資料2-1 表紙   大阪府における障がい者差別解消の取組み      大阪府福祉部障がい福祉室障がい福祉企画課 p1   府の取組み方針  法に具体的な定めがなく、地方公共団体の取組みに委ねられている「相談、紛争の防止・解決の体制整備(第14条)」及び「普及・啓発活動の実施」(第15条)について条例で規定し、車の両輪として差別解消に取り組む。(「法補完型」の条例)   啓発活動 大阪府障がい者差別解消条例(平成28年4月施行) ○差別解消に向けた啓発活動を府の責務に位置付け 大阪府障がい者差別解消ガイドライン ○何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいか等、府民の関心と理解を深めることを目的に平成27年3月作成。(平成30年3月改訂) ○6分野(商品/サービス、福祉サービス、公共交通機関、住宅、教育、医療)ごとに具体的な事例を記載。 ○「府民が適切に行動するための指針」に位置付け。 主な啓発事業 ○ふれあいキャンペーン     ○共に生きる障がい者展 ○ヘルプマークの周知・普及   ○心のバリアフリー推進事業 ○啓発冊子作成 「障がい理解ハンドブック」(必要な配慮を考えるきっかけを提供)等   相談等の体制 大阪府障がい者差別解消条例(平成28年4月施行) ○公的な解決の仕組みを規定し、実効性をもった相談、紛争の防止・解決の体制等を規定。(法第8条に関する相談機関) 広域支援相談員の配置 ○市町村の相談機関における相談事案(事業者における差別事象が対象)の解決を支援し、また、相談機関では解決が困難な広域的・専門的な相談事案等に対応するため、府に配置。 大阪府障がい者差別解消協議会 ○知事の附属機関として設置。障がい者差別解消の推進に関する事項を審議。「支援地域協議会」の機能を有する。 ○学識経験者、障がい者、事業者等で構成(20人以内)。 合議体 ○障がい種別等を踏まえ事案に応じて組織(5人)。 ○あっせん(不当な差別的取扱いに関する事案)や事例等の検証を踏まえた広域支援相談員への助言を実施。 p2   大阪府障がい者差別条例の概要   【目的】 (1)障がいを理由とする差別の解消の推進に関し、基本理念を定め、府、府民及び事業者の責務を明らかにする。 (2)障害者差別解消法第14条の「相談、紛争の防止・解決の体制整備」並びに第15条の「啓発活動の実施」に関し、必要な事項等を定める。 (3)障がいを理由とする差別を解消し、もって共生社会の実現に寄与することを目的とする。 ※条例は、事業者における差別の禁止に係る相談事案を対象とする。(府に係る事案は職員対応要領の対象)   【概要】   1相談、紛争の防止・解決の体制整備 (1)広域支援相談員 府民や事業者にとって身近な市町村の相談機関における相談事案の解決を支援し、また、相談機関では解決が困難な広域的・専門的な相談事案を取り扱うため、府に広域支援相談員を置く。 (2)大阪府障害者差別解消協議会 大阪府障害者差別解消協議会(附属機関)を置き、協議会における合議体が、広域支援相談員による対応を行っても解決しない事業者における不当な差別的取扱いに係る事案についてあっせんを行うとともに、広域支援相談員に対する助言を行う。(同協議会は、法第17条の障害者差別解消支援地域協議会の機能を担う。)   2勧告・公表 行政措置による実効性の確保として、事案を放置することが著しく公益に反すると認められるときに限定し、知事による事業者に対する勧告、公表を規定する。   3啓発活動 (1)啓発活動が条例の目的を達成するために最も大切な取組であることを基本理念で規定する。 (2)府民の理解と関心を深め、府民が適切に行動するための指針(大阪府障がい者差別解消ガイドライン)の普及に努めるなど必要な啓発活動を行うことを府の責務とする。   4市町村との連携 (1)市町村との適切な役割分担のもとで体制整備を実施することを府の責務とする。 (2)府は、市町村と連携して体制整備等を実施すること並びに市町村に対し情報提供や技術的助言等必要な支援を行うことを規定する。   5見直しの検討 施行後3年を目途として、施行後の状況について検討を加え、必要があると認めるときは所要の見直しを行う。 検討に当たっては、事業者における合理的配慮の実施状況に特に留意するとともに、必要があると認めるときは、施行後3年以内においても速やかに事業者における合理的配慮の義務付けの在り方を含めた見直しを検討する。 p3   大阪府障がい者差別解消条例に基づく相談体制整備(相談と解決の流れ) (作業者注:以下図。)   相談対応による解決 相談者(障がい者等、事業者)→相談(直接広域支援相談員に相談も可)→市町村の相談窓口→支援要請→広域支援相談員(第7条)(分析や検証を踏まえ、合議体から助言:8条)→助言等→市町村の相談窓口→調整、助言等により相談員を交えた話し合い→解決へ ※広域支援相談員が対応しても解決が図られない場合(不当な差別的取扱いに係る事案)   あっせん等による解決 障害者等→あっせんの求め(第9条:あっせんの求めは知事に対し行い、知事が合議体に行わせる。)→合議体(第8条:大阪府障がい者差別解消協議会)→あっせん(第10条)→解決へ 障害者等→あっせんの求め(第9条:あっせんの求めは知事に対し行い、知事が合議体に行わせる。)→合議体(第8条:大阪府障がい者差別解消協議会)→意見等→知事→勧告(第11条)or公表(第12条)→事実上の制裁としての効果 (作業者注:図ここまで。) p4   広域支援相談員による相談対応と助言・検証実施型合議体について  大阪府障がい者差別解消協議会の下に合議体を組織し、条例附則に規定する見直し検討に資することを目的に、障がい者差別解消の取組みや広域支援相談員の相談状況等を総合的に分析と検証を実施。   広域支援相談員による相談対応と合議体における検証のスキーム (作業者注:以下図。) 広域支援相談員(調査、助言、情報提供、傾聴、関係機関との連携、調整、(自主解決型・助言型・指導型))→報告→大阪府障がい者差別解消協議会(委員等の中から会長が指名:合議体で事例等の分野や障がい種別等を踏まえ5人で組織)→助言or検証→広域支援相談員 合議体による助言・検証等を踏まえ、広域支援相談員の対応力向上をはじめ、府の施策に反映 (作業者注:図ここまで。) p5   広域支援相談員による相談対応について   広域支援相談員の対応実績 (作業者注:以下表。)  