資料3 私立学校における合理的配慮の提供を義務化する必要性について 特定非営利活動法人全国言友会連絡協議会 事務局長 横井秀明 p1 今回の障害者差別解消法の見直し検討について、私たちは特に「3. 個別の論点と見直しの方向性」における「(2) 事業者による合理的配慮の提供」が重要だと考えています。 事前に配布された資料のうち、「概要」ではピックアップされていませんが、詳細が記された本体を拝見しますと、「公的主体と私的主体との区別なく合理的配慮を提供する」のが、障害者権利条約の精神だという事実に言及されています。それにも関わらず、現行の障害者差別解消法において、公的主体は合理的配慮の提供が義務となっている一方で、私的主体に対しては努力義務を求めるにとどまっていることは、矛盾していると言わざるをえません。もちろん、規模が様々な私的主体に対して一括して義務を課すのは、過度な負担となったり、まだ円滑に対応するための事例の蓄積が十分ではなかったりする事情から、高いハードルがあるのかも知れません。しかし、それならば、既に委員会においてもアイディアが出されている通り、「生活に密着しているなど特に社会的な必要性が高い分野について早急に義務化」(P9)することから歩み出すべきでしょう。 私たちは、それを「私立学校」から始めることを主張します。 吃音のある人にとって、学校生活は非常に重みのある生活場面として捉えられています。「話し方」は、アイデンティティーの一角を占めており、いわば外見や容姿に近い意味合いを帯びていることは、言うまでもないでしょう。これは、例えば方言をからかわれることが、とても「傷つく」体験として刻まれることが多いのに近い感覚です。その「話し方」に対してからかいなどネガティブな反応を受けたり、その際に適切なフォローを受けられない、或いは再発防止のための対応が十分に得られなかったりすることは、特に多感な思春期や、自己概念(セルフイメージ)を形成していくべき青年期においては大きな挫折体験として受け止められ、社会不適応へとつながっていく懸念を生じさせると言っても、過言ではありません。 文部科学省が平成22年に発表した資料(下掲)によりますと、私立高校に通う生徒は全体の3割に及び、大学に至っては7割以上に達します。それにも関わらず、彼ら・彼女らが合理的配慮を努力義務の範囲でしか受けられないことは、わが国におけるダイバーシティ社会の建設という目標にとって、重大な問題であると言わざるをえません。また、十分な事例の蓄積が見られない背景には、そもそも事例を積み重ねていく場そのものが、努力義務のベールの中で失われているという側面もあるのではないでしょうか。 また、学校生活において、教職員など身近な大人から適切な支援を受けられることは、社会に対する信頼感を醸成する契機にもなるでしょう。吃音のある人、ひいては障害のある人が、学校生活を通じて社会に対する不安を強くしていくのではなく、むしろ希望を持って羽ばたいていく機会とするためにも、私立学校における合理的配慮の提供の義務化によって、私的主体に対する義務化に先鞭をつけることを、私たちは強く要請します。 p2 在学者数(平成22年5月21日現在) 在学者数 区分 大学 国立609,356人 公立139,446人 私立2,087,200人 計2,836,002 私立の割合(私立わる合計)73.6% 在学者数 区分 短期大学 国立- 公立9,004人 私立144,327人 計153,331人 私立の割合(私立わる合計)94.1% 在学者数 区分 高等専門学校 国立53,524人 公立4,026人 私立1,906人 計59,456人 私立の割合(私立わる合計)3.2% 在学者数 区分 高等学校 国立8,751人 公立2,357,261人 私立1,002,681人 計3,368,693人 私立の割合(私立わる合計)29.8%  在学者数 区分 中等教育学校 国立2,251人 公立13,920人 私立7,588人 計23,759人 私立の割合(私立わる合計)31.9% 在学者数 区分 中学校 国立32,077人 公立3,270,582人 私立255,507人 計3,558,166人 私立の割合(私立わる合計)7.2%  在学者数 区分 小学校 国立45,016人 公立6,869,318人 私立79,042人 計6,993,376人 私立の割合(私立わる合計)1.1% 在学者数 区分 特別支援学校 国立3,054人 公立117,968人 私立793人 計121,815人 私立の割合(私立わる合計)0.7% 在学者数 区分 幼稚園 国立6,215人 公立294,731人 私立1,304,966人 計1,605,912人 私立の割合(私立わる合計)81.3% 在学者数 区分 専修学校 国立574人 公立27,372人 私立609,951人 計637,897人 私立の割合(私立わる合計)95.6% 在学者数 区分 各種学校 国立- 公立934人 私立129,051人 計129,985人 私立の割合(私立わる合計)99.3% 計 区分 国立760,818人 公立13,104,562人 私立5,623,012人 計19,488,392人 私立の割合(私立わる合計)28.9% (注) 1. 学校基本調査報告書より作成  2. 大学の在学者数には、大学院・専攻科・別科の学生を含む(聴講生・選科生・研究生等を除く)。  3. 短期大学の在学者数には、専攻科・別科の学生を含む(聴講生・選科生・研究生等を除く)。  4. 高等専門学校の在学者数には、専攻科の学生を含む(聴講生・研究生等を除く)。  出典:https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/main5_a3.htm 以上