p1 初回の日本政府報告に関する質問事項への回答 A.目的及び一般的義務(第1条−第4条) 1.以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a)「心神喪失」といった用語のような侮蔑的な用語を除く措置を含め、締約国(注:日本)の法律をさらに本条約に調和させること。 「心神喪失(mentally incompetent)」という用語は、「精神の障害により事物の理非善悪を弁識する能力がなく、又はこの弁識に従って行動する能力のない状態」を意味する純然たる法律上の概念として用いられている。これは、日常用いられる言葉でも、心理学や精神医学上の用語でもなく、侮蔑的な用語として使用されていないと考えている。また、パブリックコメントでもそのような指摘は受けていないと承知。 いずれにせよ、日本政府は、障害者団体との協議等を通じ、法律が本条約の趣旨に調和するよう不断の見直しを行う意識はある。 (b)立法、政策及び実務において障害の人権モデルを採用すること。これには、障害の評価基準及び認定に関連するものを含む。 第1回政府報告パラ6及び17にあるとおり、障害者権利条約の趣旨を反映させるため、2011年に障害者基本法を改正し、同法の障害者の定義にいわゆる「社会モデル」の考え方を反映している。障害者差別解消法においても、同じ障害者の定義を採っている。 身体障害者福祉法に掲げる身体上の障害のある者に対して、身体障害者手帳を交付している。具体的な認定基準については、医学的な観点からの身体機能の状態を基本としつつ、日常生活の制限の程度によって定められている。 各都道府県、指定都市の児童相談所又は知的障害者更生相談所において知的障害であると判定された者に対して、療育手帳を交付し、知的障害児・者に対して一貫した指導・相談を行うとともに、これらの者に対する各種の援助措置を受けやすくしている。 精神保健福祉法第45条に基づく精神障害者保健福祉手帳制度では、精神障害の判定基準として、「精神疾患の状態」だけではなく、「精神疾患による日常生活あるいは社会生活の支障の程度」を踏まえ、総合判定により等級を判定している。 障害者総合支援法第4条第4項に基づく障害支援区分では、障害福祉サービスの利用に際しての支給決定のプロセスの一つとして、「障害の程度(重さ)」だけではなく、「障害の多様な特性その他の心身の状態に応じて必要とされる標準的な支援の度合」を踏まえ総合的に認定している。 各制度ごとに趣旨・目的が異なるためその程度には差があるが、障害者基本法の下、各制度において、社会モデルの考え方を考慮に入れている。 (c)国、県及び市町村レベルにおいて障害者の権利を実現するために特別に焦点をあてた計画又は戦略を進め、履行し、監視し、評価すること。これには、異なった行政レベルの間での緊密な協力を確保するための、障害者基本計画、県の障害者計画及び市町村障害者計画を含む。 政府においては、第1回政府報告パラ7にあるとおり、障害者基本法第11条に基づき、政府が講ずる障害者のための施策の最も基本的な計画として、障害者基本計画を策定することとしている。現在、2018年に策定した、 p2 2018年度から2022年度までの5年間を対象とする第4次障害者基本計画に基づき、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策を推進している。 都道府県及び市町村における障害者計画の策定状況は、2020年4月時点において、全ての都道府県がこれを策定済みであり、また、市町村全体の96.6%に当たる1,665市町村がこれを策定済みである。 (d)全ての障害者に特化した及び他の関連した立法や政策の起草、履行及び見直しの段階を含むあらゆる段階において、知的又は精神障害のある者、障害のある女性と児童、及び民族的及び少数派に属する障害者を含む、障害者の、彼らを代表する団体を通じた完全かつ効果的な障害者の参加を確保すること。 障害者政策委員会では、第1回政府報告パラ30から34までにあるとおり、委員の半数が、知的障害や精神障害を含む様々な障害種別の障害者本人又はその家族からなる団体の者等によって構成されている。 社会保障審議会障害者部会では各障害当事者や障害児の親等、幅広い障害者を代表する団体に属する委員が構成員となっており、障害者総合支援法等の法令改正や障害福祉サービス等報酬改定等について当事者の声を含めて議論を行い、その結果を踏まえ検討している。 障害者雇用施策の政策決定の場である労働政策審議会障害者雇用分科会では、知的や精神障害者を含む障害者の当事者団体の代表者が委員となっており、障害当事者から広く意見を聴いた上で、政策決定を行っている。2019年の障害者雇用促進法の改正に当たっても、障害者雇用分科会の審議の上で政策決定を行った。加えて、障害当事者への調査やヒアリングも行っており、2015年の「障害者差別禁止指針」及び「合理的配慮指針」を策定するに当たっては、障害当事者の団体を通じて障害当事者に広くヒアリングを実施した。 このように、当事者の参加は確保されている。 (e)障害者と共に行動する専門家(これにはソーシャルワーカー、司法及び警察関係者、及び刑務官を含む)に対し、障害者の権利に関する条約についての制度的研修を提供すること。 相談支援に従事する者が相談支援に関わる前に受ける最初の研修において、障害者の権利に関する条約等を踏まえ、障害者が基本的人権を享有するかけがえのない個人としての尊厳にふさわしい日常生活又は社会生活を営むことができるよう、生活支援が実施されること、また、障害者は必要な支援を受けながら自らの決定に基づき社会に参加する主体であることについて理解するための講義を行っている。 精神保健福祉法第18条第1項に規定し、患者の人権に配慮しつつ必要かつ適切な精神科医療を確保する職務を担う精神保健指定医は、指定前及び指定後5年毎に、精神障害者の人権に関する法令等に関する研修を受けることが義務づけられている。 相談支援を担当することとなる精神保健福祉士の養成に当たっては、これまで、障害者の権利に関する条約に関することが教材の多くで取り上げられ学んできたが、2020年3月「精神保健福祉士養成課程のカリキュラム」を改定し、「障害者福祉」の科目中で障害者の権利に関する条約について学ぶことを明記した。2021年度より順次導入する予定としている。 障害者の福祉に関する相談支援を担当することとなる社会福祉士については、その養成課程における条約に関する教育のルールはなかったものの、障害者権利条約に関することが実態として教材の多くで取り上げられてきた。実情およびその重要性をふまえ2021年度から実施していく養成課程において、条約に関することを学ばなければいけないことを、ルールとして明確化することにしている。 p3 刑務官、検察官、弁護士、警察官、法執行機関職員等に関しては、12(b)を参照。 2.本条約の選択議定書を批准する計画があれば、情報を提供願いたい。 個人通報制度については、条約の実施の効果的な担保を図るとの趣旨から注目すべき制度と認識。個人通報制度の受入れに当たっては、我が国の司法制度や立法政策との関連での問題の有無及び個人通報制度を受け入れる場合の実施体制等の検討課題があると認識。個人通報制度の受入れの是非については、各方面から寄せられる意見も踏まえつつ、引き続き、政府として真剣に検討を進めているところ。 B.特別の権利(第5条−第30条) 3.平等及び無差別(第5条) 障害者差別解消法が、直接差別、間接差別、複合差別及び交差差別であれ、障害のある女性及び女児に対するものを含め、生活のあらゆる分野において、障害に基づくあらゆる差別を禁止しているかどうかを本委員会に対しお知らせ願いたい。また、かかる法律が合理的配慮の否定を私的及び公的領域における障害に基づく差別の形態として認めているかにつき、明確に説明願いたい。 障害者差別解消法においては、行政機関等及び事業者に対し、あらゆる分野において、障害を理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならないとされている(同法第7条第1項、第8条第1項)。 また、行政機関等及び事業者は、その事務・事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときには、必要かつ合理的な配慮を行うことが求められる。こうした配慮を行わないことにより、障害者の権利利益を侵害する場合には、障害を理由とする差別に当たる(同法第7条第2項、第8条第2項)。 なお、障害者政策委員会において2020年6月に取りまとめられた「障害者差別解消法の施行3年後の見直しに関する意見」では、事業者による合理的配慮について、事業者を含めた社会全体の取組を進めるとともに障害者権利条約との一層の整合性の確保等を図る観点から、更に関係各方面の意見等を踏まえ、その義務化を検討すべきであるとされた。政府は、その後、これを踏まえた検討を進め、2021年3月に、事業者による合理的配慮の提供の義務化等を内容とする障害者差別解消法の改正法案を第204回通常国会に提出した。同法案は、両院ともに全会一致で可決され、同年5月に成立した。その後、同改正法は、同年6月4日に公布された。 4.障害に基づく差別があった場合に利用可能な既存の司法及び行政的救済措置についてお示しいただきたい。複合差別及び交差差別の事案におけるものを含め、実施された調査、課された制裁処分及び与えられた救済措置に関する分類した統計データを提供願いたい。 差別により権利を侵害された者は、訴訟又は仮処分により当該行為の差止めを求めることができるほか、不法行為に基づき損害賠償請求をすることができるなど、民事上の手続をとることが可能。 障害者権利条約の実施を保護するための枠組みに関して、法務省の人権擁護機関では、全国の法務局・地方法務局において、障害者の人権問題を含むあらゆる人権問題について相談に応じており、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、関係機関とも連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている(参考条文は別添表○を参照)。なお、2018年の障害者を被害者とする暴行虐待、社会福祉施設における侵犯、差 p4 別待遇、強制強要についての人権相談件数は2,857件であり、人権侵犯事件数は345件となっている。 障害者差別解消法第14条により、国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図ることとされている。この際、国及び地方公共団体においては、それぞれ既存の機関等の活用・充実を図り、相談・紛争防止等のための体制を整備することとされている。なお、同法の改正法においては、国及び地方公共団体の連携協力の責務を定めることとされており、これを踏まえて、適切な行政機関に事案が引き継がれる相談体制の整備や、相談のたらい回しの防止にも資する障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進及び運営の活性化を推進することとしている。 また、事業者の事業を所管する主務大臣は、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認めるときは、報告の徴収、助言、指導、勧告といった措置を講ずることができるとされている(同法第12条)。 障害のある女子(第6条) 5.以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a)障害のある女性及び女児の権利を主流化する一般的な男女平等政策、及び障害のある女子の権利を実現するための特別の立法措置、政策及び行政措置。 障害者基本法において、施策の基本方針として、障害者の自立及び社会参加のための施策が、障害者の性別等に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されなければならない旨規定している(同法第10条第1項)。また、2018年に策定した第4次障害者基本計画においては、障害のある女性、子供及び高齢者の複合的困難に配慮したきめ細かい支援を、各分野に共通する横断的視点として位置付けている。 2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画計画においては、障害者施策を含め、様々な分野についてジェンダー平等に関する施策を定めている。特に、同計画の第6分野では、「多様な属性の人々の人権が尊重される社会を作ることは、それ自体が極めて重要なことであり、その結果として女性が複合的な困難を抱えるリスクが減ることにつながる」という基本認識の下、障害者が安心して暮らせる環境の整備に係る諸施策を記載している。 (b)障害のある女性及び女児が全ての権利及び基本的自由を行使し及び享受することを保障することを目的として、彼女達の完全な能力開発、向上及び自律的な力の育成(エンパワメント)を確保するためにとられた措置。 障害者が、希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍できるために、女児を含め子供のころから能力開発、向上、エンパワメントを実施することが重要と政府は認識しており、上述の第4次障害者基本計画及び第5次男女共同参画計画を踏まえつつ、各省において以下のような取組を行っている。 ○教育 文部科学省において、以下の取組を行っている。 @2013年に学校教育法施行令を改正し、障害のある子供の就学先については、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定する仕組みとした。 A子供の学習活動上のサポート等を行う「特別支援教育支援員」について地方財政措置を講じている。また、看護師や外部専門家等の配置に係る財政的支援を行っている。 p5 小中学校に在籍する障害のある児童の支援のための支援員について地方交付税措置が講じられている。2020年度は57,600人の配置(10年前は34,000人)にかかる経費が措置されており、支援の充実を図っている。また、2019年11月現在特別支援学校、幼稚園、小・中・高等学校に在籍する医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の数は9,845人である。医療的ケアのための看護師配置に係る財政的支援の充実を図っている。2020年度は、2,100人分(7年前は329人分)の経費が措置された。 B特別支援教育に関する教職員の資質向上については、「特別支援教育に関する教職員等の資質向上事業」において、特別支援学校教諭等免許状の取得を促進するため、免許法認定講習や教師の資質向上に関する講習会等を実施した。また、国立特別支援教育総合研究所の免許法認定通信教育においても、特別支援学校教諭等免許状の取得を推進している。 上記のように、性別にかかわらず、障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるように条件整備を行っている。このような取組は、障害のない子供にとっても、障害のある人に自然に言葉をかけて手助けをしたり、障害のある人に対する支援を行う場に積極的に参加したりする行動や、人々の多様な在り方を理解し、障害のある人とともに支えあう意識の醸成にも資するものである。併せて、障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の整備を行っている。 ○自立支援 障害者総合支援法においては、性別にかかわらず、身体障害者、知的障害者、精神障害者及び難病患者等に対し、障害の種別に依らない一元的な障害福祉サービス等の仕組みを確立するとともに、障害者の地域生活への移行や就労支援といった障害者が自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な障害福祉サービスや相談支援等を利用することのできる仕組みを構築している。 障害のある児童(第7条) 6.以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a)幼児期発達、教育、社会的保護及び全てのレベルにおける早期介入と包容サービスへのアクセスといった分野のものを含む、障害のある児童の権利を主流化する一般的な政策。 障害者権利条約の批准等を踏まえ、誰もが、障害の有無にかかわらず共に学び、生きる共生社会を実現していくことが重要と認識している。 2013年に学校教育法施行令を改正し、障害のある子供の就学先については、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定する仕組みとした。 身近な地域において障害児に対する支援を提供する中核的な機関である児童発達支援センターでは、障害のある子どもの最善の利益を考慮して児童発達支援を提供するほか、わかりやすいガイドラインを制定し、地域の保育所、認定こども園、幼稚園、小学校、特別支援学校等に対し、専門的な知識・経験に基づく支援を行うよう努めている。