(内閣府仮訳) < 要  約 > 「アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)」の行動課題実施に関する国内レベルでの進歩状況レビュー アジア太平洋障害者の十年(1993-2002)は2002年に終了する。この「十年」のテーマと目標は、アジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等の促進である。41のESCAP加盟国及び準加盟国は、「アジア太平洋地域の障害者の完全な参加と平等に関する宣言」に署名した。 この文書は、この10年における成果、得られた経験、好事例、さらなる行動のために優先すべき領域などについて要約するもので、「十年」の行動課題の実施についての各国レベルの進捗状況に焦点が置かれている。この文書に掲載された情報は、2001年にESCAPが行った地域調査の結果ら得たもので、再検討会議、その他の会議報告及び関連する活動に関する文書などによって補完されている。以下のセクションでは、行動課題の主要な政策カテゴリーについて述べてある。 国内調整 この地域における27政府が、障害者に関する国内調整委員会(National Coordinating Committees on Disability:NCCD)を設立し、7か国・地域がNCCDの設立を計画している。国内の政策及び行動計画は、16か国・地域で策定され、13か国・地域でその策定が進行中である。これに加えて、いくつかの政府では、国家開発計画の中に人権や貧困問題を含む障害者問題を取り込むなど、意義のある一歩が踏み出された。いくつかの国の政府はまた、特別に設けられた障害者協議委員会と定期的に協議を行っている。 障害者の完全参加と平等という目標に向けた取組を阻害する主な要因は、障害が開発の問題として認識されていないことである。障害は依然として主に福祉の問題の一つとして認識されている。 立法 13政府が包括的な障害者立法を成立させ、9政府が立法作業中であると報告している。また、27政府が、広範囲にわたる追加の立法や規則を制定し、あるいは改正手続中である。多くの国の政府はまた、反差別立法の施行もしくは制定に着手している。 この領域における主な挑戦は、立法実施のためのより厳格なメカニズムを確立し、順守しなかった場合に罰則をいかに適用するかである。 情報 多くの国府は、障害に関するデータの収集を行った。9政府は国の障害者データベースを構築し、5政府がこうしたデータベースの構築を計画している。いくつかの国では障害児と教育に関する情報を含めたデータが収集されており、また、障害者の産業プロファイルや雇用機会に焦点を当てたデータベースを持っている政府もある。5政府は、障害者が利用しうる各種サービスの利用者に関する情報を収集するデータベースを構築した。太平洋島嶼国・地域では、包括的かつ特定の障害者調査がいくつかの領域に関して行われ、また他の領域についても調査が計画されている。韓国では障害に関する国内調査が5年ごとに行われており、その調査結果に基づいて障害者問題に対処するための政策変化が行われた。 この領域には依然として多くの問題が残っている。データ収集がいくつかの文脈において不透明だったり、それが障害のすべての側面を反映していなかったりしている。その結果、データの比較を無意味にしている。こうした制約は、一部には採択された枠組みが概念的であったこと、実施された調査の範囲及び対象項目、使われた定義、分類、手法によるものである。 啓発広報 障害者に関する啓発活動は障害者関連施策を担当する複数の部局によってより頻繁に行われるようになっており、多くの政府は啓発活動に対して財政支援を行っている。マレーシア政府は「文化・芸術フェスティバル」を、タイ政府は「万人のための芸術」プロジェクトを主催している。タイのプロジェクトは多くの幅広い層からの参加者を得て、毎年恒例のイベントになっている。特定の啓発キャンペーンでは、精神衛生の問題や教育、予防の問題が取り上げられた。 「十年」に向けたキャンペーンは、それが行われた国や地域において、障害者に関する意識の向上に大きな影響を与えた。このキャンペーンには日本(1993年)、フィリピン(1994年)、インドネシア(1995年)、ニュージーランド(1996年)、韓国(1997年)、香港(1998年)、マレーシア(1999年)、タイ(2000年)、ベトナム(2001年)が含まれる。最終キャンペーンは2002年10月に大阪で行われる。 施設の整備及びコミュニケーション この領域では、24政府がアクセス環境及び交通機関の整備に関する立法や基準の法制化を完了ないし作業中であるなど、進歩がみられた。