資料2 基本方針改定に係る障害者団体からの意見一覧 前半(13時30分から15時ヒアリング分) 目次  特定非営利活動法人 筋痛性脳脊髄炎の会・・・・・・・・・1 全国「精神病」者集団・・・・・・・・・・・・・・・・・・6 一般社団法人 全国肢体不自由児者父母の会連合会・・・・・11 社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会・・・・・14 公益社団法人 全国脊髄損傷者連合会・・・・・・・・・・・16 一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会・・・・・・・・19 特定非営利活動法人 DPI日本会議・・・・・・・・・・・21 日本弱視者ネットワーク・・・・・・・・・・・・・・・・・25 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会・・・・・・・・・29 公益社団法人 日本てんかん協会・・・・・・・・・・・・・35 p1 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利法人 筋痛性脳脊髄炎の会 1.(1)について (御意見等) 障害者差別禁止法では、対象の障害者を「障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、即ち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」とし、難病に起因する障害を含み、いわゆる障害者手帳の所持者に限られないとしている。すなわち、難病に起因する心身の機能障害があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受けている状態にある方も、障害者差別解消法の対象である。 しかし、実際には障害者総合支援法の障害の範囲における難病の対象規定により、多くの難治性疾患が除外されており、必要な福祉サービスを受けるための申請すらすることができず、日常生活又は社会生活に相当な制限を受けているのに、合理的配慮を受けられない。これは「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要である」とする差別解消法の基本的考え方に反する。また、「行政機関において不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」とすることと矛盾する。 難治性疾患患者の基本的人権が尊重され、障害者権利条約の求める共生社会を実現するためには、障害者総合支援法の難病の対象規定を撤廃し、難病者に関する法制度を抜本的に改革すべきである。障害者差別解消法の「基本方針」では、障害を理由とする不当な差別的取り扱いをしないとしており、政府・国会による法制度の見直しをふくめ、福祉サービスの対象を病名ではなく、生活の困難さに応じて支援する仕組みに変え、難治性疾患によって困窮する全ての人に必要な合理的配慮が提供されるよう、抜本的改革を行っていただきたい。 また、難治性疾患は、診断がつくまでに何年もかかる場合も多く、その間も生活のしづらさのある障害者は、ニーズに応じて合理的配慮を受けられるべきである。 厚労省から出された「医療関係事業者向けガイドライン」には、「不当な差別的取扱いと考えられる例」として、「わずらわしそうな態度や、患者を傷つけるような言葉をかけること」があげられている。ところが、病気による内部障害は外からは見えないために、障害を理解されることが困難で、客観的診断基準が確立していない病気は、心因性や“詐病”と P2 みなされ、医療関係者から患者の尊厳を踏みにじるような差別的な処遇を受けるケースも多く見られる。 客観的診断基準が確立していないのは、現在の医療水準では診断ができないという意味で、障害が無いという意味ではない。事業者による社会的障壁の除去の実施に係る必要かつ合理的な配慮の提供について、努力義務から義務へと改められるにともない、すべての医療関係者にこの点が周知されるべきである。 (根拠となる事例) 筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、脳と中枢神経に影響を及ぼす複雑な神経免疫系の慢性疾患で、機能障害は全身に及び、患者のQOLを著しく低下させる深刻な病気である。1969年より世界保健機関の国際疾病分類において神経系疾患と分類されており、2014年の厚生労働省の実態調査において、約3割の患者が寝たきりに近く、ほとんどの患者が職を失うという深刻な実態が明らかになっている。ところが、身体障害者手帳の取得が非常に困難で、障害者総合支援法の対象疾患になっていないため、他の者と平等に社会参加する権利、必要な介護・医療を受ける権利、外出する権利、教育を受ける権利、選挙権を行使する権利、働く権利等が奪われている。 障害者総合支援法の対象疾病は、客観的な診断基準が確立していることが要件であるため、他にも多くの難治性疾患が対象になっておらず、たとえ対象が増えたとしても、病名で区切っている限りは「制度の谷間」はいつになってもなくならない。 一部の医師たちが、ME/CFSは認知行動療法や段階的運動療法によって症状が改善するとし、逆効果をもたらす治療法を長年にわたって推奨してきたために、努力をすれば治るという誤解を広め、身体障害者手帳や障害年金の診断書取得を困難にしている。 このような中、今年4月に国立精神・神経医療研究センター神経研究所より、血液のB細胞を調べるだけで8〜9割以上の精度でME/CFSを診断ができること示す論文が発表され、客観的な診断が可能になりつつある。「医療関係事業者向けガイドライン」が広く周知され、患者が必要な合理的配慮を受けることを妨げる言動は障害者差別であるという認識が広がることを求める。 1.(2)1について (御意見等) 難治性疾患を抱える障害者の多くは、体力がないために活動を制限せざるを得ず、無理をすると悪化する、激しい疲労や痛み、睡眠障害などにより体調に波があり継続的活動が困難、 p3 体調が不安定で長時間の休養を必要とし、短時間しか活動できない等の困難を抱えている。障害(病気)の特性に加え、一人ひとりの体調や体力に応じた社会参加の権利を保障するための合理的な配慮が必要である。第2の3合理的配慮のイに「合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり(以下略)」とあるが、ここに「障害者(患者)の体調・体力」を追記するとともに、「現時点における一例」において、具体的な例を挙げて説明していただきたい。 また、病気による障害は外からは見えないために、障害を理解されることが困難で、客観的診断基準の確立していない疾患などの患者の多くは、時として詐病の扱いを受けてきた。現在流行している新型コロナウイルス感染症患者に対する差別からも分かるように、自身が病気を抱えていることを表明することが困難である場合も多い。それゆえ、合理的配慮を求めることが簡単ではないという理解が必要である。こうした実態を踏まえ、第2の1法の対象範囲に記載されている女性や障害児に係る留意事項に、「精神障害、内部障害や難治性疾患など見ただけでは分かりにくい障害(疾患)をもつ障害者(患者)には、見ただけで障害があるとわかる者とは異なる支援の必要性があること」に留意する必要があるという内容を追記していただきたい。 (根拠となる事例) 今回のヒアリングの場合でも、体力がなく体調が不安定な難治性疾患患者にとって、短期間に意見をまとめるよう依頼されることは、非常に負担が大きい。だからといってヒアリングを断れば、難治性疾患患者の声は届かない。期間的にもっと余裕を持って依頼していただくような配慮があるとありがたい。また、無理して意見をまとめることにより、体調が悪化する可能性を考慮していただきたい。 ME/CFSの中核症状である労作後の消耗(体調不良)とは、日常生活の最小限の活動や簡単な知的作業などにより、著しく急激に身体が衰弱して症状の悪化を引き起こし、回復が非常に困難なことである。知的作業も症状の悪化要因であることを理解していただきたい。 1.(2)2について (御意見等) 障害者本人の意思表明があった場合に、合理的配慮をしなければならないとしているが、病気による障害は目に見えないため、難治性疾患を抱える障害者は、あらゆるものに遠慮して、必要な支援も我慢する傾向にある。そういった患者の特性をよく理解し、意思表示に向けた支援が必要という問題意識を育てるために、難治性疾患や障害当事者による研修が広く行われる必要がある。 p4 (根拠となる事例) 2014年の厚生労働省の実態調査により、ME/CFS患者のほとんどが職を失うという深刻な実態が明らかになった。NPO法人筋痛性脳脊髄炎の会では、障害年金の担当課との懇談や、ME/CFSの実態を描くドキュメンタリー映画を通して実情を訴え、2012年に日本年金機構より照会様式等の窓口配布に関する通達を出していただくことができ、障害年金は以前に比べて取得しやすくなった。 2.1について (御意見等) 日本は障害者権利条約を批准したが、侵害された人権の回復を求めることのできる公的機関であり、第三者性が担保された国内人権機関を設置していない。このため、人権を侵害された被害者が、人権救済の申し立てをすることができない。すべての障害者差別をなくし、障害者差別解消法に実効性をもたせるために、障害者権利条約の選択議定書も批准すべきである。 