-
障害者施策 サイトマップ
-

-

(PDF形式:39KB)別ウインドウで開きます

ルビあり (PDF形式:79KB)別ウインドウで開きます

第21回障がい者制度改革推進会議(2010年10月12日)
議事要録


議事 障害者基本法の改正について


1 総則

  • (事務局)これまでの会議での議論を事務局で条文イメージに整理した。部内作業の段階。これから内閣法制局や関係省庁などと調整する。検討・精査すべきポイントをクリアにしていく必要がある。
    (*下線は、現行の基本法からの改正箇所として、内閣府事務局が示したもの。)

1.目的 <条文イメージ>

この法律は、障害者が、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体であることを確認し、かつ、障害の有無にかかわらず、国民が分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、その施策の基本となる事項を定めること等により、障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とすること。(現行法第1条関係)

  • (事務局)まず障害者が障害者でない者と等しく、人権享有主体ということを確認。次に、分離・隔離の否定や、インクルーシブ社会といった考え方を踏まえ、実現すべき社会の在り方として規定を盛り込んだ。条約上の人権の共有行使という言葉を法文上表現するため、「障害者の権利の実質的な確保」という文言を入れた。「障害者の福祉」という現行法上の記述は削除。

2.定義 <条文イメージ>

(1)障害の定義を、身体障害、知的障害又は精神障害その他の心身機能の損傷とすること。

(2)障害者の定義を、障害があり、かつ社会における様々な障壁との相互作用により、継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける者とすること。(現行法第2条関係)

  • (事務局)社会モデルへの転換ということで、まず、障害を心身機能の損傷、インペアメントとし、幅広くとらえる。それを基に、障害と社会におけるさまざまな障壁、バリアとの相互作用を盛り込むことで、障害者を定義。「その他の心身機能の損傷」という定義の仕方や、障害者の定義の立て方が社会モデルを表現する上で適当か、「障害」「相互作用」「継続的に」「相当な」などの各文言について精査が必要。

3.基本的理念 <条文イメージ>

(1)すべて障害者は、障害者でない者と等しく、すべての基本的人権の享有主体として個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有するものとすること。(現行法第3条第1項関係)

(2)すべて障害者は、障害者でない者と等しく、自らの判断により地域において生活する権利を有するとともに、自らの決定に基づき、社会を構成する一員として、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会を有するものとすること。(現行法第3条第2項関係)

(3)すべて障害者は、手話等の言語その他の障害の種類に応じた意思疎通の手段の確保の重要性にかんがみ、日常生活及び社会生活において、可能な限り容易にそれを使用することができるよう配慮されなければならないこと。(新設)

