国連経済社会理事会 E/ESCAP/APDDP/4 2002年9月17日 原文:英語 (内閣府仮訳) 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP) 「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)」最終年ハイレベル政府間会合 2002年10月25-28 日 滋賀県大津市 アジア太平洋障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく 社会に向けた行動のための地域フレームワークの検討 (暫定議題6) アジア太平洋障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ 権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク(案) (注.「びわこ」は、本件ミレニアム・フレームワークを検討・採択する予定の「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合が滋賀県大津市で開催されることにちなんだもの。) 要約  第58回ESCAP総会は、2002年5月22日付けで、21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会の促進に関する決議58/4を採択した。そして、第58回総会は、その決議を以て、「アジア太平洋障害者の十年(1993〜2002年)」を更に10年間(2003〜2012年)延長することを宣言した。  本文書は、新たな「十年(2003〜2012年)」において、障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会を目指す地域内各国政府や関係者による行動のための地域的政策勧告を提供する、地域行動計画案である。  本計画案では、新たな10年で優先的に取り組むべき7領域を明示している。これら優先的領域は、特に検討の必要な事項を有しており、そのため、今後達成すべき目標と必要な取組を盛り込んでいる。  本地域行動計画案は、障害者問題への関心が、ミレニアム開発目標及び関連の目標を達成する努力と不可分となるよう、それらの目標を明確に取り込んでいる。 目次(ページ略) 一.序文 二.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の原則と政策方針 三.優先的な行動領域 四.優先的領域における目標と行動 A.障害者の自助団体 B.女性障害者 C.早期対処と教育 D.自営を含む職業訓練と雇用 E.各種施設及び公共交通機関へのアクセス F.情報通信技術を含む情報と通信へのアクセス G.能力開発、社会保障及び持続的生計手段事業による貧困の削減 五.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の目標達成のための戦略 A.障害に関する国の行動計画(5か年) B.障害者問題への権利に基づくアプローチの促進 C.計画のための障害に関する統計と障害の共通な定義 D.障害の予防、リハビリテーション及び障害者の権能強化のための地域に根ざした開発アプローチ 六.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の遂行における協力と支援 A.準地域間の協力と連携 B.地域協力 C.地域間協力 七.監視と評価 A.地域会合および準地域会合の開催 B.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の調整と監視のための地域作業部会 C.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の中間評価 一.序文  「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合に出席した、我々ESCAP加盟・準加盟メンバー政府の代表は、 1.推定4億人の障害者は、アジア太平洋地域諸国の発展に貢献する能力を持っており、集団行動を通じて地域社会に変化をもたらす主体となってきているが、大多数の障害者は、彼らの地域社会における教育、雇用及びその他の経済・社会的機会から疎外され、最貧困層の20%を占めていることを認識し、 2.1981年の国際障害者年に続き、1982年12月3日に、国連総会にて、障害者の完全参加と平等及び権利保護の獲得を目的とした総会決議37/52「障害者に関する世界行動計画」が採択されたことを想起し、 3.「国連障害者の十年(1983〜1992年)」最終年に、「アジア太平洋障害者の十年(1993〜2002)」を宣言し、1992年、北京での「十年」開始会議において、「障害者の完全参加と平等に関する宣言」及び「十年」行動課題を採択することを通じた、アジア太平洋地域の政府の継続的な決意をも想起し、 4.12の政策領域(国内調整、立法、情報、啓発広報、施設の整備、コミュニケーション、教育、訓練と雇用、障害の予防、リハビリテーション・サービス、介助機器、自助組織、地域協力)において、「十年」の目標を達成するための政策ガイドラインを設定した「十年」行動課題及び1995年の中間レビュー会議で採択され、1999年に更に強化され、2000年の第56回ESCAP総会で採択された107の強化された実施目標を確約し、 5.90年代、教育、環境、人権、人口・開発、社会開発、女性の地位向上、児童及びハビタット(人間居住)の分野における、世界レベルの政策・事業に関する国連の様々なイニシアティブが、障害者問題を取り込んできたことを認識する。特に、世界社会開発サミットは、1995年3月の「社会開発に関するコペンハーゲン宣言」において、障害者は世界最大のマイノリティの一つとして、往々にして貧困、失業及び社会的孤立に追い込まれていると指摘した。同宣言は、各国政府が国連の「障害者の機会均等化に関する標準規則」を促進し、同規則の施行のための戦略を策定すべきであると提言した。 6.国際社会が、2000年9月8日に、21世紀における人類全体の向上を目指した多数の具体的公約を取りまとめた総会決議55/2「国連ミレニアム宣言」を採択し、急速なグローバル化が進む中での経済・社会開発に取り組むという各国政府の決意を表明したことを認識し、 7.このような世界レベル、地域レベルでの協力的な政策環境の下、ESCAP加盟・準加盟メンバー政府が、2002年5月22日の第58回ESCAP総会で、ESCAP総会決議58/4「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会の促進」を採択したことに感謝する。同決議は、特に、「十年」を更に10年間延長することを宣言した。この決議は、2002年より先のESCAPによる「障害者に関する世界行動計画」及び「アジア太平洋障害者の十年」行動課題の実現を更に促進するものである。 8.「行動課題」の12の全政策カテゴリーにおいて、全体的な向上が達成されたこと、しかしながら、改善の程度は一様ではなく、特に、障害を持つ青少年の教育機会については、引き続き驚くほど低い率にとどまったこと、また、顕著な地域内格差が見られたことに同意し、 9.各国政府に対し、2001年12月19日付国連総会決議56/168「障害者の人権及び尊厳を保護・促進するための包括的総合的な国際条約」に留意しつつ、特に障害者のための発展の権利という人権的視点に立ち、慈悲に基づくアプローチから権利に基づくアプローチへのパラダイム・シフトを奨励し、 10.「アジア太平洋地域の障害者の完全参加と平等に関する宣言」の未署名国に対し、右署名するよう、また、107の目標の実施に向け努力するよう強く促し、 11.「アジア太平洋の障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」を採択する。   