(内閣府仮訳) < 要  約 > リージョナル・サポート 一.地域協力のメカニズム この「十年」を通じて、地域における行動の調整及び「行動課題」とその目標の実施状況の監視において、地域協力のメカニズムは大きな役割を果たした。RICAP(アジア太平洋地域機関間委員会)障害者問題小委員会は、1992年に拡大かつ強化された。11の国連機関と障害の分野で広範なサービスを提供する非政府自助団体が、小委員会に参加した。政府代表もまた、RICAPの会議に参加した。 2000年には、TWGDC(障害者問題作業部会)がRICAPの小委員会に代わって設立され、「十年」の目標達成に向けてその勢いを維持し続けている。TWGDCのメンバーは拡大され、現在は50のNGO、15人の政府代表とアジア開発銀行を含むまでになった。 二.ESCAPによる「十年」の支援活動 「行動課題」にある12の政策領域については、ESCAPの努力は他の国連機関の任務や専門でない分野に向けられたことに留意してほしい。ESCAPが注意を払ったのは国内調整、立法、情報(特に障害関係統計)、アクセスの可能性、介助機器及び障害者の自助団体である。以下のセクションでは、「行動課題」にある12の政策領域に沿ってESCAPの活動を要約する。 1.国内調整 ESCAPは、障害者に対する多部門間協力に関する国際セミナーの開催について多くの国に援助を与えた。障害に関する国内調整委員会(NCCD)が直面する重要な問題に対処できるようにする技術的協力にも力を入れた。1997年、ESCAPはこの地域においてNCCDの設立及び強化に向けた取組について評価するためのアンケート調査を実施した。 2.立法 立法のモデル枠組みに対する域内諸国政府からの多くの要請にこたえ、ESCAPは2つの手引書を発行した。一つは、「開発における障害者の機会均等と完全参加に関する法律:地域レビュー」、もう一つは「開発における障害者の機会均等と完全参加に関する法律:ESCAP地域における事例」である。 3.啓発広報 この領域における活動については、ESCAPは、主催政府及び地元のNGOとの協力のもとに、「十年」推進NGOネットワークが進める地域キャンペーンを積極的に支援した。「キャンペーン2001」は最大の地域キャンペーンで、「アジア太平洋障害者の十年 1993−2002」をさらに10年間延長するよう域内の政府に要請するハノイ宣言を採択した。ESCAPは2002年10月に大阪で行われる最後の地域キャンペーンを支援することにしている。 4.情報 情報で重要な領域は障害統計である。ESCAPは、障害統計に関する2つの小地域ワークショップを開催した。1つはインドのニューデリーで、もう1つは中国の上海で開かれた。1997年に、ESCAPは「障害者の十年」ホームページを創設した。 http://www.unescap.org/decade 前述のワークショップに関する情報やその他の情報、資源、障害者関連団体へのリンク、TWGDCの報告、障害に関するESCAPの出版物や活動のほとんどがこのウェブサイトから入手できる。 5.アクセス可能性とコミュニケーション この領域は、ESCAPにとって2つの最重要プログラムのうちの1つである。もう1つは自助団体の発展と強化である。このプロジェクトの最初の段階は、障害者及び高齢者のためにハンディキャップのない環境を促進するための地域ガイドラインを開発することであった。1995年に公表されたガイドラインでは、プランニング、建造物のデザイン、アクセス施策規定及び立法、それにアクセス改善のための啓発活動が取り上げられた。プロジェクトの第2段階では、バンコク、北京、ニューデリーにおけるパイロットプロジェクトを通した都市レベルでのガイドラインの実施に焦点を合わせた。実際に、これら3つのパイロット都市においてアクセス可能性に改善がみられた。また、このプロジェクトによって政府は障害者のアクセス可能性に関する政策や規則の改善について検討するようになった。 アクセス促進に関するESCAPによるこうした活動やその他のイニシアチブは障害者や建築家、都市プランナーとの間のネットワーク形成に貢献したが、彼らは、政府職員の訓練及び都市、州、国のレベルによる障害のない環境作りを積極的に主張している。 6.教育 この領域におけるESCAPの活動は、ユネスコが進める「万人のための教育」キャンペーンに障害を持つ子どもや若年者を取り込むことを支援することに向けられた。具体的な活動としては、インクルーシブな教育に関するセミナー、障害のある子どもや若年者の教育に関するフォーラム、障害を持つ子どもや若年者の早期処置と教育に関する地域調査がある。 7.訓練と雇用 この領域について、ESCAPはILOと共同で、またILOを支援して、雇用創出サービスの強化を図った。ESCAPとILOはまた、この地域におけるRICAPの訓練・雇用活動に貢献した。その他の関連活動としては、ESCAPによるテクノロジーを通じた障害者の雇用機会に関する「全地球応用障害調査情報ネットワーク」へのインプットがあげられる。 8.障害原因の防止、及び 9.リハビリテーション・サービス ESCAPのこの領域における活動は、地域に密着したリハビリテーションを中心に行われ、ワークショップの開催や諮問サービス、技術協力が行われた。 10.介助機器 この領域におけるESCAPの活動を通して、障害者用の介助機器の生産と分配に関する一連の刊行物が出版された。 11.自助団体 前述の通り、ESCAPの2つ目の最重要プログラムは、自助団体を通して障害者のエンパワーメントを行うことである。1990年以来、域内の自助団体との緊密な協力によって、ESCAPは自助団体の設立及び強化に関する一連のガイドラインを作成してきた。「障害者の自助団体」は1991年に出版され、5か国語と英語の点字に翻訳された。この領域における他の活動としては、自助団体の管理に関する小地域ワークショップがあげられるが、これは、「障害者の自助団体のマネージメント」の出版と自助団体を支援する定期的な技術サービスや助言サービスにつながった。 