先述したように、ME/CFSは一部の医師たちが世界的なME/CFSに対する理解とは異なる情報を流すことで、患者が合理的配慮を受けることが著しく困難な状況が長年続いているが、病気に対する理解は進歩するし、憲法で表現の自由が認められているという理由で、これを阻止することができない。情報の間違いを証明できれば良いが、そもそもこの病気の研究者が少ないため研究者にその余力はなく、患者だけでは不可能である。裁判に訴える方法もあるが、毎日の生活の基盤を失っている患者にはハードルが高すぎる。 また、現在、障害者差別に関しては行政や相談支援事業所が窓口となっているが、社会福祉事業所で障害者への差別的取り扱いや合理的配慮の提供義務違反と思われる問題が起こったとき、上記の機関と事業所の間は利害関係等があり、適切な対応をしてもらえない実態もある。国内人権機関は事実関係を調査の上、調停、勧告等の救済措置を採ることができ、迅速な人権救済を図ることができる。 2.2について (御意見等) 当法人は、世界的な常識となっている“ME/CFSは神経系疾患である”ことを10年近く厚生労働省に訴えているが、2019年2月の国会議員へのレクチャー資料に、病気の症状として、「抑うつ」「気分障害」「不安障害」「身体表現性障害」など、心因的な疾患を思わせる記載が p5 あったことを確認している。一部の医師だけではなく、厚生労働省も間違った疾患理解を長年にわたって広めてきたのだから、厚生労働省自らがME/CFSの正し認知を広めるための啓発活動を行い、患者達が差別的な扱いを受けないように配慮すべきである。その場合には、専門家の意見だけを聞くのではなく、家から出ることもできず、全く声を上げることもできない重症患者の声をも拾い上げ、当事者の置かれた状況がもれなく反映されるようにすべきである。 障害者差別解消支援地域協議会には、既存の障害者団体の代表のみでなく、長期慢性疾患患者等の新たな障害者の代表も、委員会に参画可能な体制にすること。また、今まで難病患者の生活支援を担ってきた各地の地域難病連や難病支援センター等、相談支援事業所、紛争解決機関に対して、「病気」や「患者」の特性を教示し、適切な解決に導けるよう連携する役割を担っていただきたい。 3.について (御意見等) 世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、多くの障害者が生まれている。ME/CFSは世界中で集団発生を繰り返しており、集団発生は歴史的にウイルス疾患の流行後に起きている。2002〜2003年のSARS(別のコロナウイルスが原因)の流行後、患者の27%が慢性疲労症候群の診断基準を満たしたとする例がある。そのため、COVID-19がME/CFSの引き金になる可能性を多くの欧米の専門家は警告してきた。上記の科学的エビデンスを基にすると、COVID-19の全感染者の約1割がME/CFSを発症すると推計され、日本でも10万人規模の新たなME/CFS患者が生まれる可能性がある。当会が実施したアンケート調査により、日本においてもCOVID-19を契機としてME/CFSを発症した症例が明らかになっている。コロナ後遺症はME/CFSだけではなく、全COVID-19感染者の3割とも4割ともいわれ、その実態は分かっていない。 米国ではジョー・バイデン大統領が、ADA法の記念日である7月26日に、「新型コロナウイルスから回復したと思われた多くのアメリカ人が、呼吸障害、ブレインフォグ、慢性疼痛、疲労などの長引く難題に直面しており、こうした健康状態が時には障害のレベルまで達しうる」とし、後遺症に苦しむ人々が差別から守られるよう、米国の各省庁が連携すると語った。日本においても、この新たな障害者が差別から守られ、合理的配慮が受けられるよう対策を協議すべきである。 (以上) p6 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 全国「精神病」者集団 1.(1)について (御意見等) 不当な差別的取扱いについては、行政機関及び事業者等が「障害者お断り」といった事実行為を撤回したとしても、そのことだけをもって解消したと捉えて相談が打ち切られることがないように、それまでの経緯やその後の接遇も含めて、一連の問題を総合的な観点から捉える視点を基本方針に書き込む必要がある。 行政機関や事業者等が正当な理由に該当すると判断した場合には、根拠を交えて理由を説明することとし、さらに、障害者から証拠資料等の提出の要求があった場合には応じていく必要があることを基本方針に書き込む必要がある。 不当な差別的取り扱いにおける障害を理由とした権利利益の侵害とは、直接的に障害を明示しなくとも実質的に障害者と他の者との間に障害に基づく財・サービスや各種機会の提供の不当な差異、制限などがある場合を含むということを基本方針のなかに書き込む必要がある。 (根拠となる事例) 旅行中のALSの人が東京都内の飲食店で入店拒否された。また、店舗の扉には、「ベビーカー等の入店お断り」と書かれた貼り紙があった。東京都に不当な差別的取扱いの事案であり再発防止が必要であることと、貼り紙の表記を変更することを申し立てた。東京都は、障害者差別解消法の説明と貼り紙の表記変更を助言した。しかし、2年半経過した現在においても、従業員は差別解消法の存在をしらず、車椅子の入店拒否を繰り返し、貼り紙の表記も変更されていない。 精神障害者が東京都委託事業の行事への出席を主催法人に求めたところ、障害を理由にあげて出席を見送るように言われた。ほどなくして主催法人は出席を認めると言い直してきたものの、その説明を含む接遇全般に著しい問題が認められた。精神障害者は、不当な差別的取扱いとして東京都に斡旋申立てをおこなった。斡旋では、法人としての責任が問われず個人の行為として整理され、相手方と話し合う場も設けられなかった。それでも最終的には斡旋がまとめられて終結した。 1.(2)1について p7 (御意見等) 障害者等から意思の表明があった合理的配慮が、合理的配慮に該当しないとする判断を国及び地方公共団体の所轄によっておこなわれる事例がある。高い蓋然性をもって合理的配慮とは言い難い事例も存在するのかもしれないが、本来的には意思の表明のなかに障害にかかわる社会的障壁が示されてさえいれば応じるべきではないかと考える。 現行の基本方針においては、「車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮、筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなどの意思疎通の配慮、障害の特性に応じた休憩時間の調整などのルール・慣行の柔軟な変更」が合理的配慮として例示されている。ところが、ここに例示された合理的配慮と類似点がないものについては、合理的配慮ではない可能性が疑われることもあった。 精神障害及び知的障害のような見えない障害については、物質的な合理的配慮だけではなく、非物質的な合理的配慮を求めることがある。しかし、非物質的な合理的配慮の一部は、合理的配慮と見なされずに、結果として障害に基づく差別が見逃されている。そのため、「わかりにくい合理的配慮」は、当該障害との関係を慎重に考慮して対応できるように明文で書き込む必要がある。 行政機関及び事業者等が過重な負担であることを説明する際には、障害者が過重な負担の根拠となる資料等の開示を求めた場合に応じる必要があることを明記する必要がある。 (根拠となる事例) 京都府は、合理的配慮の不提供事案の相談をうけた際に、当該合理的配慮が合理的配慮に該当しないと内閣府が回答したということを理由にして、一時は相談を打ち切る旨の対応をしようとした。 1.(2)2について (御意見等) 建設的対話は、往々にして平行線になる場合がある。建設的対話を円滑に進めるためには、建設的対話の展開過程と留意事項を基本方針のなかに書き込む必要がある。 建設的対話によって確認された合理的配慮が、その後に至って実行されていない事例がある。建設的対話の展開過程には、モニタリング、フォローイングを入れ込む必要がある。 (根拠となる事例) 精神障害者が体調不良で公営バスの優先席に座っていた。ほどなくして白杖をついた視覚 p8 障害者が乗車してきた。運転手は、優先席をゆずるように繰り返し車内アナウンスした。運転手から何回もアナウンスされても座っていたことで乗客からも精神障害者に注意の声が向けられた。精神障害者は、運転手に対して車内アナウンスで誤った情報を流布したこと説明する合理的配慮を求めたところ、理由なく拒絶された。その後、対応要領に基づき交通部局に相談したところ、運転手とともに加重な負担であったことの説明がおこなわれず、「差別の意図がなかったため差別には当たらないのだ」とする説明を繰り返した。堂々巡りになり、障害部局を交えて調整を試みるも交通部局の回答に進展はみられなかった。 2.1について (御意見等) 相談については、相談窓口のたらいまわしや長期化、相談員の接遇態度の問題など課題が散見された。現在は、相談及び紛争解決に係る新たな機関は設置せず、既存の機関で対応することとしているが、こうした対応の効果を検証し、必要であれば新たな機関の設置を含む適切な措置を講じることを明記するべきである。当面は、差別的取り扱いを受けた障害のある人が速やかに相談できるワンストップの相談窓口を設置するとともに、国と地方公共団体の連携を強化する旨、明記するべきである。 相談の長期化を防止するために必要に応じて計画を策定して対応することを明文化する必要がある。