1相談実績(平成28年度から平成30年度) 事案件数(前年度からの継続件数含む):平成28年度125件 平成29年度170件 平成30年度170件 相談対応回数:平成28年度517回 平成29年度989回 平成30年度1,257回 相談1件当たりの対応回数(平均):平成28年度4.1回 平成29年度6.1回 平成30年度7.4回  2平成30年度相談対応実績の内訳 (1)相談者の内訳 市町村からの相談:事案件数38件 割合22% 直接相談:事案件数132件 割合78% 合計170件 割合100% (2) 対象分野別件数 商品・サービス:事案件数50件 割合29% 福祉サービス:事案件数14件 割合8% 公共交通機関:事案件数30件 割合18% 住宅:事案件数8件 割合5% 教育:事案件数12件 割合7% 医療:事案件数10件 割合6% 雇用:事案件数8件 割合5% 行政機関24件 割合14% その他14件 割合8% 合計:事案件数170件 割合100% (3)障がい種別ごとの取り扱件数(※重複あり) 視覚障がい:事案件数24件 聴覚・言語障がい 事案件数18件 盲ろう:事案件数 1件 肢体不自由:事案件数84件 内部障がい:事案件数6件 知的障がい:事案件数17件 精神障がい:事案件数22件 発達障がい:事案件数5件 難病 事案件数7件 その他・不明 事案件数11件 (作業者注:表ここまで。) p6 (作業者注:以下表。) (4)相談内容の累計(平成30年度) @不当な差別的取扱い(うち、合理的配慮の不提供も含まれると考えられるもの):事案件数14件(1件) 内訳:拒否7件、制限2件、条件付け1件、その他4件 A合理的配慮の不提供:事案件数14件 内訳:(重複あり)物理的環境への配慮5件、意思疎通への配慮2件 ルール・慣行の変更7件、その他2件 Bその他:事案件数142件 内訳:不適切な行為29件 不快・不満29件 環境の整備5件 相談・意見・要望27件 問合せ25件 その他9件 【相談類型】 ・不当な差別的取扱い:不当な差別的取扱いに該当するもの、又は不当な差別的取扱いに該当するおそれのあるもの。 ・合理的配慮の不提供:合理的配慮の不提供に該当するもの、又は合理的配慮の不提供に該当するおそれのあるもの。 ・不適切な行為:障害者差別解消法の差別類型には該当しない(おそれも含む)が、差別的・不適切な行為があったと思われるもの。 ・不快・不満:差別的・不適切な行為があったことを確認できないが、相談者が差別的と捉え、不快・不満があったもの。ただし、年金や給付金等他制度への不満・苦情を要因とするものは除く。 ・環境の整備:施設の構造の改善及び設備の整備、関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に関するもの。 ・相談・意見・要望等:年金や給付金等他制度への不満・苦情を要因とするものや、差別以外の相談、意見、要望に類するもの。 ・問合せ:法や条例、制度等の内容に関する問い合わせ。 (作業者注:表ここまで。) p7   大阪府障がい者差別解消協議会と障害者差別解消支援地域協議会の比較 (作業者注:以下表。) 障害者差別解消支援地域協議会 設置根拠:障害者差別解消法第17条第1項 構成員:ア委員:国及び地方公共団体の機関で医療、介護、教育等障がい者関連分野の事務従事者、NPOその他の団体、学識経験者、その他で構成 担任事務:ア 法規定事務:情報交換、相談及び事例を踏まえた取組みに関する協議(法第18条第1項)。構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他必要な協力の求め(法第18条第3項)。  大阪府障がい者差別解消協議会 設置根拠:大阪府附属機関条例 ・大阪府障がい者差別解消条例 構成員:ア 委員20人以内(障がい者団体代表、事業者、学識経験者等で構成)イ専門委員(若干名)※平成31年4月現在15名ウオブザーバーとして国の機関及び市町村代表が参画 担任事務:ア 法規定事務:・情報交換、相談及び事例を踏まえた取組みに関する協議(法第18条第1項)・構成機関等に対し、情報の提供、意見表明その他必要な協力の求め(法第18条第3項) イ 条例規定事務 ・知事が諮問する差別解消の推進に関する事項への意見申述べ。 ・知事に対し、正当な理由なくあっせん案に従わない者等への勧告の求め。 ・知事が正当な理由なく勧告に従わない者を公表しようとするときの意見申述べ。 ・合議体を設置し、紛争事案や相談事案に対応。 @あっせん実施型の合議体 広域支援相談員による解決が難しい場合、紛争の解決をするためのあっせんを実施。(不当な差別的取扱いに限る) A助言・検証実施型の合議体 相談状況の総合的な分析・検証を行い広域支援相談員への助言を実施。   〈支援地域協議会が担う役割〉(「障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営等に関するガイドライン」より抜粋) @複数の機関等によって紛争の防止や解決を図る事案の共有 A関係機関等が対応した相談に係る事例の共有 B障害者差別に関する相談体制の整備 C障害者差別の解消に資する取組の共有・分析 D構成機関等における斡旋・調整等の様々な取組による紛争解決の後押し E障害者差別の解消に資する取組の周知・発信や障害特性の理解のための研修・啓発 F個別の相談事案に対する対応 (作業者注:表ここまで。) p8   大阪府障がい者差別解消協議会及び合議体について   開催実績 (作業者注:以下表。) 1大阪府障がい者差別解消協議会 年度:28年度6月 主な議題:大阪府障がい者差別解消協議会の運営。障がいを理由とする差別の解消に向けた体制整備の状況。 年度:28年度2月 主な議題:障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証(案)。その他(府内市町村における体制の整備等の状況等)。 年度:29年度6月 主な議題:平成 29 年度大阪府障がい者差別解消協議会の運営。平成 29 年度合議体。その他(府内市町村における体制の整備等の状況等)。 年度:29年度10月 主な議題:大阪府障がい者差別解消ガイドラインの改訂。あっせんに関する要領(案)。 年度:29年度2月 主な議題:大阪府障がい者差別解消ガイドラインの改訂 。平成29年度障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証。 年度:30年度5月 主な議題:平成 30 年度 合議体の運営。 その他 府内市町村における体制の整備等の状況等)。 年度:30年度3月 主な議題:障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書。その他(障がい者差別解消条例の運用状況等)。 2助言・検証実施型合議体 年度:28年度 開催回数7回 助言・検証事例数 26事例 年度:29年度 開催回数8回 助言・検証事例数 11事例 年度:30年度 開催回数5回 助言・検証事例数 7事例 (作業者注:表ここまで。)  p9   障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書〜広域支援相談員の相談事例等の分析から〜 ○障がい者差別解消の取組みを検証し、条例附則に規定する見直し検討に資することを目的に「助言・検証実施型」の合議体において広域支援相談員の相談事例等の総合的な分析・検証を実施。 ○相談事例の対応件数といった量的調査に加え、平成29〜30年度においては、質的調査による分析といった新たな試み。 ○府内市町村への支援や啓発活動を含めた、大阪府における障がい者差別の解消の取組みを報告。 (作業者注:以下図。障がい者差別の取組みと相談事例の検証報告書) (作業中:以下大阪府ホームページのURL) http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai_kensho.html p10   障がい者差別解消の取組みと相談事例等の検証報告書〜広域支援相談員の相談事例等の分析から〜   広域支援相談員の体制等と相談対応  広域支援相談員の体制と役割 ○丁寧で質の高い相談対応と、市町村への的確な助言等を行うため、情報共有と相談員間の連携強化を図る。(日々のケース進捗や市町村支援の取組みに関する日報作成、定期的なミーティングによるケース検討) ○様々な専門性を有する合議体から助言をもらう仕組みにより、相談員の対応力の向上が図られている。  相談類型の整理 ○「不当な差別的取扱い」「合理的配慮の不提供」に加え、法上の差別の類型には該当しないが、障がいのある人に対する不適切な発言や態度については「不適切な行為」として分類し、グレーゾーンの相談事案についても検証の対象とする。  広域支援相談員における課題 ○法や条例の周知に伴い、今後、相談事案の複雑化・多様化や増加が見込まれるため、さらに高度な専門性や調整力が求められるとともに、市町村への支援の充実が必要→広域支援相談員の人材育成や、市町村に対する幅広い支援を行うための人材確保が課題。 p11  合議体における助言・検証の実施 (平成28から30年度)府における整理と検証の概要  広域支援相談員の相談対応 ○相談員は、中立・公正な立場で、解決の方向を示すもの。そのため、障がい者の意向を確認した上で対応方針を検討し、事業者側が法の趣旨を理解し、円満解決を図ることが第一義的な目的であると認識し対応する。 ○円滑な解決に向けては、初期対応が重要。対応の対象範囲外の相談であっても、相談者の申し出を適切に確認しながら内容を整理することで、権限のある機関につなぐなど、相談者に寄り添い、丁寧な初期対応を行うよう努める。  ○差別の当否について曖昧な情報だけで判断しないよう、詳細な事実確認や情報収集を行う。特に、正当な理由や過重な負担の判断にあたり、合議体の助言をふまえ調査を行う。 ○「指導型の調整」が必要な相談対応において指導監査権限のある行政機関等と協力するなど、様々な関係機関と情報共有や連携を図り、事業者に働きかけていく。  ○他府県に渡る事例の対応も想定されるが、事例に応じて柔軟に調整を図りながら、広域自治体としての役割を果たせるよう、他府県と連携を図っていく。  相談の分類と整理 ○正当な理由の有無が確認できない場合であっても、「不当な差別的取扱い」に当たる可能性があるものとして、取り扱う。同様に、過重な負担の有無を確認できない場合であっても、「合理的配慮の不提供」に当たる可能性があるものとして、取り扱う。   ○合理的配慮が提供されなかったことが要因となって、サービス等の提供拒否、制限、条件付けがなされたと考えられるものについては、「不当な差別的取扱い」とする運用を図る。 ○「他の者とは異なる取扱い」については、その対応がいかに権利を不当に侵害しているか、という観点から、事案によっては「不当な差別的取扱い」に該当する可能性があるものとして取り扱う。 ○合理的配慮の不提供については、障がい者の立場に立ち、その当否の判断を主眼とするのではなく、双方の話し合いや考える姿勢を培うべく対応していく。 p12   合議体における助言・検証の実施 (平成28から30年度)府における整理と検証の概要   合議体による「あっせん」の考え方 ○障がい者が「不当な差別的取扱い」を受けたと認める場合、合議体は、柔軟に紛争解決することを目的とした機関であるという認識のもと、正当な理由の当否が難しい場合でも、法の趣旨の実現のため、条例に基づくあっせんを活用して解決することも考えられる。 ○客観的な判断を行うことが難しい場合等において、事業者側とどのように調整していくか、一つひとつの事例に対応しながら検討していくこととなる。 ○あっせんを履行した後の社会に及ぼす様々な影響を勘案しつつ、あっせんを求めた障がい者本人の意向に十分留意するとともに、共生社会の実現に資することを基本的なスタンスとして、検討する必要がある。 ○拒否・制限・条件付けのみに限定して判断するのではなく、「諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うこと」に該当するか否かという観点から、あっせんの申出の取扱いについて検討する。   今後の課題 ○広域支援相談員の「調整」の在り方や他機関との連携、障がい者差別に関する考え方が深まってきたことから、今後も継続して合議体での議論を重ねることが大切。特に、「合理的配慮」に関して、個別具体的な事例を通して議論し、考え方の整理が必要。 ○合議体からの助言により広域支援相談員の対応力も向上していることから、合議体に求められる広域支援相談員への助言の在り方について、より一層有効に機能させていくためのしくみの検討が必要。 ○さらには、解消協が「支援地域協議会」の機能も兼ね備えていることから、ネットワークを活用し、相談員のみでは対応困難な事案の紛争解決の後押しを行うことが考えられる。このため、相談員のみならず、協議会・合議体の役割や在り方を検証する必要がある。 p13   質的調査手法を用いた相談事例の検証(平成29年度検証報告書より)    障がい者差別の相談対応として有効と思われる取組みの視点や課題を整理するため、質的調査手法を用いて、広域支援相談員の受け付けた相談事例の具体的な状況、対応の経過、紛争に至った要因、紛争解決に係る今後の課題等を分析。    結果・考察 ○紛争に至る要因:事業者においては「知識や経験の不足」「障がい者に対する『偏見』」「不適切な初期対応」「相談体制が未整備」「事業者が構える」といったことなどが、相談者においては「相談者の不快」「周囲にとっての困りごと」などが要因となり、建設的対話ができない状況となる。 ○そのため、広域支援相談員は「第三者としての介入」をし、「詳しい経過や事実確認」や「相談者への意向確認」を行なった上で、上記の要因について紛争解決が図られるよう「対応方針の検討」をし、調整を行なっている。 ○質的調査手法を用いた分析により、紛争に至る要因となりうる具体的事象を抽出し、分析・整理がなされた。 ○本調査における結果は仮説生成の段階ではあるが、事業者に向けた差別の未然防止・再発防止の一助となるとともに、身近な相談窓口である市町村における相談対応の道標となる。   