資料2-1   障害者基本計画(第4次) 本文案   平成29年6月23日   Ⅲ 各分野における障害者施策の基本的な方向   9.教育の振興  【基本的考え方】 障害の有無によって分け隔てられることなく、国民が相互に人格と個性を尊重し合う共生社会の実現に向け、障害の有無にかかわらず、可能な限り共に教育を受けることのできる仕組みを構築するとともに、障害に対する理解を深めるための取組を推進する。また、高等教育における障害学生に対する支援を推進するため、合理的配慮の提供等の一層の充実を図るとともに、障害学生に対する適切な支援を行うことができるよう環境の整備に努める。さらに、障害者が社会においてその能力を発揮し、自己実現を図ることができるよう、障害者が学校教育のみならず生涯にわたってその年齢、能力、障害の特性等を踏まえた教育を受けられるように取り組む。  (1) インクルーシブ教育システムの推進 ○障害の有無にかかわらず、可能な限り共に教育を受けられるような条件整備に努めるとともに、自立と社会参加を見据えて、個々の児童生徒の教育的ニーズに応じた教育が提供されるよう、小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の整備を推進する。9-(1)-1 ○平成29年3月の義務標準法の改正により、小・中学校における通級指導担当教員に係る定数が基礎定数化されたことや、高等学校においても通級による指導が行えるようになったことを踏まえ、通級による指導がより一層普及するよう努める。9-(1)-2 ○障害のある児童生徒の就学先決定に当たっては、本人・保護者に対する十分な情報提供の下、本人・保護者の意見を最大限尊重しつつ、本人・保護者と市町村教育委員会、学校等が、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うことを原則とすること、また、発達の程度や適応の状況等に応じて、柔軟に「学びの場」を変更できることについて、引き続き、関係者への周知を行う。9-(1)-3 ○障害のある児童生徒に対する合理的配慮については、児童生徒一人一人の障害の状態や教育的ニーズ等に応じて設置者・学校と本人・保護者間で可能な限り合意形成を図った上で決定し、提供されることが望ましいことを引き続き周知する。9-(1)-4 ○校長のリーダーシップの下、特別支援教育コーディネーターを中心とした校内支援体制を構築するとともに、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、看護師、ST(言語聴覚士)、OT(作業療法士)、PT(理学療法士)等の専門家及び特別支援教育支援員の活用を図ることで、学校が組織として、障害のある児童生徒の多様なニーズに応じた支援を提供できるよう促す。9-(1)-5 ○発達障害などを早期に発見し適切な支援につなげるため、医療、保健、福祉等との連携の下、就学時健診の結果等を踏まえ、早期からの教育相談・支援体制の充実を図る。9-(1)-6 ○障害者が就学前から卒業後まで切れ目ない指導・支援を受けられるよう、子どもの成長記録や指導内容等に関する情報を、情報の取扱いに留意しながら、必要に応じて関係機関間で共有・活用するとともに、保護者の参画を得つつ、医療、保健、福祉、労働等との連携の下、個別の教育支援計画の策定・活用を促進する。9-(1)-7 ○障害のある児童生徒の後期中等教育への就学を促進するため、個別のニーズに応じた入学試験における配慮の充実を図る。9-(1)-8 ○福祉、労働等との連携の下、障害のある児童生徒のキャリア教育や就労支援の充実を図る。9-(1)-9  (2) 教育環境の整備 ○特別支援学校教員の特別支援学校教諭等免許状保有率の向上など、特別支援教育に関する教職員の専門性の向上に努めるとともに、全ての教員を対象とした特別支援教育に対する理解を深める取組を推進する。9-(2)-1 ○特別支援学校の地域における特別支援教育のセンターとしての機能充実と相まって、通常の学校における特別支援教育の体制整備の促進に努める。9-(2)-2 ○情報通信技術(ICT)の発展等も踏まえつつ、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教科書をはじめとする教材や支援機器の活用を促進する。9-(2)-3 ○学校施設のバリアフリー化や特別支援学校の教室不足解消に向けた取組等を推進する。