また、相談員による不適切な接遇を是正していくため、相談員の接遇に関する留意事項を明文化する必要がある。 (根拠となる事例) 千葉県に住民票がある障害者が東京都内に本部がある福祉系専門学校からの障害を理由とした入学拒否の事案で東京都に相談をしたところ、東京都から文部科学省に相談するように言われた。文部科学省は、厚生労働省との共管であることを理由に東京都に差し戻した。この事案にかかわる相談は、長期化しており次の願書提出時期までに解決に至らなかった。 京都府に住民票がある障害者が京都府下に所在する事業者の合理的配慮の不提供で京都府に相談した事案では、事業者の顧客が全国にまたがることを理由に内閣府障がい者制度改革推進室を相談窓口であるとして案内した事例もあった。相談員以外の職員に電話をつなぐように依頼したところ、理由を説明することなく電話をつながなかった。 2.2について (御意見等) 現行の基本方針には、事例を収集する目的が「効果的な運用のため」とだけしか書かれていない。 p9 事例の生かし方については、基本方針の中でさらに具体的な方向性を定める必要がある。 障害者差別解消支援地域協議会については、現行の基本方針で「障害者及びその家族の参画について配慮するとともに、性別・年齢、障害種別を考慮して組織することが望ましい」とされている。しかし、ここまでのことが書かれていても、精神障害領域では精神障害というカテゴリを家族会が代表して構成員となり、そのことをもって精神障害当事者の構成員を入れる必要がないと考える地方公共団体が非常に多いという問題がある。家族会だけではなく精神障害当事者の構成員を入れていくための積極的な書きぶりを加える必要がある。 3.について (御意見等) 基本方針には、新たに国及び地方公共団体による障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項を定めることになっており、それに伴って対応要領の見直しがおこなわれる場合が想定される。対応要領の策定にあたっては、現行の基本方針において「障害者その他の関係者を構成員に含む会議の開催、障害者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」こととされている。 また、事業者等による合理的配慮の義務化により、対応指針の見直しがおこなわれる場合が想定される。対応指針の策定にあたっては、現行の基本方針において「障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずる」こととされている。 ところが、精神障害領域では、精神障害というカテゴリは家族会が代表して会議やヒアリングで意見を述べ、そのことをもって精神障害当事者の声が聴かれないといった事態が生じている。私たちは、精神障害当事者団体の参画によって精神障害当事者の声を聴いてほしいと思っている。そのため、あくまで家族と本人は別という点を踏まえて、基本方針にも障害種別にかかわる一文や家族会組織と当事者組織の違いに留意した会議の開催やヒアリング等の実施をおこなうことを書き込む必要がある。 障害に基づく差別は、障害のある本人だけではなく、現に本人に障害がなくとも障害があるとみなされた者や家族の障害を理由として受ける差別などが存在することを基本方針の中に書き込む必要がある。 行政機関等における職員に対する研修及び事業者における研修は、社会モデルを基本としたものでなければならない。基本方針には、研修の具体的な獲得目標を列挙するとともに、それらが網羅された民間の研修を紹介できるようにしていく必要がある。また、研修の実施に p10 おいては、単に障害者から話を聞く機会を設けると書くだけにとどまらず、障害者団体の参画による研修コンテンツ開発や障害者団体による講師派遣が推奨されるということも書き込むべきである。 海外の動向にかかわる事例収集は、障害者が人権蹂躙を受けやすい集団であることを鑑み、諸外国における国内機構の地位に関する原則(パリ原則)と障害者差別禁止法制の連携について調査をおこない報告をまとめることを基本方針のなかに書き込む必要がある。 障害者の権利に関する条約第36条及び同条約第39条に基づく障害者の権利に関する委員会からの提案及び一般的な性格を有する勧告が行われたときには、障害者を代表する団体の参画の下で、当該提案及び勧告に基づく現状の問題点の把握を行い、法制度の見直しを始めとする必要な措置を講じていく考えであることを基本方針の中に書き込むことが必要である。 (以上) p11 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 一般社団法人 全国肢体不自由児者父母の会連合会 1.(1)について (御意見等) 『法は、「障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供にあたって場所・時間帯などを制限する』となっているが、依然として地域格差は解消せず、以下の理由から、『提供にあたって場所・時間など制限することなく』とする。 「不当な差別的取り扱い」では、障害福祉サービスの利用にあたって、障害児者の全てが等しく利用できることが当然であると思われがちですが、「諸事情が同じ障害があり・医療的ケアを必要とする障害者で、サービス等利用計画を立てても、住んでいる地域で必要なサービスを受けれない、必要な利用時間数を認めてくれない」など一法律一制度でありながら地域格差が生じていることが問題である。加えて行政の窓口で訴えても、自治体独自の基準をもってサービスを認められず泣き寝入りしているのが現実である。 (根拠となる事例) 障害福祉サービスの標準支給量(訪問系)は、市区町村独自で利用時間の設定をするため差がでる 入浴サービスだけ見ても(1回〜毎日/週)等のサービスを利用者が希望しても市区町村で認めない 1.(2)1について (御意見等) 障害者権利条約第2条において「合理的配慮」が定義づけられ、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであることとされています。 差別の解消の推進に関する基本方針の中で、現時点におけるー例としての例文では車椅子利用者のために「段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなどの物理的環境への配慮」と例示されていますが、車椅子利用者は段差や高い所だけの不便さを解消するだけが合理的配慮を欠く条件ではありません。目的地に行くための手段として公共交通機関が無い・使えないなどの不便さを解消することも条件として明確に例示すべきと考えます。 「車椅子利用者のため教育・労働に係る移動支援など個別給付施策としての配慮も必要」を追加 「意思表明」の範囲を「障害者からの意思表明のみでなく、(削除開始)知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により(削除終了)本人の意思表明が困難な場合には(以下略)」とあるが障害種別の表記は不要と考え、「障害者からの意思表明のみでなく、本人の意思表明が困難な p12 場合には(以下略)」とすることで知的に障害がなく、発語に困難な方も含まれることになる。 (根拠となる事例) 通勤・通学を含めた車椅子利用者等に係る移動支援は地域生活支援事業として位置づけられているが、この制度は市区町村独自の判断・基準で利用の可否、内容が決められてしまう。 目的が明確である通学・通勤などは教育行政・労働行政の視点からも大きな課題となっている。 1.(2)2について (御意見等) 障害者と事業者又は行政機関との建設的対話ができているかについて、行政機関が施策として事業を展開(新規・改修)するにあたり、構想段階から当事者団体の参画(当事者団体を広い範囲で参集する)のもと意見交換を行う必要がある。 当事者団体自身も基本を勉学し建設的な意見で討議できるよう備える必要がある。行政機関(事業者)は、当事者団体を施策遂行の対等なパートナーとする。 (根拠となる事例) ある地区で障害者歯科診療体制の変更を計画したときに情報が不正確で既存の施設が存続するのか継続するのか中途半端な情報で混乱したが、行政から説明会の開催が提案され統合し充実の方向と聞いているが経過が不明で推移した。 2.1について (御意見等) 障害者の差別解消の推進に関する基本方針に基づく相談は、障害当事者及び家族と関係者からのものとされているが、障害者差別解消支援地域協議会での相談内容・件数を分析する必要があると感じています。全てではありませんが自治体に確認すると障害者や家族等からの直接相談件数は少数で、地域協議会を開催しても差別等を想定して調査するなど意見交換自体も少ないとのことです。 事業所等では、インシデントは報告義務があり、ヒヤリハットは報告義務にないとのことであるが、インシデント・ヒヤリハットなど現場で起きる事故事例など研修する必要があると考えます。 行政窓口で重い障害があり、医療的ケアが必要な障害者家族が相談に行っても適切なアドバイスがないなど切実な相談が当会事務局にありますが、行政窓口(後述あり)で解決できない相談事項など障害者差別解消支援地域協議会の議題とする仕組みが必要と考えます。 一般的に障害者の相談内容は、主に障害福祉サービス等利用に関わるもので相談支援事業所 p13 (相談支援専門員)が行っているが、差別・虐待など相談窓口を知らない方も多く実態は把握できていない状況になっていると考えます。 