  • (事務局)(1)に人権享有主体を盛り込んだ。(2)には、地域において生活する権利を追加。具体的な条文化に向け、誰に対して何を求める権利か、精査が必要。新しい人権の明文化は極めてハードルが高い。この権利が国等に対する請求権であれば、個別の内容を具体的に記述していく。(3)では、手話等の言語、その他のコミュニケーション手段の規定を新設にあたり、特に手話を、明示的に言語としてポジティブに規定することに説明が必要。手話が言語全体の中でどのような位置づけになるかなど、精査が必要。併せて、コミュニケーションの双方向性についての規定も検討が必要。
  • (発言)全体として「支援」ではなく「保障」とすべき。権利の主体として障害者をとらえ請求権を明確にするなら、権利の保障と書くべき。障害の定義で、身体障害、知的障害、精神障害という言葉はやめるべき。基本理念に点字など障害者のコミュニケーション手段として明確にされているものも列記すべき。
  • (発言)目的、定義、基本理念にインクルーシブの理念が希薄。目的に共生社会の実現を明記すべき。「共生社会」は今まで法律用語になかったので「すべての障害者が社会の対等な構成員として位置づけられ、合理的配慮や必要な支援の充足を通じて、障害の有無に関わらず、差異と多様性が尊重されて、地域社会で共に生活することが確保された社会」など具体的に定義すべき。権利条約19条の「地域で生活する権利」は憲法にない新しい人権の規定でインクルーシブ実現のためには必須なので、基本理念に明記すべき。
  • (発言)前文に、障害者の権利、あるいは障害者の人権に関わる基本的なことを定めると明確にした上で、基本法の性質を付言すべき。理念等、本則に書き込めないものは前文に盛り込むべき。「個性と人格の尊重」を「個性と人格の差異」とすべき。
  • (藤井議長代理)基本法における前文の持つ意味合い、性格づけを我々も勉強し、前文は絶対必要と説得できる準備をしながら、議論を継続していく。
  • (発言)目的に「障害者の権利の実質的な確保」として「実質的な」という言葉が入ることで、実質的でない確保という概念も新たに登場することになるのではないか。「実質的な」という規定が他の法令にあるのか。
  • (発言)前文の事務局案を出してほしい。目的規定で「実質的」と書くとどうなるのか吟味すべき。前文か目的で、今回の改正は障害者権利条約の趣旨、目的を踏まえると明記を。権利条約で明記されているように、障害か障害者の定義に感覚的な機能障害を加えてほしい。基本的理念で、権利条約の「言語には音声言語、手話、その他の非音声言語を含む」にならい、言語を規定してほしい。手話が言語であることを前提とした上で、手話による通訳が必要だというように、きめ細かい議論が必要。
  • (発言)目的で、権利の「確保」より「保障」とすべき。定義の中に、障害と障害者の定義がある一方で、理念の中に、言語、手話等に関する文言があり、読みづらい。国内外の言語学者で手話は言語という考え方。権利条約の「手話は非音声言語」という整理にそって表記すべき。「双方向のコミュニケーション(意思疎通)」に「配慮しなければならない」はなじまない。手話通訳を介した場合、手話のわからない聞こえる人もコミュニケーションの主体である。
  • (発言)「自らの判断」は削除し、「地域において生活する権利を有する」だけで十分。選択や個人の判断に過度に頼らず、条約の一般原則である社会への完全かつ効果的な参加及びインクルージョンを実現するべき。手話が言語と認めることと、コミュニケーション確保の必要性を、それぞれ適切な文脈で取り上げるべき。
  • (発言)「権利条約批准の完全履行に向けて」という趣旨を前文か目的に入れるべき。障害の定義で、身体的障害、知的障害と「的」を使う方がよい。目的に、地域社会で共に生活することが確保される、目指すべき社会の定義を入れてほしい。共生社会だと情緒的なので、「合理的配慮や必要な支援の充足を通じて」と実質的な権利を確保する書き方にするべきだ。
  • (発言)障害の定義をなくし、障害者の定義を「心身機能の障害と社会における様々な障壁との相互作用により」としてはどうか。現在の心身障害だけで機能を規定すべきではない。ADA法では過去に障害があった場合や、障害があるとみなされる場合も含み、社会との関係で障害を定義している。制限を受けるために何らかの支援が必要だという内容を障害者の定義に入れることを検討してほしい。基本的理念について、これまでさまざまな選択権を奪われてきた障害を持った方が、地域で暮らす権利を奪われないよう「自らの判断による」は削除してほしい。
  • (発言)障害の定義について、条約では機能障害と障害の区別を明確にしており、これと矛盾する定義はよくない。「継続的に」と「相当な」の二重の制限は不適切。一時的な支援サービスは不要でも、差別禁止では保護の対象にすべきことがある。「継続的に」は削除すべき。共生社会は障害者の領域だけでなく、広い概念として「障害者を含むすべての人が社会の対等な」や「性・年齢その他の有無にかかわらず、差異と多様性が尊重され」と定義してはどうか。
  • (発言)英語圏の文献等では、身体的、感覚的障害を分けて使う習慣がある。日本は、目や耳の感覚の障害も身体障害に入っており、分ける習慣がなかった。
  • (発言)目的から「国の責務を明かにする」を取って、前文に国の義務と位置付けてほしい。地域における生活で、特定な生活様式を義務づけられないという項目を入れてほしい。
  • (発言)説明がないと、基本法が誰の法律なのか自分たちの仲間には分からない。認識・認知・コミュニケーションに障害を抱えているので、言葉と文章にするときになるべくわかりやすくする必要がある。
  • (発言)権利条約では障害は発展しつつある概念とあり、障害者には何々を含むという形で書かれている。条約は年月をかけてつくられており、短い間に検討するなら条約に準拠すべき。
  • (東室長)障害の定義で、権利条約前文1項のディスアビリティを障害と同視していいか。インペアメントの訳は「心身機能の損傷」でいいか。「自らの判断により」を削除という意見があったが、続く「自らの決定に基づき」は残していいか。「権利の確保」ではなく「保障」という意見もあったが、条約との関係でどういう言葉がいいか。

