資料2 盲ろう者の情報機器使用の現状と課題 社会福祉法人全国盲ろう者協会 (2023年8月4日提出資料) p1 1.情報取得等に資する機器の活用について 盲ろう者が情報を取得する方法は、視覚と聴覚の障害の程度や教育環境等の要因により、大きく3つに分類できる。 (1)触覚による情報取得 点字ディスプレイの使用 振動パターンの活用 (2)視覚による情報取得 見え方に合わせて、画面上の配色、文字の大きさ・フォント、動画等のコンテンツを調整 (3)聴覚による取得 補聴システム等によるサポート また、同じ点字ユーザーでも点字の触読に長けている者から、ゆっくりでなければ点字の触読が難しい者まで、触読のレベルは盲ろう者によってまちまちである。視覚や聴覚を活用する盲ろう者についても、人によって見え方、聞こえ方は異なる。 情報技術の進歩は目覚ましく、昨今では、AI技術も向上している。こうしたテクノロジーの進化により、様々なインターフェイスの開発が容易になったが、技術の進歩の恩恵を最も受けるはずの盲ろう者が、情報社会で取り残されてしまっているということが実情だと言える。 情報機器について、具体的には、点字ディスプレイを使用したパソコンやスマートフォン、タブレットの操作が可能になったおかげで、メールやLINEができる盲ろう者が増えてきた。 スマートフォンやタブレット、パソコンのアクセシビリティーが向上したことにより、弱視や難聴の盲ろう者にも使いやすくなってきてはいるが、使いこなすためには、特別な設定や操作方法を習得しなければならない。 一方で、点字ディスプレイは一台が平均40万円と高価であるため、多くが就労していない盲ろう者にとって、個人での購入は厳しい。(国の日常生活用具給付制度があるが、地域によって条件に格差がある。) p2 2.生活する中で、困りごとの事例、情報機器の活用により解消できる困りごとの事例 困りごとの解決方法が見いだされていないことが多いため、情報機器の活用により解消できる困りごとが少ない。 (1)主な困りごとの事例 <災害や緊急事態発生時> SOSの発信手段がない。 「緊急通報Net119」は、盲ろう者の使用を想定していない。 同居している家族がいたとしても、家族とのコミュニケーションが円滑にできない盲ろう者が多い。盲ろう者単独でSOS発信ができるような環境が必要。 家族が外出中のとき等、盲ろう者が一人で生活している時を想定した「緊急対応」について検討していただきたい。 <テレビ・映画等の娯楽> 盲ろう者には楽しめるものがほとんどない。 唯一盲ろう者が自力で楽しめるメディア番組は、インターネットで配信されるテキスト(画面、点字、音声)コンテンツに限られる。 ごく少数の情報機器の使用に慣れた盲ろう者であっても、インターネット上の情報は、目的のテキストコンテンツを探すのが難しいことや広告などの情報が紛れ込んでいたりすることが多い。 そんな中でも、テキスト情報が読めるということで、世界が注目した野球のWBCをネットで楽しむことができた。実況中継のネット配信があると、さらに楽しめると思う。 <電話リレーサービス> 盲ろう者が利用することを想定していなかったため、盲ろう者には一連の操作がハードルの高いものになっている。 アプリの操作だけでなく、オペレーターの対応マニュアル(盲ろう者のメッセージの読み取り速度に合わせてゆっくり進める等)を作成する等、改善を求めたい。 <タッチパネル> 金融機関のATMや販売機、セルフレジ等に代表されるように、ほとんどのサービスがタッチパネル操作方式になっている。タッチパネル方式は凹凸がないため、触ることで情報を得ている盲ろう者には使用できない。 「触って操作する」ことを機器設計・開発の基本原則にして頂きたい。 p3 <セキュリティ> インターネットのセキュリティの強化による本人認証方式が、基本的に音声か画像による認証の2択になっているため、盲ろう者がアクセスできないのは明らかである。 <その他> AIの進化により、チャット機能も充実してきている。大変便利になってきた一方で、上記、電話リレーサービスが利用しにくいこと等からも推察できるように、盲ろう者がチャットを使いこなすことは、現状では難しい。 ネットショッピング等で、問い合わせをしたい時に、「電話」か「チャット」のどれかを選ぶという仕組みになっている大手のネットショップもある。 メールやLINEによる問い合わせ等、盲ろう者が自分のペースで問い合わせができる方法を是非加えて頂きたい。 3.情報取得等に資する機器の開発や活用に関連したグッドプラクティス事案 2020年12月に、株式会社ドリテックから盲ろう者にも使いやすいユニバーサルタイマーが販売された。このタイマーについては、設計・開発段階から、盲ろう当事者の声を取り入れて進められた。知らせる方法として、音・光・振動を採用し、ボタン操作の際に振動によるフィードバック、機能ごとにボタンの形状を変えるなどの工夫を取り入れ、盲ろう者が自力でも使用できる製品となっている。 その他には思い当たらない。盲ろう者のコミュニケーション支援ツールとして開発されるケースは散見されるものの、種々の理由(ニーズの把握が不十分、ニーズ対象者が少ない、商業ベースに乗らない、等々)により、実用化に至るものが少ない。 4.今後の課題 上述したことを踏まえ、「盲ろう者の存在」が社会のあらゆる分野において意識されるようにすることが重要と考える。 政府、企業、そして個人業者が盲ろう者の存在とニーズを把握し、国連のSDGsで詠うたわれているように、「誰一人取り残さない」という理念を実現して頂きたい。 以上