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第19回障がい者制度改革推進会議(2010年9月6日)
議事要録


議事 障害者基本法の改正について


基本法総則として盛り込むべき事項

1.目的規定等の見直し・・・主な書面意見)

  • 障害者の権利の実現のための法律であることに触れるべきであるとの意見が多数。
  • 権利条約の規定を尊重する、権利条約の目的の達成、権利条約に言及すべきなどの意見や、障害者福祉という言葉は見直すべきとの意見が複数あった。
  • 分け隔てなく、障害を受容する社会の形成などの言葉を目的に入れるべきとの意見、また人並みに暮らすことができる社会を実現する、関係者との連携による共助という趣旨などを入れるべきとの意見があった。
  • 障害者基本法は理念を示すとともに司法審査において判断基準となるべきとの意見や、障害のある子どもも対象とすることを明らかにすべきとの意見もあった。

2.「障害者」の定義の見直し・・・主な書面意見)

  • (東室長によるこれまでの議論の整理)制度の谷間を生まない、社会モデル、権利条約の関係条項を念頭に置くべきという3つの観点には異論がない。権利条約では障害は機能障害から発生するのではなく、機能障害のある人と社会的障壁との相互作用であり社会参加を妨げるものから生じることになる。障害そのものが何かという定義は置かれていない。
  • 身体、知的、精神などの区別は撤廃すべきとの意見がある一方、感覚障害などの個別障害名を加えるべきとの意見もあり、規定の仕方については必ずしも見解が一致していない。
  • 障害は長期にわたる必要があるのか、症状の固定が必要なのかという点も一致していない。権利条約は障害が短期間である場合を排除しておらず、また社会モデルの観点から見れば、障害が短期でも、また症状が固定しなくても社会的不利益という状態はあり得る。
  • 障害者の定義は不要であるとの意見もある。
  • (東室長)障害を定義すれば自動的に障害者の内容が決まるのか、それとも障害と障害者のそれぞれに独自の要素が入る可能性があるのかについても議論が必要だ。

3.(1)障害を理由とする差別の定義・・・主な書面意見)

  • 合理的配慮に関する規定を盛り込むほかに直接差別、間接差別や、補助者、保護者への差別、積極的差別是正策も定義する必要があるという意見や、区別されることによる不利益や意図とは無関係に発生した場合も差別に含めるべきであるという意見もあった。
  • 差別の定義は基本理念とは別個の条項で規定すべきとの意見や、「障害を理由とする差別」ではなく権利条約の規定に沿って「障害に基づく差別」とするべきとの意見があった。こうした定義を規定した上で、差別禁止のための法律を整備すること、差別に対する救済制度についての規定が必要だとの意見があった。
  • 虐待からの保護救済並びに虐待の防止等に言及し虐待防止の法制度の整備についても規定すべきとする意見や、補助犬に対する虐待も加えるべきとの意見もあった。差別禁止並びに差別の定義規定は総則部分として議論する課題だが、差別禁止に関する法制度の整備は各則に位置づけるべきかどうか検討が必要だ。

3.(2)差別事例の収集、公表・・・主な書面意見)

  • 差別事例の収集、公表の必要性について反対する意見は無し。
  • 権利条約第8条を受け障害に関する意識向上の項を設けて差別事例の扱いをその一部とすべきである、事例の収集と公表には賛成だが個別具体的な事例によってはその都度検討する必要があるなどの意見があった。

4.(1)すべての基本的人権の享有主体・・・主な書面意見)

  • 自己決定権をあらゆる場面で保障すべき、虐待にさらされやすい存在であることを認識し医療を含めあらゆる場面での尊厳が保障されるべき、権利条約17条の個人がそのままの状態で尊重される権利を盛り込みたい、日本社会のあるべき姿について明確なメッセージが必要だ、障害者権利条約第28条の規定を踏まえ現行基本法の「その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」という表現は残すべきなどの意見があった。

4.(2)自己決定に基づく社会参加・・・主な書面意見)

  • 支援付きの自己決定を明示すべき、自己決定に必要な援助を受けることも権利である、自己選択の権利も保障されるべき、強制入院は自己決定を奪うもので自己決定を絶対要件とすべきである、あらゆる分野に参加する権利と必要な支援が保障されるべきなどの意見があった。

4.(3)自ら選択する言語及びコミュニケーション手段の利用・・・主な書面意見)