コミュニケーションへのアクセスについては、中国やタイなどの国々では点字や手話の使用が広まっており、実際の使用やアクセスも多い。国による手話辞書も開発されており、タイでは1999年に手話が聴覚障害者の公用語となった。 通信技術へのアクセスやコンピューターの利用能力は明らかに限られており、大多数の障害者、とくに地方に住む者や都市貧困層にとってその利用は不可能となっている。アクセス可能な環境及びサービスについてもまた、なすべきことが多い。関連の法律が成立しても、実際に実施されないことがしばしばである。 教育 開発途上国においては、障害児のうち教育を受けられるのはわずか2〜5%であると推定される。障害児の数及び比率に関するデータが不足しているため、進歩状況を測定することや、この問題についてより良い理解を得ることが不可能となっている。 状況が改善されているとのいくつかの証拠はある。すべての児童に教育を受けさせるための法律は、20政府においてすでに成立ないし立案されている。しかし、障害児を含めた「万人のための教育」国内計画を作成したのは、2、3の政府にすぎない。教育へのアクセスは、分離した学校を提供するという形態が支配的であったが、インクルーシブな教育の提供が増加している。27政府が障害を持つ子どもや若年者の普通学校へのアクセスがあることを報告している。 「2015年までに万人に教育を」は、「行動のためのダカールフレームワーク」、「ミレニアム開発目標」において共有された目標であるが、この目標は、この領域における政府及び市民社会によるさらなるコミットメントがなければ達成されないであろう。 訓練及び雇用 職業訓練サービスを提供する27政府のうち、5政府がこうしたサービスの設立の初期段階にあった。9か国が職業訓練の統合的な供給に移行している。障害者の雇用率を上昇させるために多くの戦略が採択されてきた。12か国は戦略が確実に実施されるようにする目的で奨励金や罰金付の割当て制度を導入した。その他の戦略としては、職業斡旋機関、職業紹介支援センター、賃金補助、職業指導、トライアル雇用、産業プロファイリングなどがある。多くの国から、小額の補助金、マイクロ・クレジット及び貸付による自営業や所得創出を促進する戦略が報告されている。これらの政府や他の政府は、地方における障害者の雇用促進にとくに焦点を当てたと報告した。日本政府は、重度障害者の民間部門への雇用促進を始め、女性・子女障害者の雇用状況に関する調査を現在行っている。 障害の予防 25か国が総合的な保健プログラムの中に障害予防戦略を持っており、他方、バングラデシュ、中国、インドなどでは、包括的な障害予防プログラムが実施された。中国の全国的な障害予防戦略は、都市、地方及び移民社会を対象としたものである。23の国や地域において、障害が発生するリスクのある児童に関する調査が行われ、都市及び地域ベースの枠組みの中で、早期の認知及び処置サービスのもとに家族に対する研修や支援が行われた。予防プログラムには職場での安全、交通事故の防止、ある場合には地雷による負傷の予防が含まれる。2001年、ニュージーランド政府は、ポジティブな高齢化と障害予防の観点から策定された高齢者の健康に関する戦略を発表した。 妊娠時の栄養失調や産前・産後の不適切なケア、出産併発症、予防可能な乳児期疾病が原因となって生まれながらにして障害を持った乳児の数が多い。この数を減少させるには引き続き努力が必要である。 リハビリテーション 26か国でリハビリテーション・サービスが行われており、そのうち22か国では、リハビリテーションについて、CBR(地域に密着したリハビリテーション)アプローチがとられている。バングラデシュの特記すべきモデルでは、3つの政府部局が100以上のNGOやいくつかの障害者団体と協力して域内の障害者にリハビリテーションを提供している。慎重な政策判断によって、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピンではCBRサービスが広く行われており、またタイ、スリランカ、ソロモン諸島、ベトナムではそれが急速に拡大している。 域内のリハビリテーション・サービスの多くは依然として都市、機関ベースで行われている。そこには、障害者やその家族が問題解決のパートナーとしての役割を果たせるような協議と参加のメカニズムがない。 介助機器 およそ20の政府が介助機器の生産を認めている。また機器の購入を無償としたり、購入に際して財政援助を行っている。いくつかの政府では介助機器の輸入関税が免除されている。