資料1-1   障害者基本計画(第4次) 本文案   平成29年8月7日   Ⅲ 各分野における障害者施策の基本的な方向   8.雇用・就業、経済的自立の支援  【基本的考え方】 障害者が地域で質の高い自立した生活を営むためには就労が重要であるとの考え方の下、働く意欲のある障害者がその適性に応じて能力を十分に発揮することができるよう、一般就労を希望する者に対しては多様な就業の機会を確保するとともに、一般就労が困難な者に対しては福祉的就労の底上げにより工賃の水準の向上を図るなど、総合的な支援を推進する。 また、雇用・就業の促進に関する施策との適切な組み合わせの下、年金や諸手当の支給、経済的負担の軽減等により障害者の経済的自立を支援する。  (1) 総合的な就労支援 ○福祉、教育、医療等から雇用への一層の推進のため、ハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターを始めとする地域の関係機関が密接に連携して、職場実習の推進や雇用前の雇入れ支援から雇用後の職場定着支援までの一貫した支援を実施する。8-(1)-1 ○ハローワークにおいて、障害の種類・程度に応じたきめ細かな職業相談・紹介、職場適応指導等を実施する。8-(1)-2 ○障害者雇用への不安を解消するため、トライアル雇用の推進等の取組を通じて、事業主の障害者雇用への理解の促進を図る。8-(1)-3 ○障害者を雇用するための環境整備等に関する各種助成金制度を活用し、障害者を雇用する企業に対する支援を行う。 あわせて、障害者雇用に関するノウハウの提供等に努める。8-(1)-4 ○地域障害者職業センターにおいて、障害者に対する専門的な職業リハビリテーションを行うとともに、事業主に対して雇用管理に関する助言等の支援を行う。また、障害者の職場への適応を促進するため、職場適応援助者(ジョブコーチ)による直接的・専門的な支援を行うとともに、地域の就労支援機関等に対し、職業リハビリテーションサービスに関する技術的な助言・援助等を行い、地域における障害者の就労支援の担い手の育成と専門性の向上を図る。8-(1)-5 ○障害者の身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点である障害者就業・生活支援センターの設置の促進・機能の充実を図り、障害者に対し就業面及び生活面からの一体的な相談支援を実施する。また、地域の就労支援機関と連携をしながら、継続的な職場定着支援を実施する。8-(1)-6 ○障害者職業能力開発校における障害の特性に応じた職業訓練、技術革新の進展等に対応した在職者訓練等を実施するとともに、一般の公共職業能力開発施設において障害者向けの職業訓練を実施するほか、民間教育訓練機関等の訓練委託先を活用し、障害者の身近な地域において障害者の態様に応じた多様な委託訓練を実施する。また、障害者の職業能力の開発・向上の重要性に対する事業主や国民の理解を高めるための啓発に努める。8-(1)-7 ○就労移行支援事業所等において、一般就労をより促進するため、積極的な企業での実習や求職活動の支援(施設外支援)等の推進を図る。8-(1)-8  (2) 経済的自立の支援 ○障害者が地域で質の高い自立した生活を営むことができるよう、雇用・就業(自営業を含む。)の促進に関する施策との適切な組み合わせの下、年金や諸手当を支給するとともに、各種の税制上の優遇措置を運用し、経済的自立を支援する。また、受給資格を有する障害者が、制度への理解が十分でないことにより、障害年金を受け取ることができないことのないよう、制度の周知に取り組む。さらに、年金生活者支援給付金制度の着実な実施により所得保障の充実を図るとともに、障害者の実態把握に係る調査を引き続き実施していく中で、所得状況の把握についてはその改善を検討する。8-(2)-1 ○特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律(平成16年法律第166号)に基づき、同法にいう特定障害者に対し、特別障害給付金を支給する。8-(2)-2 ○障害者による国や政府関係法人が所有・管理する施設の利用等に当たり、その必要性や利用実態を踏まえながら、利用料等に対する割引・減免等の措置を講ずる。