  • 手話と非音声言語が言語であることの確認は不可欠だということについては異論が無い。
  • コミュニケーションの定義の中にトーキングエイトや人的支援も含めるべきであるとする意見があった。
  • 言語及びコミュニケーションの手段は聴覚、聾、視覚だけではなくて知的障害者にも保障されるべき、発声や言語に障害のある人などについても言及すべきとの意見があった。
  • 言語とコミュニケーション手段への権利性を明らかにする条文を新設することについて、障害者が障害のない人と等しく人権を保障されるという観点から、自ら選択する言語やコミュニケーション手段を使用するという自由権利的な側面と、選択した言語やコミュニケーション手段による支援を求める社会権的な側面の双方について意見が出された。

4.(4)自ら選択する地域における生活の実現・・・主な書面意見)

  • 自ら選択した地域で自立した生活を営むことの権利性を明確にすべきというのが多数意見だった。
  • 加えて、一般の社会生活とは異なる生活様式を強制されるなど社会から分離もしくは排除されてはならない、地域生活は日常生活だけではなく地域でともに学ぶ・地域でともに働くことも含めた社会生活全般にわたることを規定にすべき、地域での自立生活のための支援を実施する国と自治体の義務を明確に表記するべき、どのような福祉サービスがあるのか情報提供するべきなどの意見があった。

4.(5)障害のある女性に対する配慮・・・主な書面意見)

  • 権利条約第6条の趣旨を反映した規定を設けるべき、「障害者」という表記ではなく「障害を持つ男性、女性」という表記にすべきとの意見があった。

4.(6)生活の実態に応じた施策の実施・・・主な書面意見)

  • この設問を「生活の実態に基づく施策の策定と評価」とすべきである、障害者に関する定期的継続的な実態調査を実施し施策の策定と実施は一般国民と比較可能な生活実態調査に基づいて行うべきとの規定を設けるべきであるなどの意見があった。

4.(7)施策の策定及び実施への当事者意見の反映・・・主な書面意見)

  • 当事者意見を施策に反映するための方法の例示や意見の反映状況を公表することを規定するべき、地方自治体などでの参加や知的障害・精神障害・発達障害・慢性疾患に伴う障害のある人の参加を強めるべき、障害者団体や家族の団体の結成と運営に対して国や自治体が支援するのが望ましい、障害者に関する施策の策定と実施において障害者団体の参画を保障する規定を設けるべき、障害者の参加は単に意見表明にとどまらず政策決定への参加権を制度的に保障するものであるべきなどの意見があった。

その他の意見・・・主な書面意見)