インクルーシブな社会とは、万人のための社会を意味し、バリアフリーな社会とは、物理面や態度において、また社会、経済、文化的な障壁のない社会を意味する。権利に基づく社会とは、発展の権利を含む、人権の概念に基づく社会である、 12.「びわこミレニアム・フレームワーク」は、「精神障害者の権利に関する宣言」(1971年)、「障害者の権利に関する宣言」(1975年)、「障害者に関する世界行動計画」(1982年)、「障害者の職業リハビリ及び雇用に関する国際労働機関(ILO)条約159」(1983年)、「障害者の職業リハビリ及び雇用に関する国際労働機関(ILO)勧告168」(1983年)、「国連障害者の機会均等化に関する標準規則」(1993年)及び「特別な教育ニーズに関するサラマンカ声明と行動計画」(1994年)といった障害者関連の国連の取決めや使命、勧告と関連付けて見られることを確認し、 13.ミレニアム開発目標達成に際し、障害者に関する事項への取組は不可欠であるので、「びわこミレニアム・フレームワーク」が、ミレニアム開発目標の達成に貢献することを期待する。 二.「びわこミレニアム・フレームワーク」の原則と政策方針 14.アジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会を促進するため、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」は、以下の原則と政策方針に導かれる: (1) 教育、保健、情報と通信、職業訓練と雇用、社会福祉及びその他の分野における、障害者に対する機会均等や平等な扱いに関する法律・政策を制定・施行する。この法律・政策は、男女の性別、遠隔地、農村地域であることを問わずあらゆる種類の障害者を対象とする。それらは、権利に基づくものであり、インクルーシブで、分野横断的なアプローチを促進すべきである。 (2) 国のすべての開発政策・計画の不可分の部分として、障害者問題を取り込む。 (3) 障害者による団体、また障害者のために活動する団体の効果的な参加によって、障害に関する政策の策定、その実行の調整、及び実施状況のモニターを行うため、障害に関する国家の調整委員会を設立し、また強化する。 (4) 女性障害者の発展と、彼女らが性差別撤廃運動同様に、障害者自助団体へも参加することに重点を置きつつ、障害者と障害者団体の発展を支援し、彼らが障害に関する国の政策決定過程に参加できるようにする。 (5) 障害者を、特に貧困削減、初等教育、男女平等、若年層の雇用の分野で「ミレニアム開発目標(MDG)」を達成する取組の中心に据える。 (6) 政策立案と事業実施のために、国による、障害に関する統計資料の収集・分析能力を高める。 (7) 0〜4歳の障害児のための教育、保健、リハビリ、社会福祉を始めとするあらゆる分野での、障害に対する早期対処に関する政策を採用する。 (8) 障害の予防、リハビリ、障害者の機会均等に関する地域的取組を強化する。 (9) 社会基盤とサービスの開発において、特に農村・都市開発、住環境、交通と通信の分野において、総合的で経済効率を考慮した全市民のためのユニバーサルでインクルーシブな設計の概念を取り入れる。 三.優先的な行動領域 15. 更なる努力は、「アジア太平洋障害者の十年」(1993〜2002年)の実行期間中には十分な進展が見られず、行動が遅れた優先的領域に集中する必要がある。第58回ESCAP総会決議58/4は、以下を優先的政策領域として掲げている。 (a)障害者の自助団体 (b)女性障害者 (c)早期対処と教育 (d)自営を含む職業訓練と雇用 (e)各種施設及び公共交通機関へのアクセス (f)情報通信技術を含む情報と通信へのアクセス (g)能力開発、社会保障及び持続的生計手段事業による貧困の削減 優先的領域の図示(略) 四.各優先的領域の目標と具体的行動 A.障害者の自助団体 1.重要課題 16. 障害者は、彼ら自身と他の障害者のために支援し、情報を伝え、認識を広めるのに最も適任であり、誰よりもその能力を備えている。障害者自身が、彼らの関心を積極的に声にし、意思決定に参加する場合、障害者と彼らを取り巻くより広い地域社会の生活の質が向上することを証拠が示唆している。彼らの自助団体は、彼らの社会的、経済的、文化的及び政治的生活への完全参加を確保し、彼らが地域社会の発展に貢献できるようにする政策、立法及び戦略の適切な策定と実行について、自らの考えを述べるのに最も適しており、適切な情報を持ち、また話す必要を感じている。 17.彼らの自己代表の権利を認識し、意思決定過程に参加するために必要となる能力を向上させることが肝要である。障害者は、彼ら自身の課題を発言し、彼らの地域社会、ひいては社会全体において、彼らの発展や自立生活をもたらす改革を主唱しなければならない。しかしながら、子供や他の人々が彼ら自身につき発言できないときには、彼らの両親、家族やその他の支援者は、そのような支援が不必要になるまで、彼らの権利やニーズの主唱を助けるべきであり、またそれが可能であるべきである。 18. 障害者を代表する民主的な運動の展開は、障害者のニーズと権利に関する政府の適切な取組を確保するための手段の一つである。障害者の自助団体は、農村の団体・機関、また、特に、女性・少女障害者、知的障害者及び精神障害者といった周縁化された障害者の団体・機関を含めるべきである。 2.目標 目標1:政府、国際融資機関、非政府組織(NGO)は2004年までに、特にスラムや農村居住者に焦点を当てつつ、すべての分野における障害者自助団体の形成と発展を推進するために、適切な資源配分措置を伴った政策を採用する。 目標2:政府と市民社会組織は2005年までに、障害者の生活に直接、あるいは間接的に影響を与えるような事業の策定と実行に関する意思決定過程に障害者を組み入れるようにする。 3.目標達成のために求められる行動 1. 政府は、国家の調整委員会の指示の下、障害者の自助団体と、政府の様々な省庁、市民社会組織及び民間セクターとの協議・諮問のレベルを強化するための施策を実施すべきである。また、この施策には、女性障害者を始めとする障害者が、様々な意思決定過程に効果的に参加する方法についての訓練が含まれるべきである。政府は、上記の協議・諮問の実施のためのガイドラインを作成すべきであり、また、その協議・諮問の過程は、様々な障害を持った人々の自助団体の代表により定期的にレビュー・評価されるべきである。 2 政府は、国家の調整委員会の中に、様々な障害を持った人々の代表からなる政策レビュー・パネルを設立すべきである。このパネルは、障害者に直接・間接に影響するすべての政策とその実施をレビューすべきである。 3. 政府は、国から地方までのすべてのレベルの政府を始めとする、立法・司法機関などの公共生活のすべての分野で、障害者の代表を増加するための措置を取るべきである。これは、アファーマティブ・アクションや、差別撤廃法という手段により促進されるべきである。 4. 自助団体は、障害を持った青年や女性を始めとするそのメンバーたちが、地域社会一般及び彼ら自身の機関において、相談員的・リーダー的役割を果たすため、また、彼らが、自助団体のメンバーのリーダーシップ・管理能力を育む指導者としての役割を果たすことができるよう、メンバーたちの権能強化を図る事業を開発すべきである。 5. 各国の障害者の自助団体は、農村の障害者による、相互支援、意見表明及び事業・サービスの紹介を行う自助団体への参加を促進し、また、農村・都市開発NGOや農村開発を推進する政府機関との協力を積極的に進めるためのメカニズムを開発すべきである。 6. 国際融資機関とNGOは、それらの開発政策において、障害者の自助団体を促進・強化するための資源配分・技術供与に高い優先度を与える。 B.女性障害者 1.重要課題 19.女性障害者は、女性として、また障害者としての地位を通じて何倍も不利であり、貧困者の内にもその数は多く、社会で最も疎外された人々である。女性・少女障害者は、障害を持った男性・少年に比しかなりの程度、家族の中で差別に直面し、保健、教育、職業訓練、雇用及び所得機会へのアクセスを否定されており、社会的・地域的活動から疎外されている。 