p1 防衛省訓令第116号 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第9条第1項の規定に基づき、防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する訓令を次のように定める。 令和5年12月26日 防衛大臣 木原 稔 防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する訓令 防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する訓令(平成27年防衛省訓令第30号)の全部を改正する。 (目的) 第1条 この訓令は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「法」という。)第9条第1項の規定に基づき、また、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(令和5年3月14日閣議決定。以下基本方針という。)に即して、法第7条に規定する事項に関し、防衛省本省の職員(非常勤職員を含 p2 む。以下「職員」という。)が適切に対応するために必要な事項を定めるものとする。 (定義) 第2条 この訓令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 (1) 障害 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害及び高次脳機能障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病等に起因する障害を含む。)をいう。 (2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 (3) 障害者 障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 (不当な差別的取扱いの禁止) 第3条 職員は、法第7条第1項の規定のとおり、その事務又は事 p3 業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱い(以下「不当な差別的取扱い」という。)をすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。この場合において、職員は、別紙に掲げる事項に留意するものとする。 (合理的配慮の提供) 第4条 職員は、法第7条第2項の規定のとおり、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)の提供をしなければならない。この場合において、職員は、別紙に掲げる事項に留意するものとする。 (防衛省総括管理者) 第5条 防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する事務を総括する者として、防衛省総括管理者を置く。 p4 2 防衛省総括管理者は、大臣官房長をもって充てる。 (機関等責任者) 第6条 機関等において、当該機関等における障害を理由とする差別の解消の推進に関する事務に責任を有する者として、機関等責任者を置く。 2 機関等責任者は、次の表の機関等の欄に掲げる機関等に応じ、それぞれ同表の機関等責任者の欄に掲げる者とする。 |機関等                                         機関等責任者    | |防衛省本省の内部部局                                  大臣官房長     | |防衛大学校                                       防衛大学校長    | |防衛医科大学校                                     防衛医科大学校長  | |防衛研究所                                       防衛研究所長    | |統合幕僚監部(自衛隊サイバー防衛隊を含む。)                      統合幕僚長     | |陸上自衛隊(自衛隊情報保全隊、自衛隊体育学校、自衛隊 陸上幕僚長     | p5 |中央病院、陸上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院及び自衛隊地方協力本部を含む。)   | |海上自衛隊(海上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。)              海上幕僚長     | |航空自衛隊(航空幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。)              航空幕僚長     | |情報本部                                        情報本部長     | |防衛監察本部                                      防衛監察監     | |地方防衛局                                       地方防衛局長    | 3 機関等は、防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する事務を円滑に進めるため、相互に協力し、適切に事務を遂行するものとする。 (相談体制の整備) p6 第7条 障害者及びその家族その他の関係者(以下「障害者等」という。)からの相談等に的確に応じるため、防衛省本省に相談窓口を置く。 2 防衛省総括管理者の監督の下で機関等間の総合調整を行う相談窓口として、大臣官房文書課に、総括窓口を置く。 3 機関等責任者の監督の下で当該機関等に係る相談等に対応する相談窓口として、次の表の機関等の欄に掲げる機関等に応じ、それぞれ同表の機関等窓口の欄に掲げる部署に機関等窓口を置く。 |機関等                                      機関等窓口            |  |防衛省本省の内部部局                               大臣官房文書課           |            |防衛大学校                                    防衛大学校総務部総務課       |        |防衛医科大学校                                  防衛医科大学校事務局総務部総務課  |  |防衛研究所                                    防衛研究所企画部総務課       |  |統合幕僚監部(自衛隊サイバー防衛隊を含む。)                   統合幕僚監部総務部総務課      | p7   |陸上自衛隊(自衛隊情報保全隊、自衛隊体育学校、自衛隊中央病院、陸上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院及び自衛隊地方協力本部を含む。)   