  • 法律の名称を、障害者の人権の保障と尊厳の尊重、障害者への差別のない共生社会の実現を図る観点から、変更する必要があるとの意見があった。
  • 障害者基本法に前文を置くべきだ、前文に権利条約の批准や履行のための改正の趣旨を盛り込むべきだ、前文で国際的な連携・協力及び経験交流や情報交換の必要性について触れるべきだ、抜本改正の趣旨や理念・目的をうたった前文を検討する必要があるなどの意見があった。
  • 障害のある女性と同じく障害のある子どもについても配慮が必要だとの意見、親への十分な支援とモニタリングを明確化すると同時に教育・虐待等幅広い分野で障害児が他の児童と同様に平等に扱われる権利を明文化することが必要との意見があった。
  • 国際協力に関して障害者基本法にも権利条約を反映した規定を設けるべき、障害に関する施策が国際的基準に整合すると同時に国際的基準の普遍化に寄与・貢献するものであることを明記すべきなどの意見があった。
  • 国民の責務に関して、社会連帯の理念に基づき相互理解・人格と個性の尊重・安心して暮らせる地域社会の実現などの文言にすべき、地域社会における様々な関係者との連携による共助が欠かせないという意見の一方で、社会連帯という言葉は削除すべき、障害者の権利と尊厳を確保及び促進する観点から書くべきだとの意見もあった。障害のある人とない人が保護する者と保護される者という関係から国民の責務を考えるべきではないという点は共通している。
  • 国及び地方公共団体の責務に関して、差別禁止の措置や障害者の権利を保障する責務を盛り込むべき、障害の特性やニーズを踏まえた合理的配慮の提供等の必要な支援を義務づけることを規定すべきとの意見があった。
  • 法制上の措置について現行法10条を維持すべきとの意見のほか、10条は改正すべき、必要な関係法令の制定または改正という形で明確にすべきとの意見があった。
  • 障害者週間に関して、具体的施策に関係するから総則にはなじまない、現行基本法の「障害者の福祉」という言葉を「障害者の権利と尊厳の確保及び促進」とするべきとの意見があった。
  • 施策の基本方針に関しては、現行基本法の第8条を全面的に見直し選択の機会をもって地域社会で生活する権利を盛り込むべき、「障害者の福祉に関する施策」を「障害者に関する施策」とするべきなどの意見があった。
  • 障害者基本計画に関して現行第9条は具体的施策であるとともに、中障協は推進会議やモニタリング機関との関連など議論が必要で、総則にはなじまないとの意見があった。
  • 最重度の障害者が他の障害者と平等な扱いを受ける権利を明文化すべき、これによりすべての障害者が社会の一員として当然の権利行使ができる環境を構築できるとの意見があった。
  • 障害者基本法において、権利条約17条に沿って個人をそのままの状態で尊重するという規定を新設すべきとの意見があった。
  • 基本的理念及び障害者施策の基本方針の中に家族依存からの脱却を盛り込むべきとの意見があった。
  • 障害者への相談支援を基本法の総則に盛り込むべきとの意見があった。
  • 合理的配慮義務は国及び地方公共団体だけの責務ではなく事業主や学校設置者にも課されるから、総則に事業者の責務を規定すべきとの意見があった。
  • インクルーシブ社会の定義を規定すべきとの意見があった。
  • (発言)障害者基本法で障害者の範囲が変われば現在の身体障害者福祉法の別表の規定は明らかに抵触するが、この規定を変える効果が基本法にあるのか。この規定に合わないとして、現行基本法10条の法制上の措置に従って手帳の給付が拒否された時、これを無効にして権利を守るには10条を改正する必要がある。
  • (発言)社会福祉は社会開発の領域で論じられるようになり、権利条約では福祉は健康や自立、自尊心等と共に出てくる。福祉という用語を使うことで権利を増進するのか、政府の責任はどこなのか等がうやむやになるので、これを使うことはやめるべきだ。
  • (発言)国と自治体の責務に加え、事業者及び国民の責務も明示し、国を挙げて取り組むことを示すべきだ。福祉という言葉の再考をという意見があるが、これを一切使わなくなると自治体の現場は混乱する。基本法の議論に当たっては、自治体現場での障害者福祉サービスや施策に一定の敬意をもちつつ、提案を頂きたい。
  • (発言)福祉という用語は広く使われているが、その場に応じた言葉で表した方が障害者の権利を進めるにはよいのではないか。
  • (発言)福祉という言葉が、1つは雇用や教育等と並ぶ施策の分野として、もう一つは幸福というような意味で使われている。後者は世界の潮流とは、ずれているので、今回の改革でなくしていく必要がある。あいまいに「福祉の向上」などと言うことなどはなくすべきだ。
  • (発言)権利としての福祉、社会権の具現化としての福祉という使い方が必要だ。障害者基本法の前文、目的、定義、基本理念に今までにはない新たな社会を構築するということを意識的に盛り込む必要がある。そういう視点で、インクルーシブな社会は共生社会と定義できないか。そして、共生社会の定義としては多様性を認め合うだけではなく、障害者を受容することによって社会が変わるという文言を入れてもらいたい。また、各論で権利の規定に関して盛り込めないなら、基本理念は可能な限り具体的な権利規定である必要がある。基本理念の中で共生社会とはこういう社会だ等と書き込む必要がある。

基本法各則について

1.住宅・・・主な書面意見)

