参考資料   障害者基本計画(第4次)の検討を見据えた今後の障害者施策の課題について(抄)   第31回障害者政策委員会配布資料(「T 総論的事項」及び「U 分野横断的事項」抜粋)   T 総論的事項  【安藤委員】 ■改正障害者基本法の施行後3年の見直しについて 平成23年8月5日施行の障害者基本法の改正法の附則第2条では「施行後3年を目途とした検討」規定があり、すでに同法施行から3年を経過していることから、障害者基本法の見直しに向けた議論を障害者政策委員会で開始すべきである。 ■第4次障害者基本計画と第2回政府報告との関係について 障害者権利委員会の「障害者権利条約第35条第1項に基づき締約国によって提出される、条約が指定する文書に関する指針」(日本障害フォーラムによる日本語訳)では、 障害者権利委員会に提出される、条約が指定する文書では、共通基幹文書に掲載されている情報を繰り返したり、締約国によって採択された法律を単に列挙したり、説明したりするだけではいけない。むしろ、締約国の領土または管轄区域内の、あらゆる種類の障害を持つすべての人による、条約で認められている権利の完全な実現に影響を与える法律と慣行の最新動向に関する分析情報を考慮しつつ、条約第1条から第33条までの実施に関する法律上および事実上の具体的な情報を盛り込まなければならない。また、前述の目標に向けてとられた実質的な措置と、それによって達成された進展に関する詳細な情報も含めなければならない。… とされている。 また、第21回障害者政策委員会(平成27年5月29日開催)でのロン・マッカラム氏のご講演でも、 …国が成し得たこと、そしてまだ足りないことを詳細に書き、正直であるべきです。 とのご指摘があった。 これに対して、わが国の第1回政府報告では、たとえば障害者の地域生活を支えるサービスとして、障害者総合支援法のサービスメニュー、利用者数とサービス提供量の推移、第4期障害福祉計画の成果目標と進捗状況などが紹介されている。 しかし、これらの内容は同指針の要求水準を満たすものではないと考える。 したがって、たとえば障害福祉サービスの支給水準などについて、地域差を含めた国内の現状を把握するように第4次障害者基本計画をデザインし、そのモニタリングが、そのまま第2回政府報告に転用できるようにすべきである。 ■障害者基本計画の計画期間について 障害者基本計画のモニタリングを通じた条約履行のモニタリングという観点から、障害者基本計画の計画期間を政府報告のサイクルに合わせるべきである。 (例)第4次計画:平成30年4月1日〜平成34年3月31日(4ヵ年) 第3次計画の最終モニタリング:平成29年度までの進捗状況 第4次計画の中間モニタリング:平成30年度までの進捗状況 第2回政府報告:平成32年2月19日 第4次計画の最終モニタリング:平成34年度までの進捗状況 第3回政府報告:平成36年2月19日 第5次計画:平成34年4月1日〜平成38年3月31日(4ヵ年) 第5次計画の最終モニタリング:平成38年度までの進捗状況 第4回政府報告:平成40年2月19日 第6次計画:平成38年4月1日〜平成42年3月31日(4ヵ年) 第6次計画の最終モニタリング:平成42年度までの進捗状況 第5回政府報告:平成44年2月19日  【飯塚委員】 ●意思決定の尊重を重んじた適切な治療と支援の提供が出来る計画のための実態把握と対策の視点 わが国では家族扶養・自助が前提とされているが、本来、公的責任において社会的扶養・公助を原則としてしかるべきで公的保護者制度と所得保障を確立すべく計画を求める。 精神科医療における強制入院については、入院中の権利擁護制度が保障されていない。権利保障をするために、強制入院を必要最小限とし、入院時から退院するまでの間の権利保障を監視する第三者機関の設置や罰則規定の制定が最低限必要である。 例えば、障害者権利条約第12条第2項の法的能力については、障害者権利委員会一般的意見(第1号)によると「権利能力」のような法的地位に関する能力と「行為能力」のような法的行為主体に関する能力の2つが想定されている。すなわち、行為能力の制限を伴う医療保護入院や成年後見制度は障害者権利条約に抵触し得る。また、限定的な運用が前提で、補充性要件を設けた最終選択肢という観点が重要である。 とりわけ、医療保護入院制度の非自発的入院における公的保護者制度の確立と本人の意思決定を無視しない自由かつ完全な合意を築ける対策が求められる。精神科医療でもインフォームドコンセントに留まらず、SDM(shared decision making)による医療側からの丁寧な説明による治療を選べる体制を整備する必要がある。 また、JR等公共料金の差別。医療費助成の他障害との格差問題や障害者年金の受給要件、等級の基準による運用が、実生活の実態に耐えうるものであるようにしていくことが重要である。 