20.女性・少女障害者は、身体的・性的虐待の高いリスク、リプロダクティブ・ライツの否定及び結婚や家族生活に入る機会の少なさから、更なる差別に直面している。農村部の女性・少女はより不利な境遇にあり、彼女らの文盲率は高く、情報やサービスへのアクセスはごく限られている。幼少期より烙印を押され、拒絶され、また向上のための機会を否定され、少女障害者は、自尊心や地域社会における女性としての役割を持つことなく成長する。 21.障害者の自助団体において、女性障害者は更なる差別に直面している。自助団体に参加する女性障害者は少なく、リーダー的役職にはほとんど見られない。彼らの関心事項は、自助団体の主唱議題で取り上げられず、若い女性障害者は、リーダー養成研修の対象となってこなかった。 22.女性一般の生活向上をもたらしたいわゆる女性運動は、女性障害者の生活にはほとんど影響を与えなかった。女性障害者は、一般の女性団体に含まれることなく、彼らの問題は、特別な問題としてのみとらえられ、さらに、彼らはこの状況を変える主唱能力を持っていなかった。 23.政府は、必要な支援サービスを提供し、また、女性障害者による通常の女性発展運動への完全参加を促進し、この不平等を是正する特別な責任を有する。 2.目標 目標3:政府は、2005年までに、女性障害者の権利を守る反差別的施策を確保する。 目標4:各国の障害者自助団体は、2005年までに、組織の管理、訓練、主張活動を始めとする諸活動への女性障害者の全面的な参加と平等な代表を促進する方針を採用する。 目標5:女性障害者は、2005年までに、国の一般の女性団体に含まれるべきである。 3.目標を達成するために求められる行動 1. 政府は、女性障害者の権利を擁護するための、そして、特に、保健サービス、教育、訓練及び雇用への平等なアクセスを確保し、性的その他の虐待・暴力から保護し、彼女らを差別から守るための施策を実施すべきである。 2. 政府、NGO及び自助団体は、女性障害者の状況についての認識を高め、肯定的な態度や役割及び彼女らの発展の機会を促進するため、国民の意識向上を図る事業を実施すべきである。 3. 政府は、地域、国家及び地方レベルで、適切な性に関連した情報が、女性障害者間で普及するような仕組みを構築する。その情報には少なくとも国際的な文書や国家の法制に関する情報が含まれなければならない。 4. 障害者の自助団体は、女性障害者が、地方、国家及び地域レベルの障害者自助団体の代表に加わるよう措置すべきである。 5. 自助団体は、会議やワークショップ、セミナーへの代表団の少なくとも半数以上を女性障害者で構成するようにすべきである。 6. 女性障害者は、自助団体による、管理的、総務的な分野の研修への参加を奨励され、また優先されるべきである。 7. 政府、NGO、自助団体及びドナーは、女性障害者の男女平等に関する意識の向上、また、障害者自助団体のあらゆるレベルでの政策・意思決定過程への参加能力、政府との協議・諮問の役割及び市民社会における主張行動能力の向上を図るために、女性障害者を対象としたリーダー養成研修を提供するべきである。 8. 女性障害者は、支援や情報発信・共有のために、自助団体内に自助グループを設け、さらに、国・地域レベルでのネットワークを立ち上げるべきである。 9. 女性障害者の団体やネットワークは、特に、教育、保健情報、研修、社会開発へのアクセスを重視しつつ、少女障害者の能力向上を促進すべきである。 10. 女性障害者の国及び地域レベルのグループ・ネットワークは、一般の女性団体に対し、情報の普及と発信と支援のために、女性障害者と自助団体並びに彼女らの関心事項を含めるよう提唱すべきである。 11. 一般の女性団体は、入手しやすい形式の教材だけでなく、利用しやすい会場の手配、支援を提供することにより、特に女性障害者を研修プログラムに参加させるべきである。 12. 政府、NGO、自助団体、ドナー及び市民社会は、常に、選択と自己決定における女性障害者の権利を促進・擁護しなければならない。 C.早期対処と教育 1.重要課題 24.入手できた資料によれば、アジア太平洋地域で、何らかの形で教育を受けている障害児及び青年は10%未満であり、その一方で、障害を持たない青少年のうち70%以上が初等教育を受けている。教育は、すべての児童の基本的権利であり、2015年までにすべての児童に初等教育を受けさせるという国際的な使命にもかかわらず、この状況は存在している。政府は、次の「十年」において、あらゆる障害を持った児童のニーズに応える適切な教育を確保すべきである。障害児に教育を提供する際、当該地域の各国政府が行う対応は、これまで様々なものであり、児童は、様々な公式・非公式の教育形態、そして別々のまたはインクルーシブな学校で教育されていることが認識されている。  25.障害児・青年が教育から疎外されると、更なる発展、特に彼らの職業訓練、雇用、収入及びビジネス発展のための機会から疎外されることになる。教育や訓練にアクセスできないと、経済・社会的自立の達成が妨げられ、また、自ら永続的かつ世代を越えて貧困に陥りやすくなる。 26.障害を持った乳幼児や幼児は、早期検査・発見(0〜4歳)を含む早期対処サービスへのアクセスが必要であり、また、障害児の潜在能力を最大限発揮させることを可能にするために、両親や家族に対する支援や訓練が必要となる。障害幼児への早期検査、発見、対処が、また、両親や看護者への支援が提供されなければ、教育の機会によって得られる障害児の能力向上が妨げられるという極めて困難な状況に陥る。 27.アジア太平洋地域の多くの国で、現在の障害児・青年のための教育の大半は、都市の養護学校においてであり、生徒数は限られている。「特別な教育ニーズに関するサラマンカ声明と行動計画」(1994年)は、地元の通常の学校での教育へのアクセスを確保するインクルーシブ教育は、農村地帯の障害児・青年を含め、大多数の障害児・青年が教育を受けるための最高の機会を提供すると勧告した。この法則の例外は、特殊学校等での教育が個々の児童のニーズに見合う場合にのみ、ケース・バイ・ケースで、検討されるべきである。特殊教育が、障害児の教育のために最も適した教育形態であると考えられるいくつかのケースもある(注1)。障害児を含むすべての児童の通常の学校での教育は、障壁や否定的な態度を除去し、また、地域社会における社会統合を促進する。両親や地域社会による学校活動への参加が、このプロセスをさらに強化する。 (注1.「障害者の機会均等化に関する標準規則」に関する1993年12月20日付国連総会決議48/96の別添6.教育、パラ8、参照) 28.障害児への質の高い教育を提供する際の障害とは、早期の発見・対処サービスの欠如、否定的態度、排除的方針と慣習、能力が様々である児童を教える一般教師への不十分な訓練、硬直的なカリキュラムと評価システム、通常及び特別授業の教師を補佐する特別スタッフの欠如、適切な教材の欠如及びアクセスが可能な学校環境を整備できていないこと等である。これらの問題は、健常児・青年を対象にした国のすべての保健・教育開発イニシアティブに、障害児・青年を含めるための政策、計画、戦略の実施及び資源の配分により克服可能である。 2.ミレニアム開発目標   本優先分野において、ミレニアム開発目標は、2015年までに、男女や場所を問わずすべての児童が初等教育課程を完全に修了できるよう、そして男女は、すべてのレベルの教育へ平等にアクセスできるよう確保することとしている。 3.目標 目標6:障害児・青年は、2015年までにすべての男子及び女子が初等教育課程を完全に修了するというミレニアム開発目標の最も重要な対象の一つとする。 目標7:2010年までに、障害児・青年の少なくとも75%が初等教育課程を完全に修了できるようにする。 目標8:2012年までに、家族が支援と訓練を受けながら、すべての乳幼児と幼児(0〜4歳)が、地元の早期対処サービスへのアクセスを持ち、受けられるようにする。 4.目標達成のために求められる行動 1. 