4.差別の禁止 <条文イメージ>

(1)何人も、障害を理由とする差別(障害者が、障害者でない者と実質的に平等に活動することを可能とするため、個々の場合に必要となる合理的な変更又は調整が実施されないことを含む。以下同じ。)その他の権利利益を侵害する行為をしてはならないこと。(現行法第3条第3項関係)

(2)国は、障害を理由とする差別の防止に関する普及啓発を図るため、障害を理由とする差別に該当するおそれのある事例の収集、整理、及び提供を行うものとすること。(新設)

  • (事務局)合理的配慮を実施しないことが差別に含まれるという書きぶりは、検討・精査が必要。条約上は「均衡を失した、または過度の負担を課さないもの」という記述がある。施行されれば直ちに作為義務を課すような規定なので、社会的な影響をどのように考えるか、検討が必要。(2)として、事例収集等の規定を新設。必要性や具体的な内容を詰める必要がある。

5.国民の理解 <条文イメージ>

国及び地方公共団体は、第三条に定める基本的理念に関する国民の理解を深めるよう必要な施策を講じなければならないこと。(現行法第5条関係)

  • (事務局)他の基本法などを参考に規定を整備。漠然と「国民の理解」と書いていたものを明確にするため「第三条に定める基本的理念に関する」を追加。

6.国際的協調 <条文イメージ>

障害者の権利の実質的な確保並びに障害者の自立及び社会参加の支援が国際社会における取組と密接な関係を有していることにかんがみ、障害者に関する施策は、国際的協調の下に行われなければならないこと。(新設)

  • (事務局)男女共同参画社会基本法等の国際的協調の規定を参考に新設。

7.国及び地方公共団体の責務 <条文イメージ>

国及び地方公共団体は、障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止を図りつつ障害者の自立及び社会参加を支援する責務を有すること。(現行法第4条)

  • (事務局)現行法の「障害者の福祉を増進する」を削除。

8.国民の責務 <条文イメージ>

国民は、障害の有無にかかわらず、分け隔てられることなく相互に個性と人格を尊重する社会を実現するため、障害者の人権が尊重され、障害者が差別されることなく、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加することができるよう努めなければならないこと。(現行法第6条関係)

  • (事務局)「障害の有無に〜尊重する社会」と、「1.目的」にある「実現すべき社会」を、わかりやすく書き換えた。

9.障害者週間 <条文イメージ>

国民の間に広く障害者の権利の擁護及び障害者に対する差別の防止についての関心と理解を深めるとともに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加することを促進するため、障害者週間を設けること。(現行法第7条関係)

  • (事務局)現行法の「障害者の福祉」から「国民の間に〜と理解を深める」へ、目的の見直し。

10.施策の基本方針 <条文イメージ>

(1)障害者に関する施策は、障害者の自立及び社会参加を困難にする社会的な要因を除去する観点から、障害者の性別、年齢障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならないこと。(現行法第8条第1項関係)

(2)障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害の種類及び程度による支援の格差が生ずることのないよう配慮がなされるとともに、障害者の自主性が十分に尊重され、かつ、障害者が、自らの判断により地域において自立した日常生活を営むことができるよう配慮されなければならないこと。(現行法第8条第2項関係)