就労については、職業安定所によっては障害者雇用窓口で精神障害者に対して診断書の提出がルーチン化されている事実などを鑑み、障害種別間の格差是正が必要である。あわせて定着率、再発予防にもつながるIPSモデルを取り入れたい。 今日、統合失調症圏の方たちは、かつての入院中心医療から通院中心医療に実態として推移してきている。重度慢性の状況にある場合でも地域で生活を送っている方も少なくない。精神障害・疾患があっても、人として地域生活を送ることができる感覚を世間に浸透させることなしに、人権侵害は解消しない。 「精神障がい者は危険」「精神病院に入院させるべき」との科学的教育の欠如とあいまって、社会的偏見や差別として形成され助長・増幅されている。人権教育とは別に精神の障害に関する啓発教育を位置づけるべきである。精神の障害に係る何かのときに地域社会が受け入れられるようにするには、当事者、家族にのしかかる過剰な負担の実情を伝えると共に啓発教育が大切である。 また、「重度かつ慢性」的な状況に位置づけられる当事者の実態把握をすすめることは重要である。これは長期入院者の地域移行のカテゴリーから分離することなく、地域で生活を実際に送っている方の事例掌握することで地域生活支援のあり方を検証することにもつながる。 そして、隔離や身体拘束を行うことは一定の要件を満たせば違法ではないが、実際には治療でもないものを「治療」と称して行ったり、転倒予防のためと言って安易に行っているといわざるを得ない例が少なくないと聞いている。自分の家族がこのような状況の精神科病院に入院すると言ったら気が気ではない。厚生労働省は「増加の関連要因についてはわからない」としている。しかし「わからない」ではなく、重大な人権の制限である身体拘束が、10年かけて2倍にもなっている事実について、その背景と要因を国としてもしっかりと調査し、それに基づく対策が必要である。特に病院内における可視化と開示義務を規定することが求められる。 これらの背景には、精神障害者の権利剥奪は精神科医療の特例に見られる低医療費制度体系と表裏一体の問題でもあることを忘れてはならない。よって、精神障害者の計画においては、精神科医療政策との整合性も欠かせないことを記しておく。   また、障害のある女性については「分野横断的事項」に位置づけられている。例えば、精神薬の服薬と妊娠・出産に係る課題(医師から子どもは持たないようにアドバイスされる)などを含めて、障害者権利条約6条の履行が必要と思う。 障害者権利条約の批准に伴う国内での履行を確実なものとするためにも、アジア太平洋障害者の10年・第三次十年の実施、仁川戦略の達成。SDGsの国内実施と連動する計画が求められる。 ●医療保護入院の家族等の同意の廃止 医療保護入院と保護者制度は密接な関係がある。本人が入院に同意していない場合で、入院する必要があるとき、「保護者」の同意で入院させることができた。しかしこの制度は、嫌がる精神障害者を保護者である家族が無理やり入院させるという印象が濃く、しばしば家族と本人との間で軋轢を生じた。家族は本人に恨まれるという不安が強く残り、退院後の家族関係を悪化させる原因にもなった。 今回の法改正で、家族会としては保護者制度が廃止されるのだから、医療保護入院は代弁者制度など他の権利擁護の方策を用いるべきだと考えていた。しかし他の代替え制度は整備できず、また相変わらずの「家族主義」の考え方もあって、「家族等の同意」が残ってしまったことは極めて残念である。 「保護者制度」がなくなった時の、医療保護入院のあり方について、各分野が連携して十分な議論と用意をしておくべきであった。家族会としても法律に家族等の同意を明記することは他科においてはなく、精神科についてのみ明記するのは差別であると主張したが、最終的には3年後の見直しを附則に入れるということで、苦渋の決断をせざるを得なかった。 ●家族支援の取り組みと啓発教育を みんなねっとではその設立以来様々な家族支援の取り組みをしてきた。家族の実態を知るため全国の家族会を対象に家族調査を行った。調査結果によると本人が初めて精神科を受診したとき9割に上る家族が精神疾患に関する知識に乏しく情報から孤立している。また、根強い偏見が残る社会から孤立し、支援が必要にもかかわらず、支援からも孤立している。以上3つの孤立に苛まれている実態が明らかになった。この家族が抱える3つの孤立からの脱却に向けた具体的な活動が計画に反映されてこそ意味がある。 ・家族支援のシステム化 そこで孤立からの脱却を目指し、訪問による本人を含む家族全体を支援する技術(行動療法的家族療法)の実践が必要不可欠と考える。 とりわけ、医療アクセスの状況が厳しい、未治療者、治療中断の中にある本人の回復には、単に福祉だけでなく医療を含めた多職種での家族を一体的にとらえた支援が効果を発揮すると思われる。(医療・福祉・司法などのチームで)危機介入の機能を確立することと行動療法的家族支援のシステム化を強く望む。