2.2について (御意見等) 行政の窓口で福祉関連の申し込み(要請・要望)があっても、窓口で判断・処理されてしまうため、不合理・合理的配慮に欠けていると思えるものも審議されることなく終わってしまう。 『行政の窓口で処理しているものも、地域協議会で審議できる環境を整備するべきと考える』 障害者差別解消支援地域協議会の協議会組織は、法では「障害者及びその家族の参画について配慮するとともに、性別・年齢、障害種別を考慮して組織することが望ましい。」としているが、単独で設置している市区町村は少なく「地域自立支援協議会・障害者施策審議会」の一部門として設置している傾向にあると思われるので実行性を担保するため実態を調査する必要がある。 啓発用パンフレットを当事者団体で作成しても、それを地域に広める手段に行政の積極的な協力が見受けられない。 民生委員・児童委員を含め町会・自治会に対してのアプローチに協力を得られない。 3.について (御意見等) 市区町村の障害者差別解消支援地域協議会への相談事例件数は少ないとの報告を聞いています。行政の窓口で却下された申し込み・要望は窓口のみで処理されることで、地域協議会へ相談事例として挙がってこないことが原因です。地方自治体事情で障害福祉サービスを断られても保護者・当事者にとって不合理・不平等であっても訴える機会がなく泣き寝入りしている現状もあります。 基本方針の改定にあたって、対応要領、対応指針にふれることもできない、一人ひとりの意見をくみ取れる仕組みが必要と考えます。 (1)障害福祉課(県・自治体)への相談事例を地域協議会でも議題として取り扱う。 (2)地域協議会の相談件数の少ない要因を検証すること。 (以上) p14 基本方針に関する御意見等 団体名 社会福祉法人 全国重症心身障害児(者)を守る会 2.2について 国及び地方自治体による障害を理由とする差別を解消するための支援措置の実施に関する基本的な事項のうち、啓発活動に関して意見を述べさせていただきます。 好事例だけではなく、障害者本人や介助者が不快な思いをする事例を紹介し、基本指針にあるパンフレットの作成に役立ててほしいと思います。 (事例1) 重症心身障害児者を「重心」と略す場合がありますが、「重症児者」に統一してほしい。 (事例2) 「障害を持っている人」という文言を使用される方がいますが、社会が障害を作り出しているという障害の社会モデルの観点からも、「障害のある人」に統一してほしい。 (事例3) 車いす利用者を数える時、1台2台と台数で数えることはせず、一人、二人と人数で数えてほしい。 (事例4) 障害を奇異な目で見るのはやめてほしい。 外出している時、痰の吸引などの医療的ケアを行う場合があります。障害者本人にとっては、日常の普通の行為であることを知ってほしい。 新型車両では、車いすスペースが設けられています。痰の吸引など医療機器を使用するスペースであることも表示してほしい。 コロナ禍ではありますが、マスクを使用できない障害者がいることを周知してほしい。 (事例5) 障害者は医療用電源を必要としていることを周知してほしい。 命に関わることであり、特に災害時の避難所では優先使用者である旨表示してほしい。 p15 3.その他 タクシーの障害者割引について、割り引かれる料金分が運転手負担となるとの理由から、乗車を拒否されることがあります。割り引かれる料金分は、公共交通機関として事業者に負担いただきますよう行政指導を徹底していただきたい。 (以上) p16 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 公益社団法人 全国脊髄損傷者連合会 1.(1)について (御意見等) a.基本方針の第2の2の(2)において、行政機関等や事業者が正当な理由があると判断した場合に障害者に説明することについて「理解を得るよう努めることが望ましい」とあるのを、たとえば「理解を得るように努めなければならない」や「理解を得ることが望ましい」など、もう少し踏み込んだ表現とすべきである。 1.(2)1について (御意見等) b.基本方針の第2の3の(2)において、行政機関等や事業者が過重な負担に該当すると判断した場合に障害者に説明することについて「理解を得るよう努めることが望ましい」とあるのを、たとえば「理解を得るように努めなければならない」や「理解を得ることが望ましい」など、もう少し踏み込んだ表現とすべきである。 1.(2)2について (御意見等) c.基本方針の第5の3の(3)において、「障害者も含め、広く周知・啓発を行うこと」について言及があるが、第5の3に独立した項目を設け、ピアサポートなどを通じた障害者のエンパワメント(たとえば合理的配慮の提供にあたっての「意思の表明」や「建設的対話」など)について言及すべきである。 p17 2.1について (御意見等) d.今回の法改正による改正後の法第14条の「人材の育成及び確保のための措置その他の必要な体制の整備」の具体的な内容として、障害者政策委員会での議論で多くの委員から問題提起があったワンストップ相談窓口を国と地方公共団体において整備すべき旨を、改正後の法第6条第2項第4号に基づいて基本方針に盛り込むべきである。 2.2について (御意見等) e.基本方針の第5の3の(3)のアにおいて、地域住民等に対する啓発活動について言及があるが、特に内閣府、関係省庁、地方公共団体などが実施するものについては、啓発活動の数値化によって活動量を定量的に把握することを明記すべきである。 3.について (御意見等) f.基本方針の第2の3の(1)のエや第5の1において、基礎的環境整備/事前的改善措置について言及があるが、障害者差別解消法第5条において行政機関等と事業者の努力義務に位置づけられていることから、たとえばバリアフリー法の最低基準を上回るバリアフリー化についても積極的に取り組むべきことを、基本方針で打ち出すべきである。 g.障害者や障害者団体が基礎的環境整備/事前的改善措置を要請し、行政機関等や事業者がこれを拒否する場合に、行政機関等や事業者が建設的対話を通じてその理由を説明すべきことを、基本方針に盛り込むべきである。 p18 h.障害者差別解消法における「差別」の定義として、直接差別、間接差別、関連差別、複合差別、交差的差別、合理的配慮の不提供などを基本方針に明記すべきである。また、障害者差別解消法、障害者基本法、障害者雇用促進法の次の改正において、これらの定義を法律に盛り込むべきである。 i.国連障害者権利委員会の一般的意見第6号の第18段落を踏まえ、障害者差別解消法の次の改正において、嫌がらせ(ハラスメント)を法律上の「差別」に位置づけるべきである。 j.衆議院、参議院、最高裁判所がすでにそれぞれ独自に対応要領を定めていることから、障害者差別解消法の次の改正において、法律による義務づけの対象を、行政機関等および事業者から立法府、司法府へ拡大すべきである。 k.統合教育からインクルーシブ教育に踏み込むうえで、教育機関による合理的配慮の提供は不可欠である。たとえば、重度な障害のある児童が、保護者の同伴なく遠足に参加したり、クラスメートと同じ時間に同じプールで水泳の授業を受けたりするには、安全確保を含めた合理的配慮が欠かせない。したがって、インクルーシブ教育を実現するうえでの合理的配慮の重要性について、基本方針の第5の3の(3)のイに盛り込むべきである。 l.主催団体に都道府県や市町村が名前を連ねるマラソンの競技大会において、いわゆる「車椅子の部」の創設を障害者団体から申し入れているものの、コースの高低差が激しいこと、旧市街地がコースに含まれていることなどを理由に、一向に実現していない。しかし、他の競技大会では「車椅子の部」が実施されていることから、競技団体にアドバイスを求めつつ、大会実行委員会に障害当事者を参画させて検討すれば、実現可能であると考えられる。したがって、共生社会の実現に向けて、障害の有無に関わらず誰もが参加できる大会づくりという観点から、スポーツに関しても基本方針で言及すべきである。 (以上) p19 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会 障害者差別解消法の一部改正を受けて改定される「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を改定するにあたり、全国手をつなぐ育成会連合会(以下、当会)として基本的な考え方を述べます。 障害者差別の解消に向けて基本的な考え方を整理する上では、知的・発達障害に関しては自らを主張し円滑なコミュニケーションによって課題を解決する事に困難さがあることへの理解が重要です。不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供について、本人だけでは、不利益を感じる事は困難です。また不利益について自ら申し立て、建設的対話によって相互理解に向けて働きかける事も困難です。何らかの配慮や具体的な支援をするためには、困難さに直面している本人の特性を踏まえたアセスメントが重要です。アセスメントにおいては、本人の特性が表に出やすい場合もありますが、感覚過敏など、多くの場合は表面にはあらわれにくい状態があります。当事者との関係性を保ちながら、理解、解決、対処の為に、表面に出にくい感情や能力を推し量ることが多くの場面で求められます。 1.(1)について 不当な差別的取扱いや合理的配慮の不提供について、知的・発達障害の方への対応を基本方針に盛り込む際には、知的・発達障害の特性から生じるコミュニケーション上の障壁について、具体的な配慮が必要であることを強調して頂ければと思います。 