政府は、2015年までにすべての子供が初等教育を受けるという「ダカール行動計画」や「ミレニアム開発目標」を達成するために、障害児を含む全ての子供の初等教育を義務化する法律を、実施制度とともに施行する必要がある。「ダカール行動計画」を受けての「万人のための教育国家計画」を始めとするすべての国の教育計画に、障害を持つ青少年が明確に組み入れられる必要がある。 2. 教育担当省は、障害児の家族や機関と相談・協議しつつ、教育政策を企画・策定し、障害児が地元の初等教育機関に参加できるようにする教育プログラムを開発する必要がある。政策を実施する際には、すべての児童は学校に通う権利があり、学校は学習者の差異を受け入れる責任があるとの明確な理解の下、状況に応じて、インクルーシブ教育のための学校制度を準備する必要がある。 3. 個人の学習ニーズに最適な学校を選べるような様々な教育オプションが提供されなければならない。 4. 教育予算において、特に障害児の教育のため、十分な公的予算が配分されるべきである。 5. 政府は、適切な早期対処、教育提供、資源配分及び支援事業の立案に必要な、0歳から16歳の障害児に関する総合的データを、他と協力しつつ収集する必要がある。 6. 障害児の早期対処、学校前、初等、中等及び高等教育のため、5か年の目標が設定される必要がある。2012年までに75%の障害児が学校に行くという目標を達成するため、進ちょく状況は細かくモニターされるべきである。 7. 保健担当省庁及び関連省庁は、障害を持ったすべての乳幼児と幼児(0〜4歳)のための早期対処サービスのための(専門医の)照会システムと共に、病院、一次医療や地域の医療保健施設で障害の十分な早期発見サービスを確立する必要がある。 8. 保健・教育担当省庁は、障害を持ったすべての乳幼児と幼児(0〜4歳)とその家族に対し、早期対処、支援及び訓練を提供するため、その他の関係省庁、自助団体、NGO、地域団体と協力し、早期対処サービスを確立する必要がある。 9. 教育担当省を始めとする政府は、国や地元のNGOと協力し、障害児の家族、学校及び地域社会に対し、障害児・青年のあらゆるレベルの教育に参加する権利についての意識啓発キャンペーンを実施する必要がある。また、特に男女の就学比に格差のある地域においては、障害女児の就学を特に進める必要がある。 10. 地域の各国政府は、すべての学校における、障害児を始めとするすべての児童のために、特殊及びインクルーシブ教育双方において教育の質を改善するために、必要に応じて以下の施策を採用する必要がある:(a)教育関連・学校職員、教師を含む公務員に対し、障害児の教育に対する積極的な姿勢を促進し、教育や障害児が地元の学校で教育を受ける権利についての啓発や障害児・青年を通常の学校に含めるための実践的な戦略についての研修を実施する;(b)様々な能力を持った児童を教えるための方法・技術、柔軟なカリキュラム及び評価戦略を、教師を対象とした包括的な研修で提供する;(c)障害を持った適当な候補者が教職に就くことを奨励する;(d)児童の評価等の手続き、児童中心の個別指導戦略、また、都市・地方における人材センターや専門的指導者などの学習・指導支援制度を確立する;(e)著作権保護の制約を受けずに、適切で利用しやすい教材、機器、装置を確保する;(f)個々の児童の能力に応じた、また、現場の状況に合った、柔軟なカリキュラムを確保する;(g)学習者の様々なニーズに合った評価・監視手続きを確保する。 11. 政府は、2012年までに、バリアフリーな学校及びアクセス可能な通学に向け、進歩的な事業を実施する必要がある。 12. 政府は、様々な障害を持った児童や青少年を教育するための効果的な方法をさらに開発するために、研究機関での開発事業を奨励する必要がある。 13. 障害者による、また、障害者のための団体は、障害児の教育のために意見表明することをその優先取組事項とする必要がある。 14. 経験や成功事例の共有を促進するため、また、インクルーシブ教育に向けた運動の発展を支援するため、地域内協力が強化される必要がある。 D.自営を含む職業訓練と雇用 1.重要課題 29. 国際基準、モデル的訓練の実施、国内での法律や政策にも関わらず、障害者を経済の中心に組み入れるという課題は未だ達成されていない。障害者、特に女性、青少年及び農村地域の障害者の多くは教育や職業訓練を受けておらず、また、雇用されておらず、能力以下の仕事に従事しており、貧しい状況にある。 30.障害者は、自由、公正、安全及び尊厳の下、生産的な仕事に就く権利がある。障害者は、ユニークな差異と能力を有し、彼らの障害ではなく、能力に応じて、彼らがしたいことを選ぶ権利を持つべきである。彼らには、すべての人に与えられるのと同じ教育、職業訓練、雇用及びビジネス環境が必要である。特殊な支援サービスや支援機器または職種内容の修正が必要となる人々もいるが、それらは、彼らの生涯にわたる生産性や貢献に比べれば、小さな投資である。さらに、生涯にわたり疎外されることで、しばしば社会心理的障壁の問題が生じることがあるが、この問題は、もし、障害者が職業訓練や雇用において成功するなら対処され得よう。 31.職業訓練と雇用の問題は、障害者の地域社会への全面的参画を念頭に、また変わり行く人口動態や雇用というマクロ的な観点から検討されなければならない。さらに、グローバル化、雇用の確保、貧困削減及び青少年・高齢者の失業といった問題に対応する際には、これらの問題や対応が障害者にどのように影響するか検討しなければならない。 32.一般に、障害者と一緒に働く訓練された有能な職員が不足しており、特に、雇用と職業訓練に関してはこの傾向が顕著である。国・地域レベルの効果的な政策・事業の立案、実施、評価、普及に関するその他の能力の問題についても引き続き取り組まれなければならない。障害者はまた、消費者としてだけではなく、サービスの主唱者、計画者及び提供者として、恒常的かつ積極的に雇用及び職業訓練に関するイニシアティブに参加しなければならない。 2.目標 目標9:2012年までに、少なくとも署名国の30%が、職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約(1983年)を批准する。 目標10:2012年までに、全ILO加盟国の職業訓練事業の少なくとも30%には、障害者を組み入れ、また、彼らのために適切な支援及び職場・ビジネス開発サービスを提供する。 目標11:2010年までに、すべての国で、障害者の雇用率及び自営率を示す確かなデータを揃える。 3.目標達成のために求められる行動 1. 政府は、「職業リハビリテーション及び雇用(障害者)に関する条約」(1983年)を検討し、批准、実施すべきである。 2. 政府は、職業訓練、雇用、自営、貧困削減事業への障害者の参画の度合いを評価するため、政策、文書での計画、調整機関・メカニズムを整えるべきである。この評価活動には、雇用者や労働者団体のみならず、障害者団体及び支援者団体との協議が含まれるべきである。 3. 政府は、障害者の雇用を促進するために、雇用者のインセンティブや戦略を生み出し実践していくべきである。また、政府は、多くの国において、自身が主要な雇用者であり、障害を持った職員の登用、昇進等においてモデル的な雇用者であるべきということを認識すべきである。 4. 政府は、職場及び労働市場における障害者に対する平等な取扱い及び機会を与えられる権利を守る差別撤廃法を施行すべきである。 5. 政府、国際機関、NGO、訓練機関、その他の社会的協力団体は、訓練された有能な職員を確保できるように、訓練や雇用・職業リハビリ・サービスを提供するスタッフの数を増加し、質を高めるよう協力すべきである。障害者は、そのような訓練事業に、積極的に採用され、また、取り込まれ、職員として雇用されるべきである。 6. 政府は、NGOの協力を得て、障害者が一般の職業訓練と雇用に参加するために必要な支援サービスを得られるように保証し、障害者を除外することはむしろ高い代償となるという認識のもと、参画への障壁を取り除くために必要とされる追加費用を配分すべきである。 7. 