また、保育所等に通う障害のある児童に対して集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設し、訪問先を乳児院及び児童養護施設にも拡大して、福祉施設における療育機能の強化を図っている。 児童相談所では市町村と適切な役割分担・連携を図りつつ、子どもに関する家庭その他からの相談に応じ、子どもが有する問題または子どもの真のニーズ、子どもの置かれた環境の状況等を的確に捉え、個々の子どもや家庭に最も効果的な援助を行い、子どもの福祉の向上を図っている。 p6 (b)障害のある全ての児童が自己に影響を及ぼす全ての事項について自由に自己の意見を表明する権利を確保するための措置。障害のある児童の意見が、その家族、里親養育、教育、保健、医療上の状況を含め全ての状況において、また司法及び行政手続においても相応に考慮されることを確保するための措置。 ○教育 教育に関し、特に、就学先の在り方については、2013年8月に学校教育法施行令を改正し、就学基準に該当する障害のある子供は特別支援学校に原則就学するという従来の就学先決定の仕組みを改めた。 これにより、障害の状態、本人の教育的ニーズ、本人・保護者の意見、教育学、医学、心理学等専門的見地から就学先を決定する仕組みとするととともに、保護者および専門家からの意見聴取の機会を拡大した。 その際、本人、保護者の意向を可能な限り尊重し、教育委員会が決定することとしている。その際、障害のある子供本人の意見について、保護者を通じて表出される場合が多いと考えられる。しかし、障害や発達の状況等を踏まえつつ、別途本人の意見聴取を行うことが望ましい場合もあると考えられることを、具体的に教育委員会に示している。 ○保健・福祉 関連法令(別添図表○)に則り、障害児の心身の状態、障害児の介護を行う者の状況、障害児及び保護者の支援の利用に関する意向等を勘案して支給要否決定を行うこととしている。 児童福祉法第8条に基づく児童福祉審議会は、児童等の福祉に関する事項の調査審議を業務としており、同審議会による児童の意見聴取の仕組みを活用して児童の福祉の向上を図る。また、2019年の同法等の改正法に基づき、児童が意見を述べることができる機会の確保等の在り方について検討を加えることとしている。 ○司法手続 司法手続に関しては、家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子がその結果により影響を受ける家事審判や家事調停の手続においては、その障害の有無にかかわらず、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努めることとされている。また、家庭裁判所は、審判や調停をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならないとされている(家事事件手続法第65条、第258条参照)。 検察庁においては、障害児を含む児童が犯罪の被害に遭った場合において、当該児童が繰り返し聴取されることによる心理的負担を軽減し、供述の信用性を確保するため、警察や児童相談所と連携し、その代表者が聴取を行う取組を推進している 。 少年院及び少年鑑別所においては、それぞれ障害を有する在院者又は在所者に対し、障害に応じた配慮や必要な環境の整備をするとともに、障害特性等を踏まえた処遇又は鑑別を行っている。 意識の向上(第8条) 7.以下について情報提供願いたい。 (a)家族レベルを含め、社会における障害者に関する否定的な先入観及び偏見と戦うためにとられた措置。 障害及び障害者に対する国民の関心、理解を深めるとともに、障害者の社会参加意識の高揚を図るため、毎年12月3日から9日までの1週間を「障害者週間」としており、全国で、官民にわたって多彩な行事を集中的に実施す p7 るなど、積極的な啓発・広報活動を実施している。その一環として、募集した「心の輪を広げる体験作文」及び「障害者週間のポスター」をホームページで公開しているほか、リーフレットの配布など、障害及び障害者に対する国民の理解促進を図っている。 障害者に関する偏見をなくすため、以下の取組を推進している。障害者への理解を深める教育を児童生徒の発達の段階に応じて指導することとしている。学習指導要領においても、障害のある幼児児童生徒との交流及び共同学習の機会を設け、共に尊重しあいながら協働して生活していく態度をはぐくむようにすることとしている。 障害のある人に限らず、児童生徒が様々な心身の特性や考え方をもつ全ての人々が相互に理解を深めることができるよう、「心のバリアフリーノート」という教材を作成・公表した。併せて、教員向けの指導参考資料を作成し、各学校における活用が可能となっている。 また、学校における交流および共同学習がより活性化されるよう、「心のバリアフリー推進会議」の提言を踏まえ、優良取組事例を「交流及び共同学習オンラインフォーラム」を通して公開し全国に普及している。 更に、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、「共生社会等に関する基本理念等普及啓発事業」において、共生社会の理念等について、障害福祉従事者や事業経営者等が改めて学び、それを実践につなげていくことを目的とした研修を実施している。また、広く一般の者に向けての普及啓発のため、フォーラムを開催している。 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」第7条に基づき策定した「人権教育・啓発に関する基本計画」(別添)において、障害者の人権を人権課題の一つとして、障害者に対する偏見や差別意識を解消し、ノーマライゼーションの理念を定着させることにより、障害者の自立と完全参加を可能とする社会の実現を目指して、人権尊重思想の普及高揚を図るための啓発活動を充実・強化することを明記している。法務省の人権擁護機関では、当該計画に基づき必要な施策を推進しているところ、「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を啓発活動強調事項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している 。 (b)障害者を代表する団体が意識向上計画及び戦略の立案及び履行にいかに関与してきたか。 問7(a)で回答したフォーラムについて、障害当事者を含む団体の関与の下、開催を行っている。 「障害者週間」においては、その前後の期間も含め、国のみならず地方自治体や関係団体とも連携した多様な取組が全国で行われている。例えば、障害者団体等による「連続セミナー」は、障害特性の解説、障害者の雇用促進、特別支援教育や障害者の芸術・文化への関わりなど、障害及び障害者に対する理解促進や障害者施策の推進に資するテーマによって展開されている。 施設及びサービス等の利用の容易さ(アクセシビリティ)(第9条) 8.以下について情報提供願いたい。 (a)公衆に開放され、又は提供される施設及びサービス(建物、旅客運送、情報通信を含む)の利用の容易さ(アクセシビリティ)を確保するためにとられた全てのレベルの立法及び行政措置。 高齢者や障害者を含む誰もが公的機関のウェブサイトを円滑に利用できるよう、公的機関に求められる対応をガイドライン(「みんなの公共サイト運用ガイドライン」)として策定し、ウェブアクセシビリティ改善に向けた取組を促している。 p8 なお、障害者や高齢者を含めた誰もが、ICTによる恩恵を享受できる情報バリアフリー環境を実現するため、高齢者・障害者の利便の増進に資するICT機器・サービスの提供・開発に対する助成を行っている。2018年度は、5事業者に対し37、732、000円を交付した。 バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」においては、高齢者、障害者等の移動や施設利用の利便性や安全性の向上を促進するために、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際のバリアフリー基準への適合義務や既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに、バリアフリー法に基づく「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において整備目標を定め、バリアフリー化を推進している。 また、市町村が作成する基本構想等に基づき、地域における重点的かつ一体的なバリアフリー化の推進や、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め、協力を求める「心のバリアフリー」の推進を図るとともに、高齢者、障害者等の関係者で構成する会議を設置し、定期的に、移動等円滑化の進展の状況を把握・評価し、バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図っている。 手話通訳者などのオペレータにより手話・文字を通訳することにより、聴覚や発話に障害がある方と耳の聴こえる方の意思疎通を仲介する電話リレーサービスの実現に向けて、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」が2020年6月12日に成立、同年12月1日に施行された。2021年7月のサービス開始を予定している。 (b)ユニバーサルデザインを通じた利用の容易さ(アクセシビリティ)に関する継続した研修計画を、建築家、設計者、エンジニア及びプログラマーのような専門家のためのカリキュラムの一部に含めるためにとられた措置。 「建築士法」により、建築士が定期的な講習を受けることを義務づけており、当該定期講習の内容にはバリアフリー法に関する内容が含まれている。なお、日本の建築士は、建築家と建築技術者の両方の役割を担う資格である。 生命に対する権利(第10条) 9.以下について本委員会に対しお知らせ願いたい。 (a)締約国(注:日本)の死の幇助に関する法令が本条約に従い、かつその一般原則を尊重していることを確保するためにとられた措置。 死の幇助は自殺関与又は同意殺人(刑法202条)に該当し得るが、それ以外に、現時点で、死の幇助に関する特別の法令は存在せず、政府、国会において法案を議論していない。 (b)精神障害のある者に対する強制入院又は身体的及び化学的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数、並びにそのような出来事を防ぐためにとられた措置及び加害者を起訴するためにとられた措置。 強制入院又は身体的拘束の最中に又はその後に発生した死亡事案の件数については把握していない。 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院制度は、精神障害者であることのみを理由として適用されるわけではなく、精神障害のために自傷他害のおそれがある場合又は自傷他害のおそれはないが医療及び保護が必要な場合であって、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に適用されるものである。実施に当たっては、精神保健指定医(一定の精神科実務経験を有し、精神障害者の人権に関する法令等に関する研修を修了した医師のうちから、必要な知識及び技能を有すると認められる者のうち、厚労大臣が指定したもの)による診察や入院措置についての本人への書面告知が義務づけられている。 p9 また、精神保健福祉法上、身体的拘束は、精神保健指定医が必要と認める場合でなければ行うことができないこととしており、また、自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している場合、多動又は不穏が顕著である場合及びその他精神障害のために、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶおそれがある場合に、代替方法が見出されるまでの間のやむを得ない処置として行われるものと定めている。 なお、身体的拘束を行っている間においては、原則として常時の臨床的観察を行い、適切な医療及び保護を確保しなければならないこと、身体的拘束が漫然と行われることがないように、医師は頻回に診察を行わなければならないこととされている。このように、身体的拘束や、本人の意思によらない入院や、身体的拘束を行う場合の要件及び手続きは、法令で厳格に定められているところであり、医療機関における適切な実施の確保に取り組んでいる。 危険な状況及び人道上の緊急事態(第11条) 10.以下のために、障害者団体と緊密に協議し、同団体が積極的に関与しつ講じられた措置についての情報を提供願いたい。 (a)地震、原子力発電所災害を含めた危険な状況及びこれら状況の結果における全ての障害者に関する規範的な枠組の履行、監視、及び評価。 災害においては、障害者を含む社会的弱者への配慮が必要である。こうした状況を踏まえ障害者等の利用施設の避難体制の強化を図り、避難確保計画の作成及び避難訓練の実施が義務づけられている。また、避難経路のバリアフリー化も進めている。地方自治体においても、地域の実情に即して、要救援者支援の指針の策定等の防災の取組を進めている。 厚生労働省においては、2019年度及び2020年度に、災害発生時、障害者に対するきめ細やかな支援活動に資するよう、救助・支援活動をサポートする災害時ボランティアリーダーや、視覚・聴覚障害者の障害特性に応じた対応方法を熟知した災害時リーダーを養成する事業を実施した。また、災害時において災害時要配慮者(高齢者・障害者等支援が必要な方々)に対し緊急的に対応を行えるよう、民間事業者、団体等の福祉支援ネットワークを構築する事業に対する補助を行った。 (b)危険な状況及び人道上の緊急事態の全ての段階において、全ての障害者に対し入手可能な情報を提供すること。 災害時においては、障害特性に配慮した情報を提供するする必要があり、地方自治体において各種取組を実施している。地方自治体においては障害者団体を含む関係者の意見を踏まえ、ガイドライン等の作成を実施している。国においてはかかる取組を財政面を含め支援している。 2018年3月、駅、空港、ホテル等で障害者に災害情報を伝達し屋外への避難誘導を効果的に行うために、施設関係者がディスプレイやスマートフォンアプリを活用して、避難誘導の視覚化を行うためのガイドラインを策定した。ガイドラインを整理したリーフレットを作成し、各施設の避難訓練の実施の際に配布するなどして、啓発を進めている。また、東京オリンピック・パラリンピック競技大会の会場においては、聴覚障害者に対して、音響通信技術を用いて災害を文字化することで、円滑な避難誘導を実現するための取組を進めている。さらに、多くの消防本部では、聴覚・言語機能障害者を始めとする音声通話による緊急通報が困難な者のために、FAXや電子メールの通報手段を提供しており、現在はスマートフォンを活用して通報を行えるシステムの導入を促進している。 (c)危険な状況及び人道上の緊急事態において提供される、避難所、一時的住居及びその他のサービスが、利用しやすく、障害を受け入れ可能であり、かつ年齢や性別を考慮するものであることを確保すること。 p10 災害時においては、避難所に多くの避難者が集まり、集団生活を行うため、障害特性、年齢、性別に配慮した避難所の確保が必要である。平時における障害者への配慮に関する啓発や実際の避難所における対策など、地方自治体において各種取組を実施している。地方自治体においては障害者団体を含む関係者の意見を踏まえ、ガイドライン等の作成を実施している。国においてはかかる取組を財政面を含め支援している。 2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画においては、障害女性に特化したものではないが、一般に女性の視点からの防災・復興ガイドラインに基づく取組の浸透、地方公共団体との連携につき言及した。ガイドラインの主なポイントは以下のとおり。 ・避難所の責任者には男女両方を配置する ・プライバシーの十分に確保された間仕切りを用いる ・男女別の更衣室や、授乳室を設ける ・女性用品(生理用品、下着等)は女性担当者が配布を行う ・女性トイレと男性トイレは離れた場所に設置する ・性暴力・DV防止ポスターを、避難所の見やすい場所に掲示する (d)障害の包容に特に注意を払いつつ、仙台防災枠組2015〜2030の効果的実施を確保すること。 障害者の防災への関与を強調する仙台防災枠組にそって、障害者の防災への2019年に発生した台風による一連の被害を検証するチームを立ち上げ、障害者団体の意見も踏まえ、課題を整理した。例えば、障害者等の避難の実効性確保のため、市町村において、避難行動要支援者名簿とハザードマップ等を活用し、災害リスクが高い区域に住む避難行動要支援者を洗い出し、防災・危機管理部局と医療・保健・福祉部局等の間で共有すること、福祉関係者等が高齢者・障害者宅訪問時、災害リスク等を本人と確認すること、などを検討している。引き続き、防災に関する政策の立案と実施に関しては障害者との意見交換を行っていく。 (e)危険な状況及び人道上の緊急事態において自宅が損壊した障害者が立ち直ることを確保すること。 