不当な差別的取扱いについては、障害者虐待の視点で捉えるべき事例があると考えます。特に、障害者に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応又は不当な差別的言動、その他の障害者に著しい心理的外傷を与える言動を行う心理的虐待との関連では、取り扱う事例が虐待事案では無いかとの視点で課題解決に向かう必要があると考えます。 1.(2)1について 1.(2)2について 合理的配慮の一例として、当会としても知的・発達障害のある本人に向けてのわかりやすい情報提供を心がけています。まずは情報提供する側に「わかりやすく伝えるにはどうすれば良いのか?」といった配慮が大事です。文字を大きくしたり、ひらがなだけにしたり、難しい漢字のままルビを振る等の対応では知的・発達障害の方達へのわかりやすい情報にはなりません。例えば、写真、絵、ピクトグラム等で、情報提供の分かりやすさを工夫する事や、説明が分からないときに提示するカードを用意したり、ゆっくり、ていねいに、分かりやすく話したりすることが必要です。また本人をよく知る支援者が同席するなど、理解しやすくなる p20 環境を工夫する事も求められます。これらの対応については、事業者による合理的配慮が義務化される事で、コミュニケーションへのアクセスが柔軟に進んでいく事を期待します。その事は、障害の有る無しに関わらず、文字を活用したコミュニケーションの促進に役立つものになると思います。コミュニケーション手段の確立が建設的対話の第一歩と考えます。 文字や言語で示されるコミュニケーションでは関わりが難しい場合の対応も知的・発達障害の方達には、配慮が必要です。近年では、支援者が意思決定支援の考え方に沿った対応をし、本人の主体性を尊重した関わりを心がける配慮が求められています。 「意思決定支援」とは、自ら意思を決定することに困難を抱える方が、日常生活や社会生活に関して自らの意思が反映された生活を送ることができるように、可能な限り自らによる意思決定できるよう支援することです。本人の意思の確認がコミュニケーションを図ろうとする行為だけでは無く、本人の意思や思いに沿った生活環境を整えることが重要です。具体的には(1)本人の判断能力の確認(アセスメント)(2)意思決定が必要な場面での関わり(3)人的・物理的環境の調整になります。 2.1について 合理的配慮の提供に当たって、障害者と事業者又は行政機関等との双方の建設的対話を行うためには先ずは気楽に相談できて、課題解決に向けて断ることの無いワンストップ窓口を市町村において用意することが重要と考えます。事業者による合理的配慮が義務化されると実際の場面で要求が多くなりがちになる事は予測もある一方で、受ける事業者側は過重な負担だとかわすことが予想されます。建設的対話に持ち込むにはなかなか難しい状況も予測されるため調整する機能が必要と考えます。そのためには事業者への対応が可能な広域的自治体の関わりや、各省による関わりの仕組みがワンストップの先に構築して行く事が重要と考えます。 2.2について 合理的配慮を求められた際に対応の見通しを立てやすくするためには類似する事例の情報収集も必要になります。特に合理的配慮の好事例を提供し共有することで、障害を理由とする差別の解消に向けた啓発となり、合理的配慮が浸透していく良い循環が生まれることを期待します。 3.について 基本方針の改定版の完成の際には、障害当事者にも内容が理解されやすいように情報提供等を工夫していただき、障害者、公的機関、事業者が同じ目線に立って差別解消に向けて共に取り組めるような配慮をお願いします。 (以上) p21 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 特定非営利法人 DPI日本会議 1.(1)について (御意見等) (1)「不当な差別的取り扱いの基本的考え方」には、障害を直接理由としなくても関連する自由を理由に不当な差別的取り扱いを行う関連差別や、中立的で一般的な規則などを当てはめることで結果的に障害者に不利益を与える間接差別の概念を挿入すべきである。 (根拠となる事例) 4DXのシアターで映画鑑賞を希望したところ、座席が動くなどの理由で車いす使用者が拒否された。介助者の手を借りて車いすから座席に移乗する、通路でも良いなど色々交渉するが認められなかった。「車いす」が拒否の理由である。 (2)障害者等に対して侮蔑等を行い尊厳を傷つけるハラスメント行為についても「不当な差別的取り扱いの基本的考え方」で、差別的取り扱いの一類型として書き込むべきである。障害者権利委員会の一般的意見6も参考とすべき。 (根拠となる事例) 「知人の障害者と飲みに行ったら、居酒屋の主人に「車いすの人が入れるような店じゃねーよ」と言われた。」 (3)障害当事者だけではなく、障害者の家族や関係者への障害を理由とした差別を禁止すべき。また、過去に障害があった(とされる)者、未来に障害を持つと思われる者、障害があると推測される者に対する不当な差別的取り扱いも禁止すべき。 (根拠となる事例) 障害者の家族の不利益について 特別支援学校に通う医療的ケアの必要な小学生の保護者(母)は、看護師等の配置がされているにもかかわらず、通学には付き添いが必要で、服薬時、そのほか子供の様子が変わった場合には必ず学校に行かなければならない状況。そのためもあり、現在は、仕事(フリーの通訳者)をなかなか入れることができず、子どもが呼吸器をつけてからは収入が四分の一以下に減った。(2021年) 将来的に障害を有することになる素因がある人への差別事例 都内在住のHIV感染者の男性は、腎臓機能の悪化に伴い2011年から週3回透析治療を受けていた。2016年の夏、転居に伴い新たな透析先を探したが約40の医療機関から断られた。 p22 障害があると推測される人々への差別事例 難病の確定診断が得られないまま就職活動をした際、最終面接に於いて他の方には就職後の生活や配属についての質問であったが、そのような質問は一切なく病気についてのみいくつも質問をされて不合格となった。 (4)「行政機関等」や「事業者」が、サービスの拒否等について「正当な理由がある」と判断した場合、行政機関等及び事業者の側が正当であることを証明すべき旨、少なくとも誠実な説明を行うべき旨を記載すべき。不当な差別的取り扱いであると申し立てた障害者や関係者側が差別であったことを証明することは困難であるため。 1.(2)1について (御意見等) (1)「過重な負担」の基本的考え方について、不当な差別的取り扱いの「正当な理由」と同様、過重な負担がある、ということを行政機関や事業者等が証明すべき旨、少なくとも誠実に説明すべき旨を記載すべき。合理的配慮を求める側が過重な負担があるのかないのかの情報は得られないため。 (根拠となる事例) A市立B中学校特別支援級在籍の医療的ケアが必要な女子生徒について、4月中頃になり、「校外学習や土日の授業について、今年度からは看護師を派遣しない」と口頭で言われた。要領要綱に同意を求められ拒否したところ、それならば看護師を派遣できないと言われた。そして、5月の校外学習には親の付き添いがあれば参加可能だが看護師は派遣できないとされ参加ができず、当該生徒は一人学校で授業を受けさせられた。 A市教育委員会に対し、合理的配慮の不提供であること、正当な理由なく条件付けをしていると伝えたが、「それには該当しない」と告げられた。A市役所の権利擁護センターに対しても、合理的配慮の不提供として訴えている。現在も看護師派遣は平日のみとなっており、4月28日に市の示す要領要綱の問題点を提出、回答は5月19日。この合理的配慮が「過重な負担」なのであれば、行政側に客観的にわかる資料を提出するよう求めているところ。(2017年) 1.(2)2について (御意見等) (1)上記(2)1(事例も含め)と関連するが、障害者あるいは関係者と行政機関等や事業者との対話を建設的に行うためには、双方が理解を深めながら、という姿勢が必要なのは言うまでもない。しかし、上記(2)1に記した事例のように両者の力関係によって対話にならず、 p23 立場が弱い側に対する一方的な「通知」「通告」になることも多い。こうしたことを防ぐためにも、行政機関等や事業者には丁寧な説明を求めたい。 2.1について (御意見等) (1)事案のたらいまわしを防ぐため、障害者差別解消法の担当となる行政機関や自治体などが障害者差別解消法に特化したワンストップの相談窓口を法の担当部署である内閣府に設置すべきである。 (事例) 人工呼吸器ユーザーに対し、クラシックコンサートの主催者が参加を拒否した。主催者と話し合いを重ねたが解決に至らなかったため、担当省庁の相談窓口に連絡をした。ところが、「わが省は芸術を推進する立場なので」「両者を裁く立場にない」などと言われ、各部署へたらい回しをされた。ようやく担当者が決まったが、その後関西地方に異動したとのこと、内閣府HPに掲示の相談窓口ではなく当該担当者の異動先の番号にかけてくれと言われた。(2018年) 車いすを利用する障害者があるクリニックに「車いすを使っているものだが施術を受けたい」と電話をして申し込んだところ、車いすだと施術は受けられない、と断られる。杖で歩けることを伝えても障害を持つ人は全員断っている、と言われた。本人が相談したところ法務局にまわされたがそこで止まってしまったので、DPIに相談が来た(その後、DPIよりいくつかの担当部局と思われる部局に連絡して担当部局につなげ、案件は解決)。