(3)障害者に関する施策を講ずるに当たっては、障害者その他の関係者の意見を聴き、当該意見が尊重されなければならないこと。(新設)

  • (事務局)(1)は、社会モデルの観点を盛り込むために「障害者の自立及び〜観点」を追加。併せて、女性や生活の実態を追加。(2)は、制度の谷間を生まない支援の明文化。具体的には「障害の種類及び〜配慮がなされるとともに」と追加。併せて「自らの判断」を再度追加。(3)では、当事者意見の反映の条項を新設。

11.障害者基本計画等 <条文イメージ>

政府は、障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならないこと。(現行法第9条第1項関係)

  • (事務局)現行の「福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策を総合的かつ計画的に推進する」の部分を落としている。
    このほかに現行基本法の9条に推進体制と連動した規定になっているので、今後検討したい。また、改正を要すると思われない「法制上の措置等」と「年次報告」の条文は、改正のイメージなので、今回の資料には盛り込んでいない。
  • (発言)権利条約8条に、国民やマスメディアは何をすべきと具体的に書かれているので参考にしてほしい。法制上の措置(現行法第10条関係)を行政に対する強制力を持つ形に改める必要がある。国及び地方自治体は障害者に関する定期的継続的な実態調査、統計を実施し、施策の策定実施は一般国民と比較可能な障害者の生活実態調査に基づくべき。
  • (発言)障害者を権利の主体と認めるべき。日本の障害者関係の法律は基本法が中心になるものにしてほしい。差別禁止法を制定するという方針が、政権が変わっても続くことを明示してほしい。
  • (発言)合理的配慮は、権利条約で均衡を逸した過度な負担を課さないものとセットで入っている概念。合理的な変更または調整と言い換えても同じ意味ではない。国際協調は、国内向けだけでなくインクルーシブな協力をどうするかも検討すべき。
  • (発言)障害者とみなされることで不利益を受けることも障害を理由とする差別に盛り込んでほしい。国際的協調だと国際的流れに引きずられることがある。国際協力を明確に打ち出すべき。施策の基本方針に性別ないしジェンダーを強調するべきだ。「福祉に関する施策」や「障害の予防に関する施策」の削除は賛成。
  • (発言)障害のある女性と障害児の問題を入れてほしい。「国及び地方公共団体の責務」で、国に具体的な施策を義務づけてほしい。
  • (発言)国・地方自治体の責務として制度による格差はなくすべき。精神障害は手帳のサービスや雇用率が義務化されておらず、医療面でも大きな差別が残っている。
  • (発言)差別禁止法や既存の法律と関係を整理するべき。障害を理由とする差別の説明は新しい概念なので、条項を分けた方がわかりやすい。国民の理解を得るべく周知を十分に図るために必要。
  • (発言)差別禁止に対する施策を国が講ずる責任があるとし、差別禁止法の担保をすべき。「障害の種類及び程度による支援の格差が生ずることのないよう配慮がなされるとともに」とあるが、ニーズにより支援の格差が生じることがあり得る。「自らの判断」と書くと知的障害の場合、判断能力と関連させて不利益を生ずる場合もある。
  • (発言)差別禁止規定が不完全。「国及び地方公共団体の義務」で権利の「擁護」ではなく「保障」と書くべきで、社会参加の「支援」は「保障」に、「責務」は「義務」とするべき。施策の決定段階と施行段階における当事者参加を明確にすべき。
  • (発言)施策についての基本方針に、基本法の目的と理念に適合的な施策をつくることを付け加えるべき。障害のある方にも性別や年齢で差別があることの明確化が重要。計画や施策の推進には当事者の意見や行動が重要だ。
  • (発言)施策の基本方針で、施策の策定と実施に評価を加えてほしい。また、実態に基づく評価のため、実態調査の項目を加えてほしい。
  • (発言)差別の禁止に権利条約にある「排除」も入れてほしい。「国及び地方公共団体の責務」は「基本理念に則り」とするべき。合理的配慮の義務者として、雇用、教育では事業者と学校設置者等が入る。環境基本法を参考に「事業者等の責任」を入れてほしい。
  • (発言)精神障害者への差別をなくすためには、権利条約にならって「すべての人権及び基本的自由を認識し、共有し、または行使することを害し、または妨げる目的または効果を有するものをいう」と書くべき。
  • (発言)障害者に関する施策を講ずるに当たり、意見を聴き尊重する対象を「その施策に関する障害者、あるいは障害当事者」とすべき。
  • (発言)政策を進めるに当たっての財源確保を書くべき。
  • (発言)国による差別の防止に関する支援の事例収集も入れてほしい。
  • (発言)間接差別、介助者、家族への差別の問題は、実質的差別に全部入っており、明記すべき。間接差別は書き方に工夫が必要だ。
  • (東室長)国の「責務」を「義務」にとの意見があったが、責務に義務も入るのでは。義務以外の、こういう方向でという問題の範囲を切り捨てることにならないか。

