資料1 p1   障害者政策委員会(第46回)における発言関連資料 2019年10月17日 経団連 SDGs本部長 長谷川 知子   1包摂的な社会の実現に向けた経団連の取組みについて   (1)企業行動憲章の改定  経団連では、2017年11月、会員企業が遵守する行動原則である「企業行動憲章」をSociety 5.0の実現を通じたSDGsの達成を柱に改定した。改定憲章は、その理念を「持続可能な社会の実現のために」とし、企業がイノベーションによる経済成長と社会的課題の解決の両立を目指すことで、持続可能な社会の実現を牽引する役割を担うことを打ち出した。併せて、2011年の国連における「ビジネスと人権に関する指導原則」の採択などを踏まえ、新たに独立した条文としては、初めて第4条に「すべての人々の人権を尊重する経営を行う」を加えた。さらに、憲章の各条文に関する基本的な考え方や、企業が具体的に実践していく上で参考となるアクションプランの事例をまとめた「実行の手引き」の中で、以下の項目を挙げている。経団連の会員企業は、改定憲章を踏まえ、自社の取り組みの見直しや強化に取り組んでいる。  企業行動憲章「実行の手引き」におけるアクションプラン例 1多様な人材の就労・就職を可能とする人事・処遇制度を構築し、ダイバーシティ・インクルージョンを推進 2働き方の見直しを図り、ワークライフ・バランスを推進 3ユニバーサルデザインの普及の推進 4インクルーシブ・ビジネス(事業活動に社会的に弱い立場の人々を組み込む)の取り組み   (2) ユニバーサル社会の実現に向けた取組み  経団連が目指すSociety 5.0は、「デジタル革新と多様な人々の想像・創造力の融合によって、社会の課題を解決し、価値を創造する社会」であり、その実現によって、効率重視や画一性、格差等のさまざまな制約から解放されるとともに、だれもが多様な生活や幸せを追求できるようになる。その推進力であるデジタル革新を最大限活用することで、あらゆる人々が活躍できる「ユニバーサル社会」の構築に貢献することができる。 そこで、経団連では、人々の考え方・行動・価値観のパラダイムを「ユニバーサル」対応を標準とする方向にシフトしていく上で役立つような企業や団体、 p2 行政における事例を集め、横展開を呼びかけている。 ユニバーサル社会の実現に向けた取組み事例の分類> 1適切な対応のための知識・意識の共有、2移動、旅行等のアクセシビリティの確保、3あらゆる人々のニーズへのきめ細かい対応、4より豊かな生活などの、さらなる付加価値の創出、5誰が利用しても間違い、事故が起きないような商品・サービスの安心・安全の確保   (3)心のバリアフリーに向けた取組み  高齢化・少子化の急速な進展や訪日・在日外国人の急増、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催等を背景として、各企業は「心のバリアフリー」や「ユニバーサルマナー」の研修・実践に取り組んでいる。特に店舗を持ち顧客との接点が多い企業では、ハードの改善だけで対応できない部分に関して高齢者・障害者に心地の良いサポートを実践できるよう、従業員の意識改革やマナーの取得に取り組んでいる。 経団連1%クラブでも、2017年に日本ユニバーサルマナー協会、ミライロ、社会福祉協議会と連携して、企業に勤める人々のためのユニバーサルマナー検定を実施し、同様の取り組みを企業に呼びかけている。   2障害者差別解消法の見直しに関して  これまで述べてきたように、SDGsの理念を踏まえて「誰一人とり残さない」包摂的で持続可能な社会の実現に向けて、企業は自主的な取組みを進めている。その中で、障害者差別解消法において一律に事業者による合理的配慮の提供を義務化することについては、中小・地方も含む全ての事業者や業界団体など、幅広いステークホルダーの意見を聴いて、慎重にその妥当性を検討することが不可欠である。 その理由として、合理的配慮は、個々の場面における社会的障壁のために必要とされる合理的な取組みであり、個別具体的な対応が求められる。内閣府の「合理的配慮の提供等事例集」にも、当然必要な配慮から、ケースバイケースで判断せざるを得ない事例まで、膨大な事例が掲載されている。定義や範囲の特定が難しい「合理的配慮」の提供を義務化することは、かえって、事業者の心理的バリアや対応を硬直的なものにし、それぞれの場面における建設的な対話や柔軟な対応を阻害するリスクもある。 仮に、一律に義務化する場合は、合理的配慮の定義や範囲、過度な負担と認められる事項などを明らかにした上で、政府が、あらゆる業種、規模の企業や事業者に、全国各地で再度、周知徹底するための期間を設け、段階的に導入す p3 るなどの措置や、既に条例で事業者に対しても義務化している地方自治体が直面している課題を収集・整理して、それらへの対応策を検討し、公表することなどが必要である。 以上