第6章 物質的はく奪指標(1.1)

1. 物質的はく奪指標の基本的概念等

1.1. 物質的はく奪指標の基本的概念

物質的はく奪指標は、「1日3食食べることができるか」、「修学旅行に参加できるか」などの生活に必要な財・サービスを選定し、それらが経済的な理由で享受できない場合を調査し、貧困の状況を示す集計的指標である。所得の状況を把握する指標(相対的貧困率など)を補完し、所得だけでは測れない生活の質を把握する試みといえる。また、国際比較や地域間の比較になじみやすい指標として、欧州を中心に設定する動きがみられる。

※主に先進国において、貧困を測る指標として用いられている相対的貧困率は、所得が生活の水準を保つために不可欠であるという理由や、所得に関する統計調査が整備されているといった理由から、典型的な指標とされている。しかし、算定の基礎となる所得に学習支援などの現物給付や家族の介護などの非金銭的な負担が反映されない、資産などのストック、ローンなどの負債が反映されないなどの制約がある。物質的はく奪指標の併用は、相対的貧困率が生活水準を保つための資源(=金銭)の状況は示しているが、生活水準そのものを示しているとは言えないとの指摘を踏まえてのものと考えられる。512

512このような指摘がなされている先行研究は複数みられる。詳細は脚注10を参照。