資料3 令和2年5月18日 第51回障害者政策委員会 障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見 〜第50回障害者政策委員会での議論を踏まえて再度提案します〜 阿部 一彦 安藤 信哉 岩上 洋一 大河内 直之 大塚 晃 岡田久美子 加藤 正仁 門川 紳一郎 河井 文 北岡 賢剛 久保 厚子 佐藤 聡 竹下 義樹 玉木 幸則 野澤 和弘 障害者政策委員会は障害者権利条約の実施状況に関する監視の役割を担うとされています。2月21日に開催されました第50回障害者政策委員会において、事務局より示されたとりまとめ案に対し、8名の政策委員連名の意見を提出いたしました。その際に行われた議論をふまえて、再度、「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(案)」(以下、「意見(案)」)に対する意見を表明させていただきます。 繰り返しになりますが、私たちは、条約の実施状況の監視という重要な役目を担う政策委員の一員として、障害当事者や家族の意見が反映した意見となることを願い、下記の項目を追加頂くよう求めます。タイトルを漢数字(一から五)・あみかけでお示しした5点です。これらについては、委員からの発言があり、かつ、重要な点でありながら残念ながら意見(案)に反映されていないものです。委員長、あるいは事務局からも「考えられる対応」として言われてきたことも含まれており、充分可能なものであると考えています。ぜひとも、政策委員会としての意見として取り入れてくださいますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。 p1 1.差別の定義・概念について (1)差別の定義・概念 【見直しの方向性】 @ 差別の定義・概念の明確化 [原案] このため、これらを総合的に考慮しつつ、差別の定義・概念の明確化を図る観点から、どのような対応が可能かについて検討を行うべきである。 なお、その一環として、例えば、基本方針等において、車いすを理由とした不当な入店拒否など、形式的には障害を理由とする差別的取扱いには該当しないものであっても、実質的には障害を理由として障害者でない者と不当な差別的な取扱いをすることも障害を理由とする差別となる旨を明示することや、障害者の家族に対する障害を理由とする差別的取扱いについても、障害者本人に対するものと同様に認められるべきでない旨を示すこと等についても検討すべきである。 [修正意見] このため、これらを総合的に考慮しつつ、差別の定義・概念の明確化を図る観点から、どのような対応が可能かについて検討を行うべきである。 なお、その一環として、例えば、基本方針等において、車いすを理由とした不当な入店拒否など、形式的には障害を理由とする差別的取扱いには該当しないものであっても、実質的には障害を理由として障害者でない者と不当な差別的な取扱いをすることも障害を理由とする差別となる旨を明示することや、障害者の家族《赤下線:など関係者:赤下線ここまで》に対する障害を理由とする差別的取扱いについても、障害者本人に対するものと同様に《赤下線:差別解消の対象である:赤下線ここまで》旨を示すこと等についても検討すべきである。 2.障害女性等の複合差別について (1)差別の定義・概念 【見直しの方向性】 [原案] 障害のある女性や障害児への差別に関しては、具体的な相談事例の蓄積等により更に実態把握に努めるべきである。あわせて、障害者基本法(昭和45年5月21日法律第84号)及び障害者基本計画(第4次)(平成30年3月30日閣議決定)に基づき、障害のある女性や障害児等の複合的困難に配慮したきめ細かい支援が各種施策において充実されることが期待される。 p2 [修正意見] 障害のある女性や障害児への差別に関しては、《赤下線:国及び地方公共団体が、障害のある女性や障害児等が障害及び性別、年齢による複合的な差別を受けていることを認識し、その実態を把握し、差別解消にむけた適切な措置をとらなければならない旨の記載を法に設け、基本方針においても研修の充実等を明記するなどの検討を重ねることが必要である。同時に、相談において性別や年齢を把握することを始め、:赤下線ここまで》具体的な相談事例の蓄積等により更に実態把握に努めるべきである。あわせて、障害者基本法(昭和45年5月21日法律第84号)及び障害者基本計画(第4次)(平成30年3月30日閣議決定)《赤下線:の見直しにおいても、:赤下線ここまで》障害のある女性や障害児等の複合的困難に配慮したきめ細かい支援《赤下線:についてさらなる検討が必要である:赤下線ここまで》。 3.事業者による合理的配慮の提供について (2)事業者による合理的配慮の提供について 【見直しの方向性】 @ 事業者による合理的配慮の適切な提供の確保 [原案] このため、事業者による合理的配慮の提供については、後述の建設的対話の促進や事例の共有、相談体制の充実等を図りつつ、事業者を含めた社会全体の取組を進めていくことや、障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、更に関係各方面の意見や、当該提供が適切に行われるための社会的な素地等の状況を踏まえ、その義務化を検討すべきである。 