また、専門家のほかに家族間のピアサポート支援をフォーマルなシステムに組み込むべきである。 ・「こころのバリアフリー教育」の目的・目標について義務教育課程での啓発教育のカリキュラム化を 生涯を通じて5人に 1 人が精神疾患と診断されうるという現代。9割に上る家族が精神疾患に関する知識に乏しく情報から孤立している実態や障害者権利条約第8条「意識の向上」に、「教育制度のすべての段階(幼年期からのすべての児童に対する教育制度を含む)において、障害者の権利を尊重する態度を育成すること。」と明記されている以上、あらゆる教育段階において障害のあるなしにかかわらず、すべての児童生徒に教育すべきである。 精神疾患を含む心の健康の福祉教育は障害児者の人権啓発とともに、「精神疾患等に関する正しい知識を体感的に身に着けさせることは精神疾患患者の未治療期間の短縮となり、精神障害者の回復を早めることにもなる。更に、精神疾患に至らなくとも心に不調を感じた時にも対処方法を身につけられるという効果もある。 以上のようなことから義務教育段階からの心の健康に関する体感的な福祉教育は大切であると考える。また、教職員に対する研修も必要といえる。 以上は厚生労働省のメンタルリテラシーにも合致する。しかし、メンタルヘルスリテラシー」は、疾病に関する教育が、知識を増やすことには効果的であっても、精神障害者に対する態度の変容には影響がないことが、国際的にも、先行研究で明らかになっている。厚労省が「心の病気になってしまったら」との表記があるので仕方ないが、「なってしまう」という表現は、病気や障害をもつことへのネガティブなメッセージを内包したものである。そのため、逆に児童・生徒に新たなる精神疾患に対する誤解や偏見、さらには恐怖心を植えつけてしまう危険性をはらんでいることを懸念し「福祉教育」を実施することで、その危険性を回避していく計画も大事である。つまり、自分自身や自分に一番身近な人や友達の変化に敏感になり、察知したときに行動できるようになる福祉教育計画が大事である。 〈教育は最大の予防と偏見・差別の解消の手段〉 1.「心の病気(精神疾患)のこと」を誰もが知っているようにする 2.「心の病気は予防が大切であること」を教える 3.「心の病気に早く気づき」「もし心の病気になってしまったらどうしたらいい」「心の病気の人にどう接したらいい」について義務教育(小・中)と高等学校段階までに備える教育が重要。 例えば、オーストラリアの精神保健プログラムプログラム、マインドマターズなどが参考となる。(月刊みんなねっと2016年9月号特集「メンタルヘルスと福祉教育をめざして」、2015年10月号の特集「精神障がい・精神保健の正しい教育を」参照されたし)  【伊藤委員】 障害者基本計画(第3次)の「1.基本理念」にあるように、「すべての国民が、障害の有無にかかわらず(以下省略)」「社会への参加を制約している社会的な障壁を除去するために」は何を具体的に取り組むべきかを明確にしなければならないと考えます。その「障壁」とは人が作り出したものであり、具体的には人が作り出したものに他ならないと考えます。そのもっとも具体的な例は様々な分立した「法律」ではないでしょうか。人が作り出したものは人によって改革することも改編することも可能なはずです。将来に向けての理想も盛り込むべきではないでしょうか。 単に「谷間」の問題ではありません。全ての「障壁」を取り除かなければならないのです。まずは障害者手帳の在り方について検討を行うべきです。 障害であろうと、高齢であろうと、子どもであろうと、難病や長期の慢性疾患であろうと一切の区別をすることなく、社会の支援が必要な人には必要な支援を行うことを明示していただきたい。それを阻み、区別し、対象を選別するのは差別解消法の精神から見ても妥当なことではありません。政府が最も力を入れるべき課題であると思います。  【河井委員】 ・第4期障害福祉計画に障害児の項建ができた。障害者基本法においても必要と考える。 ※第4期障害福祉計画で障害児、特に医療的ケアに関して取り上げられることとなっているが、障害者基本計画での位置付けが無ければ必要ではないか。 ・平成27年1月から「小児慢性特定疾病児童等自立支援事業」が開始され、小慢児等の自立とは何かということから始まり、その対策等が議論されている。自立とは就業し、賃金を設ける事だけではなく、重症心身障害児者がいることにより周りの雰囲気が明るくなり、和やかさを醸し出す、というような事も自立の一種であるというような基本計画づくりをご検討願いたい。 ・障害者基本法で言われる「自立」とは「障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。」とあり、支援を得ながらも社会に参加していくことを目指している。