12.その他のESCAP支援事業 障害を持つ女性は、全人口のうちでもっとも無視されてきたグループの1つである。ESCAPは、国連婦人開発基金(UNIFEM)や他のRICAPメンバーとの協力のもとに、女性・少女障害者の地位向上を促進するプロジェクトを進めてきた。このプロジェクトによって、「隠されたきょうだい:アジア太平洋地域の女性・少女障害者」というタイトルの刊行物が出版された。ESCAPはまた、女性の市長や議員によるアジア太平洋サミットとの関連で、主流のジェンダー平等のイニシアティブに障害を持つ女性や少女を取り込むことに関する地域訓練ワークショップを開催した。 障害と貧困の関係は、ESCAPの事業において主要な関心事項となっている。この領域におけるESCAPの活動の1つは、地方の障害者の貧困削減に関するフィールドスタディーを伴った地域セミナーで、1999年12月にインドのハイデラバッドで開催された。このセミナーは、ESCAP域内の開発途上国における地方の貧困障害者の問題に注意を喚起した最初のセミナーの1つであった。 政府、労働者団体や民間企業からの拠出金によって支えられている「十年」のための技術協力信託基金によって、ESCAPは、国と国との協力を促進し、また行動課題が掲げる12領域を国内及び地方のレベルで実施するのを容易にすることができた。この「十年」基金はまた、事務局の「十年」促進活動に人事に関する支援を行った。 最後に、ESCAPは「十年」の期間中、「行動課題」の実施状況に関するレビューを行う地域会議をさまざまな時期に開催した。最初のレビューは1995年にバンコクで開かれ、第2回は1997年にソウル、第3回は1999年にバンコクで開かれた。 三.他の国連機関の活動 国連食糧農業機関(FAO) 「行動課題」との関連でFAOが行う多くの活動の中には、キノコ栽培、統合的な害虫駆除、養蚕業、食品加工業の分野で障害を持つ農夫を対象に行う訓練計画、中小企業の開発に関する訓練用マニュアルの開発、WHOと共同でおこなう食料規格の確立、栄養や食糧安全保障に関する女性の知識の向上をはかる政策立案者やプログラム作成者への助言、農林業における事故防止などがある。 国際労働機関(ILO) ILOは、障害者の機会増加に経営者団体や経営者グループが果たす役割の促進、労働組合による障害問題の取組促進、関連情報の伝達手段としてILO地域ウェブサイト(www.ilo.org/abilityasia)の開発、障害者関連の問題に関する他の国連機関との連携など、多くの活動やプログラムを実施した。 国際電気通信連合(ITU) ITUは、女性障害者も含め、女性のためのプログラムを開発し、また情報通信技術(ICT)の技能を向上させるための資金を集める勧告を行った。 国連開発計画(UNDP) 1990年に活動を始めた国連開発計画(UNDP)の障害者アクショングループは、地域に密着したリハビリテーションを促進し、かつ持続可能な人間開発に関するプログラムに障害者の問題を統合することをその主要な目的としている。UNDPはまた、他の機関との協力で、障害者の社会的経済的統合に対する新しいアプローチを策定し、促進している。 国連教育科学文化機関(ユネスコ) ユネスコは、教育へのインクルーシブアプローチが「万人のための教育」を達成するための戦略であると考えている。ユネスコは、インクルーシブな教育やインクルーシブな教育の概念を紹介し、クラスの特別なニーズを満たせるような教師の教育能力を向上させるための「移動訓練チーム」プログラムに関する各種の資料を作成し、また社会福祉、保健、教育のような異なるセクターを連結させ、特殊な教育ニーズを持つ子どもや若年者の学校内外の活動への完全参加を促進するための資料を作成した。 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR) UNHCRは、障害を持つ難民への援助を優先している。その1つの例が、障害を持つ難民に対する第三国への再定住への特別割当である。UNHCRはまた、他の機関と共同して障害を持つ難民に対する特別のプロジェクトを実施している。 国連児童基金(ユニセフ) ユニセフは、児童期の障害に関する問題について他の国連機関と協力し、また訓練用資料、ワークショップ、早期発見のための指標を含むガイドラインを開発し、主流の教育や他の社会活動へのアクセスを含む効果的な処置を策定する。 世界保健機構(WHO) WHOは、引き続き地域密着型のリハビリテーションの考え方と実施を促進している。これは地域密着型のリハビリテーション・プログラムの管理、強化に関する訓練ワークショップを通して行っている。また、そうしたプログラムを保健システムの中へ取り込むことも進めている。 アジア開発銀行(ADB) 障害問題に関するADBの主要プロジェクトは、ADBとその組織が障害問題についての認識を深め、かつ障害の問題をその活動の中に含めるように支援することを目指している。このプロジェクトは、域内4か国において貧困削減における障害者問題を明らかにすることに焦点が当てられており、2002年11月に完了する。その他、障害に関連したADBの活動に、ADBが2001年に採択した社会保護戦略がある。その中で、障害者の問題が取り上げられている。 結論 地域レベルでの強力な支援がなければ、このユニークな「障害者の十年」を国のレベルで実施することが困難であったであろうことは明白である。同様の支援を受けて、ESCAP地域は、インクルーシブでバリアフリーかつ権利に基づく社会を達成するためにさらなる10年を実施するであろう。この目的を達成するためには、国連システムのそれぞれの機関がその事業をさらに強化し、かつ地域協力と支援の相乗効果をもたらすために共に協力することが必要である。 ※ この和訳は、内閣府において、便宜上仮訳したものです。誤りを含む場合がありますので、引用される際は、必ず原文を参照してください。