p1 国際連合 CRPD/C/GC/6   障害者の権利に関する条約   障害者の権利に関する委員会   平等及び無差別に関する一般的意見第6号(2018年)※ ※委員会の第19回会期において採択(2018年2月14日〜3月9日)   I.はじめに 1.一般的意見を提示する目的は、障害者権利条約第5条に規定されている、平等及び無差別に関する締約国の義務を明確化することである。 2.当委員会は、締約国における法律や政策が、それらのモデルが本条約に矛盾しているにもかかわらず、未だに慈善モデル及び/又は医学モデルを通して障害に取り組んでいることについて懸念している。このようなパラダイムの根強い利用が、障害者を権利の完全な対象、及び権利保有者として認識することを阻害している。さらに、当委員会は、締約国における、障害に対する姿勢に関する障壁の克服に向けた取り組みが不十分であることにも留意している。こうした例としては、障害者に対する、社会における負担であるとする、根強く侮辱的な固定観念や、烙印、偏見が含まれる。これに対し、障害者が、それぞれの所属団体を通して、法律・政策改革の進展において中心となる役割を果たすことが極めて重要である。 3.差別解消法及び人権フレームワークの拡大は、多くの締約国において障害者の権利の保護の拡大をもたらした。しかしながら、法律と規制の枠組みは未だに不完全かつ不十分であり、又は非効果的であるか、若しくは障害の人権モデルの理解の不十分さを反映したものとなっている。多くの国の法律及び政策は、障害者に対する差別及び暴力を恒久的に排除・根絶するものとなっている。それらは、複合及び交差差別、又は関連差別の認識を欠いていることが多い。合理的配慮の拒絶が差別になることを認識しておらず、法的な是正や補償の効果的な仕組みが不足している。こうした法律及び政策は、障害に基づく差別とは見なされていない。それは、障害者の保護や介護のためであるとして、又は彼らの最大の利益のためであるとして、正当化されているからである。   II.国際法における障害者の平等及び無差別 4.平等及び無差別は国際人権法における最も基本的な原則及び権利である。これらは人間の尊厳と相互に関係しているため、あらゆる人権の土台となるものである。世界人権宣言の第1条及び第2条は、全ての人が尊厳と権利について平等であると宣言しており、いくつかの根拠を、全てを網羅しているわけではないが、挙げて差別を非難している。 p2 5.平等及び無差別は、全ての人権に関する諸条約の中核をなしている。市民的及び政治的権利に関する国際規約、並びに、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約は、非限定的な根拠のリストに基づき差別を禁止しており、障害者権利条約第5条はこれに由来する。国際連合の全てのテーマ別の人権条約※1は、平等の確立及び差別の根絶を目的としており、平等及び無差別に関する規定を含んでいる。障害者権利条約は、その他の条約によって提供された経験を考慮に入れており、その平等及び無差別の原則は、国際連合の伝統とアプローチの進化を示す内容となっている。 ※1 あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、拷問及び他の残虐的な、非人道的な品位を傷つける取り扱い又は、刑罰に関する条約、児童の権利に関する条約、全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約、並びに、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約。 6.「尊厳」という用語は、国際連合のその他のどの人権関連条約よりも、本条約の中に頻繁に登場する。この用語は、序文に含まれており、それによって締約国は、自由、正義及び世界平和の基盤として、生来の尊厳と価値、人類家族の全メンバーの平等かつ不可侵な権利を認識する、国際連合の憲章とそこで宣言されている原則を再認識する。 7.平等及び無差別は本条約の中核をなすものであり、その多くの条項の中で、「他の者との平等を基礎として」という表現を繰り返し使用することによって一貫して想起されており、それによって、本条約の全ての本質的な権利を無差別の原則と結びつけている。人間の尊厳、品位及び平等は、実際の機能障害がある者、又はそのように認識される者に対して否定されてきた。差別は、同意のない及び/又は強制的な制度的な不妊手術、及び医学的又はホルモン・ベースの介入(例:前頭葉切断術又はアシュリー療法)、強制投薬及び強制電気ショック、監禁、「安楽死」という名の制度的殺人、堕胎の強制・強要、医療へのアクセス拒否、身体の部位の切断及び不正売買(特に白皮症の人の)などといった残酷な形のものを含め、これまで発生してきており、また今も発生し続けている。   III.障害と包摂的な平等の人権モデル 8.障害の個人的又は医学モデルは、障害者に対する平等原則の適用を阻害する。障害の医学モデルの下では、障害者は権利保有者として見なされず、その機能障害に「矮小化」されてしまう。これらのモデルの下では、障害者に対する差別的又は異なる扱いや、障害者の除外が基準となり、医療によって主導される障害に対する無能力のアプローチが正当化されてしまう。個人的又は医学モデルは、障害の状況に対して平等の概念を適用する当初の試みの後でさえ、障害に関連する最初の国際法及び政策を決定するために使用された。精神遅滞者の権利に関する宣言(1971年)、及び障害者の権利に関する宣言(1975年)は、障害者に対する平等及び無差別の規定を含む、初の人権関連文書だった。これらの初期のソフト・ローである人権文書は、障害に対する平等のアプローチの地ならしをしたものの、機能障害が権利を制限又は否定する正当な根拠として見なされていたため、それらは依然として障害の医学モデルに基づくものだった。また、それらには、今では不適切又は時代遅れと考えられている文言も含まれている。1993年には、障害政策及び法律の基本概念である「機会の平等」を宣言する、障害者の機会均等化に関する標準規則の採択によって、さらなる一歩が進められた。 9.障害の人権モデルは、障害は社会的構成概念であり、機能障害を人権の否定又は制限の正当な根拠として見なしてはならないことを認めている。このモデルは、障害は、複数の独自性の層の一つであると認めている。したがって、障害法及び政策は、障害者の多様性を考慮しなければならない。また、人権は相互依存的、相関的であり、不可侵であるとも、認めている。 p3 10.機会の平等化については、第3条の下における本条約の一般原則として、形式的平等のモデルから、実質的平等のモデルへと著しい進展を見せた。形式的平等は、同様の状況にある人間を同様に処遇することによって、直接差別に対抗することを目指している。これは、否定的な固定観念や偏見に対抗する上で役立つかもしれないが、しかし、人間の差異について考慮・受容していないため、「差異のジレンマ」に対する解決策を提示することはできない。対照的に、実質的平等は、構造的及び間接的差別に対処することを目指し、力関係を考慮に入れる。これは、「差異のジレンマ」には、平等を実現するために、人間の差異を無視することと認識することの両方が必要になるということを認めている。 11.包容的平等は、本条約全体を通して展開する新たな平等のモデルである。これは、平等の実質的モデルを受容し、以下に関する平等の内容を拡張し、詳述している。(a)社会経済的な不利益に対処する公平な再分配の側面、(b)烙印、固定観念、偏見及び暴力と闘い、人間の尊厳及びその交差性を認識するための認識の側面、(c)社会集団の一員としての人間の社会的性質、及び社会への包容を通した、人間性の完全な認識を再確認する参加的な側面、(d)人間の尊厳の問題として、相違に対する余地を設ける、配慮の側面。本条約は、包容的平等に基づいている。   IV.無差別及び平等の法的性質 12.平等及び無差別は、原則であり、権利である。本条約では、第3条において原則として、第5条において権利として、これらに言及している。これらは、本条約に規定されているその他の全ての原則及び権利に対する解釈のツールでもある。