  • 住宅問題をどう位置づけるかについて、地域移行や地域での自立生活の観点から、障害者が利用できる住宅の確保とそのための支援が重要である。(ほぼ全員共通して)
  • 民間住宅利用における問題点としては、<1>借用拒否とか入居拒否の問題点、<2>入居しても改造について拒否される、出るときに現状回復が難しいことがある、<3>入居後の家主や近隣とのトラブルなどが指摘された。
  • 公営住宅利用における問題点としては、<1>公営住宅法施行令第6条の相対欠格条項という問題、<2>市街地から遠い距離にあり公共交通機関が利用できなければ社会生活ができない、<3>障害者住宅自体が少ない、または1階に限られて他の入居者と交流できない、<4>単身世帯用の住宅数が不足している等が指摘された。
  • 公的保証制度の利用については、国土交通省が所管する高齢者住宅財団に委託された家賃保証制度があるが、財団と契約した物件で障害者の入居を敬遠しないという条件が家主に課されるので、利用実績が少ないという問題点がある。
  • 一人で生活する前の生活訓練の場として機能している、多様な地域の住まいの一形態として位置づけた施策が必要、通常の住まいへのステップ的な居住形態として位置づけるなどの意見が多かった。(多数意見)一方で、グループホームやケアホームは住宅ではない、人里離れた場所に設置されるなら入所者と変わらない等の意見があった。また、グループホームやケアホームでも居宅支援サービスが利用できるようにすべきだ等の意見があった。
  • 公営住宅に関しての意見は以下のようなもの。<1>障害者の優先入居を図るべき、<2>障害のない人たちとの交流ができるような設置基準が必要、<3>家賃補助が必要、<4>公営住宅でも福祉サービスが使えるようにすべき、<5>ユニバーサルな構造の住宅が普及されるべきだ。
  • 一般住宅に関しての意見は以下のようなもの。<1>バリアフリーの義務化や、バリアフリー化のため補助金、金利の優遇制度等が必要である、<2>契約等で不利益を受けた場合に通報できる制度が必要であり、また行政が利害を調整する機能を持つべきだ。<3>公的保証人制度の充実や住宅手当、住宅改造と現状の回復への助成などが必要だ。
  • 居住支援の地域ネットワーク形成に関して行政に求められるものについて以下の意見があった。<1>居住に関する相談の体制整備、<2>人的ネットワークの構築に関する財政支援も含めた条件整備、<3>災害時の要援護者に対する個別支援プランの充実に向けた個人情報の開示の検討を含めた取組み、<4>全市町村で使える居住サポート事業。
  • 現行基本法の問題点についての指摘は以下の通り。<1>障害者が地域で暮らす権利やどこでだれと住むのかの選択といったことが記されていない、<2>当事者のニーズ把握と個別課題への対応策の検討及び実施に関する規定が必要、<3>現行法17条の規定は全面的に改正し、当事者参画の下に施策の実効性を担保すべき。
  • (発言)権利条約の第19条にある地域で暮らす権利や、居住地を選択しどこでだれと住むかを選択する機会を確保することが必要だ。公営住宅の相対欠格に加えて、民間賃貸住宅でも入居差別の実態がある。

