p1   目次 1現行の基本方針・基本計画の障害女性にかかわる記述(抜粋)p1 2障害があり女性であるために受けた経験複合差別実態調査からp2 3女性入院患者の困難について-地域移行のジェンダー格差と入院生活中の性的被害p3 4性別統計p4 5女性差別撤廃委員会日本に対する勧告(抜粋・要約)2016年p5 6障害者権利委員会日本に対する事前質問事項 (抜粋・要約)2019年10月29日p5 7複合差別実態調査報告書についてp6 8DPI女性障害者ネットワークについてp6   1現行の基本方針・基本計画の障害女性にかかわる記述(抜粋) 障害者差別解消法の基本方針2016年2月24日閣議決定 第2行政機関等及び事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関 する共通的な事項 1 法の対象範囲 (1)障害者(前段引用略)また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する。 障害者基本計画(第4次)2018年から22年度 U基本的な考え方3各分野に共通する横断的視点 (1) 条約の理念の尊重及び整合性の確保(部分引用)特に、障害者施策を審議する国の審議会等における障害者の委員については、障害種別及び性別にも配慮して選任を行うとともに、「第4次男女共同参画基本計画」(平成27年12月25日閣議決定)の定めるところにより、女性の参画拡大に向けた取組を行うものとする。(以下略) (5) 障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援  条約第6条、第7条等の趣旨を踏まえ、障害のある女性を始め、複合的に困難な状況に置かれた障害者に対するきめ細かい配慮が求められていることを踏まえて障害者施策を策定し、及び実施する必要がある。障害のある女性は、それぞれの障害の種別ごとの特性、状態により様々な支援が必要であることに加えて、女性であることにより、更に複合的に困難な状況に置かれている場合があることから、こうした点も念頭に置いて障害者施策を策定し、及び実施することが重要である。(以下略) (6)PDCAサイクル等を通じた実効性のある取組の推進 1企画(Plan) 「確かな根拠に基づく政策立案」を実現する観点から、障害当事者や障害当事者を取り巻く社会環境の実態把握を適切に行うため、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意しつつ必要なデータ収集や統計の充実を行うことが重要である。(以下略) 2実施(Do) 各府省は、障害者やその家族を始めとする関係者の意見を聴きつつ、本基本計画に基づく取組の計画的な実施に努める。また、障害者施策を適切に講ずるため、障害者の実態調査等を通じて、障害者の状況や障害者施策等に関する情報・データの収集・分析を行うとともに、障害者の性別、年齢、障害種別等の観点に留意しつつ、その充実を図る。(以下略) 上記のほかには次の箇所で障害女性について記述されている。 V各分野における障害者施策の基本的な方向3防災、防犯等の推進(防災・復興の取組 [3-(1)-10])、(暴力の予防と根絶[3-(3)-5])、5自立した生活の支援、意思決定支援の推進(相談支援体制の構築[5-(2)-1]) p2   2障害があり女性であるために受けた経験:複合差別実態調査から 収入等の格差・役割の固定・二重の差別 ・交通事故で障害者になった。遺失利益は現在の男女の就業、賃金から割り出されるので、同じ障害で同じ状況であっても、男性よりもかなり低い賠償額になってしまった。(20代・肢体) ・主治医に、「女性で良かったね。障害者になっても家族や配偶者に養ってもらえる」と言われた。女は働かない、家族が面倒を見るという考えは許せない。(20代・精神) ・家事ヘルパーの時間を減らされた。料理などの手助けがもっと欲しいが、ヘルパーさんから「女なんだから、あなたがしなさい」と言われる。(50代・知的) ・ある企業の面接で、「うちは本当なら障害者は要らないんだよ。まだ男性で見た目に分からん障害者やったらエエねんけどな〜。」と言われた。 (30代・肢体) 子どもをもつこと・育てること ・以前は母や周りから「早く結婚して子を産め」と言われたが、障害をもってから言われなくなった。そして、妊娠した時、障害児を産むのではないか?子どもを育てられるのか?といった理由で、医者と母親から堕胎を勧められた。(40代・視覚) ・子宮筋腫がわかったとき、ドクターは子宮を取れば治ると言った。