(2018年) 2.2について (御意見等) (1)事例の収集、分析が非常に大切であり、そのためには事業分野や自治体で共通の事例収集フォーマットが必要だと思われる。これを内閣府で作成し、担当各省庁、自治体に示すべきではないか。 (2)相互理解を深め、障害者差別解消法の理解を深めるために、行政機関等や事業者、障害者団体などの研修を三者?共同で行うのは大きな効果が期待できるのではないか。 p24 3.について (御意見等) (1)障害女性等の複合差別について、障害、ジェンダーや民族マイノリティ、子供などの複合差別について、国連の障害者権利委員会と締約国との建設的対話や総括所見などの国際的な動向を踏まえながら、事例の収集や分析を進める旨を記載すべき。特に障害女性の複合差別については、障害者権利委員会の大きな関心事項の一つである。 (事例) 障害者が電車に乗降する時、駅員等がマイクで「お客様ご案内中です。乗車完了」というようなアナウンスをすることがある。「◯◯号車ご乗車。降車駅〇〇」と言う事業者もある。このアナウンスによって障害者が乗車していることが他の乗客に伝わり、障害のある女性が痴漢やストーカー被害にあっていることが明らかになっている。「降車駅で待ち伏せされて家までつけられた」「下着の色を聞かれたり、卑猥なことを繰り返された」「違う場所に連れて行かれた」等の被害の実態が明らかにされた。(2021年) (2)障害差別の解消のための立法府や司法機関との情報の共有や連携強化の旨を記載できないか。 (3)環境整備ができていないということを理由にサービス等の提供等を拒否されることが往々にしてあるので、環境整備を推進するため、計画づくりなど、何か基本方針で強調することができないか。 (事例) 車いすを利用している中学生が、自宅近くの中学校への就学を希望していたが、エレベーターがない、ということで、希望の学校に行けず、小学校からの友人がいない自宅から離れた学校に行かざるを得なかった。(2020年) 飲食店で、お店が狭くカウンターで固定椅子だった。車椅子から降りて本人だけ固定椅子に移って座ってくれるなら入れますと言われた。しかし、座ることは難しいので諦めた。(2016年) (以上) p25 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 日本弱視者ネットワーク 1.(1)について (御意見等) 行政機関が、不当な差別的取扱いを行なっていると考えられる場合、障害者が訴訟を起こすのはかなりハードルが高いため、内閣府等、第三者的な国の機関が差別解消支援協議会として斡旋するような仕組みを作ってほしいです。 「行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。」とありますが、「行政機関等及び事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明し、理解が得られるよう建設的な対話の場を提供しなければならない。」と改定してほしいです。 (根拠となる事例) 弱視生徒が高等学校に入学し、授業に不可欠な拡大教科書を入手しようとすると、通常の検定教科書の数十倍に及ぶ費用を負担しなければなりません。義務教育段階の場合、教科書無償法や就学奨励費制度が適用されていますので、弱視児童生徒がどの学校に在籍していても、拡大教科書や点字教科書は無償給与されています。また、特別支援学校高等部の場合も、就学奨励費制度が適用されていますので無償です。つまり同じ拡大教科書でも特別支援学校では無償、高校では高額な自己負担という法の下の不平等が生じているということです。既に国会の文科委員会では2006年からこの問題を解決するよう「就学奨励費等、障害のある子どもへの支援措置に関しては、高等学校の拡大教科書の自己負担軽減など、必要な具体的支援を把握しつつ、総合的な検討を進めること。」という付帯決議が何度も繰り返されていますが、15年も放置されたままです。義務教育段階を過ぎているとはいえ、日本では98%以上の生徒が高校に進学しています。障害のない高校生との費用負担の格差、特別支援学校に就学する生徒との格差は、財・サービスや各種機会の提供を拒否しているともいえますが、文部科学省教科書課は解決しようとはしていません。個々の弱視生徒や保護者が3年間のうちに裁判を起こすのは、事実上不可能です。このように憲法違反や差別解消法違反が疑われるような問題の解決を怠っているような状態に対し、国の別の機関が国レベルの支援協議会としてしっかり解決できるような仕組みを作っていただきたいです。 断定はできませんが、障害者が雇用される時、嘱託や非常勤など、非正規で採用されているケースが多く見受けられます。よって、コロナ禍では多くの障害者が簡単に解雇されてい p26 る事例があります。これは障害があるが故の不当な雇用形態から起因しているわけですが、「理解を得るよう努めることが望ましい」という規定では、説明や話し合いすら行われない恐れがあります。なぜ嘱託や非常勤採用なのか、なぜ解雇されるのか、しっかり説明し、建設的な対話が行われるよう義務化していただきたいです。 1.(2)1について (御意見等) 情報保障手段として、拡大文字、点字、音声、電子データなどに変換して提供することは、過重な負担ではなく、合理的配慮の一つであるということを例示でもよいので、明記してほしいです。 (根拠となる事例) 私立大学の中には、入試の受験は拒まないものの、入学後の点字等の教材の保証ができないことをちらつかせ、事実上受験をあきらめるよう誘導しているようなケースが見受けられます。これは、合理的配慮の不提供ともいえますが、間接的な不当差別ともいえます。活字をそのままの形では読むことのできない視覚障害者にとって、拡大文字や点字等、文字媒体を変換してもらうことは学習保障や就労を支える上でも重要な配慮です。その主旨を基本方針でも明確にし、過重な負担ではなく、合理的配慮であるということを明確にしていただきたいと思います。今後、民間の資格試験においても合理的配慮は求められてくると思いますので、争点にならないよう予め例示として示していただきたいです。 1.(2)2について (御意見等) 民間事業者と障害者個人の間では、何が合理的配慮で何が過重な負担かという判断がそれぞれの主観に基づいた場合、対話が建設的にならないことが考えられます。過重な負担になる程度を具体的に数多く示し、妥当な合理的配慮が進むようにしてほしいです。 建設的対話の前提として正しい障害理解が進むようにしてほしいです。 (根拠となる事例) 視覚障害者が、クレジットカードの加入申込書の代筆を依頼した時に断られることがあります。カード会社としては、個人の財産に関わることなので代筆はできないということですが、 p27 拡大用紙や点字版などの代替手段も用意されていませんので、どうしようもありません。 民間企業の合理的配慮について、ややもすると障害者側は一方的な権利主張に陥り、民間企業は過重な負担を盾にかたくなに拒否するということにもなりかねません。対話の前提として、個々の障害者の障害の特性や状態を正確に理解してもらう必要があります。一方、障害の種別や程度は十人十色です。そこで、当ネットワークでは、「私の見え方紹介カード」を作成し、自分の見え方を周囲の人に理解してもらうためのツールを作成しました。これに準じ、それぞれの障害で一般論としてまとめられることがあるのなら、障害理解を促進するようなリーフレットを作成するのも一案だと思います。 2.1について (御意見等) 相談や話し合いの方法として、電話や対面のほか、オンライン会議システムなども活用してほしいです。特に複数の機関が関係する話し合いが必要な場合は、移動に困難のある障害者にとっても無理なく参加できる方法を導入してほしいです。 2.2について (御意見等) 都道府県と市区町村には必ず障害者差別解消支援地域協議会を設置していただきたいと思います。現在は、あるところとないところが混在していますので、多くの障害者は何か問題を抱えた時に協議会に相談できるかどうかも分かっていません。まずは、協議会を確実に設置する、その存在をいろんなルートを通して障害当事者に伝えていく、このようなプロセスを踏んでいってもらいたいと思います。 啓発活動についてですが、そもそも差別解消法という法律の存在すら知らない一般市民が多数だと思います。例えば、ACジャパンのような機関と連携し、メディアで伝えていくとか、SNSを活用するなど、今の時代に合った周知方法を進めていただければと思います。 電車やバスの中の案内放送の中で駅ホーム上や横断歩道での声かけを呼びかけていただけると有難いです。例えば、「信号が青に変わりましたよ。」というような具体的な言葉を例に入れていただけると効果的だと思います。 民間企業の中でも、お店やレストランなどの接客における合理的配慮が進めば、社会全体もかなり良くなっていくと思います。そういう意味で、障害種別ごとに基本的な配慮事例をリーフレットにまとめ、配布していただければ有難いです。 p28 兵庫県明石市は、レストラン等に対し、点字メニューや筆談ボードの購入費の補助を行なっています。これは大変すばらしい事例だと思います。このような取り組みが他の自治体でも広がるよう周知していただければと思います。 3.