p1 社会福祉法人全国社会福祉協議会 常務理事 寺 尾 徹   事業者における合理的配慮の提供に関する意見 1.全国社会福祉協議会とは 「社会福祉協議会(社協)」は、社会福祉法に基づきすべての都道府県・市町村に設置され、地域住民や社会福祉関係者の参加により、地域の福祉推進の中核としての役割を担い、さまざまな活動を行っている非営利の民間組織である。 全国社会福祉協議会(全社協)は、これら社協の中央組織として、全国各地の社協とのネットワークにより、福祉サービス利用者や社会福祉関係者の連絡・調整や活動支援、各種制度の改善への取り組みなど、わが国社会福祉の増進に努めているほか、アジア各国の社会福祉への支援など福祉分野の国際交流を展開している。 (構成組織) 都道府県社会福祉協議会、全国民生委員児童委員連合会、社会福祉施設・在宅事業などの全国組織、ホームヘルパー、施設職員など専門職員の全国組織、全国社会福祉法人経営者協議会、全国的組織をもつ福祉団体からなる団体連絡協議会 (障害福祉施策の推進) 障害福祉施策の推進に向け、全国社会福祉協議会では構成団体である全国社会就労センター協議会(セルプ協)、全国身体障害者施設協議会(身障協)、障害関係団体連絡協議会(障連協)と連携のもと、障害のある方の生命と尊厳を守り、自立と社会参加に向けた支援を推進している。 また、障害福祉サービスに携わる職員のサービスの質の向上に向けた研修の実施や、障害者支援施設・事業所あるいは、地域の障害福祉サービスの実態等の調査・研究を行っている。 2.社協における障害者差別解消に関する取り組み 各都道府県・市区町村の社協では、その地域で生活される障害のある方の暮らしが安心・安全なものとなるよう、地域特性や地域にある社会資源をふまえ、様々な取り組みを展開している。 ※ 例えば、障害者差別解消支援地域協議会の構成機関として、各社協や都道府県社協福祉サービス運営適正化委員会が参画し、地域における障害者差別を解消するための取り組みの検討や、的確な対応に資するよう障害者差別事案に関する相談や解決に向けた事案の共有等を行っている。 p2 全社協では、日本障害フォーラム(JDF)の構成団体として障害者権利条約の国内履行の推進や、障害者の差別禁止と権利に係る国内法制度の推進に向けた取り組みを協働している。 また、全社協を構成する身障協やセルプ協に加盟する障害者支援施設・事業所においては、個別支援を基本とし、利用者一人ひとりの希望やニーズをくみ取り、個々の能力に応じた支援と地域生活支援を展開している。 3.障害者差別解消法の見直しに向けて 障害のある方の日常生活や社会生活において、事業者との関わりは広範にわたり、それぞれの場面において、合理的配慮が適切に提供されなければ、障害のある方に対する差別の解消は図られないと考える。 障害者差別解消法を実効性のあるものにし、障害のある方が、それぞれの地域で安心・安全に生活していくためにも、公私問わず合理的配慮の提供は行われるべきである。 事業者による合理的配慮の提供の義務化にあたっては、以下の対応が必要である。 1 平成29年度障害者に関する世論調査(有効回答数1,771人)において、障害者差別解消法を「知らない」と答えた者の割合は77.2%に及んでいる。事業者の合理的配慮を含め、法に対する国民の理解の促進のため、より強力な周知・啓発の取り組みが必要である。 法および合理的配慮に関する正しい情報が国民一人ひとりに周知されることが必要であり、障害に関する知識・理解の推進と、差別解消に向けた意識の醸成を進めていくための施策を、早急に推進すべきである。 2 事業者における合理的配慮の提供を推進するためには、事業所の業態や規模、財政等によらず、施設改修などの環境の整備や、合理的配慮の提供が可能となるよう、国において助成制度の創設など財政支援についても検討すべきである。 3 合理的配慮に向けた建設的対話が困難な方、意思表示が難しい障害のある方について、権利が侵害されることがないよう、意思決定の権利が保障され、支援策が講じられる環境を早急に整備すべきである。 4.地域共生社会の実現に向けて 私たち社協は地域を単位として、地域共生社会の実現に向けて、地域住民や福祉関係者と協働し取り組んでいるところである。 共生社会実現の大切な指標となる障害者差別解消法の理念や、合理的配慮の考え方について、地域住民をはじめ多くの関係者への周知・普及に引き続き、取り組んでまいりたい。 以上