平等及び無差別の原則/権利は、本条約によって保証されている国際的な保護の基盤である。平等の推進及び差別への対抗は、直ちに実現すべき分野横断的な義務である。これらは、漸進的に実現すべきものではない。 13.本条約第5条は、市民的及び政治的権利に関する国際規約の第26条と同様に、その他の規定から独立した自律的な権利を規定している。これらは、公的当局によって規制及び保護されているあらゆる分野における、法律上の、又は事実上の差別を禁止している。これは、第4条(1)(e)と併せて読むと、民間部門にも拡張して適用されることが明確である。   V.規範的内容   A.法の前及び法の下の平等に関する第5条1 14.国際人権条約の中には、「法の前の平等」という表現が含まれるものがいくつかある。これは、法律の適用による、及び法律の適用における人間の平等な扱いに対する権利を、一つの分野として説明するものである。この権利が十分に実現されるために、司法及び法執行担当者は、司法の運用において、障害者を差別してはならない。「法の下の平等」は、本条約に固有のものである。これは、法律的な関係に関与する可能性に言及するものである。法の前の平等は、法律によって保護されるべき権利に言及しているが、一方、法の下の平等は、法律を個人の利益のために利用する権利に言及している。障害者は、効果的に保護され、積極的に関与する権利を有している。法律そのものは、所定の法域内における全ての人々の実質的平等を保障しなければならない。したがって、全ての障害者が法の下で平等であるという認識は、障害者に特定された権利の拒否、制限又は制約を認める法律が存在するべきではなく、障害は全ての法律及び政策において本流となるべきであるということを意味する。 15.「法の前の平等」及び「法の下の平等」という用語の解釈は、本条約の第4条(1)(b)及び(c)に沿っており、締約国はこれに従い、公的当局及び公共機関が本条約を遵守して行動すること、障害者に対する差別を伴う既存の法律、規制、習慣及び慣習が修正又は廃止されること、及び障害者の権利の保護及び推進が全ての政策及びプログラムにおいて考慮されることを徹底しなければならない。 p4   B.法の平等な保護及び平等な利益に関する第5条(1) 16.「法の平等な保護」及び「法の平等な利益」には、平等及び無差別に関する、明確な概念が含まれている。「法の平等な保護」という表現は、国際人権条約においてよく知られており、法律及び政策を施行する際に、国内立法機関が障害者に対する差別を維持又は規定することを避けることを要求するために利用される。本条約の第5条を第1条、第3条及び第4条と併せて読めば、障害者が法律の下で保証された権利を平等に享受することを推進するために、締約国が積極的な行動を取らなければならないことが明確になっている。多くの場合に、アクセシビリティ、合理的配慮及び個別の支援が必要とされる。全ての障害者に対する平等な機会を確保するため、「法の平等な利益」という用語が利用される。これは、全ての法律の保護を利用できるように、及び、権利を主張するために法律と司法の利用の恩恵を平等に受けられるように、締約国が障壁を撤廃しなければならないことを意味する。   C.差別の禁止及び平等かつ効果的な法律による保護に関する第5条2 17.第5条2には、障害者及び障害者に関連する人々の平等の権利を実現するための法的要件が含まれている。障害に基づくあらゆる差別を禁止する義務には、障害者及び障害者に関連する人々(例:障害のある子供たちの親)が含まれる。あらゆる根拠に基づく差別に対する平等又は効果的な法律上の保護を、障害者に対して保証する義務は広範囲に及び、締約国に対して積極的な保護の義務を課している。障害に基づく差別は、第2条に次のように定義されている。「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む)を含む。」 この定義は、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の第1条、及び、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の第1条など、国際人権条約における差別の法的な定義に基づいている。本条約における定義は、2つの点でこれらの定義を超越している。第一に、これには「合理的配慮の拒否」を障害に基づく差別の一形態として含んでいること。第二に、「他の者との平等を基礎として」という表現は、新たな構成要素であるということである。女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約には、その第1条及び第3条に、これに類似しているが、より限定的な「男女の平等を基礎として」という表現が含まれている。「他の者との平等を基礎として」という表現は、障害に基づく差別の定義だけではなく、障害者権利条約の全体に浸透しているものである。一方では、これは、障害者は一般的な人々と比べて、認められる権利や利益が増えるわけでも減るわけでもないということを意味している。もう一方では、障害者が実際に全ての人権及び基本的自由を享受できるように、締約国が事実上の平等を実現するための具体的な特別の措置を講じることを要求している。 18.「あらゆる差別」を禁止する義務には、あらゆる形態の差別が含まれる。国際的な人権に関する慣例は、差別の主な4つの形態を特定しており、これらは個別に発生することもあれば、同時に発生することもある。 (a)「直接差別」は、類似する状況において、禁止されている根拠に関連する理由による、類似する状況における個人的な状態の相違を原因として、障害者が他の者よりも不利な処遇を受ける場合に発生する。直接差別には、比較可能な類似の状況が存在しない場合における、禁止されている根拠に基づく有害な行為や不作為が含まれる。※2差別する側の動機や意図は、差別が発生したか否かに関する判定においては、関係するものではない。例えば、締約国の学校が障害のある子供の入学を拒否した理由が、単にその障害を理由として教育プログラムを変更することを避けるためであった場合はこれに相当し、これは直接的な差別の一例である。 ※2 経済的、社会的及び文化的権利委員会の、経済的、社会的及び文化的権利における差別に関する一般的意見第20号(2009年)のパラグラフ10を参照。 p5 (b)「間接差別」※3は、法律、政策又は慣例が表向きは中立的であるように見えるが、それらが障害者に対して不均衡に不利な影響をもたらすことを意味する。これは、表面上はアクセシブルであるように見える機会が、実際には、一部の人々が自らの状態を原因としてその機会そのものの恩恵を受けられないという事実によって、その人々を除外している場合に発生する。例えば、ある学校が読みやすい形式の書籍を提供していない場合、知的障害者は、規則上はその学校に通うことは可能でも、実際には別の学校に通うことが必要になるため、それは知的障害者を間接差別していることになる。同様に、移動能力に制約がある就職希望者が、エレベーターがないビルの2階にあるオフィスで面接を受ける場合、面接に臨むことを認められたとしても、その状況自体が、その就職希望者を不平等な立場に置くことになる。 ※3 上記と同様。 (c)「合理的配慮の拒否」は、本条約第2条によれば、必要かつ適切な変更及び調整(「均衡を失した又は過度の負担」を課さない)が拒否され、人権又は基本的自由の平等な享有又は行使を保証するためにそれが必要となる場合に差別に該当する。同伴者の受け入れを拒否したり、その他の形で障害者の受け入れを拒否したりすることは、合理的配慮の拒否の例に該当する。 (d)「ハラスメント」は、ある人の尊厳を侵害すること、若しくは、威圧的、敵対的、屈辱的、侮辱的又は攻撃的な環境を生じさせることを目的とする、又はそのような影響を及ぼす、障害又はその他の禁止された根拠に関連する望まれない行為が発生した場合における差別の形態である。これは、障害者の相違及び迫害を永続化させる影響を持つ行動や発言を通して発生しうる。居住型施設、特別支援学校又は精神科病院など、隔離された場所に暮らす障害者に対しては、特別な注意を払うべきである。