2023年3月8日 一般財団法人全日本ろうあ連盟 副理事長 石橋 大吾 p1 1.情報取得等に資する機器の活用状況について、普段どのような支援機器等を、どのような場面で使用しているか。 1 オンライン会議システム(ZOOM・Skypeなどを含む) →対面会議の代用として、緊急時の連絡として(文字情報以外、手話言語も活用できる) 2 音声認識システム →対面するきこえる人の話す内容を音声言語による認識で表示し、活用(ただし自分自身の声の音声言語による認識には活用できない) →音声言語による認識表記の誤記が課題 3 電話リレーサービス →電話として活用(職場・個人) →チャット・手話言語の両方での活用が可能に →オペレーターの養成と社会の理解・啓発が重要課題 4 遠隔手話通訳・遠隔手話サービス →山間部・過疎部の意思疎通支援事業や新型コロナウィルス感染症時の病院通訳に活用(遠隔手話通訳) →クレジットカード会社・通販会社の「お客様対応」の一環として(遠隔手話サービス) 5 アイ・ドラゴン4(日常生活用具指定) →災害時に字幕以外の手話言語による情報発信を行っている「目で聴くテレビ」の受信が可能。現在はIPTVに対応。 →一般テレビ番組を字幕・手話言語放送で視聴可能 6 FAX(日常生活用具指定)・メール等 →幅広く対応できるが、書き言葉へのアクセスが必要 →FAX機の受注減少がみられるが、FAX使用ユーザーにとって今後の使用に課題 2.生活する中で、どのような場面で困りごとがあるか、また、困りごとの中で、情報取得等に資する機器を活用することで、困りごとを解消できると考えられるようなものはあるか。 【前提】ろう者にとって、機器の活用は「困りごとの解消」の手段の1つにはなるが、対面・対人支援の完全な代替え手段にはならない。機器支援と人的支援を組み合わせることが重要になる。 機器だけですべての問題を解決するのは難しい。きこえない人が、まず機器によって、様々な情報にアクセスすることができ、次に、その中で人的支援が必要な内容があれば速やかに人的支援を受けられるというのが理想的。 p2 【困りごとの例】 1 銀行やカード会社の本人確認において手話言語通訳を介した場合、本人であることが認められず、電話口で声を出すように求められることもある。 →電話リレーサービスを通じての連絡が「本人確認手段」として認められだした一方で、逆にこれまで認められてきた(例:情報提供施設や行政設置通訳を活用)それ以外の手段による本人確認について厳格化し、新たな差別や困りごとを生んでいる状況 →加えて、スマホやタブレットを持っていない、または使いこなせない場合、そもそも電話リレーサービスを利用することができないため、電話に代わる手段は別途必要になる。 ・上記のように「ソフト面」と「ハード面」の両方同時の整備が必要不可欠。 2 駅や金融機関のATM、公園等の駐車場などで無人化が進んでいる。障害者手帳の提示による割引を受ける場合や、機械のトラブル時には、係員とのやり取りが生じるが、その手段が音声言語のみであったり、文字のみであることがほとんど。 →JR各社は話せる機能のついた券売機の導入を進めており、JR東日本は「話せる指定券券売機」、JR西日本は「みどりの券売機プラス」を設置しているが、音声言語対応がメイン。券売機には聴覚障害者対応可能の説明があるが、どのように操作をしたらいいのか説明はない。 →無人駅になるとアナウンスや運航状況が掴めなくなり、どうしたらいいかわからない。Twitter(SNSを活用してのリアルタイム検索)や鉄道会社のホームページで確認することができても情報の反映によるタイムラグが出てしまい、時間が過ぎてしまう。 →高速道路の無人精算機にて、音声言語のみ対応となっているので障害者割引使用に時間がかなりかかってしまう。そのため、渋滞になってしまうときもある。 ・無人駅にテレビモニターを設置、運行状況など利用者自身で確認できるように。 ・無人駅の近くに店舗や飲食店があれば、そこに機器設置する場所の提供を含め、対応を委託することで対面によるやり取りが可能に。 ・駅で切符を購入できなかった場合はこのまま列車に乗って、車内で障害者割引を含め、切符購入できるように。 ・「身障手帳の表示を」と音声言語で説明されることがあるが、音声言語の情報を字幕化などで対応できるように。 ・身障手帳のデジタル化が必要ではないか。あらゆる場面にて、デジタルによる自動的に障害者割引が可能な取り組みが必要。 ・ATMやコインパーキングでのトラブル時の対応も同様だが、長時間を擁するトラブル時は字幕では限界があり、画面に手話言語通訳が出るような取り組みが必要。 p3 3 緊急時を見越した、通常時からの音声情報の文字化について 【前提】緊急時に限らず、通常時から公共施設や商業施設などにおける音声によるアナウンス情報についても文字または手話表示が必要である。 →災害時やトラブル発生時の車内また駅構内では、緊急時のアナウンスが音声言語のみであり、きこえない人にとっては、何が起こっているのか、今後の見通しなどが把握できず、冷静な判断ができない。避難指示があったとしても、指示がわからないまま、周りの人の動きに合わせてついていくしかない。 →駅では改札前や有人窓口付近にいれば、掲示物(ホワイトボード)が出ている時があり、それで何とか把握できることもある。しかし既にホームに出てしまったり、電車内にいる時だと、見ることができない。 →今その場で出された情報(放送)を知りたいのに、スマホ等ではその情報が反映されない。 ・車内やホームなどには、モニターやデジタルサイネージが増えているので、それらを活用して放送と同じ内容をリアルタイムで文字による情報の可視化をすること。 ・停電時でも問題なく電光表示等が使え、音声言語の放送と同時に映像・文字でも情報提供できるようにしておくこと。 ・駅構内や施設内にいる人たちが所持しているスマホなどに信号を飛ばして、音声アナウンスの内容が即時に文字で表示されるようなシステムの開発が重要 ・家庭機器の音声言語による通知や警報がきこえないため困ることが多いので、これらも何らか字幕化や点滅等の視覚的にわかるようにする、または信号をスマホに飛ばしてスマホに文字表示できるようなシステムの開発が重要 3.情報取得等に資する機器の開発や活用に関連したグッドプラクティス事案 1 認定NPO法人障害者放送通信機構 阪神淡路大震災の痛苦の教訓をふまえ、一般財団法人全日本ろうあ連盟と一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、民間企業などが中心となり設立したNPO法人。 1998年からCS放送(通信)で手話と字幕の番組「目で聴くテレビ」をスタートさせている。 2 一般社団法人手話言語等の多文化共生社会協議会 きこえない人ときこえる人の双方が円滑なコミュニケーションが出来る社会基盤を構築するため、手話言語と音声言語を双方向に伝えるコミュニケーションシステムの研究開発とその促進(人材育成)、および実用化(普及促進)を行う。 p4 主な活動概要 1 手話言語と音声言語を翻訳し、双方向に伝達するプログラムの研究開発事業 2 上記プログラムの研究開発および実用化を促進する人材育成事業 3 手話言語と音声言語の双方向コミュニケーションシステムの普及・促進事業 4 その他本協議会の目的を達成するために必要な事業 参加機関(2022年10月18日現在)※連盟は特別会員として参画 国立大学法人電気通信大学・国立大学法人筑波技術大学・国立大学法人九州工業大学・国立大学法人名古屋工業大学 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社・株式会社エーアイ・岡山放送株式会社・株式会社ギークフィード・株式会社シュアール・ソフトバンク株式会社・トヨタ自動車株式会社・株式会社ユニオンソフトウェアマネイジメント、アフラック生命保険株式会社 北九州市・調布市・鯖江市・飯塚市