質的調査手法を用いた相談体制整備の検証(平成30年度検証報告書より)    条例に定めた相談体制整備の基盤となる、市町村、広域支援相談員、合議体それぞれの機能・役割と関係性について分析   結果・考察 ○市町村と相談員の役割と関係:相談員は差別の個別事案に関する専門窓口であり、相談者の生活全体や地域全体の啓発について関わることは市町村につなぐといった役割分担が考えられる。一方、相談員は、差別事案に関し専門的な助言や広域的な調整、市町村同士の関係構築を図る場の設定といった役割を担い、市町村をバックアップ。 ○相談員と合議体の役割と関係:合議体による助言・検証が、相談員へのスーパーバイズ機能を果たし、相談員のスキルアップや、ひいては市町村への助言につながる。しかし、合議体だけで相談員や大阪府の課題をすべてクリアできるものではないことから、解消協議会の役割についても整理が必要。 ○市町村、相談員、合議体の果たしてきた役割や相談体制の整備状況について分析することで、相談員から市町村への、また合議体から相談員への助言機能が発揮されているなどの評価される点と、制度や施策に関する審議、市町村の状況把握及び取組みの推進についてどうしていくかなどの課題となる点が浮き彫りになった。今後は、評価される点を発展させ継続していくとともに、明らかとなった課題の解決を図るための議論が必要。 ○また、このしくみを十分機能させるためには、互いに対話し合える関係性の構築が重要。  p14   府内市町村に対する支援の取組み   府内市町村の取組みに向けた支援 ○市町村ワーキング:相談対応の手引きとなる「相談の流れ」を作成(相談対応の実務や事例等を盛り込んでいる)。また、地域協議会の運用状況等、差別解消の取組みに関する情報交換を実施。 ○市町村勉強会の開催:府内市町村職員を対象に、基礎知識の習得、実務の理解、取組に関する情報共有。 ○出張情報交換会の実施:相談員が各圏域に出向き、相談員による研修を行うとともに、市町村同士の情報交換を実施。 ○市町村ヒアリング:地域協議会の設置や運用に関する意見及び課題を聴取。→地域協議会の設置にあたっては、効率的な運用や参画委員の確保が課題。また、設置後は、ネットワークとして活用しやすいというメリットがある反面、どのように有効に運用するかが課題。   市町村支援における課題 ○市町村における相談窓口の周知、市町村職員の障がい者差別の認識の浸透や事例のキャッチ力の向上。 ○広域支援相談員と市町村の連携、対応スキームの検証。 ○市町村における障がい者差別解消支援地域協議会の設置と、設置後の運用に関する情報提供。   【参考】 〇支援地域協議会を設置している市町村からの意見 ・事案の相談や情報共有をする際に、支援地域協議会に参画している委員がいると話がしやすいなど、ネットワークとして対応しやすい。 ・法上の差別事例はないが、障がい者差別解消法に関する勉強会を開催したところ、委員からは好評であった。 ・支援地域協議会の運用にあたっては、事例検討や周知啓発などが議題として考えられるが、何を継続して議論していくのか等、検討しなければならない。 ・行政が受けた事案を報告し意見をもらう場にとどまっているため、構成員が事例を持ち寄って意見交換する場としてどのように活用すべきかが悩ましい。 ・事例件数が増えると頻度を増やす必要があるのではないかということや、どこまで事例の内容を深められるかが課題だと感じている。 ・支援地域協議会を設置しているが、メンバー集めが難しく、予算も限られているため、委員になってほしい関係機関に参画してもらえない。 〇支援地域協議会を設置していない市町村からの意見 ・支援地域協議会設置を検討しているものの、その他の様々な会議や、自立支援協議会の下に設けたとしても協議事項が多く、また庁内への周知や事業者への啓発など、他にもやるべきことが多いため、起ち上げに踏み切ることができていない。 ・すでに様々な会議体が多い中、差別に関する事例が挙がっていないことから、予算面などを勘案すると、新たな会議体を設置する根拠が希薄だと感じる。 ・仮に支援地域協議会を設置した場合に、どのように運用すれば有意義な会議体として機能するのか。起ち上げをきっかけに差別解消に取り組んでいくとしても、参画してもらいたいメンバーを集めることが難しいように思われる。 p15   障がい理解に関する啓発の取組み ○大阪ふれあいキャンペーン ○共に生きる障がい者展 ○心の輪を広げる障がい者理解促進事業 ○大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度   ○ヘルプマークの周知・普及 ○心のバリアフリー推進事業 →事業者や府民の差別への「気づき」を促す工夫をするとともに、公民連携や、障がい福祉分野と他分野との連携を図る。   まとめ ○障がい者差別の解消のためには、事例の蓄積を活かしながら「気づく」力を身に付けることが第一歩。 ○事業者に対して「気づき」を促すことが、紛争防止や合理的配慮の提供につながり、「建設的対話」の文化を醸成。 ○身近な相談窓口である市町村は、多種多様な問題が混在する相談の中から差別に気づくとともに、差別以外の相談についても適切な機関につなぐといった対応が求められる。 ○また事例を通して、障がい者や事業者、多様な分野の関係機関が関わり合うことが、障がい者差別への気づきや障がい理解につながっていく。 ○これらによって障がい者差別に関する周知や理解が進めば、相談事例の増加と、複雑化・多様化が見込まれるため、市町村の対応力向上や広域支援相談員の高い専門性の担保が課題。 ○相談員の相談事例の助言を担う合議体、その母体となる解消協議会の役割や責務についても検討。 →障がい者差別の解消に向けては、差別への「気づき」、様々な関係機関とのネットワークの構築、その構成員が主体的な役割を果たすことが必要。今後も、啓発と相談体制の両輪で、差別解消に向けた取組みの工夫を進めていく。   府の役割 ○「大阪府障がい者差別解消ガイドライン」による府民への啓発活動の充実を図るとともに、事業者における「心のバリアフリー」の実践を支援するなど、必要な取組みを進めていく。 ○障がいに関する知識や経験の不足、意識の偏りなど、質的調査(H29検証報告書)で示唆された要因などを改善点として示すことにより、事業者における差別の未然防止や再発防止の自主的な取組みにつなげていく。 ○広域支援相談員の相談対応において、合議体の助言・検証をふまえ、質の高い対応力と専門性を確保し調整力の強化・充実を図るとともに、適切な解決のため様々な関係機関と連携していく。 ○法の趣旨や相談内容の判断の考え方について市町村への周知を行うとともに、広域支援相談員による調整等の相談対応方法を伝達することにより、市町村の相談対応力の向上を図る。 