第7章 まとめと今後の課題(1)
1. 既存の統計をもとにした新たな子供の貧困に関する指標について
本研究事業では子供の貧困に関する指標の体系について検証を行い、改めて現行25指標を整理した上で、関連施策の実施状況や対策の効果等の検証・評価を行う上で必要とされる指標について検討を行った。
現行指標に追加すべき新たな指標の例として、「高等学校中途退学率」、「学力に課題のある子供の割合」、「朝食欠食児童・生徒の割合」、「相談相手が欲しいひとり親の割合、必要な頼れる相手がいない人の割合」、「ひとり親家庭の親の正規の職員・従業員の割合」、「ひとり親家庭で養育費の取決めをしている割合、ひとり親家庭で養育費を受給していない子供の割合」の6指標を提案した。
しかしながら、アドバイザーなどの指摘も踏まえれば、以下のとおり、残された課題もあると考えられる。
- 今回提案した指標のうち、複数の統計が考えられる、「朝食欠食児童・生徒」の割合」などについては、その動向を踏まえた絞り込みが必要ではないか。
- 例えば、「保育園・幼稚園等就園率」、「高等学校等中途退学率」、「学力に課題がある子供の割合」、「朝食欠食児童・生徒の割合」については、低所得世帯の状況などきめ細かい状況の把握ができないものもあり、きめ細かい統計調査の実施の在り方など、費用対効果の観点も含めて更なる検討が必要ではないか。
- う歯の状況、子供の孤食の状況、親子で一緒に過ごす時間、子供の放課後の過ごし方・文化活動・自然体験・スポーツ体験などの多様な体験など健やかな成育環境の確保の分野や不登校の状況など、物質的はく奪指標の構成項目との関係にも留意しつつも、指標の更なる充実の検討が必要ではないか。
- 今回提案した指標候補についても、可能であれば独自調査の実施などを通じ、所得などを被説明変数として、指標候補を説明変数とする統計的な精査を行うことが望ましいのではないか。
- 最も把握すべき貧困の状況にある子供や家庭が通常の統計調査では対象からもれてしまうおそれがあることから、出生時、小学校入学時、中学校卒業時に調査を行うことも考えられるのではないか。
- 現行の、生活保護世帯等の子供の就職率(中学校卒業後、高等学校卒業後)では、指標の数値の評価が難しいことから、改善することが必要ではないか。