介助機器の輸入と自国での広範囲な生産にもかかわらず、介助機器、とくに高性能の機器に対する需要を満たすことのできない国もある。 ESCAP地域では、介助機器に対するニーズは概して満たされていない。地方や太平洋の小国・地域において状況はもっとも深刻である。援助による提供が唯一の供給源で、ニーズは十分に満たされていない。 自助団体 ESCAP地域の政府は自助団体をより支援するようになってきており、障害者問題について政府に助言する彼らの役割を評価するようになってきている。22か国が自国内障害者のための障害者団体、すなわち自助団体を設立している。4か国がこうした団体を設立する過程にある。17政府は、自助団体が国内の施策にインプットを行うことができるようにしており、12政府は自助団体の強化を図るために財政的な支援をしている。フィリピンには自助団体の国内フォーラムがあり、太平洋諸島では、「障害者インターナショナル(DPI)」オセアニア地域事務所が2000年に設置され、この小地域内の多くの国に対して支援を行っている。 政府の財政支援を受けずに発展してきた自助団体もある。さらに、多くの本質的に異なる自助団体同士の調整が行われていないため、自助団体がその目的を効果的に訴えていく能力が弱くなっている。この種の調整が、政府と障害者の双方にとって有益であることは明らかである。 政府と自助団体とのパートナーシップと協議は域内でもまだ達成されておらず、またそれに向けた進歩は遅々としている。 地域協力 域内の多くの国の政府は「十年」に関する地域の活動に積極的に参加し、協力してきた。多くの政府は、障害者問題に関連する種々の重要会議、ワークショップ、セミナーのホストをつとめ、地域での協力に大きく貢献した。しかし、距離、不十分なコミュニケーション、費用、言語の障壁のような各種の理由によって、北部及び中央アジア、太平洋小地域の国や地域においては「十年」の課題への取組が限られたものとなってしまった。日本政府は「十年」事業の開始、実施にはかりしれない支援と寛大な貢献を行い、全体として「十年」を成功に導くことができた。「十年」が支援する多国間・二国間の援助プログラムは、障害者やその家族、団体、その他のNGO、域内の政府、「十年」の目標を追求することに携わった他の国連の機関にとって非常に有益であった。 ジェンダーの側面 いくつかの国ではジェンダー・インクルーシブな障害者政策を発展させ、他の国々では、ジェンダーの視点から収集したデータや女性障害者のネットワーク化を容易にした。こうしたイニシアチブを継続し、拡大して、女性障害者が障害者自助団体、主流擁護団体、より広いコミュニティーに彼女らがもつ特定の問題を含むよう主張していくための能力と自信をもてるようにしなければならない。女性障害者が、女性であること、障害者であることという二重の苦しみを抱えている。女性障害者の関心事と向上を、この地域における将来の行動計画の中核とするべきであることは明らかである。 教訓及び改善のための優先事項 障害の問題は単に福祉の問題であるのみならず、人権の問題でもあるとの見方は強まってきている。このアプローチのシフトは、いくつかの政府の最近の政策傾向にも反映され、ばらばらな方法ではなく、包括的な方法で障害の問題に対処するようになった。 障害者がその社会に完全に参加し、かつ貢献しうる市民になるには、障害者と政府の双方が自らの役割、責任、相互の関係を見直す必要がある。政府は政策立案過程における完全なパートナーとして自助団体を捉える必要があり、自助団体は自らの組織内でどのような形で代表を送るかの問題を解決しなければならない。 貧困と障害のリンクや、地方に住む障害者の大多数のニーズが満たされていないことがこれまで以上に認識されるようになっている。障害者の能力が開発され、自らが直面する特定の問題を地域ベースで解決することに貢献できるようにしなければならない。政府は、障害を持つ弱者の保健医療、教育、訓練及び就業のサービスにアクセスでき、かつコミュニティーの開発プログラムに統合されるようにする必要がある。障害を持つ子どもたちが適切な教育へアクセスできる比率が低く、また障害を持つ若年者や成人の失業率が高いことに緊急に目を向ける必要がある。 国内データベースの構築は、障害者及び彼らの状況に関する正確な情報を提供するには不可欠である。そうしたデータベースがなければ、適切なサービスを策定し、かつ完全参加と平等に向けた取組の進歩状況を監視することはできない。 ※ この和訳は、内閣府において、便宜上仮訳したものです。誤りを含む場合がありますので、引用される際は、必ず原文を参照してください。