資料4 2020年5月11日 「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(案)」に対する意見 委員 竹下 義樹 「障害者差別解消法の施行3年後見直しに関する意見(案)」(以下,「意見案」という。)に対し,以下の意見を述べる。 1 相談・紛争解決の体制整備について (1)差別解消法14条は,「国及び地方公共団体は,障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに,障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。」と定めているが,現状では,相談窓口が一本化されていないため,実効的な相談を期待することはできない。相談を受けた国や都道府県,市区町村の具体的な権限や役割分担についても不明確である。 意見案では,「国や地方公共団体は,相談窓口をわかりやすく示すなど,適切な相談機関へのアクセス向上のための情報提供を積極的に行うべきである」と述べているが,これだけでは不十分である。 広域的・専門的な支援として,都道府県の役割が重要であるが,意見案では,「広域支援相談員等について,地域の実情に応じた配慮を促すことを検討すべきである。」と述べているのみであり,それだけでは不十分である。都道府県単位か広域的エリアごとに「障害者権利擁護センター」(仮称)を設置し,建設的対話を主催する機能を担わせることが必要である。そのうえで,同センターに所属する広域支援相談員に,市区町村の相談員や窓口担当者等に対する助言,指導,情報提供等の他,関係調整の役割を担わせるべきである。 そして,民間事業者の合理的配慮を義務化したうえで,同センターは事業者と障害者の間の建設的対話を促進し,合理的配慮の内容を確定させ,関係を調整していく役割を担うべきである。事業者の合理的配慮を義務化しても,紛争解決システムが現状のままでは,合理的配慮を実現する現実的な手段が極めて乏しく,紛争を防止し,あるいはスムーズな紛争解決を期待できない結果となる。慮を実現する現実的な手段が極めて乏しく,紛争を防止し,あるいはスムーズな紛争解決を期待できない結果となる。 (2)差別解消条例の多くが定めている助言,あっせん,勧告,公表等の権限は,相談員による関係調整が奏功しなかった場合の次の手段として有効である。したがって,差別解消法で,すべての地方公共団体(障害者権利擁護センター)の紛争解決のための権限として,あっせんや勧告等を定めるべきである。 (3)複雑困難な差別事案を抱える地方公共団体には,法的観点からの助言や福祉職による専門的助言がなされる必要がある。しかし,意見案には,そうした視点からの提案はほとんどされていない。障害者虐待防止施策においては,権利擁護事業として,法律家と福祉職からなる専門家チームを地方公共団体に派遣する事業が行われている。これにならって,差別事案でも専門職チームを派遣する事業を実施するべく予算を講じることを明記すべきである。 2 相談・紛争解決のためのマニュアルの作成 差別相談を受けることになる相談員は,差別相談を受けて関係調整を行うだけの専門知識とスキルを身に付けておくことが必要である。 意見案は,「広域支援相談員その他の相談対応を担う者に対する研修等を実施することにより,人材の育成を図るべきである。」と述べているが,国と地方公共団体の責任で人材育成を図ること及び予算措置を講じて研修を実施すべきことを明記すべきである。 意見案には,相談対応マニュアルの整備については何ら触れられていない。障害者虐待防止施策においては,200頁にも及ぶ詳細なマニュアルが整備され,年々更新されていることからすれば,その不均衡は著しい。国は,相談窓口の相談員が準拠することができる相談対応マニュアルを作成すべきである。