2.文化・スポーツ等・・・主な書面意見

  • 文化・スポーツへの参加と享受の意義を認め、障害のある人にも障害のない人と同様に保障すべきである。(意見を提出した委員全員)権利条約では享受と参加を書き分けているので、この点も意識する必要がある。
  • 文化とスポーツは分けて議論すべきとの意見が多数だった。文化は分離が例外的であるべきだがスポーツは分離が例外とはまでは言えない、合理的配慮の内容や調整方法が本質的に異なるなどによる。一方で共に論じるべき、または論じることは可能だとの意見もあった。
  • レクリエーション、余暇、観光についても触れるべきだとする意見が多数だった。権利条約でも触れている、これらは生活を豊かにし心の健康づくりにも大きな役割を果たす、問題解決能力やエンパワーメントの向上にもつながるからということだった。
  • 多くの委員が、文化やスポーツを行う上での物理的な環境や社会的環境等について問題があるとし、情報保障などの環境整備が不十分、著作権法上の制限がある、施設を利用する上での制限があるなどの指摘があった。
  • 多くの委員が、文化やスポーツを行う上で利用拒否などの問題点があるとし、一般のマラソンに車いすで参加しようとして拒否された、一般スポーツ教室などで参加を拒否された、設備が整っていないから利用できないと言われた、などの指摘があった。
  • 文化やスポーツを行う上でどのような行政的な支援について、啓発、施設整備、財政的な支援、コミュニケーション手段の確保や情報保障、地域間格差の解消などが指摘された。
  • 障害に特化した文化やスポーツの育成は必要だとの意見が多数だった。障害を持つ者同士で競い合いたいという気持ちを尊重する必要がある、心身機能や身体構造の違いから独自の支援が必要だ等の意見があった。また、一般の文化やスポーツと区別しないインクルージョンを原則としつつ、必要な環境整備や本人の希望を尊重するという観点から区別があってもよい。
  • 行政上、一般のスポーツと障害者スポーツは同じ省庁が担当すべきであるという意見が多数だった。省庁横断的な仕組みをつくるべき、相互補完的に取り組むべきとの意見もあった。
  • 現行の障害者基本法の問題として、以下の意見があった。<1>文化的な生活への参加が権利であることが明文化されていない、<2>現行法の第7条の障害者週間は国民への周知が少ない、<3>障害者スポーツや文化活動を進めている団体などのヒアリングが必要だ、<4>聾者アスリートは障害の社会への理解などが不十分であるため競技を続けることが困難になっている等。
  • (発言)市民や企業等に勤める人の障害者スポーツへの理解が不足している。特別支援学校の教職員には障害者スポーツを支援する人が多いが、国内外の大会や強化合宿に参加するには長期間休む必要がある。しかし、学校や企業の理解が難しく長期休暇が認められないことがある。障害者がスポーツや文化をすることに関する環境整備が必要だ。また映画について、一般の映画館では日本映画に字幕がないため、聴覚障害者は日本映画を楽しむことができない。外国映画しか見られないということで選択肢が狭まれている。アメリカでは映画等のDVDに字幕をつけることが義務づけられているが、日本は義務になっていない。(経済産業省の管轄)
  • (発言)総合スポーツフェスティバルと障害者運動会を同日に同様の場所で開催することにしたところ、障害種別や年齢により多様な形が求められるはずが、障害のある人が参加することで体力的、身体的に幅広い人がスポーツと接する機会になっている。特別支援学校の高校生や就職している発達障害や知的障害のある若者と話す機会があり、クラブ活動でスポーツを通じて先輩後輩関係や友人関係が深まった、大会を通じチームワークが磨かれたとの話で、スポーツ等のクラブ活動の意義が再確認された。そのうちの1人は、得意な絵画を学び、文化活動を就労に結び付ける可能性を語ってくれた。文化・スポーツに障害のある人が参加することで、多様な出会いや交友関係が広がり、青少年の能力や才能が雇用につながる可能性もある。

3.障害の予防・・・主な書面意見)

  • 障害の予防に対する基本的な考え方としては、障害はあってはならないものという否定的な障害観が色濃く反映されているため削除すべき、この規定をそのまま残すことについては反対という意見が多数だった。
  • 障害の予防の規定をなくすことの得失を十分に検討すべきという慎重論もあった。
  • 障害の予防を削除した上での項目立てとしては、「医療、保健及びリハビリテーション」「保健サービスへのアクセスまたは保健サービスの利用」「医療、介助、リハビリテーション及びハビリテーション」「早期発見、療育、二次障害の予防」「平等な医療的ケアを含んだ障害者の保健、健康」「ハビリテーションを含むリハビリテーション」「健康」「『健康』と『リハビリテーション』の2本立」などの意見があった。
  • 現行障害者基本法は医療・介護・リハビリテーションについて一括して規定しているが独立させるべき、障害の原因の予防を一般公衆衛生の中で論じることを明記すべき、難病は障害の定義に含まれることを前提として改めて規定の仕方を検討すべきなどの意見があった。
  • 障害の早期発見、早期治療の重要性を否定する意見はなく、これと障害の予防を切り離して考えるべきとの意見が多数だった。早期発見、早期治療が予防に役立つとの意見もあった。
  • 権利条約第17条の趣旨からして、早期発見、早期治療は障害者や親の主体的な判断の下で行われるべきで、強制になってはいけないとの意見があった。
  • 難病を障害に位置づけた上で必要な医療や福祉の施策を規定すべきとの意見が多かった。
  • (発言)水俣病のような水銀による汚染はなくても、地球全体がある意味では水銀に汚染されているとも言える。障害の原因の予防をどう考えるか、議論が必要だ。
  • (発言)優生思想と予防医学との違いを整理する議論が必要だ。またリハビリテーションはある意味では社会に合わせることで、インクルージョンとの関係では否定されるのではないか。
  • (発言)精神障害では疾病の早期発見によって障害が予防されるが、病気の理解が不十分なために早期発見ができずに障害につながってしまう。
  • (発言)早期発見、早期治療は障害の予防のためではなく、早期のインクルーシブな支援という観点で、必要な支援を早期から得られるという形にするべきだ。
  • (発言)障害の予防という条項を削除するのは賛成だが、それは基本法にそぐわないからだ。優生思想とは違う障害の予防に取組むことは、今後の成熟した社会では必要だ。
  • (発言)早期発見は必要だが、障害は無いにこしたことがないという考えにつながりおかしい。公衆衛生という言葉は社会の健康を指すので、個人の権利と両立しないこともあり得る。
  • (発言)障害の予防としてしまうと、障害のある人にとっては自己否定につながる。障害の予防が意味するのは障害の原因の予防であり、障害を起こす状況の予防である。
  • (発言)障害の予防という時、従来は障害をマイナスにとらえているので現行基本法のこの規定は外すべきだ。障害は社会にあり、社会の障害を予防するという観点で議論すべきだ。
  • (発言)後進国の聴覚障害者の多くは中耳炎の適切な治療を受けていれば予防できた。障害の原因の予防は可能で、早期発見、早期治療は重要だ。聴覚に異常に対して人口内耳という治療があるが、今後は再生医療も大きな可能性がある。治療の選択肢が多様にあることが必要だ。