一方介護保険法では「その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行う」とあり、日常生活での自立を目的としている。したがって、安易な介護保険優先の論理に迎合することなく、障害者の自立をしっかりとした文言として入れるべきであると考える。  【佐藤委員】 T.障害者基本計画(第4次)について ○位置づけ 障害者権利条約批准後、最初に立案される計画であることから、条約の完全実施に寄与する内容とすべきである。そのため、タイトルや構成を含めて、第3次計画から大きく刷新すべきである。 ○対象期間 対象期間については、国連障害者権利委員会による政府報告の審査の期間に対応して、現行のまま5年計画とすべきである。 ○構成 障害者権利条約との対応関係がわかりやすいように分野別施策の項目を再編すべきである。条約の条文構成は以下のとおりである。 第5条:平等及び無差別、第6条:障害のある女子、第7条:障害のある児童、第8条:意識の向上、第9条:施設及びサービス等の利用の容易さ、第10条:生命に対する権利、第11条:危険な状況及び人道上の緊急事態、第12条:法律の前にひとしく認められる権利、第13条:司法手続の利用の機会、第14条:身体の自由及び安全、第15条:拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由、第16条:搾取、暴力及び虐待からの自由、第17条:個人をそのままの状態で保護すること、第18条:移動の自由及び国籍についての権利、第19条:自立した生活及び地域社会への包容、第20条:個人の移動を容易にすること、第21条:表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会、第22条:プライバシーの尊重、第23条:家庭及び家族の尊重、第24条:教育、第25条:健康、第26条:ハビリテーション(適応のための技術の習得)及びリハビリテーション、第27条:労働及び雇用、第28条:相当な生活水準及び社会的な保障、第29条:政治的及び公的活動への参加、第30条:文化的な生活、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加、第31条:統計及び資料の収集、第32条:国際協力 たとえば、条約第6条、第12条、第13条、第23条、第31条は第3次計画から欠落している。また、条約第9条、第20条については第3次計画で「生活環境」に、第15条、第16条については「権利擁護の推進」に、第29条については「選挙等における配慮等」にまとめられているが、条約の規定からは不十分である。さらに、条約第30条の規定や東京オリパラの開催を踏まえ、「教育、文化芸術活動・スポーツ等」としてひと括りにすべきではない。 U.基本的な考え方 ○基本理念 日本が条約を批准して最初の計画作成であることから、冒頭に条約の目的(第1条前段)、社会モデル(第1条後段)、原則(第3条)を明記すべきである。 ○基本原則 条約第6条を踏まえ、障害のある女性に対する複合的差別の解消を追加すべきである。 また、原則規定であることから、障害者基本法第3条を根拠としている「地域社会における共生等」の「可能な限り」の文言(2ヵ所)を削除すべきである。 さらに、条約第2条において、 「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。 とされており、これを「差別の禁止」に盛り込むべきである。 ○国際的協調 条約第37条で締約国と国連障害者権利委員会の協力が規定されていることから、日本が条約を批准したことを踏まえ、この趣旨を盛り込むべきである。 基本原則 (3)国際的な協調 2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の実施については、内閣府の基にSDGs推進本部が設置され、SDGs実施指針の策定が進められている。このSDGsのゴールや指標の中には、障害者について言及がなされている。本基本計画においても、SDGs達成のための取り組みについて盛り込むべきである。 ○権利条約に相応する項目立てをして、欠格条項見直しをその中で扱うこと(再掲) 欠格条項の見直しは、障害者権利条約第四条「一般的義務」1項b(※)との対応で取り扱われるべき基本的課題であり、第四次障害者基本計画では、権利条約に相応するような項目を立てて(例: 社会的障壁の除去、権利擁護)、その中で扱うべきである。 ※ 条約第四条1項b 障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止するための全ての適当な措置(立法を含む。)をとること。  