第5章 現行指標に追加すべき新たな指標の例(4.1)
4. 検討内容のまとめ
4.1. 新たな指標の例を含めた指標体系
本章では、追加指標として考えられる指標候補についてまとめてきた。最後に現行の指標を含む子供の貧困に関する指標体系の全体像を示す(図表5-11)。
なお、本研究事業では、子供の貧困をより多面的に捉え、国における関連施策の実施状況や対策の効果等の検証・評価のために意義があり、追加することが望ましいと考えられる指標について検討を行ってきた。その過程で追加すべきとの結論に至らなかった指標候補についても参考までに、一覧にする(図表5-12)。
図表5-11 新たな子供の貧困に関する指標(案)体系の全体像
指標候補名 | 候補として選定した理由 | 追加すべきとの結論に至らなかった理由 |
---|---|---|
低所得世帯等の子供の保育所・幼稚園等就園率 | 幼児期における質の高い教育の保障は、将来の進学率の上昇や所得の増大をもたらすなど貧困を防ぐ有効な手立てであり、低所得世帯全般について、また、幼稚園に入園可能となる満三歳で保育所・幼稚園等への入所率の傾向に違いがあるとの指摘もあることから、年齢別に把握することが適当ではないかと考えられたため。 | 国民生活基礎調査における所得票調査対象世帯のうち、低所得世帯又はひとり親世帯であって、保育所・幼稚園に行っている世帯は数十件程度しかないと推測され、標準誤差率が大きく、数値の変動を評価することが困難であると考えられるため。 |
低所得世帯の学校外活動費 | 学校外教育支出と学力との相関関係が強いとの指摘があり、学校教育のみならず、学校外における教育機会の確保が重要であるが、低所得世帯においては十分な機会を得られない可能性があるため、低所得世帯の状況について把握することが適当ではないかと考えられたため。 | 国において、学校教育の充実を図ることが重要であるとともに、地域未来塾による学習支援の充実などは学校外活動費では捉えることができないため。 |
未処置のう歯を有する子供の割合 | 子供たちの健やかな成育環境を確保し、将来の貧困を防ぐためには、健やかな発育・発達及び健康の維持・増進、発達段階に応じた生活習慣の確立などの健康・生活習慣の確保が重要である。健やかな発育・発達を確保する上で重要であり、かつ、適切な生活習慣の確立により予防が可能と考えられるう歯についてその有病率を把握することが適当ではないかと考えられたため。 | 貧困と関連があると考えられる複数の未処置のう歯を有する子供を把握できる統計がなく、単に未処置のう歯を有する子供の割合であると、貧困の与えた影響が不明であるため。また、う蝕の予防が将来の貧困の防止に役立つことを明らかにした研究は見られない。 |
学校給食の実施状況 | 子供たちの健やかな成育環境を確保し、将来の貧困を予防するためには、適切な栄養の摂取の確保が重要であるが、貧困の子供は栄養確保が十分でないとの指摘もあるところ、学校給食は適切な栄養を摂取する重要な機会ではないかと考えられたため。 | 学校給食の実施状況は、子供の貧困対策の関連施策の実施状況を示すものであるところ、今回の検討では子供や家庭の状況を示すものを候補として選定することが適当であるとしたため。 |