私が「赤ちゃんが産みたい」というと「えっ!!」と驚かれ、それを聞いて私は大泣きした。女である自分を否定された気がした。(40代・肢体) ・自分の生活にも不足な介助を受けての子育てに不安があった。子どもへの介助があれば、子どもをもてたかも知れない。(40代・肢体) 回答者の35%が性的被害の経験を回答 今も続く異性介助の強要 訴えを信じてもらえない・どこからも助けを得られない・情報も教育機会もなかった経験多数 ・母の恋人から性的虐待を受けた。母の恋人が、私のお風呂介護をして胸等を触られ、非常に苦しい思いをした。母にそのことを言うが、信じてもらえず最悪だった。(30代・肢体) ・やっと就職できた職場の上司に「飲みに付き合え」と言われ、酔って眠ってしまい、ホテルに連れ込まれて性的暴行を受けた。その後も関係を強要され続けた。(30代・肢体) ・小学校のとき痴漢にあった。助けを求めるにもコミュニケーションがいる。聴覚障害のため助けを呼べなかった。中学生のとき同じ犯人から再び被害にあった。(20代・聴覚) ・女性だったら自分の体を知るべき、でも誰も教えてくれない。学校も教えてくれない。見直ししてほしい。正しい情報を流してほしい。(30代・知的 ・国立病院に入院中、女性の風呂とトイレの介助、生理パッドの取り替えを男性が行っていた。女性患者は皆いやがって同性介助を求めたが、体力的に女性では無理だといわれた。カーテンも開けたままで、廊下から見えた。(50代・肢体) ・今も入院している人は、この生活が続いているんですよ。泣いてた。私の友だちなんですけど、でもどこも行くところがないし、ここで我慢しなくちゃいけないし……。私たちは病棟に訴えたんですけど。もともと筋ジスは男性患者が多くて、私たちがいた時も、入院患者は男性4に対して女性は1。男性患者は女の人の介助でも、文句言う人は少ないですよ。(50代・筋ジストロフィー) ※出典の複合差別実態調査報告書についてはP6の7番を参照 p3   3女性入院患者の困難について-地域移行のジェンダー格差と入院生活中の性的被害 私からは、女性入院患者の困難についてお話ししたいと思います。具体的に言うと、生き方を選択するということのジェンダー格差について、そして、性的被害についてです。アンケート結果から統計としてちゃんと読み取れるところまでは行っていないのですが、女性入院患者の記述や女性患者から受けた相談から言えること、懸念していることをお伝えします。 筋ジス病棟の入院患者の多くは男性です。先ほどの中間まとめによるアンケート回答者も、8割が男性でした。実際に繋がる地域移行者も圧倒的に男性中心で、私が京都で女性の入院患者と繋がろうと思ってもなかなか繋がれていません。しかしこの男女の差は単なる入院患者数の差だけではなく、男性とは違う女性患者だからこその困難のせいでもあるように思います。 女性の方が、医療者からも親兄弟や親類からも、力のない存在とされてしまい、保護してあげる対象とみられがちです。施設や病院内でおとなしく過ごすべきという圧力を受けやすいです。このようなジェンダー格差は、障害の有無問わず世間一般で今も見聞きすることですが、女性患者は、女性、重度障害者、医療的ケアが必須 という三つのもと、より大きな複合差別、つまりより分け隔たれた状況に置かれているように思います。こんな状況では、自分の人生を切り開く意欲どころか、自分の希望する未来をちょっと想像してみるという発想さえ奪われてしまっていても不思議ではありません。私が京都で、女性の入院患者と何か繋りにくさを感じ、女性の地域移行者を見聞きしないのも、多分このような状況で女性がより声を出しにくいからではないかと思います。 次に性的被害についてですが、女性患者が何らかの性的な被害を受けていたとしても、そんな抑圧下では誰かに相談することがとても難しいです。入浴や排泄介助を男性職員にされるのが本当は嫌という意見が、何人かの女性入院患者からありました。DPI女性ネットの2012年の調査報告書にもまったく同じ語りがありましたが、病院によっては今でも当たり前のように入浴排泄で異性介助が行われています。そしてこの背後には、同じように不快・苦痛に感じているのに、やめてと言えないでいる女性患者が複数存在しているのを感じます。 これがさらにひどい性的虐待だったらどうでしょうか?内閣府の2014年の男女間における性暴力に関する調査によると、被害者の約7割の女性が誰にも相談しなかったというデータがあります。