2 地方モニタリング機関

(1.地方障害者施策推進協議会(以下「地方協議会」という。)が、障害者基本法第26条第2項に定める事務に加えて、地方の障害者施策の実施状況の監視(モニタリング)事務を担うことの必要性についてどう考えるか。…主な書面意見(15名)

地方協議会がモニタリング事務を担う必要がある(12名)。地域間格差を広げないよう地方に監視機関の設置は必要、地方への権限の移譲が進んでいることを踏まえ地方のモニタリング事務が不可欠。少数意見として、地方協議会にモニタリングするだけの力量があるのか疑問、地方協議会に生活上の困難を抱えている人や障害者が入るべき、自治体には議会や監視委員会やパブリックコメントなど意見反映のための多様な手段があるので地方の監視機関は慎重な検討が必要。

(2.仮に、地方協議会に新たにモニタリング事務を追加することとした場合には、国が法律により地方公共団体の事務を新たに創設することとなるが、このことについて「地域のことは地域に住む住民が責任を持って決める」という地域主権の考え方との関係においてどう考えるか。…主な書面意見(14名)

国が地方公共団体の事務を新たに創設することと地域主権は矛盾しない(11名)。地域主権は地域の独自性を認めるのが趣旨だが、人権擁護の領域では地域によって濃淡は認められずナショナルミニマムの確保が必要、最低限を確保した上でプラスアルファは地域の実情を生かすべき、地域主権になれば一層地域住民の主体的参加が必要になりモニタリングは大きな意味を持つ、地方協議会の基準を前提に都道府県ごとの推進体制を考えるべき。少数意見として、地方自治体が自主的に行うべきで国が出るのは望ましくない、地域独自のモニタリング事項の設定は条例に任せるべき。

(3.中央委員会(及びモニタリング事務を追加することとした場合の地方協議会)によるモニタリングの具体的なイメージについてどう考えるか。(モニタリングの実施方法や、その実効性確保のための方策等)…主な書面意見(14名)

