第2章 高齢社会対策の実施の状況 |
コラム 04
高齢者雇用への取組 ア 富士エンヂニアリング(株) 群馬県太田市で、産業機械の製造を行っている「富士エンヂニアリング株式会社」は、従業員数75人のうち半分が20歳代、平均年齢が30歳代という若い会社であり、60歳以上の従業員は現在5人(6.7%)という状況である。 同社の定年は60歳であるが、希望者全員を65歳まで継続雇用している。それ以降も、本人の希望により継続勤務が可能であり、現在の最高年齢者は75歳である。 定年時には一度退職金を支払い、継続雇用時の月額賃金及び賞与を60歳到達時の80%とするが、65歳までは毎年人事考課を行い、昇給も可能となっており、能力評価によって従業員のやる気を引き出す仕組みになっている。 同社では、「人材が企業の生命線」との観点から、従業員教育に力を入れてきており、従業員参加による教育委員会を中心に新入時から階層別に5つの講習、職能別に基礎から4つのレベルに分類した教育訓練が行われている。 また、全従業員の職務能力マップ表を作成し、公表することにより、従業員自らの積極的な能力開発を促している。 そのほか、高年齢者と若年者とを組み合わせた1チーム6人程度のプロジェクトチームによる生産方式を導入することにより、製造現場がそのまま高い専門技術力の継承を図る教育訓練の場となっている。 このような様々な取組の一方で、採用抑制やバブル期の離職等の影響もあり、40〜50歳代を中心とする従業員が少なく、技術の維持及び伝承が大きな課題となっている。 同社では、従業員全員を一人何役もこなせる少数精鋭の多能技術者にするよう努めており、今後も、様々な技能を身につけた高年齢者は、その専門能力においても、チーム内の指導的役割においても、必要不可欠な存在となっている。 (平成16年度高年齢者雇用開発コンテスト 厚生労働大臣表彰最優秀賞受賞)
作業風景(富士エンヂニアリング)
イ オーエムエンジニアリング(株) 新潟県長岡市で工作機械の製造、販売及び修理を行っている「オーエムエンジニアリング株式会社」では、従業員数56人のうち、最高年齢者の69歳を筆頭に60歳以上が16人(28.6%)おり、多くの高年齢者が若者と共に生き生きと働く姿が見られる。 コンピュータ化が進んだとはいえ、不具合の際の対応等、若いころからの経験や技能の蓄積である「匠の技」がまだまだ必要とされる現場では、高い技術を持つ高年齢者は重要な戦力となっている。 同社では、40歳代の従業員が少ない中で、ベテランである高年齢者と若者を組み合わせ、一緒に作業をさせることにより、高年齢者の技術をいかし、次世代への効果的な技術の伝承に努めている。 (平成16年度高年齢者雇用開発コンテスト 厚生労働大臣表彰優秀賞受賞)
作業風景(オーエムエンジニアリング)
ウ (協)苫自整ビジネスサービス 北海道苫小牧市の苫自整ビジネスサービスは、協同組合という形式で高齢者雇用の取組を進めている。 同組合は、同地区の自動車整備組合と企業の共同出資により設立されたもので、主に定年退職した高年齢者から人材を確保し、市営バスの整備・保守管理、車の防錆や室内清掃、ワックスがけ処理などの業務を請け負うとともに、組合加入の事業所への労働者派遣事業も実施している。 視力の低下に対応するため各自に一つ加工灯を支給するなどの高齢従業者が作業しやすいように工夫を行っているが、従業者本人が自分で利用しやすいように設備や道具を工夫する場合もある。 この事業は、各自動車整備会社から前述の防錆処理などの業務を集中して請け負うことにより、組合員企業のコスト低減に結びつくほか、整備業界における高齢従業員の経験と技能をいかした高齢者の雇用確保にもつながっている。 また、派遣就労という形で派遣事業所で働き、その後同事業所に正規採用されるという例も多く、協同組合ならではの利点もあるという。
作業風景(苫自整ビジネスサービス)
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