資料1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の概要と見直しの方向性について 令和2年10月 内閣府政策統括官(政策調整担当)付 p1 1 差別を解消するための措置 不当な差別的取扱いの禁止  国・地方公共団体等/事業者 → 法的義務 合理的配慮の提供  国・地方公共団体等 → 法的義務 事業者 → 努力義務 具体的対応 (1) 政府全体の方針として、差別の解消の推進に関する基本方針を策定(閣議決定) (2) 国・地方公共団体等 → 当該機関における取組に関する対応要領を策定 (※地方の策定は努力義務)※ 雇用分野における対応については、障害者雇用促進法の定めるところによることとされている。   2 差別を解消するための支援措置 相談・紛争解決 相談・紛争解決の体制整備 ⇒ 既存の相談・紛争解決の制度の活用、充実 地域における連携 地域における連携 障害者差別解消支援地域協議会における関係機関等の連携 啓発活動 啓発活動 普及・啓発活動の実施 情報収集等 情報収集等 国内外における差別及び差別の解消に向けた取組に関わる情報の収集、整理及び提供 (※) 附則に基づき、施行後3年(平成31年4月)経過時の見直しの検討が求められている。 附則第7条において、政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、事業者による合理的配慮の在り方その他この法律の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に応じて所要の見直しを行うものとされている。 p2 障害者差別解消法のねらい ○障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している 「社会的障壁」(バリア(※))を取り除くことが重要 ※例えば、社会における事物(施設・設備等)、制度、慣行、観念(偏見等)など ○このため、障害者差別解消法は、行政機関・事業者に障害を理由とする差別の解消に向けた具体的な取組を求めるとともに、国民一人ひとりが自発的に取り組むことを促している ○ひいては、国民一人ひとりの障害に関する理解が深まり、障害者との建設的な対話による相互理解が促進され、取組の裾野が広がることが期待されている p3 1障害者の範囲 ○身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの(障害者基本法第2条第1号、障害者差別解消法第2条第1号) 「障害者」について、他の障害関係の法律(障害者手帳の保有が前提)よりも幅広く定義 ○「事業者」とは「商業その他の事業を行う者」 (同種の行為を反復継続する意思をもって行う者) 営利・非営利、法人格の有無は不問 個人事業者や無報酬の事業を行う者、NPO法人、ボランティア団体等も対象となる ○日常生活・社会生活全般に係る分野が幅広く対象となる ※ただし、障害者の雇用面、従業員への差別禁止、合理的配慮(いずれも行政機関・事業者の義務)は、障害者雇用促進法に規定 ○主務大臣制により、原則として、各事業分野はそれぞれの所管省庁(主務大臣)が所掌 ※法律上、罰則はないが、問題が大きいケースでは都道府県等が指導や勧告を実施できる p4 「不当な差別的取扱い」とは 行政機関等と事業者は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を ・拒否する ・場所や時間を制限する ・障害のない人にはつけない条件をつける  などにより、障害者の権利利益を侵害すること(不当な差別的取扱い)が禁止されている 各事業分野の考え方等については 、主務大臣が定める「対応指針(ガイドライン)」に規定 ○具体例 1.保護者や介助者がいなければ入店を断る 2.障害者向けの物件はないと言って対応しない ○正当な理由がある場合 「正当な理由」がある場合、すなわち、その行為が客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合は、「不当な差別的取扱い」にはならない 「正当な理由」に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、 ・障害者、事業者、第三者の権利利益 例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止等 ・行政機関等の事務・事業の目的・内容・機能の維持などの観点から、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断する必要 注:「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定)に基づき作成 