8-(2)-3  (3) 障害者雇用の促進 ○障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度を中心に、引き続き、障害者雇用の促進を図る。平成25(2013)年の障害者雇用促進法の改正により、精神障害者の雇用が義務化(平成30(2018)年4月施行)されたことも踏まえ、精神障害者の雇用の促進のための取組を充実させる。8-(3)-1 ○障害者雇用ゼロ企業をはじめ、法定雇用率を達成していない民間企業については、公共職業安定所(ハローワーク)による指導などを通じ、法定雇用率の達成に向けた取組を進める。また、国の機関や地方公共団体等に対しては、民間企業に率先垂範して障害者雇用を進める立場であることを踏まえ、適切に指導等を行う。8-(3)-2 ○特例子会社制度等を活用し、引き続き、障害者の職域の拡大及び職場環境の整備を図るとともに、いわゆるダブルカウント制度等により、引き続き、重度障害者の雇用の拡大を図る。8-(3)-3 ○一般企業等への就職につなげることを目的として、各府省において知的障害者等を非常勤職員として雇用し、1から3年の業務を経験するチャレンジ雇用を実施する。8-(3)-4 ○都道府県労働局において、使用者による障害者虐待の防止など労働者である障害者の適切な権利保護のため、個別の相談等への丁寧な対応を行うとともに、関係法令の遵守に向けた指導等を行う。8-(3)-5 ○都道府県労働局及びハローワークにおいて、雇用分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供に係る相談・通報等があった場合は、必要に応じて指導等を行うとともに、当事者からの求めに応じ、第三者による調停等の紛争解決援助を行う。[再掲]8-(3)-6  (4) 障害特性に応じた就労支援及び多様な就業の機会の確保 ○精神障害、発達障害等の特性に応じた支援の充実・強化を図る。また、採用後に障害を有することとなった者についても、円滑な職場復帰や雇用の安定のための施策を講じる。8-(4)-1 ○職場内で精神・発達障害のある同僚を温かく見守る精神・発達障害者しごとサポーターの養成講座を開催するなどにより精神障害に関する事業主等の理解を一層促進するとともに、精神・発達障害者の特性に応じた支援の充実・強化を通じて、精神障害者の雇用拡大と定着促進を図る。精神障害者に対する就労支援に当たっては、就労支援機関が医療機関と連携を図りつつ、「医療」から「雇用」への流れを一層促進する。また、ハローワーク等において発達障害者、難病患者等に対する専門的な支援の強化を図る。8-(4)-2 ○短時間労働や在宅就業、自営業など障害者が多様な働き方を選択できる環境を整備するとともに、情報通信技術(ICT)を活用したテレワーク の一層の普及・拡大を図り、時間や場所にとらわれない働き方を推進する。8-(4)-3 ○障害者優先調達推進法に基づき、障害者就労施設等の提供する物品・サービスの優先購入(調達)を推進する。8-(4)-4 ○障害者の就労訓練及び雇用を目的とした福祉農園の整備を推進する(「農」と福祉の連携プロジェクト)。8-(4)-5 ○ 農業に取り組む障害者就労施設等に対する情報提供、6次産業化支援等を通じて、農業分野での障害者の就労支援を推進する。8-(4)-6  (5) 福祉的就労の底上げ ○事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進するなど、就労継続支援A型も含めた福祉的就労の底上げを図るとともに、その在り方を検討する。8-(5)-1 ○障害者優先調達推進法に基づき、障害者就労施設等の提供する物品・サービスの優先購入(調達)を推進する。[再掲]8-(5)-2   4. 差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止  【基本的考え方】 社会のあらゆる場面において障害を理由とする差別の解消を進めるため、地方公共団体、障害者団体等の様々な主体の取組との連携を図りつつ、事業者や国民一般の幅広い理解の下、環境の整備に係る取組を含め、障害者差別の解消に向けた取組を幅広く実施することにより、障害者差別解消法等の実効性ある施行を図る。 