自然災害(台風、洪水等)によりその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を生活の再建を支援するために、支援金を支給する制度がある。 なお、東日本大震災の津波による自宅損壊に対する支援や原発事故により自宅に帰還できない障害者を含む被災者の支援については、当該震災からの復興のために設立された復興庁が中心となり、個別の対策を講じている。 法律の前にひとしく認められる権利(第12条) 11.以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 (a)障害者が法律の前にひとしく認められる権利を制限するいかなる法律も撤廃すること。また、民法の改正によるものを含め法的枠組み及び実践を本条約に沿ったものとすること。事実上の後見制度を廃止すること。また、代替意思決定を支援付き意思決定に変えること。 ○民法上の制度及び趣旨 我が国の民法は、「私権の享有は、出生に始まる」旨規定し(民法第3条第1項)、全ての人が権利能力を有することとされている。この点について、障害者であることを理由とした制限は設けていない。 認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な者を保護し、支援するための制度として、成年後見制度を設けており、本人の判断能力の程度に応じて、後見、保佐及び補助の3類型を利用することができる。 p11 成年後見人及び成年後見監督人の選任に際しては、本人の意見等一切の事情を考慮すべきものとしているほか、本人の陳述の聴取の機会も確保している(民法第843条第4項、第852条、家事事件手続法第120条)。また、選任された成年後見人は、本人の意思を尊重しその身上に配慮する義務を負い(民法第858条)、これにより、本人の権利、意思及び選好の尊重が図られている。なお、保佐及び補助にもこれらの規定が準用され、又はこれらと同旨の規定が設けられている(民法第876条の2第2項、第876条の5第1項、第876条の7第2項、第876条の8第2項、第876条の10第1項、家事事件手続法第130条、第139条)。補助については、家庭裁判所が本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第15条第2項)。 成年後見人の取消権及び代理権の範囲は民法で明確に規定されており、その行使に当たっては、成年後見人は本人の意思を尊重しなければならない(民法第7条から第9条まで、第858条)。なお、後見類型においては、成年後見人に代理権が付与されているが、これは、契約等の法律行為により本人に不利益が及ばないよう、契約締結等の場面で最終的な判断権を成年後見人の責務とする趣旨である(すなわち、例えば、本人の意思に沿って契約を締結する場合にも、成年後見人が契約内容の最終的なチェックをするなどした上で、成年後見人の責任において契約を締結するという趣旨である)。したがって、後見類型においても、上記趣旨に沿って本人の意思決定を支援する形で成年後見人がその代理権を行使することは可能であり、後記のとおり、政府を挙げて、成年後見制度における自己決定権の尊重をより徹底するための取組を進めている。 後見類型においても、本人が法律行為をすることは何ら制限されておらず、本人が行った法律行為が本人にとって不利益である場合等において、事後的に、本人又は成年後見人がその法律行為を取り消し得るにすぎない。また、日常生活に関する行為については、本人の意思を特に尊重する趣旨から、成年後見人がこれを取り消すことはできない。 保佐人については、同意権及び取消権の範囲が民法で規定されているほか、家庭裁判所は、本人の判断能力の程度や必要性に応じて、審判により、特定の法律行為について個別に保佐人に代理権を付与し、あるいは同意権や取消権の範囲を拡張することができるが、本人以外の者の請求により代理権付与の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第13条、第876条の4)。補助人の同意権及び取消権並びに代理権の範囲については、家庭裁判所が本人の判断能力の程度や必要性に応じて個別に定めることができるが、本人以外の者の請求により同意権等の付与の審判をするには、本人の同意がなければならない(民法第17条、第876条の9)。 家庭裁判所は、後見人、保佐人及び補助人の事務を監督し、いつでも、これらの者に事務の報告等を求めることができる(民法第863条、第876条の5第2項、第876条の10第1項)。これにより、司法機関による審査が確保されている。そして、本人の判断能力が回復した場合には、家庭裁判所が、申立てにより後見開始、保佐開始及び補助開始の審判を取り消すことができ(民法第10条、第14条第1項、第18条第1項)、これにより、障害者の状況に適合した措置をとることを可能としている。 成年後見制度については、例えば、障害者本人が一部の親族により身体的虐待を受け、あるいは年金収入等を搾取されている場合には、成年後見人に選任された弁護士等が、本人の意思を尊重しながら、その安全な居所を確保し、財産を管理することにより、本人の身体及び財産を適切に保護することができるとの指摘がされている。 ○成年後見制度の利用の促進 p12 2016年4月、「成年後見制度の利用の促進に関する法律」(以下「利用促進法」という。)が成立し、同年5月、施行された。同法律では、成年後見制度の利用の促進に当たっては、ノーマライゼーション、自己決定権の尊重(意思決定の支援を含む。)、身上の保護という成年後見制度の基本理念を踏まえるべきことが規定された。 また、2017年3月、利用促進法に基づき、成年後見制度の利用の促進に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、政府が講ずる成年後見制度利用促進策の最も基本的な計画として「成年後見制度利用促進基本計画」(以下「基本計画」という。)が閣議決定された。 成年被後見人等の権利に係る制限が設けられている制度(以下「欠格条項」という。)について、2019年6月、成年被後見人等の人権が尊重され、成年被後見人等であることを理由に不当に差別されないよう、欠格条項の適正化等を図ることを目的とする「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」が成立した。同法律による欠格条項の撤廃等の改正は、同年12月までに順次施行された。 基本計画では、成年後見人等が本人の特性に応じた適切な配慮を行うことができるよう、意思決定支援の在り方についての指針の策定に向けた検討等を行うこととしている。これを踏まえ、2019年5月、2021年度末までに達成すべき目標として、同指針を策定することや、全都道府県において後見人等向けの意思決定支援研修を実施すること等を盛り込んだ基本計画に係るKPI(成果指標)を設定した。同KPIの達成に向け、2019年5月以降、関係機関が、同指針の策定に向けた協議・検討等を行い、2020年10月に同指針を公表した。また後見人等向けの意思決定支援研修については、2020年度末までに15都道府県において実施済み。2021年度に残りの全府県で実施予定。 基本計画では、施策の目標の1つとして、保佐・補助類型、任意後見制度の利用促進を図ることとしており、具体的な取組としては、これらの制度自体の周知活動を強化するとともに、利用者の個別のニーズを踏まえた相談対応等を強化すること等が掲げられている。基本計画の策定以降、各地域において、このような広報・相談機能を担う地域連携ネットワーク・中核機関が整備されるよう、関係機関が連携して、体制整備の取組を推進している。 以上、我が国では、成年被後見人の自己決定権の尊重をより徹底し、成年後見人が本人の意思決定を支援する形での取組を進めている。引き続き、障害者が法律の前にひとしく認められる権利を保障するため、法的枠組み及び実践を本条約に沿ったものとするため不断の努力を行う。 (b)法的能力の行使に当たって障害者が必要とする支援を障害者に提供すること。 障害者総合支援法に基づく相談支援として、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ必要な情報の提供や助言等を行う「基本相談支援」等のほか、成年後見制度の利用に要する費用を補助する事業(成年後見制度利用支援事業)を実施している。 成年後見制度における後見等の業務を適切に行うことができる法人を確保できる体制を整備するとともに、市民後見人の活用も含めた法人後見の活動を支援するため、成年後見制度法人後見支援事業を実施している。 日本司法支援センター(法テラス)において、2018年1月に全面施行された改正総合法律支援法に基づき、認知機能が十分でない高齢者・障害者等を対象として、本人からの申出がなくても、福祉機関等からの連絡を受け、弁護士・司法書士が出張して法律相談を行うことができるようになった。 法務省の人権擁護機関では、全国311箇所の法務局・地方法務局及びその支局において、障害者の人権問題を含むあらゆる人権問題について相談に応 p13 じているほか、障害者支援施設等において、施設の協力を得て、臨時に特設の人権相談所を開設して入所者等からの相談に応じており、普段、法務局に出向くことが困難な入所者やその家族が、施設内で気軽に相談できるように配慮している。また、人権相談等を通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、関係機関とも連携・協力し、事案に応じた適切な措置を講じている。なお、2018年の障害者を被害者とする暴行虐待、社会福祉施設における侵犯、差別待遇、強制強要についての人権相談件数は、2,857件である。 (c)全ての障害者が法律の前にひとしく認められる権利及び意思決定のための支援を受ける権利について意識の向上を図ること。特に、障害者とその家族、司法の専門家、政策立案者及び障害者のためにあるいは障害者と共に行動するサービス提供者を対象とするもの。 事業者や成年後見の担い手を含めた関係者間で共有することを通じて、障害者の意思を尊重した質の高いサービスの提供に資することを目的とし、意思決定支援の定義や意義、標準的なプロセスや留意点を取りまとめた「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン」を2017年3月に作成し周知した。2020年度より、国において上記ガイドラインに基づく指導者養成を開始する予定であるとともに、同時に都道府県においても意思決定支援に基づく研修を実施する予定である。 この他、2012年度より、成年後見制度の利用を促進するための普及啓発事業を実施している。 また、雇用分野における障害を理由とした差別の禁止や合理的配慮の提供義務については、公共職業安定所や労働局において周知を行っているほか、障害者の雇用を支援する職員に対して研修を行い、その意識の向上を図っている。 その他、障害を理由とする不当な差別的取扱いや合理的配慮の提供については、地方公共団体等を通じたリーフレットの配布などにより周知を行っているほか、「障害者週間」の機会を活用した啓発活動を行っている。 弁護士、裁判所職員、裁判官、検察官並びに警察官及び刑務官を含む法執行機関職員に対する意識の向上については、下記12(b)回答を参照。 司法手続の利用の機会(第13条) 12.以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 (a)民事、刑事及び行政手続において障害者のために個人ごとに必要な事項を判断し個人ごとの支援と手続上の配慮を提供すること。これには、裁判所の建物、司法及び行政の施設への物理的なアクセスのし易さや、点字、デジタル版、読み易い版、手話言語、利用可能な有資格の通訳者の数を示すことを含め、補助的で利用し易いフォーマットで手続についての公式情報を入手可能な状態にすることを含む。 裁判所においては、できる限り、障害者が不自由なく裁判所施設を利用できるよう、段差解消、多機能トイレ、エレベーターの整備などのバリアフリー化を図っており、今後も更に整備を進める予定であると承知している。 裁判所では、「裁判所における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領」が定められており、各裁判手続等において、障害を有する当事者や証人等が、適切に意思疎通を図り、円滑に権利行使ができるようにするため、裁判官の判断で、障害の内容や程度に応じて、手話通訳人を付す、要約筆記等による手続を行う、あるいは、補聴器を貸与する、裁判所が作成、交付する書面を点訳するなどの配慮のほか、裁判官が当事者に対する手続の説明や質問をする際にも、その内容や方法に配慮するなどの措置が講じられていると承知している。 p14 また、障害を有する子供に対しては、裁判官の判断で、さらにその発達段階に応じた質問内容や方法にするなどの配慮をしているものと承知している。 民事訴訟事件及び非訟事件の手続において、当事者は、難聴、言語障害、知能が十分でないこと等により、十分な手続上の行為ができない場合、裁判所の許可を得て、補佐人と共に出頭することができる(民事訴訟法第60条、非訟事件手続法第25条)。 民事訴訟における口頭弁論及び非訟事件の手続の期日に関与する者(当事者となる場合のほか、証人等となる場合を含む。)が耳が聞こえない者又は話をすることができない者であるときは、通訳人を立ち会わせ、又は、文字で問い若しくは陳述をすることができるとしている(民事訴訟法第154条第1項、非訟事件手続法第48条 )。 刑事訴訟法及び刑事訴訟規則上、以下のとおり規定されている。 (1)障害者であるか否かにかかわらず、被告人及び被疑者は、私選弁護人を付することができ(刑事訴訟法第30条第1項)、被告人及び勾留状が発せられている被疑者は、貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判所(官)に対し、国選弁護人の選任を請求することができる(同法第36条、第37条の2)。さらに、裁判所(官)は、被告人が、耳の聞こえない者又は口のきけない者であるとき(同法第37条第3号)、心神喪失者又は心神耗弱者である疑いがあるとき(同条第4号)、その他必要と認めるとき(同条第5号)、若しくは、被疑者に対して勾留状が発せられ、かつ、これに弁護人がない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について必要があるとき(同法第37条の4)は、職権で国選弁護人を選任することができる。 (2)裁判所は、裁判所の手続において、耳の聞こえない者又は口のきけない者に陳述をさせる場合には、通訳人に通訳をさせることができる(刑事訴訟法第176条)。 (3)証人尋問においては、証人が耳が聞こえないときは、書面で問い、口がきけないときは、書面で答えさせることができる(刑事訴訟規則第125条)。 次に、捜査機関において、障害を有する被疑者や参考人に対して取調べを行う際は、対象者の特性を考慮して適切な方法により行うことの重要性を意識し、知的障害者等に対し供述特性を踏まえた分かりやすい発問等を行うこと、聴覚障害者に対し手話通訳や筆談を用いること、必要に応じ、検察官らが自宅や病院等に赴いた上で事情聴取を実施することなどの配慮を行っている。 また、警察では、障害のある人が警察へアクセスする際の困難を取り除くため、スマートフォン等を使用して、文字等で緊急通報が行える「110番アプリシステム」を全都道府県警察に整備し、運用を開始したほか、巡回連絡等による情報提供、交番等へのスロープ設置等を行っている。 加えて、警察官は、精神又は身体に障害のある者の取調べを行うに当たっては、その者の特性を十分に理解し、取調べを行う時間や場所等について配慮するとともに、供述の任意性に疑念が生じることのないように、その障害の程度等を踏まえ、例えば、聴覚障害のある者に対しては手話通訳者を手配するなど、適切な措置を講じている。 (b)弁護士、裁判所職員、裁判官、検察官並びに警察官及び刑務官を含む法執行機関職員のための研修計画を含め、定期的に障害者の権利に関する意識向上キャンペーンを実施すること。 ○弁護士 p15 日本弁護士連合会においては、弁護士に対し、障害者に対する適切な配慮等について理解を深める研修等を実施し、また、全国の弁護士会連合会においては、管内の弁護士会所属弁護士に対し、障害者差別解消等に関する研修等を実施しているものと承知している。 ○裁判所職員、裁判官 裁判所においては、裁判官の研修を担当する司法研修所、及び、裁判官以外の職員の研修を担当する裁判所職員総合研修所において、人権擁護に取り組んでいる政府機関担当者や障害者関連の専門家を講師に招くなどして、障害者に対する適切な配慮等について理解を深める研修を実施し、また、各裁判所においても、同様の研修を実施していると承知している。 ○検察官 検察職員に対しては、経験年数等に応じて実施する各種研修において、国際人権関係等をテーマとする障害者権利条約を含めた講義や、障害者に関する理解・配慮に資する講義を実施しているほか、日常の業務においても、上司が個別事件の捜査・公判を通じて個々の検察官に対して指導を行っている。 ○警察官 警察学校や警察署等の職場において、障害者の権利に関する条約等の人権関係諸条約や憲法、刑事訴訟法等の法学、職務倫理の講義、障害者施設への訪問実習、有識者による講話等を行い、障害者の特性や障害に配慮したコミュニケーション等の理解を深め、障害者の人権を含めた人権に配意した警察活動を推進するための教育を行っている。 ○刑務官 刑務官に対しては、矯正研修所及び同支所における各種研修プログラムにおいて、被収容者の人権の尊重を図る観点から、憲法及び人権に関する諸条約を踏まえた被収容者の人権に関する講義や行動科学的な視点を取り入れた研修等を実施している。 また、各矯正施設においても、被収容者に対する処遇場面などを想定したロールプレイング教材を用いて実務に即した自庁研修を行うなどにより、職員の人権意識の向上に努めている。 ○その他職員 法務省では、中央省庁等の職員を対象に、人権問題に関して、国家公務員等の理解と認識を深めることを目的とした「人権に関する国家公務員等研修会」を開催しているところ、2016年9月及び2018年1月に開催した研修においては、「障がいのある人の人権」をテーマに取り上げた。 さらに、人権擁護事務に携わる法務局・地方法務局の職員を対象とした研修及び人権擁護委員を対象とした研修において、障害のある人の人権問題に関する講義も実施している。 (c)知的又は精神障害のある犯罪の被疑者(これには裁判前の勾留にある者を含む)が、差別なくかつ他の者との平等を基礎として、司法手続にアクセスできることを確保すること。 検察官及び警察官による障害者に対する対応、裁判所及び訴訟手続における障害者に対する措置については、上記パラ12(a)に述べたとおり、司法手続のアクセスが確保されている。 身体の自由及び安全(第14条) 13.以下のために講じた措置についての情報を提供願いたい。 p16 (a)「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」、特にその第29条、第33条及び第37条、並びに「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含め障害者の自由及び身体の安全を実際の障害又は障害があると認められることに基づき制限する法律を撤廃すること。これには、障害者の強制的な施設収容を認める法令を含む。 精神保健福祉法に定める本人の意思によらない入院は、精神障害者であることそのものを理由として行われるものではない。精神障害のために自傷他害のおそれがある場合又は自傷他害のおそれはないが医療及び保護が必要な場合であって、入院の必要性について本人が適切な判断をすることができない状態にある場合に行われるものである。入院実施に当たっては、国が指定する精神保健指定医による診察(同法第29条第2項及び第33条第1項)や入院措置についての本人への書面告知(同法第29条第3項及び第33条の3)が義務付けられている。 精神科医療においては、患者の自殺企図又は自傷行為等、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ事態が生じ得るため、同法第36条第1項は、患者本人の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができる旨定めている。精神科病院の管理者は、同法第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を遵守しなければならないこととされている。当該基準において、隔離や身体的拘束等(以下「行動の制限」という。)は、当該患者本人の医療又は保護を図る上でやむを得ずなされるものであり、懲罰や見せしめのために行われることは厳にあってはならないものとしている。また、行動の制限に当たっては、当該患者に対してその理由を知らせるよう努めるとともに、制限を行った旨及びその理由並びに制限を開始した日時等を診療録に記載することを定めるほか、漫然と行動の制限が行われることのないよう遵守事項を定めている。 「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」(以下「医療観察法」という。)においても、精神保健福祉法と同様の仕組みがあり、医療観察法第92条で、入院対象者の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができると定めている。指定入院医療機関の管理者は、同法第93条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を遵守しなければならないとされている。当該基準において入院対象者の個人としての尊厳を尊重し、その人権に配慮しつつ、適切な精神医療の確保及び社会復帰の促進に資するものでなければならないものとしている。また、処遇に当たって、入院対象者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を入院対象者にできる限り説明して制限を行うよう努めるとともに、その制限は入院対象者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとしている。 医療観察法において規定されている精神障害者に対する入院等の処遇は、殺人や放火などの重大な犯罪に当たる行為を行い、かつ、当該行為の当時、心神喪失又は心神耗弱の状態にあったと認定され、不起訴処分又は無罪等の確定裁判を受けた者について、当該行為を行った際の精神障害を改善し、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に行われるものである。処遇は、精神障害者であることそのものを理由として行われるものではない。処遇の決定に当たっては、対象者の鑑定を実施するとともに、弁護士や保健・福祉に関する専門家等の関与の下で審判期日を開催し、対象者に意見を述べる機会を与えた上で、裁判官と医師である精神保健審判員の合議体において、処遇の要否及び内容を適切に判断することとされている(同法第2条、第33条ないし第42条)。 (b)知的又は精神障害のある者の入院件数が増加していることに対応すること、及び彼らの無期限の入院を終わらせること。 精神障害者の入院件数及び1年以上の長期入院者も増加はしていない(統計別添表○のとおり)。精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮 p17 らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築に向け、保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科医療機関、その他の医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制の構築に向けた取組を進めている。 具体的には、「入院医療中心から地域生活中心へ」の理念を元に、より一層の地域移行を進める観点から、以下の自治体の取組に対する補助や事業活用が進むように支援を行っているところである。(1)地域生活を念頭に置いた日中活動体験プログラムや生活訓練プログラムの実施等を行う「入院中の精神障害者の地域生活支援に係る事業」、(2)ピアサポートの養成や自治体における活用経費等の補助する「ピアサポートの活用に係る事業」 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰からの自由(第15条) 14.以下についての情報を提供願いたい。 (a) 障害者、特に知的又は精神障害のある者に対して用いられる、強制電気痙攣療法、強制治療、隔離、その他同意のない屈辱的で品位を傷つける実践を含む、物理的及び化学的身体拘束の使用を廃止するためにとった法律(「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」を含む)上及び実践上の措置。 問13(a)のとおり、精神科医療においては、患者の自殺企図又は自傷行為等、そのまま放置すれば患者の生命にまで危険が及ぶ事態が生じ得るため、精神保健福祉法第36条第1項は、患者本人の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができる旨定めている。当然、同法第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準において、隔離や身体的拘束等(以下「行動の制限」という。)は、当該患者本人の医療又は保護を図る上でやむを得ずなされるものであり、懲罰や見せしめのために行われることは厳にあってはならないものとしている。 また、同法第38条の4において、精神科病院に入院中の者又はその家族等は、都道府県知事に対し、当該入院中の者を退院させ、又は精神科病院の管理者に対し、その者を退院させることを命じ、若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。 なお、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(平成26年厚生労働省告示第 65 号)において、精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性として、 ・精神医療においてインフォームドコンセントの理念に基づき精神障害者本位の医療を実現していくこと ・精神障害者の医療及び保護の観点から、本人の同意なく入院が行われる場合であっても、行動の制限は最小限の範囲とし、併せてインフォームドコンセントに努める等、精神障害者の人権擁護に関する障害者の権利に関する条約(平成26年条約第1号)等の国際的な取り決めも踏まえつつ、人権に最大限配慮して心身の状態に応じた医療を確保すること などが定められている。 医療観察法第92条も同様に、入院対象者の医療又は保護のために必要な範囲内で、その行動について必要な制限を行うことができると定めている。指定入院医療機関の管理者は、同法第93条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準において、入院対象者の自由の制限が必要とされる場合においても、その旨を入院対象者にできる限り説明して制限を行うよう p18 努めるとともに、その制限は入院対象者の症状に応じて最も制限の少ない方法により行われなければならないものとしている。 さらに、医療観察法第95条において、同法の決定により指定入院医療機関に入院している者又はその保護者は、厚生労働大臣に対し、指定入院医療機関の管理者に対して当該入院している者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命ずることを求めることができる。 なお、電気けいれん療法は、迅速な治療効果が必要な症例や、薬物療法において副作用が出現しかつ薬物治療で反応性に乏しい症例にも有効で、改善率や安全性が確立されたものである。原則患者の同意を得た上で、適応疾患や予想される危険と利益、人権保護の観点からも十分検討し、総合的な判断の上で行われている。 第1回報告パラ106も参照のこと。 (b)「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のもとで強制治療を受けた又は長期入院している知的又は精神障害のある者の権利の侵害について調査するための独立した監視システムが存在するかどうか。 精神保健指定医や法律に関する学識経験者等で構成される独立した第三者機関であり、都道府県に設置される精神医療審査会が存在する。 精神科病院の管理者は、都道府県知事に対して、本人の意思によらない入院中の者の症状等を定期的に報告しなければならない。また、入院中の患者やその家族等は、都道府県知事に対して、処遇改善請求や退院請求を行うことができる。 これらの報告や請求については、当該精神医療審査会により、その入院の要否や処遇の適否が審査される。同審査会が必要と認めるときは、委員に当該審査に係る入院中の者を診察させ、又はその者が入院している精神科病院の管理者等に対して報告を求めること等ができる。都道府県知事は、その審査の結果に基づき、その入院が必要でないと認められた者を退院させ、又は病院の管理者に対して退院等の措置を採ることを命じなければならない。 更に、厚生労働大臣又は都道府県知事は、精神科病院の管理者に対して、入院中の者に関する報告や書類の提出・提示、病院への立入調査を要求することができ、入院中の者の処遇が法令に反する場合や著しく適当でないと認めるときは、精神科病院の管理者に対して処遇改善命令を行うことができる。 15.「旧優生保護法」のもとで行われた事案を含め、障害者に対する強制不妊事案を調査するためにとられた措置についてお示しいただきたい。また、強制不妊を受けさせられた者が出訴期限法によって司法手続の利用を制限されるかどうかについてもお知らせ願いたい。「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」のもと行う障害者に対する賠償及び補償の提供のための措置について、補償として支払った金額についての最新情報を含め説明願いたい。 2018年3月以降、与党旧優生保護法に関するワーキングチームや優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟からの要請により、旧優生保護法下における不妊手術について、 ・都道府県、保健所設置市、特別区に対して、関連した資料等の保管状況等の調査(同年9月結果公表) ・医療機関・福祉施設や保健所設置市以外の市町村における優生手術に関する個人記録の保有状況の調査(同年10月結果公表) 等の調査を実施してきた。 p19 2019年4月には、議員立法により「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「旧優生保護法一時金支給法」という。)が全会一致で成立し、公布・施行された。当該法律においては、前文で反省・おわびを表明するとともに、国は、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対し、320万円の一時金を支給することとなっており、2021年4月30日時点で899名に対して支給を認定した。 また、旧優生保護法一時金支給法に基づき、国は、特定の疾病や障害を有すること等を理由として生殖を不能にする手術又は放射線の照射を強いられるような事態を二度と繰り返すことのないよう、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資する観点から、旧優生保護法に基づく優生手術等に関する調査その他の措置を実施することとされている。 旧優生保護法の被害者に対しては、優生手術それ自体を不法行為とする損害賠償請求が成り立つとしても、2020年4月1日の時点ですでに20年が経過していれば、改正前の民法の規定が適用され、同損害賠償請求権は20年間の除斥期間により、その権利が消滅することになるのが原則である。もっとも、除斥期間についても、明文の規定はないものの、不法行為の時から20年が経過した後も請求権が消滅しないと判断した判例もあり、いずれにせよ、個別の事案において、旧優生保護法の被害者に係る損害賠償請求権が消滅しているか否かは、裁判所の判断ということになる。 搾取、暴力及び虐待からの自由(第16条) 16.以下のためにとられた法的措置及びその他の措置についての情報を提供願いたい。 (a)身体的、心理的、性的・ジェンダーに基づく暴力、家庭内暴力、強姦、虐待、搾取及び体罰を含めあらゆる形態の暴力から障害者を保護すること。 障害者を暴力から保護することは極めて重要であり、政府としては複数の法律や様々な取組により、これを実施している。 障害者虐待の防止、障害者の擁護者に対する支援等に関する法律第3条において、障害者への虐待を禁止している。虐待防止の取組を進めるに当たり、障害者虐待防止対策支援事業を実施しており、都道府県又は市町村において、虐待時の迅速かつ適切な対応のための体制整備を行うため、専門性の高い職員の配置などを行えるようにしている。 さらに、厚生労働省では、都道府県や事業者に対して実施する障害者虐待防止・権利擁護に関する研修や、障害者虐待に関する各自治体の対応状況の調査・分析の実施に必要な経費を確保している。 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第3条及び第4条においては、DV被害者の支援として婦人相談員による相談支援や婦人相談所による一時保護等を行うとともに、同法第5条に基づいた婦人保護施設での中長期的な保護・自立支援を実施している。児童虐待の防止等に関する法律第3条においては、児童への虐待が禁止されており、2019年の法改正において体罰の禁止を法定化した。 労働基準監督署においては、労働者からの相談など各種情報に基づき、労働基準関係法令の違反の疑いがある事業場に対し監督指導を実施し、法違反が認められた場合は、その是正を指導している。 