p5 「合理的配慮の提供」とは ・行政機関等と事業者は、事務・事業を行うに当たり、障害者から何らかの配慮を求められた場合、過重な負担がない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要かつ合理的な配慮 (合理的配慮)を行うことが求められる(行政機関等は法的義務、事業者は努力義務) ・代替措置の選択も含め、双方の話し合い(建設的対話)により対応するもの ・各事業分野の考え方等については、主務大臣が定める「対応指針(ガイドライン)」に規定 社会的障壁の例 @社会における事物:通行・利用しにくい施設、設備など A制度:利用しにくい制度など B慣行:障害のある方の存在を意識していない慣習、文化など C観念:障害のある方への偏見など 留意事項 @事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること A障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること B事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと 具体例 1.段差がある場合に、スロープなどで補助する 2.意思を伝え合うために絵や写真のカードやタブレット端末などを使う 過重な負担の判断 個別の事案ごとに、以下の要素等を考慮し、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要 @事務・事業への影響の程度(事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か) A実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) B費用・負担の程度 C実現可能性の程度 D財政・財務状況 注:「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定)に基づき作成 p6 合理的配慮を的確に行うための「環境の整備」 障害者差別解消法では、合理的配慮を的確に行えるようにする「環境の整備」(不特定多数の障害者に向けた事前改善措置)を、行政機関、事業者の努力義務としている 「環境の整備」の例(不特定多数の障害者が主な対象):携帯スロープを購入する。「合理的配慮」の例(個々の場面における個々の障害者が対象):段差があった場合、携帯スロープを架ける 「環境の整備」の例(不特定多数の障害者が主な対象):施設をバリアフリー化する。「合理的配慮」の例(個々の場面における個々の障害者が対象):(個々の配慮をせずとも、障害者が利用可能) 「環境の整備」の例(不特定多数の障害者が主な対象):社員対応マニュアル整備・研修を実施する。「合理的配慮」の例(個々の場面における個々の障害者が対象):マニュアル等に基づき、的確に合理的配慮を行う 留意事項 ・合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合や障害者との関係性が長期にわたる場合は、その都度合理的配慮を提供するよりも「環境の整備」を行うことが効果的 ・「環境の整備」には、職員に対する研修等のソフト面の対応も含まれる (作業者注:図で「環境の整備」と「合理的配慮」の関係性を示している。) 環境の整備(行政機関等、事業者による事前的改善措置)は合理的配慮を的確に行うための環境の整備 合理的配慮=個々の場面での合理的配慮(過重な負担のない範囲で必要かつ合理的な配慮 (作業者注:図終了。) p7 「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見」(令和2年6月22日障害者政策委員会)の概要 (1)差別の定義・概念について @差別の定義・概念の明確化 ○社会的な認識を広げ、差別解消に資するという観点からは、法律で差別の定義を設けること等が望ましい。一方、法律で定義を設けると、かえって条約よりも狭く定義される等の懸念や解釈の違いによる混乱も予想。また、差別の類型にどのような事例が該当するのか現段階では明確でなく、法律に規定することの困難さや現場に混乱が生じないよう慎重な検討が必要等の課題もある。 ○以上を総合的に考慮しつつ、差別の定義・概念の明確化を図る観点から、どのような対応が可能か、検討を行うべき。 (例)基本方針等において、 ・実質的な障害を理由とした不当な差別的な取扱いも障害を理由とする差別となる旨。 ・障害者の家族その他関係者に対する差別も同様に解消すべきものである旨を示す等。 ○国・地方公共団体において、更に具体的な相談事例の蓄積等を進めるべき。 ○障害のある女性や子供等への差別に関しては、基本方針等において、性や年齢別に具体的な相談事例の蓄積等により更に実態把握に努めるとともに、相談事例を踏まえて適切な措置を講じるべき旨の記載を検討すべき。あわせて、複合的困難に配慮したきめ細かい支援が行われるため、障害者基本法や障害者基本計画の見直しも含め更なる検討が必要。 (2)事業者による合理的配慮の提供について @事業者による合理的配慮の適切な提供の確保 建設的対話の促進や事例の共有、相談体制の充実等を図りつつ、事業者を含めた社会全体の取組を進めていくとともに障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、更に関係各方面の意見等を踏まえ、義務化を検討すべき。 A建設的対話の促進、事例の共有等 建設的対話を適切に行うべきこと、障害者等が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、意思決定や意思疎通が困難である場合に障害者等に配慮することも重要であることを、基本方針等で明確化すべき。 合理的配慮は多様かつ個別性が高いため、その実施を促す観点から、事業者からの相談にも適切に応じる体制整備や地域協議会の取組を含めた事例の収集や共有、情報提供を更に行うべき。 国は、事業者や障害者を含む国民全体への理解を促進するため、より効果的な方法を含めた周知啓発を強化すべき。 p8 (3)相談・紛争解決の体制整備について @地域における相談・紛争解決体制の見直し 双方の建設的対話による相互理解を通じた解決が肝要であること、事案の掘り起こしや事例収集にも資することから、相談体制の充実が重要。地域の実情に応じて既存の機関等の活用を図り事案の解決につなげていくため、以下の方策を実施すべき。 (ア)国・地方公共団体の役割分担の明確化 地方公共団体の取組状況も踏まえつつ、各行政機関の基本的な役割を示すべき。 (例)市町村 最も身近な相談窓口を担うこと 都道府県 広域的な事案や専門性が求められる事案の解決、市町村への情報提供等の支援を行うこと 国 関係機関と連携しつつ、重層的な相談体制の一翼を担うこと (イ)相談体制の明確化等 国や地方公共団体は、相談窓口や事案の取扱いの流れを分かりやすく示すなど、適切な相談機関へのアクセス向上のための情報提供等の取組を積極的に行うべき。 意思疎通支援やICTを活用した相談について配慮するとともに、相談窓口の特性に応じて、事業者からの相談も対象とすることを明確化すべき。 内閣府が各省庁と協力・連携して全国の相談事例を収集・整理するほか、担当課長連絡会議等を開催し、定期的に相談事例の共有や分析・公表等を行うべき。 相談のたらい回し防止等の観点から、国における新たなワンストップ相談窓口の設置や既存の相談窓口の効果的な活用、国・地方公共団体の役割分担の整理などを含め、どのような対応が可能かについて検討すべき。 (ウ)都道府県による広域的・専門的な支援の充実 一部の都道府県で配置されている広域支援相談員等について、地域の実情に応じた配置を促すことを検討すべき。 (エ)相談対応を担う人材の育成及び業務の質の向上 相談対応を担う者に対する研修やマニュアルの作成等により、必要な専門性も有する人材の育成や業務の質の向上を図るべき。 p9 (オ)国・地方公共団体の関係機関の効果的な連携 国と地方公共団体の効果的な連携による、障害者差別の解消に向けた取組を進めるべき。 (例)法務省の人権擁護機関が地域協議会に積極的に参画するなど。 相談対応による解決が困難となった場合に、地方公共団体と法務省の人権擁護機関等や主務大臣との一層の連携を図るため、各機関の役割を踏まえた事案対応の流れや日頃からの関係構築のための方策を整理することなどを検討すべき。 A相談対応等を契機とした事前的改善措置(環境整備)の促進 相談・紛争の事案を事前に防止することに有効と考えられるため、特に幅広い事業者等における取組が期待される、相談対応等を契機とした事業者の内部規則見直し等の環境整備について、その重要性の明確化を図るとともに、取組を促すべき。 (4)障害者差別解消支援地域協議会について @都道府県による市町村の地域協議会設置等の支援 都道府県が、その設置・運営を通じた知見や管内市町村の地域協議会について得た情報を基に、市町村に対して他の市町村の取組に関する情報提供を行うことや、必要に応じて圏域単位など複数市町村による地域協議会の共同設置・運営を支援することを促すべき。 A複数の地域協議会の間での情報共有等の促進 都道府県・市町村の地域協議会の間や、複数市町村の地域協議会の間において、必要に応じて情報共有や助言その他の支援・連携を行うことを検討すべき。 国においても、地域協議会において、関係機関が対応した事例の共有等が図られるよう、各地域の取組を更に促すとともに、地域における好事例が他の地域において共有されるための支援をすべき。