第2章 高齢社会対策の実施の状況 

(1)各種の調査研究等の推進

ア 高齢者に特有の疾病及び健康増進に関する調査研究等

 痴呆、悪性新生物(がん)等の高齢期にかかりやすい疾患については、長寿科学総合研究事業等においてこれまで調査研究が行われており、免疫不全症の治療法開発の進展、アルツハイマー病の早期確定診断法の開発、骨粗しょう症治療のガイドラインの作成等に関する研究が行われている。また、長寿医療の専門家で研究班を組織し、老年病の成因、診断、治療、予防等に関する基礎的、臨床的研究を推進している。
 また、高齢者の死亡原因は、がん、脳血管疾患、心疾患が上位を占めており、高齢期の健康状態と生活習慣病や慢性疾患の予防・治療は深く関係していることから、これらに対する調査研究の推進があわせて重要である。
 このうち、がん対策については、「がん克服新10か年戦略(平成6年度〜15年度)」に基づき、がんの本態解明の研究の充実、がん克服を主眼とした臨床や予防研究の重点的な推進を図っている。なお、今後のがん対策については、平成15年7年に、16年度からの新たな10か年の戦略として、「第3次対がん10か年総合戦略」を策定し、がんの“り”患率と死亡率の激減を目指して総合的対策の推進に引き続き取り組んでいくこととした。
 また、生活習慣病や慢性疾患については、画期的・独創的な新薬の開発に向けて、創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業を行っている。
 さらに、がん及び心筋梗塞、要介護状態の大きな原因となる脳卒中、痴呆及び骨折については、ゲノム科学やタンパク質科学など先端科学を用いた治療技術・新薬の研究のほか、自己修復能力を用いた再生医療の実現のための研究等を行っている。
 また、アルツハイマー病などの神経変性疾患や生活習慣病の克服に資する、関連遺伝子の探索や機能解明研究などを推進した。
 さらに、平成15年度から、個人個人にあった予防・治療を可能とする医療(テーラーメイド医療)や幹細胞を用いた再生医療の実現化を目指した研究開発、細胞・生体機能を生命情報技術・先端イメージング技術によってシミュレーションするプログラムの開発、光技術を融合した生体機能診断及び検診技術の開発に着手するとともに、引き続きタンパク質の構造・機能解析や基礎的な研究成果を適切に社会に還元するための橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)等の推進を図った。
 さらに、高齢社会に対応し健康増進に寄与する食品の開発を促進するため、バイオマーカー(酵素や細胞等を使用した簡易な指標)や遺伝子情報等を活用した低コストで効率的な食品機能性の評価技術及び新規健康志向食品の製造技術の開発支援を行った。

 

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