このような場所では、こうした種類の差別が発生する可能性が高く、その性質上目に付きにくく、処罰されない可能性が高くなる。「いじめ」及びそのオンライン上の形態であるサイバーいじめやサイバー・ヘイトも、特に暴力的で有害な形態のヘイト・クライムになる。その他の例には、レイプ、虐待及び搾取、ヘイト・クライムや殴打など、あらゆる様相の(障害に基づく)暴力が含まれる。 19.差別は、障害や性別など、単独の特性に基づく場合もあれば、複合的及び/又は交差的な特性に基づく場合もある。「交差差別」とは、障害が、肌の色、性別、言語、宗教、民族、ジェンダー、又はその他の状態と組み合わされ、それに基づいて障害者又は障害に関連する人々が何らかの形で差別を受ける場合を指すものである。交差差別は、直接又は間接差別、合理的配慮の拒否、又はハラスメントとして現れる場合がある。例えば、アクセシブルではないフォーマットを原因とする一般的な医療関連情報へのアクセスの拒否は、障害に基づき全ての人々に影響するが、全盲の女性が家族計画サービスにアクセスすることを拒否することは、その女性の性別と障害の交差性に基づき権利を制限することになる。多くのケースにおいて、これらの根拠を分離するのは難しいことである。締約国は、障害者に対する複合及び交差差別に対処しなければならない。障害者権利委員会によれば、「複合差別」とは、人が2つ以上の根拠に基づいて差別を受け、差別が複合的になるか又は悪化する状況を意味する。交差差別とは、複数の根拠が、不可分な形で同時に影響及び相互作用し、それによって、関連する個人が固有の種類の不利益や差別にさらされることになる状況を意味する。※4 ※4 障害者権利委員会の、障害のある女性及び女児に関する一般的意見第3号(2016年)パラグラフ4(c)及び16を参照。 p6 20.「障害に基づく」差別は、現在障害のある人々、過去の障害のあった人々、将来的に障害を有することになる素因がある人々、障害があると推測される人々、並びに、障害者と関連のある人々に向けられる場合がある。後者は、「関連による差別」として知られている。第5条の範囲が幅広い理由は、障害に関係する全ての差別的状況及び/又は差別的行為を根絶し、これらと闘うためである。 21.「あらゆる根拠に基づく差別」に対する保護とは、可能性があるあらゆる差別の根拠、及びそれらの交差を考慮に入れなければならないことを意味する。可能性がある根拠には、以下を含むが、これらに限定されるものではない:障害、健康状態、病気に対する遺伝的若しくはその他の体質があること、人種、肌の色、祖先、性別、妊娠又は母親/父親であること、市民権、家族若しくは職歴の状況、ジェンダー表現、性別、言語、宗教、政治的意見若しくはその他の意見、出身国、出身民族、出身地若しくは社会的出自、移民、難民若しくは亡命の状況、国内の少数民族への帰属、経済的な若しくは財産の状況、出生、年齢、又はこれらの根拠若しくはこれらの根拠に関連する特性のいずれかの組み合わせ。 22.「差別に対する平等かつ効果的な法的保護」とは、締約国が、具体的かつ包括的な差別解消法制度を施行する義務を伴い、障害者を差別から保護する積極的な義務を有することを意味する。法制度における障害者に対する障害に基づく差別及びその他の差別の明示的な法的禁止には、民事、行政及び刑事訴訟において、交差差別に関連する適切かつ効果的な法的救済並びに制裁が伴うべきである。差別が体系的な性質のものである場合、個人に対する単なる補償の供与だけでは、アプローチを変更するいう意味では、本質的な効果をもたらすことはできない。そのような場合のため、締約国は法制度において「将来志向、非金銭的救済」も導入すべきであり、これはつまり、民間の当事者及び団体によって実行される差別に対するさらに効果的な保護が、締約国によって提供されるということを意味する。   D. 合理的配慮に関する第5条3 23.合理的配慮は、障害に関連する無差別に直接適用される義務の本質的な部分である。※5合理的配慮の例には、既存の施設及び情報を障害のある個人にとってアクセシブルなものとすること、設備を改造すること、活動を再編成すること、作業スケジュールを変更すること、カリキュラムの教材及び教育戦略を調整すること、医療手順を調整すること、均衡を失した又は過度の負担なく支援要員へのアクセスを可能にすることなどがある。 ※5 経済的、社会的及び文化的権利委員会の、障害者に関する一般的意見第5号(1994年)、パラグラフ15を参照。 24.合理的配慮の義務は、アクセシビリティの義務とは異なる。いずれも、アクセシビリティの保証を目的としているが、ユニバーサル・デザイン又は支援技術を通したアクセシビリティの提供は事前効的義務であり、一方、合理的配慮を提供する義務は、将来効的義務である。 (a)事前効的義務として、特定の障害者のニーズ(例えば、他の者と平等に建物、サービス、又は製品にアクセスすること)に関係なく、アクセシビリティはシステム及びプロセスに組み込まれなければならない。締約国は、本条約の第4条3に準拠した、障害者団体と協議の上で作成及び採用されるアクセシビリティ基準を設定しなければならない。アクセシビリティの義務は事前的で、体系的な義務である。 p7 (b)将来効的義務として、合理的配慮は、障害者がアクセシブルではない状況や環境へのアクセスを必要とする時点、又は自らの権利を行使したいと思う時点から提供されなければならない。合理的配慮は、アクセスを必要とする障害者によって、又は人若しくは人々の集団の関連する代表者によって、常にではないが、頻繁に要求される。合理的配慮は、希望者と交渉されなければならない。一部の状況においては、提供される合理的配慮は、共有の又は公共の利益となる場合がある。また、提供される合理的配慮が、希望者のみの利益となる場合もある。合理的配慮を提供する義務は、配慮に対する要求を受けた時点から適用される、個人化された反応型の義務である。合理的配慮は、義務を負う者が障害者個人と対話することを必要とする。合理的配慮を提供する義務は、障害者が配慮を要求した場合、又は義務を負うとされる者が、対象となる人に障害があることを実際に認識していたことが証明されうる状況に限定されるものではないということに留意することが重要である。合理的配慮は、対象となる人に障害があり、権利を行使するために障壁に対処するための配慮を必要とする可能性があったことを、義務を負う可能性がある者が認識するべきであった状況にも適用されるべきである。 25.本条約第2条及び第5条に従い合理的配慮を提供する義務は、2つの構成部分に分類することができる。一つ目の部分は、障害者が自らの権利を享受又は行使できるようにするために特に必要な場合に、必要若しくは適切な変更又は調整という形で、合理的配慮を提供する積極的な法的義務を課している。この義務の2つ目の部分は、必要とされるこうした合理的配慮が、その義務を負う者に均衡を失した又は過度の負担を課さないようにするということである。 (a)「合理的配慮」は一つの用語であり、「合理的」という言葉は例外規定として誤解されるべきではない。「合理性」の概念は、義務に対する特有の限定語や修飾語としての役割を果たすべきではない。それは、配慮のコストや資源の利用可能性を評価するための手段ではない。これは、後の段階で「均衡を失した又は過度の負担」の評価が実施される際に発生する。むしろ、配慮の合理性とは、障害者に対するその妥当性、適切性及び有効性に言及するものである。配慮がその目的を達成し、障害者の要求事項を満たすように調整されている場合には、その配慮は合理的である。 (b)「均衡を失した又は過度の負担」は、合理的配慮を提供する義務の限度を設定する単独の概念と考えられるべきである。いずれの用語も、合理的配慮の要求は、配慮を提供する側に対する潜在的に過剰な又は不当な負担によって限定される必要があるという同じ概念に言及している限りにおいて、同義語と考えられるべきである。 (c)「合理的配慮」は、「積極的差別是正措置」を含む、「特別措置」と混同されるべきではない。いずれの概念も事実上の平等の実現を目指すものであるが、合理的配慮が無差別の義務である一方、特別の措置は権利行使による利益からの歴史的及び/又は制度的/体系的な排除に対処するために、障害者を他の人々よりも優遇する措置を示唆している。