満たないとされている。


2IEA(国際教育到達度評価学会)国際数学・理科教育動向調査(TIMSS:Trends in International Mathematics and Science Study)」

TIMSS調査は、4年ごとに実施され、1995年から過去6回の調査がなされている。「算数・数学及び理科の教育到達度の低い水準に該当する児童生徒の割合」は現時点での最新値は、2015年であり、以下のとおり推移している。

図表5-3 TIMSSの教育到達度が中程度の水準に満たない子供の割合の推移

TIMSSの教育到達度が中程度の水準に満たない子供の割合の推移

TIMSSの教育到達度が中程度の水準に満たない子供の割合の推移

出典:IEA‘s Trends in International Mathematics and Science Study - TIMSS 2015 より作成

国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)(国立教育政策研究所)
※実施機関はIEA(国際教育到達度評価学会)。平成7年から4年ごとに実施。小学校4年生に対する調査は平成11年では非実施。最新の調査は平成27年。

注1) TIMSSでは中程度の水準(Intermediate Benchmark)を475点に設定しており、これに満たない子供の割合を低学力の子供の割合として示している。この数値については、各水準に達した子供の割合の差から求めたものであり、丸めによる差異が見られる場合がある。


(4) 考慮すべき点

PISAOECDが、TIMSSIEAが行う調査であり、いずれも国際比較を目的としている。そのため、調査内容や調査項目はPISA及びTIMSSの評価の枠組みに基づいて決められるものであり、PISATIMSSには世帯収入や世帯属性に関する調査項目が含まれていない。

また、学力の把握を目的とした調査に「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)がある。全数調査であることから有用性は高いが、問題の難易度が毎年一定でないため、調査結果を年度間で正確に比較することができない(経年分析調査の実施年度を除く)。ただし、平成25年度保護者に対する調査では、世帯収入や世帯属性を把握した。