障害者施策トップ > 推進体制 > 障がい者制度改革推進会議 > 第13回障がい者制度改革推進会議議事要録
[PDF:160KB]
[PDF(ルビあり):212KB]
第13回障がい者制度改革推進会議(2010年5月31日)
議事要録
議事 意見交換
内閣府地域主権戦略室
- 内閣府地域主権戦略室より地域主権戦略の工程表などについて報告。報告内容は内閣府ホームページに掲載している動画などでご確認ください。
【委員の発言の概要】
- 日本障害フォーラムの「地域主権改革と障害者施策に関する要望書」を小川委員追加資料として出している。私たちは「地域のことは地域に住む住民が決める『地域主権』への転換」という方向性に異議は唱えないが、地域の障害者関連施策の義務規定や当事者参加などの規定が一律に自治体の裁量なれば、現時点では障害者施策の地域間格差が更に増大し、これまでの障害者運動により実現してきた成果が後退するのではないかと危惧を抱く。
- 第1に自治体に権限を移譲するとのことだが、自治体を市民へのサービサーとしてとらえるのか、あるいは条例などで市民をコントロールする機関ととらえるのか。次に、日本の1,000人当たりの基礎自治体の公務員数は諸外国に比べ少ないが、これで本当に福祉や人権にかかわるサービスを担保できるのか。
- 障がい者制度改革推進会議と連携し、同じ政権の中で地域主権戦略と障害者制度改革との齟齬が起きないようにお願いしたい。例えば、推進会議では「バリアフリー新法に基づく基本構想の作成や改定に当たっては、当事者参画のより一層の推進を図る」としているが、地域主権戦略の資料では都道府県障害者計画や市町村障害者計画、あるいはバリアフリーの基本構想の策定の際の当事者参画の義務付けは廃止となっている。また推進会議では地域間格差を限りなく取り除き誰もが地域で暮らす権利を実現するとしているが、一括交付金になるとこれが担保されるのか疑問だ。
- 第一に障がい者制度改革推進会議で地域主権のあり方をきちんと議論させていただきたい。第二に義務付け・枠付け関して「従うべき基準」「標準」「参酌すべき基準」の3段階に分かれているが、「従うべき基準」はどの程度の強制力があるのか。第三に社会保障や義務教育については一括交付金から外れると聞くが、現在、統合補助金として地方に財源委譲されている地域生活支援事業はどうなるのか。
議事 第一次意見の取りまとめについて
総論について
- (東室長より討議に当っての基本的な考え方が述べられた。)これまでJDFは各省庁との意見交換で条約批准のためにいろいろな整備を求めてきたが、ほとんどゼロ回答だった。推進本部と推進会議が立ち上がっておよそ半年、この間に障害者基本法の抜本改正、差別禁止法の制定、障害者総合福祉法の制定という大きな3つの課題で改革の方向性と期限を切った道筋が明らかになったのは大きな成果だが、個別分野は依然としてゼロ回答に近い。こういう中で推進会議の第一次意見に基づく閣議決定の獲得目標は何かが大切で、改革の集中期間内の工程表を決定し推進会議の意見を踏まえ期限を切った検討を各省庁に求めることが求められている。閣議決定するためには各大臣の合意を得る必要があるが、各省庁の意見と推進会議の認識の間には大きな乖離がある項目も多いので、各府省で真摯に検討していただく必要がある。結論を得るまでの年限について工程表の上では4つのパターンを考えている。1つは22年内の結論というパターンで、来年の常会に改正法案を提出する障害者基本法など。2つ目は23年内の結論というパターンで、24年の常会への法案提出を目指す総合福祉法(仮称)など。3つめは24年内の結論というパターンで、現在の障害者基本計画が平成24年末で終わるためこの時期までに新たな計画を策定する必要がある。4つ目は平成25年を視野に置くパターンで、障害者差別禁止法など検討に時間を要するものでも改革の集中期間内に対応を図ることが原則だと考えている。
- (発言)「家族依存からの脱却」を盛り込むべき。「障害者に対する社会の異なる取扱は個人の障害に起因するものとして、これを差別であるとは認識してこなかった」という表現は「平等な社会参加を困難にする異なる取扱は・・」とするべき。障害の表記については、「碍」を常用漢字にするよう文化審議会に要望することを推進会議として掲げるべき。障害者実態調査を項目として起こし、実態に即した政策の立案をするべき。
- (発言)条約批准に向けた法整備に関連して、精神障害者は民法第770条第4項で配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがない時は離婚の訴えができるとなっている。1996年の法制審でこれを是正すべきとされたが、まだ改正されておらず批准の前に改正すべきだ。