9-(2)-4  (3) 高等教育における障害学生支援の推進 ○大学等が提供する様々な機会において、障害のある学生が障害のない学生と平等に参加できるよう、授業等における情報保障やコミュニケーション上の配慮、教科書・教材に関する配慮等及び施設のバリアフリー化を促進する。9-(3)-1 ○各大学等における相談窓口の統一や支援担当部署の設置、支援人材の養成・配置など、支援体制の整備や、大学間連携等の支援担当者間ネットワークの構築を推進する。9-(3)-2 ○障害のある大学生の就職を支援するため、学内の修学支援担当と就職支援担当、障害のある学生への支援を行う部署等の連携を図り、学外における、地域の労働・福祉機関等就職・定着支援を行う機関、就職先となる企業・団体等との連携やネットワークづくりを促進する。9-(3)-3 ○障害のある学生の支援について理解促進・普及啓発を行うため、その基礎となる調査研究や様々な機会を通じた情報提供、教職員に対する研修等の充実を図る。9-(3)-4 ○大学入試センター試験において実施されている障害のある受験者の配慮については、障害者一人一人のニーズに応じて、より柔軟な対応に努めるとともに、高等学校及び大学関係者に対し、配慮の取組について、一層の周知を図る。9-(3)-5 ○障害のある学生の能力・適性、学習の成果等を適切に評価するため、大学等の入試や単位認定等の試験における適切な配慮の実施を促進する。9-(3)-6 ○大学等の入試における配慮の内容、施設のバリアフリー化の状況、学生に対する支援内容・支援体制、障害のある学生の受入れ実績等に関する大学等の情報公開を促進する。9-(3)-7  (4) 生涯を通じた多様な学習活動の充実 ○障害者の生きがいづくりや社会参加に向け、障害者が生涯にわたり教育やスポーツ、文化などの様々な機会に親しむことができるよう、多様な学習活動を行う機会を提供・充実する。9-(4)-1   10.文化芸術活動・スポーツ等の振興  【基本的考え方】 全ての障害者の芸術及び文化活動への参加を通じて、障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与する。また、レクリエーション活動を通じて、障害者等の体力の増強や交流、余暇の充実等を図る。さらに、地域における障害者スポーツの一層の普及に努めるとともに、競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化を図る。  (1) 文化芸術活動、余暇・レクリエーション活動の充実に向けた社会環境の整備 ○特別支援学校において、一流の文化芸術活動団体による実演芸術の公演や、芸術家を派遣し、特別支援学校の子供たちに対し質の高い文化芸術の鑑賞・体験等の機会を提供するとともに、小・中学校等の子供たちに、障害のある芸術家等を派遣し、文化芸術活動の機会の充実を図る。10-(1)-1 ○障害者が地域において文化芸術活動に親しむことができる施設・設備の整備等を進めるとともに、障害者のニーズに応じた文化芸術活動に関する人材の養成、相談体制の整備、関係者のネットワークづくり等の取組を行い、障害の有無にかかわらず文化芸術活動を行うことのできる環境づくりに取り組む。特に、障害者の文化芸術活動に対する支援や、障害者の芸術作品の展示等の推進を図る。10-(1)-2 ○国立博物館、国立美術館、国立劇場等における文化芸術活動の公演、展示等において、字幕や音声案内サービスの提供等、障害者のニーズに応じた工夫・配慮が提供されるよう努める。10-(1)-3 ○全ての障害者の芸術及び文化活動への参加を通じて障害者の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害者の自立と社会参加の促進に寄与するため、障害者芸術・文化祭を開催し、障害者の文化芸術活動の普及を図る。また、民間団体等が行う文化芸術活動等に関する取組を支援する。10-(1)-4 ○文化芸術振興費補助金において、聴覚に障害を持つ方々のためのバリアフリー字幕及び視覚に障害を持つ方々のための音声ガイド制作支援を行うことにより、我が国の映像芸術の普及・振興を図る。10-(1)-5 ○レクリエーション活動を通じて、障害者等の体力増強、交流、余暇等に資するため、各種レクリエーション教室や大会・運動会などを開催し、障害者等が社会参加活動を行うための環境の整備や必要な支援を行う。