政府、NGO、障害者団体は、雇用者、労働組合、社会的団体とより協力的に活動を進めることによって、協力関係、政策、相互理解を促進するとともに、障害者が、公式、非公式、または、自営の場で働く際に利益を享受し、雇用関連手当てや研修を受けることができるように職業訓練と雇用サービスを展開すべきである。 8. 政府は、雇用者団体、労働者団体、障害者団体・支援団体及びその他の社会パートナーと協力し、グローバリゼーション、情報通信技術(ICT)の進展により変化する職場のニーズや、遠隔地や農村に住む障害者のニーズを認識し、また、現実との格差を認識するため、障害者の職業訓練に関連した現在の政策、実践とその成果を点検すべきである。 9. 最も重度の障害者のニーズに応え、有意義な就職準備ワークショップや、地域ベースで支援された雇用形態などの方法を用いて、尊厳的で、可能な限り包括的な環境の下で職業訓練と雇用サービスを彼らに提供できるように、資金が配分されるべきである。 10. 多数の国において正規労働の職が不足していることを認識し、政府、国際機関、ドナー、NGOや他の市民社会組織は、障害者、障害者団体及び支援団体が、ビジネス開発、起業及び資金分配に関する事業に平等にアクセスできるようにしなければならない。 11. 障害者団体を含めた地域機関は、政府、国際機関との協力の下、特に地域及び文化的ニーズを反映した、職業訓練と雇用のすべての側面における成功事例に関する情報の収集と普及の機能を開発するべきである。 E.各種施設・公共交通機関へのアクセス 1.重要課題 33.公共交通機関を含めた各種施設の利用不便性は、現在もアジア太平洋地域諸国において障害者の積極的な社会・経済活動への参加を妨げる主要な障壁となっている。現在、いくつかの国の政府は、各種施設を平等に利用する障害者の基本的権利を認めている。アクセスできない施設、道路及び交通機関を整備することは、障害者とその他の社会のメンバーを差別することになる。ユニバーサル/インクルーシブ・デザインという考え方は、アクセスできる環境の整備を求める障害者による闘争の成果として生まれたものである。ユニバーサル/インクルーシブ・デザインに基づく取組は、障害者だけでなく、高齢者や妊婦、幼児連れの両親といった社会のその他多くの人々にも有益であることが証明されている。 34.世界の高齢者人口の大部分が、アジア太平洋地域に住んでいる。現在の人口動態の傾向から、その数は、急激に増えることが予想される。また、豊かな国、貧しい国を問わず、ほとんどすべての国で、女性が男性より長生きするため、高齢女性の割合が急激に伸びている。そして、より多くの人々、男性も女性もが長生きすれば、障害を持った高齢者数も増加する。加えて、高齢者はしばしば重荷や負担と見られるので、高齢における身体的障害の始まりは、彼らが直面する社会的イメージを悪化させるだけであろう。しかしながら、すべての障害者は、老若を問わず、等しく彼らに影響する共通の問題を持っている。それらの問題には、各種施設や公共交通機関へのアクセスの欠如といった我々の環境における障壁が含まれる。 35.ユニバーサル/インクルーシブ・デザインに基づく取組は、事故発生率を低めることにより、万人にとってより安全な環境を提供する。物理的障害は、障害者の完全参加を妨げ、経済的・社会的生産性を低下させることがわかっている。従って、建築上・設計上の障壁の排除と防止を目的とした投資は、特に社会的・経済的参加に最も重要な領域(交通機関、住居、教育、雇用、医療、行政機関、文化・宗教的活動、余暇とレクリエーションなど)において、経済的根拠に基づいた正当性が認められるようになっている。施設のみならず、サービスもアクセス可能であるべきことを認識するのは重要である。この関係で、障害者問題への取組は、職業訓練カリキュラムの重要な部分を占めるべきである。 2.目標 目標12:各国政府は、地方農村部を始めとする、公共施設及び公共交通機関に関する計画のためのアクセス基準を採択し、実施する。 目標13:新規に建造する、陸上、水上、大量輸送鉄道及び航空輸送システムを含むすべての公共輸送システムは、障害者と高齢者が全面的に利用可能なものとし、既存の陸上、水上、航空公共交通システム(車両、停留所、ターミナル)は2012年までにアクセス・利用可能にする。 目標14:インフラ開発のためのすべての国際・地域融資機関は、その融資・補助審査基準に、ユニバーサル・デザインの概念を採用するべきである。 3.目標達成のために求められる行動 1. 政府は、障害者団体及び、プロの建築・土木協会やその他の民間セクターといった市民社会と協力し、また、研究及び/または建築・土木教育機関とのネットワークを構築し、展示や図書館及び研究施設、情報センターなどを伴った、アクセス可能な環境の実現の方途に関する情報交換のための国及び/または地域メカニズムの設立を支援すべきである。 2. 建築、計画、造園、建築・土木に関する養成/学問的講義にインクルーシブ・デザインの原則を含めることを確保し、また、障害者が積極的に関与する移動ワークショップを含み、地域のすべてのデザイン学校の教員を対象とした実践的な、アクセス可能なデザインについての講義を実施することを確保すべきである。さらに、地域社会のリハビリ業務従事者といった利用者と緊密に作業する専門家を始めとする経験を積んだ実務者のための、インクルーシブ・デザイン技術普及の成功事例である、継続的教育開発(CEPD)による研修コースを支持すべきである。 3. アクセス可能性を強化し、地元の知識や素材を応用する特別な応用例を見つけ出すため、デザイン・コンテストや建築その他の賞及び様々な形態の支援を通じて、革新的技術開発を奨励すべきである。例えば、触知できるブロックや滑らないタイルといった、施設へのアクセスを可能にする現場での素材が開発され、入手可能にするべきである。また、革新的な技術を普及させるネットワークが立ち上げられるべきである。 4. 各国で、どのように規定や基準が開発され、適用されたか、またどのようにこれらがアクセスの可能性を増強したかについての評価制度の設立を支持すべきである。広報や結果の発信及びどのように改善ができるかといったことを含めた、(一つの新しいまたは改築された建物よりも)エリア的なフィードバックや事例研究が重要である。 5. 障害を持ったユーザー団体との協議を始めとする協議過程を通じ、公衆衛生施設や飲料水供給等への障害者のアクセスに関するニーズが、すべての農村開発事業に取り込まれるように確保すべきである。 6. アクセス規定やインクルーシブ・デザインの適用及び農村、都市周辺及び都市での自然・人工施設における適切な技術に関する技術的助言や情報を、建築家/デザイナー/開発者に提供するという役割を担う、地方、州、国レベルでのアクセス担当官またはポストを創設すべきである。 7. 障害者団体は、身体、視覚、聴覚障害者のみならず、知的障害者など、異なる障害者団体のニーズを代表する一つの声で、建造物環境に関する彼らのニーズを集約的かつ効果的に発表する、自信強化及び提唱策を実施すべきである。 F.情報通信技術(ICT)を含む、情報と通信へのアクセス 1.重要課題 36.ICTは、経済成長のエンジンとなり、経済のグローバル化を刺激し続けている。しかしながら、ICTの発展は、持つ者と持たざるもの、また先進国と途上国間の格差をもたらした。 37.ICTの障害者への影響としては、良い面も悪い面もある。ICTは、全てのレベルで雇用のための機会、また、地域社会で独立して暮らす機会をもたらしており、多くの障害者は、ICTの発展による利益を受けている。盲聾者は、適切な訓練を受け、何度も使用可能な点字読みとり機を使っており、重度の脳麻痺者は、インターネットを通じて情報の交換に参加している。しかしながら、利益は、未だ、多くの場合、先進国の障害者に限られている。ICTの急速な発展によって、特定の障害者の間で予期しなかった問題が生じてもいる。例えば、オンラインでの登録や銀行業務・買い物取引は、認識/知的、身体的、視覚及び/または聴覚障害者にとってはアクセス可能ではないこともある。 38.