p1 資料4   障害者差別解消法の見直し検討におけるヒアリング 公益社団法人日本歯科医師会  1)合理的配慮について  ・義務化については反対ではない。ただ、歯科医療機関においては具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが求められるため、個別具体的な事例の共有をお願いしたい。  2)障害者歯科治療について   ・歯科において障害者への対応は、昭和初期から昭和20年代までは篤志家的活動として実施されていた。   ・昭和40年代になり、大阪府をはじめとする歯科医師会の地域医療活動として全国へ拡がった。また、病院歯科や医学部口腔外科が積極的に障害者を受け入れた。特に歯学部小児歯科で行われてきた。   ・昭和51年日本大学松戸歯学部に特殊診療科が開設され、他の歯科大学の附属病院には障害者に対する診療科が置かれている。   ・また、5歯科大学に障害者歯科学が開設されている。また他の歯科大学・歯学部では小児歯科や麻酔学の一環として教育が行われている。  3)障害者への歯科口腔保健   ・近年、「歯科口腔保健の推進に関する法律」に基づく「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年7月)や「障害者基本計画(第4次)」(平成30年3月)に、障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診の実施率として、令和4年度での90%の目標値が設定されている(策定時の平成23年は66.9%)など、障害者に対する歯科口腔保健対策が進められてきている。また、「経済財政運営と改革の基本方針2020」においても、「歯科医療専門職間、医科歯科、介護、障害福祉関係機関との連携を推進し、歯科保健医療提供体制の構築と強化に取り組む」とされている。   ・こうした背景等から、障害者(児)の歯科医療に関する協力医や相談医などの制度が39都道府県で設けられるなど、厚生労働省の「8020運動・口腔保健推進事業」や都道府県・市区町村での事業などを通じて健診や研修、人材育成等の事業が全国各地で展開され、障害者への歯科口腔保健に係る環境整備が進んできている。   ・なお、近年、多くの都道府県や市区町村において歯科口腔保健の推進に関する条例が制定されており、障害者に係る対応を盛り込んでいるところも増えてきている。  4)合理的配慮に係る取組状況 ・バリアフリー等については、全国的に対応しているが、物理的・精神的にも十分であるとは言えない。   ・地域の歯科診療所では、聴覚障害者、視覚障害者等については身振り、要約筆記、筆談、図解、写真データ、口頭による丁寧な説明等で通常通りの歯科診療の提供が行われている。   ・2007年の東京都の調査では、「障害者に対する歯科診療を実施している」開業医は57.1%、過去に実施した経験のある開業医を加えると、66.1%であった。   ・歯科診療所は、歯科診療ユニット(歯科診療イス)の床下に様々な配管が施されている構造上、バリアフリー化には十分に対応できない診療所も考えられる。特に、 p2 ビル開業の診療所、2F以上の歯科診療所ではエレベーター等の対応も含めて、バリアフリー化等が義務付けられると対応に苦慮すると思われる。 5)障害者歯科診療に携わる人材について ・全国的に障害者への歯科口腔保健事業が展開されているが、歯科医療の提供に係る人的・物的環境の整備が不十分であることは否めない。 ・医師・歯科医師・薬剤師統計の概況 (2018) によれば、全国の歯科医師数は101,777名、このうち診療所の歯科医師数は90,105名、病院の歯科医師数は3,162名、医育機関附属の病院の歯科医師数は8,510名となっており、診療所勤務の歯科医師が全体の88.5%を占めており、その平均年齢は53.5歳となっている。 ・また、日本障害者歯科学会の会員数は 約5,000名、専門指導医は33名、専門医は 149 名、専門医研修施設は 40施設となっている。 ・日本全国に実働している障害者歯科の専門医は、まだ200名ほどであり、地域の歯科診療所が全て障害者の患者さんを受け入れるのは難しく、地域の病院歯科や都道府県の障害者歯科センター等での受け入れをお願いしている現状である。 ・地域の歯科医師への研修は、地域の病院歯科や障害者歯科センター等との連携で実施されているが、人材育成はなかなか難しく、障害者歯科に関する研修システムが必要と考える。