特別の措置の例には、民間部門における障害のある女性の低雇用率に対処するための暫定的措置や、障害のある学生の高等教育進学率を向上するための支援プログラムなどがある。同様に、合理的配慮は、自立的に生活し、地域社会に包容される権利に基づく介助者や、法律的権限を行使するための支援などといった支援の提供と混同されるべきではない。 (d)司法へのアクセスに関連する「手続的配慮」は、合理的配慮と混同すべきではない。後者は不均衡性の概念によって限定されるが、手続的配慮はそうではない。 26.合理的配慮を提供する義務を実施する上での指針となる主要な要素には以下が含まれる。 (a)関連する障害者との対話により、障害者の人権の享有に対する影響を及ぼす障壁を特定し、これを除去する。 (b)配慮の実行可能性(法的又は実質的)を評価する−法的又は実質的に不可能な配慮は、実行不可能である。 (c)対象となる権利を確実に実現する上で、その配慮が妥当であるか否か(つまり、必要性及び適切性)、又は効果的であるか否かを評価する。 (d)変更が義務を負う者に対して均衡を失くした又は過度の負担を課すか否かを評価する。合理的配慮が均衡を失くした又は過度の負担であるか否かを判定するためには、採用された手段と、関連する権利を享受するというその目的の間の比例関係の評価が必要となる。 p8 (e)合理的配慮が、平等及び障害者に対する差別解消の促進という本質的な目標の達成に適したものであることを徹底する。このため、合理的配慮の義務を負う関連団体と関連する人との協議に基づくケース・バイ・ケースのアプローチが必要となる。考慮すべき潜在的要因には、財務費用、利用可能な資源(公的助成金を含む)、配慮を提供する当事者の(その全体としての)規模、その団体又は企業に対する変更の影響、第三者の便益、その他の人々への否定的影響及び合理的な安全衛生要件などが含まれる。締約国全体、及び民間部門企業に関しては、組織体制内のユニットや部門のリソースだけでなく、全体的な資産を考慮しなければならない。 (f)より幅広い範囲の障害者が費用を負担しなくてもよいように徹底する。 (g)合理的配慮の義務を負う者が、自らの負担が均衡を失くした又は過度であることを主張する場合、自らがそれを証明する責任を負うように徹底する。 27.合理的配慮を拒否する正当な理由は、客観的基準に基づき、分析の上、関係する障害者に適時に伝達しなければならない。合理的配慮の正当性の検証は、義務を負う者と権利保有者の間の関係の期間の長さに関係する。   E.特別の措置に関連する第5条4 28.差別と見なされないための特別措置は、障害者の事実上の平等を加速又は実現することを目的とする、積極的又は肯定的な措置である。これらの措置は、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約の第4条、及び、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約の第1条(4)など、その他の国際人権条約に規定されており、少数派の又は社会的に取り残されたグループのための特定の利益を採用又は維持することを必要とする。それらは、通常は暫定的な性質ものであるが、ただし、一部の例においては、特定の機能障害や社会の構造的障壁などといった背景又は状況により、恒久的な特別措置が必要とされる場合がある。特別措置の例には、アウトリーチ及び支援プログラム、資源の配分及び/又は再配分、対象を限定した求人、採用又は昇進、割当制度、育成又は権限付与措置、並びに介護及び技術的支援などが含まれる。 29.本条約第5条4の下で締約国によって採用される特別の措置は、その全ての原則及び規定に準拠していなければならない。特に、それらが、障害者に対する疎外、隔離、固定観念、烙印、又はその他の方法による差別の永続化をもたらすことがあってはならない。したがって、締約国は、特別の措置を採用する際に、障害者を代表する団体と密接に協議し、積極的に関わらなければならない。   VI.本条約の下における無差別及び平等に関する締約国の一般的義務 30.締約国は、無差別及び平等に対する障害者の権利を尊重、保護、及び充足する義務を有する。この点において、締約国は障害者を差別するいかなる行為も慎まなければならない。特に、締約国はそのような差別に該当する既存の法律、規制、習慣及び慣習を変更又は廃止しなければならない。当委員会は、この点に関する例を頻繁に提示している。これには、後見人法及び法的能力に対する権利を侵害するその他の規則※6、差別的であり廃止しなければならない強制収容及び強制治療を合法化する精神保健法※7、障害のある女子及び女児の同意のない避妊手術、アクセシブルではない住居及び収容政策※8、隔離教育に関する法律及び政策※9、及び障害者の選挙権を剥奪する選挙法※10が含まれる。 ※6 障害者権利委員会の、法の前の平等な認識に関する一般的意見第1号(2014年)参照。 ※7 障害者権利委員会の第14条に関するガイドライン、パラグラフ6及び14を参照。当委員会のウェブページ(www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRPD/Pages/CRPDIndex.aspx)から入手可能。 ※8 例として、自立した生活及び地域社会への包容に関する一般的意見第5号(2017年)、パラグラフ46を参照。 ※9 包摂的な教育に関する一般的意見第4号(2016年)、パラグラフ24を参照。 ※10 See Bujdoso et al v.Hungary (CRPD/C/10/D/4/2011). p9 31.平等及び無差別に対する権利の効果的な享有には、以下のような強制措置の採用が必要となる。 (a)本条約の下における障害者の権利、差別の意味及び既存の司法上の救済措置に関する、あらゆる人々の認識を高める措置 (b)本条約に含まれる権利が、国内裁判所において実行可能であることを徹底し、差別を経験した人々に対して司法へのアクセスを提供する措置 (c)平等規定の遵守を強制することを目的とした苦情又は訴訟に対する、不利な扱い若しくは不利な結果などの報復からの保護 (d)平等の権利を実現することに正当な利益を有する結社、組織又はその他の法人を通して訴訟の提起及び申し立てを行う法的権利 (e)障害者の能力に関する固定観念化された姿勢が、差別の被害者が救済を得ることを阻害することにつながらないように徹底するための、証拠及び証明に関する特別の規則 (f)平等に対する権利及び適切な救済措置の違反に対する、効果的で、相応で、かつ抑止的な制裁 (g)差別訴訟の原告に対して司法へのアクセスを確保する、十分かつアクセシブルな法的支援の提供 32.締約国は、交差差別に直面している人々も含め、包摂的平等を促進又は実現するための特別の措置を必要とする障害者の分野又はサブグループを特定しなければならない。締約国は、それらのグループに対する特別の措置を採用する義務を負っている。 33.締約国の協議義務について、本条約の第4条3及び第33条3は、障害者団体が本条約の実行及び監視において果たさなければならない重要な役割を強調している。締約国は、児童、自閉症の人々、遺伝的若しくは神経的な病状のある人、希少疾患又は慢性疾患のある人々、白皮症の人々、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー若しくはインターセックスの人々、先住民の人々、農村コミュニティ、高齢者、女子、武力紛争の被害者、及び少数民族若しくは移民の経歴を有する人々を含む、社会における幅広い多様性を代表する、それらの団体と密接に協議し、積極的に関与するように徹底しなければならない。それを実現してからでなければ、複合差別及び交差差別を含む、あらゆる差別への取り組みは期待できない。 34.締約国は、本条約の第5条に関連し、不平等、不利をもたらす差別的慣習及び行動様式を特定し、平等を促進する措置の有効性を分析するために、適切なデータ及び調査情報を収集し、分析しなければならないという情報義務を有している。