また、義務化する場合には、現行と同様の主務大臣による実効性確保の枠組みを維持しつつ、周知期間を設けることについて検討すべきである。 [修正意見] このため、事業者による合理的配慮の提供については、後述の建設的対話の促進や事例の共有、相談体制の充実等を図りつつ、事業者を含めた社会全体の取組を進めていくことや、障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、《赤下線:その:赤下線ここまで》義務化を検討すべきである。 《赤下線:周知期間を設ける場合でも、障害者の生活に密接しているものは周知期間を設けず義務化を検討すべきである。:赤下線ここまで》 p3 A 建設的対話の促進、事例の共有等 [原案] 事業者による合理的配慮は、障害者と事業者双方の建設的対話による相互理解を通じて実施されるべきものであり、事業者のみならず障害者やその関係者等も含め、その点に十分留意することが必要である。 このため、障害者やその家族が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、そのために障害者やその家族を支援することも重要であることを、基本方針等で明確化すべきである。 [修正意見] 事業者による合理的配慮は、障害者と事業者双方の建設的対話による相互理解を通じて実施されるべきものであり、事業者のみならず障害者やその関係者等も含め、その点に十分留意することが必要である。 このため、障害者やその家族が社会的障壁を解消するための方法等を相手に分かりやすく伝えることや、そのために障害者やその家族を支援することも重要であること、《赤下線:また、事業者は建設的対話を避けてはならないこと、その際意思決定及び疎通に困難のある人に一層の配慮をすること等:赤下線ここまで》を、基本方針等で明確化すべきである。 4.相談・紛争解決の体制整備について (3)相談・紛争解決の体制整備について 【見直しの方向性】 @ 地域における相談・紛争解決体制の見直し [原案] (イ)相談体制の明確化等 国や地方公共団体は、相談窓口を分かりやすく示すことや事例の蓄積等を通じた円滑な相談対応の実施など、適切な相談機関へのアクセス向上のための情報提供等の取組を積極的に行うべきである。その際には、意思疎通支援の下での相談やメールでの相談を可能とすること等について配慮するとともに、相談窓口の特性に応じて、障害者等からの相談に加え、事業者からの相談についても対象とすることを明確化すべきである。 [修正意見] (イ)《赤下線:ワンストップ相談窓口と担当課長連絡会議:赤下線ここまで》 国や地方公共団体は、相談窓口を分かりやすく示す《赤下線:ことや事例の蓄積等を p4 通じた円滑な相談対応の実施など、適切な相談機関へのアクセス向上のための情報提供等の取り組みを積極的に行うべきである。特に、国においてはワンストップ相談窓口を設けるとともに、事例の蓄積を通して差別の解消を進めるために、新たに担当課長連絡会議を創設し、定期的に相談事例の分析・公表等を行うべきである。相談対応においては:赤下線ここまで》、意思疎通支援の下での相談やメールでの相談を可能とすること等について配慮するとともに、相談窓口の特性に応じて、障害者等からの相談に加え、事業者からの相談についても対象とすることを明確化すべきである。 5.障害者基本法の見直しについて 障害者差別解消法見直しとあわせて、障害者基本法の改正をすべきです。 障害者基本法は、日本における障害者施策の基本理念および重点施策を定め、その方向性を示す、いわば船の羅針盤のようなものです。基本法の内容を具現化する法律として、障害者総合支援法や障害者差別解消法等の実定法があり、基本法の理念をもとにしたこれらの実定法は障害者の生活に大きな影響を与えるものです。 2011年、障害者権利条約の批准に向けた障害者基本法の大改正が行われました。これは当時としては評価される内容でしたが、理念法にもかかわらず地域生活や情報保障、インクルーシブ教育などの条項で「可能な限り」という文言が使われていたり、障害の定義や女性障害者の複合差別などの課題も多く残されています。法律の附則には施行後3年後の見直しが規定されていますが検討は行われていません。私たちは、これまでも障害者政策委員会の場で何度も障害者基本法の改正を訴えてきましたが、議題として取り上げられることはありませんでした。 2014年には障害者権利条約を批准しました。それからもすでに6年近くが経過しています。この間の障害者政策委員会における障害者差別解消法の改正の議論でも、女性障害者などの複合差別の問題などは基本法で対応すべき、との意見も出ております。私たちは、今こそ条約を批准した国として、障害者権利条約の実施の監視機関である障害者政策委員会でしっかり議論を行い、障害者権利条約に照らして障害者基本法を改正すべき、と考えます。 以上の点から、《赤下線:障害者差別解消法の見直しの議論を行うこととあわせてこの意見書においても障害者基本法改正の必要性を明記していただきますよう:赤下線ここまで》、お願い申し上げます。 以上