p16   大阪府障がい者差別解消ガイドライン  障がいを理由とする差別について府民の関心と理解を深めるため、何が差別に当たるのか、合理的配慮としてどのような措置が望ましいのかなどについて基本的な考え方や具体的な事例等を記載したガイドラインを策定(平成27年3月)。ガイドラインは、事例の集積や状況の変化、府民の障がいに対する理解の深まりに伴って、国の動向等も勘案しつつ、適時、内容の充実を図っている(平成30年3月改訂)。 (作業中:以下大阪府障がい者差別解消ガイドライン(第2版解説編、事例編の資料のURL)  URL:http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/syougai-plan/sabekai_guideline.html p17   大阪府障がい者差別解消ガイドライン(解説編)   ガイドラインの目的  障がい者差別について、府民の理解を深める・「理解し合うこと」「対話すること」「考えること」のきっかけを提供・府民全体で差別の解消に取り組む。   障がいを理由とする差別とは  不当な差別的取扱い 障がいを理由として、正当な理由なく、商品やサービス等の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりすることで、権利利益を侵害すること。  合理的配慮の不提供 障がいのある人から何らかの配慮を求める意志の表明があった場合に、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮(合理的配慮)を提供しないことで、権利利益を侵害すること。  その他、不適切な行為等 法上の差別の類型には該当しないが、障がいのある人に対する不適切な発言や態度。   行政機関等と事業者に求められる対応 不当な差別的取扱い 行政機関等:してはいけません 事業者:してはいけません 合理的配慮の提供  行政機関等:しなければなりません 事業者:行うよう努めなければなりません 国の基本方針に即して→行政機関等:当該機関における取組みについて「対応要領」を作成 事業者:事業分野別に主務大臣が「対応指針」を作成  環境の整備 不特定多数の障がいのある人を主な対象として行われる事前的改善措置(バリアフリー化や人的支援、情報アクセシビリティの向上等)を「環境の整備」として、行政機関等や事業者に対する一般的責務に位置づけ   障がい者、事業者、府民とは  障がい者 身体障がい、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)その他の心身の機能の障がいのある人で、障がいや社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある人。  事業者 商業その他の事業を行う者で、個人か法人・団体か、営利目的か非営利目的かを問わず、同種の行為を反復・継続する意思をもって行う者。  府民 府内に住み、働き、学ぶすべての人、府内に事務所や事業所がある法人や団体。   障がいを理由とする差別に関する相談と解決の仕組みとは 市町村:相談窓口→大阪府内の市町村すべてに、身近な窓口として障がいを理由とする差別に関する相談窓口を設置。 府:広域支援相談員→市町村の相談機関における相談事案の解決を支援。障がいのある人等や事業者からの直接相談にも対応。 府:大阪府障がい者差別解消協議会(解消協)→解消協の下に合議体を組織。合議体は広域支援相談員への助言や、解決困難な紛争事案のあっせんを行う。事業者があっせんに従わない場合、知事は勧告や公表ができる。 p18 大阪府障がい者差別解消ガイドライン(事例編) ・共生社会の実現の一助として、「不当な差別的取扱い」や「望ましい合理的配慮」の具体的事例を掲載。 ・府民が事例集を活用することにより、障がいを理由とする差別の解消に向けた理解や取組みが広がるとともに、障害者差別解消法の  意義や趣旨の浸透をめざして作成。  ガイドラインの対象分野とは 対象分野 日常生活や社会生活に深く関わる場面を、 商品・サービス分野。福祉サービス分野。公共交通機関分野。住宅分野。教育分野。医療分野の6分野に整理して記載。 障がいのある人に対する情報保障 日常生活のあらゆる場面で情報保障は必要不可欠であり、障がいのある人に対して情報提供やコミュニケーションに関する配慮が重要。   商品・サービス分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・施設の構造上問題がないにもかかわらず、車いす利用者の入場を断る。 ・飲食店等で、身体障がい者補助犬の同伴を拒否する。 ・理美容院で、障がいのある人の入店を拒否する。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・入口にあるインターホンの呼び出しによって、視覚障がいのある人等への介添えを行う。 ・聴覚障がいのある人への情報提供として、講演会等で、手話通訳と要約筆記を用意する。   福祉サービス分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・ろうの子どもの保育園入園の申請に対し、責任が持てないという理由から拒否する。 ・障がい福祉サービス事業者が、多動を伴う障がいのある人に対し、一律にサービスの利用を拒否する。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・契約書、しおり等書類や掲示物に、ルビ打ちや分かち書きをする。 ・感覚過敏がある場合は、音や肌触り、室温など感覚面の調整をする。   公共交通機関分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・車いす利用者であることを理由に、タクシーの乗車を拒否する。 ・バスの運転手が、知的障がいのある人の乗車を拒否する。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・券売機の利用が難しい場合に、障がいの特性に応じ、操作を手伝ったり、窓口で対応したりする。 ・視覚障がいのある人に対し、音声による車内案内をこまめに行う。   住宅分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・契約時に、精神障がいがあると判明すると、大家が入居を断る。 ・入居のための審査の際、障がいがあることを理由に、保証人の数を増やすよう求める。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・物件案内時に携帯スロープを用意したり、車いすを押して案内する。 ・物件のバリアフリー対応状況がわかるよう、写真を提供する。   