- (発言)「『地域生活』を可能とするための支援」は重要な基本的考え方だ。そこに「制度の構築にあたっては、地域間格差が生じないよう十分に留意する。」とあるが、「制度の構築にあたっては、地域の障がい者の実情に応じて、適切で柔軟な対応ができるとともに、地域間格差が生じないよう十分に留意する。」とするべきだ。また、改革集中期間における推進体制のところに「障害当事者、学識経験者等で構成する」とあるが、自治体関係者を明記すべき。
- (発言)「障害者差別禁止法」と表記すると対象が障害者だけになってしまう。家族など、より広く対象を取ることができる「障害を理由とする差別を禁止する法律」とすべき。差別禁止法は平成24年度末に結論を得て25年の常会に提出となっているが、厳しいスケジュールなので平成24年末に結論を得ることとしてはどうか。
- (発言)「共生社会」の「共生」は、所を同じくして生活する程度の軽い意味なので、権利条約に基づいて「差別のない社会」と変えた方がよい。
- (発言)「女性であることによって複合的な差別を受けるおそれがある」という記述に、社会的に非常に弱い立場にいる「子ども」を入れるべきだ。障害者基本法の抜本的改正のところで「言語」という言葉が入りよかった。「コミュニケーション」という言葉も重要なので入れていただきたい。
- (発言)「地域間格差が生じないよう十分留意する。」は「地域間格差が生じないように具体的な施策を講じる必要がある。」と、強く書いてはどうか。
- (発言)「障害の定義」の箇所に「WHO規定などの国際比較を行うと同時に」という文言を入れるべきだ。WHOの規定と日本の身体障害者福祉法別表の規定に大きな差があるため、聴覚障害者の範囲が狭められている。また、「コミュニケーションの保障」という文言は正確には「コミュニケーション手段の保障」ではないか。
- (発言)「社会モデル」「医学モデル」が分かりにくいので、注を設けてはどうか。
- (発言)社会モデルでとらえられる分野もあるが、聴覚障害の分野で福祉サービスを受けられるかどうかを考えると医学モデルの要素が強い。社会モデルは決して医学モデルを排除するのではない。
- (発言)従来の医学モデルは障害を機能障害や疾患など医学的な基準でみており、また訓練や治療で本人を変えることにアクセントがあった。それを社会モデルに変えるということは、機能障害だけで見るのではなくて社会的な参加に困難があれば障害者だということ。機能訓練やリハビリテーションなど医学モデルの大事な部分もやるが、環境を変える、差別を禁止するなどのアプローチに力点を置くというのが推進会議の提案だろう。
個別分野について〜労働及び雇用
- (発言)厚生労働省からの回答などから考えると、雇用問題は労働政策審議会で検討し、その他については総合福祉部会で検討するという分かれた形になる。推進会議において総合福祉部会だけではなく、雇用に関連した部門について意見交換できる場を設定すべきだ。
- (発言)この推進会議は縦割り行政を超えて議論しようとしている。労働は労働行政と福祉行政にまたがるという点からすると、討論形態自身が問題になる。
- (東室長よりコメント)法律に基づく審議会等を無視した形で議論はできないのが現実。ただ、推進会議や総合福祉部会等との関連性は交流していただくことになる。また労働部会が必要という意見は聞いており今後の課題だが、第一次意見ではまだ取上げるべきではない。
- (発言)一次意見で取上げずに二次意見で新たにその議論ができるのか懸念される。横断的な問題については、別途検討の場を設けて検討するという表現が必要ではないか。
- (藤井議長代理のまとめ)総合福祉部会だけでは不十分で、労政審だけでも不十分だ。これをどうするかについては第二次意見以降の課題とする。
個別分野について〜教育
- (発言)地域における就学と合理的配慮の確保に関する記述で「子ども期にふさわしい生活の機会を奪ったり」「通常にはない負担や生活を本人・保護者に強いる」とあるが、これは「同年令の子どもとともに育つ機会」「地域社会で(障害のない子どもたちと)分離されている」などと端的に表現するべきだ。また「合理的配慮や特別な支援」は就学した場合に整備するのだから、「計画的に講ずる」では間に合わない。合理的配慮はすぐに行うということが明確にわかる文章にするべき。
- (発言)学校教育における多様なコミュニケーション手段の保障という項目のところで「意思疎通」という表現があるが、他の箇所とそろえて「コミュニケーション」と書くのがよいのではないか。「手話・点字・要約筆記等」と書かれているところに「要約筆記者・手話通訳者等」を入れるべきだ。
個別分野について〜所得保障等
- (発言)住宅の確保のところで「引き続き総合福祉部会における議論と整合性を図りつつ」とあるが、何との整合性なのか。住宅確保については公的住宅のこと等様々に議論しているので、それらの方策を実施するという具体的な表現にするべき。