【柘植委員】 ・用語の問題(英語訳と日本語訳) “inclusion” “full inclusion” “inclusive” “inclusive education” “inclusive society” “social inclusion” ・・・等の用語の日本語訳が統一されていない(省庁間で、さらには同一省庁の中でも)ので、整理する(各省庁横断的に、全体的に目配りして)。 それらの用語は、日本語では、共生社会 インクルーシブ インクルーシブ教育 インクルーシブ教育システム、包容、包容する教育、包摂、社会的包摂…。 (中央教育審議会の教育振興基本計画部会(第7回、第8回)での発言。障害者政策委員会(第30回 2016年10月21日(金))での発言。) 今後の障害者政策が、一般国民にも分かりやすいものにするために。 この分野の学術研究の一層の充実につなげるために。 この分野を国際的な視点から捉えるために(国際比較を容易にするためにも)。  【山崎委員】 憲法に規定される幸福追求権や生存権の観点から計画を作成すべき。   U 分野横断的事項  【安藤委員】 ■通学中、学校内、通勤中、職場内での人的支援の提供の在り方について 障害者差別解消法および改正障害者雇用促進法の施行により、学校設置者や雇用主について合理的配慮の提供義務が課せられた。 しかし、障害者政策委員会差別禁止部会の「『障害を理由とする差別の禁止に関する法制』についての差別禁止部会の意見」(平成24年9月14日)や社会保障審議会障害者部会の「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」(平成27年12月14日)に見られるように、通学中、学校内、通勤中、職場内での人的支援が合理的配慮によって提供されるべきなのか福祉サービスによって提供されるべきなのかについて、未だ結論が出ていない。 一方で、平成30年4月1日に施行される改正障害者総合支援法では、重度訪問介護について、医療機関への入院時も一定の支援を可能とすることが盛り込まれている。これは、医療機関による合理的配慮と福祉サービスの役割分担のなかで、福祉サービスが一歩踏み込んだ事例である。 したがって、長年の課題となっている通学中、学校内、通勤中、職場内の人的支援についても、早期に結論を出すべきである。  【石川委員長】 ・障害統計の整備  【石野委員】 どの分野においても、まずその情報に「自由に・確実に」アクセスできる環境を整えることを明記する必要があるのではないか。 障害者にとって、情報の取得の「しやすさ」、取得した情報の「わかりやすさ」はそれぞれの権利を行使するためにも「情報アクセシビリティ」に配慮することは分野に関わらず必要な「環境整備」として考えるべきである。  【大日方委員】 障害者に関する統計の取り方について、ニーズを正確に把握するための調査の工夫、あり方について検討することが必要。 障害者手帳を持たない高齢障害者の増加、障害者の多様な暮らし方の変化に柔軟に対応していくためにも、また、就労状況や生活支援などにおいて性別の違いにより、どのような配慮が必要なのかなど、政策を検討するために必要な実態を把握しやすくするための工夫が必要。障害のある女性の権利を守る取組を行うためにも、統計の取り方を工夫する必要がある。  【加藤委員】 〇障害児者が地域で生きる時、彼らの各種様々なニーズに対して一個人、一職種、一機関で完結することはありえない。結果として縦横の時間的・空間的な各種連携が不可欠である。それらを促進するための制度的な規制緩和策や促進策が必要である。 〇縦横連携の効果的で効率的な展開のためには当事者の情報の共有が不可欠となる。そのためのtoolとしてのハード、ソフト両面からの手立ての構築が不可欠である。もちろん、この情報の所有者は本人であることは言を俟たない。  【河井委員】 ・高齢障害者の課題 生活支援、社会参加、スポーツ、芸術等に関して 包括ケアシステムとの関わり  【佐藤委員】 U.基本的な考え方 ○インクルージョンについて 条約第3条で「包容」(インクルージョン)の原則が掲げられ、また、第19条、第24条、第26条、第27条などの各則でも「包容」(インクルージョン)に言及されている。特に第19条は、保護の客体から障害のない人と平等な権利の主体へパラダイムを転換する、この条約の基礎となる条文とされている。よって、すべての分野においてインクルージョンの観点から施策が進められるべきであり、「各分野に共通する横断的視点」に盛り込むべきである。 ○立法府や司法府に関する事項について 条約第1条では「全ての障害者によるあらゆる人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、及び確保すること」が目的とされていることから、立法府や司法府における条約の実施状況についても監視が求められている。 当面、この監視が適切に行われるように、両者の協力を得ながら障害者政策委員会として状況把握をできるようにすべきである。 