4.ユニバーサルデザイン・・・主な書面意見

  • ユニバーサルデザインの意義と効用については、インクルーシブ社会の実現に大きな意義があるとの意見が多数だった。一方、多様な特性に対応できるような補完が必要との意見もある。
  • 障害やニーズの多様性、差異の尊重との関係については、これらとは矛盾しないとの意見が多数だが、障害者の個別ニーズを社会の責任で解消する観点を曖昧にするとの意見もある。
  • ユニバーサルデザインとバリアフリーもしくはアクセシビリティーとの関係については、前2者が相互補完的にアクセシビリティーを確保するというのが多数意見だった。また、バリアフリーとアクセシビリティーは特定のニーズに向けられたもので一般向けのユニバーサルデザインが補完関係にあるとの意見や、バリアフリーとアクセシビリティーがユニバーサルデザインの構成要素だとの意見もあった。
  • ユニバーサルデザインの対象範囲は物品、サービス、整備、施設など生活のあらゆる分野だとの意見が多数で、障害種別やニーズに配慮した設計を排除すべきではないとの意見があった。
  • 知的財産、特に著作権による利用制限がある場合、ユニバーサルデザインの観点からだれでもアクセスできる仕組みが必要だという点では委員の意見は一致している。
  • 企業等がユニバーサルデザインの商品等を開発する際の当事者参画については、計画、実施、実行、点検、評価、処置、改善の各段階で多様に当事者の意見を反映すべきとの意見があった。
  • ユニバーサルデザインの普及に向けては、促進・研究・開発のための基準を法制化する、財政支援を含む援助をする、啓発広報、税制上の優遇措置などが必要との意見があった。
  • (発言)知的財産権のユニバーサル化は著作権者の権利の制限と保護の2つの側面があり、前者の場合、著作権者の犠牲の上に障害者の利用アクセス権を保障することになる。どちらでユニバーサル化を図るかとは分けて考える必要がある。
  • (発言)障害者権利条約ではアクセシビリティーの定義はなされておらず、この点の議論が必要だ。アクセシビリティーは利用可能性という日本語訳より広い意味を含むのではないか。
  • (発言)電車には終点しか書いていないが、精神障害者で認知に障害がある場合、見知らぬ土地では行く駅が全部書いてあるボードが必要だ。これは一般の人にも共通することでユニバーサルデザインといってよい。
  • (発言)先日ある駅で「車いすトイレ」が「みんなのトイレ」になっていた。障害のある人が使うものを市民が一緒に使うという発想で、お金をかけなくてもできることがあると感じた。
  • (発言)みんなのトイレはユニバーサルデザインだが、みんなが使うようになってアクセシビリティーが悪くなった。両者の境界線がはっきりしない。
  • (発言)みんなのトイレになったために、緊急に使いたい障害のある人が使えずに困っている。ユニバーサルデザインはいいことだと一人歩きするのは危険だ。
  • (発言)一般のトイレのバリアを残したままにして、限られた数の車いすトイレだけに様々な機能を詰め込んだ全体のシステムの問題。ユニバーサルとは何か、またアクセシビリティーを確保するために当事者による評価やフィードバックの仕組みをどうつくるのか、議論が必要だ。
  • (発言)車いす用駐車場は他の者が使えなくして障害者のアクセシビリティーを確保しているが、トイレは一般に開放してユニバーサル化を図っている。この2つの流れの整理が必要だ。

