東日本大震災による洋上漂流物Q&A
2011年3月11日に発生した東日本大震災により生じた津波によって、家屋やコンテナなどが陸上から太平洋へ流出し、また、海上にあった、漁船や、漁具なども沖合へ流されました。これらは海流と風の影響を受け、その多くは太平洋を東へ流れ、その一部が、海中に沈まず、洋上を漂流していると考えられています(以下では、これらを「洋上漂流物」と言います)。
震災直後、洋上漂流物は大きな塊になっているものもあり、航行船舶等から、多くの目撃情報が寄せられましたが、昨年秋ごろから、目撃数は劇的に減少しています。その理由としては、時間の経過とともに、洋上漂流物が散らばって見えにくくなったことや、その一部が海中に沈んでしまったことなどが考えられます。
政府では、専門家とも協力しながら、洋上漂流物の総量推計、漂流状況の把握及び今後の予測を行うとともに、関係国と情報共有・意見交換を行ってきています。
ここでは、洋上漂流物についてよく寄せられる質問についてお答えします。
洋上漂流物について
- 洋上漂流物は全部でどのくらいあるのですか?
- 東日本大震災発災直後において、150万トン程度が洋上漂流物となったと推計されていますが、 既に陸に引き上げられたものや時間の経過とともに海中に沈んでしまっているものもあると考えられるため、現在漂流しているものは、それよりもさらに少ない量であると考えられます。
- 東日本大震災により、被災三県において生じたがれきの総量は、2,000万トン以上と推定されています。東日本大震災発災直後においては、このうちの500万トン程度が津波により太平洋に流出し、その7割程度(350万トン程度)が日本沿岸付近等の海底等に堆積し、残りの3割程度(150万トン程度)が洋上漂流物となったと推計されています。
ただし、洋上漂流物の中には、既に陸に引き揚げられたものや時間の経過とともに海中に沈んでしまっているものもあると考えられるため、現在漂流しているものは、150万トン程度よりもさらに少ない量であると考えられます。 - 総量推計結果(PDF形式:22KB)
- 洋上漂流物にはどのような物が含まれるのですか?
- 洋上漂流物の9割以上は家屋等の一部及び流木であると推計されています。
東日本大震災により流出した主要な災害廃棄物は、倒壊した家屋等、自動車、流木、船舶、養殖施設、定置網及びコンテナであると考えられており、これらのうち、海に沈みにくい家屋等の一部及び流木が洋上漂流物の9割以上を占めていると推計されています。
- 洋上漂流物はどのように漂流し、いつ、どこに漂着するのですか?
- 2013年3月に発表された最新の予測結果によれば、洋上漂流物の大部分を占める家屋が壊れて生じた板や水船状態の漁船などについては、2013年4月頃から、比較的密度の高い部分が北米大陸の西海岸の沿岸域に到達し始めるとされています。また、漂流物の種類によっては、偏西風の影響をあまり受けないものやより強く受けるものもあるため、到達時期は前後すると予測されます。
- 漂流予測結果(PDF形式:1.2MB)
- 洋上漂流物に放射性物質が付着している可能性はないのですか?
- 以下のような理由から、洋上漂流物に放射性物質が付着している可能性は、極めて低いと考えられます。
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- 東京電力福島第一原子力発電所で事故が発生したときには、ほとんどの洋上漂流物は、既に当該発電所から離れた海洋上に位置していたと考えられます。
- 仮に当該発電所から放出された放射性物質が、ちり等の一部として運ばれ、海面へ降下し、洋上漂流物に付着したとしても、主な放射性物質である放射性セシウムは、漂流中に、海水及び雨により、ちり等とともに既に洗い流されていると考えられます。
- その他の主な放射性物質である放射性ヨウ素は、半減期が8日と短く、既に検出できないレベルとなっていると考えられます。
- 上記の理由から、現時点での洋上漂流物に放射性物質が付着している可能性は極めて低いと考えており、洋上漂流物への放射性物質の付着についての調査は行っておりません。もし、洋上漂流物に放射能汚染があるとの科学的根拠に基づく報告があれば、個別の事案ごとに、具体的対応を検討していきます。
- 船舶が航行する上で洋上漂流物は危険ではないのですか?