10-(1)-6  (2) スポーツに親しめる環境の整備、パラリンピック等競技スポーツに係る取組の推進 ○障害者が地域においてスポーツに親しむことができる施設・設備の整備等を進めるとともに、障害者のニーズに応じたスポーツに関する人材の養成等の取組を行い、障害の有無にかかわらずスポーツを行うことのできる環境づくりに取り組む。10-(2)-1 ○全国障害者スポーツ大会の開催を通じて障害者スポーツの普及を図るとともに、民間団体等が行うスポーツ等に関する取組を支援する。特に、身体障害者や知的障害者に比べて普及が遅れている精神障害者のスポーツの振興に取り組む。10-(2)-2 ○パラリンピック、デフリンピック、スペシャルオリンピックス等への参加の支援等、スポーツ等における障害者の国内外の交流を支援するとともに、パラリンピック等の競技性の高い障害者スポーツにおけるアスリートの育成強化を図る。10-(2)-3 ○2020年に全国の特別支援学校でスポーツ・文化・教育の全国的な祭典を開催することにより、2020年東京大会のレガシーとして地域の共生社会の拠点づくりを推進する。10-(2)-4   11.国際協力の推進  【基本的考え方】 障害者権利条約の締約国として、障害者権利委員会による審査等に誠実に対応するとともに、障害者施策を国際的な協調の下に推進するため、障害分野における国際的な取組に積極的に参加する。また、開発協力の実施に当たっては、障害者を含む社会的弱者に特に焦点を当て、その保護と能力強化を通じて、人間の安全保障の実現に向けた我が国の理念が国際社会において主流化するよう取り組む。さらに、文化芸術活動やスポーツ等の分野を含め、障害者の国際交流等を推進する。  (1) 国際社会に向けた情報発信の推進等 ○我が国の障害者施策について、国連や地域の国際機関等、国際的な非政府機関における障害者のための取組への積極的な参加や、障害者権利委員会による審査等への誠実な対応も含めて、その特徴や先進性に留意しつつ、対外的な情報発信を推進する。11-(1)-1 ○障害者権利委員会を始めとする国際機関や外国政府等の障害者施策に関わる情報の収集及び提供に努める。11-(1)-2  (2) 国際的枠組みとの連携の推進 ○障害者施策は国際的な協調の下に行われることが必要であり、国連や地域の国際機関等、国際的な非政府機関における障害者のための取組に積極的に参加するほか、障害者権利条約の締約国として、障害者権利委員会による審査等に誠実に対応する。11-(2)-1 ○平成25(2013)年から10年間の「アジア太平洋障害者の十年(2013~2022)」について、アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)事務局や他加盟国と十分に連携しながら、域内の障害分野における国際協力に積極的に取り組む。11-(2)-2  (3) 政府開発援助を通じた国際協力の推進等 ○「開発協力大綱」(平成27年2月10日閣議決定)に基づき、開発協力の実施に当たっては、相手国の実情やニーズを踏まえるとともに、障害者を含む社会的弱者に特に焦点を当て、その保護と能力強化を通じて、人間の安全保障の実現に向けた努力を行い、相手国においてもこうした我が国の理念が理解され、浸透するように努め、国際社会における主流化を一層推進する。11-(3)-1 ○開発途上国において障害分野における活動に携わる組織・人材の能力向上を図るため、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れや専門家の派遣等の協力を行う。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力等を通じて、各障害分野における活動を行う現地のNGO等に対する支援を行う。11-(3)-2 ○障害分野における国際協力の実施に当たっては、支援の提供と受入れの両面における障害者の参画を得るように努める。11-(3)-3  (4) 障害者の国際交流等の推進 ○障害者団体等による国際交流や障害分野において社会活動の中核を担う青年リーダーの育成を支援するとともに、途上国における障害者関連事業に携わる我が国のNGOに対して支援を行う。11-(4)-1 ○文化芸術活動、スポーツ等の分野における障害者の国際的な交流を支援する。また、スポーツ外交推進の観点から、「スポーツ外交推進事業」を通じて、スポーツ選手や指導者等の派遣・招へい、スポーツ器材輸送支援を推進する中で、障がい者スポーツに関しても選手及び関係者の招へいを実施する。11-(4)-2