(内閣府仮訳) < 要  約 > 行動のためのびわこミレニアムフレームワーク案:アジア太平洋障害者のための、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けて 琵琶湖は、大津市にある日本最大の淡水湖である。「『アジア太平洋障害者の十年』最終年ハイレベル政府間会合」が開催されるのはこの都市である。このことから、「びわこ」という名前が付けられた。「フレームワーク」で使われている言葉について2、3説明すると、「ミレニアム」は、この「フレームワーク」がミレニアム(千年紀)の始まりに採択され、かつ「国連ミレニアム開発目標」を補完するように構築されていることを示している。「インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会」は、このフレームワークの基本理念を示している。「インクルーシブ」な社会とは、すべての人々のための社会を意味し、「バリアフリー」な社会とは、社会的、経済的、文化的なバリアのみならず、制度的、物理的、そして態度的なバリアのない社会を指す。そして「権利に基づく」社会とは、すべての個人の人権に基づく社会を意味し、そこでは障害者による貢献が評価され、彼らに影響を与えるすべての決定においては障害者がその中心となる。 2002年5月、ESCAPは、「21世紀におけるアジア太平洋地域の障害者のためのインクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会の促進」に関する決議を採択した。この決議はまた、「アジア太平洋障害者の十年1993〜2002」を2003〜2012年まで、さらに10年間延長することを宣言した。 「びわこミレニアムフレームワーク」は、インクルーシブで、バリアフリーかつ権利に基づく社会に向けた問題、行動計画や戦略を概説するものである。 この目標を達成するため、「フレームワーク」は行動のための7つの優先領域を明らかにし、それぞれについて、重要課題と特定の時間枠における行動の目標が続く。全部で18の目標と、全ての目標の達成を支援する15の戦略が確認されている。 次の障害者の10年は、障害者の市民的、文化的、経済的、政治的、社会的な権利を保護するため、慈善ベースのアプローチから権利ベースのアプローチへとパラダイムをシフトされるようにするだろう。 これらの目標や戦略を達成するためには、市民社会、なかでも自助団体や関連するNGOとの協議や彼らの参加が不可欠である。 以下のセクションは、行動のための7つの優先領域、目標、戦略、時間枠、支援・監視メカニズムについて要約したものである。 (1) 障害者の自助団体 障害者及び彼らの自助団体は、自分たちについて発言するもっともふさわしい能力を備え、かつ十分な知識や情報をもっており、彼らに関係する問題の解決に貢献することができる。はっきりとした2つの目標が設定されている。 1)2004年までに、政府、国際金融機関及びNGOは、自助組織を支援し、発展させるための政策を確立する。 2)2005年までに、政府及び市民社会組織は、自助団体をその政策決定過程に組み入れる。目標達成のための行動には、政策決定過程への障害者の参加、政治代表や能力開発が含まれる。 自助団体は、女性・少女障害者、知的障害者、HIV陽性者やハンセン病の影響を受ける人々といった、社会から取り残された人々を含むべきである。 (2) 女性障害者 女性障害者は、女性としての地位、障害者であること、そして大多数が貧困の中で生活していることによって何倍もの不利な立場にある。こうした問題を解決するために、3つの目標が設定されている: 1)2005年までに、政府は、女性障害者の保護を目的とした反差別政策が保証されるようにする。 2)2005年までに、自助団体は、女性障害者の完全な代表を持てるように促進する方針を採用する。 3)2005年までに、女性障害者が国内の主要な女性団体のメンバーに含まれるようにする。 (3) 早期対処と教育 アジア太平洋地域では、健常な児童や若者への教育普及率が70%に達しているのに対し、障害を持つ児童や若者で何らかの形で教育にアクセスできている人は10%にも満たない。障害を持つ児童や若者が教育の機会から除外されていることは、それから先の個人的、社会的、職業的発展の機会からも除外されることにつながる。これらに対処するため、3つの目標が設定されている: 1)障害児が、(2015年までにいかなる地域においても、少年、少女に関係なくすべての子どもが小学校の全課程を終了できるようにするという)ミレニアム開発目標の対象となった人口の不可欠の一部となるようにする。 2)2010年までに、障害を持つ児童及び若者の少なくとも75%が、小学校の全課程を終了できるようにする。 3)2012年までに、0〜4歳までのすべての幼児及び児童が、地域に密着した早期処置サービスにアクセスできるようにする。 この分野における行動としては、インクルーシブな教育のための適切な立法、0〜16歳の障害児に関する国内でのデータ収集が含まれる。 (4) 研修及び自己雇用を含む雇用 障害者は、依然として過度に教育不足のおかげで訓練を受けられず、失業し、不完全就業で、貧しいままにある。彼らは、部分的には、社会的疎外、訓練された有能なスタッフ及び独立した労働者としての十分な訓練の欠如によって、主流の労働市場に対して十分なアクセスができない。3つの目標は以下のとおりである: 1)2012年までに、署名国(加盟国)の少なくとも30%が(障害者)雇用における職業上のリハビリテーションに関するILO条約第159号を批准する。 2)2012年までに、署名国において、全職業訓練プログラムの30%に障害者が含まれるようにする。 3)2010年までに、すべての国において、障害者の雇用率及び自己雇用率に関する信頼できるデータが存在するようにすること。 (5) 建造物環境及び公共輸送機関への アクセス 公共輸送機関を含む、建造物環境へアクセスできないことが、依然として障害者の主要なバリアとなっている。この問題は、高齢障害者の増加に伴って、一層悪化してきている。普遍的なデザインを行うアプローチは、高齢者、妊婦、子供を連れた親を含め、すべての人々の利益となる。また、経済的な利益は正当化されたが、実質的な政策レベルでのイニシアティブはまだとられていない。こうした状況を改善するために、3つの目標が設定されている。 1)2005年までに、政府は、農村や農業の文脈におけるものも含め、公共施設、インフラ及び輸送機関の計画に関して、アクセス可能性の基準を採択し、強化すべきである。 2)2012年までに、既存の公共輸送システム及び新しい刷新された全ての公共輸送システムにアクセスできるようにする。 (6) ICTを含む情報通信へのアクセス この10年間で、情報通信技術(ICT)の発展に大きな進歩がみられ、障害者のネットワーク化、連帯雇用、独立した生活においても多くの機会が開かれた。しかし、他方、ICTによって障害者と健常者との格差も拡大した。情報格差はICTインフラ、インターネット及びICT技能に対するアクセスの不可能性を含む。こうした問題は農村地帯でとくに深刻である。マルチメディア環境は視覚障害者に対してバリアを生み出している。こうした状況を改善するために3つの目標が設定された。 1)2005年までに、障害者のインターネット及び関連サービスへのアクセスについて、少なくとも他の市民と同様のアクセス率となるようにする。 2)2004年までに、国際機関は、障害者のアクセス可能性の基準を国際的なICT基準に取り込むようにする。 3)2005年までに、政府は障害者のためのICTへのアクセス可能性に関するガイドラインを国内のICT政策のなかで採択する。 (7) 社会保障と生計プログラムによる 貧困緩和 障害者は貧困者の中でももっとも貧しい人々である。1億6000万人、障害者の40%以上の人々が貧困のうちに生活し、社会経済的権利から恩恵を得ることができない状態にあると推定されている。貧困と障害は、障害者が社会的に疎外され、適切な社会的サービスが供給されないときに悪循環となって他方を悪化させる。国連ミレニアム開発目標の目標1にしたがい、以下の目標が設定されている: 1)政府は、1990年から2015年までにおいて、1日1ドル以下で生活する障害者の数を半減させる。政府は、ミレニアム開発目標のベースラインのデータ収集と分析に障害に関する側面を取り入れ、かつ農村開発や貧困削減を目的とした基金から一定の割合を障害者に割り当てるよう求められる。 障害に関する国内行動計画(5か年) 戦略1は、政府に対し、2004年までに、フレームワークの目標及び戦略を実施する包括的な5か年国内行動計画を発展させ、採択するよう求める。 障害問題に対する権利に基づくアプローチの促進 戦略2は、政府に対し、非差別的な政策を採択し、実施することを求める。戦略3は、国内の人権委員会に対し、障害者の権利を守る機関として注意を喚起している。戦略4は、政府に対し、あらゆる政策展開において障害者を積極的に関与させるよう求める。戦略5は、政府に対し、基本的な国際人権条約を批准するよう求める。戦略6は、政府に対し、障害者の人権及び尊厳を促進し、かつ保護する目的を持つ包括的かつ統合的な国際条約のためのアドホック委員会を支援することを求める。 計画のための障害統計及び障害の共通の定義 障害の定義及び分類に関する共通のシステムは、この地域においては一律に適用されていない。この問題を解決するため、2つの戦略が設定されている。戦略7は、政府に対し、2005年までに、障害関連データの収集と分析に関するシステムを開発することを求める。戦略8は、政府に対し、2005年までに、国連が出版した「障害統計の開発のためのガイドライン及び原則」に基づいて障害に関する定義を採択するよう求める。 障害の予防、障害者のリハビリテーション及び雇用のための地域発展アプローチの強化 地域に密着したアプローチが増加し、障害者の経済的、社会的、その他の人権強化に関する伝統的な制度的・中央集権的なリハビリテーション・プログラムに代わるものとなっている。戦略9は、政府に対し、地域に密着したアプローチを促進する国内政策を直ちに展開させるよう求める。 行動に対する協力と支持:小地域内、地域内、及び地域間 小地域レベルで政府間の協力を強化することに焦点が置かれており、戦略10及び11は、2004年までに、目標達成のために、小地域の優先事項及び行動計画を作成するよう求める。地域レベルでは、戦略12は政府、国連システム、市民社会組織及び民間セクターに対し、アジア太平洋障害者センターの研修及びコミュニケーション能力に協力し、支援し、かつ利用することを求める。このセンターは、「アジア太平洋障害者の十年」の遺産として、2004年にバンコクに設置される。同センターは、この地域でもっとも有力な拠点の一つとなるだけの能力を持っている。戦略13及び14は、政府、市民団体及び民間セクターに対し、最大限の協力と連携を進めるために、焦点を当てられた領域において卓越した拠点のネットワークを確立するよう求める。ESCAP及び他の国連機関は、この卓越した拠点のネットワークの確立について、援助する。戦略15は、情報、経験、専門知識の交換のためのESCAPと他の地域機関との協力を強調する。 監視と評価 ESCAPは2年ごとに会議を開き、達成状況を再検討し、びわこミレニアムフレームワークの実施に必要な行動を明らかにする。これらの会議には、政府の各省庁や機関、NGO、自助団体及びメディアから構成される障害問題に関する国内調整委員会の代表が招請され、実施状況に関する評価報告を発表する。 行動のためのびわこミレニアムフレームワークの中期再検討を行うべきである。その再検討の結果に基づいて新「十年」の後半期における目標及び戦略計画を修正し、かつ新たな目標及び戦略計画を策定することも可能である。