当委員会は、多くの締約国において、障害の差別に関する最新の情報が不足しており、そして、国内法及び規制によって容認されている場合においては、機能障害、ジェンダー、性別、性自認、民族、宗教、年齢、又はその他の個性の層に従う区別が行われていないことが多いということを確認した。こうしたデータ及びその分析は、効果的な差別解消及び平等のための措置を策定するために最優先されるべき重要性を持つ。 35.締約国は、障害に対する差別及び障害者の平等な権利に関する適切な調査を実施するべきである。調査事項は、障害者が調査に有意義に参加できるように、調査事項設定段階から、障害者を調査プロセスに関与させなければならない。包摂的かつ参加型の調査プロセスにおいては、参加者にとっての安全な空間を確保し、障害者の生活体験及び要求事項を中心に据えるべきである。 p10   VII.本条約のその他の特定の条項との関連   A.障害のある女子に関する第6条 36.障害のある女子及び女児は、複合差別及び交差差別を最も頻繁に経験する障害者のグループの一つである。※11第6条は、分野横断的な条項であり、本条約の全ての規定と関連づけて考慮されなければならない。※12「複合差別」という用語は第6条にしか言及されていないが、複合差別及び交差差別は2つ以上の根拠の組み合わせで発生する場合がある。第6条は、障害のある女子及び女児に対する差別を禁止し、締約国に機会及び結果の両方の平等を促進する義務を課す、拘束力のある平等及び無差別に関する条項である。さらに、第6条は、第7条と同様に、全てを網羅しているものではなく例示的なものであり、複合差別及び交差差別の2つの代表的な例に関する義務を規定するものとして解釈されなければならない。 ※11 女子差別撤廃委員会の、本条約の第2条の下における締約国の中核的義務に関する一般的勧告第28号(2010年)、パラグラフ31参照。 ※12 障害者権利委員会の一般的意見第3号、パラグラフ12参照。   B.障害のある児童に関連する第7条 37.障害のある児童は、複合差別及び交差差別を頻繁に経験する。締約国は、あらゆる形態による児童に固有の障害に基づく差別を禁止し、効果的かつアクセシブルな救済措置を提供し、差別を防止・撤廃するために市民及び専門家の間での意識向上を図らなければならない。例えば、多くの締約国において、児童は「しつけ」又は「安全」といった言葉を隠れみのとして、合法的に暴行を受ける場合がある(例:拘束)。こうした体罰は、障害のある児童に偏って影響することが多い。締約国は、あらゆる状況において、あらゆる形態の児童への体罰、並びに残虐で非人道的及び品位を傷つける取り扱いを禁止し、この禁止を執行するために適当な措置が講じられることを確保しなければならない。 38.児童の権利に関する条約の第3条に含まれる「児童の最善の利益」の概念は、状況を慎重に考慮した上で、障害のある児童に適用するべきである。締約国は、児童及び青少年に関する一般的な法律及び政策の中で、障害者を本流に組み込むことを推進するべきである。ただし、最善の利益の概念は、児童が、特に障害のある女児が、身体の完全性の権利を行使することを阻止するべきではない。これは、障害のある児童が、自己の状況に関連する全ての意思決定プロセスにおいて、情報を提供され、意見を求められ、意見を述べる機会を与えられるように徹底するために利用されるべきである。特に、締約国は、家族の中で養育される権利を否定された障害のある児童への暴力及び施設収容について、差別の問題として対処すべきである。締約国は、児童が自分の家族とともに、又は地域社会における代替家族による養育の下に暮らすことを支援する、脱施設化戦略を実施すべきである。また、締約国は、障害のある全ての児童が、議会、委員会及び政治意思決定機関を含め、彼らに影響を及ぼすあらゆる手続において、意見を傾聴される権利を行使できるようにするための支援措置を採用すべきである。   C.意識の向上に関する第8条 39.政府及び社会のあらゆる部門において意識の向上がなければ、差別と闘うことはできない。したがって、無差別及び平等のための措置には、適当な意識向上措置、及び障害に対する複合的な軽蔑的固定観念及び否定的な態度を変えるか又は撲滅するための措置が伴っていなければならない。さらに、暴力、有害な慣習及び偏見も、意識向上運動によって対処しなければならない。締約国は、特にメディアが、障害者について本条約の目的に一致した形で表現すること、及び、障害者について彼ら自身や他者にとって危険である、又は、自律性のない病人で、介護に依存し、社会に対する非生産的な経済的・社会的負担であるなどと非現実的な表現を使用するような、障害者に関する有害な見方を訂正することを奨励するための措置を講じるべきである。 p11   D.施設及びサービス等の利用の容易さに関する第9条 40.アクセシビリティは、障害者に対する事実上の平等を実現するための前提条件であり、手段である。障害者が効果的に地域社会に参加できるようにするために、締約国は構築環境、公共輸送、及び情報通信サービスのアクセシビリティに取り組み、全ての障害者に対して他の者との平等を基礎として利用可能かつ使いやすくしなければならない。通信サービスにおけるアクセシビリティには、社会及び意思疎通のための支援の提供も含まれる。 41.前述した通り、アクセシビリティと合理的配慮は、平等に関する法律及び政策の2つの明確に異なる概念である。 (a)アクセシビリティの義務はグループに関連し、段階的に実施しなければならないが、ただし、無条件に実施しなければならない。 (b)合理的配慮の義務は、これに対し、個人化され、全ての権利に直ちに適用され、不相応さによって限定される場合がある。 42.構築環境、公共輸送、及び情報通信サービスのアクセシビリティの段階的な実現には時間がかかるため、個人に対する当面のアクセスを提供する手段として、即時の義務である合理的配慮を利用してもよい。当委員会は、締約国に対し、アクセシビリティに関する一般的意見第2号(2014年)を指針とすることを要求する。   E.危険な状況及び人道上の緊急事態に関する第11条 43.無差別は、危険な状況及び人道上の緊急事態においても、そのような状況に固有の、障害者に対する差別の危険性上昇に対処するため、人道的軍縮法を含む国際人道法の義務にも基づき、確保しなければならない。 44.障害のある国際的避難市民及び/又は障害のある難民は、水、下水処理、食料及び避難所などといった基本的な必需品に対する平等なアクセスを欠いている場合が多い。例えば、仮設トイレやシャワーなどの、アクセシブルな衛生施設が存在しないか、又は不十分である。 45.危険な状況及び人道上の緊急事態における障害のある女子及び女児は、特に性的暴行、搾取、虐待などの暴力の対象となるリスクが上昇し、回復及びリハビリテーション・サービス、又は司法を利用できる可能性が低下する。※13 ※13 一般的意見第3号、パラグラフ49〜50参照。 46.したがって、締約国はあらゆるプログラム及び行動において無差別の原則を確保する必要がある。これは、国家の緊急事態手順に障害者を平等な条件で含めること、避難のシナリオに障害者を全面的に含めること、アクセシブルな情報通信ヘルプライン及びホットラインを提供すること、人道上の緊急事態において利用が容易な、無差別な方法で人道的支援物資が障害者に分配されるように確保すること、並びに緊急シェルター及び難民キャンプにおいて水、下水処理、及び衛生施設を障害者に対して利用可能かつ利用が容易であるように確保することを意味する。緊急事態の後に、アクセシブルな復興が、社会における障害者の平等の決め手となる。こうした要素を確保するために、締約国は、緊急事態のあらゆる段階に関連する法制度及び政策の設計、導入、監視及び評価において、障害者を代表する団体を通して障害者と密接に関わらなければならない。 p12   F.法律の前にひとしく認められる権利に関する第12条 47.法的能力の権利は、基準となる権利である。すなわち、それは平等及び無差別の権利を含め、本条約のその他のほとんど全ての権利の享有のために必要となる。第5条及び第12条は、根本的につながっている。それは、法の前の平等には、障害者による他の者との平等を基礎とする法的能力の享有が含まれなければならないからである。