教育分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・何の説明や検討も無く、障がいのある子どもの入学や受験を拒否する。 ・保護者の付添いがないという理由から、学校行事や授業への参加を拒否する。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・情緒不安定になる生徒に対し、落ち着く場所を用意し、その場所で休むことができるようにする。 ・拡大文字で試験用紙を作成する。 ・障がいの特性に応じて、座席や器具を用意する。   医療分野 【不当な差別的取扱いとなりうる事例】 ・院内が土足禁止であることを理由に、車いす利用者の診療を拒否する。 ・視覚障がいのある人に対し、受診の際に付添いを求める。 【望ましい合理的配慮の事例】 ・肢体不自由の人、視覚障がいのある人には検診ルートに職員が付添う。 ・精神障がいのある人の診療の際、時間をかけて丁寧に説明し、不安を与えないようにする。 ※「環境の整備」、「その他、不適切な行為等」についても具体的な事例を掲載。 ※上記の事例は、ガイドラインより一部抜粋したものであり、あくまでも例示です。また、客観的に見て、正当な理由や過重な負担が存在する場合には、障がいを理由とする差別に該当しないものがあると考えられます。 p19   大阪府の啓発事業のご紹介 (作業者注:以下大阪府の啓発冊子の図) 「ほんま、おおきに!!」障がい理解ハンドブック 大阪府障がい者差別解消:条例リーフレット 「i-Welcome」“合理的配慮”接客のヒント集 ええやんちがっても:広汎性発達障がいの理解のために 高次脳機能障がい:支援ハンドブック (作業中:大阪府啓発冊子の図ここまで) (作業者注:以下大阪府の啓発事業の図) 大阪ふれあいキャンペーン 共に生きる障がい者展 心の輪を広げる障がい者理解促進事業 大阪府障がい者等用駐車区画利用証制度 12月3日〜9日は「障がい者週間」 「障がい者週間」とは、障がいの有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、国民の間に地域社会での共生や差別の禁止などに関する理解を深めるとともに、障がい者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動への参加を促進することを目的として、障害者基本法に定められています。 大阪府福祉部障がい福祉室〒540-8570 大阪市中央区大手前3-2-12電話 06-6941-0351 FAX 06-6942-7215 p20   大阪府広域支援相談員が対応した事案 ※個人情報取扱事務の適正な執行を図る観点から、実際の事例を踏まえつつ、内容を一部変更するなど加工しています。 p21   【事例】1 量販店における発達障がい者への対応(事例概要) 【相談の内容】  事業者が広域に渡ることから、市町村担当課から府に相談が入る。内容としては、本人の障がい特性上、よく見られる行動を不審に思った量販店のスタッフが警察を呼び、その対応に保護者が疑問を感じているとのこと。また、当事者間の主張に齟齬はあったが、これらの対応の中で、本人の人権侵害につながりうる発言があったとして、本人・保護者がショックを受けているとの相談。 【相談対応の結果】 ○事業者の障がい理解や法等の理解が深まった。 【広域支援相談員の対応概要】 (分類:不当な差別的取扱い)  市町村担当課と役割分担して対応を進める。具体的には、市町村は本人・保護者、現地の量販店からの聞き取り、相談員は現地量販店を統括する部門を訪問し、今後の対応方針について等の聞き取りを行った。これらの聞き取りから、障がい特性に対する理解が不十分であったことが明らかとなり、今回の事例を踏まえ、今後の対応に活かしていくという報告を得た。  また、警察でも障がい理解につながる研修を行ったとのこと。 p22   【事例】1 量販店における発達障がい者への対応(結果・ポイント・課題) 【相談対応の結果】 〇量販店側から今回の事例を踏まえ、同様の事案を起こさないように社員間で共有を図るという報告を得た。また、相談員と量販店との話合いの中で、障害者差別解消法、府条例、様々な障がいの特性等の幅広い啓発を行うことができた。 〇相談対応を進めたことで、警察でも障がい理解につながる研修がなされた。 〇本人、保護者の一定の満足を得たと考えられる。 【相談対応におけるポイント】  〇基礎自治体(市町村)と広域自治体(都道府県)が役割分担を行い、対応を進めることも必要。 〇相談者の想いは揺れ動くことがあるという想定のもと、本人、家族の想いをその都度確認することが必要。 〇当事者間の主張に齟齬がある場合、その齟齬にはあまり固執せず、未来志向で同様の事案を起こさないためにはどのような対応が望まれるのか、関係者間で話し合いを進めることも考えられる。 【相談対応における課題】 〇市町村が差別解消の相談対応に不慣れな場合、また相談体制の整備が不十分な場合、本事例のように広域自治体と基礎自治体が役割分担をして対応することは難しいのではないか。 〇事業者が行政の相談活動に非協力的な場合、本事例のように調整を図ることは難しいのではないか。 p23   【事例】2 娯楽施設における車いす利用者への対応(事例概要) 【相談の内容】  車いす利用の身体障がい者からの相談。娯楽施設に入店しようとしたが、入口までのスロープが長く自走式の車いすでは坂を上り切れなかった。そこで、施設職員に車いすを押してもらえるようにお願いしたところ、「車いす一人でくるな。車いすのサポートはできない」と言われたとの相談。 【相談対応の結果】 ○事業者の合理的配慮の概念の理解が深まり、環境整備につながった。 【広域支援相談員の対応概要】 (分類:合理的配慮の不提供)  相談員から事業者に、電話にて事実確認を行う。事業者としては、「車いすの人に対しては、施設の入り口までは介助者の付添いを求める」との考えとのこと。相談員から、サービス提供の条件付けに当たる恐れがあることを説明し、直接現地の確認を行いたいことを依頼。後日、現地の確認と、事業者から直接の聞き取りを行う。ここでも、同様の考え方を示されるが、その背景として、万が一の事故のリスクや、食事介助・トイレ介助等を求められたことを想定して、全てお断りをするスタンスであったとのこと。相談員から、求められた配慮の全てに応じないといけない訳ではないことを説明し、事業者の理解を得た。 p24   【事例】2 娯楽施設における車いす利用者への対応(結果・ポイント・課題) 【相談対応の結果】 〇事業者側に、「配慮を求められれば、その全てに応じないといけないのか」という誤った認識があったが、その認識の修正を行なえた。 〇ただし、事務・事業の一環に関わる合理的配慮については、適切に応じて頂きたいことを説明し、事業者の理解を得た。 〇後日、車いす利用者のための看板の設置がなされるなど、環境の整備につながった。 