また、障害者虐待防止法の適正な運用を通じて障害者虐待を防止するとともに、障害者の権利侵害の防止や被害の救済を図るため、相談・紛争解決体制の充実等に取り組むことにより、障害者の権利擁護のための取組を着実に推進する。  (1) 権利擁護の推進、虐待の防止 ○障害者虐待防止法に関する積極的な広報・啓発活動を行うとともに、同法の適切な運用を通じ、障害者虐待の防止及び養護者に対する相談等の支援に取り組む。4-(1)-1 ○障害者本人に対する意思決定支援を踏まえた自己決定を尊重する観点から、意思決定支援ガイドラインの普及を図るとともに、成年後見制度の適切な利用の促進に向けた取組を進める。4-(1)-2 ○当事者等により実施される障害者の権利擁護のための取組を支援する。4-(1)-3 ○障害者に対する差別及びその他の権利侵害を防止し、その被害からの救済を図るため、相談・紛争解決等を実施する体制の充実等に取り組むとともに、その利用の促進を図る。4-(1)-4 ○知的障害又は精神障害(発達障害を含む。)により判断能力が不十分な者による成年後見制度の適正な利用を促進するため、必要な経費について助成を行うとともに、後見等の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う。4-(1)-5 ○成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度(いわゆる欠格条項)については、成年後見制度利用促進法及び成年後見制度利用促進基本計画を踏まえて、今後、検討を加え、必要な見直しを行う。4-(1)-6  (2) 障害を理由とする差別の解消の推進 ○障害者差別解消法並びに同法に基づく基本方針、対応要領及び対応指針に基づき、障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止や、障害者に対する必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)の提供を徹底するなど、障害を理由とする差別の解消に向けて着実に取組を進めるとともに、事業者が適切に対応できるよう必要な対応を行う。4-(2)-1 ○障害者差別解消法及び同法に基づく基本方針に基づき、社会的障壁の除去の実施についての合理的配慮を的確に行うため、技術進歩の動向を踏まえつつ、ハード面でのバリアフリー化施策、情報の取得・利用・発信におけるアクセシビリティ向上のための施策、職員に対する研修等の環境の整備の施策を着実に進める。その際、各施策分野の特性を踏まえつつ、当該施策分野における環境の整備に係る具体的な考え方等を指針等において具体化するなど、施策の円滑な実施に配意する。4-(2)-2 ○地域における障害を理由とする差別の解消を推進するため、都道府県とも連携しつつ、地方公共団体における対応要領の策定及び障害者差別解消支援地域協議会の組織の促進に向けた取組を行う。4-(2)-3 ○障害者差別解消法の意義や趣旨について幅広い国民の理解を深めるため、内閣府を中心に、関係省庁、地方公共団体、事業者、障害者団体等の多様な主体との連携により、同法の一層の浸透に向けた各種の広報・啓発活動を展開する。4-(2)-4 ○都道府県労働局及びハローワークにおいて、雇用分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供に係る相談・通報等があった場合は、必要に応じて指導等を行うとともに、当事者からの求めに応じ、第三者による調停等の紛争解決援助を行う。4-(2)-5 ○障害者に対する差別及びその他の権利侵害を防止し、その被害からの救済を図るため、相談・紛争解決等を実施する体制の充実等に取り組むとともに、その利用の促進を図る。[再掲]4-(2)-6 ○心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律の対象者の社会復帰の促進を図るため、同法対象者に対する差別の解消を進める。