途上国の農村部では、ICTの利用による巨大な潜在的利益はあるが、アジア太平洋地域の途上国の障害者の大多数は、貧しく、ICTの使用から疎外されてきた。 39.アジア太平洋情報社会サミット(2000年11月)で採択された東京宣言は、2005年までに、アジア太平洋地域の人々が可能な限りインターネットにアクセスできるようにすべきだとし、デジタルディバイドの原因の一つとして、収入、年齢、性別とともに身体障害をあげている。また、2003年にジュネーブで、また2005年にチュニスで開催される世界情報社会サミットでも、障害者ほか社会的弱者層の問題が取り上げられるべきである。 40.情報化社会において、情報と通信へのアクセスは基本的人権の一つである。版権所有者は、その内容が、障害者を含むすべての人にアクセス可能となるよう責任を持つべきである。いかなる対海賊行為または権利の管理技術は、障害者による情報・通信へのアクセスを妨げるべきでない(注2)。 (注2.情報と通信への権利は、例えば以下のようなものへのアクセスを含む: ●国の機関により購入・使用される、または公共の利用のために私企業により購入されるコンピューターとソフト及び付属機器; ●公共の通信設備; ●地元ラジオ、ビデオの内容及びデジタルTVを含む放送システム; ●電話サービスを含む電気通信システム; ●ホームページ、マルチメディアの内容、ホームページの内容を作成するために使われるインターネット電話とソフトを含むインターネット; ●携帯通信機器を含むその他の消費者利用電気通信機器; ●自動販売機を含む双方向取引機器; ●電子情報システムを通じて得られるサービス; ●教科書、教師用の教材、電気学習環境を含む学習機材; ●手話による話し言葉の通訳と、話し言葉による手話の通訳; ●文字を持たない土着の言語を含む個人の母国語による情報と通信; ●コンピューター・スクリーン・リーダーや点字、その他拡大等の方法等すべての手段を通じた、全ての印刷物; ●公共利用のためのすべての今後のICT 以上の事項への障害者による直接のアクセスが未だ確保されていない場合は、ICT開発者らは、その製品と障害者の利用する支援技術サービスとの効果的な相互通用性を確保すべきである。  2.目標 目標15:2005年までに、障害者が、その他の人々と少なくとも同じ割合で、インターネットとその関連サービスにアクセスできるようになるべきである。 目標16:2004年までに、ICTの国際基準に責任を持つ国際機関(例.国際電気通信連合(ITU)、国際標準機構(ISO)、世界貿易機関(WTO)、ワールド・ワイド・ウェッブ・コンソーティアム、モーショーン・ピクチャー・エンジニアリング・グループ)は、ICT国際基準に障害者のためのアクセス基準を組み入れるべきである。 目標17:2005年までに、各国政府は国のICT政策に障害者のためのICTアクセス基準を導入し、特に、適切な方策により障害者が受益対象者に含まれるようにする。 3.目標を達成するために求められる行動 1. 各国政府は、情報と通信に対する障害者の権利を監視・保護するための法律、政策および計画を公布し、施行する。たとえば、障害者がアクセスできる情報コンテンツの作成を行う組織に、一定の条件の下、著作権を免除する法律などである。 政府は、その他の関連機関や市民社会団体と協力し、 2. ICTを管轄する省庁内に、内部及び外部との間で活動の調整を行うために、ICT利用促進担当部局を設置すべきである。また、民間企業に同様の部局を設置するよう奨励すべきである。 3. 障害者が社会の生産的な一員になるためのICTへのアクセスの必要性、能力及び要望を含めた障害者問題への理解を高めるために、ICTの政策決定者、管轄省庁、及びICT関連民間企業の代表・技術者を対象に、意識向上教育を行うべきである。 4. 他の関連機関や市民団体と協力して、障害者のコンピューターリテラシー教育と能力開発を支援すべきである。また、ソフトウェアやハードウェアの開発者や規格関連機関に障害者が自分たちのニーズを伝えるためのコミュニケーションの仕方を含めて、業界プロセスについてのトレーニングも支援すべきである。 5. 障害者が使用するICT機器に対する免税を含めたさまざまな形の奨励制度を提供するとともに、障害者に購入可能な価格になるように、ユーザー補助技術装置の費用の助成を行うべきである。 6. 個々に購入すると一般的に高額なICT製品やサービスの購買力と交渉力を高めるために、国、地域、および国際的レベルでの、協同組合を含む障害者の消費者ネットワークの構築と強化を支援するべきである。 7. ICTへのアクセス関連の対策と基準の策定において、障害者団体がその過程のすべての段階に関わるように、あらゆる必要な処置をとるべきである。 8. 障害者によるICTへのアクセスを可能にする長期取組を確保するための、国際標準に基づいたICT開発を採用・支援すべきである。これらの例としては、WWWコンソーシアムのウェブ・アクセスビリティ・イニシアティブやデジタル・アクセシブル情報システム(DAISY)・コンソーシアムがある。 9. 現地語ソフトやコンテンツが、統一モデル言語のような国家/国際標準文字記号及びモデルを使用するよう要請し、文字記号及びモデルのアクセス可能性要件に関する対話を奨励すべきである。 10. 障害者のニーズを代表・反映する市民社会組織による、障害者の要請を支援する、国際標準の一層の調和に向けた、地域的・国際的標準に関する議論への参加を支援すべきである。そのような国際標準がない場合は、政府は、国際標準との両立性や相互運用性に注意しつつ、それらのニーズに応える別のイニシアティブを支援すべきである。 11. 二国間・多国間のドナー機関や国際的な融資機関は、障害者のICTへのアクセスを向上させるための義務を始めとする、受け取り側の機関・組織の社会的責任に基づく融資基準を導入すべきである。 G.能力開発、社会保障及び持続的生計手段事業による貧困の削減 1.重要課題 41. アジア太平洋地域には1億6千万人の障害者がおり、その40%は貧しい生活をしていると推定される。こうした障害者は、医療、教育、雇用、地域政治への参加、基本的な社会サービスといった、社会の他のメンバーには与えられている権利の享受を妨げられてきている。 42. 貧困は、障害の原因でもあり結果でもある。貧困と障害は、更なる弱体化や疎外を促進し、相互に増強し合う。低い栄養、危険な仕事・居住環境、また、ワクチン事業、保健及び優性保護への限られたアクセス、非衛生、不清潔、障害の原因についての不十分な情報、戦争や紛争、及び自然災害が障害の原因となる要素である。これらの多くは防止可能である。障害は、また、生計手段への限られたアクセス、労働市場や経済からの疎外の進行により貧困を促進する。これは個人だけでなく、しばしば家族全体に影響を及ぼす。 43. 高齢者数・割合の増加は、障害者数の増加、そしてそれは貧困を促進する要素ともなりうることを意味した。この高齢者の問題は、高齢に伴う障害及び適切な保健・社会保障の提供と関連付けられなければならない。高齢化社会においては、特に、これらの問題が、国家の保健と長期介護制度並びに現行の社会保障制度が十分かどうかということに深遠な影響を与えるだろう。 44. 貧しい障害者のための社会サービスが低いレベルに留まっている主要な要因は、家族や地域社会に基づいたものである。しかしながら、アジア太平洋地域の途上国の障害者の福祉レベルが低いことの決定的な要因はほとんど知られていない。要素分析のために必要な、家族や地域社会レベルの社会・経済調査データが欠如している。地域社会レベルのインフラ開発が、貧しい障害者へのサービスの提供にどの程度影響があるか調査することは重要である。 45. 予防とリハビリを関連付けた、統合的な取組が必要である。障害の重要性は、開発の主要な問題として測られなければならない。そしてその重要性は、貧困、人権及び国際的に合意された開発目標の達成と関連付けて認識されなければならない。世界の貧困を撲滅することは、障害者の権利とニーズが考慮に入れられない限り達成され得ない。 46. 国連ミレニアム開発目標の一つとして、貧困撲滅に関し具体的な目標を定めている。