〇本人から一定の満足を得て、本人の当該娯楽施設への参加促進につながったと想定される。 【相談対応におけるポイント】 〇事業者に対する聞き取りは電話やメールのみで終えるのではなく、状況に応じて直接現地の確認を行うことが必要 〇府の条例では、事業者に対する指導権限を相談員は有しないが、その中にあっても最大限の調整を図ることが重要 〇その調整を図る中で、事業者側の障がいや障がい者に対する知識や理解を促し、事業者側の対応の改善を促すことが重要 【相談対応における課題】 〇合理的配慮の概念がまだ広く事業者には浸透していないことから、同様の事例が散在されていることが推測される。 p25   【事例】3 肢体不自由の人の航空機搭乗(事例概要) 【相談の内容】  航空機搭乗の際、タラップを足で歩いて自力で上れない場合は搭乗できないと言われた。同行者や職員が抱きかかえることや車いすを担ぐことを、会社の規則では安全上の理由から禁止されているとのことから認めてもらえず、結局は這ってタラップを上った。当該航空会社は、足で歩けない人の搭乗を拒んでおり、これは合理的配慮の不提供ではないか。 【相談対応の結果】 ○事業者の障害者差別解消法に対する理解が深まり、環境整備につながった。 【広域支援相談員の対応概要】(分類:合理的配慮の不提供) 相談受理後に事実確認等をしていたところ、航空会社より、アシストストレッチャーの購入等により、タラップを自力で上れない人も搭乗可能となった旨の連絡を受けた。 p26   【事例】3 肢体不自由の人の航空機搭乗(結果・ポイント・課題】 【相談対応の結果】 〇関係する機関が連携して事業者に働きかけることで、事業者の障害者差別解消法に対する理解が深まり、アシストストレッチャーの購入等の環境整備につながった。 〇本人の一定の満足を得たと考えられる。 【相談対応におけるポイント】 ○相談事案によっては、他自治体の相談窓口とも連携を図り、対応を進めていくことが必要。 〇法の趣旨を踏まえ、指導権限を有する主務大臣が事業者に働きかけることで、実効性のある紛争解決につながるケースがある。 【相談対応における課題】 〇事業者にとっては、合理的配慮を提供するに当たり、過重な負担の有無以外に、制度やマニュアル等に沿ってサービス等を提供するなかで、現場において即座にどこまで柔軟に対応できるかや、安全配慮義務との関係など、様々な検討を求められる事例がある。 p27   【事例】4 講習会における要約筆記利用(事例概要・結果) 【相談の内容】  講習会に申し込んだ際、「聴覚障がいがあり、受講には要約筆記が必要である」と申し出たが、主催者からは要約筆記には対応できないとして、当該会場ではなく他の会場での受講を勧められた。 【相談対応の結果】 ○事業者の合理的配慮の概念の理解が深まり、申し出に対しての配慮がなされた。 【広域支援相談員の対応概要と結果】 相談員が本人と主催者とのやりとりを確認の上、主催者に対し、本件は合理的配慮の不提供にあたる旨を説明。主催者からは「担当者に配慮の知識がなかった」「本人が受講できるように検討していく」と回答があった。相談員からの合理的配慮と過重な負担についての説明等により、主催者側も理解し、本人が受講する際には要約筆記での対応がなされた。併せて、相談員から主催者側に、要約筆記対応の際、講師が講義の際、話す速度を落とすといった配慮が必要な旨を助言した。 p28   【事例】その他(事業者の対応の改善につながった事例)(事例概要・結果) 【相談の内容】 @身体障がい者が公共交通機関を利用しようとした際に、適切な対応がなかったことから、その公共交通機関を利用できなかったとの相談。 A視覚障がい者が、ネットでチケットを購入しようとした際に、画像認証を求められ、チケットの申込みが出来なかったとの相談。 B事業者が同伴しているヘルパーに話しかけ、障がい当事者が不快な想いをしたとの相談。 【広域支援相談員の対応概要と結果】 @相談員が当該事業者に聞き取りを行ったところ、適切な対応ではなかったとの説明があった。その後、適切な対応が為されるよう、社内にて文書で共有、環境の整備も行ったとのこと。 A相談員が当該事業者に聞き取りを行ったところ、事業者内で検討するとのこと。結果的に、すぐに画像認証を外すことはできないが、音声認識の導入について検討するとのこと。 B相談員が当該事業者に聞き取りを行ったところ、不適切な対応であったとのこと。障がいに対する理解不足もあったことから、社内にて研修を行うとのこと。 p29   【参考】 合議体において検証した相談事例 ※個人情報取扱事務の適正な執行を図る観点から、実際の事例を踏まえつつ、内容を一部変更するなど加工しています。 p30   【事例】ア 保育園における発達障がい児への対応(事例概要) 【相談の内容】 保護者からの相談。子どもが発達障がいの診断を受けてから、保育園にて園長より突然退園を強く迫られ、別の園に転園するよう言われた。園側の理由として、本人の特性が園の方針や保育内容に合わないこと、多動のため本人の安全を確保できないことが挙げられたが、今まではそのような話を園から言われておらず、また担任との話し合いの場も設けられなかった。 【相談員の対応概要】(分類:不当な差別的取扱い) 保護者から経過の聞き取りや意向を確認。また、当該市の保育園所管課や市障がい差別解消担当課とも情報を共有し、本件に関わる情報収集を行った。園長にも連絡を取り、保育園の現場確認も行った。園長の主張では、「本人の安全性の確保とその特性を考慮すると、転園する方が良いと考え、転園の提案を以前からしていた」「即、退園の話をした覚えはない」とのことで、保護者の認識と食い違いが見られた。具体的な調査について、園長は頑なに拒否し、他の保育士からの聞き取り等を行うことはできなかった。 p31   【事例】ア 保育園における発達障がい児への対応(合議体からの助言・課題) 【合議体からの助言】 〇明確な事実確認ができなかったとしても、限りなく不当な差別的取扱いが疑われる事案であり、退園までのプロセスは非常に不適切であったと考えられる。 〇園の差別的な意思が推定され、結果としてサービス提供の拒否と同様の状況を招いており、また園からの説明が十分になされていないことを勘案すると、現段階では不当な差別的取扱いと評価せざるを得ない、と考えられるのではないか。 〇障害者差別解消法施行令第3条を見ると、主務大臣の権限が他法令によって自治体に移譲されている場合には、その自治体の長が事業者に対して報告徴収や指導を行うことができる、と解釈することができる。そのため、指導監督権限のある機関(本件の場合は児童福祉法を所管する市の保育園所管課)と連携し、障害者差別解消法第12条に基づき指導することが可能なのではないか。 〇各法令の指導監督権限のある所管に対しても、本件のような事例を通して障害者差別解消法を周知し、障がい者差別解消担当課と様々な関係部局と連携して対応する必要があることを、市町村や大阪府庁内関係所管課に対して周知すべきであると思われる。 