p1    障害者差別解消法   野沢和弘(毎日新聞論説委員) p2   障害者の権利擁護  <国内の動き> 措置⇒支援費⇒自立支援法⇒総合支援法 ~障害者観の転換 ・行政処分の対象⇒契約の当事者 ・家族や入所施設での保護の対象⇒権利の主体 ・福祉の対象⇒就労の主体、給付の対象⇒納税者  <海外の潮流> ・1990年ADA(※2000年、日弁連報告) ・2006年国連障害者権利条約採択 ↓ ・条例~千葉、北海道、岩手、熊本、さいたま、八王子、長崎、沖縄、別府、鹿児島、茨城 ・改正障害者基本法、虐待防止法、差別解消法、国連権利条約批准 p3   障害者制度改革 •障害者自立支援法改正(2010) •障害者基本法の改正(2011) •障害者虐待防止法(2011) •障害者総合支援法(2012) •優先調達促進法(2012) •公職選挙法改正(2013) •精神保健福祉法(2013) •障害者雇用促進法改正(2013) •障害者差別解消法(2013) •国連権利条約の批准(2014) p4   政府の取り組み ①基本指針(閣議決定) →②対応要領(公務員向け) →③ガイドライン(民間向け) ④障害者差別解消支援地域協議会モデル事業 都道府県+市町村 p5   (1)行政機関における差別禁止 ①差別的取扱いの禁止 ・作為による「差別的取扱い」禁止規定を置く ・「間接差別」は具体的事例の集積を踏まえ対応 ・国公立の学校や福祉施設等を含む ②合理的配慮の提供 障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている意思の表明があった場合、過重負担でないときは必要かつ合理的配慮をしなければならない p6   (2)民間事業者における差別の禁止 ①差別的取扱いの禁止 (※行政機関と同様) ②合理的配慮の提供 民間事業者については「私的自治」に配慮し合理的配慮は努力義務。啓発や周知を図る取り組みを進める。法的義務とするかは具体事例の集積を図り検討(附則に規定) ※雇用現場は民間も法的義務(改正雇用促進法) p7   合理的配慮(reasonable accommodation) •差別的取扱い →障害を理由に一般の人と区別して不利益を与えない、公平に扱う。 •合理的配慮 →障害特性に応じて一般の人とは別の配慮をする。そうしないと実質的な公平にならない。 p8   差別と合理的配慮 <差別的取扱い> ・障害を理由に大学入試を受けさせない ・障害を理由にレストランの入店を拒否 ・障害を理由に選挙権をはく奪 <合理的配慮義務違反> ・受験して合格したが、大学にエレベーターがなくて教室まで行けない。車いす用トイレもない。 ・「障害者の方もどうぞ」と言われるが、階段や段差で店に入れない。 ・後見人が付いている知的障害者も選挙権が回復したが、候補者名の漢字が読めないため投票できない p9   過度な負担 過度な負担でない範囲で、合理的配慮を求めることができる。 「事業者の事業規模、事業規模から見た負担の程度、事業者の財政状況、業務遂行に及ぼす影響等を総合的に考慮することとし、中小零細企業への影響に配慮すること」 (衆参付帯決議) p10   意思の表明 障害者から社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合に、障害者と受け入れ側との間の「双方による建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるものである」(基本指針) 公的機関=法的義務 民間機関=努力義務 p11   合理的配慮をどう考えるか •ユニバーサルな効果 シルバーシート、多目的トイレ、わかりやすい説明書 •誰かの負担が重くなる場合はどうか 技術革新や社会のルール変更で便利になる人 それによって社会からはじき出される人 多数派に合わせた街づくり、ルール、慣習 ※聴覚障害と手話通訳 p12   実効性の確保 •主務大臣は指針に定める事項について事業主に報告を求め、助言、指導もしくは勧告をすることができる。