について (御意見等) 「なお、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれる場合、障害者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供ではなく、後述する環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減・効率化につながる点は重要である。」とありますが、社会全体を見渡すとバリアフリーやユニバーサルデザインが必要な場面は、ほとんどの場合、合理的配慮を必要とする障害者が多数見込まれます。長期的なコストの削減・効率化という視点だけでなく、だれもが暮らしやすい社会を実現する上で環境整備が必要不可欠であるという主旨をもう少し前面に出していただきたいと思います。例えば、現在駅ホームの中央には誘導点字ブロックがありませんので、多くの視覚障害者は危険なホーム端の警告ブロック沿いを歩いています。この状況を改善するために一人の視覚障害者が合理的配慮として、「ホーム中央に道しるべとなる線状の誘導ブロックを敷設してほしい」と求めてもまったく拉致があきません。これは個別の合理的配慮ではなく、多くの視覚障害者の安全を確保するための環境整備だと思います。 本の出版についても同じことがいえます。視覚障害者の中には通常の活字本をそのままでは読むことができない人が少なからずいますので、テキストファイルなどの電子データを販売してほしいという声があります。現に対応していただいている出版社もありますが、断られるケースもあります。仮に最初から障害者へのデータ販売を想定し、データを準備していただいていれば、お互いに難なく販売、購入へとつなげられます。これも個別の合理的配慮というよりは、多くの障害者のニーズを考慮した環境整備のなせる業だと思います。 (以上) p29 基本方針に関する御意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 社会福祉法人 日本身体障害者団体連合会 1.(1)について (御意見等) (1)不当な差別的取扱いの基本的な考え方について 1積極的改善措置に対する社会の理解促進の図るために、補足的な説明や文言の修正の検討。 2暴言や嫌がらせ(ハラスメント)を追記 3具体的にどのようなことか、共通認識しにくいことから、より分かりやすく明文化すべき (2)正当な理由の判断の視点について 1「理解を得るように努めることが望ましい」は「理解を得なければならない」に変更 2障害者と事業者間の判断に差異が生じたり、調整が困難である場合があることから自己選択、自己決定の尊重に鑑み、自己決定する場合の結果に対する自己責任を明記してはどうか。 (根拠となる事例) (1)障害者が合理的配慮を求めた場合に、「なぜ障害者だけ優遇するのか?」という言葉が、残念ながら日常的に聞かれる。 職場で障害を理由に単純作業しか就かせてもらえない、希望した部署に配属されない。 (2)収入(障害者年金)があるにもかかわらず、説明もなくクレジットカードの発行を断られた。不動産の賃貸契約で障害を理由に契約してもらえなかった。 遊園地で知的障害のある人が介助者同伴でジェットコースターに乗ろうとしたところ、安全を保障できないため乗車を断られた。本人は以前から他の遊園地で何度もジェットコースターに乗った経験があり、全く問題ないと判断し説明したが、遊園地側は過去に起きた事故の経験から争点となった。 月極駐車場の契約の際障害者を理由に保証人を求められた。やりとりの結果、保証人なしで契約した。 1.(2)1について (御意見等) (1)合理的配慮の基本的な考え方について 1「自主的な取り組みに努めることが望ましい」は「自主的な取り組みに努めること」に変更 2非常時における合理的配慮のあり方を追記してはどうか。 3 1)イの一例に、「特に内部障害者において、障害者の個人情報への配慮につき考慮しつつ、労働時間の調整などのルール・慣行の柔軟な対応」を追記 4当事者や当事者団体と定期的かつ、継続的に「よりよい合理的配慮や相談や対話がしやすい p30 環境づくり」を基本方針で担保できるとお互いに対話や相談がしやすくなると考える。 (2)過重な負担について 1「理解を得るように努めることが望ましい」は「理解を得ること」に変更。 2合理的配慮の提供に要する費用、事業規模の判断の参考となる事例を示してはどうか。 3当事者同士での解決が難しい場合、第三者の介入を視野に入れた記載を加えてはどうか。 (根拠となる事例) (1)テレビの通信販売で申し込みが電話のみで、FAXでは受け付けてくれない。 内部障害者は、一般に障害であることが分かりにくいことが多く、労働者として雇用されているケース等において、対象となる障害に応じ、労働内容、労働時間等に関する配慮を期待しにくい、あるいは求めにくいことがある。 行政や事業者への障害による困難、必要な配慮を説明したり、前例がないことへの対応への理解に時間がかかり、自ら説明ができない、発信できない当事者は解決が難しいこともある。 盲ろう者は障害の状態や困難のウエイトが重く、一人一人障害の状態や困難、支援のニーズも異なり、多様であることから、理解を得るにも説明も難しく、時間がかかることが多い。 盲ろう者は意思疎通や情報の受信、理解に時間を要するが、対応していくために必要な時間的猶予がない場合など、時間的なバリアも感じることがある。 行政から出される墨字による情報やインターネットに掲載される情報について、点字や拡大文字による情報提供への配慮がなかなか対応してもらえなかった、テキストデータへの対応が難しく、盲ろう者は情報が入らず、自力で読めない、期限がある対応ができないこともある。 同じ窓口や事業者でも対応する人が変わると、また一から障害や必要な合理的配慮について繰り返し説明しなければならないことも多い。 情報や社会システムのデジタル化推進とハイテク化、セキュリティー強化が、逆に視覚障害の利用する点字ディスプレイでメールや情報アクセスが困難になってきている事例もある。 インターネットによるオンライン手続きや情報共有システムで対応できないことがある。 (2)車いすということで、タクシーのドライバーから乗車拒否される。 事業者から、幾らまでならやらなければいけないのか?との声を聴く。 1.(2)2について (御意見等) 1実現可能性の程度(物理的・技術的制約、人的・体制上の制約)、費用・負担の程度等も考え、事業者・行政機関とともに代替え案を検討する等の建設的対話のあり方が大事だと考える。 p31 2コミュニケーションをとるための適切な情報保障。 3正当な理由や過重な負担の判断基準の参考となる具体例の収集及び活用しやすい提供の仕組み。 4国等における合理的配慮に要する費用の補助(助成)制度の創設 5法の理解とともに障害理解のための業界における研修の義務化 6双方の理解促進にむけ、定期的な意見交換等の機会 7公正を保てる第三者機関の設置 8事例集を作成し、障害者に対する差別や望ましい配慮を個別具体に明示し、市民に広く公表する等、分かりやすい形での情報提供と共有。 9障害当事者(団体)とのコミュニケーションや情報共有、関わる機会の積み重ねが必要。 10国レベルで障害者や合理的配慮への理解のための研修を定期的かつ継続的に実施できるように予算化したり、実施することを担保できるとよいのではないか。 11当事者や事業者、行政が気軽に相談できる相談センターの相談体制の拡充、周知、人材養成。 12障害当事者への差別解消法や合理的配慮に関する理解促進のためのセミナーの開催や専門アドバイザーの養成等 障害当事者が差別解消に関連した取り組みや啓発などに関わる機会の確保と社会参加の機会確保 盲ろう者の多様なコミュニケーション、情報送受信方法に対応できる環境や人材の育成 話を聞くだけでなく、疑似体験や実技、経験的学習も必要 (根拠となる事例) (1)うまくいった事例 地元の鉄道の駅の改札口に「筆談用具あります」の分かりやすく表示している。 茨城県内5市(つくば市、水戸市、ひたちなか市、取手市、那珂市)で合理的配慮に必要な資金の助成制度が制定。 京都府と京都市の身障団体が連携し、平成30年度から年1回京都府タクシー協会と意見交換を実施。相互の情報や意見交換をしている。障害者差別に関わる事象などには直ちに業界として通達発出され全体として共通認識する対応があった。様々な要望については、理解し合いながら少しでも改善が進むよう取り組んでいる。 仙台市で仙台市障害者差別相談調整委員会を年1回実施。相談内容をもとに事例検討を行っている。相談内容に関しては障害者差別解消相談員を設置し、相談員が仲介している事例が多い。なお、うまくいった件、うまくいかなかった件の内容については非公表。 千葉県では障害のある人に対する差別をなくすため、「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」で県民共通の目標としてなくすべき差別を具体的に定めるとともに、差別の解消に向けた3つの仕組みを定めている。 p32 ※誰もが暮らしやすい地域社会のための県民の共通のルール(障害のある方に対する「差別」の明確化ための3つのルール 1 一人ひとりが直面している問題を相談員が一緒に考えます。 2 制度や習慣による問題を皆で話し合い、実践していきます。 3 障害のある方に優しい取組みを応援し、広めていきます。 チラシや墨字の資料等の作成前の段階で、情報や合理的配慮について相談ができると、スムーズにテキスト化や拡大文字版対応ができることがある。 