法的能力の否定を通した差別は、状態に基づく制度、機能及び結果に基づく制度を含む、様々な形で現れる場合がある。これらの制度を通した、障害に基づく意思決定の否定は、差別的である。※14 ※14 一般的意見第1号、パラグラフ15参照。 48.本条約の第5条の下における合理的配慮の義務と、第12条(3)の下における法的能力を行使する障害者に提供しなければならない支援の主な相違は、第12条(3)の下における義務には、一切の限度がないことである。能力を行使するための支援が均衡を失くした又は過度の負担を課す可能性があるという事実は、それを提供する必要性を制限しない。 49.本条約の第5条と第12条の間の一貫性を確保するために、締約国は以下を行うべきである。 (a)状態に基づくモデル、機能又は結果に基づくモデルを前提として、法的能力の差別的な否定を禁止するために、既存の法律を改革する。適切である場合には、いかなる形態の差別もない普遍的な成人の法的能力を考慮し、それらの法律を、意思決定支援のモデルによって置き換える。 (b)障害者による既存の法制度の円滑な活用を支援するために、意思決定支援制度へのリソースを提供する。それらのサービスの法制化及びリソース提供は、法の前に等しく認められる権利に関する一般的意見第1号(2014年)のパラグラフ29に特定されている主要な規定と合致しているべきである。これには、支援制度を、彼らの最善の利益であると認識されるものではなく、支援を受ける人々の権利、意思及び選好を有効にすることを基準とすることが含まれる。個人の意思及び選好を判断することが現実的ではない場合には、意思及び選好の最善の解釈によって、成人に関連するあらゆる事項の最善の利益の概念の代用とするべきである。 (c)締約国は、アクセシブルで、現地において利用可能で、利用基準が低い、高品質で無料のカウンセリング又は法的支援のネットワークを確立することによって差別に対する保護を提供すべきである。そのネットワークは、それらの人々の意思と選好を尊重し、同時にその手続上の権利(法的能力に対する権利)を、その他の種類の法定代理と同じレベルで保護しなければならない。締約国は、保護の手段が、法的能力の排除やその他の方法による障害者の司法へのアクセスを妨害することに基づくことがないように常に保障しなければならない。 50.法的意思決定者、サービス提供者又はその他の利害関係者などの関連機関に対し、訓練及び教育が提供されるべきである。締約国は、金融問題に関連する財産又はサービスなど(例:抵当)、障害者が特に排除される財の例を提示する第12条(5)に挙げられている財及びサービスを含め、社会で提供されている全ての財及びサービスの平等な享有を保障する義務を負う。第25条(e)は、通常は障害者に対する提供が限られているもう一つのサービス、つまり、生命保険及び(民間の)健康保険について言及している。締約国は民間部門における財及びサービスの平等な享有を確保するための積極的、包括的な手段を講じるべきである。これには、民間部門への適用に関する差別解消法の強化が含まれる。変化をもたらすことに積極的な相手を見つけるために、労働組合及びその他の当事者の協力を、利用すべきである。 p13   G.司法手続の利用の機会に関する第13条 51.第5条に示された平等及び無差別に関する権利及び義務は、特に手続的配慮及び年齢に適した配慮の提供を要求する、第13条に関する特別な考慮を提起している。これらの配慮は、手続的配慮は不均衡性によって制限されないという点において、合理的配慮と区別することができる。手続的配慮の一例は、裁判所や法廷に出席する障害者の様々な意思疎通方法の認識である。年齢に適した配慮は、苦情を申し立て、年齢に適した平易な言語を利用した司法手続にアクセスするための利用可能な仕組みに関する情報を広めることによって構成される。   1.第13条(1) 52.効果的な司法手続の利用を確保するため、プロセスは参加を可能にし、透明性がなければならない。参加を可能にする行動には以下が含まれる。 (a)理解可能かつアクセシブルな方法による情報の提供 (b)多様な形式の意思疎通の認識及び配慮 (c)プロセスの全段階を通した物理的な利用の容易さ (d)該当する場合、手段及びメリットの法定上の検証に従う法的支援における財務的支援 53.支援を提供された場合においても自己を差別から防御することができない人々、又はその試みによる否定的な結果に対する恐れによって選択肢が著しく限定される人々を保護することができる適切な措置は、公共の利益となる行動(actio popularis)である。 54.さらに、透明性を提供するために、締約国の行動が、全ての関連情報がアクセシブルで入手可能であること、並びに、全ての関連する申し立て、訴訟及び裁判所命令が十分に記録及び報告されることを確保するものでなければならない。   2.第13条(2) 55.権利と義務に対する適当な尊重と成就を奨励するため、法執行官に対する研修を実施し、権利保有者の意識を向上し、義務を負う者の能力を構築することが必要である。適当な研修には、以下が含まれるべきである。 (a)交差性の複雑さ、及び、人々は純粋に機能障害だけに基づいて特定されるべきではないという事実。交差性の問題に関する意識向上は、特定の形態の差別及び迫害に関連するものであるべきである。 (b)障害者の多様性、及び他の者との平等を基礎として司法制度の全ての側面に効果的にアクセスするための障害者の個別の要件 (c)障害者の個別の自立性、及び全ての人々にとっての法的能力の重要性 (d)包容を達成する効果的かつ意義ある意思疎通の重要性 (e)弁護士、判事、裁判官、刑務所職員、手話通訳者及び警察を含む人員の、障害者の権利に関する効果的な研修、並びに刑務所制度を確保する措置の採用 p14   H.身体の自由及び安全に関する第14条、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由に関する第15条、搾取、暴力及び虐待からの自由に関する第16条、個人をそのままの状態で保護することに関する第17条 56.障害者は、暴力、虐待及びその他の残虐で品位を傷つける処罰によって不当に影響を受ける場合があり、これは拘束、隔離、及び暴力的な攻撃の形で行われる場合がある。当委員会は、言うまでもなく差別的である、機能障害を根拠とした児童に対するものを含め、障害者に対する以下の行為について特に懸念している:障害のある児童の家族からの分離及び施設への強制収容、自由の剥奪、拷問又は残虐、非人道的、又は品位を傷つける扱い若しくは刑罰、暴力、並びに精神療養施設の内部及び外部における障害者の強制的な扱い。締約国は、障害者に対するあらゆる形態の搾取、暴力及び虐待からの保護を提供し、それらを防止するために、あらゆる適当な措置を講じなければならない。障害の強制的矯正治療は、禁止されるべきである。   I.自立した生活及び地域社会への包容に関する第19条 57.本条約の第19条は、無差別、及び障害者が地域社会へ完全な包容と自立した参加によって生活する平等の権利の認識を再確認している。自立して生活し、地域社会に包容される権利を実現するために、締約国は権利の完全な享有及び地域社会における障害者の完全な包容及び参加を促進するための、効果的かつ適当な措置を講じなければならない。これには、脱施設戦略の実行、並びに、自立した生活及び地域社会への包容に関する一般的意見第5号(2017年)に従い、独立生活支援サービス、アクセシブルで手頃な価格の住居、在宅介護者のための支援サービス、及び包容的な教育の利用に対するリソースを配分すること含む。 58.本条約の第19条は、障害を理由として特定の生活施設に居住する義務を負わない権利について認識している。施設収容は、それが地域社会における障害者のための支援及びサービス創出の怠慢を示し、障害者が措置を受けるために地域社会での生活に参加することを断念することを強いられるという意味において、差別的である。公共部門において精神療養サービスを受ける条件としての障害者の施設収容は、障害に基づく差別化した扱いに該当し、それゆえに差別的である。 59.