5点に整理される。

  • 1、実態把握や情報収集に関して、行政組織との関係では、関係機関への資料提出要求、報告要求、聞取り調査または省庁の壁を越えた定期的な統計報告や抜き打ちの調査などの方法によって、実態把握や情報収集をすべき。また、全国的な実態調査、地方協議会を活用した情報収集などをすべき。
  • 2、情報収集と合わせてモニタリングを有効ならしめる方策として、1つは権利条約の実施に関する実施基準や施行細目の策定。2つ目は国の長期的計画の策定や地域の障害者基本計画の策定。3点目はこれらに基づく枠で、目的の設定と達成度の点検。4点目として未達成の場合の原因や対応策の検討など。
  • 3、モニターの仕組みとして監視機関自体の評価とともに、例えば当事者モニターの養成、利用者や障害者団体からの意見の聞取り、国民一般が広く意見が出せる仕組み、パブリックコメントなどの設置が有用。
  • 4、これらを踏まえた国の制度や市町村の制度実施状況に関する勧告などの在り方としては、まず中央レベルに関しては国連への報告や国会への年次報告、行政に対しての実施状況の改善勧告や政策提言、国内法の修正に向けた提言、一定水準以下の市町村への勧告、マスコミへの公表など。更に地方協議会レベルでは地方協議会による地方自治体の実施状況のモニターや地域住民への公表など。
  • 5、委員会の構成は、障害者や親などを主体とすることが重要。
  • (東室長)差別や虐待等の個別救済を目的とする人権救済機関をイメージした意見もあったが、監視とは別の機関。個別救済については差別禁止法での救済や、新たな障害者総合福祉法でも不服申立の在り方などが今後議論される。地方協議会の事務に勧告権を規定すべきか否かという点で、条約ではモニターに必ずしも勧告を含んでいない。中央レベルでの勧告はモニターをより有効に機能させるための1つの在り方。
  • (発言)地方協議会が法律に位置づけられることについては、幅広く自治体関係者に意見を聞いてほしい。監視や強制力を持つものを、各自治体や基礎自治体すべてに置くことは慎重を要する。監視評価の基準の定め方は、中央委員会の実態の実証を先行すべき。事業者もボランティア団体も評価の対象になるので、現場の協働関係が壊される可能性へも配慮が必要。
  • (発言)市町村、基礎自治体の立場から、拙速な制度づくりは避けてほしい。
  • (発言)国レベルのモニタリング機関の権能や構成に準じた構成にすべき。モニタリングに当事者が参加し政策決定に関与することは地域主権改革と矛盾しない。障害者施策は人権に関連した部分が大きいので国の法律で担保が必要。地域レベルでの基盤整備が遅れているので、引き続きモニタリングの仕組みやその強化が必要。
  • (発言)地方協議会は必要。自治体間格差をなくすため、均等な評価項目をつくってほしい。都道府県によって特性が違うので、地域独特の評価項目があっていい。人権に関わる部分は比較可能な評価をしてほしい。地方協議会に勧告権を与えてほしい。中央委員会とは情報交換をする。
  • (発言)権利条約33条のモニタリング機関は監視に比べ広い意味を持つ。権利条約で決められていることが、国内で促進されることを注意深く見守る機能がある。日本にそのような機関はないので、具体的に問題を解決するために地方自治体でどのように利用されるか等、モニタリングの機能をまず示すべき。
  • (藤井議長代理)監視に比べ、モニタリングという概念は権利条約ではもっと幅広く、促進や実施まで含まれる。地域主権改革に関する問題と地方協議会の機能強化は矛盾しない。モニタリング機関の機能を強める必要性については議論が分かれている。
  • (発言)中央で具体的な実践がなされたり方向性が明らかではない中で、基礎自治体で同時になされることを懸念する。条例を定めるとき、基礎自治体の議会で大きな議論になる。また、幅広い意味でのモニタリングあるいは推進、促進という機能を持つ組織は必要。
  • (発言)モニタリング機関と個別救済機関は分離すべきでない。政策の実施責任と個別事案の救済が別では、統一的な監視はできない。実施責任はモニタリング機関と一体とすべき。併せて個別救済を行う機関との関連性も総論として議論が必要。地域主権一括法の考え方が人権問題中心の障害者施策になじむか疑問。地方と都市部は環境が極めて違う。国全体の底上げのため、地方と中央の関係の位置づけを議論すべき。
  • (発言)地方自治体に地方協議会を置くだけの人材がいるのか。人材育成やナショナルミニマムの確保等地域間格差をなくした上で、地域主権に移行してほしい。
  • (発言)全国の実態がわかり評価したものが公表され、それを比較した上で当事者が自治体に要望し、お互いがスパイラルアップしていくためには、評価と公表ができる機関は必要。勧告をどうするかは中央のモニタリングの議論の中で。
  • (発言)地域主権でお金が減った分、人件が減らされては困る。自立支援協議会等、役割が重なっている部分を統合してほしい。精神障害者にとって基礎自治体が都道府県と調整する機能は重要。
  • (発言)実施のモニタリング機関は必要だが、現行システムで対応できないか既存のものを洗い出して検討した上で決めるべき。
  • (東室長)監視、モニタリング機関と救済機関は委員の構成や権限の問題など、違う組織形態をとらざるを得ない。救済機関での、現実としての問題や解決状況等は大事な情報。そういう情報も調査権限として情報を得て、モニターの一環にするなど連携も必要だが、本体としては違うものという認識は持っていただきたい。
  • (藤井議長代理)現状が余りにも無権利、不利益な条件に置かれたまま。中央委員会のモニタリングシステムの在り方と併せて、現状を好転していく仕組み、仕掛けを前に進める点でも、知恵を働かせよう。