これは前向きなアプローチである。しかしながら、目標達成のための努力が、障害者が不釣合いなまでに多数を占める極貧層ではなく、貧困から救出するのが最も容易な層にばかり向けられてしまい得るので、この戦略は、重要かつ悪影響を被りやすい障害者層を見逃してしまうかもしれないという危険がある。障害者の貧困の根本的原因は、より複雑で多面的である。それゆえ、ミレニアム開発目標を達成するための貧困削減戦略において、優先的な貧困目標グループなる集団に障害者が含まれるように、意識的な努力がなされるべきである。 2.ミレニアム開発目標  この優先分野における関連のあるミレニアム開発目標は、2015年までに、一日の収入・消費額が1ドル未満の人々、飢餓に苦しむ人々、そして安全な飲み水を得られないまたは購入できない人々の割合を半減させるというもの。 3.目標 目標18:各国政府は、1990年から2015年の間に、一日の収入・消費額が1ドル未満の障害者の割合を半減させる。 4.目標達成のために求められる行動 1. 各国政府は、貧困と飢えの撲滅に関するミレニアム開発目標を達成するため、国の貧困削減事業の主要な対象集団として障害者を直ちに組み入れるべきである。 2. 各国政府は、地方開発・貧困削減の財源総額の一定割合(3%以上)を、障害者向けのサービス事業に割り当てるべきである。 3. 政府は、ミレニアム開発目標の基礎データ収集・分析(収入、教育、保健等)に際し、障害者の問題、貧困層地図、障害について含めるべきである。 4. 政府は、以下の施策を通じて、障害者問題を対貧困層開発戦略の主流と位置付けるべきである; (a)貧困障害者のためのより多くの資源配分及び障害者のための社会的予算の導入 (b)市民の報告カード方式の利用を始めとする、より効果的な方法を通じた、既存の社会的経済的政策の参加型評価 (c)身体的・精神的障害を持った障害児及び高齢者のいる貧困家族への奨学金及び/または健康保険といった、適切な社会保障スキームの設立 (d)障害者とその家族を対象とした包括的開発政策 5. 政府は、政府省庁や市民社会組織、民間セクターの能力開発のためのモデルとして、障害者の貧困削減の成功事例を文書化し普及させるすべきである。 6. 障害者の問題を開発政策に取り込む観点から、政府は、国連システムからの支援を得て、政治家、障害者団体及び地域社会開発機関間での、障害者問題の重要性を訴える、戦略的同盟の形成を促すべきである。 7. 障害の原因の最小化及びリハビリ・サービスの提供を目的とした予防策は、政府、民間セクター及びNGOの通常の業務の不可分の部分であるべきである。障害予防及びリハビリを目的とした事業は、国の計画、政策及び予算に含まれるべきである。 8. 政府は、障害の原因の予防及び障害者のリハビリに関する国家戦略を立案、採択すべきである。 9. 障害者のリハビリに関し、国家戦略は、制度的、アウト・リーチ及び地域社会ベースというリハビリの3つのアプローチの役割を認識すべきである。地域社会ベースのアプローチは、高い費用対効果を達成すると同時に、サービス提供範囲の最大化が強調されるべきである。 10. 保健サービスの提供制度は、政府系でも非政府系でも、理学療法や職業療法といったリハビリ・サービス及び不可欠な介護機器サービスの提供を含むべきである。高齢男性・女性間では、精神衛生及び身体的障害のための性別ごとの方式やヘルス・ケア・アプローチはほとんど知られていない。高齢者の精神病のためのサービス提供は、注目が必要である。そのようなサービスが、農村・都市の貧困地域を含む地元レベルで利用可能であることが特に強調されるべきである。 11. 政府は、障害者の相互支援、主唱及び意思決定過程への参加に関する能力の向上の観点から、都市・農村の貧困地域において、障害者の自助団体の形成を支援すべきである。 五.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の目標達成のための戦略 47.以下の戦略は、市民団体との協力の下、各国政府が、W節にあげている目標を達成するのを支援する。 A.障害に関する国の行動計画(5か年) 48.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」(2003〜2012年)を国及び地方レベルで実施するためには、障害に関する国の行動計画が不可欠である。 戦略1:政府は、2004年までに、障害者団体、及びその他の市民団体と協力して、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」(2003〜2012年)の目標・戦略実施のための、5か年の包括的な国の行動計画を策定し、採択すべきである。この計画には、障害者を健常者のための開発計画・事業に盛り込むような、インクルーシブな障害者政策・事業が含まれるべきである。 B.障害者問題への権利に基づくアプローチの促進 49.障害者問題への取組を前進させるに当たっては、権利に基づくアプローチをとるべきである。障害者の市民的、文化的、経済的、政治的及び社会的権利に留意し、これを保護する必要がある。障害者問題は、開発や人権問題に関する議論や国の計画に組み入れられるべきである。世界的には、40以上の国が障害に関する差別撤廃法を採択したが、アジア太平洋地域では、わずか9か国が採択したのみである。 戦略2:各国政府は、特に差別撤廃を確保するため、障害者の権利を保護するための法律と政策を採択し、既存の法律を見直すべきである。それらは、何が障害者に対する差別を構成するのか明確で具体的な定義を含むべきである。そのような法律や政策は、国連の人権や障害に関する標準に見合うべきである。障害者は、そのような法律の下、権利を保護され、障害に対する効果的な処方策へ平等にアクセスでき得るべきである。 戦略3:各国の人権委員会は、障害者の人権を特に重視し、全力でその役割を果たすべきである。障害者の人権を擁護するために、政府は、各国地域の具体的環境に従って、独立した障害者の人権機関を設立することを検討すべきである。 戦略4:政府は、市民社会における障害者団体を始めとする障害者が、彼らの生活に影響を与える法律や政策を形成するのを助けること、また、これらの法律や政策の実施状況をモニター・評価すること、さらに、改善を勧告することにおいて、初期の段階から参画できるようにすべきである。 戦略5:各国は、中心となる国際的人権条約(注3)を批准すべきである。障害者団体と協議した後、政府は、条約のモニタリング機関に提出する報告書において、障害者の権利について具体的な情報を含めるべきである。 (注3.6つの中心となる国際的人権条約とは、「自由権規約」、「社会権規約」、「拷問禁止条約」、「児童の権利条約」、「女子差別撤廃条約」及び「人種差別撤廃条約」である。) 戦略6:各国政府は、「障害者の権利と尊厳の促進及び保護のための統合的かつ包括的国際条約」の策定に向け、アドホック委員会の業務を支援し、これに貢献すべきである。また、アドホック委員会の業務への、世界のすべての地域からの、幅広い範囲の障害者団体による参加を促進・円滑化すべきである。 C.計画のための障害統計と障害の共通の定義 50.十分なデータがないことが、アジア太平洋地域内の各国と地域において、計画の実施を監視・評価する政策と手段の策定を含めた障害者問題の軽視につながる最大の要因の一つになっている。多くの発展途上国では、収集されたデータは障害の範囲を完全に把握できていない。このようにデータが限定される原因の一部には、適用される概念的な枠組み、実施される調査の対象と範囲のほか、障害データの収集に使われる定義、分類及び方法論が挙げられる。また、障害の定義と分類に使われる共通体系が、地域内で一律に適用されていないことも認識されている。この点に関して、障害の定義と分類の共通体系を作成する基礎として、アジア太平洋地域諸国で「国際生活機能分類(ICF)」をより広く利用することが望まれる。 