障害の有無にかかわらず、教職員による児童生徒への体罰は、学校教育法第11条により、禁止されている。文部科学省では、全国の学校教育における体罰根絶に向けた取組として、以下の取組をおこなっている。 @ 体罰の実態調査の実施 p20 A 懲戒と体罰の区別、体罰防止に関する取組について通知を発出 B 「運動部活動での指導のガイドライン」の策定に加え、2018年3月には、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」、同年12月には、「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を策定し、この中で校長及び部活動の指導者に対して、強く体罰の根絶の徹底を求めている。 障害の有無にかかわらず、暴力行為による損害を受けた者は、当該暴力行為をした者に対して、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができる(民法第709条、710条)。 障害の有無にかかわらず、父又は母による未成年の子に対する虐待等がある場合には、これによって子の利益が著しく害されるときは、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求を受けた家庭裁判所の審判により、父又は母の親権を喪失させる(民法第834条)。また、子の利益が著しく害される程度に至らないときであっても、子の利益が害されるときは、上記の者の請求を受けた家庭裁判所の審判により、2年以内の期間を定めて親権を停止することができることとしている(同法第834条の2)。 「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(平成13年法律第31号)では、障害の有無にかかわらず、被害者の申立てにより、一定の要件を満たす場合には、裁判所は、配偶者に対し、被害者等への接近等を禁止することを命ずる制度を設けている(同法第10条等参照)。  刑法上、暴行罪(刑法第208条)、傷害罪(同法第204条)、保護責任者遺棄罪(同法第218条)、逮捕監禁罪(同法第220条)、脅迫罪(同法第222条)、強要罪(同法第223条)、強制わいせつ罪(同法第176条)、強制性交等罪(同法第177条)、監護者わいせつ罪(同法第179条第1項)、監護者性交等罪(同条第2項)等を処罰する規定があり、これらの罪に該当する行為は、障害者に対するものも含め、処罰することが可能である。 また、被害者が心神喪失であることに乗じてわいせつな行為をし、又は性交等をした場合には、準強制わいせつ罪(同法第178条第1項)、準強制性交等罪(同条第2項)として処罰することが可能である。 第1回報告パラ113も参照のこと。 (b)障害者特に障害のある女性と児童に対するあらゆる形態の暴力の発生を確認し、これを予防し、また起訴すること。上記は、家庭、学校、病院、施設を含めあらゆる状況のもとでのものとし、知的又は精神障害のある者に対するその保護者による虐待事案についても含める。 上記16(a)回答は、障害のある女子と児童にも当てはまるため、16(a)参照。 個人をそのままの状態で保護すること(第17条) 17.障害者に対する強制不妊を法律上及び実践上で廃止するためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 旧優生保護法については、障害者の権利の実現に向けた取組が進められる中、障害者を差別する優生思想を排除するため、1996年に議員発議により、法改正が行われた。具体的には、遺伝性精神疾患等を理由とする優生手術(不妊手術)等に関する規定は全て削除され、母性の生命健康を保護することを目的とする法律に改められ、母体保護法と改称された。 また、同年、地方自治体に対して、その改正法の趣旨等について周知を行った。 p21 移動の自由及び国籍についての権利(第18条) 18.「出入国管理及び難民認定法」第5条のもと、実際の知的・精神障害又はこれら障害があると認められることに基づき、締約国(注:日本)が入国を拒否し得るかどうか明確に説明願いたい。 知的障害又は精神上の障害があることのみに基づいて上陸を拒否することはない。なお、精神上の障害については、障害があることではなく、それに伴う社会への影響を考慮して判断している。 精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況にある者又はその能力が著しく不十分な者で、所定の補助者(出入国管理及び難民認定法施行規則第4条)が随伴しないものについては上陸を拒否することとなる(出入国管理及び難民認定法第5条第1項第2号)。補助者が随伴しない場合、他人に害を及ぼすとして入院措置が必要になった場合に財政上の負担など種々の負担が生じるおそれがあるほか、財産行為などにおいても十分な責任を負えず取引の安全を害するおそれがあるなど、社会への影響があるためである。 なお、補助者の具体例としては、後見人、保佐人、配偶者、親権を行う者、扶養義務者、同居の親族、本人が参加する観光ツアーを主宰する旅行代理店の添乗員等がこれに当たる。 また、出入国管理及び難民認定法第5条第1項第2号に該当するかどうかの判断は、医学的判断を要するものであることを踏まえて、医師の診断を経た上で行うこととされており(同法第9条第2項)、慎重な手続により行うこととなる。 自立した生活及び地域社会への包容(第19条) 19.以下についての情報を提供願いたい。 (a)いまだ施設にいる障害者、施設から退所した障害者と彼らの現状について、とりわけ性別、年齢、居住地、支援提供の有無によって分類した数値。 障害者の総数は、2018年10月1日時点で、964.7万人と推計されており、そのうち在宅の障害者は914万人、施設に入所している障害者は50.7万人である。 また、在宅の障害児・者等の生活実態とニーズを把握することを目的として、2016年に実施された「生活のしづらさなどに関する調査」においては、障害者手帳を所持している者は559.4万人と推計されており、そのうち男性は297.1万人、女性は259.5万人とされている。また、障害者手帳所持者のうち65歳以上の者は323.8万人とされている。障害者手帳所持者のうち24.7%が障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを利用している。 2020年に実施した「障害者福祉計画に係る実施状況報告 地域移行アンケート」結果によると、2019年度中に障害者支援施設から退所した者のうち、地域生活に移行した者は約1,600人となっている。 このうち、主な移行先を居所別に見ると、グループホームが約700人、家族が住む自宅等が約900人となっている。 また、地域生活に移行した者の主たる日中活動の場は、生活介護が約500人、就労継続支援B型が約300人、一般就労が約200人となっている。 2019年に実施した調査の結果によると、2019年10月1日時点の障害者支援施設及び障害児入所施設の在所者数とその内訳は、表1及び表2のとおり。2019年に実施した調査の結果によると、2018年10月1日から2019年9月30日の間に障害者支援施設を退所した者の退所後の住居は、表3のとおり。 表1 障害者支援施設の在所者数 p22 年齢 障害者支援施設 総数 153,426 17歳以下 318 18・19 1,438 20〜29 13,231 30〜39 19,428 40〜49 34,979 50〜59 33,300 60〜69 31,032 70〜79 15,278 80〜89 2,987 90歳以上 190 不詳 1,246 表2 障害児入所施設の在所者数 年齢 障害児入所施設 総数 16,303 0〜10 2,832 11〜17 6,033 18歳以上 7,311 不詳 126 表3 障害者支援施設退所者の退所後の住居 総数 7,415 自宅・アパート 1,365 グループホーム 752 福祉ホーム 46 入所施設 1,279 その他 927 精神病床における性・年齢階級・都道府県別の在院状況については、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神医療政策研究部において調査した結果を取りまとめている「精神保健福祉資料」内に掲載されている別添表●の通り。 (b)障害者の施設からの退所についての短期及び長期戦略及びリソースの配分(リソースを精神科病院から個人ごとの支援や地域の利用可能なサービスに移行することによるものを含む)。  障害福祉サービス等の提供体制の確保等に関しては、障害者総合支援法第88条及び第89条の規定に基づき、都道府県と市町村が定める障害福祉計画により定めている。この計画は、国が定める基本指針(障害者福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針)を踏まえて策定することとしている。基本指針においては、障害者等の自立支援の観点から、福祉施設等からの地域生活への移行、地域生活の継続の支援の提供等、地域の社会資源を最大限に活用し、提供体制の整備を進めることとしている。 p23 障害者総合支援法第5条第17項に規定する共同生活援助(グループホーム)において、施設から退所した障害者が、地域において共同して自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、相談、入浴、排泄又は食事の介護その他日常生活上の援助を実施している。 障害者総合支援法第5条第16項に規定する自立生活援助において、単身若しくは同居する家族の支援が見込めない障害者に対し、定期的な巡回又は随時の通報を受けて行う訪問、相談対応等により利用者の状況を把握し、必要な情報提供及び助言、関係機関との連絡調整等の支援を実施している。 障害者総合支援法第5条第20項に規定する地域移行支援において、住居の確保等、地域での生活に移行するための活動に関する相談、各障害福祉サービス事業所の体験利用等に係る支援を実施している。 障害者総合支援法第5条第21項に規定する地域定着支援において、常時、連絡体制を確保し障害の特性に起因して生じた緊急事態等における相談、障害福祉サービス事業所等と連絡調整など、緊急時の各種支援を実施している。 精神障害者の医療機関からの退院については、「入院医療中心から地域生活中心」という理念を元に、より一層の地域移行を進める観点から、精神障害者が地域の一員として安心して自分らしい暮らしをすることができるよう、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を平成29年より進めている。具体的には、精神障害者の地域生活の支援に向けて、入院中の精神障害者の地域生活支援に係る事業、ピアサポートの活用に係る事業などの自治体の取組を、財政措置等により推進している。 個人の移動を容易にすること(第20条) 20.障害者の制限のない個人移動に必要な、移動補助具及び支援補装具、支援機器並びにサービスの利用に関する詳細な情報を提供願いたい。これには、居宅訪問介護、同行援護サービス、地域生活支援サービスのもとでの移動支援サービスを含む。 障害者総合支援法第5条第3項に規定する障害福祉サービスである重度訪問介護として、重度の肢体不自由者その他の障害者であって常時介護を要するものにつき、居宅等における入浴、排せつ又は食事の介護等及び外出時における移動中の介護を総合的に供与している。 また、障害者総合支援法第5条第4項に規定する同行援護として、視覚障害により、移動に著しい困難を有する障害者等につき、外出時において、当該障害者等に同行し、移動に必要な情報を提供するとともに、移動の援護等を供与している。 なお、障害者総合支援法第5条第5項に規定する行動援護として、知的障害又は精神障害により行動上著しい困難を有する障害者等であって常時介護を要するものにつき、当該障害者等が行動する際に生じ得る危険を回避するために必要な援護、外出時における移動中の介護等を供与している。 障害者総合支援法第77条に基づく市町村の地域生活支援事業として、屋外での移動が困難な障害者等に対し、外出のための支援を行うことにより、地域における自立した生活及び社会参加を促すため、各市町村が、地域の特性や利用者のニーズに応じて、「移動支援事業」が実施されている。 障害者総合支援法第76条に基づき 、補装具(障害者等の身体機能を補完・代替し、長期間に渡り継続して使用される、車椅子や義足などの福祉用具)の購入等に必要な費用を支給しているところである。また、第77条第6号より、日常生活用具等給付事業により、日常生活上の便宜を図る用具の給付等を実施している。別添資料●を参照。 p24 福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律第7条に基づき、福祉用具の実用化開発を行う事業者に対する助成や、研究開発及び普及のために必要な情報の収集・分析及び提供を実施している。 表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会(第21条) 21.以下についての情報を提供願いたい。 (a)日本手話を国レベルで公式な言語として法律上認めるプロセス。 第1回政府報告パラ136にあるとおり、障害者基本法において、全ての障害者は、可能な限り、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られることとされている(障害者基本法第3条)。 また、2018年に施行されたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律においても、国及び地方公共団体は、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の策定及び実施に当たっては、障害者、高齢者等の言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段並びに情報の取得及び利用のための手段を確保することに特に留意しなければならないとされている(ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一体的な推進に関する法律第8条)。 (b)点字、読み易い版及びその他補助的及び代替的な意思疎通の方法と様式を含め、利用可能なフォーマットで公式情報を発信するために全てのレベルの当局によって講じられた手段、及び意思疎通支援のために割り当てられたリソース。 首相官邸ホームページにおいては、「首相官邸Webアクセシビリティ方針」を定め、緊急時の情報発信を含む主要コンテンツについて、日本工業規格JIS X 8341-3:2016「高齢者・障害者等配慮設計指針‐情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス‐第3部:コンテンツ」のレベルAA準拠の維持を目標として運用している。同ホームページ上ではテキスト、画像に加え、多数の動画コンテンツを掲載しているが、その中でも政府として情報発信を行うことを目的とした官房長官記者会見等については手話通訳の映像等を合わせて掲載している。 この他、各省庁のホームページにおいても、同上の規格に準拠し、ウェブアクセシビリティの改善に努めている。特に厚生労働省では「音声読み上げ/文字拡大サービス」の導入と「点字ファイル」の提供を行っている。 2019年5月に公職選挙法を改正し、選挙公報掲載文については、これまで印刷での提出であったものを、音声読み上げソフトに対応する形式での掲載を進めるため、電子データでの提出を可能とした。また、参議院選挙区選出議員選挙の政見放送において、手話通訳及び字幕の付与を可能にするとともに、スタジオ録画の場合にも手話通訳の付与を可能とした。2019年4月の統一地方選選挙では、視力に障害のある有権者の投票環境の向上を図るため、点字及び音声による選挙情報のきめ細かい提供を行った。 (c)音声解説、手話通訳及び字幕の使用を通じ障害者が理解しやすいテレビ番組を制作するためにとられた措置。 字幕放送、解説放送及び手話放送の普及目標を定めた「放送分野における情報アクセシビリティに関する指針」を策定するとともに、字幕番組、解説番組及び手話番組の制作費等に対する助成を実施し、放送事業者における取組を促進している。2018年度は、字幕番組助成件数は42,426本、解説番組助成件数は3,689本、手話番組助成件数は1,586本。 (d)公衆に開放され又は提供されたウェブサイトが利用し易く、またワールドワイド・ウェブ・コンソーシアム(W3C)のウェブ・アクセシビリティ・イ p25 ニシアティブによって開発された規格に従っていることを確保するためにとられた措置。 2004年に国内外の既存ガイドラインを参考に日本語特有の事項も考慮し国家規格JIS X8341-3(高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ)を制定。その後、W3C勧告”WCAG2.0”に沿った国際規格ISO/IEC 40500:2012に一致させるため対応する同JISを2016年3 月に改正した。 