議事 報告等


1 わかりやすい第一次意見をつくる作業チーム

  • (発言)イエローカードとしてつかえるように、わかりやすい第一次意見の裏表紙を黄色にすることになった。委員のイメージがわかるように写真やイラスト、色も含めて、細かいことを話し合いたい。
  • (発言)最終的なレイアウトや写真の作業に移っている。11月中旬ぐらいには冊子として地域フォーラム等では活用できるようにしたい。

2 地域フォーラム

  • (藤井議長代理)10月5日、大阪府男女共同参画青少年センターで大阪フォーラム開催。500人規模。関心が高く、期待が大きい。基調講演を受けて2つのアピールがあった。ODF(大阪障害フォーラム)を代表して8項目のアピールと8つの団体がまとまってのアピール。100通ほどの手紙や個別アピールを持ち帰った。500人規模で更に第二次意見に向けて学習したい、来年もこういう場が欲しい等書かれていた。
  • (発言)10月10日、千葉県障害者スポーツレクリエーションセンターの体育館で千葉フォーラム開催。参加者120人。当日、会場での発言者10人。関心と期待が高い。精神医療、自立生活支援、雇用、就労、インクルーシブ教育に関して会場から意見や質問があり勉強になった。
  • (発言)千葉の補足。精神関係の当事者、家族の参加者が多かった。精神保健福祉法や医療法を改革して精神保健福祉関係の革命をするような時に来ているのではないか、頑張ってくださいというようなメッセージがあり、力をいただいた。
  • (東室長)10月10日、富山県総合福祉会館で富山フォーラム開催。参加者約180名。県会議員、県庁からも参加。差別禁止条例の取組みを進める富山県障害者施策推進フォーラム協議会(略称TDF)主催。基調講演後、富山大学名誉教授が社会の格差、差別をなくすための参加と平等と題し、富山の皆様が集めた約380の差別に当たると思われる事例を解説。会場から19名の意見。推進会議や部会への期待の大きさや責任を改めて感じ、地域での団体の連携が地域を変える力になりつつあることを実感。
  • (発言)フォーラムでの発言内容をコンパクトにし、今月から検討が始まる作業チームの座長レベルの目にはとまるよう、フィードバックの仕方を検討してほしい。
  • (東室長)重要でありながら、推進会議や部会で議論に上がっていない問題もある。できる限り関係のところに資料提供したい。担当室に資料が集められるよう考えたい。

3 障害者の権利に関する委員会

  • (発言)10月4日から8日、スイスの国連ジュネーブ事務所で障害者の権利に関する委員会の第4回会合が開催。権利条約の国際的なモニタリング監視機関として設置され、視覚障害、肢体不自由、精神障害などのある12名の専門家で構成。カタール、ヨルダン、チュニジア等、12カ国。人権高等弁務官事務所が事務局を担当。今回はチュニジア政府への質問事項作成が中心。会期中にアクセシビリティについて公開討論が開催された。推進会議のように条約にのっとり基本的な法律を包括的、抜本的に見直し、作成する動きは他国に例がない。

[以上]

▲ このページの上へ

-