【相談対応における課題】 ○法第12条に基づき行政機関が事業者を指導するためには、指導権限を有する所管課が法第12条に基づく指導権限を有することを熟知する必要がある。 ○自治体に相談体制が整備されていれば、法第12条に基づき、指導権限を有する所管課が障がい者差別解消法所管課と連携した指導を行いやすい。 p32   【事例】イ 住宅分野における車いす利用者への対応(事例概要) 【相談の内容】 障がい者からの相談。賃貸住宅について、宅建業者を通じて管理会社に対し、車いす利用者が入居できるかどうか問い合わせたところ、「車いす利用者は入居できない」と言われた。この発言は、入居差別に当たるのではないか。 【相談員の対応概要】(分類:不当な差別的取扱い) 事実確認を行ったところ、宅建業者は「管理会社より、スロープや扉などの住宅改造ができないことや、車いすで廊下に傷がつく等の話があり、車いす利用者の入居はできないと言われた。」とのことであった。管理会社は、「正式な申込みではなく問合せの段階で、バリアフリーに対応しておらず車いす利用者の入居は難しいとは説明したが、入居できないとは言っていない。」「家主の意向で、高収入が見込まれる人等希望の条件があるため、入居が難しいかと思った。」「入居審査は信販会社や家主、管理会社の総合審査で判断し、却下の場合はその理由を伝えないこととしている。」という回答があった。 本件について、大阪府住宅まちづくり部と情報共有を図ったところ、当該所管課は宅建業者に対して指導監督権限はあるものの、管理会社や家主に対する権限を有していないとのことであった。 p33   【事例】イ 住宅分野における車いす利用者への対応(合議体からの助言・課題) 【合議体からの助言】 〇住宅分野においては、家主の意向が契約に大きく影響しており、入居が難しいと言われた理由が家主の希望条件によるのか、障がいを理由としているのか否かは、判然としない部分があると思われる。障がい者に対する入居差別については、実際には障がいを理由として断っているにもかかわらず、障がい者であることとは別の理由に紐づけて説明されることがある。 〇家主が賃借人を選んでいることは、契約自由の原則から違法性があるとは言い難い。が、車いす利用者であることを理由に入居を断わった場合は、不当な差別的取扱いだと考えられる。 〇入居差別は長年起こっている問題であり、広域支援相談員だけでアプローチすることは難しいのではないか。そのため、広域支援相談員を含めた障がい福祉企画課として、住宅分野に関わる他課とも連携しながら解決を図ることが求められると思われる。 〇現状、宅建業者に対する指導監督権限は行政が有している一方で、家主等に対しては、行政が啓発は行なっているものの、府住宅まちづくり部には指導監督権限がない。法や条例などの制度によって、障がい者に対し入居差別をしてはいけないことがルール化され、広域支援相談員が介入し家主等に対しても障がい者差別について助言・調整することができれば、宅建業者が家主にも働きかけやすくなるのではないか。 【相談対応における課題】 ○主務大臣の対応指針は、全ての事業を網羅しているものではなく、指導権限を有する主務大臣が不明の事例が想定される。その場合に、実効性のある紛争解決が困難となる可能性がある。 p34   【事例】ウ 聴覚障がいのある人に対する通販での通信契約 【相談の内容】  聴覚障がいのある人が、通販にてタブレット付wifiを申し込んだところ、「本人確認を電話で行う必要があるため、電話でやりとりができない人とは契約できない」との理由で契約を拒否された。 【相談員の対応概要】(分類:不当な差別的取扱い)  通販事業者およびwifiサービス提供事業者に対し、事実確認と配慮の求めを行うため連絡をとるが、いずれも大手事業者で、オペレーターによる一律的な対応であり、また相談窓口が非公開であったため、事業者へのアプローチにかなりの期間を要したもの。情報収集によって得た連絡先に、文書にて合理的配慮に関する対応の有無について確認を行なった。 p35   【事例】ウ 聴覚障がいのある人に対する通販での通信契約 【合議体からの助言】 〇通信販売事業者と電気通信事業者との間の契約内容がどのようになっているのかを確認する必要があるのではないか。通信販売事業者が、wifi契約事業者から販売方法も含めて指示されているのか、通信販売事業者にどの程度の裁量が許されているのか等、確認が必要ではないか。 〇本人確認については、電話での対応以外にも、例えば視覚障がいや筆記が困難な肢体不自由のある人に対して自署以外は認めない、といった現状がある。こうした合理的配慮の不提供は、他の事業者でも類似の事案があると考えられることも鑑みて、国レベルへ働きかける必要があるのではないか。 【相談対応における課題】 ○情報アクセシビリティの保障や、事業者が複数関連しているために責任の所在が不明確な事例があり、相談対応や実効性のある紛争解決が困難な場合がある。 ○個々の事案に対応するより、業界全体に働きかけることにより、環境整備として改善が求められることがあり、一地方自治体では紛争解決が困難な事例も想定される。 p36   【事例】エ 車いす利用者への電車利用における合理的配慮(事例概要) 【相談の内容】  車いす利用者が電車を利用する際に、駅員による降車ミスがあり、降りられなかったことが複数回あった。 【相談員の対応概要】(分類:合理的配慮の不提供)  電鉄会社への事実確認の結果、駅員間の連絡ミスや他の業務に時間を要したことにより、降車の介助ができなかった等の経緯が確認された。その後、電鉄会社から本人への謝罪の場を設け、今後の改善策を検討し双方の合意を得た。 p37   【事例】エ 車いす利用者への電車利用における合理的配慮(合議体からの助言・課題) 【合議体からの助言】 〇合理的配慮の提供を行う体制やルールが決まっていたとしても、現実に降車ミス等により配慮の提供がされなければ、個別具体的な調整や変更がなされていないものと考えられる。そのため、降車がなされなかった点のみに着目すれば、合理的配慮の不提供があったといえるのではないか。 〇ただし、過重な負担があったかどうかも含めて考えるべきであり、単に降車ミスがあったことのみをもって合理的配慮の不提供があったと言えるものではないだろう。 〇事業者側に悪意があるわけではなく、日々配慮に努めているが、こういったミスがあった際の対策が本人に説明されていないのではないか。 〇合理的配慮の提供は、事業者においては努力義務であることから、本件においては「努力はしている」と考えてよいか、それとも努力義務以上のものを求めていくべきか。 【相談対応における課題】 ○合理的配慮を提供する仕組みなどはあるが、ミス等により、結果として合理的配慮を提供できなかった事例を合理的配慮の不提供と捉えるべきか。