その上で、立法府と司法府に関する監視の具体的な体制を、国として第4次計画の期間中に構築すべきである。 ○障害者の自己決定の尊重及び意思決定の支援 条約第12条に関する国連障害者権利委員会の一般的意見第一号(2014年5月19日版)では、 法的能力の行使における支援では、障害のある人の権利、意思及び選好を尊重し、決して代理人による意思決定を行うことになってはならない。 とされており、意思決定の支援については、これを踏まえ行うべきである。 ○欠格条項に代表される法制度の障壁の総点検と根本的な見直し(再掲) 2001年から2002年にかけて主な法令の欠格条項見直し改正がされたが、それ以降は包括的な調査及び見直し作業は行なわれていない。この間に権利条約採択と日本政府の批准、差別解消法の施行という進展があったことを反映できていない。従って、第三次基本計画※1を継承しつつ、「行政サービス」という区分にとどまらず、欠格条項に代表される法制度の障壁の総点検と根本的な見直しに取り組む第四次基本計画策定が求められている。 ○成年被後見人等の権利の制限に係る関係法律改正(※2)(再掲) 欠格条項見直しと重なることで、併せて扱われなければならない。この課題の遂行、及び、成年後見制度のありかたについて、権利条約に照らして成年後見制度利用促進委員会のみならず政策委員会においても(例えば合同の会議を設けることも含めて)更なる議論が必要である。 ○SDGs実施枠組みでの障害者問題の主流化を 2015年に採択されたSDGsは、「誰も取り残されない世界の実現」を目指しており、その目標達成のために実施される国内外での取り組みにおいて、障害者や女性への配慮が不可欠となっている。SDGs実施指針案の主要原則の中には、包摂性と参加型が明記されていることから、今後SDGs推進本部を中心としたSDGs実施過程において、障害の問題を女性や子供等と同様、横断的な課題とし、障碍者団体の代表が参加する形での省庁横断的なステークホルダー会議の設置や、円卓会議への障害者団体の代表の参加等、国内外におけるSDGs実施枠組みを障害者の問題を主流化した形で策定できるよう努める必要がある。また、SDGsの指標の達成状況をしるための基礎データを収集するため、適切な統計データを取るための調査が必要である。 ※1 第三次障害者基本計画 9.行政サービス等における配慮(4)国家資格に関する配慮等 ○ 各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、試験の実施等において必要な配慮を提供するとともに、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨も踏まえ、技術の進展、社会情勢の変化等の必要に応じた見直しを検討する。9-(4)-1  ※2 「成年後見利用促進法」第9条「成年被後見人等の権利の制限に係る関係法律の改正その他の同条に定める基本方針に基づく施策を実施するため必要な法制上の措置については、この法律の施行後三年以内を目途として講ずる」  【柘植委員】 ・発達障害児者の教育や福祉等の横断的な事項(教育分野における「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の他分野との接続) 改正された発達障害者支援法(教育(第8条))に「個別の指導計画」「個別の教育支援計画」の作成と活用について明記されたことを踏まえて、発達障害児者の早期から生涯に渡る必要な支援を、それぞれの年齢やライフステージや機関等で閉じることなく、個人情報の保護の視点も踏まえながら、包括的な一つの計画として構築し運用する。(諸外国の先進的な制度や実践を参考にして) そもそも、作成を奨励するのではなく、法令上作成を義務付ける必要がある。(諸外国の先進的な実態を踏まえて。) ・大学における発達障害者への就労支援の充実 すべての大学・高等専門学校における発達障害学生への支援プログラムの構築を行う。 発達障害支援コーディネーターの創設の検討も。  【山崎委員】 @事業所やグループホームを既存の建物や住居を活用して整備する際に障壁となる法律(建築基準法や消防法)については、障害者の地域移行などが阻まれることのないよう規制緩和に向けた省庁間の連携の強化と速やかな対応が図られるべきである。 A障害のある方の日中活動の場や施設で生産した生産品等の販売などが広く行えるよう、民間施設(鉄道の駅や空港など)であれば社会貢献としての場所の提供、また、公共施設(公園など)の利用における規制緩和など更なる推進がなされるべきである。 B障害福祉計画との連動性のある計画にし、抽象的な文言ではなく、実態調査など現状を把握したうえで、より実現可能性のある実施計画を盛り込むべき。 C幼児期から成人期、高齢期までシームレスな仕組みにすべき。