資料4 令和2年10月28日 事業者による合理的配慮の提供の義務化、合理的配慮の提供を促す環境整備の在り方及びその他意見書で言及された内容について 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 1.差別について、障害者権利条約と同様の定義規定を障害者差別解消法にも盛り込むべきである。 (理由) 障害者権利条約は、差別の定義を「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限」とし、「障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」としている。これに対して、障害者基本法(障害者差別解消法も同様)は「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。」と規定しており、差別の内容を直接的に規定する条文を持っていない。 障害者政策委員会の議論にあるように、「差別の類型にどのような事例が該当するのか現段階では明確でなく、法律に規定することの困難さや現場に混乱が生じないよう慎重な検討」が必要ではあるが、法に定義規定がないことは、差別をする側・差別を受ける側、双方に差別についての考え方のズレを生み、無用な混乱を招いているともと考えられる。差別についての最大公約数的な定義として「障害に基づく差別とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であり、障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」という障害者権利条約の文言を採用すべきと考える。 2.事業者による合理的配慮の提供については、「障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点」から、努力義務の規定(法8条第2項)を、第7条第2項と同様、法的義務に改めるべきである。 (理由) 現行の障害者差別解消法は、合理的配慮の提供について、行政機関等・事業者のいずれにおいても、「その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。」としており、「過重な負担」による抗弁が許されている。これに加えて事業者の合理的配慮提供義務を「努力義務」に緩和することに合理性は見出しがたい。また、基本方針は「合理的配慮は、過重な負担の基本的な考え方に掲げた要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。」としており、合理的配慮を求める側・提供する側の相互理解(努力)を前提としている。無用な文言での争いを避け、実質的な取り組みを前進させるため、努力義務の規定(法8条第2項)の規定を、第7条第2項と同様の法的義務としたうえで、具体的な事例における適切な調整は、「過重な負担」の要件の中で行うべきである。 3.障害者差別解消法の改正と同時に、必要な基本方針の改正を行うべきである。 (理由) 障害者差別解消法は全文26条にとどまっており、実質的な規定を基本方針の記述に委ねている部分が多い。今回の法改正にあたっては、基本方針の必要な改正も併せて議論すべきである。以下、2点を例示する。 @不当な差別的取扱いの基本的な考え方 法は「行政機関等及び事業者がその事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」とするが、基本方針は、「不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである」と説明している。何が本質的であるか曖昧であり、「本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者」という表現の是非を議論すべきである。 A合理的配慮の提供が必要となる範囲 基本方針は、「合理的配慮の提供が必要となる範囲」について、「行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。」としている。「本来の業務に付随するものに限られる」や「事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばない」範囲に合理的配慮を限定する是非を議論すべきである。