4-(2)-7 ※本基本計画においては、障害者に対する合理的配慮の提供や環境の整備等に関する取組については、原則として各分野において掲載している(例えば、行政サービス等の分野における配慮等は7に、教育分野における配慮等は9に掲載。)。   7. 行政等における配慮の充実  【基本的考え方】 障害者がその権利を円滑に行使できるよう、司法手続や選挙等において必要な環境の整備や障害特性に応じた合理的配慮の提供を行う。また、行政機関の窓口等における障害者への配慮を徹底するとともに、行政情報の提供等に当たっては、ICT等の利活用も検討し、可能なものは積極的に導入するなど、アクセシビリティへの配慮に努める。さらに、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨も踏まえ、技術の進展、社会情勢の変化等の必要に応じた不断の見直しを行う。  (1) 司法手続等における配慮等 ○被疑者あるいは被告人となった障害者がその権利を円滑に行使することができるよう、刑事事件における手続の運用において、障害者の意思疎通等に関して適切な配慮を行う。あわせて、これらの手続に携わる職員に対して、障害や障害者に対する理解を深めるため必要な研修を実施する。7-(1)-1 ○知的障害等によりコミュニケーションに困難を抱える被疑者等に対する取調べの録音・録画や心理・福祉関係者の助言等の取組を継続するとともに、更なる検討を行う。7-(1)-2 ○矯正施設に入所する障害者に対して、社会復帰支援のためのプログラムの提供を促進するとともに、これらの施設の職員に対して必要な研修を実施する。7-(1)-3 ○矯正施設に入所する累犯障害者等の円滑な社会復帰を促進するため、地域生活定着支援センターにおいて、保護観察所等の関係機関と連携の下、矯正施設に入所する累犯障害者等が出所等後に必要な福祉サービスを受けるための支援を行う。7-(1)-4 ○弁護士、弁護士会、日本弁護士連合会、日本司法支援センター(法テラス)等の連携の下、罪を犯した知的障害者等の社会復帰の障害となり得る法的紛争の解決等に必要な支援を行うなど、再犯防止の観点からの社会復帰支援の充実を図る。7-(1)-5  (2) 選挙等における配慮等 ○政見放送への手話通訳・字幕の付与、点字、音声、拡大文字又はインターネットを通じた候補者情報の提供等、情報通信技術(ICT)の進展等も踏まえながら、障害特性に応じた選挙等に関する情報提供の充実に努める。7-(2)-1 ○移動に困難を抱える障害者に配慮した投票所のバリアフリー化、障害者の利用に配慮した投票設備の設置、投票所における投票環境の向上に努めるとともに、障害者が自らの意思に基づき円滑に投票できるよう、代理投票の適切な実施等の取組を促進する。7-(2)-2 ○指定病院等における不在者投票、郵便等による不在者投票の適切な実施の促進により、選挙の公正を確保しつつ、投票所での投票が困難な障害者の投票機会の確保に努める。7-(2)-3  (3) 行政機関等における配慮及び障害者理解の促進等 ○各行政機関等における事務・事業の実施に当たっては、障害者差別解消法に基づき、障害者が必要とする社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮(合理的配慮)を行うとともに、ソフト・ハードの両面にわたり、合理的配慮を的確に行うために必要な環境の整備を着実に進める。7-(3)-1 ○行政機関の職員等に対する障害者に関する理解を促進するため、より一層の理解の促進が必要な障害や、外見からは分かりにくい障害の特性、求められる配慮等を含めて必要な研修を実施し、窓口等における障害者への配慮の徹底を図る。7-(3)-2 ○各府省における行政情報の提供等に当たっては、アクセシビリティに配慮したICTを始めとする新たな技術の利活用について検討を行い、利活用が可能なものについては積極的な導入を推進するなど、アクセシビリティに配慮した情報提供に努める。7-(3)-3  (4) 国家資格に関する配慮等 ○各種の国家資格の取得等において障害者に不利が生じないよう、試験の実施等に当たり障害特性に応じた合理的配慮を提供するとともに、いわゆる欠格条項について、各制度の趣旨も踏まえ、技術の進展、社会情勢の変化等の必要に応じた不断の見直しを行う。7-(4)-1 (以上)