支援サービスを利用するための資格基準及び手続は、無差別的な方法で規定しなければならず、人権に基づくアプローチに従い、機能障害ではなく、個人の必要事項に焦点を当てなければならない。支援サービスの開発は、人を中心として、年齢及び性別に配慮し、文化の上で適当なものであるべきである。 60.締約国は、自立して生活し、地域社会に包容されることに対して、第三者が事実上又は手続上の障壁を課すことを禁止し、これを防止するべきである。これは、例えば、サービスが自立した地域社会での生活に適したものであることを確保すること、及び、住宅市場において障害者が賃貸を拒否されたり、不利な扱いを受けたりすることがないことを確保することなどによって行う。   J.家庭及び家族の尊重に関する第23条 61.障害者は、差別的な法律、政策及び行政措置によって、結婚する権利、又は親及び家族としての権利を行使する上での差別に直面することが多い。障害のある親は、自分の子供たちの世話を十分に見られない、又は見ることができないと見なされることがよくある。子供又は両親の障害を根拠として、子供を両親から引き離すことは、差別であるとともに第23条の違反に該当する。 62.機能障害に基づいて児童を施設に収容することも、本条約の第23条(5)によって禁止されている差別の一形態である。締約国は、障害のある親及び障害のある子供の親が、地域社会において自分の子供を養育するために必要な支援を受けられるように確保しなければならない。 p15   K.教育に関する第24条 63.一部の締約国が、障害のある学生(目に見える障害又は目に見えない障害のある学生、及び複合的な形態の差別又は交差的な差別を経験している学生を含む)に対して、包容的で質の高い教育を行っている普通学校の平等な利用の提供を怠っていることは、差別的であり、本条約の目的に反しており、かつ第5条及び第24条に直接的に違反している。第5条(1)は第24条と相互に関係しており、締約国に対し、法的及び社会的障壁を含め、包容教育に対するあらゆる種類の差別的障壁の撤廃を求めている。 64.障害に基づき障害のある学生を普通教育及び包容教育から阻害する教育の分離モデルは、本条約の第5条2及び第24条1(a)に違反している。第5条3は、締約国に対し、合理的配慮が提供されるようにあらゆる適当な措置を講じることを要求している。その権利は本条約の第24条2(b)によって強化されており、そこでは、締約国に対し、他の者との平等を基礎として、障害者が生活する地域社会において、障害者に対する包容教育を確保することを要求している。その目標は、第24条2(c)に従い、個々の要求事項に対する合理的配慮を提供し、ユニバーサルデザインに従い新たな包容的な環境を発展させることによって実現することができる。障害のある学生を直接的又は間接的に排除する入学試験を含め、標準化された評価システムは差別的であり、第5条及び第24条に違反している。締約国の義務は、学校以外にも及ぶ。締約国は、社会的又は経済的障壁によって交通の選択肢が限られている場合、全ての障害のある学生に対して学校までの交通手段が提供されることを確保しなければならない。 65.教育環境において、ろうの児童の平等及び無差別を確保するために、他のろうの仲間、及びろうの成人による模範の存在する、手話学習環境を提供しなければならない。ろうの児童の教員に優れた手話の技能がないこと、及びアクセシブルでない学校の環境は、ろうの児童を疎外し、それゆえに、差別的であると考えられる。当委員会は、締約国が第5条及び第24条の下における義務を充足するための措置を実施する際に、包容的な教育に対する権利に関する一般的意見第4号(2016年)を指針とすることを要求する。   L.健康に関する第25条 66. 本条約の第5条及び第25条の下において、締約国は障害者に対する医療サービスの差別的な拒否を禁止し、これを防止しなければならず、性及び生殖に関する健康の権利を含め、性別に配慮した医療サービスを提供しなければならない。締約国は、自由及びインフォームドコンセントに基づく医療を受ける権利の侵害を通して、障害者の健康の権利を妨げ、障害者の権利を侵害する形態の差別※15、又は施設若しくは情報をアクセシブルではないものにする形態の差別※16に対処しなければならない。 ※15 一般的意見第1号、パラグラフ41参照。 ※16 一般的意見第2号、パラグラフ40参照。   M.労働及び雇用に関連する第27条 67. 本条約に鑑み事実上の平等を実現するために、締約国は労働及び雇用に関連して、障害を根拠とする差別が発生しないことを確保しなければならない。※17第5条(3)に規定された合理的配慮を確保するため、及び第5条(4)に規定された労働環境における事実上の平等を実現又は促進するために、締結国は以下を実施しなければならない。 ※17 国際労働機関「雇用及び職業についての差別待遇に関する条約」、1958年(第111号)、及び、「障害者の職業リハビリテーション及び雇用に関する条約」、1983年(第159号)参照。 p16 (a)障害者にとっての分離された労働環境からの移行を促進し、開かれた労働市場において障害者の関わりを支援し、また、一方で、その状況における障害者の労働権の即時の適用性を保障する。 (b)職業支援、労働コーチング及び職業資格プログラムを含め、雇用支援の権利の促進、障害のある労働者の権利の保護、並びに、雇用を自由に選択する権利の確保 (c)障害者が最低賃金以上の報酬を受け取ること、及び、労働を開始することによって障害手当の給付を喪失しないことを確保する。 (d)合理的配慮の拒否を明示的に差別として認め、複合的な差別及び交差的な差別、並びにハラスメントを禁止する。 (e)非差別的方法による、障害者の就職及び退職への適切な移行を保障する。締約国は、退職手当や失業手当など、手当及び給付金制度の平等かつ効果的な利用を確保する義務を負う。こうした給付金制度が雇用からの排除によって侵害されることによって、排除の状況をさらに悪化させることがあってはならない。 (f)公共部門及び民間部門において、包容的かつアクセシブル、安全かつ健全な労働環境での労働を促進する。 (g)包括的戦略の一般として、障害者が自己の管理者との定期的な評価会議を通し、及び達成すべき目標を定義することによって、昇進の機会に関する平等な機会を享有できるように確保する。 (h)障害のある従業員のための職業訓練及び能力構築を含め、研修、再研修及び教育の利用を確保し、雇用者、従業員の代表団体、従業員及び、組合並びに管轄当局に対し、障害者の雇用及び合理的配慮に関する研修を提供する。 (i)無差別で障害者に対して包容的な労働安全衛生規制を含め、障害者にとって普遍的に適用できる労働安全衛生措置の実施に向けて取り組む。 (j)障害者が、労働組合を利用する権利を認める。   N. 相当な生活水準及び社会的な保障に関する第28条 68.当委員会の一般的意見第3号のパラグラフ59に規定されている通り、貧困は複合要素であるとともに、複合的な差別の結果でもある。障害者の権利を、自己及びその家族にとって相当な生活水準で実施できないことは、本条約の目的に反することである。これを実現できないことは、特に極貧・困窮の中で生活する障害者について懸念される。障害者が他の者と比較して相当な生活水準に到達するためには、通常、追加費用が発生する。このことは、極貧・困窮の中で生活する障害のある児童又は高齢の女性にとって、特に不利となる。締約国は、障害者が障害に関連する追加費用を負担できるようにするために、効果的な措置を講じなければならない。締約国は、極貧・困窮の中で生活する障害者に、十分な食料、衣料及び住居の面で、必要最小限を提供するための措置を直ちに講じなければならない。※18 ※18 締約国の義務の性質に関する、経済的、社会的及び文化的権利委員会の一般的意見第3号(1990年)のパラグラフ10参照。 69.社会的な保障に関し、締約国はさらに、基本的保障の下限の導入を必要とされる。 p17   O. 政治的及び公的活動への参加に関する第29条 70.選挙プロセス及びその他の形態による政治活動への参加からの排除は、障害に基づく差別で、頻繁に発生する事例である。