こうした規格への対応に資するものとして、高齢者や障害者を含む誰もが公的機関のウェブサイトを円滑に利用できるよう、ガイドライン(「みんなの公共サイト運用ガイドライン」)を策定し、公的機関のウェブアクセシビリティ改善に向けた取組を支援している。 プライバシーの尊重(第22条) 22.障害者に関するデータの守秘やプライバシー保護を確保するためにとられた立法上、行政上及びその他の措置について、本委員会にお知らせいただきたい。特に、社会保障・税番号制度としても知られている「マイナンバー」制度を利用する際や意思疎通支援を受ける際のものについてお知らせいただきたい。 マイナンバー制度については、行政機関個人情報保護法、独立行政法人個人情報保護法及び個人情報保護法の特例を定める目的でマイナンバー法を制定し、マイナンバー及びマイナンバー付きの個人情報(以下、特定個人情報という。)の取扱いが安全かつ適正に行わるよう、マイナンバーの利用範囲(9条)、特定個人情報の提供の求めの制限(15条、19条)、特定個人情報の収集等の制限(20条)、情報提供等の記録及び保存(23条)、行政機関の長等による特定個人情報保護評価の実施(28条)、特定個人情報の適正な取扱を確保するためサイバーセキュリティの確保に関する事項等の研修の実施(29条の2)、個人情報保護委員会による検査等(29条の3)、特定個人情報の漏洩等に関する個人情報保護委員会への報告(29条の4)、特定個人情報の保護を図るための連携協力(32条の2)、特定個人情報の取扱いに関する個人情報保護委員会の監督等(第6章)、罰則(第9章)を定めているところ。また、上記情報提供の記録について、法附則第6条第3項の規定に基づき整備された情報提供等記録開示システムを通じ、住民自らパソコンやスマートフォン等のインターネット閲覧端末を利用して、インターネット環境があればどこからでも閲覧・取得することが可能となっている。さらに、国は情報提供等記録開示システムを閲覧できる端末を全国の市区町村に配置し、端末を保有されていない方や、利用方法がわからない方、利用に介助が必要な方などについては、市区町村の窓口にお越しいただければ利用できる環境を整備している。 個人情報保護法は、障害者も含め、特定の個人を識別できる情報(個人情報)について、目的外利用の制限(個人情報保護法第16条)、第三者提供の制限(同法第23条)、安全管理措置(同法第20条)、本人からの開示等の求めへの対応(同法第25条から第27条)などの義務を課し、個人情報の適正な取扱いを図っている。また、本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するもの(要配慮個人情報)(同法第2条)については、原則として、あらかじめ本人の同意を得ないで所得してはならない(同法第17条)ことを含む特別の規律を設ける改正法が2017年5月に施行されている。 家庭及び家族の尊重(第23条) 23.以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a)家族生活、婚姻及び離婚に係る全ての事項に関し、民法などの法律における障害者(知的又は精神障害のある者を含む)に対する差別的条項を削除すること。 p26 差別的条項は存在しない。第1回政府報告パラ148及び149参照。 民法第770条第4号は、裁判上の離婚の原因の一つとして「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」を定めている。このような場合には、婚姻当事者の一方が夫婦の協力義務を履行することができないために、婚姻の本質を欠いているといえるから、離婚の原因としているのであって、精神病に罹患している者を差別する意味はない。 裁判実務においても、同号により離婚が請求された場合には、精神病に罹患している者のその後の療養及び生活について、具体的な手当がされている場合に限って離婚を認めるという運用がされており、精神病に罹患した者に対する配慮がされている。 (b)障害を理由に家族が分離することを防ぐために、他の者との平等を基礎として親子に関する権利と責任を行使することができるよう確保すべく、障害をもつ児童とその親、障害のある親(シングルペアレントの場合を含む)に対する支援を提供すること。 障害者総合支援法に基づく相談支援として、障害者等、障害児の保護者又は障害者等の介護を行う者からの相談に応じ必要な情報の提供や助言等を行う「基本相談支援」等を実施している。また、特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づき、20歳未満の障害児を家庭で監護、養育している父母等に特別児童扶養手当として、障害の程度に応じて、月52,500円又は月34,970円(2020年度)を支給している。さらに、同法に基づき精神又は身体に重度の障害を有するため、日常生活において常時の介護を必要とする状態にある在宅の20歳未満の者に対して障害児福祉手当として月14,880円(2020年度)を支給している。 加えて、児童相談所における相談援助活動では、常に子どもの最善の利益を考慮し、援助活動を展開していくことが必要と規定している。また、児童福祉法において、相談、通告を受けた場合、児童やその家庭の状況等を勘案して措置をすることとされている。 教育(第24条) 24.以下についての情報を提供願いたい。 (a)ろう児童及び盲ろう児並びに知的又は精神障害のある児童を含め、障害のある全ての者のために、分離された学校における教育から障害者を包容する(インクルーシブ)教育に向け移行するための、立法及び政策上の措置並びに人的、技術的及び財政的リソース配分。 我が国においては、以下のような障害のある子供と障害のない子供が可能な限り共に教育を受けられるように条件整備を行った。 @従来は就学基準に示された障害の種類及び程度に該当する子供については特別支援学校に就学していた。しかし、2013年に学校教育法施行令を改正し、障害のある子供の就学先については、本人や保護者の意見を可能な限り尊重しながら、市町村教育委員会において総合的な観点から決定する仕組みとした。 A子供の学習活動上のサポート等を行う「特別支援教育支援員」について地財措置を講じている。また、看護師や外部専門家等の配置に係る財政的支援を行っている。 小中学校に在籍する障害のある児童の支援のための支援員について地方交付税措置が講じられている。2020年度は57,000人の配置(10年前は34,000人)にかかる経費が措置されており、支援の充実を図っている。また、2019年11月現在特別支援学校、幼稚園、小・中・高等学校に在籍する医療的ケアを必要とする幼児児童生徒の数は9,845人である。医療的ケアのための看 p27 護師配置に係る財政的支援の充実を図っている。2020年度は、2,100人分(7年前は329人分)の経費を措置した。 B特別支援教育に関する教職員の資質向上については、「特別支援教育に関する教職員等の資質向上事業」において、特別支援学校教諭等免許状の取得を促進するため、免許法認定講習や教師の資質向上に関する講習会等を実施した。また、国立特別支援教育総合研究所の免許法認定通信教育においても、特別支援学校教諭等免許状の取得を推進している。 C通級による指導については、2017年3月に義務標準法を改正し、これまで加配定数として措置してきた小中学校における通級による指導に係る教員定数の一部について、対象となる児童生徒数に応じて算定される基礎定数化を行った。また、2018年度より、高等学校における通級による指導を制度化した。 このように、障害のある子供の自立と社会参加を見据え、一人一人の教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できるよう、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった、連続性のある多様な学びの場の整備を行っている。 この他、「障害のある児童及び生徒のための教科用特定図書等の普及の促進等に関する法律」のなかで、拡大教科書の標準的な規格を示すこととし、教科書発行者に対して拡大教科書の発行の努力義務を定めている。また、教科書の文字を音声で読み上げる音声教材の製作方法等について調査研究を実施し、その成果物である音声教材を障害のある児童生徒に無償提供している。 政府においては、学校におけるICT環境の整備に取り組んでおり、障害のある子供たちが情報機器端末を使用するために、一人一人に応じた入出力支援装置の整備について、財政的支援を行っている。 さらに、文部科学省では、学校施設のバリアフリー化に係る指針や事例集を学校設置者に対して周知しているとともに、学校施設のバリアフリー化に係る整備に対して財政支援を行っている。 (b)個別化された支援を提供するためにとられた措置。全てのレベルにおける一般の(mainstream)教育において障害者に対する合理的配慮の拒否を防ぐためにとられた措置。また、質の高い障害者を包容する(インクルーシブ)教育についての教職員に対する制度的な研修を確保するための措置。 文部科学省においては、障害のある子供一人一人の障害の状態や教育的ニーズに応じて実施する「合理的配慮」についての理解を深め、各地域における特別支援教育の一層の推進を図るため、学校関係者を対象とした合理的配慮推進セミナーを開催してきた。ほかにも、希望する都道府県に対して、域内にある各学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校等)の設置者(国立大学法人、都道府県、市町村、学校法人等)を対象に開催する研修会等に関係職員を派遣するなど、各種取組・研修事業等を実施しているところである。また、特に状態やニーズが様々で教師による認識や理解が難しい発達障害について、学校における合理的配慮の提供の在り方に関する研究事業を実施している。その事業の成果も含め、合理的配慮の提供事例について、ポータルサイト(独立行政法人国立特別支援教育総合研究所「特別支援教育教材ポータルサイト」)で誰でも検索できるようにしている。 さらに、合理的配慮に関する理解の促進をはじめとする特別支援教育の質の向上に資するため、文部科学省において、特別支援学校教諭免許状取得の推進、通常の学級も含めた指導方法の研究、保護者や地域住民等を含めた理解啓発に関する事業等を実施している。また、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、都道府県等で指導的立場を担う教職員の養成を目的とした研修を実施しているところである。 p28 教育公務員特例法(地方公務員のうち学校教職員の服務や研修の特例等を定める法律)において、公立学校教職員の任命権者(都道府県・政令市教育委員会等)に対して、初任者研修(第23条)、中堅教諭等資質向上研修(第24条)の実施を義務付けている。 「障害のある学生の修学支援に関する検討会」を開催し、障害者差別解消法を踏まえた「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」の考え方や、高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方についてとりまとめ、各大学等に周知した。 また、独立行政法人日本学生支援機構においては、大学等の教職員向けにセミナーや研修会などを実施し、教職員の理解促進を促している。 2017年度に障害者学習支援推進室を設置し、障害者が、一生涯を通じ、本人の希望する学習を主体的・継続的に行うことができるようにするための環境整備と、障害の有無にかかわらず、共に学ぶ場づくり、障害に関する理解促進に取り組んでいる。 2018年度より、予算事業として学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な障害学習プログラムや実施体制、関係機関・団体との連携に関する実践研究や生涯学習分野における合理的配慮の在り方に関する調査研究、2020年度より、地域コンソーシアム形成による持続可能な生涯学習支援体制の構築に関する実践研究を実施している。また、学校卒業後における障害者の学びに関する有識者会議の報告(2019年3月)や「障害者活躍推進プラン」(2019年4月)をとりまとめた。 これらの成果を受け、2019年度は学びの場の担い手育成等を目指すために全国6箇所でのコンファレンスの実施や共生社会の実現に向けたフォーラムを開催した。 (c)全てのレベルの教育(第三次教育及び高等教育を含む)における、性別、年齢、障害で他の生徒と比較し分類した障害のある生徒の退学率。 該当するデータはない(退学率について、高等学校における中途退学者数・中途退学率については把握しているが障害に特化したものはなく、また、それ以外の学校種については、継続的に退学に関する調査を行っていない。)。 健康(第25条) 25.以下についての情報を提供願いたい。 (a)障害者に対する医療や保健サービスに関する法令とその実施が本条約に従っていることを確保するためにとった措置。特に、「難病の患者に対する医療等に関する法律」について。 障害者総合支援法第4条第1項において障害者の定義を定めており、同項に規定する障害者を同法第5条に規定する障害福祉サービスの対象としている。 障害者総合支援法では、障害者等の障害の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療として、身体障害を軽減又は除去するための治療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の一部又は全部を公費で負担することとし、障害者のための医療・リハビリテーション医療の充実を図っている。 精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性として、2014 年 3 月に、「良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針」(平成26年厚生労働省告示第 65 号)を策定し、同指針では、入院医療中心の精神医療から地域生活を支えるための精神医療への改革の実現に向け、地域で生活するために必要な保健医療サービス及び福祉サービスを提供できる体制を確保することとしている。 p29 また、難病の患者に対する医療等に関する法律は2014年5月に成立し、2015年1月から施行された。法の対象として、難病に起因する障害を持つ患者も含んでいる。法第4条に基づき、厚生労働大臣は難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針を定めている。その基本的な方針において、難病の患者に対する医療費助成制度、難病の患者に対する医療を提供する体制の確保、及び難病の患者の療養生活の環境整備等の事項に関する取組の方向性を示している。 (b)総合及び専門保健サービス並びに障害に特化したサービスと機材は国の保健制度の対象範囲となっているか、どの程度そうであるのか。また、締約国(注:日本)中で全ての障害者にとって負担し易く、入手し易く、利用し易いものとなっているか、どの程度そうであるのか。 わが国においては、障害のある方も含め、必要な医療サービスについては、医療保険制度により保障されているところ。さらに、障害のある方については、心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療費(自立支援医療費)の支給を一定の所得区分に応じて行うことにより、障害者等の医療費の負担軽減措置を講じている。 また、身体障害者福祉法第15条に規定する身体障害者手帳の交付を受けた者及び都道府県知事又は指定都市の長から療育手帳の交付を受けた者は、障害者総合支援法の第4条に規定する障害者及び障害児の範囲に含まれ、支援の必要度合いに応じて障害者総合支援法第6条に規定する自立支援給付を受けることが出来る。 加えて、難病に関する施策の推進として、2019 年7 月までに、医療費助成の対象疾病が56 疾病から333疾病に拡大した。なお、333疾病以外の疾病であっても、研究の結果、医療費助成の対象となる指定難病の要件に合致することが明らかになった疾病は、指定難病への指定を検討していく予定である。 (c)障害のある児童や知的又は精神障害のある者を含め、障害者が性と生殖に関する健康と権利について年齢に適した情報及び教育にアクセスすることを確保するためにとられた措置。 学校教育における性に関する指導に関しては、障害のある児童や知的又は精神障害のある者を含め、学習指導要領に基づき、個々の児童生徒の発達段階、障害の状態や経験等に応じて、各学校で適切に行われている。 生涯を通じた女性の健康の保持増進や予期せぬ妊娠への対応を行う観点から、 ・各都道府県等に設置される女性健康支援センターを通じた、思春期から更年期に至る女性を対象とした相談支援や、 ・専門的知識を有する医師や助産師、保健師等による学校等での健康教育や講演会の推進等の施策に取り組んでいる。 ハビリテーション及びリハビリテーション(第26条) 26.