報告聴取に従わない、虚偽の報告には過料を課す •民法上の効果(損害賠償請求権、契約の無効等)は規定しない。民事法上の効果は民法等の一般規定に従い個々の事案に応じて判断される p13   差別解消のための支援措置 (1)相談及び紛争の防止・解決のための体制 ・行政の責務として体制整備を図る ・新たな紛争解決機関は設置せず既存機関を活用 (2)啓発活動 ・障害者施設の立地をめぐる反対運動などに対し、住民の同意を求めず、行政が住民を啓発(国会の附則決議) (3)情報の収集、整理および提供 (4)差別解消支援地域協議会の設置 p14   差別解消の支援措置 •啓発(15条) •情報収集と提供(16条) •差別解消支援地域協議会(17条) 国の出先機関・地方自治体・民間団体・学識経験者などで構成 相談→協議→取組(情報提供・意見表明・協力要請) p15   地域協議会体制整備事業 ①「地域協議会のあり方検討会」平成25年12月~ •設置・運営マニュアル・事例集を策定 →調査 ②「地域協議会体制整備推進事業」平成26年度~ ・法律を実施した場合の効果や影響を検証。条例制定自治体を対象に、新たに国の機関等と連携する取組を体制整備事業として実施。 →報告 ※運営マニュアル・事例集・モデル事業を各自治体に提示。説明会やアドバイザーを派遣。地域協議会の速やかな設置を促進する。 p16   地域協議会の構成機関(都道府県) 国の機関:法務局、労働局 地方機関:障害福祉課、都道府県福祉事務所、保健所、精神福祉センター、教育委員会、都道府県消費生活センター、都道府県警 当事者:障害者団体、家族会 教育:校長会、PTA連合会 福祉:都道府県社会福祉協議会、民生・児童委員協議会、福祉専門職等団体、社会福祉施設等団体、障害者就業・生活支援センター 医療保健:医師会、歯科医師会、看護協会、医療機関 事業者:商工会議所、経営者協会、公共交通機関、特例子会社 法曹等:弁護士会、司法書士会 その他:学識経験者、新聞社、放送局 p17   地域協議会の構成機関(市町村) 国機関:-- 地方機関:障害福祉課等、福祉事務所、保健センター、市町村消費生活センター、教育委員会 当事者:障害者団体、家族会 教育:PTA会長 福祉:市町村社会福祉協議会、相談支援事業者、民生・児童委員 医療保健:医師、歯科医師、保健師、看護師 事業者:商工会議所、公共交通機関、特例子会社 法曹等:弁護士、人権擁護委員 その他:学識経験者等 p18   こんな場合どうする? ①施設、グループホームを建てようとしたら住民から反対された ②市営プールで知的障害者が断られた ③菓子博で電動車いすの人が断られた ④施設の慰安旅行で知的障害者の旅館宿泊を断られた ⑤銀行のATMを視覚障害者は使えない。窓口だと時間がかかり手数料も高い ⑥自閉症の子がスーパーでパニックになり、警備員から「迷惑だから店から出てくれ」と言われた p19  (作業者注:以下図。市町村などが散らばって配置されている) ・グループホーム反対 ・プールから拒否 ・車いすお断り ・旅館に泊まれない 市町村 都道府県 相談支援センター 警察 法務局 労働局 弁護士会 p20  (作業者注:以下図。市町村などと相談者が散らばって配置されている) ・グループホーム反対 ・プールから拒否 ・車いすお断り ・旅館に泊まれない ・ATMが使えない ・スーパーから追い出される 市町村 都道府県 相談支援センター 警察 法務局 労働局 弁護士会 p21  (作業者注:以下図。