それらは、法的能力の否定又は制限と密接に関わっている場合が多い。締約国は、以下を目指す必要がある。 (a)障害者を選挙における投票及び/又は候補者としての立候補から制度的に排除する法律、政策及び規制を改正する。 (b)選挙前、選挙中及び選挙後を含め、選挙プロセスが全ての障害者にとってアクセシブルであることを確保する。 (c)個々の障害者に合理的配慮を提供し、障害者個人の要求事項に基づき、政治的及び公的活動に参加するための支援措置を提供する。 (d)国内、地域及び国際的レベルで、政治参加プロセスについて障害者代表団体を支援し、それらと関与する。これには、障害者に直接関連する問題に関する、それらの団体との協議によるものを含む。 (e)選挙から選挙までの期間も含め、障害者が継続的に政治参加することを可能にする、情報システム及び法律を整備する。   P.統計及び資料の収集に関する第31条 71.データ収集及び分析は、差別解消政策及び法律を監視するために不可欠な措置である。締約国はデータを収集し、分析すべきであり、それを障害及び交差的な分類に基づき分解しなければならない。収集されるデータは、あらゆる形態の差別に関する情報を提供するものであるべきである。収集されるデータは幅広く、統計、説明、及び、新規の又は継続中の取り組み及び政策の実施に関する評価、及びそれらの進捗及び有効性を監視する指標などのその他の形式のデータを含むべきである。障害包容指標は、持続可能な開発のための2030アジェンダと整合性のある方法で作成及び利用されなければならない。データの設計、収集及び分析は一般参加型で行われるべきである。つまり、児童を含む障害者を代表する団体との密接かつ意義のある協議を行いながら実施するべきである。収容施設又は精神科病院など、閉鎖された場所に生活する人々はデータを収集する研究や調査において見落とされがちであり、こうした調査に体系的に含むべきである。   Q. 国際協力に関する第32条 72.持続可能な開発のための2030アジェンダを含む、あらゆる国際協力の取り組みは、障害者にとって包容的かつアクセシブルなもので、本条約を指針とするものでなければならない。締約国は、持続可能な開発目標の目標10と整合性のある、人権指標を利用した監視フレームワーク、並びに各指標に対する特定のベンチマーク及び目標を作成しなければならない。全ての国際協力は、持続可能な開発のための2030アジェンダ及びその他の関連する国際人権フレームワークと整合性のある完全な包容を目指す、無差別な法律及び政策を前進させることを目的としなければならない。   VIII.国内レベルでの実施 73.上記に概要を示した規範的な内容及び義務に鑑み、締約国は本条約第5条の完全な実施を確保するために以下の手順を踏むべきである。 (a)国内の法律及び慣習を本条約と調和させることに関する調査を実行し、本条約と整合性のない差別的な法律及び規制を廃止し、障害者に対する差別的な慣習及び慣行を変更又は廃止する。 p18 (b)差別解消法が存在しない地域ではこれを策定し、幅広い個人及び物質を対象範囲に含み、効果的な法的救済措置を提供する、障害を包容する差別解消法を施行する。こうした法律は、精神的、知的又は感覚的な機能障害を含む、長期に及ぶ身体的な機能障害のある人々を含む障害の定義に基づく場合にのみ効果的であり、過去、現在、未来及び推定上の障害、並びに障害者に関連する人々も包含するべきである。法的な救済を求める、障害に基づく差別の被害者は、法による保障の利益を受けるために「十分な障害がある」ことを証明することによる負担を受けるべきではない。障害者を包容する差別解消法は、定義された保護対象の集団を対象とするものではなく、差別的な行為を法的に禁止し、防止することを目的としている。この点において、幅広い機能障害に関連する障害の定義は、本条約と一致している。 (c)差別解消法が民間及び公的な領域に広がり、教育、雇用、財及びサービスを含む領域を対象とし、かつ、隔離教育、施設収容、法的能力の否定又は制限、強制的な精神療養、手話指導及び専門家による手話通訳の提供の拒否、並びに点字又はその他の意思疎通の代替的又は拡大様式、手段及びフォーマットの拒否を含む、障害に特有の差別に対抗することを確保する。 (d)起業を促進し、生活協同組合やその他の形態の社会経済の確立を支援するものを含め、通常の雇用及び職業訓練サービスへの完全な包容を促進する。 (e)障害者の差別からの保護が、その他の社会的集団と同様の基準を持つことを確保する。 (f)本条約の遵守を確保するため、公共機関及び非公式経済内での研修を含め、知識及び能力構築プログラムを策定及び実行する。意識向上及び能力構築プログラムは、障害者及び多様な障害者を代表する団体による有意義な参加によって策定及び実行されるべきであり、差別解消法及び政策の基盤となる、寛容さ及び多様性の文化を確立する上での極めて重要な構成要素である。 (g)障害に基づく差別の苦情の件数を、差別に関する苦情の総数に対する比率として監視し、性別、年齢、特定された障壁、及び差別の疑いが発生した部門によって分類し、法廷外・法廷内で解決された訴訟、判決が下された訴訟、及び補償又は制裁につながった判決の数に関する情報を提供する。 (h)アクセシブルで効果的な救済の仕組みを確立し、他の者との平等を基礎として、障害に基づく差別の被害者による司法の利用を確保する。これには、効果的かつアクセシブルな苦情申し立ての仕組みを含む、全ての障害者による効果的な司法及び/又は行政手続の利用、並びに、(該当する場合、かつ、手段及びメリットの法定上の検証を条件として)適当かつ手頃な価格の質の高い法的支援の利用を包含する。締約国は、市民権及び政治的権利、並びに経済、社会及び文化的な権利の両面に関連して、公共及び民間の当事者による、障害者個人及び障害者の集団の平等及び無差別の権利に違反する行動又は不作為が発生した場合に、効果的にかつ適時に介入を行うべきである。集団的な性質を持つ司法的救済措置、又は集団訴訟の認識は、障害者の集団に影響する状況において、効果的に司法の利用を保障することに著しい貢献がある。 (i)国内の差別解消法に、平等規定の遵守を執行することを目的とする苦情又は訴訟に対する反応としての不利な扱い又は不利な結果から、個人を保護する規定を設ける。また、差別解消法は、差別の被害者が救済の取得を不当に妨害されることがなく、再び被害者となることがないように、確保すべきである。特に、手続に関する規則は、差別があったことが推定される事実がある場合、民事訴訟における証明の義務を原告から被告に移動すべきである。 (j)障害者団体、国内人権機関、及び平等機関などのその他の関連する利害関係者と密接に協議しながら、障害者にとって包容的かつアクセシブルな平等政策及び戦略を策定する。 p19 (k)政府のあらゆる部局の職員、及び民間部門を含む社会のあらゆる分野において、全ての障害者の無差別及び平等の権利の範囲、内容及び実質的な影響に関する知識を強化する。 (l)包容的平等を定期的かつ包括的に監視する適当な措置を採用する。これには、障害者の状況に基づき分解されたデータを収集及び分析することを含む。 (m)本条約の第33条の下における国内の監視の仕組みが独立しており、障害者を代表する団体を効果的に関与させ、かつ、障害者に対する差別に対処するための相当な資源が配分されていることを確保する。 (n)障害者が固有又は不相応に経験する暴力、搾取及び虐待事象、並びに身体の完全性の侵害を防止及び是正するための特別な保護を提供し、相当な注意を行使する。 (o)特に、女子、女児、児童、高齢者及び先天的な障害のある人々など、交差差別を経験する障害者のために、包容的平等を実現することを目的とする特別の措置を採用する。 (p)多数の亡命者、難民又は移民を受け入れる締約国は、受入施設及びその他の環境において、障害のある女子及び児童、並びに心理社会的及び知的障害者を含む障害者のアクセシビリティを確保するために、公式な、法的に定義された手続を整備すべきである。締約国は、障害者に対して心理社会的及び法的カウンセリング、支援、及びリハビリテーションが提供され、保護サービスが障害、年齢及び性別に配慮し、文化的に適当なものであることを確保しなければならない。