病院という巨大な権力の支配下で長期間生活してきた女性患者だと、なおさら誰にも言えない人が多いだろうことは、みなさんも十分すぎるほど想像できると思います。抑圧だけでなく羞恥心から、恐怖から、自己嫌悪から、絶望から、誰にも言えず、問題化できず、人知れず悲痛な状態にとどめ置かれ、力を奪われ続けると考えられます。この危機感をどうか皆さんも共有してほしいです。 また、私自身も言えない苦しみの中にいます。性的被害が過去にあったといくつか耳にしても、公にはしないでと当事者たちが言います。告発したら病院内で周囲から何を言われるか分からない、針のむしろになるのではないか?逃げ場がない、今すぐ退院して地域で生きられるわけじゃないのに…と。知っても今すぐにはどうにもできないこの現状がとても辛いです。 この現状を変えるために、誰にも言えずに苦しんでおられるかもしれない人と繋がるために、どうかみなさんの力を貸してください。ただ待っていてもその声はキャッチできません。(彼らの可能性を含め)彼女らを苦痛の日々の中に放置し続け、問題は闇に葬り去られるだけです。そうさせないために、みなさんもこちらから彼女らと積極的に繋がりを作っていってください。 以上、地域移行のジェンダー格差と女性患者が性的被害の危険にさらされやすい懸念についてお伝えしました。筋ジス病棟の中で女性をからめ取るこのような問題を考えることなしには、女性の地域移行や入院生活の現状は良くなりません。これにはどのような制度化が必要なのでしょうか。みなさんと考えたいです。 出典「筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクト」2019年11月ご承諾を得て転載 p4 性別統計   グラフ1   単身世帯の年間収入平均 「障害者生活実態調査」から (作業者注:以下棒グラフ) (単位:万円) 男性全体409.40 女性全体270.40 障害男性181.39 障害女性92.00 (作業者注:棒グラフ終了) 出典:障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究報告書 2008年3月(主任研究者 勝又幸子)81頁表18を元に作成 グラフ作成:DPI女性障害者ネットワーク   配偶者暴力相談支援センターの相談件数 (作業者注:グラフ2、グラフ3の折れ線グラフがあるが下記データ表にて折れ線グラフを説明) グラフ2相談件数全体の推移 グラフ3障害者の相談件数の推移 データ表 2013年度 女性:98,384 男性:1,577 障害女性:5,044 障害男性:37 2014年度 女性:101,339 男性:1,624 障害女性:5,336 障害男性:51 2015年度 女性:109,171 男性:2,001 障害女性:6,270 障害男性:46 2016年度 女性:104,716 男性:1,651 障害女性:6,929 障害男性:61 2017年度 女性:104,082 男性:2,028 障害女性:7,296 障害男性:127 2018年度 女性:112,076 男性:2,405 障害女性:8,354 障害男性:91 (作業者注:折れ線グラフ終了) 出典:「配偶者暴力相談支援センターの相談件数」(内閣府男女共同参画局ウェブサイト上) グラフ作成:DPI女性障害者ネットワーク 詳細版掲載: https://dwnj.chobi.net/?p=655 p5.   5女性差別撤廃委員会:日本に対する勧告(抜粋・要約)2016年 ・13(c). 複合的・交差的差別を禁止する包括的な差別禁止法の制定を強く要請する。 ・24・25.強制不妊手術被害者(70%が女性)の調査、加害者の起訴、有罪となった場合の処罰、被害者の法的救済、賠償及びリハビリテーションサービスを提供するよう勧告する。 ・18・19・30・31.政治的および公的活動、意思決定の地位における障害女性等の参画の低さ/法令による暫定的特別措置(クオータ制を含む)を含む具体的措置をとることを求める。 ・22 (c)・23.DVを含む暴力被害者である障害女性等の通報困難な状況を懸念/刑法改正、通報やシェルター利用の可能化、職員研修等を強く要請する。 ・32(f)・33.障害および移住女性の、教育へのアクセス障壁を除去し、次回の報告では情報提供すること。 ・34(e)・35.雇用分野における障害女性等の複合的な差別状況を懸念/雇用分野の調査を実施し、ジェンダー統計を提供すること。 ・46・47 先住民族、民族マイノリティ、障害女性、LBT女性、移住女性等の健康・教育・雇用・公的生活への参加アクセスが制限されていることを懸念/これらの複合的及び交差的な差別の根絶を目的とした努力を積極的に行うことを求める。 