- 商船船舶や漁船等から情報収集を行ってきていますが、これまでのところ、船舶の航行上、特段の問題は報告されていません。
- 海洋生態系に悪影響はないのですか?
- これまでのところ、具体的な問題は報告されていませんが、そのような報告があれば、対応について検討していきます。
- 漁業への悪影響はないのですか?
- これまでのところ、具体的な問題は報告されていませんが、そのような報告があれば、対応について検討していきます。
- 私は海外に住んでいるのですが、宝石や個人的なアルバムなどが漂着しているのを見つけた場合はどうすればいいのですか?
- 東日本大震災の津波によって漂流しているがれきのうち、所有者等が特定できる物が外国に漂着する可能性は極めて低いと考えられます。
ただし、もし、あなたが(1)日本からの漂流物であり、(2)所有者等の特定が容易であり、(3)一般的、または個人的に価値のあると考えられる物(具体的には日本の船とともに漂着した宝石やアルバムなど)を見つけた場合には、まず警察など、現地の政府機関に連絡してください。 (日本政府は、洋上漂流物が漂着すると考えられる関係国に対して、その国の政府機関が、状況証拠等から、その漂着物が上記3つの条件に当てはまると判断した場合、日本の在外公館に連絡するようにお願いをしています。)
- 私は海外に住んでいるのですが、遺体が洋上漂流物と一緒に漂着する可能性はあるのでしょうか?
- 東日本大震災により亡くなられた方の遺体が、約1年にわたり海洋を漂流し、外国に漂着する可能性は、船などと一緒に漂着する場合等を除いて、極めて低いと考えられます。
さらに、船についていえば、震災直後、海上保安庁が相当数の漂流船舶内部の捜索を行い、無人であることを確認しています。
仮に海岸等で遺体を発見した場合は、震災と関係があるか否かにかかわらず、すぐに現地の警察に連絡してください。
洋上漂流物に関する日本政府の取組について
- 日本政府はこの問題についてどのような取組をしているのですか?
- 内閣官房総合海洋政策本部事務局取りまとめの下、関係省庁・機関が連携し、本件の対応にあたってきています。具体的な取組は、以下のとおりです。
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- 航行船舶等からの情報収集による漂流物の漂流状況の調査
- 洋上漂流物の総量推計(PDF形式:22KB)
- 洋上漂流物の漂流予測(PDF形式:1.2MB)
- 日米関係機関・専門家間における情報共有・意見交換
- 洋上漂流物の総量推計結果及び漂流予測結果を踏まえ、今後更に、関係国・機関と情報共有・協議を行い、政府として必要となる対応を検討していきます。
- 漂流物、米国等の沿岸国への漂着物に関し、日本政府としてどのように対応しているのですか。
- 我が国から流出した漂流物につき、我が国としても憂慮しています。
そのため、平成24年9月8日のAPEC首脳会議の際に、野田総理大臣(当時)より、善意に基づく見舞金として、米国及びカナダに対し、総額600万米ドル(米国:500万米ドル、カナダ:約100万加ドル)の資金供与を行うこととした旨を表明しました。
これを受け、平成24年12月には、米国に対し、500万米ドルの資金供与を行いました。また、平成25年3月には、カナダと、本件資金供与に関する口上書を交換しました。
洋上漂流物につき、引き続き、米国を始めとする関係国・機関との迅速な情報共有及び緊密な意思疎通を継続し、協力していきたいと考えております。
- 日本政府は米国等の沿岸国に対し具体的に何を協力するのですか。
- 米国等からは情報提供などの要望が寄せられており、資料の提供や現地の海岸漂着ゴミ収集イベントの紹介、NGO活動への支援等の協力を行ってきています。
今後の協力、対応については、これまで行っている取組についても引き続き実施しながら、米国等関係国との意見交換を継続し、検討していきたいと考えております。 - 関連リンク
- 沿岸国で個人的に価値があると思われるものが漂着し、発見された場合の連絡体制はどうなっていますか。また、日本政府として有価値漂流物の発見者と所有者をつなぐ支援をするのですか。
- 東日本大震災による洋上漂流物のうち、(1)日本からの漂流物であり、(2)所有者の特定が可能であり、(3)一般的または個人的に価値のあると考えられる個人的アイテムについては、所有者の特定と漂流物の返還を支援するため、政府として何ができるか検討しているところです。