- (発言)住宅手当も含めて書くべき。
- (発言)精神障害者の交通費の割引を他障害と同じにしてほしい。
個別分野について〜医療
- (発言)精神科医療について次の文章を盛り込んでほしい。「特に精神医療に関しては、医療と福祉が混在し、制度上の問題を多く含んでいるので、精神保健福祉法の抜本的な改正が必要である。」
- (発言)第6回推進会議で医療について話した内容に比べて後退しているイメージを受ける。「いわゆる保護者制度の見直し等も含め、その在り方を検討すべきである」とあるが、「見直す」ということ明示してほしい。また「医療付きショートステイ等を含む」という表現について、ショートステイは必要だが、医療付きショートステイと言うなら入院すればよい。「医療付き」は取ってほしい。
- (発言)「たんの吸引や」(など医療的ケアについての記述)のところで「併せて必要な研修や手続の更なる整備を行う」とあるが、(研修を受けることで)新たな(経済的)負担にならないような配慮が必要だ。
- (発言)医療の冒頭で「障害者が地域において安心して自立した生活が送れるためには…必要な医療やリハビリテーション等」と書かれているが、具体的な内容は精神障害に関する記述が多い。難病や長期に医療的な支援が必要な人、在宅での治療を希望する人などへの対応も重要であり、推進会議ではもう少し幅の広い意見交換が行われているので、基礎自治体が医療機関等と連携して取り組んでいることなどを具体的に書くとよいのではないか。
個別分野について〜障害児支援
- (発言)子どもの障害についての相談や療育が地域の身近なところで行われるようにするべきだ。障害児支援の位置づけは、地域において一般児童と共に育ちあうことが保障されるようなものとすべきだ。
- (発言)障害児の家族介護が厳しくなっている現状を踏まえ、相談支援体制の充実とともに家族、特に母親に過大な介護負担を強いる現状を十分に配慮し、これを減らす具体的な施策を緊急に講じる必要があることに触れる必要がある。
個別分野について〜虐待防止
- (発言)不利益処分を科すべきだ。防止に限るなら、抜き打ち検査など実効性のある措置をとれるようにしてほしい。
- (東室長よりコメント) 虐待防止を実効あるものにするための具体的手段については各論の議論の中ですべきで、第一次意見としてはこの程度でどうか。
個別分野について〜建物利用・交通アクセス
- (発言)移動に関する情報のアクセス権を明記すべきだ。移動に必要な情報があって初めて移動が可能になる人たちも非常にたくさんいる。
- (東室長のコメント)情報の問題は移動だけではなくすべての問題にかかわるため、あえて移動に関する情報のアクセス権を明記していない。
- (藤井議長代理のまとめ)情報に限らず障害分野全体に及ぶ問題でも、二重三重に強調すべき問題もある。これをどう扱うかは今後の課題とする。
個別分野について〜情報アクセス、コミュニケーション保障
- (発言)コミュニケーションと書いてあるが、片仮名で書くと分かりにくく知的障害の人に説明しにくい。片仮名で書いた大事なことは解説を加えてほしい。また手話や点字などは大事だが、ボランティアであることが多い。もう少し重要で大切なものだという位置づけが必要だ。
- (発言)高度な情報・コミュニケーション技術(ICT)に関する記述が入ったのは非常に重要だ。
- (発言)(自立支援法に基づく支援は個人が対象なので)会議の主催者が聴覚障害者団体の場合、コミュニケーション支援を団体としては利用できないことが多い。コミュニケーション支援は会議する場そのものに保障されるべきなので、団体などの主催者がサービスを受けられるようにするべきだ。
- (発言)介助者の労働保障が必要だ。手話通訳者の公的機関への設置は地域格差が激しく、多くのところで普及が進んでいない。この点を強調して記述するべきだ。ICTについて、民間企業では技術開発を実際にやっているが、現場のニーズに合わないので事業化できないことが多い。この事業開発を制度的にバックアップする体制が必要ではないか。また、字幕の事業者は本音では全国のテレビ局で字幕をやりたいと思っているが、放送局の経済状況で予算が取れないのが現状だ。これをバックアップする体制が必要だ。
- (発言)コミュニケーションの説明として「自分の気持ちを伝え、気持ちを酌み取る」と付け加えてはどうか。
個別分野について〜政治参加
- (発言)成年被後見人の選挙権の問題は、全員ほぼ一致でこの欠格条項をなくすべきと考えており、次の参議院選挙からできれば実現したいものだ。一次意見よりも速く、これへの対応が必要ではないのか。