議事 合同の作業チームについて


  • (東室長より合同作業チームについての提案)「就労」は障害者雇用の促進、福祉的就労に従事する障害者への支援、職場における合理的配慮や必要な支援などを主な検討対象とし、松井委員(座長として)、竹下委員、新谷委員にお願いしたい。「医療」は精神障害者に対する強制入院等の見直し、地域医療の充実と地域生活への移行、精神医療の一般医療体系への編入、医療にかかる経済的負担の軽減、地域生活を容易にするための医療の在り方などを主な検討対象とし、堂本委員(座長として)、関口委員、かわさき委員にお願いしたい。「障害児支援」は障害児や保護者に対する支援、児童福祉における障害児支援の位置づけなどを主な検討対象とし、大谷委員(座長として)、長瀬委員にお願いしたい。
  • (発言)就労チームのテーマは総合福祉法と雇用促進法にまたがる。雇用の問題は労働政策審議会で議論しているが、合同作業チームのようにボランティアという位置づけでどれほどの権威づけがあるものか疑問だ。就労に関する部会をつくるべきだという意見や要望は強い。
  • (発言)医療についての推進会議の議論は省庁ヒアリングでは否定された。総理の下で障害のある当事者が議論するのは画期的だが、変革につなげないといけない。作業チームが有効なのか心配している。
  • (発言)患者の権利を明記した医療基本法を抜きにして、精神医療の話はできない。ハンセン病検証会議の報告でこの点に触れている。
  • (東室長より)障害者基本法の改正は来年の常会なので、これから部会を立ち上げるのでは間に合わない。合同の作業チームという形態で論点を整理してはどうか。部会を設置するだけの予算確保が困難であると同時に、担当室のスタッフも不足している。また、就労に関する部会については労政審と同様の枠組みが部会として成立するのかという課題がある。合同作業チーム終了後も就労や医療などについては推進会議として集中して議論することも可能だ。部会を3月以降に立ち上げることは確約できない。
  • (発言?)東室長の苦労は理解するが、この機会を逃しては労働について解決できないので多くの関係者が期待している。どうすれば実効性のある方向に踏み出せるか。
  • (発言)労働問題全体の中で障害者労働の問題だけを解決するのはありえない。作業チームで深めた内容を労政審や総合福祉部会、推進会議にフィードバックすることが必要だ。作業チームの中で出てくる新たな問題点については、走り出しながら一つひとつ解決するしかない。
  • (発言)特別支援教育の在り方に関する特別委員会が文科省に設けられ、その結論待ちになってしまったため、推進会議が教育に関する部会の設置を求めにくくなった。差別禁止部会の中にインクルーシブ教育の専門家を入れ、教育の合同作業チームにも入ってもらうのがよい。
  • (発言)今後は厚生労働省との協議の場をもち労働審議会などの状況をつかむ必要がある。
  • (発言)合同作業チームは部会からも推進会議からも委員を出し、座長は推進会議から出す。部会のメンバーにどのチームに参加したいか打診し、その結果を部会三役と座長で調整する。

議事 その他


1.障害の表記作業チームより報告

  • (発言)本日第2回の会議を行った。これから3回にわたってヒアリングを行うが、その第1回で、3名からヒアリングを行った。今後2回で6名のヒアリングを予定している。次に、障害の表記に関して9月10日ごろから9月末頃まで、内閣府のホームページで意見募集を実施することになった。

2.わかりやすい第一次意見作業チームより報告

  • (発言)冊子の案ができたが、とてもわかりやすい。意見があれば水曜日までにお願いしたい。いろいろなところでどんどん活用していただきたい。

3.地域フォーラムについての報告

  • (東室長より)内閣府として主催できるかどうかの結論までに2か月程度かかりそうだ。内閣府主催となる場合に備え、担当室で準備は進めている。この場合、主催者が内閣府と地元実行委員会になるので内容面での調整が必要になる場合がある。

4.特別支援教育の在り方に関する特別委員会の報告

  • (発言)今日は就学相談、就学先の決定、合理的配慮などについて議論がされたが、ポイントがつかみにくかった。また、差別、間接差別、合理的配慮についても共通理解はまだされていないのではないか。

[以上]

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