p1 資料8      第48回障害者政策委員会提出意見 相談・紛争解決体制      佐藤 聡   1中央省庁の相談窓口 2019年6月にDPI日本会議が収集した差別事例のなかで、相談窓口を活用した事例を提出します。収集した事例はいずれも障害者差別解消法が施行された2016年4月以降のもので、残念ながら省庁によっては紛争解決に向けて相談窓口が十分機能しているとは言えない状況です。 【事例】 (※ご提供頂いた事例に基づいて記しております) 1人工呼吸器ユーザーに対し、クラシックコンサートの主催者が参加を拒否した。主催者と話し合いを重ねたが解決に至らなかったため、担当省庁の相談窓口に連絡をした。ところが、「わが省は芸術を推進する立場なので」「両者を裁く立場にない」などと言われ、各部署へたらい回しされた。ようやく担当者が決まったが、その後、京都に異動したとのこと、内閣府HPに掲示の相談窓口ではなく当該担当者の異動先の番号にかけてくれと言われた。(2018年、東京都) 2飲食店で入店拒否にあったため、まず農水省に相談すると「飲食店関連は厚労省へ」と言われ、厚労省の対応指針の窓口にかけた。ところが「飲食所管の部局にかけて下さい」と言われた。飲食所管の部局にかけたところ、「ここではなく、生活衛生課に連絡を」と言われた。生活衛生課に電話をかけ相談をしたがその後、2か月返事がなかった。もう一度、催促の電話をしたが、その後、連絡はこないままである。(2017年、神奈川県) 3知的障害に見える大柄な男性が、駅前で十数人の制服警官に取り囲まれて奇声をあげていた。どう見ても怖がっている様子で、なだめたり落ち着くように穏やかに話しかけるべきだが、警官は厳しい態度でつめよろうとして本人は大声をあげていた。内閣府のホームページにある「国の行政機関相談窓口(対応要領関係)の「警察庁長官官房総務課広報室」を紹介されたが、広報係へ回され、交番にあたってくれと言われた。相談対応は一切なく、たらい回しになった。相談窓口が役に立たなかったことをDPI日本会議に報告をした。一般の方からの電話は広報係が対応している。いつ、どこで、誰が、何をしたかという詳細は警察庁では把握できず、現場を管轄している行政機関として警視庁を紹介しているとのことだった(2019年東京都) 4税理士試験の配慮で、十分な医学的根拠を示しているのに、十分な時間延長、自宅に近い場所での試験会場の設置、答案用紙の作成方法の配慮が受けられなかった。2018年に時間延長は認められた。試験会場、回答方法については改善なし。国税庁へ相談をしたが、第三者として仲裁してくれるのではなく、単なる話の取次だった。直に担当者との直接交渉していた時と何も変わらない。(2017年香川県)   2自治体での取組 (1)効果的な紛争解決体制 紛争解決体制は、自治体での取組が参考になります。ポイントは、広域専門相談員の配置、第三者の委員からなる調整委員会によるあっせん・調停の仕組み、知事による勧告の3点です。 1地域ごとに多くの地域相談員を配置し、全域をカバーし統括する広域専門相談員を複数配置。相談事例は地域相談員と広域専門相談員が連携して対応し、相手方に連絡を取り調整する。 p2 2これで解決しない場合は、調整委員会があっせん・調停を行う。 3それでも解決しない場合は、知事による勧告 自治体では、毎年、事例の対応を年次報告として公開しています。事例には障害の知識がないために起きているものもあり、広域専門相談員が間に立って説明・調整することで解決しているものも多いです。事例は分析し蓄積しており、広域専門相談員の的確な取り組みに活かされています。 広域専門相談員による調整で解決しない場合は、調整委員会によるあっせん・調停、それでも解決しない場合は知事による勧告と、一定の強制力のある仕組みをつくることによって、効果的な紛争解決を実現しています。 (2)大きな自治体間格差 自治体で相談・紛争解決の必置 第44回障害者政策委員会で配布された「障害者差別の解消に関する地方公共団体への調査結果」を基にまとめると、平成29年度の相談件数では、カウント無し(46.4%)、不明(9.6%)、年9件以下(39.7%)あわせると95.7%、年100件以上は0.6%と大きな格差があります。相談件数の差は、差別が多い少ないではなく、自治体の取組の差です。解決が可能だと思えば相談しますが、相談しても解決できないのであれば相談しなくなります。相談件数の多い自治体の報告をみると、紛争解決機関を活用し多くの事例を解決しています。自治体での相談・紛争解決機関を必置とすることが必要です。 自治体別相談件数 カウント無し829自治体:46.4% 不明172自治体:9.6% 9件以下710自治体:39.7% 10件から29件48自治体:2.7% 30件から49件9自治体:0.5% 50件から99件10自治体:0.6% 100件以上10自治体:0.6% 合計1788自治体 自治体別相談件数 (作業者注:以下円グラフ) カウント無し(赤色)46% 不明(黄色)10% 9件以下(ねずみ色)40% 10件から29件(黄緑色)3% 30件から49件(青色)1% (作業者注:円グラフ終了)