国及び地方の当局によって提供された支援補装具及び器具を含め、ハビリテーション及びリハビリテーションを提供するためにとった措置についてお知らせいただきたい。かかるサービスを受けた障害者の数を、性別、年齢、障害によって分類し、全サービス要望数のうちのパーセンテージとして示していただきたい。 障害者総合支援法第76条に基づき 、補装具(障害者等の身体機能を補完・代替し、長期間に渡り継続して使用される福祉用具)の購入等に必要な費用を支給しているところである。また、第77条第6号より、日常生活用具等給付事業により、日常生活上の便宜を図る用具の給付等を実施している。 p30 補装具費支給制度における直近の支給状況(平成30年度)は以下のとおりである。なお、日常生活等用具給付事業については、市町村が地域の状況等を踏まえ、対象者種目や対象者等を決定していることから、国としてその支給状況については把握していない。 購入 :申請 162,396件 決定 160,087件(98.6%) 修理 :申請 114,045件 決定 113,499件(99.5%) 借受け:申請 8件 決定8件(100.0%) 障害者が、その能力や希望に応じて一般就労できるよう、障害者雇用促進法に基づき、公共職業安定所における障害特性に応じたきめ細かな職業紹介、障害者職業センターにおける職業評価・職業準備訓練、障害者就業・生活支援センターにおける就業面と生活面の一体的な相談・支援等を行っている。設置箇所数は、それぞれ2020年4月1日現在で554か所、52か所、334か所となっている。 公共職業安定所において2019年度支援を行い就職した件数は、103,163件であり、そのうち身体障害者25,484件(全体に占める割合:24.7%)、知的障害者21,899件(21.2%)、精神障害者49,612件(48.1%)、その他の障害者6,168件(6.0%)となっている。 同年度地域障害者職業センターを利用した人数は30,925人であり、そのうち身体障害者は1,185人(3.8%)、知的障害者は7,783人(25.2%)、精神障害者は11,686人(37.8%)となっている。 2019年度障害者就業・生活支援センターでの支援を受けた人数は193,631人であり、そのうち身体障害者は22,615人(11.4%)、知的障害者は91,991人(46.5%)、精神障害者は73,250人(37.0%)、その他の障害者は9,775人(4.9%)となっている。 なお、性別・年齢別の状況については把握していない。 労働及び雇用(第27条) 27.以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a)障害者、特に知的又は精神障害のある者や障害のある女性の雇用を、「福祉的就労」及び保護作業所から開かれた労働市場に移行することにより、促進すること。 障害者総合支援法第5条第13項に規定する就労移行支援において、一般就労が可能と見込まれる障害者に対して、生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談等の支援を行い、一般就労への移行を支援している。 また、同条第14項に規定する就労継続支援においては、一般就労が直ちに困難だと見込まれる障害者に対して、生産活動等の活動の機会の提供及びその他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行い、一般就労に向けた支援を行っている。 さらに、同条第15項に規定する就労定着支援においては、就労移行支援等を利用し、一般就労に移行して一定期間を経過した障害者に対して、就労先の企業等や家族、関係機関との連携調整等その他の必要な支援を行い、就労定着を支援している。就労系障害福祉サービスから一般就労への移行者数については、11.5倍に増加(2003年度1,288人→2017年度14,845人)している。 加えて、知的・精神障害者も含む障害者が、その能力や希望に応じて一般就労できるよう、障害者雇用促進法に基づき、公共職業安定所における障害特性に応じたきめ細かな職業紹介、障害者職業センターにおける職業評価・職 p31 業準備訓練、障害者就業・生活支援センターにおける就業面と生活面の一体的な相談・支援等を行っている。別添資料●を参照。 (b)合理的配慮の拒否を含め、雇用の分野における障害による差別を禁止する法的条項を履行すること。また、個別具体的な支援の提供を確保すること。更に、公務部門及び民間部門における雇用の分野における障害による差別があった場合は救済措置を講じること。 雇用する障害者に対する差別の禁止や合理的配慮の提供義務については、2013年の障害者雇用促進法改正において既に措置している。また、雇用する障害者に対する差別禁止及び合理的配慮の提供義務について、公共職業安定所等において必要に応じて事業主に対する助言・指導等を行うとともに、労働局において、当事者からの求めに応じて、助言・指導等の紛争解決の援助を行っている。 公務部門における障害者雇用については、2018年5月、多数の国の機関と地方公共団体で法定雇用率を達成していない状況であったことが明らかになったことから、政府において、事案の実態や原因を検証し、「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」(2018年10月公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議決定)を策定した。この基本方針においては、政府としての今後の取組について、1再発防止のための対策、2法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組、3国・地方公共団体における障害者の活躍の場の拡大、4公務員の任用面での対応等とされた。この結果、公務部門における障害者雇用率は改善した(2019年6月1日現在)。 2018年の国や地方公共団体における障害者雇用義務制度の対象となる障害者の不適切な計上が発覚して以降、総務省としては、上述の「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」を踏まえた障害者が活躍しやすい職場づくりの推進等について、各地方公共団体の実情に応じて必要な措置を講ずるよう、厚生労働省とともに要請するなど、地方公共団体における障害者雇用の促進に努めているところである。 また、地方公共団体における障害者向けの募集及び採用においては、合理的配慮の提供が行われれば業務遂行できる者について、応募を制限する募集及び採用は、障害者雇用促進法の趣旨に反するものと考えられるとされており、2018年12月28日、厚生労働省と協力し、公正な採用選考を実施するよう地方公共団体に対して助言している。 加えて、2019年9月、地方公共団体における障害者雇用に関する取組状況調査の結果の各地方公共団体への情報提供とあわせて、合理的配慮指針(厚生労働省告示第117号)において講じることとされている「相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」といった雇用管理上必要な措置について、速やかに講じるよう依頼をしたところである。 なお、2019年度からは、雇用する障害者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設や設備の設置、整備等に要する経費に対して地方交付税措置を講じている。 また、上述の「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」で人事院に対して行われた要請を受けて、人事院で検討を進め、国家公務員における合理的配慮に関する指針の策定を行った。 (c)障害者の権利と貢献について雇用者の間で意識を向上すること。 雇用する障害者に対する障害者差別禁止や合理的配慮の提供義務については、2013年法改正において既に措置されており、厚生労働省において障害者に対する障害者の差別の禁止について事業主が適切に対処するための指針である「障害者差別禁止指針」や、雇用分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置について事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な指針である「合理定配慮指針」、障害種別ごとの合理 p32 的配慮指針の事例集を作成し、事業主に周知しているほか、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において障害種別ごとに合理的配慮の事例を収集し、リファレンスサービスを活用し各事業所間における障害者雇用の好事例の共有を図っている。 このほか、障害者雇用促進法に基づき厚生労働省において策定される「障害者雇用対策基本方針」においても、事業主が行うべき雇用管理に関して指針となるべき事項を規定しており、採用、訓練、処遇、健康管理、人権擁護等の基本的な留意事項や障害の種類別の配慮事項を定め周知している。 相当な生活水準及び社会的な保障(第28条) 28.以下についての情報を提供願いたい。 (a)障害者が公的及び民間住宅を差別なく利用できることを確保するためにとった措置。 賃貸住宅における入居者選択の際の平等取扱いに関しては、公的な住宅等の入居者資格等については、公営住宅法、地方住宅供給公社法等において入居者の募集方法、資格、選考につき公正な手続き及び要件を定めている。 また、民間賃貸住宅に関しては、空き室や空き家を活用した、障害者等の住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度等を内容とする新たな住宅セーフティネット制度を創設し、住宅の改修、入居者負担の軽減等や居住支援協議会等の居住支援活動等への支援を実施することにより、民間賃貸住宅等への円滑な入居を促進することとしている。 この他、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律において、共同住宅等の多数の者が利用する建築物を建築等する場合には、当該建築物を建築物移動等円滑化基準に適合させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならないとされている。 (b)社会的な保障と支援サービス、特に障害年金、福祉給付、生活扶助が障害者にとって利用し易いものであるか、また、相当な生活水準を保障するために障害に関連する追加費用を十分考慮に入れているか。 そうなっている。他方、障害者による意見も聞き、引き続き制度の不断の改善を行う。 生活保護法第2条に基づき、生活保護法による保護は、障害者を含む全ての国民に対して、無差別平等に実施されている。生活扶助の一部として、障害者である被保護者に対しては、追加的に必要となる居住環境の改善のための費用や点字新聞などの雑費等の経費を補填するものとして、障害者加算が支給されている。 また、国民年金法第1条・厚生年金保険法第1条によると、障害年金は、現役期に障害を有することとなった場合に、その者の稼得能力の喪失に対し、日常生活能力や労働能力の著しい制限といった観点に着目して、所得保障を行うことを目的としている。障害年金の受給者の方が働いて収入を得る場合であっても、基本的には障害年金が支給停止となったり減額されることはない。障害年金の請求は、全国の年金事務所(312ヶ所)又は街角の年金相談センター(80ヶ所)に請求書類を提出することで行うことができる。なお、障害基礎年金の請求は、市区町村役場の窓口に請求書類を提出することで行うことができる。これらの窓口においては、請求書類を受け付けるとともに、障害年金に関する相談対応も行っている。 障害者手帳を交付された者や特別支援学校の生徒・保護者へのリーフレット等の配布や、日本年金機構、市区町村のホームページ等を活用した制度の案内など、障害年金制度の周知を行っている。 p33 さらに、2019年10月1日より障害年金生活者支援給付金が創設され、所得の額が一定の基準以下の障害基礎年金の受給者にこの給付金を支給することにより、受給者の生活の支援を図ることとしている。具体的には、障害等級1級の方は月6,288円(2020年度)、障害等級2級の方は月5,030円(2020年度)が障害年金と同時に支給されるものである。この請求手続については、氏名等を記載するだけの簡易なものとする、代筆を認めるなど、障害がある方が請求しやすいよう工夫を行っている。 加えて、特別児童扶養手当等の支給に関する法律に基づき、著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする状態にある在宅の20歳以上の者に対して特別障害者手当として月27,350円(2020年度)を支給している。また、障害者総合支援法に基づき、心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療費(自立支援医療費)の支給を一定の所得区分に応じて行うことにより、障害者等の医療費の負担軽減措置を講じている。 (c)施設から退所した後の知的又は精神障害のある者に対する社会的な保障と支援を提供するためにとられた措置。 施設から退所した障害者が、地域において共同して自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、障害者総合支援法第5条第17項に規定する共同生活援助(グループホーム)において相談、入浴、排泄又は食事の介護その他日常生活上の援助を実施している。 また、2018年4月からは、障害者総合支援法第5条第16項に規定する自立生活援助において単身若しくは同居する家族の支援が見込めない障害者に対し、定期的な巡回又は随時の通報を受けて行う訪問、相談対応等により利用者の状況を把握し、必要な情報提供及び助言、関係機関との連絡調整等の支援を実施している。 障害者総合支援法第5条第20項に規定する地域移行支援において、住居の確保等、地域での生活に移行するための活動に関する相談、各障害福祉サービスの体験利用等に係る支援等を実施している。 障害者総合支援法第5条第21項に規定する地域定着支援において、常時、連絡体制を確保し障害の特性に起因して生じた緊急事態等における相談、障害福祉サービス事業所等と連絡調整など、緊急時の各種支援を実施している。 施設から退所した後の精神障害のある者に対する社会的な保障としては、精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の一部又は全部を公費で負担することとし、障害者のための医療・リハビリテーション医療の充実を図っている。 また、精神障害のある方が退所後地域で生活するに当たって、 精神科外来、デイケアや訪問看護等の医療サービスを受けることができるとともに、地域での生活をさらに支援するため、訪問支援(アウトリーチ)や精神科救急医療体制の充実等にも取り組んでいる。 さらに、医療、障害福祉・介護、住まい、社会参加(就労)、地域の助け合い、教育が包括的に確保された「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築を推進するため、ピアサポートの養成、アウトリーチ支援などの自治体の取組を推進している。 政治的及び公的活動への参加(第29条) 29.全ての障害者、特に障害のある女性が、他の者との平等を基礎として、投票、公職への立候補及び公務の遂行(特に政治的及び公的な意思決定する地位)に完全に参加する権利を行使し、またそうした機会を有するよう確保するためにとられた措置について情報提供願いたい。また、選挙のプロセスと選挙に関連する情 p34 報が完全に利用可能であることを確保するためにとられた措置について情報提供願いたい。 公職選挙法第9条及び第10条に基づき、選挙権及び被選挙権は、性別や障害の有無により区別することなく保障されている。下記の、障害者の選挙参加のための措置についても性別による区別は存しない。 障害者の投票権の行使や投票の機会確保のための措置としては、報告書パラ187のとおり各種の投票制度を設けており、その運用に当たり以下のような対応をしている。点字投票に関しては、全国の投票所に点字器や点字による候補者名簿等を備え付けている。代理投票(代筆投票)に関しては、選挙人本人の自由意思を確保する観点から、投票所の事務従事者のうちから定められた補助者2人の補助により行うこととしており、投票の秘密に配慮した取組の優良事例について周知し、補助者が選挙人の意思確認に当たりきめ細かく適切に対応することとしている。指定施設(都道府県選挙管理委員会の指定する病院、老人ホーム、身体障碍者援護支援施設等)における不在者投票及び郵便等による不在者投票に関しては、これらの制度の利用や手続きについて説明会の実施や広報誌の配布、選挙管理委員会のホームページへの掲載等により周知を徹底している。 その他、各市町村で国政選挙に際し必要となる経費については財政措置を行い、投票所における車イスや車イス用の投票記載台の設置や、選挙人の動線となる通路の段差の解消を進めている。 