視覚に障害があり、盲ろう者であることを宿泊施設に伝えると、スタッフがいない、防犯、防災上の理由などから、予約を断られたり、介助者の同伴を求められることがあり、電話やフロントで対応するスタッフ以外に別のスタッフや上司も交えて、状況を確認したり、丁寧に説明したり、共に対応策を考えることで、宿泊を認められ、宿泊施設内での移動もサポートしていただいた事例もある。 障害者施策やバリアフリー整備、施設の新設や改修時にヒアリングを実施していただいたり、デモンストレーションに参加させていただいたり、直接、当事者(団体)が関わることで、ニーズを取り入れてもらえた事例もある。 (2)うまくいかなかった事例 事業者が調整活動を望まず、顧問弁護士を通じた話し合いにしか応じなかった。 セルフレジのサポートを求めたところ、セルフレジは独力で対応できる人を対象としており、障害者の有無による分け隔てはしていないとの回答があった。 事業所職員に相談しても、差別と理解せず対応してくれない。 障害者の状態や状況を確認して、理解して対応するよりも、行政や事業者の事情のみ説明して、慣例や前例ありきで話し合いにならないこともある。 2.1について (御意見等) 1相談窓口の明確化。相談を受ける職員の専門性の向上及び業務の明確化(事業者からの相談への円滑な対応と助言、情報提供、関係者間の調整役等) 2相談員として障害者相談員の活用が考えられるが、研修内容等が地域により異なるため、国の予算措置を含め、全国で統一的なテキストや研修等を実施し、一定のスキルを確保する。 3第三者機関としての救済機関(調整委員会といった仕組み)設置の検討。 4情報の共有、ワンストップ体制の整備 5地域特性に応じた相談体制の整備。 2.2について (御意見等) p33 1市町村レベルでの地域協議会の設置が進まなかったり、実質的に機能していない実態がある。その要因を明らかにし、設置促進にむけ改善策を講じる。また、事例を通じて、障害者理解の共有化につながる研修を積極的に行うよう、地域協議会に求めることが肝要。 2地域協議会等については、障害者差別の課題を界隈の問題から社会の問題へと転換し、障害者差別の解消にむけ、地域と密着・連携した活動が行える体制強化が必要。 3また、市町村における地域協議会のメンバーに、事業を営んでいる者を入れることが肝要。 4研修の強化の課題に関しては、開催の数値目標を設定する等が必要。 5啓発活動においては、より具体的で徹底した研修の内容、実施方法を、行政機関等の職員(一人ひとりが窓口となる)、事業者(合理的配慮の義務化から多様な相談が想定されるため)、教員(障害理解・認識が重要)への適切な研修の実践が必要。 例えば、盲導犬を連れた視覚障害者のタクシーの乗車拒否、入店拒否、行政からの重要な郵便物が視覚障害者に対する配慮(点字版等)がなされていない事例が、法律施行後5年の今もあることから、窓口となる行政については、事業者等に対して具体的な内容を示し、啓発していくことが必要 6自治体・社会福祉協議会・各障害者団体等の連携強化が必要。 7障害理解には、教職員はもとより、幼少期における普及啓発が重要課題であり、障害理解を深めるための取組が大切。 8国民に事例を提供する機会を「定期的」とし、提供媒体も「さまざまな媒体を利用」と追記。 盲ろう者の受信方法へ配慮された複数の方法で提供できるよう理解と対応が必要である。 9合理的配慮の提供と事前的改善措置の理解共有とともに、改善措置を行政や事業者が努力義務をおっていることを明確化し、差別解消のための予算措置についての検討が必要。 10法律の認知度が低く、また障害者自身の解釈にも個人差があるといえる。法の理念と内容を再確認する上でも、そこをめざした啓発活動が必要。 11一般向けの墨字による情報周知やインターネットを利用した広報、啓発活動だけでは、情報入手に困難を抱える盲ろう者やインターネットが閲覧できない盲ろう者等には情報が入らないこともあり、当事者や当事者団体、官民で連携、協力が不可欠。 3.について (御意見等) 1地方自治体における対応要領に関する市町村職員の理解促進のための研修の検討。また、対応要領の作成は努力義務でなく「義務」として行政職員は理解することを義務づけるよう明記。 2合理的配慮の義務化に伴い、対応指針の見直しについても障害者団体等のヒアリング等を実施する等、よりよい指針作成の検討。 3障害者差別解消法が、地域特性に応じ十分に取組めることが重要であり、市町村レベルでの p34 条例制定 4改正法の一日も早い施行 5障害者権利条約との整合性 6対象範囲については家族や親族まで拡大 7「社会モデル」という考え方をもっと広めていくことが肝要であり、法律が制定されているからこそ丁寧に対話をして、一緒に解決策を探るという姿勢が必要であることを障害者自身が認識することも大事 8教育機関との連携を強化し、周知啓発の徹底するための検討 9法律や基本方針の理解促進のための周知の強化 10相談窓口や相談機関の国レベルでの積極的な周知のための広報及び相談しやすい環境整備の促進が重要 (以上) p35 基本方針に関する意見等(資料1ヒアリング項目への回答) 団体名 公益社団法人 日本てんかん協会(波の会) 1.(1)について (御意見等) 障害や慢性疾患・難病をカテゴライズするだけで、一括りに取り扱うことには無理があり、事業者や行政機関等にも不安・不快さが残る。理解や支え合いは、人と人とのコミュニケーションによって生まれる。障害や疾患のある人にはこうすべき、こうしてはいけないというような視点だけでは、押しつけととらえられてしまうように感じる。 (根拠となる事例) てんかんのある人の多様性や生きづらさについて、特に理解があるわけではなく、「てんかん=意識消失、けいれん、倒れる」と何となく勝手に認識している事例が多い。てんかんがあるからと言って、全員が何かしらの支援が必要なわけではなく、そのタイプや症状によってサポートが必要な人がいる。しかし、個別の状況を聞く前に「てんかんがある」と分かった段階で利用ができなくなるサービスが社会の中にはまだ多い(スポーツジム、美容整形、など)。「てんかんのある人にはこうしてください」ではなく、まずは一人一人の状況を聞いてもらい対応可能な支援策を一緒に考えることで、私たちの活動の中では多くのハードルを克服してきている。 1.(2)1について (御意見等) 合理的配慮が行われることが当たり前(権利・義務)、というロジックからスタートする中では、当然過重な負担は無理との主張が生まれてくる。誰でもが快く利用できるサービスの提供に向けて、どうコミュニケーションを取るかという視点が大切と感じる。 (根拠となる事例) 当協会によせられる相談の中で、不適切な事例として対処を求められるものに介入をしてみると、てんかんが問題ではなく当事者や支援者の態度や発言から感情的な問題に発展し、いつの間にかてんかんに対する無理解事案とされていることが少なくない。こういった行き違いがどこで生まれるのか、コミュニケーションの取り方について、何かしらの参考資料が p36 必要なようにも感じている。 1.(2)2について (御意見等) 現在各方面で作成されている、障害や疾患の基本的な理解を進めるような資料に加え、各個人が具体的に期待する支援について、分かりやすく示すことができる資材があるとよい。 また、当事者同士だけで直接やり取りをするのではなく、相互理解を進めるためにファシリテーターのような役割を担える専門職(地域支援事業所)の登録ができるとよい。 (根拠となる事例) 私たちの活動(てんかん運動)では、一般的なてんかんの疾病としてのしくみを伝える資料と、個別の状態を説明する資材を準備するように心がけている。また、てんかん専門医、専門看護師、当協会の都道府県支部などと、トラブルが生じた人や事業書等が連絡を取りやすいネットワークづくりを進めている。 2.1について (御意見等) 繰り返しになるが、本当に障害や疾病を理由に無理解、偏見、差別が生じているのかを見定める客観的な判断ができる機関(専門員)が必要ではないか。さらに、各障害や疾患別に正しい情報や専門家などを提供できる全国の窓口一覧(マップ)を、国の責任で提供することも必要に思う。障害や疾患のある人がサービスを利用する際に、予め専門的な知識を得られ、何か生じた際にも客観的にsuggestionがもらえる体制があるだけで、当事者も事業者もそして行政も安心し、感情的なトラブルに発展することは避けられるように思う。この場合、法律の専門家や研究者などよりも、直接支援を担う各領域の専門員が適当かと思う。 2.2について (御意見等) 障害や疾病のある人を差別してはいけない、という構図はそろそろ終わりにして、子どもや高齢の人も共通する、誰もが安心して楽しく暮らせる地域社会のために、例えばこんな支援を p37 するだけで、こういった人たちがサービスを利用しやすくなる、というようなメッセージが大切なように思う。 3.について (御意見等) 法律を施行するための基本方針であるので、これまでまとめられてきた内容や、各団体が主張されることは、とても大切で必要な内容とは思う。 それらを前提としつつも、慢性疾患であって障害(精神、知的、身体など)とも難病とも係わり、一方で適切な医療により特に社会からの支援を受けることなく生活が可能なてんかん領域で活動をしていると、その多くの課題解決は個々人の状態を理解してもらい、お互いに十分なコミュニケーションを重ねることに行きつくことが多い。社会へのルールを明確にするだけではなく、当事者間のコミュニケーションをどのように築けるかを、具体的な指針のようにまとめていくことが、これからはより大切になってくるように思う。 (以上)