市町村などが地域協議会を中心に配置されている) ・地域住民を説得、理解、啓発 ・市営プールへ改善を指示 ・主催者に勧告、改善指示 ・旅館組合に仲裁・調停 地域協議会 市町村 都道府県 相談支援センター 警察 法務局 労働局 弁護士会   (作業者注:図ここまで) p22   ①住民からの反対運動 住民の同意書⇒説明会 「障害者は何をするかわからない」「静かな環境が壊される」「地価が下がる」「税金を使う事業なのだから住民には反対する権利がある」「障害者を差別するつもりはないが、ここに建てられるのは嫌だ」 ⇒「障害者施設の立地をめぐる反対運動などに対し、住民の同意を求めず、行政が住民を啓発して解決に努める」(国会の附則決議) 地域協議会(法務局、弁護士、市、民生委員、人権擁護委員……)⇒説得、仲裁、調停。 p23   ②プール利用を断られる 「人手が足りず、専門スタッフもいないので安全を配慮できない」 「脱衣所で大きな声を出されるのは困る」 「一般の利用者から、障害者と一緒にプールに入るのは嫌だと投書があった」 ⇒公的施設(市営プール)は差別的取扱いも合理的配慮も法的義務。安全な環境・設備、障害特性を理解したスタッフ配置、一般利用者への理解や啓発に努めることも合理的配慮義務。 p24   ③電動車いすが断られる 「スピードが出るので危ない」「段差がある場所では重くてスタッフが持ち上げられない」「場所も取るので、一般客への配慮が必要」「車いすがダメとは言わない。手動の車いすに乗り換えてくれないか」「一般客の少ない平日のみ可としたい」 ⇒実行委員会は県・市・業界団体が組織~公的機関として合理的配慮は法的義務。主務大臣から勧告(※訴訟を起こされたら~) p25   ④旅行先の旅館に拒否される 「段差もあり、障害者に配慮された設備もないので安全を保障できない」「スタッフが障害者に慣れておらず不愉快な思いをさせないか心配」「一般の利用客が嫌がる」「公的な宿泊施設を探したらどうか」 ⇒地域協議会(国の出先=国土交通省・地方運輸局観光運輸振興課、法務局、県・市、商工会議所)が仲裁、調停。 p26   ⑤銀行ATMと視覚障害者 「視覚障害者だけ特別扱いできない」「すべてのATMにサポートする銀行員を配置することはできない」「合理的配慮は民間については努力義務ではないか。過度な負担の場合は義務にならないはず」 ? p27   ⑥自閉症の子とスーパー 「パニックになって大声で暴れると一般客が迷惑、店にとっても営業妨害になる」「障害者を排除するつもりはない、大声や暴れなければ店としても歓迎するつもりだ」「民間の合理的配慮は努力義務だ」 ? p28   条例で解決する ○県調整委員会 調査、調停、仲裁、勧告、訴訟支援 ↑ ○広域専門指導員16人(各福祉圏域) ↑ ○地域相談員600人 ・視覚障害者のATM利用 ・自閉症の人と大型スーパー →推進会議 p29   どうすれば解決できるか ○地域協議会が重要! ・中から機能させる(事務局、構成機関のあり方が大事 ・外から機能させる(弁護士、議会、メディア……) ○合理的配慮の好事例を広める ○条例をつくる ・相談、紛争解決機関を自治体が自前で持つ p30   条例があるといい ○解消法は「新たな紛争解決機関は置かない」 ⇒相談~解決の実行機関がない ○当事者に差別の意識がなく混沌としている場合が多い。悪意のない差別や誤解が潜在化。 ⇒600人の地域相談員、16人の広域指導員 ○差別解消支援地域協議会 ⇒身近な紛争解決機関「千葉県障害者差別調整委員会」 ○自治体が本気で動かないと機能しない ⇒条例策定プロセスを官民が共有 ○個々の差別事例から普遍的制度化へ ○よい事例の顕彰 p31   市町村がやるべきこと ★地域協議会の設立 ★対応要領、(条例)の策定 •障害のある人や認知症の人が困っていること、合理的配慮の好事例を集める →アンケート、ヒアリング •地域協議会のメンバー、活動内容の検討 •報告会の実施 p32   千葉県浦安市の例  <合理的配慮の好事例を集める> •障害者の優先駐車場のあるマンション •障害者にやさしい歯医者さん •障害者宅への市役所からの文書の配慮 •東京ディズニーランドのわかりやすい手話、自閉症の利用者への配慮 •認知症の人へのやさしい声掛け…… 小さなことでもうれしい 何が合理的配慮かわからない人も多い すぐにできることも多い みんなに紹介して街を明るくしよう! p33   オリエンタルランド  ◆情報集収集 バリアフリーの概念も社会的に浸透しておらずマニュアルもなかった開園当初より、来場者からの意見、苦情、要望を集めた。  ◆視点の転換 障害者に対して「入場、買い物を優先」から「障害のある人もない人も一緒に楽しむためにどうしたらいいか考える」に転換  ◆ハード面での工夫 ①字幕表示システム ②触地図、アトラクション・キャラクターのスケールモデルの設置 ③開閉式の柵⇒車いすの人の目線に柵が入らない工夫 ④雰囲気を伝える手話ショーの世界観や雰囲気を伝える工夫  ◆ソフト面の充実 ①どんなにハード面を整えても、最後は「キャストの対応次第」と研修を充実 ②理念を社会へ発信。アルバイト学生がスキルや考えを世間に伝播 p34   明海大学(浦安市)  ◆入学試験の配慮 ①別室受験事前に本人と保護者、高校教諭に説明の場を設ける ②点字での問題作成 ③弱視の受験生に機器持込みを許可。操作を考慮し余裕ある時間を設定  ◆授業などでの配慮 ①教室に車いすスペースの確保 ②黒板の文字は大きく書く ③資料の読み上げ ④点字資料の作成  ◆海外研修参加への配慮 ①研修先大学やホストファミリーと打ち合わせ ②保護者に十分な説明  ◆施設・利用時の配慮 ①混雑時は教員用エレベーターの使用を許可 ②エレベーターのボタン位置を下げる ③障害者用トイレの設置 p35   市町村の対応要領(案)  <対象> ・市職員 ・公立小中高等学校、幼稚園、子育て支援センター ・行政サービスセンター ・図書館、公民館、公立スポーツ施設 ・公園、墓地、ごみ焼却場 ・市営駐輪場 ・消防、警察 ・選挙管理委員会、投票管理者、投票立会人 ・社会福祉協議会、福祉サービス事業所 p36   モデル事業1 •高齢者と障害者の虐待防止協議会を統合 •さらに差別解消支援地域協議会を統合 •この町で起きるあらゆる困りごとをワンストップで受け止めて解決する •市職員(幹部から平職員まで)全員が障害者差別をなくす研修 •浦安警察署の全員が研修 •障害者団体や企業(ディズニーランド含む)に差別や合理的配慮の事例調査 p37   モデル事業2 •浦安市の対応要領作成(差別的取扱いや合理的配慮を欠いた場合は市職員を懲戒と明文化) •虐待防止センターを「権利擁護センター」に改称し、差別事例も含めてワンストップで対応、専属職員の配置 •浦安市の差別解消条例を制定し、地域協議会が実効性もって機能するように裏付け p38   浦安市の対応 障害福祉課:障害者虐待防止協議会 高齢福祉課:高齢者虐待防止協議会 p39   浦安市の対応 障害福祉課:障害者虐待防止協議会 高齢福祉課:高齢者虐待防止協議会 モデル事業(2015,16):障害者差別解消協議会 p40   浦安市の対応  権利擁護センター 障害福祉課:障害者虐待防止協議会、障害者差別解消協議会 高齢福祉課:高齢者虐待防止協議会、高齢者差別解消 p41   条例の前文 この街の誰もがお互いの存在を認め合い、安心して暮らせることを私たちは願う。障害のある人もない人も、夢を追いながら、かけがえのない人生を力強く歩むことができる街を目指したい。 そのためには、いじめ、差別、偏見、虐待など、障害のある人に理不尽な困難を強いている要因をなくしていかねばならない。福祉サービスの充実はもとより、障害者が社会に能動的にかかわりながら自立を図るために、さまざまな障壁を取り除いていくべきである。 そうした取り組みは障害のある人だけでなく、この街で暮らす全ての人に温もりと希望をもたらし、地域社会を根底から優しくしていくはずである。 障害のある人の固有の尊厳を尊重し、多様性に満ちた共生社会を実現するため、ここに浦安市障がいを理由とする差別の解消の推進に関する条例を制定する。