資料7 合理的配慮の義務化についての意見資料 日本高次脳機能障害友の会 理事長 片岡保憲 令和2年10月14日 高次脳機能障害の症状の中でも、とくに社会的行動障害における社会的に問題とされる行動は多岐にわたります。以下に、「中島八十一:社会的行動障害がもたらす生活のしづらさ(高次脳機能研究37(3):275〜280,2017)」より一部抜粋した社会的行動障害の問題となる行動を記載します。 高次脳機能障害者における支援困難例一覧 暴言暴行・自傷 病院や役所などで怒鳴り,恐喝し,何度も警察に通報される。 公共交通機関などで車内マナーの悪い人に大声で怒鳴りつける。主張が止まらない。話を遮ると激昂する。 運転免許を希望したが運転免許センターで困難と言われて激昂し,職員を恫喝,脅迫した。 脱抑制(行動) しきりに性的な発言を繰り返し,女性職員に触る。入所施設で女性職員や利用者を襲い,何回も警察に通報される。 金銭管理ができない。持っているお金はすべて使ってしまう。渡さないと暴れる。 脱抑制(飲食関連) 水をあまり飲まないので飲むように言うと,一時にたくさん飲むようになり,意識不明(低ナトリウム水中毒)になった。 制限なく食べる。家中探しまわり,食料がなければ他人の家に入る,無銭飲食,万引きする。 購入前の菓子の袋を破って食べ,平気でいる。 触法 雑誌,食料品などを万引きして,罰金(30万円)を科せられる。 万引きで実刑となり刑務所に2年服役した。 施設などでお金を盗む。 銀行強盗未遂で裁判になった。 他の認知機能との関連 職場では,事故前のように簡単なメモでは思い出せない。分っているが段取りができなくなり,行き当たりばったりになった。何でも押さえられず言ってしまうので他の職員につべこべ言うなと胸ぐらを掴まれた。 こだわりが強く,その一方で落ち着きがない。急に道路に飛び出して,その場で器物を破損する。 たくさんのことを言われると処理しきれず,困惑するだけでなく段々いらついてきて最後にはパニックになる。 被害的 職場が自分を解雇させるために精神科に入院させたと思っている。 親兄弟が嘘をつき,自分のお金を盗むので包丁をつきつけた。 人や車が怖い,敵がいるので外出しない。出る時はカッターナイフを持ち歩く。 また、これらの困難事例に加え、当事者、当事者家族、支援者から、 美術館や映画館など静かにすることを求められるような施設が利用できない。 高次脳機能障害者は見えづらい障害ともいわれ、一見、障害が無いように見えることも多い。障害があることが分かってもらえない、あるいは障害が軽いと思われることがありストレスがかかる。 問題をたびたび起こし、複数の店・施設で出入り禁止となる。問題を起こした場合、障害の症状を説明できないことがある。 行政手続き等において、担当者が当事者の発言のみを鵜呑みにして、当事者家族が思ってもいないような手続き結果となってしまうことがある。 などといった声が挙げられている現状があります。 このような状況に対し、当事者・家族団体として、合理的配慮の提供を望みます。 具体的には、問題が発生した際に、間に入ってくれる支援者の必要性、継続的な粘り強いかかわりのできる支援者の必要性、障害された認知機能および心理面への配慮の必要性、社会に対する高次脳機能障害の正しい理解の普及、などが挙げられます。 一方で、高次脳機能障害者の問題行動への対応は確立されている状況とは言えず、必要とされる合理的配慮について明確でないことも承知しております。問題が起こった場合に高次脳機能障害者に対する合理的配慮を相談・検討できる場の確保、およびアクセシビリティの確保を強く希望いたします。 以上