第6章 物質的はく奪指標(1.2.3)
1. 物質的はく奪指標の基本的概念等
1.2. 諸外国における活用状況
1.2.3. フランス
フランスでは、EU-SILCの項目に加え、国立統計経済研究所(INSEE)が独自の項目を調査・集計した「所得と生活水準統計(Statistiques sur les Ressources et Conditions de Vie = SRCV)」により算出している。
物質的はく奪指標の項目は、4分野に分類された下記の計27項目からなる。
(1) 家計の厳しさ(7項目): 1)返済に充てる額の割合が所得の3分の1を超過している、2)月に1度の頻度で金融機関の借越しをする、3)日常的な出費に足りる収入がない、4)自由に使える預貯金がない、5)過去12か月の間に、貯蓄を消費の赤字補填に使い果たした、6)倹約という手段に頼る、7)生活基準が「金銭的に困難である」「借金をするしかない状況」と感じられる
(2) 過去12か月における支払の遅延(3項目):1)電気、ガス、水道、電話などの支払の遅延があった、2)主たる住居の家賃の支払の遅延があった、3)税金(所得税、地方税)の支払の遅延があった
(3) 消費の制約(9項目):1)住居を快適な室温に保つ、2)年に1度、1週間の自宅以外での休暇にかかる費用を払う、3)使用できなくなった家具を買い替える、4)新しい衣類の購入、5)1日おきに肉、魚又はそれに類するベジタリアン食品を摂取、6)月に一度、飲食を共にするために家族親戚や友人を招く、7)年に一度、家族親戚や友人に贈り物をする、8)状態の良い靴を2足以上保持する、9)金銭的な理由で、過去2週間のうち、満足な食事を取れなかった日がある
(4) 住居の問題(9項目):1)居住者が過密である、2)住居内に浴槽又はシャワーがない、3)住居内に水洗トイレがない、4)給湯設備がない、5)暖房設備がない、6)狭すぎる、又は部屋数が不足している、7)暖房を使用するのが困難、又は費用がかかりすぎる、8)湿気が多い、カビが生える、屋根に穴があいている、9)道路、工場、隣人など騒音の問題がある
以上の27項目のうち8項目以上の欠如を「生活状態の貧困」と定義し、SRCVの客体数に対する生活状態の貧困にある世帯の割合を算出している。