選挙に関連する情報の提供についてとられている措置としては、報告書パラ187のとおり国政選挙及び都道府県知事選挙においては政見放送を実施できるところ、政見放送への手話通訳・字幕の付与については、順次、対象を拡充し、2018年の法改正以降、政見放送を実施できるいずれの選挙についても、政見放送に手話通訳・字幕の少なくとも一方を候補者の選択によって付与できるようになっている。 また、国政選挙においては、全都道府県で選挙公報全文を内容とする点字及び音声による「選挙のお知らせ版」の作成し、配布している。併せて、音声読み上げソフトに対応するテキストデータの提出を候補者等に依頼し、提出されたテキストデータは各都道府県選挙管理委員会のホームページに掲載している。 国会は、議員のほか、海外からの賓客、参観者など、国会を訪れる全ての障害者の円滑な施設利用の観点から、施設面の更なるバリアフリー化を進めている。 また、参議院では、障害を有する議員への対応として、議事運営面では、介助者の帯同、代理投票等を認めるといった措置を講じたほか、発言、表決への配慮を行うとともに、現行制度では、重度障害者への福祉サービスは在宅に限られ、通勤・就労中は給付を受けられないところ、国会議員としての活動時間帯については、参議院が当面費用を負担することとした。 文化的な性格、レクリエーション、余暇及びスポーツへの参加(第30条) 30.以下のためにとられた措置についての情報を提供願いたい。 (a)物理的環境、旅客運送、情報通信技術を含めた情報通信、文化、観光、レクリエーション、余暇、スポーツの場所に関連する施設及びサービス、特に、障害のある児童のためのものや、来る2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関するものである計画や活動に関する全ての側面での利用のし易さ(アクセシビリティ)を改善すること。 障害者(学校に通う障害児を含む)のスポーツを行う上での障壁、観戦する際の障壁について調査を行い、障害者が身近な場所でスポーツを実施できる環境の整備等を図る事業を実施している。 p35 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会への来場が困難な障害児を念頭に、全国の特別支援学校で、地域住民とともにスポーツ・文化・教育の行事実施を奨励している。 特別支援学校等の体育・運動部活動等の充実、特別支援学校等を拠点とした障害者の地域スポーツクラブの設立などを支援している。 パラリンピック競技を含む我が国のトップアスリートの活動拠点であるナショナルトレーニングセンターについて、拡充整備を実施した。 2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のメインスタジアムとなる国立競技場について、「世界最高のユニバーサルデザイン」を基本理念の一つに掲げ、整備した。整備にあたっては、多様な利用者ニーズを把握しながら進めるため、高齢者、障害者団体等により構成されるユニバーサルデザインワークショップを実施し、関係者から意見を伺い、障害・年齢・性別・国籍にかかわらず、様々な利用者への細やかな配慮をすることで、多くの人が快適に観戦できる環境が整っている。 文化について、平成30年(2018年)6月に施行された「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」に基づき、平成31年(2019年)3月「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を策定した。 障害のある方々の優れた文化芸術活動の国内外での公演・展示の実施、助成採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演される実演芸術のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への支援、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供等、障害者による文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。 国立博物館・美術館においては、障害者手帳等を持つ方の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場や博物館・美術館等では、車いす使用者にも対応したトイレやエレベーターの設置等、来館者の利便性向上に係る環境づくりを進めている。 バリアフリー法「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」についての上記8(a)を参照。 (b)「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」を履行すること。 2018年10月1日、日本政府は、マラケシュ条約の加入書を世界知的所有権機関(WIPO)事務局長に寄託し、2019年1月1日に効力発生。 条約の加入のため、国内においては、マラケシュ条約を履行するための著作権法改正を含む「著作権法の一部を改正する法律」が、第196回通常国会において、2018年5月18日に成立し、同年5月25日に公布された。本法律は、マラケシュ条約を履行するための改正部分については、2019年1月1日に施行された。 具体的には、障害者の情報へのアクセス機会の向上のため、視覚障害者等のために書籍の音訳等を権利者の許諾なく行うことを認める権利制限規定(第37条第3項)において、音訳等を提供できる障害者の範囲について、改正前の著作権法で対象として明示されていた視覚障害や発達障害等のために視覚による表現の認識に障害がある者に加え、肢体不自由等の者が対象となることを明確に規定した。 また、権利制限の対象となる行為について、改正前の著作権法で対象となっていた複製、譲渡や自動公衆送信に加えて、新たにメール送信等を対象とすることとした。 これにより、例えば肢体不自由で書籍等を保持できない者のために音訳図書を作成・提供することや、様々な障害により書籍等を読むことが困難な者の p36 ために作成した音訳データをメール送信すること等が権利者の許諾なく行えるようになるものと考えられる。 2019年6月に施行された「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)に基づき、2020年7月に、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する基本的な計画」を策定した。障害の有無に関わらず、全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受することができる社会の実現に向けて、視覚障害者等の読書環境の整備を総合的かつ計画的に推進していく。 C.特別の義務(第31条−第33条) 統計及び資料の収集(第31条) 31.性別、年齢、障害、地理的位置及び社会経済的・教育・雇用状況の事情によって分類したデータを収集し、分析し、広めるためにとった措置について情報を提供願いたい。特に、「持続可能な開発目標17.18」及び「障害に関するワシントン・グループの短い質問セット」を考慮にいれたデータについて。 2018年に策定した第4次障害者基本計画において、各分野に共通する横断的視点の一つとして、「確かな根拠に基づく政策立案」の実現に向け、必要なデータ収集及び統計の充実を図るとともに、障害者施策のPDCAサイクルを構築し、着実に実行することとしている。 2018年度を始期とする第V期公的統計の整備に関する基本的な計画においては、障害者統計の充実を図る旨を盛り込んだ。その具体的な取組の一環として、障害者と障害のない者の比較を可能とするため統計データの整備に向けた検討を内閣府、総務省、厚生労働省で協力しながら実施した。その際、障害者を捉える設問の在り方については、「障害に関するワシントン・グループの短い質問セット」で提案されている設問も含めて検討を進めた。これを踏まえ、2020年度以降、関係省庁において具体的な検討を行っているところであり、総務省では、2021年に実施する社会生活基本調査において、日常生活への支障の有無による生活時間の違いなどを把握することとし、調査実施の準備を進めている。また、厚生労働省では、2022年に実施する国民生活基礎調査において、障害者統計の充実に資する設問の追加の検討を進めている。 文部科学省では、SDGs17.18の趣旨を踏まえ障害のある子供に対する特別支援教育を充実するため、地域・学校における支援体制の整備状況について調査を実施し、その結果を教育委員会に対し通知しているほか、インターネット等において情報発信している。また、調査結果については、教育委員会の担当者を対象とした会議において、広く周知し、施策の充実を促している。 独立行政法人日本学生支援機構において、すべての大学・短期大学・高等専門学校を対象に、障害のある学生の在籍状況や支援の取組状況について調査を実施し、調査結果を公表している。 在宅の障害児・者等の生活実態とニーズを把握することを目的として、5年に1度「生活のしづらさなどに関する調査」を実施しており、調査結果を厚生労働省のホームページに掲載している。 また、毎年、法定雇用率により1人以上の障害者の雇用が義務づけられている企業からの報告に基づき、企業に雇用されている身体障害者、知的障害者、精神障害者の数を把握し、公表している。加えて、従業員が5人以上の事業所についても雇用されている障害者の性別や賃金などについて、5年に一度調査を行い、公表している。 さらに、公共職業安定所における障害者の就職状況等についても、毎年、障害の種別や程度ごとに把握し、公表している。 p37 国際協力(第32条) 32.以下について説明願いたい。 (a)政府開発援助のもとや「持続開発な開発のための2030アジェンダ」や「アジア太平洋障害者の『権利を実現する』インチョン戦略」に関連して行われたものを含め、国際協力機構によって実施された国際協力取決、プロジェクト及びプログラムが、障害を包容するものであることを確保するためにとられた措置、またこれらが本条約に従っていることを確保するためにとられた措置。 日本政府は、国内実施と国際協力の両面でSDGsを積極的に推進している。SDGsの基本理念である「誰一人取り残さない」世界の実現のため、我が国がこれまでに蓄積してきた技術、経験を政府開発援助等を通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ重要であるという認識のもと、国際協力を実施。 具体的には以下の取組を行っている。 (1) 課題別指針「障害と開発」の策定について 2015年に国際協力機構(JICA)の障害分野の方針を示した課題別指針「障害と開発」を策定。JICAにおいて障害者権利条約を踏まえ、障害に特化した取り組みとJICA事業への障害の主流化を行う方針を示すもの。 (2) 環境社会配慮ガイドラインに基づく配慮 「環境社会配慮ガイドライン」において、「JICAは、協力事業の実施に当たり、国際人権規約をはじめとする国際的に確立した人権基準を尊重する。この際、女性、先住民族、障害者、マイノリティなど社会的に弱い立場にあるものの人権については、特に配慮する。人権に関する国別報告書や関連機関の情報を幅広く入手するとともに協力事業の情報公開を行い人権の状況を把握し、意思決定に反映する。」とし、JICAの実施する案件について障害者の権利について配慮することが求められている。 (3) 個別案件審査時の障害配慮 個別案件審査時には、調書において障害者配慮について記載することとなっており、同項目に基づき円借款案件、海外投融資案件において、裨益者から障害者が排除されないよう、案件の審査時に確認している。(2018年度は24件の実績あり) 例えば、インドのデリー・メトロ建設(案件名:デリー高速輸送システム建設事業)やスリランカ(案件名:スリランカ国コロンボ新総合都市公共交通システム導入計画準備調査)では調査計画段階に障害者団体の参加があった。 (b)国際協力案件の形成と実施にどのように障害者が彼らを代表する団体を通じて意義ある形で相談を受け関与しているか。 日本政府は、国際協力を行うにあたり、対象国の実態や要請内容を十分に把握し、その国の文化を尊重しながら柔軟に対応することが大切と考え、障害者を含む現地の様々なニーズにきめ細かく対応している。 具体的な取組として以下のとおり。 (1) 課題別支援委員会の設置 障害分野の取り組みについて、障害者団体に所属する障害当事者および有識者の助言を得るため、課題別支援委員会「障害と開発」を設置している。(障害当事者委員4名:聴覚障害2名、視覚障害1名、肢体障害1名) (2) 各種事業への障害者の参加を保障するガイドラインの作成 ボランティア事業において、障害のあるボランティアの派遣に当たっては、本人の希望による合理的配慮の提供を行い、本人の意に反して他のボランテ p38 ィアよりも厳しい安全制限を課す等の、異なる扱いは行わない趣旨の指針を定めている。 技術協力等その他事業において、障害者の参加を保障するため、「障害を有する専門家/調査団員等の派遣(車椅子利用者及び介助サービス利用者の場合)の手続き」を策定している。派遣される障害のある専門家等の希望に基づき、介助者の同行等の合理的配慮を確保する手続きを定めたもの。 研修事業においては、障害のある研修員の参加を保障するための各種マニュアルを整備し、障害のある研修員が本邦研修に参加する際に必要な合理的配慮を確保するようにしている。 (3) 市民参加協力事業での障害当事者団体の参加について 当該事業において障害当事者団体との協力により事業の形成および実施を行っている。具体例は以下のとおり。 @ 障害当事者による震災被災障害者のエンパワメントと主流化 ・ 実施団体:特定非営利活動法人沖縄県自立生活センター・イルカ ・ 対象国:ネパール ・ 実施期間:2016年10月から2019年9月 A 障害者の社会支援システム構築プロジェクト ・ 実施団体:特定非営利活動法人メインストリーム協会 ・ 対象国:コスタリカ共和国 ・ 実施期間:2017年4月から2022年4月 B アクセシブルなまちづくりを通した障害者自立生活センターの能力構築 ・ 実施団体:特定非営利活動法人ディーピーアイ日本会議 ・ 対象国:南アフリカ共和国 ・ 実施期間:2016年9月から2020年2月 国内における実施及び監視(第33条) 33.障害者政策委員会が本条約の第33条2に要求される独立した監視の仕組みとしての任務を遂行できているかどうか、またどのように遂行しているかに関連し、同委員会の役割、同委員会に割り当てられた人的、財政的及び技術的リソース、並びに障害者を代表する団体との同委員会の協力について明確に説明願いたい。 第1回政府報告パラ221にあるとおり、条約の実施の監視は、障害者政策委員会が、障害者施策の方針の根本を成す障害者基本計画が本条約の趣旨に沿って実施されているかを監視することによって行われる。また、障害者政策委員会は、障害者基本計画の実施状況を監視し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は内閣総理大臣を通じて関係各大臣に勧告することができる(障害者基本法第32条第2項第3号)。 障害者政策委員会においては、2015年5月から、第1回政府報告の提出を視野に入れて第3次障害者基本計画の実施状況の監視を行い、同年9月にその結果を文書として取りまとめた。 また、2016年10月から、第4次障害者基本計画の策定に向けた調査審議を11回にわたり行い、条約との整合性を確保するため、条約の理念を随所に反映することや、障害者基本計画の各分野と条約の各条項との対応関係を明示するなどを含めた意見を文書として取りまとめ、第4次障害者基本計画にも反映された。 この第4次障害者基本計画の実施状況の監視を実施しているほか、障害者差別解消法の施行3年経過後の見直しの検討について、2019年2月から11回にわたり精力的な審議が行われ、2020年6月には意見書が取りまとめられたところ。パラ1(d)にも記載したとおり、その後、政府においてこれを踏まえた検討が進められ、2021年5月には、事業者による合理的配慮の提供 p39 の義務化等を内容とする障害者差別解消法の改正法案が、第204回通常国会において、成立した。その後、同改正法は、同年6月4日に公布された。 委員は内閣総理大臣の任命によるところ、第4期委員の選出においては、人的・技術的リソースを強化し、障害当事者等の参画を拡充するため、精神障害の当事者や学識経験者を含む専門委員4名を追加した。さらに、第5期委員の選出においては、更に障害当事者や学識経験者など専門委員3名を追加した。この障害者政策委員会には、当事者やその家族からなる団体の者が多数参画しており、これを通じて障害者を代表する団体の意見の反映や連携を行っている。 34.申し立てを受け取り、調査し解決することができるパリ原則に従った独立した人権監視の仕組み(本条約のもとの障害者の権利を監視するための特別の仕組みを含む)を設立するためにとられた措置について情報提供願いたい。 人権救済制度の在り方については、これまでなされてきた議論の状況も踏まえ、引き続き適切に検討している。