マイノリティ女性に関するフォローアップ勧告 ・21(d)・(e)人種的優位性や憎悪を主張する性差別的発言や宣伝を禁止し処罰する法律の制定、偏見を除去するための措置についての監視と評価の実施   6障害者権利委員会:日本に対する事前質問事項(抜粋・要約)2019年10月29日 障害のある女性と少女の複合差別の禁止と権利・エンパワーメントについては、障害のある女性(6条)をはじめ、障害者権利条約のなかでも関連の深い計14の条文(注)にわたって、日本政府の基本認識と姿勢、統計データ、実際にとった措置の内容と関連情報について、事前質問事項が出された。下記に障害のある女性と少女の複合差別の禁止と権利・エンパワーメントにかかわる質問を抜粋のうえ要約する。[]内の数字はパラグラフ番号。 [1]障害女性の代表組織を通じた参画と法律と政策の設計および実施と見直しのために実施したこと [3]障害者差別解消法は複合差別を生活の全ての分野で禁止しているか [4]複合差別に関して司法・行政が実施した調査・制裁・救済策に関する分類された統計データ [5]障害のある女性と少女の権利とエンパワーメントの確保は、男女平等政策や特定の法律、政策、行政措置にどう定められているか [10]危険な状況および人道上の緊急事態下において、シェルターや仮設住宅やその他のサービスがアクセス可能か、障害ゆえに分け隔てていないか、年齢とジェンダーを確実に考慮しているか p6 [15,17]強制不妊手術を廃止するために講じた法的措置や実質的措置についての情報提供を。強制不妊手術の事例調査、一時金の支給等のために実施したことは。そして、強制不妊手術被害者の司法アクセスを除斥期間が制限しているかどうか [16]障害のある女性と少女に対するあらゆる形態の暴力のケースの特定・予防・起訴、本人の保護のための、法的措置およびその他の措置に関する情報の提供 [19]施設入所中者、出所者それぞれの、性別・年齢・居住地・提供された支援を分類したデータ。 [24]全ての教育レベルで、障害のない人と比較できる形で、性別・年齢・障害別ごとに分類した学校中退率のデータ [25]性と生殖に関する健康と権利について年齢に応じた教育と情報アクセスのために実施したこと [26]リハビリテーションとハビリテーションを提供するために国や自治体が実施したこと、サービスを受けた人そしてサービスに要望を出した障害者の、性別・年齢・障害別で分類したデータ [27]開かれた労働市場における障害のある女性の雇用促進のために実施したこと [29]障害のある女性の政治参画、政治的または公的な意思決定の役職につくこと、それらの活動に完全参加する権利と機会を行使できるようにするための対策に関する情報 [31]性別・年齢・障害・居住地・経済状況・教育・雇用の状況によって分類されたデータの収集、分析、普及のために実施したこと ---------- (注)14の条文 締約国の一般的義務(4条)、平等と無差別(5条)、障害のある女性(6条)、人道上の緊急事態(11条)、身体の自由と安全(14条)、搾取、暴力、虐待からの自由(16条)個人の不可侵性の保護(17条)、自立生活(19条)、教育(24条)、健康(25条)、ハビリテーションとリハビリテーション(26条)労働と雇用(27条)政治及び公的活動への参加(29条)、統計とデータ収集(31条) ※外務省暫定仮訳が第46回内閣府障害者政策委員会資料にある。   7複合差別実態調査報告書について 「障害があり、女性であるために受けたと感じた、あなたの経験、困ったこと、暮らしづらいと感じることをお書き下さい」「私たちの生の現実を数多く蓄積し、問題の重要性を広く周知させるために、みなさんの実体験をお寄せいただきたいと思います」このような呼びかけに全国各地から呼応した87名の声をまとめた調査報告書。回答は、アンケートの他、聞き取りの形でも寄せられた。全都道府県の基本計画等と障害女性についての調査結果も収録。DPI女性障害者ネットワークが2011年に調査を実施、2012年に「障害のある女性の生活の困難-人生の中で出会う複合的な生きにくさとは-複合差別実態調査報告書」発行、第七刷を頒布中   8DPI女性障害者ネットワークについて 障害のある女性が軸となった国内のゆるやかなネットワーク。1986年に障害女性の自立促進と優生保護法の撤廃をめざして発足した。障害種別や障害の有無を越えて障害のある女性に関する国内外の情報の収集、提供、提言等をしている。