戦略7:政府は、2005年までに、障害関連のデータ収集と分析の体系を作成し、また、政策決定と計画策定に役立つ障害者人口と健常者人口の比較調査の実施が可能になるように、関連する統計を障害別に分類することが奨励される。 戦略8:政府は、地域内の国ごとの比較が可能になるように、各国政府は2005年までに、「障害者統計の開発のためのガイドラインと原則」(注4.国連の出版物 販売No. E.01.XVII.15.)に基づく障害の定義を採用することが奨励される。 D.障害の予防及び障害者のリハビリテーションと権能強化のための地域に根ざしたアプローチの強化 51.アジア太平洋地域の多くの発展途上国は、従来の制度的かつ中央集権的リハビリテーションの計画や事業を、貧しく、失業率が高く、社会サービスのリソースが限られた社会的・経済的環境により適したアプローチで補い、また、そうしたアプローチに切り替えつつある。このような戦略の中心をなすのが、「地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)」のプログラムである。地域に根ざしたアプローチは、障害の予防、障害児の早期の発見と対応、農村の障害者への接触、社会、文化、宗教的活動を含む地域のあらゆる活動に障害者を含めるための意識向上と支援に、特に適した方法である。教育、職業訓練、雇用におけるニーズも、このアプローチによって満たすことが可能になる。また、障害者自身がCBRイニシアティブの選択と管理を行うことが不可欠である。 戦略9:各国政府は障害者団体および市民団体と協力して、障害の予防とリハビリテーション、及び障害者の権能強化のための地域に根ざしたアプローチを促進するための国の政策を、(まだ策定していない場合は)直ちに策定する。 六.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の遂行における協力と支援 A.準地域間の協力と連携 52.この新たなフレームワークの重要な焦点の一つは、準地域レベルで政府間の協力と連携を強化することである。同一準地域内の諸国には共通の問題や要望や制限があり、相互に支援・連携するために最良の位置に置かれている。この意味において、各準地域内の各国政府は、自地域内の優先事項と行動計画を策定することによって、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施に向けて相互支援に努めることが望まれる。 戦略10:2004年までに、アジア太平洋地域の各準地域内の各国政府は、関連のNGOと協力して、この「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」に掲げる目標と戦略の達成のために、準地域の優先事項と行動計画を策定する。 戦略11:各準地域内の各国政府は、障害に関する準地域内活動の調整の観点から、適切な準地域機関内にコンタクトポイントを設置する際、関連のNGOと協力すべきである。 B.地域協力 1.アジア太平洋障害者センターとの協力 53.アジア太平洋障害者センターは、「アジア太平洋障害者の十年」の成果として、アジア太平洋地域における障害者の権能強化とバリアフリー社会の促進を目的に、2004年を目途としてバンコクに設置される。同センターの主な活動は、障害者及び障害者と共に活動する人々を対象とした職業訓練と情報提供である。 戦略12:各国政府、国連システム、市民団体、及び民間セクターは、協力して、アジア太平洋地域の障害分野における同センターの職業訓練・コミュニケーション機能を支援・利用する。太平洋地域の障害者の能力開発についても、同センターにより、明確に対処されるべきである。 2.特定領域の卓越した研究拠点のネットワーク化 54.アジア太平洋地域の障害の分野で新たなアプローチを実施するにあたって、政府機関だけでなく、市民団体や民間機関も研究開発に関わっている。こうした機構、機関や団体を卓越した研究拠点と認定し、最大限に協力・提携ができるように、団体間の情報、経験、人材の交流を通じてネットワーク化を促進することは有益であると考えられる。こうしたネットワークの構築と維持においては、アジア太平洋障害者センターが中心的な役割を担うことができよう。 戦略13:各国政府、市民団体、及び民間セクターは、最大限に協力・連携するために、特定領域の卓越した研究拠点のネットワークを構築する。 戦略14:ESCAPとその他の国連機関は、特定領域の卓越した研究拠点を認定し、その振興を図ることによって、こうした拠点間のネットワークの構築を支援するべきである。 C.地域間協力 55.「アジア太平洋障害者の十年」(1993〜2002年)は、国際的なレベルで、特にアフリカ諸国での発展に影響を与え、1999年には2000〜2009年を「アフリカ障害者の十年」とすることが宣言された。また、アラブ諸国も2003〜2012年を「アラブ障害者の十年」と宣言することが期待されており、これは新たに延長されたアジア太平洋地域の障害者フレームワークと時期を同じくする。地域的なプログラムを強化し、他の地域の経験から学び、地域ごとの障害者フレームワーク間の相乗効果を生み出すために、地域間の交流活動を行うことが重要である。 戦略15:アジア太平洋地域、アフリカ地域、および西アジア地域は、地域間の情報、経験及び専門知識の交流を通じて、地域ごとの十年計画の実施において相乗効果を生み出すために、協力と連携を強化する。これによって、全ての地域が相互に利益を得るものと考えられる。 七.監視と評価 A.地域会合及び準地域会合の開催 56.「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会の促進」に関するESCAP総会決議58/4(2002年5月)は、事務局長に対し、「十年」の期間が終わるまで、その実施の進ちょく状況に関して2年ごとにESCAP総会に報告書を提出するよう求めている。ESCAPは、達成状況の評価と、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施に必要と思われる行動の確認を行うために、2年ごとに会合を開催するものとする。この会合には、政府省庁、NGO、自助団体及びメディアからなる、各国の障害者問題を管轄する委員会の代表が招待され、国及び地方レベルでの「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施状況をレビューする報告書の発表が求められる。障害者の自助団体は、このレビュー・プロセスに積極的に参加することが奨励される。地域会合では、毎回以下のテーマ領域で採択された目標に焦点を当てる。 (a) 障害者の自助組織、女性障害者、教育、職業訓練および雇用 (b) 各種施設と情報・通信へのアクセス (c) 社会保障と持続的生計手段の確保による貧困削減 57.各準地域の各国政府は準地域会合を開催し、それぞれの準地域の優先事項と行動計画に基づいて、上記の地域レベル会合と同様に、達成状況の評価と「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施に必要と思われる行動の確認を行うべきである。 B.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の調整と監視のための地域作業部会 58.国連、各国政府、地域内の障害者団体を始めとする市民団体からなる地域作業部会は、定期的に会合を開催し、「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の実施の調整と監視を行うべきである。 C.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の中間評価 59.「行動のためのびわこミレニアム・フレームワーク」の中間評価を行うものとする。この評価に基づいて、この十年の後半期の目標と戦略的計画の修正や、新たな目標と戦略的計画の策定を行う場合がある。    ※ この和訳は、内閣府において、便宜上仮訳したものです。誤りを含む場合がありますので、引用される際は必ず原文を参照してください。