陸上幕僚監部監理部総務課     |   |海上自衛隊(海上幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。)               海上幕僚監部総務部総務課      | |航空自衛隊(航空幕僚長の監督を受ける自衛隊地区病院を含む。)               航空幕僚監部総務部総務課      | |情報本部                                         情報本部総務部総務課        | |防衛監察本部                                   防衛監察本部総務課         | |地方防衛局                                        地方防衛局総務部総務課       | 4 機関等責任者は、前項の表に掲げるもののほか、相談窓口として、地方窓口を置くことができる。 p8 5 相談窓口については、必要に応じ、充実を図るよう努めるものとする。 (監督者の責務) 第8条 職員を監督する地位にある者(以下「監督者」という。)は、障害を理由とする差別の解消を推進するため、次の各号に掲げる事項に注意して障害者に対する不当な差別的取扱いが行われないよう、また、障害者に対して合理的配慮の提供がなされるよう努めなければならない。 (1) 日常の執務を通じた指導等により、障害を理由とする差別の解消に関し、職員の注意を喚起し、障害を理由とする差別の解消に関する認識を深めさせること。 (2) 障害者等から不当な差別的取扱い、合理的配慮の不提供に対する相談、苦情の申出等があった場合は、迅速に状況を確認すること。 (3) 合理的配慮の必要性が確認された場合、職員に対して、合理的配慮の提供を適切に行うよう指導すること。 p9 2 監督者は、障害を理由とする差別に関する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。 (懲戒処分等) 第9条 職員が、障害者に対し不当な差別的取扱いをし、又は過重な負担がないにもかかわらず合理的配慮の提供をしない場合、その態様等によっては、職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合等に該当し、当該職員は懲戒処分等に付されることがある。 (研修・啓発) 第10条 機関等責任者は、障害を理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対し、法、基本方針等の周知、障害者から話を聞く機会を設けるなど必要な研修・啓発を行うものとする。 2 機関等責任者は、新たに職員となった者に対し、障害を理由とする差別の解消に関する基本的な事項について理解させるために、また、新たに監督者となる職員に対し、障害を理由とする差別の解消等に関し求められる役割について理解させるために、研修を実施するものとする。 p10 3 機関等責任者は、職員に対し、障害の特性を理解させるとともに、性別、年齢等にも配慮しつつ障害者に適切に対応するために、意識の啓発を図るものとする。 (委任規定) 第11条 防衛省総括管理者は、この訓令を実施するために必要な事項について別に定めることができる。 2 機関等責任者は、所属する機関におけるこの訓令の実施に必要な細則を定めることができる。 附 則 この訓令は、令和6年4月1日から施行する。 p11 別紙 防衛省本省における障害を理由とする差別の解消の推進に関する留意事項について 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方 法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービス又は各種機会を提供するに当たり、提供の拒否、提供する場所又は時間帯等の制限、障害者でない者に対しては付さない条件の付加等、障害者の権利利益を侵害することを禁止している。なお、車椅子、補助犬その他の支援機器等の利用、介助者の付添い等の社会的障壁を解消するための手段の利用等を理由として行われる不当な差別的取扱いも、障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当する。 一方で、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。 したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱い、合理的配慮の提供等をするために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ行う障害者に対する障害の状況等の確認は、不当な差別的取扱いには当たらない。 このように、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。 第2 正当な理由の判断の視点 第1に掲げる正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、財・サービス又は各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得な p12 い場合である。 正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、障害者及び第三者の権利利益(安全の確保、財産の保全、損害発生の防止等)並びに防衛省本省の事務又は事業の目的・内容・機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面又は状況に応じて総合的・客観的に判断する必要がある。 なお、職員は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めるものとする。その際、職員及び障害者の双方が、互いの立場を尊重しながら相互理解を図る必要がある。 第3 不当な差別的取扱いの例及び不当な差別的取扱いに該当しない例 1 正当な理由がなく、不当な差別的取扱いに該当すると考えられる例 (1) 障害があることを理由として、一律に窓口対応を拒否する。 (2) 障害があることを理由として、一律に対応の順序を後回しにする。 (3) 障害があることを理由として、一律に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒んだり、資料等に関する必要な説明を省いたりする。 (4) 障害があることを理由として、一律に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。 (5) 障害があることを理由として、事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず、来訪の際に付添い者の同行を求めるなどの条件を付けたり、特に支障がないにもかかわらず、付添い者の同行を拒んだりする。 (6) 障害の種類及び程度並びにサービス提供の場面における本人及び第三者の安全性等について考慮することなく、漠然とした安全上の問題を理由に施設利用を拒否する。 (7) 業務の遂行に支障がないにもかかわらず、障害者でない者とは異なる p13 場所での対応を行う。 (8) 障害があることを理由として、言葉遣い、接客の態度等接遇の質を一律に下げる。 2 正当な理由があるため、不当な差別的取扱いに該当しないと考えられる例 (1) 実習を伴う講座において、実習に必要な作業の遂行上具体的な危険の発生が見込まれる障害特性のある障害者に対し、当該実習とは別の実習を設定する。(障害者本人の安全確保の観点) (2) 車椅子の利用者が畳敷きの個室を希望した際に、敷物を敷くなど、畳を保護するための対応を行う。(行政機関の損害発生の防止の観点) (3) 行政手続を行うため、障害者本人に同行した者が代筆しようとした際に、プライバシーに配慮しつつ、必要な範囲で、障害者本人に対し障害の状況、本人の手続の意思等を確認する。(障害者本人の損害発生の防止の観点) 3 前2項に記載されている内容はあくまでも例示であり、これらの例だけに限られるものではないこと、正当な理由に相当するか否かについては、個別の事案ごとに、前項の観点等を踏まえて判断することが必要であること及び正当な理由があり不当な差別的取扱いに該当しない場合であっても、合理的配慮の提供を求められる場合には別途の検討が必要であることに留意する。 第4 合理的配慮の基本的な考え方 1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。 p14 法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、合理的配慮を行うことを求めている。合理的配慮とは、障害者が受ける制限が、障害のみに起因するものではなく、社会的障壁と相対することによって生ずるものとの考え方(いわゆる「社会モデル」)を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。 2 合理的配慮の提供に当たっては、防衛省本省の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること及び事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。その上で、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、当該障害者本人の意向を尊重しつつ、第5に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で、柔軟な対応が必要である。 建設的対話に当たっては、障害者にとっての社会的障壁を除去するための必要かつ実現可能な対応案を障害者と職員が共に考えていくために、双方が互いの状況の理解に努めることが重要である。例えば、障害者本人が社会的障壁の除去のために普段講じている対策、防衛省本省として対応可能な取組等を対話の中で共有するなど、建設的対話を通じて相互理解を深め、様々な対応策を柔軟に検討していくことが円滑な対応に資すると考えられる。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。合理的配慮の提供に当 p15 たっては、障害者の性別、年齢、状態等に配慮するものとし、特に障害のある女性に対しては、障害に加えて女性であることも踏まえた対応が求められることに留意する。 なお、障害者との関係性が長期にわたる場合には、その都度の合理的配慮の提供とは別に、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減及び効率化につながる点は重要である。 3 意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示、身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段により伝えられる。 また、障害者からの意思表明のみでなく、障害の特性等により本人の意思表明が困難な場合には、障害者の家族、介助者等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含む。 なお、意思の表明が困難な障害者が、家族、介助者等を伴っていない場合等、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白である場合には、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働きかけるなど、自主的な取組に努めるものとする。 4 合理的配慮は、不特定多数の障害者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報アクセシビリティの向上等の「環境の整備」を基礎として、個々の障害者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。   また、障害の状態等が変化することもあるため、特に、障害者との関係性が長期にわたる場合には、合理的配慮の提供について、適宜、見直しを行うことが重要である。なお、多数の障害者が直面し得る社会的障壁をあ p16 らかじめ除去するという観点から、他の障害者等への波及効果についても考慮した環境の整備を行うこと、また、相談・紛争事案を事前に防止する観点から、内部規則、マニュアル等の制度改正等の環境の整備を図ることも必要である。 第5 過重な負担の基本的な考え方 過重な負担については、具体的な検討をせずに過重な負担を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことがないよう、個別の事案ごとに、以下を考慮し、具体的場面又は状況に応じて総合的・客観的に判断する必要がある。 なお、職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障害者に丁寧にその理由を説明し、理解を得るよう努めるものとする。その際には前述のとおり、職員及び障害者の双方が、互いの立場を尊重しながら、建設的対話を通じて相互理解を図り、代替措置の選択も含めた対応を柔軟に検討することが求められる。 (1) 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的・内容・機能を損なうか否か) (2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約) (3) 費用・負担の程度 第6 合理的配慮の例 1 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の例 (1) 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。 (2) 行事等に参加する障害者に対し、必要に応じて座席又は駐車場の場所に配慮し、個別に案内を行う。 (3) 目的の場所までの案内の際に、障害者の歩行速度に合わせて歩いたり、専用通路又は動線を確保したり、前後・左右・距離の位置取りについて、障害者の希望を聞いたりする。 p17 (4) 頻繁に離席の必要がある障害者に対し、会場の座席位置を出入口の付近にする。 (5) 庁舎、基地、駐屯地、広報施設等を訪れる障害者に対し車椅子の貸出し及び付添い者の配置を行うとともに、段差がある場合にはキャスター上げ等の補助をしたり、携帯スロープを渡したりする。 (6) 歴史的遺構等で車椅子利用者による見学が困難な展示物について、タブレット端末を利用して鑑賞できるようにする。 (7) 視覚障害のある者からトイレの個室を案内するよう求めがあった場合に、求めに応じてトイレの個室を案内する。その際、同性の職員がいる場合には、障害者本人の希望に応じて同性の職員が案内する。 (8) 疲労を感じやすい障害者から別室での休憩の申出があったものの、別室の確保が困難である場合には、当該障害者に事情を説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。 (9) 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障害者に対し、職員が書類を押さえたり、バインダー等の固定器具を提供したりする。 (10)  行事等において知的障害のある子供が発声又はこだわりのある行動をしてしまう場合に、保護者から子供の特性、コミュニケーションの方法等について聞き取った上で、落ち着かない様子のときは個室等に誘導する。 2 合理的配慮に当たり得る情報の提供、利用及び意思疎通への配慮の例 (1) 筆談、読み上げ、手話、触覚による意思伝達等のコミュニケーション手段を用いる。 (2) 広報活動等に際し、聴覚障害のある者に対して広報用の映像に代えてその映像に関する解説を記載した資料を貸し出したり、写真展示の充実を図ったりする。 (3) 聴覚障害のある者に対し、駐車場等で通常口頭で行う案内を、紙にメ p18 モをして渡す。 (4) 意思疎通が不得意な障害者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。 (5) 書類記入の依頼時に、記入方法等を障害者本人の目の前で示したり、分かりやすい記述で伝達したりする。また、障害者の家族、介助者等による代筆を可能とする。 (6) 比喩表現等が苦手な障害者に対し、比喩、暗喩、二重否定表現等を用いずに説明する。 (7) 障害者から申出があった際に、一度に複数の内容を伝えるのではなく、ゆっくりかつ丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前・午後で表記する、理解しやすいように語句間に区切り又はスペースを入れるなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。 (8) 障害者による閲覧に配慮するため、防衛省・自衛隊のホームページをウェブアクセシビリティに関する日本産業規格JIS X 8341−3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−第3部:ウェブコンテンツ」における適合レベルAAに対応させる。 3 合理的配慮に当たり得るルール・慣行の柔軟な変更の例 (1) 順番を待つことが苦手な障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続順を入れ替える。 (2) 立って列に並んで順番を待っている障害者に対し、周囲の者の理解を得た上で、当該障害者の順番が来るまで別室又は席を用意する。 (3) スクリーン、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。 (4) 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。 (5) 庁舎、基地、駐屯地、広報施設等において、行政上の手続、行事等で p19 障害者が来庁する場合、通常、障害者専用とされていない区画を障害者専用の駐車区画に変更する。また、多数の来訪者が見込まれる場合は、障害者の状況に応じて適切な配慮を行う。 (6) 入館時にICカードゲートを通過することが困難な障害者に対し、別ルートからの入館を認める。 (7) 他人との接触又は多人数の中にいることによる緊張により、不随意の発声等がある場合、当該障害者に説明の上、施設の状況に応じて別室を準備する。 (8) 非公表又は未公表情報を扱う会議等において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、障害のある委員の理解を援助する者の同席を認める。 (9) 災害時において障害者を円滑に救援できるよう、自治体等と協力しつつ、障害者の視点に立って、災害派遣を行う。 4 前各項に記載されている内容は、あくまでも例示であり、必ず実施するものではないこと、記載されている内容以外であっても合理的配慮に該当するものがあることに留意する必要がある。 第7 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例及び該当しないと考えられる例 1 合理的配慮の提供義務違反に該当すると考えられる例 (1) 試験を受ける際に、筆記が困難なためデジタル機器の使用を求める申出があった場合に、デジタル機器の持込みを認めた前例がないことを理由に、必要な調整を行うことなく一律に対応を断る。 (2) イベント会場内の移動に際して支援を求める申出があった場合に、「何かあったら困る」という抽象的な理由で具体的な支援の可能性を検討せず、支援を断る。 (3) 電話利用が困難な障害者から電話以外の手段により各種手続が行えるよう対応を求められた場合に、マニュアル上、当該手続は利用者本人に p20 よる電話のみで手続可能とすることとされていることを理由として、メール、電話リレーサービスを介した電話等の代替措置を検討せずに対応を断る。 (4) 介助を必要とする障害者から、講座の受講に当たり介助者の同席を求める申出があった場合に、当該講座が受講者本人のみの参加をルールとしていることを理由として、受講者である障害者本人の個別事情、講座の実施状況等を確認することなく、一律に介助者の同席を断る。 (5) 自由席での開催を予定しているセミナーにおいて、弱視の障害者からスクリーン、板書等がよく見える席でのセミナー受講を希望する申出があった場合に、事前の座席確保等の対応を検討せずに「特別扱いはできない」という理由で対応を断る。 2 合理的配慮の提供義務に反しないと考えられる例 (1) 事務の一環として行っていない業務の提供を求められた場合に、その提供を断る。(必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られることの観点) (2) 抽選申込みとなっている講座への参加について、抽選申込みの手続を行うことが困難であることを理由に、講座への参加を事前に確保しておくよう求められた場合に、当該対応を断る。(障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることの観点) (3) イベント当日に、視覚障害のある者から職員に対し、イベント会場内を付き添ってブースを回ってほしい旨頼まれたが、混雑時であり、 対応できる人員がいないことから対応を断る。(過重な負担(人的・体制上の制約)の観点) 3 前2項に記載されている内容はあくまでも例示であり、合理的配慮の提供義務違反に該当するか否かについては、個別の事案ごとに、前述の観点等を踏まえて判断する必要があることに留意する。