- (東室長よりコメント)成年被後見人の選挙権の問題のような選挙に関する事項は、従来より各党会派で議論をした上で、国会で決めてきている。政府の一機関である推進会議が国会に対して、改正すべきだという意見を言えるのかという大きな壁がある。それでも、推進会議という当事者をメインにした会議体として、意思は表示しておこうということだ。むしろ、推進会議ではなく別のルートで国会議員に要請するなどは可能だろう。選挙についての事柄は特に、国会で決めるべきだと言う要素がある。
- (発言)成年被後見人の選挙権の問題についての意見を、推進会議として内閣にあげるのは筋違いで、政党に要請するのがよいのではないか。
- (発言)JDFとして政府と話し合う際に私たちが指摘をしてきたのは、成年後見に係わる金銭管理などの能力と、投票や選挙権、被選挙権は直接関係がないということだった。これについて、政府からは関係の有無についてどちらとも取れる説明がされてきたが、今日の話では、明らかにそれは違うということなのか。
- (関参事官よりコメント)今の点は、事務的に聴いた上でお伝えする。
- (発言)成年被後見人の選挙権については、障害者を守るべき者が権利を剥奪しているというのが問題。また、その根拠が犯罪者と同じ規定になっており、大変気になる。政治参加の推進会議の問題認識で、この点を入れられないか。
個別分野について〜司法アクセス
- (発言)「受刑中の処遇」という記述は、未決の場合も含めて処遇全般について合理的配慮が必要なので、「被拘禁中の障害者」とするべきだ。
個別分野について〜国際協力
- (発言)国際協力における「アクセシビリティの確保」の趣旨は、障害に特化した国際協力だけでなくて、一般の国際協力についても障害のある人たちが受益者になれるようにすることであり、この点を補ってほしい。
- (発言)障害者の権利条約の翻訳に関して「このために、障害者権利条約の正式訳の決定は不可欠である。」などと明示すべきではないか。
以上です。
- (東室長よりコメント)権利条約の翻訳の問題については、国際協力に入れるべきなのかどうかについて他の意見も聞きたい。
- (発言)「国際協力」ではなく、「はじめに」の「2国際動向と障害者権利条約」で触れるのがよい
- (岡田審議官よりコメント)外務省が権利条約の日本語訳案をつくり、それを内閣法制局と調整して、最終的に政府の閣議決定としてその批准の案をつくる。これが国会に提出されて、審議了承されれば、正式に条約として批准され、それで初めて公的な文書として確定する。その訳への意見については、外務省が案をつくる段階で聴くという可能性はある。
- (発言)推進会議での仕事は、外務省が提案する日本語公定訳の原案について専門的な議論を踏まえた知見を述べるということだ。それを第一次意見の文案のどこに書くかが議論になっているが、IIIの3「横断的課題における改革の基本的方向と今後の進め方」でどうか。
- (発言)翻訳はとても大事だ。戦争直後にILOの文書で「メンタリー・アンド・フィジカリティ・ディスエイブル」とあったのを日本は「身体障害」と訳し、それから最近に至るまで精神障害は福祉の対象にならなかったということがある。役所が訳す段階できちんと検証するべきだ。
全体を通じての意見
- (発言)用語の解説のみでわかりやすくできる部分は非常に限られているため、この意見書の情報バリアフリー、合理的配慮としてわかりやすいものをつくる必要がある。そのための作業をやりたいという委員でチームを作りたい。
- (発言)各省庁の意見は現行法の正当化や解説がほとんどで、これと推進会議の意見書のどちらが優先されるかが問題だ。推進会議は内閣総理大臣の下にあるトップの会議だから、譲れない点をみんなで合意して実行する必要がある。
- (発言)障害のある女性の基本的人権に配慮するという箇所で女性だけではなく児童もいれるべきという意見があったが、女性が複合的な差別を受けている状況は特記すべきなので、ここは女性に特化した表現にするべきだ。
- (発言)厚生労働省関係で検討チームをつくるとあるが、当事者の意見をきちんと聴いた上でやっていただきたい。
その他〜自立支援法改正案について
- (発言)自立支援法の一部改正案、障害者虐待防止法も議員立法で通そうとしている。今まで障がい者制度改革推進会議を今年1月から始まって、5月の末で第13回目をやろうとしているときに議員立法と決めてしまうということで、部会が今始まってきて、それで部会を無視するのかということと、今まで自分たちもこういう会議で4時間会議をして、自分の中に入れていくことにすごく時間がかかって、それで一方的に一部改正案をするということでは、すごく自分たちは不満だ。それで、自分たちがこんなにいっぱい時間をかけてきて、いっぱい時間をかけて話し合っているのに、そういうさなかに議員で通してやるということは、私たちを本当に無視しているのではないか。
[以上]
▲ このページの上へ
障害者施策トップ > 推進体制 > 障がい者制度改革推進会議 > 第13回障がい者制度改革推進会議議事要録